(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091552
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ホルダ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/64 20060101AFI20240627BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240627BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20240627BHJP
A61F 13/62 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F13/64
A61F13/49 413
A61F13/56 100
A61F13/62 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214148
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022207624
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 研
(72)【発明者】
【氏名】植田 章之
(72)【発明者】
【氏名】湯地 朱実
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA11
3B200BA12
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA14
3B200CB09
3B200CB15
3B200DA01
3B200DA11
3B200DE01
3B200DE03
3B200DE11
3B200DE14
3B200DE16
3B200EA09
3B200EA11
(57)【要約】
【課題】ズレ落ちを防止できるとともに、装着感に優れたホルダを提供すること。
【解決手段】着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッド11を着用者に装着した状態に保持する環状のホルダ1であって、着用者の身長方向に沿う高さ方向HD及び胴回り方向に沿う周方向CDを有し、周方向CDに伸縮性を付与する構成部材として応力緩和部材を含んでおり、着用状態を想定した、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率1.5倍の標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持する環状のホルダであって、
着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴回り方向に沿う周方向を有し、
前記周方向に伸縮性を付与する構成部材として応力緩和部材を含んでおり、
着用状態を想定した、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率1.5倍の標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和する、ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダは、着用者のウエストに配されるウエスト領域と、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に対応する腸骨領域とを有しており、
前記応力緩和部材は、少なくとも前記ウエスト領域に配されており、
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が、前記腸骨領域の応力緩和率よりも大きい、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記ホルダは、前記吸収性パッドの端部域を脱着可能に止着可能なホルダ側止着構造を有しており、
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、着用者のウエストに配されるウエスト領域の応力緩和率が、前記ホルダ側止着構造が存在する止着構造存在領域の応力緩和率よりも大きい、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記ウエスト領域は、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率が1.7倍である高伸長倍率条件下で測定した応力緩和率が、前記標準着用条件下で測定した応力緩和率よりも大きい、請求項2又は3に記載のホルダ。
【請求項5】
前記ウエスト領域には、前記応力緩和部材よりも応力緩和しにくい難応力緩和部材が配されており、
前記ウエスト領域において、前記難応力緩和部材は、前記応力緩和部材よりも伸長率が高い、請求項4に記載のホルダ。
【請求項6】
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が20%以上である、請求項2~5のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項7】
温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率が1.7倍である高伸長倍率着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が30%以上である、請求項2~6のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記応力緩和部材が、伸長性を有する2層の繊維層間に、前記周方向に延びるように配列した複数の弾性フィラメントが融着によって固定されている伸縮性シートである、請求項1~7のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のホルダと、前記ホルダに装着可能な吸収性パッドを備える吸収性物品であって、
前記吸収性パッドは、該吸収性パッドの長手方向における端部域に、前記ホルダ側止着構造に脱着可能に止着可能なパッド側止着構造を有しており、
前記ホルダを前記標準着用条件下に4時間保持したときの前記ホルダにおける前記ホルダ側止着構造が存在する止着構造存在領域の応力が、前記ホルダ側止着構造及び前記パッド側止着構造を介して前記ホルダに止着された前記吸収性パッドを該ホルダから剥がすときの剥離力より大きい、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品の一種として、尿等の体液を吸収保持する吸収性パッドと、着用者の腰周りに環状に装着されるとともに、着用者の股間部に配置された吸収性パッドを保持するホルダとを備え、吸収性パッドがホルダに対して着脱自在に構成されたセパレートタイプのものが知られている。従来のセパレートタイプの吸収性物品においては、特許文献1及び2に記載されているように、ホルダの外面(非肌対向面)又は内面(肌対向面)に、吸収性パッドが有する止着構造(パッド側止着構造)を脱着可能に止着可能なホルダ側止着構造が設けられている。
【0003】
従来、ホルダを着用したときに該ホルダがズレ落ちてしまうことを防止するために、該ホルダに伸縮性を付与することが行われている。特許文献1及び2に記載のホルダは、外面を形成する上層不織布と、内面を形成する下層不織布とからなり、両不織布の間には、複数の伸縮部材が付設されている。具体的には、ホルダのウエスト部及び腰下部それぞれに、周方向に沿って複数本の伸縮部材が配されている。また、特許文献1及び2には、上層不織布に代えて伸縮性を有するプラスチックシートを用いてもよいことが記載されている。また、特許文献1及び2には、ホルダの周方向の一方の端部に、支持部材を介してメカニカルファスナーのフック部材を設けること、及び該支持部材として、周方向に伸縮する伸縮性不織布を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-29814号公報
【特許文献2】特開2012-29815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2には、上述のように、ホルダを構成する部材として伸縮性を有する部材を用いることが記載されているものの、該ホルダを着用したときに、該ホルダが着用者の身体を過度に締め付けることを防ぎ、該ホルダの装着感を向上させる観点から、改善の余地があった。
したがって本発明の課題は、ズレ落ちを防止できるとともに、装着感に優れたホルダを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持する環状のホルダに関する。
前記ホルダは、着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴回り方向に沿う周方向を有することが好ましい。
前記ホルダは、前記周方向に伸縮性を付与する構成部材として応力緩和部材を含んでいることが好ましい。
前記ホルダは、着用状態を想定した、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率1.5倍の標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和することが好ましい。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ズレ落ちを防止できるとともに、装着感に優れたホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のホルダの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すホルダの最大伸長状態における腹側部側の非肌対向面(外面)を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のI-I線断面(
図2に示すホルダの高さ方向且つ厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すホルダの使用例を示す図であり、該ホルダ及びこれに止着された吸収性パッドを含む使い捨ておむつ(吸収性物品)の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すおむつの展開且つ最大伸長状態における肌対向面(内面)側を一部破断して模式的に示す展開平面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図4に示す吸収性パッドが有するパッド側止着構造の模式断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示すパッド側止着構造が有するフック部材の模式平面図であり、
図6(c)は、
図6(b)におけるC-C線断面図であり、
図6(d)は、
図6(b)におけるD-D線断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すホルダの構成部材として用いることができる特定伸縮性不織布を示す図であって、該不織布を一部破断して模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明のホルダの他の実施形態を示す断面図であり、腹側部側の断面図である。
【
図9】
図9(a)~(c)は、ホルダに止着された吸収性パッドを該ホルダから剥がすときの剥離力を測定する方法を説明するための図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、ホルダに止着された吸収性パッドを該ホルダから剥がすときの剥離力を測定する方法を説明するための図である。
【
図12】
図12(a)は、実施例における剪断力の測定方法を説明するための模式平面図であり、
図12(b)は、
図12(a)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0010】
図1~3には、本発明のホルダの一実施形態であるホルダ1が示されている。また
図4及び
図5には、本発明のホルダの使用例として、ホルダ1とこれに止着された吸収性パッド11とを含む、使い捨ておむつ10が(以下、「おむつ10」とも言う。)示されている。おむつ10は、本発明の吸収性物品、すなわち本発明のホルダと該ホルダに装着可能な吸収性パッドとを備える吸収性物品の一実施形態である。おむつ10は、
図4に示すように、ホルダ1と吸収性パッド11とがホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16を介して結合されたものであり、ホルダ1が有するウエスト開口部WHと、ホルダ1の高さ方向HDの下端部と吸収性パッド11の長手方向(後述する縦方向X)に沿う両側縁部とで画成される一対のレッグ開口部LH,LHとを有する。なお、吸収性パッド11は、ホルダ1の構成部材ではない。
【0011】
セパレートタイプの吸収性物品であるおむつ10は、ホルダ1と吸収性パッド11とが止着構造6,16を介して結合・分離自在であるため、従来の非セパレートタイプの吸収性物品に比べて環境に対する負荷が低減されている。すなわち、着用者の腰周りに対応する部分(ホルダ相当部分)と着用者の股間部に対応する部分(吸収性パッド相当部分)とが一体不可分である従来の非セパレートタイプの吸収性物品を使用後に廃棄する場合、ホルダ相当部分は汚れていなくても、排泄物で汚れた状態の吸収性パッド相当部分とともに廃棄せざるを得なかったが、おむつ10であれば、ホルダ1はそのままで吸収性パッド11のみを新品と交換すればよいため、非セパレートタイプの吸収性物品に比べてゴミ廃棄量、二酸化炭素排出量が低減され、環境に対する負荷の低減に貢献することができる。
また、おむつ10の着用中、吸収性パッド11はホルダ1に着脱可能に固定されているので、該吸収性パッド11を新品に交換する作業は簡単であり、おむつ10は、従来の非セパレートタイプの吸収性物品に比べて交換作業の負荷が大幅に軽減されている。
【0012】
ホルダ1は、着用者の腰周りに環状に装着されるとともに、吸収性パッド11を着用者に装着した状態、すなわち着用状態に保持可能なものであり、着用者の身長方向に沿う高さ方向HD及び胴周り方向に沿う周方向CDを有している。ホルダ1には、吸収性パッド11の端部域を脱着可能に止着可能なホルダ側止着構造6が設けられている。吸収性パッド11の端部域は、吸収性パッド11の長手方向Xの全長を4等分、好ましくは5等分したときの両端に位置する領域である。
【0013】
ここで、吸収性パッド11について
図4及び
図5を参照しながら簡単に説明すると、吸収性パッド11は、着用者の肌から相対的に近い位置に配置された液透過性の表面シート12、着用者の肌から相対的に遠い位置に配置された液不透過性、液難透過性又は撥水性の裏面シート13、及び両シート12,13間に介在配置された吸収体14を含む。吸収性パッド11を構成するこれらの部材どうしは、接着剤等の公知の接合手段により一体とされている。吸収性パッド11は、平面視において一方向に長い形状をなし、吸収性パッド11を使用する際にはその長手方向を、予め着用者に装着された状態のホルダ1の高さ方向HDに一致させる。吸収性パッド11の長手方向は、おむつ10の着用者の前後方向に対応する縦方向Xに対応し、縦方向Xに直交する吸収性パッド11の横方向Yは、ホルダ1の周方向CDに対応する。吸収性パッド11の縦方向Xに沿う両側部には、おむつ10の着用時に着用者の肌側に起立する一対の防漏カフ15,15が配置されている。各防漏カフ15は、防漏カフ15の主体をなす防漏カフ形成用シート150と、縦方向Xに伸長状態で該シート150に固定された弾性部材151とを含む。なお吸収性パッド11は、防漏カフ15に代えて、又は防漏カフ15とともに、一対のレッグカフを備えていてもよい。前記レッグカフは、吸収性パッド11における着用者の脚周りに対応するレッグ縁部に配置されるもので、レッグ縁部形成用シートと、該レッグ縁部に沿って該レッグ縁部形成用シートに伸縮可能に固定されたレッグカフ形成用弾性部材とを含む。前記レッグ縁部形成用シートは、例えば、防漏カフ形成用シート150及び/又は裏面シート13であり得る。前記レッグカフは、防漏カフ形成用シート150を用いて防漏カフ15とともに一体的に形成され得る。吸収性パッド11の縦方向Xの両端部域それぞれの肌対向面にはパッド側止着構造16が配置されており、このパッド側止着構造16をホルダ1のホルダ側止着構造6に止着させることで、吸収性パッド11をホルダ1に脱着可能に止着させることができる。
なお、吸収性パッド11は、本発明のホルダが適用可能な吸収性パッドの一実施形態に過ぎず、本発明のホルダが適用可能な吸収性パッドは、該ホルダのホルダ側止着構造に止着可能なパッド側止着構造を有していればよく、吸収性パッド11に限定されない。
【0014】
本明細書において「肌対向面」とは、吸収性物品、ホルダ、吸収性パッド等の着用物品又はその構成部材(例えばホルダのホルダ側止着構造)における、該着用物品の着用状態において着用者の肌側に向けられる面を指し、「非肌対向面」は、該着用物品又はその構成部材における、該着用物品の着用状態において肌側とは反対側に向けられる面を指す。
【0015】
以下、ホルダ1について詳細に説明する。
ホルダ1は、着用者の腹側(前側)に配置される腹側部Fと、着用者の背側(後側)に配置される背側部Rとを有し、ホルダ1の主体をなすホルダ本体部2を備える。ホルダ本体部2は、ホルダ1の平面視における外形形状(輪郭)を形作っており、ホルダ1の高さ方向HDの上端1a及び下端1bは、ホルダ本体部2の上端及び下端である。ホルダ側止着構造6はホルダ本体部2に固定されている。
【0016】
本実施形態では、ホルダ1(ホルダ本体部2)は、
図1に示すように環状をなしており、着用状態で着用者の胴部が挿入されるウエスト開口部WHを有している。具体的には、本実施形態のホルダ1では、腹側部F及び背側部Rそれぞれのホルダ本体部2どうしが、それらの長手方向両端部にて、接着剤、融着等の公知の接合手段によって互いに接合されて一対の接合部S,Sが形成されており、それら一対の接合部S,Sを介して腹側部Fと背側部Rとが連結し、環状を構成している。接合部Sは、一般的な非セパレートタイプのパンツ型使い捨ておむつにおけるサイドシール部に相当するものである。
【0017】
本実施形態では、ホルダ1(ホルダ本体部2)は、
図2に示す如き最大伸長状態の平面視において長方形形状をなし、高さ方向HDの上端1a及び下端1bは、高さ方向HDと直交する方向に平行な直線状である。
また本実施形態では、腹側部Fと背側部Rとは、平面視において互いに同形状・同寸法であり、且つ接合部Sを破壊せずに維持した状態で腹側部Fと背側部Rとを重ね合わせたときにそれらの輪郭が一致する。
【0018】
本明細書において「最大伸長状態」とは、吸収性物品、ホルダ、吸収性パッド等の着用物品の各部の弾性部材を最大伸長させて、設計寸法、すなわち弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じとなるまで拡げた状態をいう。
また、「展開且つ最大伸長状態」とは、着用物品を平面状に拡げて展開状態とした上で、前記最大伸長状態とした状態を指し、前述したホルダ1の接合部Sの如き、サイドシール部を有する吸収性物品の場合は、該吸収性物品をサイドシール部で切り離して平面状に拡げて前記展開状態とする。
【0019】
本発明において、ホルダは、周方向に伸縮性を付与する部材として、応力緩和部材を含んでいる。伸縮性とは、伸ばすことができ且つ伸ばす力を解除したときに収縮する性質を意味する。応力緩和は、伸長状態を所定時間維持することによって収縮力が低下することを意味し、例えば、後述する標準着用条件下で4時間維持したときに、応力緩和率の値が所定の値以上であることを意味する。
【0020】
本実施形態では、ホルダ本体部2は、ホルダ1の非肌対向面(外面)を形成する外層シート3と、ホルダ1の肌対向面(内面)を形成する内層シート4とを含む。内層シート4は、ホルダ1の着用時に着用者の肌と接触し得る。本実施形態では、外層シート3及び内層シート4のいずれか一方又は両方を応力緩和部材とすることができる。本実施形態のホルダ1は、外層シート3及び内層シート4のいずれか一方又は両方が、周方向に伸縮性を付与する部材である応力緩和部材であることにより、周方向CDに伸縮可能となっている。ホルダ1が周方向CDに伸縮可能となっているので、ホルダ1を着用したときに該ホルダ1がズレ落ちることを防止することができる。
【0021】
本実施形態では、外層シート3は、
図3に示すように、高さ方向HDの上端部が肌対向面側に折り返されており、その外層シート3の折り返しの折り目にホルダ1の上端1aが位置し、ホルダ1の上端1aの近傍(上端部)は、外層シート3とその折り返し部30との積層構造を含む。折り返し部30とこれに対向する外層シート3との間は、接着剤、融着等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0022】
本実施形態では、ホルダ1(ホルダ本体部2)は、高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)に伸縮可能に配置された弾性部材5を備える。より具体的には、
図3に示すように、外層シート3と内層シート4との間、及び外層シート3とその折り返し部30との間に、複数の弾性部材5が高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)に伸縮可能に配置されている。複数の弾性部材5は、
図1に示すように、腹側部F及び背側部Rそれぞれの高さ方向HDと直交する方向(周方向CD)の全長にわたって延在し、高さ方向HDに間欠配置されている。各弾性部材5は、周辺の他の部材と接着剤によって固定されている。弾性部材5の配置数、配置位置は特に制限されず、ホルダ1の着用者の身体に対するフィット性などを考慮して適宜設定し得る。
【0023】
ホルダ1は、水分を吸収保持する吸収体を含んでいないため、両シート3,4をはじめとするホルダ本体部2の構成部材として洗濯可能なものを用いれば、洗濯して繰り返し使用することが可能なものとなり得る。ホルダ1が洗濯可能なものであることは、ゴミ廃棄量、二酸化炭素排出量の低減につながり、環境に対する負荷の低減に貢献することができる。ホルダ1を洗濯可能なものとする観点からは、両シート3,4等の、ホルダ本体部2の構成部材としては、織布が好ましい。
【0024】
ホルダ1の特徴部分の1つであるホルダ側止着構造6について説明すると、本実施形態では、ホルダ側止着構造6は
図1等に示すように、ホルダ本体部2の非肌対向面(外面)に設けられており、より具体的には、外層シート3の非肌対向面に固定されている。
【0025】
ホルダ側止着構造6としては、吸収性パッド11が有するパッド側止着構造16(
図5参照)を脱着可能に止着可能なものであればよく、公知の着脱自在な止着構造を特に制限なく用いることができる。例えば、ホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16の一方又は両方が、粘着剤を塗布して形成された粘着部を備え、該粘着部を介してパッド側止着構造16がホルダ側止着構造6に脱着可能に止着するようになされていてもよい。
【0026】
本実施形態では、ホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16を含む止着構造として、機械的面ファスナーを採用している。ここでいう「機械的面ファスナー」とは、鉤状の突起からなるフック部材(係合部材)が一面に配置された面部材(オス部材)と、パイル状の突起からなるループ材が一面に配置された面部材(メス部材)とが、一組みとなった留め具を指す。機械的面ファスナーの具体例として、マジックテープ(登録商標)が挙げられる。
具体的には本実施形態では、ホルダ側止着構造6は、機械的面ファスナーのメス部材であり、基材と、該基材の非肌対向面(外面)に設けられ、パッド側止着構造16が止着可能な被止着領域とを備える。ホルダ側止着構造6が備える前記基材は、接着剤、融着等の公知の接合手段60(
図3参照)を介して、ホルダ本体部2に直接固定されている。パッド側止着構造16は、機械的面ファスナーのオス部材であり、典型的には、
図6(a)に示すように、樹脂製フィルム、織布、不織布などからなる基材51の表面に多数のフック部材52が配置された構成を有している。
【0027】
フック部材52は、
図6(a)に示すように、シート状のベースシート53と、該ベースシート53の表面から起立する多数の係合突起54とからなる。尚、フック部材52はベースシート53を有していなくてもよく、係合突起54が、基材51の表面から起立していてもよい。
【0028】
係合突起54は、
図6(b)~(d)に示すように、キャップ部55と、パッド側止着構造16の基面16a及びキャップ部55の間に位置する軸部56とを有している。本実施形態では、パッド側止着構造16の基面16aは、ベースシート53の肌対向面となっている。フック部材52がベースシート53を有しておらず、係合突起54が基材51の表面から起立している場合は、該基材51の肌対向面がパッド側止着構造16の基面16aとなる。キャップ部55と軸部56とは、一体成形されていてもよいし、別体を結合したものであってもよい。
【0029】
本実施形態では、軸部56は、略円柱形状を有しており、軸部56の上端部56aから下端部56bまで一定の形状を有している。軸部56の形状は、特に制限されるものではなく、円柱形状に代えて、断面が楕円状の略楕円柱形状、断面が略四角形状の略四角柱形状、断面が略多角形状の略多角柱形状等であってもよい。また軸部56は、上端部56aから下端部56bまで一定の形状を有している必要は必ずしも無く、軸部56の下端部56bから上端部56aに向かって先細り形状となっていてもよいし、軸部56の上端部56aから下端部56bに向かって先細り形状となっていてもよい。
【0030】
キャップ部55は、
図6(b)に示すように、平面視において楕円形状を有しており、縦方向Xの長さH1の方が横方向Yの長さH3よりも長い。キャップ部55は、軸部56の両側から縦方向Xに延出する縦方向延出部55a,55bと、軸部56の両側から横方向Yに延出する横方向延出部55c,55dと有している。軸部56の両側から縦方向Xに延出する縦方向延出部55a,55bのそれぞれは、互いに線対称な形状を有している。軸部56の両側から横方向Yに延出する横方向延出部55c,55dのそれぞれは、互いに線対称な形状を有している。
【0031】
軸部56の上端部56aと下端部56bとの形状が異なる場合、縦方向延出部55a,55b及び横方向延出部55c,55dは、軸部56における少なくとも上端部56aからそれぞれの方向に延出していればよい。また、軸部56の両側から縦方向Xに延出する縦方向延出部55a,55bのそれぞれは、互いに線対称な形状を有していなくてもよい。また、軸部56の両側から横方向Yに延出する横方向延出部55c,55dのそれぞれは、互いに線対称な形状を有していなくてもよい。また、キャップ部55は、縦方向Xの長さH1の方が横方向Yの長さH3よりも短くてもよいし、縦方向Xの長さH1と横方向Yの長さH3とが同じであってもよい。
【0032】
キャップ部55における軸部56の上端部56aからの延出長さが長いほど、キャップ部55が、ホルダ側止着構造6のループ材に入り込んだ後にループ材と絡みやすくなり、係合突起54とループ材との係合力が高まる。おむつ10においては、着用したときに、吸収性パッド11が、鉛直方向下側にズレ落ちることを防ぐ観点から、縦方向Xにおいて、係合突起54とループ材との係合力が高いことが好ましい。一方、着用中のおむつ10において、吸収性パッド11を横方向Yにめくって、ホルダ1から吸収性パッド11を剥がしやすくする観点からは、横方向Yにおいて、係合突起54とループ材との係合力が弱いことが好ましい。
【0033】
本実施形態では、縦方向延出部55a,55bの延出長さH2が、横方向延出部55c,55dの延出長さH4よりも長い。こうすることにより、おむつ10の着用状態において、吸収性パッド11の縦方向X下側へのズレ落ちにくさと、吸収性パッド11を横方向Yにめくったときの該吸収性パッド11の剥がしやすさとを両立させやすくなる。なお、吸収性パッド11のズレ落ちにくさと、横方向Yにおける吸収性パッド11の剥がしやすさとを両立させるためには、縦方向延出部55a,55bの延出長さH2が、横方向延出部55c,55dの延出長さH4よりも長い必要は必ずしもない。縦方向延出部55a,55bの延出長さH2と、横方向延出部55c,55dの延出長さH4とは同じであってもよい。縦方向延出部55a,55bの延出長さH2が、横方向延出部55c,55dの延出長さH4よりも短くてもよい。吸収性パッド11のズレ落ちにくさと、横方向Yにおける吸収性パッド11の剥がしやすさとを両立させる観点からは、前記延出長さH2に対する前記延出長さH4の比H2/H4は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上である。前記比H2/H4の上限は、例えば10.0とすることができる。
【0034】
縦方向延出部55a,55bの延出長さH2は、おむつ1の着用時に、ホルダ1に止着された吸収性パッド11が、該吸収性パッド11が吸収した排泄物の重みで外れてしまうことを防止する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上である。また前記延出長さH2は、ホルダ側止着構造6とパッド側止着構造16との係合力が高くなり過ぎることを防き、ホルダ1から吸収性パッド11を取り外しやすくする観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは120μm以下である。これらの両立の観点から、前記延出長さH2は、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上150μm以下、更に好ましくは70μm以上120μm以下である。
【0035】
横方向延出部55c,55dの延出長さH4は、おむつ1の着用時に吸収性パッド11がホルダ1から自然に外れてしまうことを防止する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは35μm以上である。また前記延出長さH4は、ホルダ側止着構造6とパッド側止着構造16との係合力が高くなり過ぎることを防き、ホルダ1から吸収性パッド11を取り外しやすくする観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは120μm以下である。これらの両立の観点から、前記延出長さH4は、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上150μm以下、更に好ましくは35μm以上120μm以下である。
【0036】
ホルダ1の主たる特徴の1つとして、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率1.5倍の条件(以下「標準着用条件」ともいう。)下に4時間保持したときに応力が緩和する点が挙げられる。標準着用条件は、ホルダ1の着用状態を想定した条件である。ホルダ1が標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和するようになっていることの利点は、以下のとおりである。
【0037】
本実施形態のホルダ1は、上述のように、周方向CDの伸縮性を有しているので、ズレ落ちを防止することができる。具体的には、ホルダ1を着用したときに、該ホルダ1が周方向CDに収縮して着用者の身体を締め付けることにより、該ホルダ1がズレ落ちることが防止される。したがって、ホルダ1を着用している間中、該ホルダ1が着用者の身体を締め付ける場合、ホルダ1が着用者の身体を過度に締め付けることになり、ホルダ1の装着感が低下してしまう。この不都合は、ホルダ1を長時間着用する可能性があるセパレートタイプの吸収性物品において、特に顕著である。
ホルダ1は、標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和するようになっていることにより、該ホルダ1の着用中に応力が緩和する。ホルダ1の着用中に応力が緩和することによって、該ホルダ1が着用者の身体を過度に締め付けることを防止することができるので、該ホルダ1の装着感を向上させることができる。
このように、本実施形態のホルダ1は、ズレ落ちを防止できるとともに、装着感に優れる。
【0038】
ホルダ1は、該ホルダ1を標準着用条件下に4時間保持したときの応力緩和率(以下「標準条件下応力緩和率」ともいう。)R1が、該ホルダ1が着用者の身体を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは15%以上60%以下、より好ましくは20%以上50%以下、更に好ましくは30%以上40%以下である。
【0039】
ホルダ1の標準条件下応力緩和率R1は、以下の方法により測定することができる。
〔ホルダ1の標準条件下応力緩和率R1の測定方法〕
以下の方法により、標準条件下応力緩和試験前及び標準条件下応力緩和試験後それぞれのホルダ1を得た後、得られた各ホルダ1について引張試験を行う。
(1)標準条件下応力緩和試験前のホルダ1の作成方法
下記標準条件下応力緩和試験を行う前のホルダ1を、標準条件下応力緩和試験前のホルダ1とする。
(2)標準条件下応力緩和試験後の測定片の作成方法
下記標準条件下応力緩和試験を行った後のホルダ1を、標準条件下応力緩和試験後のホルダ1とする。
<標準条件下応力緩和試験>
ホルダ1の内寸が、該ホルダ1の自然状態における内寸に対して1.5倍となるように該ホルダ1を伸長させ、該ホルダ1を、温度40℃、相対湿度80%の条件下で、4時間保存する。ホルダ1の内寸は、該ホルダ1の周方向CDにおける、接合部S,S間の距離を意味する。ホルダ1の内寸が、ホルダ1の高さ方向HDにおいて一定ではない場合、ホルダ1の内寸を、該高さ方向HDにおいて10mm間隔で測定し、その平均値を内寸とする。
(3)引張試験
上記(1)及び(2)により得られた各ホルダ1について、引っ張り試験機を用いて引張試験を行う。具体的には、各ホルダ1を、非伸長且つ弛みの無い状態で、引っ張り試験機のチャックに固定する。このとき、ホルダ1における接合部S,Sをチャックで挟む。但し、接合部S,Sが無い場合、又は接合部S,Sが小さくて挟むことができない場合は、変形が十分に少ない金属棒をホルダ1における接合部S,Sに相当する箇所の内側(肌対向面側)に通し、金属棒をチャックで挟むことで代用してもよい。そして、チャック間距離を300mm/分の速度で拡大させる。チャック間距離を、引き伸ばす部分の初期長さの2.0倍まで引き伸ばした後、チャック間距離を300mm/分の速度で縮小させ、チャック間距離が、引き伸ばす部分の初期長さの1.5倍に達した時点の応力を測定する。なお、標準条件下応力緩和試験後の測定片は、応力緩和試験後、荷重を解放した自然状態に戻し、室温で1時間静置したのちに引張試験を行う。標準条件下応力緩和試験前の測定片の測定結果を試験前応力P0とし、標準条件下応力緩和試験後の測定片の測定結果を試験後応力P1とし、以下の式1により、標準条件下応力緩和率R1を算出する。
標準条件下応力緩和率R1=1-P1/P0・・・(式1)
【0040】
本実施形態のホルダ1は、着用者のウエストに配されるウエスト領域21と、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位(以下「腸骨部」ともいう。)に対応する腸骨領域23と、着用者の胴周りに配される胴周り領域25とを有する。ここでいう、腸骨稜及び上前腸骨棘は、解剖学の用語である。ウエスト領域21は、ホルダ1の高さ方向HDにおける最も上側に位置しており、ホルダ1の上端1aを含んでいる。
本実施形態では、ウエスト領域21は、高さ方向HDにおいて腸骨領域23よりも上側に位置しており、胴周り領域25は、高さ方向HDにおいて腸骨領域23よりも下側に位置している。
【0041】
ホルダ1は、ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21が、腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R23よりも、大きいことが好ましい。一般に、着用者のウエスト部の方が、着用者の腸骨部に比して、着用者の姿勢の変化に起因する周長の変動率が大きい。したがって、着用者のウエスト部の方が、着用者の腸骨部に比して、ホルダ1による過度な締め付けが生じる可能性が高い。ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21と、腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R23との大小関係を上述のようにすることによって、ウエスト部が、ホルダ1によって過度に締め付けられることを防ぐことができるので、ホルダ1の装着感を一層向上させることができる。
【0042】
腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R23に対する、ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21の比率R21/R23は、着用者のウエスト部がホルダ1によって過度に締め付けられることを効果的に防ぎ、ホルダ1の装着感をより一層向上させる観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは3.3以下、より好ましくは2.3以下、更に好ましくは1.6以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは1.1以上3.3以下、より好ましくは1.2以上2.3以下、更に好ましくは1.3以上1.6以下である。
【0043】
ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21は、ホルダ1が着用者の身体、特にウエスト部を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは20%以上50%以下、より好ましくは25%以上45%以下、更に好ましくは30%以上40%以下である。
【0044】
腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R23は、ホルダ1が着用者の身体、特に腸骨部を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは15%以上45%以下、より好ましくは20%以上40%以下、更に好ましくは25%以上35%以下である。
【0045】
ウエスト領域21及び腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R21,R23は、以下の方法により測定することができる。
〔ウエスト領域21及び腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R21,R23の測定方法〕
以下の方法により、ホルダ1の測定対象領域から、標準条件下応力緩和試験前及び標準条件下応力緩和試験後それぞれの測定片を得た後、得られた各測定片について引張試験を行う。
(1)標準条件下応力緩和試験前の測定片の作成方法
ホルダ1から測定対象の領域を切り出し、ホルダ1の周方向CDに相当する方向を長手方向、ホルダ1の高さ方向HDに相当する方向を幅方向とする、長手方向長さが150mm、幅方向長さが40mmの矩形形状の測定片を得る。
(2)標準条件下応力緩和試験後の測定片の作成方法
(2-1)印の付与
ホルダ1における測定対象の領域に、ホルダ1の周方向CDの寸法が150mm、ホルダ1の高さ方向HDの寸法が40mmである矩形形状に印をつける。その後、以下の標準条件下応力緩和試験を行う。
(2-2)標準条件下応力緩和試験
上述の〔ホルダ1の標準条件下応力緩和率R1の測定方法〕の<標準条件下応力緩和試験>と同様の方法で行う。
(2-3)測定片の取り出し
標準条件下応力緩和試験後のホルダ1から、前記印をつけた部分を切り出し、測定片とする。
(3)引張試験
上記(1)及び(2)により得られた各測定片について、引っ張り試験機を用いて引張試験を行う。具体的には、各測定片を、非伸長且つ弛みの無い状態で、引っ張り試験機のチャックに固定する。このとき、測定片の長手方向の両端部それぞれについて、該測定片の長手方向の端縁から25mmの部分をチャックで挟む。つまり、測定片の長手方向の長さが150mmの場合、チャック間距離は100mmとなる。そして、チャック間距離を300mm/分の速度で拡大させる。チャック間距離を、引き伸ばす部分の初期長さの2.0倍まで引き伸ばした後、チャック間距離を300mm/分の速度で縮小させ、チャック間距離が引き伸ばす部分の初期長さの1.5倍に達した時点の応力を測定する。なお、標準条件下応力緩和試験後の測定片は、標準条件下応力緩和試験後、荷重を解放した自然状態に戻し、室温で1時間静置したのちに引張試験を行う。標準条件下応力緩和試験前の測定片の測定結果を試験前応力Q0とし、標準条件下応力緩和試験後の測定片の測定結果を試験後応力Q1とし、以下の式2により、標準条件下応力緩和率R21,R23を算出する。
標準条件下応力緩和率R21,R23=1-Q1/Q0・・・(式2)
【0046】
本実施形態のホルダ1は、ホルダ側止着構造6が存在する領域(以下「止着構造存在領域」ともいう。)27を有する。
ホルダ1は、ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21の方が、止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27よりも大きいことが好ましい。おむつ10の着用状態、即ち、ホルダ1に吸収性パッド11が止着された状態において、吸収性パッド11が重力により高さ方向HD下向きに引っ張られるので、吸収性パッド11が止着されている止着構造存在領域27には、高さ方向HD下向きの力が加わりやすい。したがって、止着構造存在領域27は、ホルダ1がズレ落ちることを防ぐ観点から、応力緩和しにくいことが好ましい。ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21を、止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27よりも大きくすることによって、止着構造存在領域27が応力緩和しにくい一方、ウエスト領域21が応力緩和しやすくなるので、ズレ落ちを効果的に防止するとともに、装着感を一層向上させることができる。
【0047】
止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27に対する、ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21の比率R21/R27は、着用者のウエスト部がホルダ1によって過度に締め付けられることを効果的に防ぎ、ホルダ1の装着感をより一層向上させる観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは3.3以下、より好ましくは2.3以下、更に好ましくは1.6以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは1.1以上3.3以下、より好ましくは1.2以上2.3以下、更に好ましくは1.3以上1.6以下である。
【0048】
止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27は、ホルダ1が着用者の身体、特に腸骨部を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは15%以上45%以下、より好ましくは20%以上40%以下、更に好ましくは25%以上35%以下である。
止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27は、ウエスト領域21及び腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R21,R23と同様の方法により測定することができる。
【0049】
本実施形態では、止着構造存在領域27は、腸骨領域23と高さ方向HDの位置が一致している。具体的には、止着構造存在領域27の高さ方向HDの上端及び下端の位置は、腸骨領域23の高さ方向HDの上端及び下端の位置と一致している。
【0050】
ウエスト領域21は、ホルダ1を相対的に高い伸長倍率で伸長させたときの方が、ホルダ1を相対的に低い伸長倍率で伸長させたときに比して、応力緩和率が大きいことが好ましい。こうすることにより、着用者のウエスト部の周長が大きい程、ウエスト領域21の応力が緩和しやすくなるので、ホルダ1を着用したときに、ウエスト領域21の応力が、着用者のウエスト部の周長に応じたものになりやすく、装着感を一層向上させることができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、ウエスト領域21は、伸長倍率が1.7倍である高伸長倍率着用条件下で測定した応力緩和率R31が、伸長倍率が1.5倍である標準伸長倍率条件下で測定した応力緩和率R21よりも大きいことが好ましい。
【0051】
具体的には、ウエスト領域21は、標準伸長倍率条件下応力緩和率R21に対する高伸長倍率着用条件下応力緩和率R31の比R31/R21は、ウエスト領域21の応力が、着用者のウエスト部の周長に応じたものに一層なりやすくし、装着感をより一層向上させる観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.2以下、更に好ましくは1.7以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは1.1以上3.0以下、より好ましくは1.2以上2.2以下、更に好ましくは1.3以上1.7以下である。
【0052】
ウエスト領域21の高伸長倍率着用条件下応力緩和率R31は、着用者のウエスト部の周長が標準より大きめの人において、ホルダ1が着用者の身体、特にウエスト部を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは30%以上60%以下、より好ましくは35%以上55%以下、更に好ましくは40%以上50%以下である。
【0053】
腸骨領域23の高伸長倍率着用条件下応力緩和率R33は、着用者のウエスト部の周長が標準的な人において、ホルダ1が着用者の身体、特にウエスト部を過度に締め付けることを一層効果的に防止する観点から、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上であり、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは45%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは25%以上55%以下、より好ましくは30%以上50%以下、更に好ましくは35%以上45%以下である。
【0054】
ウエスト領域21の標準伸長倍率条件下応力緩和率R15は、上述した、ウエスト領域21の標準条件下応力緩和率R21の測定方法と同様の方法により測定することができる。ウエスト領域21及び腸骨領域23の高伸長倍率着用条件下応力緩和率R31,R33は、上述した、ウエスト領域21及び腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R21,R23の測定方法と、下記の点以外は同様にして測定することができる。
・上述した「(2-2)標準条件下応力緩和試験」において、上述の〔ホルダ1の標準条件下応力緩和率R1の測定方法〕の<標準条件下応力緩和試験>を行う際に、ホルダ1の伸長倍率を1.5倍から1.7倍に変更する。即ち、ホルダ1の内寸が、該ホルダ1の自然状態における内寸に対して1.7倍となるように該ホルダ1を伸長させる。
【0055】
本実施形態のホルダ1では、ウエスト領域21には、応力緩和部材よりも応力緩和しにくい難応力緩和部材が配されている。本実施形態では、難応力緩和部材は、弾性部材5である。
ウエスト領域21において、難応力緩和部材は、応力緩和部材よりも伸長率が高いことが好ましい。こうすることにより、応力緩和部材が緩和した後にも、難応力緩和部材の応力によりズレ落ちを防止することができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、応力緩和部材の伸長率T1に対する、難応力緩和部材の伸長率T2の比T2/T1は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上である。難応力緩和部材の伸長率と応力緩和部材の伸長率の差が大きい場合、ホルダ1の表面に大きな襞が生じて美観を損ねてしまう恐れがある。ホルダ1の表面に大きな襞が生じることを防ぎ、美観を維持する観点から、前記比T2/T1は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.4以下であり、これらを両立する観点から、前記比T2/T1は、好ましくは1.1以上2.0以下、より好ましくは1.2以上1.6以下、更に好ましくは1.3以上1.4以下である。
【0056】
応力緩和部材の伸長率T1は、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは150%以上、より好ましくは180%以上、更に好ましくは200%以上であり、応力緩和部材が変形しないようにする観点から、好ましくは290%以下、より好ましくは270%以下、更に好ましくは250%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは150%以上290%以下、より好ましくは180%以上270%以下、更に好ましくは200%以上250%以下である。
【0057】
難応力緩和部材の伸長率T2は、ホルダ1のズレ落ちを防止できる程度に該ホルダ1の収縮力が維持されるようにする観点から、好ましくは160%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは220%以上であり、難応力緩和部材が変形しないようにする観点から、好ましくは300%以下、より好ましくは280%以下、更に好ましくは260%以下であり、これらを両立する観点から、好ましくは160%以上300%以下、より好ましくは200%以上280%以下、更に好ましくは220%以上260%以下である。
【0058】
伸長率は、以下の方法により測定することができる。
<伸長率の測定方法>
ホルダ1の一方の接合部Sをクリップで鋏み、他方の接合部Sもクリップで挟んだ後、該他方の接合部を挟んだクリップに1500gの錘を吊り下げて、該他方の接合部側が鉛直方向下側を向くように該ホルダ1を吊り下げ、該ホルダ1が安定した状態で、鉛直方向に所定の間隔D(例えば10cm)を空けて2つの印をつける。このとき、ホルダ1の外面を構成する部材のみならず、応力緩和部材及び難応力緩和部材にも印をつける。錘を外してホルダ1を開放した後、自然状態での前記2つの印の間隔D1を測定して、印間の距離の比率からホルダ1の伸長率を求める。具体的には、自然状態での前記間隔D1に対する、ホルダ1を吊り下げた状態での前記間隔Dの比率D/D1を、ホルダ1の伸長率とする。その後、ホルダ1から、応力緩和部材と難応力緩和部材とを取り出し、それぞれの印間距離を測定して、それぞれの伸長率を算出する。具体的には、自然状態での応力緩和部材における前記2つの印の間隔D2に対する、ホルダ1を吊り下げた状態での前記間隔Dの比率D/D2を、応力緩和部材の伸長率とする。また自然状態での難応力緩和部材における前記2つの印の間隔D3に対する、ホルダ1を吊り下げた状態での前記間隔Dの比率D3/Dを、難応力緩和部材の伸長率とする。尚、応力緩和部材及び難応力緩和部材のいずれか一方の部材について、ホルダ1から取り出すことが困難な場合、ホルダ1から他方の部材を取り除いた状態でホルダの伸長率を測定し、測定された伸長率を、取り出さずにホルダに残った部材の伸長率としてもよい。具体的には、応力緩和部材をホルダから取り除くことが困難な場合は、難応力緩和部材のみをホルダから取り出した後に、ホルダの伸長率を測定し、この伸長率を応力緩和部材の伸長率とみなす。
【0059】
応力緩和部材及び難応力緩和部材について応力緩和し易さの大小は、以下の方法により測定した応力緩和率の大小を比較することにより判断することができ、応力緩和率の値が大きい程、応力緩和し易いことを意味する。
<応力緩和率の測定方法>
以下の方法により、応力緩和部材及び難応力緩和部材それぞれについて、応力緩和試験前及び応力緩和試験後それぞれの測定用サンプルを得た後、得られた各測定用サンプルについて引張試験を行う。
(1)応力緩和試験前の測定用サンプルの作成方法
ホルダ1から応力緩和部材及び難応力緩和部材を取り出し、取り出した応力緩和部材及び難応力緩和部材それぞれから測定用サンプルを得る。
応力緩和部材及び難応力緩和部材のいずれについても、シート状の場合、測定用サンプルの寸法は、ホルダ1の周方向CDに相当する方向の寸法を150mm、ホルダ1の高さ方向HDに相当する方向の寸法を、40mmとする。
応力緩和部材及び難応力緩和部材のいずれについても、ひも状の場合(糸状の場合)、測定用サンプルとしては1本の応力緩和部材及び難応力緩和部材を用い、測定用サンプルの寸法は、ホルダ1の周方向CDに相当する方向の寸法を150mmとする。
応力緩和部材又は難応力緩和部材から上述した寸法の測定用サンプルを得ることができない場合、できるだけ大きな寸法の測定用サンプルを得る。
(2)応力緩和試験後の測定用サンプルの作成方法
(2-1)印の付与
ホルダ1における応力緩和部材及び難応力緩和部材が配されている部分に、ホルダ1の周方向CDの寸法が150mm、ホルダ1の高さ方向HDの寸法が40mmである矩形形状に印をつける。その後、以下の応力緩和試験を行う。おむつに、上述した寸法の印をつけることができない場合、できるだけ大きな寸法の印をつける。
(2-2)応力緩和試験
上述の〔ホルダ1の標準条件下応力緩和率R1の測定方法〕の<標準条件下応力緩和試験>と同様の方法で行う。
(2-3)測定片の取り出し
応力緩和試験後のホルダ1から、前記印をつけた部分を切り出し、測定片とする。
(3)引張試験
上記(1)及び(2)により得られた各測定用サンプルについて、上記〔ウエスト領域21及び腸骨領域23の標準条件下応力緩和率R21,R23の測定方法〕の(3)引張試験同様にして引張試験を行い、応力緩和部材及び難応力緩和部材それぞれについて応力緩和率を算出する。
このようにして得られた応力緩和部材の応力緩和率と、難応力緩和部材の応力緩和率とを比較し、難応力緩和部材の応力緩和率が、応力緩和部材の応力緩和率より小さければ、難応力緩和部材の方が応力緩和部材よりも応力緩和しにくいと判定する。
【0060】
応力緩和部材としては、例えば伸縮性シートを用いることができる。伸縮性シートとしては、弾性フィラメントを含む不織布(以下、「特定伸縮性不織布」とも言う。)が挙げられる。ここで言う「弾性」とは、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質をいう。前記特定伸縮性不織布では、弾性フィラメントが、実質的に非伸長状態で、不織布に接合されていることが好ましい。前記不織布は非弾性繊維を含むものが好ましい。
【0061】
前記特定伸縮性不織布において、弾性フィラメントは、典型的には、該特定伸縮性不織布における該弾性フィラメントの延在方向の全長にわたって実質的に連続している。また、弾性フィラメントは弾性樹脂を含んでいる。
前記特定伸縮性不織布において、不織布は、弾性フィラメントの延びる方向と同方向に伸長可能になっている。ここで言う「伸長可能」とは、(イ)不織布の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)不織布の構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。前記特定伸縮性不織布において、不織布は、弾性フィラメントと接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメントと接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメントと接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。不織布を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。
【0062】
前記特定伸縮性不織布の好ましい一実施形態として、
図7に示すように、伸長性を有する2層の繊維層132,133間に、周方向CDに延びるように配列した伸長状態の複数の弾性フィラメント131が融着によって固定されている構成を有するものが挙げられる。斯かる好ましい実施形態において、複数の弾性フィラメント131は、互いに交差せずに一方向(例えば、高さ方向HDと直交する方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向と直交する方向に間欠配置されてもよく、その場合、該一方向が特定伸縮性不織布の伸縮方向となり得る。2層の繊維層132,133としては、例えば2枚の不織布を用いることができ、前記2枚の不織布は、互いに同種でも異種でもよい。ここで言う「同種」とは、対比する2枚の不織布どうしで、製造プロセス、構成繊維の種類、構成繊維の繊維径及び繊維長、当該不織布の厚み及び坪量がすべて同じであることを指す。対比する2枚の不織布どうしでこれらの要素の少なくとも一つが異なる場合、2枚の不織布は互いに異種である。
【0063】
本実施形態では、外層シート3及び内層シート4のいずれか一方又は両方が応力緩和部材であるところ、両シート3,4として使用可能な伸縮性不織布としては、各種公知のものを用いることができ、例えば、特開2008-179128号公報に記載の伸縮シート、特開2007-22066号公報に記載の伸縮シート、同公報に記載の伸縮性不織布の製造方法により製造される伸縮性不織布、特開平10-29259号公報に記載の積層シート等を用いることもできる。
【0064】
図1に示す実施形態では、外層シート3及び内層シート4のいずれか一方又は両方が応力緩和部材であるところ、これに代えて、
図8に示すように、ホルダ1が、外層シート3及び内層シート4に加えて伸縮性シート8を有し、該伸縮性シート8が応力緩和部材であってもよい。伸縮性シート8は、ホルダ1の高さ方向HDの全長に亘っていてもよいし、ホルダ1の高さ方向HDの一部にのみ存在していてもよい。
【0065】
おむつ10は、上述のように、ホルダ1と、吸収性パッド11とを備える。おむつ10においては、ホルダ1を標準着用条件下に4時間保持したときの該ホルダ1における止着構造存在領域27の応力K1が、ホルダ側止着構造6及びパッド側止着構造16を介してホルダ1に止着された吸収性パッド11を該ホルダ1から剥がすときの剥離力K2より大きいことが好ましい。前記応力K1が前記剥離力K2より大きいことにより、着用中のおむつ10において、吸収性パッド11を横方向Yにめくって、ホルダ1から吸収性パッド11を剥がしやすくすることができる。以下、この点について説明する。
【0066】
吸収性パッド11をホルダ1から剥がそうとして吸収性パッド11を横方向Yにめくるように引っ張ったときに、吸収性パッド11に追従してホルダ1も引っ張られる。このとき、ホルダ1における止着構造存在領域27の前記応力K1が、吸収性パッド11をホルダ1から剥がすときの前記剥離力K2よりも小さい場合、吸収性パッド11を横方向Yにめくるように引っ張ったときに、吸収性パッド11がホルダ1から剥離するよりも前に、ホルダ1が吸収性パッド11に追従して引っ張られて延びてしまう。そのため、ホルダ1を手で押さえる等してホルダ1が伸びないようにした上で、吸収性パッド11を剥がす必要があり、吸収性パッド11をホルダ1から剥がすのに手間がかかってしまう。
【0067】
これに対し、ホルダ1における止着構造存在領域27の前記応力K1が、吸収性パッド11をホルダ1から剥がすときの前記剥離力K2よりも大きい場合、ホルダ1が吸収性パッド11に追従して引っ張られる力よりも、ホルダ1が収縮する応力の方が大きくなる。したがって、吸収性パッド11を横方向Yにめくるように引っ張ったときに、ホルダ1が吸収性パッド11に追従して引っ張られて伸びるよりも前に、吸収性パッド11がホルダ1から剥離する。そのため、吸収性パッド11を引っ張るだけで、吸収性パッド11をホルダ1から容易に剥がすことができる。
【0068】
剥離力は、以下の方法によって測定することができる。
〔剥離力の測定方法〕
(1)剥離力測定用サンプルの作成
(1-1)ホルダ側サンプル
まず、ホルダ1を、剥離力の測定に用いるホルダ側止着構造6が存在しない部位にて、高さ方向HDに沿って切断し、これをホルダ側サンプル70とする。例えば、腹側部Fに存在するホルダ側止着構造6を剥離力の測定に用いる場合、ホルダ1の背側部Rを切断する。
そしてホルダ側サンプル70を、
図9(a)に示すように、該ホルダ1の周方向CDに伸長させた状態で、縦100mm、横100mmのホルダ固定板73にクリップ72等で固定する。
図9(a)は、ホルダ固定板73に固定したホルダ1を、高さ方向HDにおいて平面視した状態が示されている。ホルダ側サンプル70の伸長倍率は任意に設定することができる。例えば、ホルダ1の伸長倍率を1.5倍とする場合、ホルダ側サンプル70における、剥離力の測定に用いるホルダ側止着構造6が存在する側の面に、周方向CDに沿って66mm間隔で2箇所に印をつける。そして、前記印間の距離が100mmになるようにホルダ側サンプル70を伸長状態にし、その状態のままホルダ側サンプル70をホルダ固定板73に固定する。
【0069】
(1-2)パッド側サンプル
まず、吸収性パッド11が縦方向Xに収縮しないようにするために、吸収性パッド11の防漏カフ15を弾性部材151ごと切断する。吸収性パッド11がレッグカフを有する場合、レッグカフも切断する。
そして、吸収性パッド11の縦方向Xの全長を4等分したときの両端部のうち、パッド側止着構造16が存在する側の端部を切り出す。換言すれば、吸収性パッド11の縦方向Xの全長を4等分する線のうち、最もパッド側止着構造16に近い線に沿って吸収性パッド11を切断する。このようにして得られた吸収性パッド11の切断片における切断面をガムテープ82等で封止し、当該切断面から吸収体14の構成材料が漏れ出ないようにする(
図9(b)参照)。
次に、切断面を封止した吸収性パッド11の切断片に、ガムテープ等で把持部81を設ける(
図9(b)参照)。把持部81は、前記切断片の横方向Yの端部であり、且つ縦方向Xにおいてパッド側止着構造16と重なる位置に設ける。
図9(b)においては、把持部81は、吸収性パッド11の切断面における肌対向面及び非肌対向面の両側からガムテープを貼り合わせることによって形成されている。
このようにして、切断面を封止され且つ把持部81が設けられた吸収性パッド11の切断片をパッド側サンプル80とする(
図9(b)参照)。
【0070】
(2)剥離力の測定
(2-1)パッド側サンプルのホルダ側サンプルへの止着
まず、ホルダ側サンプル70におけるホルダ側止着構造6側の面を上側に向けた状態で、平な面に載置する。次に、パッド側サンプル80におけるパッド側止着構造16側の面をホルダ側サンプル70側に向けた状態で、ホルダ側止着構造6と、パッド側止着構造16とが重なるように、パッド側サンプル80をホルダ側サンプル70に重ねる(
図9(c)参照)。そして、パッド側止着構造16の上で重さ1kgのローラー83を300mm/minの速度で1往復させ(
図9(c)参照)、パッド側サンプル80をホルダ側サンプル70に止着させる。このとき、ローラー83によって押圧されたパッド側止着構造16の縦方向Xの長さを測定幅L1とする。例えば、パッド側止着構造16が縦方向Xに離間して複数配されており、複数のパッド側止着構造16をローラー83によって押圧する場合、押圧された複数のパッド側止着構造16の縦方向Xの長さの合計値を測定幅L1とする。
このようにして得られた、パッド側サンプル80とホルダ側サンプル70とが結合したものを、測定用サンプルとする。
【0071】
(2―2)引張試験機による剥離
パッド側サンプル80をホルダ側サンプル70に止着させ、測定用サンプルを得た後、測定用サンプルにおけるホルダ側サンプル70を略T字状のT字板84に固定する。以下、ホルダ側サンプル70を板84に固定する方法について詳述する。T字板84は、
図10(a)及び(b)に示すように、平板部84aと、該平板部84aから、該平板部84aに直交するように延びる把持部84bとを有する。測定用サンプルにおけるホルダ側サンプル70側を平板部84a側に向けた状態で、平板部84a上に測定用サンプルを載置する。そして、
図10(a)及び(b)に示すように、平板部84aと、測定用サンプルにおけるホルダ側サンプル70とをクリップ72等によって固定する。
【0072】
次に、
図10(c)に示すように、測定サンプルにおけるパッド側サンプル80の把持部81の端部と、T字板84の把持部84bとを、それぞれ、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGX-V)のチャック90,91にて挟む。このとき、パッド側止着構造16及びホルダ側止着構造6の境界面と、上部チャック90との間の距離Lは、150mmとする。そして、下部チャック91の位置を固定したまま、上部チャック90を150mm/minの速度で上昇させ、パッド側サンプル80をホルダ側サンプル70から剥がす。このとき、上部チャック90の上昇、即ち引張距離に伴って変化する引張荷重を測定する。伸長状態のホルダ側サンプル70をホルダ固定板73に固定してから、引張試験機によって引張を開始するまでの時間は5分以内であることが好ましい。こうすることで、ホルダ側サンプル70が応力緩和し、測定される剥離力に影響が生じることを防ぐことができる。
【0073】
そして、上部チャック90の移動距離を横軸、引張荷重を縦軸としてプロットしたグラフを得る。このグラフの一例を
図11に示す。得られたグラフから、引張開始時からチャックの移動距離が40mmとなる時点までの積分平均値を算出する。算出された積分平均値を測定幅L1によって除した値を、剥離力とする。
【0074】
ホルダ1の止着構造存在領域27の前記応力K1の測定は、上述した、止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27の測定方法と同様の方法によって測定することができる。前記応力K1と前記剥離力K2との大小関係を比較する際、及び前記比K1/K2を算出する際には、前記応力K1及び前記剥離力K2として同じ単位幅あたりの値に換算した値を用いることが好ましい。単位幅は縦方向Xの長さであり、例えば30mmとすることができる。
【0075】
吸収性パッド11をホルダ1から容易に剥がすことができるという効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、前記剥離力K2に対する前記応力K1の比K1/K2は、好ましくは1.0超、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上である。また、前記比K1/K2を大きくしすぎると、ホルダ1における止着構造存在領域27の応力K1が相対的に大きくなりすぎておむつ10の装着感を損なわれたり、剥離力K1が相対的に小さくなりすぎておむつ10の着用中に吸収性パッド11が自然に剥がれてしまったりする。おむつ10の装着感を適度なものとすることと、吸収性パッド11とホルダ1との係合力を適度なものとすることとを両立する観点から、前記比K1/K2は、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
これらを両立する観点から、前記比K1/K2は、好ましくは1.0超10以下、より好ましくは1.1以上6以下、更に好ましくは1.2以上4以下である。
【0076】
前記応力K1は、ホルダ1の装着時のズレ落ちを防止する観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上である。また前記応力K1は、ホルダ1が着用者の身体を締め付け過ぎて装着感を損ねることを防ぐ観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。これらの両立する観点から、前記応力K1は、好ましくは0.8以上3.0以下、より好ましくは1.0以上2.5以下、更に好ましくは1.2以上2.0以下である。
【0077】
前記剥離力K2は、おむつ10を着用中の着用者の動きによって吸収性パッド11が自然に剥がれることを防ぐ観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上である。また前記剥離力K2は、ホルダ1から吸収性パッド11を剥がしにくくなることを防止する観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。これらの両立の観点から、前記剥離力K2は、好ましくは0.4以上3.0以下、より好ましくは0.5以上2.5以下、更に好ましくは0.6以上2.0以下である。
【0078】
次に、ホルダ1の材料について説明する。
外層シート3及び内層シート4としては、それぞれ、各種製法による不織布、織布、樹脂製フィルムなどを用いることができる。各シート3,4として使用可能な不織布の具体例として、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布が挙げられ、単層構造でもよく、1種又は2種以上の不織布を積層した積層構造でもよい。
両シート3,4は、互いに同種でもよく、異種でもよい。ここでいう「同種」とは、対比するシートどうしで、製造プロセス、構成繊維の種類、構成繊維の繊維径及び長さ、繊維シートの厚み及び坪量がすべて同じである場合を意味する。これらのうちの1つでも異なる場合、その対比するシートどうしは互いに「異種」である。
【0079】
難応力緩和部材としては、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を糸状(糸ゴム等)又は紐状(平ゴム等)に形成したもの等を好ましく用いることができる。これらの中でも、応力緩和しにくい観点から、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴムが特に好ましい。難応力緩和部材の断面は矩形、正方形、円形、楕円形、多角形状等であってもよい。
【0080】
本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明のホルダは、使用時に着用者の腰周りに環状に装着されるものであればよく、使用時以外は環状でなくてもよい。例えば、ホルダ本体部2が一方向に長い帯状をなし、そのホルダ本体部2の長手方向の一端部と他端部とが着脱自在に結合可能になされており、未使用時は帯状、使用時(装着時)に、ホルダ本体部2の長手方向の一端部と他端部とを結合させて該ホルダ本体部2を環状にするようになされていてもよい。あるいは、ホルダ本体部2が周方向CDに複数の部材(例えば、腹側部Fに対応する部材と背側部Rに対応する部材)に分割され、且つそれら複数の部材どうしが一方向に着脱自在に連結可能になされており、使用時(装着時)に、それら複数の部材どうしを結合させて環状のホルダ本体部2を形成するようになされていてもよい。
【0081】
前記実施形態では、ホルダ1(ホルダ本体部2)は最大伸長状態の平面視において長方形形状をなしていたが、本発明では、ホルダの平面視形状は特に制限されない。例えば、最大伸長状態のホルダ1の平面視において、上端1a及び/又は下端1bは、高さ方向HDに対して直交せずに交差する部分を有していてもよい。より具体的には例えば、最大伸長状態のホルダ1の平面視において、下端1bは、その全体又は一部(例えば横方向Yの中央部)が、上端1a側に向かって凸の凸状をなしていてもよい。
【0082】
前記実施形態では、ホルダ1の腹側部Fと背側部Rとは、平面視において互いに同形状・同寸法であったが、本発明では、互いに形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。具体的には例えば、背側部Rの下端1bが、腹側部Fの下端1bよりも下方に(ホルダ側止着構造6から遠くに)位置していてもよい。
【0083】
前記実施形態では、外層シート3及び内層シート4は何れも単層構造であったが、本発明では、両シート3,4の一方又は両方が積層構造であってもよい。例えば、外層シート3は、横方向Yに伸縮性を有するシートを含む2枚以上のシートの積層構造からなり、内層シート4は、非伸縮性シートからなる単層構造とすることができる。
前記実施形態では、外層シート3が折り返されて折り返し部30が形成されていたが、本発明では、外層シート3は折り返されていなくてもよい。
【0084】
前記実施形態では、ホルダ1は、ホルダ本体部2を構成するシート状部材として外層シート3及び内層シート4を含んでいたが、本発明では、両シート3,4以外の他のシート状部材を含んでいてもよい。具体的には例えば、ホルダ1(ホルダ本体部2)は、両シート3,4に加えて更に、ホルダ1の肌対向面(内面)における着用者のウエスト部に対応する領域(例えば、折り返し部30の配置領域及びその近傍)に配置される機能性シートを含んでいてもよい。前記機能性シートは、例えば、吸汗性、吸湿性、抗菌性、消臭性、スキンケア性等の諸機能のうちの少なくとも1つを有する。
【0085】
前記実施形態では、ホルダ側止着構造6は、ホルダ本体部2の非肌対向面(外面)に設けられていたが、本発明では、ホルダ本体部2の肌対向面(内面)に設けられていてもよく、その場合は例えば、内層シート4の肌対向面及び/又は外層シート3の折り返し部30の肌対向面にホルダ側止着構造6を固定することができる。ホルダ側止着構造6がホルダ1の肌対向面に設けられている場合、該ホルダ1と併用されておむつ10を構成する吸収性パッド11では、ホルダ側止着構造6が止着されるパッド側止着構造16は、吸収性パッド11の縦方向Xの両端部それぞれの非肌対向面(外面)に配置される。
【0086】
前記実施形態では、ホルダ側止着構造6が機械的面ファスナーのメス部材、パッド側止着構造16が機械的面ファスナーのオス部材であったが、本発明ではこれとは逆に、ホルダ側止着構造6が機械的面ファスナーのオス部材、パッド側止着構造16が機械的面ファスナーのメス部材でもよい。
【0087】
前記実施形態では、
図3に示すように、ウエスト領域21と腸骨領域23と胴回り領域25とで、弾性部材5の太さが異なっているが、これに代えて、ウエスト領域21と腸骨領域23と胴回り領域25とで、弾性部材5の太さが同じであってもよい。
【0088】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
着用者の腰周りに装着されるとともに、吸収性パッドを着用者に装着した状態に保持する環状のホルダであって、
着用者の身長方向に沿う高さ方向及び胴回り方向に沿う周方向を有し、
前記周方向に伸縮性を付与する構成部材として応力緩和部材を含んでおり、
着用状態を想定した、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率1.5倍の標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和する、ホルダ。
【0089】
<2>
前記ホルダは、着用者のウエストに配されるウエスト領域と、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に対応する腸骨領域とを有しており、
前記応力緩和部材は、少なくとも前記ウエスト領域に配されており、
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が、前記腸骨領域の応力緩和率よりも大きい、前記<1>に記載のホルダ。
<3>
前記ホルダは、前記吸収性パッドの端部域を脱着可能に止着可能なホルダ側止着構造を有しており、
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、着用者のウエストに配されるウエスト領域の応力緩和率が、前記ホルダ側止着構造が存在する止着構造存在領域の応力緩和率よりも大きい、前記<1>又は前記<2>に記載のホルダ。
<4>
前記ウエスト領域は、温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率が1.7倍である高伸長倍率条件下で測定した応力緩和率が、前記標準着用条件下で測定した応力緩和率よりも大きい、前記<2>又は前記<3>に記載のホルダ。
【0090】
<5>
前記ウエスト領域には、前記応力緩和部材よりも応力緩和しにくい難応力緩和部材が配されており、
前記ウエスト領域において、前記難応力緩和部材は、前記応力緩和部材よりも伸長率が高い、前記<4>に記載のホルダ。
<6>
前記応力緩和部材の伸長率に対する、前記難応力緩和部材の伸長率の比は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上である、前記<5>に記載のホルダ。
<7>
前記応力緩和部材の伸長率に対する、前記難応力緩和部材の伸長率の比は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.4以下である、前記<5>又は前記<6>に記載のホルダ。
<8>
前記応力緩和部材の伸長率に対する、前記難応力緩和部材の伸長率の比T2/T1は、好ましくは1.1以上2.0以下、より好ましくは1.2以上1.6以下、更に好ましくは1.3以上1.4以下である、前記<5>~前記<7>のいずれか一に記載のホルダ。
<9>
前記難応力緩和部材は、弾性部材である、前記<5>~前記<8>のいずれか一に記載のホルダ。
<10>
前記難応力緩和部材は、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴムである、前記<5>~前記<9>のいずれか一に記載のホルダ。
<11>
前記難応力緩和部材は、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を糸状又は紐状に形成したものである、前記<5>~前記<10>のいずれか一に記載のホルダ。
<12>
前記標準着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が20%以上である、前記<2>~前記<11>のいずれか一に記載のホルダ。
<13>
温度40℃、相対湿度80%、伸長倍率が1.7倍である高伸長倍率着用条件下に4時間保持したときに、前記ウエスト領域の応力緩和率が30%以上である、前記<2>~前記<12>のいずれか一に記載のホルダ。
<14>
前記応力緩和部材が、伸長性を有する2層の繊維層間に、前記周方向に延びるように配列した複数の弾性フィラメントが融着によって固定されている伸縮性シートである、前記<1>~前記<13>のいずれか一に記載のホルダ。
<15>
前記<1>~前記<14>のいずれか一に記載のホルダと、前記ホルダに装着可能な吸収性パッドを備える吸収性物品であって、
前記吸収性パッドは、該吸収性パッドの長手方向における端部域に、前記ホルダ側止着構造に脱着可能に止着可能なパッド止着構造を有しており、
前記ホルダを前記標準着用条件下に4時間保持したときの前記ホルダにおける前記ホルダ側止着構造が存在する止着構造存在領域の応力が、前記ホルダ側止着構造及び前記パッド側止着構造を介して前記ホルダに止着された前記吸収性パッドを該ホルダから剥がすときの剥離力より大きい、吸収性物品。
<16>
前記ホルダ側止着構造は、パイル状の突起からなるループ材が一面に配置された、機械的面ファスナーのメス部材であり、
前記パッド側止着構造は、基材の表面に多数のフック部材が配置された、機械的面ファスナーのオス部材であり、
前記フック部材は、シート状のベースシートと、該ベースシートの表面から起立する多数の係合突起とからなり、
前記吸収性パッドの縦方向において、前記係合突起と前記ループ材との係合力が高く、
前記吸収性パッドの横方向において、前記係合突起と前記ループ材との係合力が弱い、
前記<15>に記載の吸収性物品。
<17>
前記パッド側止着構造は、パイル状の突起からなるループ材が一面に配置された、機械的面ファスナーのメス部材であり、
前記ホルダ側止着構造は、基材の表面に多数のフック部材が配置された、機械的面ファスナーのオス部材であり、
前記フック部材は、シート状のベースシートと、該ベースシートの表面から起立する多数の係合突起とからなり、
前記吸収性パッドの縦方向において、前記係合突起と前記ループ材との係合力が高く、
前記吸収性パッドの横方向において、前記係合突起と前記ループ材との係合力が弱い、
前記<15>に記載の吸収性物品。
<18>
前記係合突起は、キャップ部と、前記パッド側止着構造の基面及びキャップ部の間に位置する軸部とを有しており、
前記キャップ部は、平面視において楕円形状を有しており、縦方向の長さの方が横方向の長さよりも長い、前記<16>又は<17>に記載の吸収性物品。
【実施例0091】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0092】
(実施例1)
〔ホルダ〕
図1に示すホルダ1と同様の構成を有するホルダを製造し、実施例1のホルダとした。ホルダ1の外層シート3及び内層シート4としては、特定伸縮性不織布を用いた。弾性部材5としては、糸ゴムを用いた。ホルダ側止着構造6としては、機械的面ファスナーのメス部材(エアスルー不織布)を用いた。ホルダ側止着構造6は、高さ方向HDの長さが60mm、周方向CDの長さが150mmであった。
ホルダ1は、後述する応力緩和後の応力の測定に用いるホルダと、剥離力の測定に用いるホルダとを、それぞれ用意した。
〔吸収性パッド〕
図4に示す吸収性パッド11と同様の構成を有する吸収性パッドを製造し、実施例1の吸収性パッドとした。パッド側止着構造16としては、機械的面ファスナーのオス部材(スリーエム株式会社製、商品名「1600PPI」)を用いた。パッド側止着構造16は、縦方向Xの長さが25mm、横方向Yの長さが150mmであった。オス部材のフック部材52の各部の寸法は、表1に示した。
【0093】
(実施例2)
〔ホルダ〕
実施例1と同様の構成を有するホルダを、実施例2のホルダとした。
〔吸収性パッド〕
フック部材の各部の寸法を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の構成を有する吸収性パッドを、実施例2の吸収性パッドとした。
【0094】
(実施例3)
〔ホルダ〕
実施例1と同様の構成を有するホルダを、実施例3のホルダとした。
〔吸収性パッド〕
実施例1において、パッド側止着構造16におけるフック部材52のキャップ部55を、横方向Yにおける一方側にのみ横方向延出部55dを有するものに変更した。またフック部材52の各部の寸法を表1に示すとおりに変更した。上記以外は、実施例1と同様の構成を有する吸収性パッドを実施例3の吸収性パッドとした。
【0095】
〔止着構造存在領域の応力の測定〕
実施例1~3について、ホルダにおける止着構造存在領域の応力を測定した。止着構造存在領域の応力の測定は、標準条件下応力緩和試験前のホルダ、及び標準条件下応力緩和試験後のホルダのそれぞれについて行った。また、止着構造存在領域の応力の測定は、上述した、止着構造存在領域27の標準条件下応力緩和率R27の測定方法と同様の方法によって測定した。測定された応力を、単位幅(30mm)当たりの応力に換算した。その結果を表1に示した。
【0096】
〔剥離力の測定〕
また、実施例1~3について、ホルダ側止着構造及びパッド側止着構造を介してホルダに止着された吸収性パッドを該ホルダから剥がすときの剥離力を測定した。剥離力の測定は、上述した<剥離力の測定方法>と同様の方法によって測定した。また剥離力の測定には、上述した〔止着構造存在領域の応力の測定〕に用いたホルダとは別のホルダを用いた。測定された剥離力を、単位幅(30mm)当たりの剥離力に換算した。剥離力の測定結果を表1に示した。
【0097】
〔吸収性パッドの横方向の剥がし易さの評価〕
また実施例1~3について、以下のようにして、吸収性パッドの剥がし易さを評価した。
まず下半身人体モデルにホルダを装着し、該ホルダに吸収性パッドを取り付けた。その後、評価者が吸収性パッドをホルダから剥がし、以下の基準によって剥がし易さを評価した。その結果を表1に示す。
◎:片手でも容易に剥がすことができる。
〇:ホルダが延びないように手を添えれば容易に剥がすことができる。
×:ホルダが延びてしまい、剥がしにくい。
【0098】
〔剪断力の測定〕
また、実施例1~3について、以下の方法により、剪断力を測定した。
【0099】
<剪断力の測定方法>
(1)剪断力測定用サンプルの作成
上述した〔剥離力の測定方法〕の「1)剥離力測定用サンプルの作成」の「(1-1)ホルダ側サンプル」と同様の方法により、ホルダ固定板73に固定されたホルダ側サンプル70を作成した。
また、把持部81を設けなかった以外は、上述した〔剥離力の測定方法〕の「1)剥離力測定用サンプルの作成」の「(1-2)パッド側サンプル」と同様の方法により、パッド側サンプル80を作成した。
【0100】
(2)剪断力の測定
上述した〔剥離力の測定方法〕の「(2)剥離力の測定」の「(2-1)パッド側サンプルのホルダ側サンプルへの止着」と同様の方法により、パッド側サンプル80とホルダ側サンプル70とが結合した測定用サンプルを作成した。
次に、
図12(a)及び(b)に示すように、測定用サンプルにおける、ホルダ側サンプル70の上端部と、パッド側サンプル80の下端部とを、それぞれ、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGX-V)のチャック90,91にて挟んだ。このとき、ホルダ側サンプル70の上端部が鉛直方向上側、パッド側サンプルの下端部が鉛直方向下側に位置するようにした。また測定用サンプルが弛まない程度に張力を付与した。な、
図12(a)及び(b)では、ホルダ固定板73やクリップ72等の図示を省略している。
そして、下部チャック91の位置を固定したまま、上部チャック90を150mm/minの速度で上昇させた。そして、上部チャック90の上昇、即ち引張距離に伴って変化する引張荷重を測定した。伸長状態のホルダ側サンプル70をホルダ固定板73に固定してから、引張試験機によって引張を開始するまでの時間は5分以内であった。
そして、ホルダ側サンプル70がパッド側サンプル80から剥がれるまで引張荷重の最大値を剪断力をとした。
剪断力を測定した結果を表1に示す。
【0101】
〔ホルダのズレ落ちやすさの評価〕
また実施例1~3について、以下のようにして、ホルダのズレ落ちやすさを評価した。
まず下半身人体モデルにホルダを装着し、該ホルダに吸収性パッドを取り付けた。そして、下半身人体モデルにおける臍に相当する位置にシールを張り、当該シールの下端からホルダの上端までの距離W0を測定した。
その後、下半身人体モデルの脚を上げ下げする動作を繰り返した。具体的には、まず、下半身人体モデルの上下方向と、該下半身人体モデルの両脚とが平行となる状態とした。この状態から、下半身人体モデルの両脚を前側に上げて、下半身人体モデルの上下方向と、該下半身人体モデルの両脚それぞれとがなす角度が30°となるようにした。次に、下半身人体モデルの両脚を下ろし、該下半身人体モデルの両脚とが平行となる状態に戻した。このように脚を上げ下げする操作を、1分間の間に15回行った。
上記の操作を行った後、シールの下端からホルダ上端までの距離W1を測定した。上記の操作後の前記距離W1から、上記の捜査前の前記W0を引いた値をホルダのズレ量とした。ズレ量を以下の基準により評価した。その結果を表1に示す。
・非常にズレ落ちにくい:ズレ量が0cm~2cm
・ズレ落ちにくい:ズレ量が2cm~3cm
・ズレ落ちやすい:ズレ量が3cm以上
【0102】
〔吸収性パッドの縦方向の剥がれ易さの評価〕
また実施例1~3について、以下のようにして、吸収性パッドの縦方向の剥がれにくさを評価した。
上述の〔ホルダのズレ落ちやすさの評価〕と同様にして、吸収性パッドを取り付けたホルダを装着した下半身人体モデルにおいて、脚を上げ下げする操作を行った。脚を上げ下げする操作は、1分間の間に15回行った。
上記の操作を行った後、吸収性パッドがホルダから剥がれているか否かを目視により確認した。吸収性パッドの全部又は一部が剥がれていれば「剥がれやすい」と評価し、吸収性パッドが剥がれている箇所がなければ「剥がれにくい」と評価した。
その結果を表1に示す。
【0103】
<結果>
表1に示すとおり、実施例1~3のホルダはいずれも、標準条件下応力緩和試験前の応力よりも、標準条件下応力緩和試験後の応力の方が小さくなっており、標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和している。標準着用条件下に4時間保持したときに応力が緩和している実施例1~3のホルダは、ズレ落ちにくくなっている。
【0104】
前記応力K1の方が前記剥離力K2よりも小さい実施例3は、吸収性パッドの横方向の剥がし易さが「×」であった。これに対し、前記応力K1の方が前記剥離力K2よりも大きい実施例1及び2は、吸収性パッドの横方向の剥がし易さが「◎」又は「〇」であった。したがって、前記応力K1の方を前記剥離力K2よりも大きくすることによって、吸収性パッドをホルダから横方向に剥がし易くすることができることが分かる。
【0105】
具体的には、また実施例1~3はいずれも前記応力K1が大きく、収縮する力が大きいので、吸収性パッドをホルダから剥がそうとして吸収性パッドを引っ張ったときにも、ホルダが着用者の身体にフィットした状態が維持されやすい。そのため、実施例1~3はいずれも吸収性パッドをホルダから剥がそうとしたときに、吸収性パッドに追従してホルダが延びにくくなっている。
実施例1及び2は実施例3よりも前記剥離力K2が小さいので、相対的に小さい力で吸収性パッドをホルダから剥がすことができる。そのため、実施例1及び2は実施例3よりも容易に、吸収性パッドをホルダから剥がすことができた。
【0106】
吸収性パッドの横方向の剥がし易さは、表1に示すように、実施例1の方が実施例2よりも優れている。実施例1と実施例2とは、フック部材のキャップ部の寸法が異なっている。具体的には、実施例1の方が、実施例2よりも横方向延出部の長さH4が短い。したがって、実施例1の方が、実施例2よりも、横方向におけるフック部材とループ材との係合力が弱くなっている。そのため、実施例1の方が実施例2よりも、吸収性パッドを横方向に一層剥がし易くなっていると考えられる。
【0107】
また実施例3は、表1に示すとおり、吸収性パッドが縦方向に剥がれ易い。これは、実施例3は、フック部材のキャップ部が縦方向延出を有しておらず、フック部材とループ材との縦方向の係合力が弱いことに起因すると考えられる。これに対し、実施例1及び2は、フック部材のキャップ部が縦方向延出部を有しており、吸収性パッドが縦方向に剥がれにくくなっている。
【0108】