(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091554
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240627BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240627BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20240627BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240627BHJP
F21V 13/12 20060101ALI20240627BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240627BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20240627BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240627BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/58
H01S5/0239
F21S2/00 340
F21V13/12 300
F21V9/30
F21V5/02 150
F21V5/02 400
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214160
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022205940
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山路 知明
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
(72)【発明者】
【氏名】立花 佳織
(72)【発明者】
【氏名】眞木 紀子
(72)【発明者】
【氏名】吉荒 就斗
【テーマコード(参考)】
5F142
5F173
【Fターム(参考)】
5F142AA14
5F142CE17
5F142CE32
5F142DA14
5F142DB17
5F142DB18
5F142GA29
5F173MF03
5F173MF28
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】指向性の強い光束が得られる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、光源と、受光面及び光出射面を有しかつ、受光面からの入射光をポラリトン成分光とする誘電体材料及び受光面からの入射光を双極子成分光とする蛍光材料を含み、ポラリトン成分光及び双極子成分光を光出射面から出射する薄膜状の波長変換体と、波長変換体の光出射面上に突出して光出射面に沿って配列されかつ、各々が柱状又は上方に窄んだ錐台状の側面を備える複数の構造物を有する透光体と、を有し、複数の構造物の各々がポラリトン成分光及び双極子成分光を出射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源に面して配置された薄膜状の波長変換体と、
前記波長変換体に面して配置された透光体と、を備え、
前記波長変換体は、前記光源からの一次光を受ける前記光源に向いた受光面、当該一次光からポラリトン成分光を生成する誘電体材料及び当該一次光から双極子成分光を生成する蛍光材料、並びに、前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を放出する前記光源側とは反対側の光出射面を有し、
前記透光体は、各々が前記光出射面から離れる方向に向いて突出して前記光出射面に沿って配列され、かつ、各々が柱状又は上方に窄んだ錐台状の側面及び該側面に交わる頂面を有する複数の構造物を有し、
前記複数の構造物の各々は、前記光出射面からの前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を受け、前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を前記側面で全反射させて発生させたエバネッセント光を前記複数の構造物の各々の前記頂面で結合させ、放出させることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の構造物の各々の前記側面が前記波長変換体の前記光出射面に対して40~90度の角度で傾斜して、前記側面が前記頂面に対して鈍角で交わり、前記波長変換体の前記光出射面から前記頂面までの高さが250~2000nmであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記複数の構造物の各々の前記頂面の前記波長変換体の前記光出射面に平行な幅が300~2000nmであることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の構造物は、前記波長変換体の前記光出射面上に周期的に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記透光体は、前記複数の構造物と前記波長変換体の間に挟まれて設けられかつ300nm以下の厚さを有する透光支持層を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記透光体を形成する透光材料の屈折率は、波長550nmの光に対して1.30~2.50の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記透光体を形成する材料が有機化合物樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記透光体を形成する材料が無機透明誘電体又はセラミックスであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記無機透明誘電体はガラス又はサファイアであることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記波長変換体は、500nm~50μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記波長変換体は、前記受光面に接して支持する透光材部を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
前記光源は、380nm~490nmの範囲にピーク波長を有する発光を生成する半導体発光素子であることを特徴とする請求項1項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記光源は、各々が前記複数の構造物のそれぞれ又はグループ毎へ向けて前記入射光を出射する複数の発光素子のアレイからなることを特徴とする請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光素子の各々は、面発光部を有することを特徴とする請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記発光素子の各々は、発光ダイオード又はレーザ光を生成する半導体レーザであることを特徴とする請求項13に記載の発光装置。
【請求項16】
前記光源は、380~490nmにピーク波長を有する発光スペクトルを有し、前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光の強度割合が1:1~1:3であることを特徴とする請求項12に記載の発光装置。
【請求項17】
前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光は、合わせて380~780nmの中に2つ以上のピーク波長を有する発光スペクトルを有することを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記ポラリトン成分光はピーク波長λ1が380~490nm内にある発光スペクトルを有し、前記双極子成分光はピーク波長λ2が490~780nm内にある発光スペクトルを有することを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項19】
前記ピーク波長λ1と前記ピーク波長λ2は、50nm以上離れていることを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項20】
前記誘電体材料は酸化アルミニウムであり、前記蛍光材料はセリウムとイットリウムとアルミニウムを含みガーネット結晶構造を有する酸化物であることを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項21】
前記波長変換体と前記透光体の間には、上面視において前記複数の構造物の前記頂面のそれぞれと重なるように配置された複数の開口部を有する遮光層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項22】
前記遮光層は、金属ミラー又は誘電体多層膜ミラーからなることを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項23】
前記遮光層は、5nm以上5μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項24】
前記遮光層の前記複数の開口部の各々は、上面視において前記複数の構造物の底面の外縁に重なるか、または、それよりも内側に形成されていることを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項25】
前記遮光層の前記複数の開口部の各々は、上面視において前記複数の構造物の前記頂面の外縁に重なるか、または、それよりも内側に形成されていることを特徴とする請求項24に記載の発光装置。
【請求項26】
前記波長変換体は、前記遮光層の前記複数の開口部の各々の内部にのみ配置されることを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項27】
前記透光支持層は、内部に周期的又はランダムに配置された多数の微小空洞若しくは空気層又は低屈折材料層若しくは高屈折材料層を有し、前記波長変換体内の多重反射を抑制することを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の波長を変換する波長変換体を有する波長変換装置を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励起光により励起されて発光する蛍光成形体を用いた発光装置である固体光源が知られている(特許文献1参照)。当該蛍光成形体は、互いに平行に対向配置された第1の面及び第2の面と、これらの面と接して第2の面に対して鈍角に傾斜する対向配置された第1の傾斜側面及び第2の傾斜側面とを有する。この特許文献1は、当該蛍光成形体に対して励起光を出力するレーザ光源を備えた発光装置を開示している。この従来の発光装置において、蛍光成形体の内部に位置する発光点(レーザ光源から出力された励起光の焦点)において励起されて生じた発光が第1の傾斜面及び第2の傾斜面にて全反射されることによりエバネッセント波が生成され、エバネッセント波が第1の傾斜面及び第2の傾斜面に沿って伝搬し、第2の面側で結合して伝搬光に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2018/189998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発光装置において、以下の課題が例として挙げられる。
(1)励起された伝搬光の波長に応じて蛍光成形体の形状のサイズが変わる。よって光の取り出す波長が複数ある場合、単一波長対応構造の蛍光成形体では取り出し光の制御が難しい。
(2)時間的また空間的コヒーレンス性が高いレーザ光源を励起光源として用いることを前提としているので、面発光光源を使用した場合の効果は未知である。
(3)レーザ光で励起発光した蛍光(フォトルミネッセンス)の波長で蛍光成形体の形状が決まるため、励起光に対して蛍光成形体は制御性を有しない。
(4)レーザ光源やその他光学系で蛍光成形体内にレーザ光を導光する必要があるので、面発光及び発散光源を用いた発光装置の実現は難しい。
【0005】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、指向性の強い光束が得られる発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による発光装置は、光源と、
前記光源に面して配置された薄膜状の波長変換体と、
前記波長変換体に面して配置された透光体と、を備え、
前記波長変換体は、前記光源からの一次光を受ける前記光源に向いた受光面、当該一次光からポラリトン成分光を生成する誘電体材料及び当該一次光から双極子成分光を生成する蛍光材料、並びに、前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を放出する前記光源側とは反対側の光出射面を有し、
前記透光体は、各々が前記光出射面から離れる方向に向いて突出して前記光出射面に沿って配列され、かつ、各々が柱状又は上方に窄んだ錐台状の側面及び該側面に交わる頂面を有する複数の構造物を有し、
前記複数の構造物の各々は、前記光出射面からの前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を受け、前記ポラリトン成分光及び前記双極子成分光を前記側面で全反射させて発生させたエバネッセント光を前記複数の構造物の各々の前記頂面で結合させ、放出させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図2】実施形態に係る発光装置の構成を示す拡大概略部分断面図である。
【
図3】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図4A】実施形態に係る発光装置の変形例における波長変換体を示す拡大概略部分断面図である。
【
図4B】実施形態に係る発光装置の変形例における波長変換体の蛍光薄膜を示す拡大概略部分断面図である。
【
図5A】実施形態に係る発光装置の変形例における波長変換体を示す拡大概略部分断面図である。
【
図5B】実施形態に係る発光装置の変形例における波長変換体の蛍光薄膜を示す拡大概略部分断面図である。
【
図6】実施形態に係る発光装置における波長変換装置の構造物の動作を説明する拡大概略部分断面図である。
【
図7】実施形態に係る発光装置における波長変換装置の構造物の動作を説明する拡大概略部分断面図である。
【
図8】実施形態に係る発光装置の構成を示す拡大概略部分断面図である。
【
図9】実施形態における波長変換装置の円錐台構造物を示す概略斜視図である。
【
図10】実施形態における波長変換装置の円柱構造物を示す概略斜視図である。
【
図11】実施形態における波長変換装置のための電界強度2Dシミュレーションの解析モデルの解析範囲を示す図である。
【
図12】実施形態における波長変換装置のための電界強度2Dシミュレーションの解析結果を示す図である。
【
図13】実施形態における波長変換装置の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図14】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図15】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図16】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図17】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図18】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図19】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図20】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図21】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図22】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図23】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図24】実施形態における波長変換装置の変形例の複数の構造物の配列を示す部分上面図である。
【
図25】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図26】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図27】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図28】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図29】実施形態に係る発光装置の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
【
図30】更なる実施形態に係る発光装置のための電界強度3Dシミュレーションの解析結果を示す図である。
【
図31】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分断面図を示す。
【
図32】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分断面図を示す。
【
図33】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分断面図を示す。
【
図34】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分断面図を示す。
【
図35】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分上面図を示す。
【
図36】更なる実施形態に係る発光装置の構造物の頂面から放射される放射光の配光特性を示す。
【
図37】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分断面図を示す。
【
図38】更なる実施形態に係る発光装置の模式的な概略部分上面図を示す。
【
図39】更なる実施形態に係る発光装置の構造物の頂面から放射される放射光の配光特性を示す。
【
図40】実施形態の発光装置を発光モジュールとして搭載した灯体の車両用前照灯装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図41】実施形態の発光装置を発光モジュールとして搭載した灯体の車両用前照灯装置から前方へ照射される光により仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム配光パターンを示す図である。
【
図42】実施形態の発光装置を発光モジュールとして搭載した灯体の車両用前照灯装置から前方へ照射される光により仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る発光装置11の構成を示す模式的な概略部分断面図である。なお、以下の図において、光学部品等を矩形で示すが、それらの実際の形状を示さず、概念的に表しており、さらに断面図のハッチングを省略している。また、発光装置11の光軸方向は、
図1の上方向(光源12及び波長変換装置13の上面の法線方向)である。
【0010】
発光装置11は、
図1に示すように、光源12と、光源12からの光を受ける波長変換装置13とを有する。光源12は、所定の波長域の励起光である一次光L1を波長変換装置13へ出射する。
【0011】
(光源)
光源12は、順方向に電圧を印加することで380~490nmの範囲にピーク波長を有する一次光L1(青色光)を生成する半導体発光素子である。光源12は、例えば、一次光L1を出射する面発光部を有する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、共振器構造を有する半導体レーザダイオード(LD:Laser Diode)を用い得る。例えば、光源12の発光素子の半導体レーザとして、面発光部を有する垂直共振器面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、フォトニック結晶面発光レーザ(Photonic Crystal Surface Emitting Laser: PCSEL)の他に、InGaN系半導体の端面発光レーザ(Edge Emitting Laser: EEL)等が挙げられる。
【0012】
(波長変換装置)
波長変換装置13は、光源12側に向かう受光面S1及び光源12の反対側の光出射面S2を有しかつ光源12の光軸を法線とする板状(薄膜状)の波長変換体14と、光出射面S2上に接合されると共に並列配置された複数の構造物15を有する透光体16と、を有する。
【0013】
(波長変換体)
波長変換体14は、蛍光材料(誘電体でもある)を含み、光源12からの一次光L1を受光面S1で受光し、一次光L1の一部を波長変換し、構造物15を有する透光体16へ出射する二次光源機能を有する。
【0014】
波長変換体14は、一次光L1の波長を、後述のポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2として生成する。波長変換体14は、これらポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2を含む照明光L3を光出射面S2から透光体16へ出射し、透光体16の構造物15から外へ照明光L3を出射する。
【0015】
(ポラリトン成分光)
一次光L1が誘電体中を伝搬すると、一次光の電場によって誘電体内に電荷の偏り、すなわち分極(polarization)が生じる。固体の誘電体内では、原子内の電子と原子核が形成する電子分極である。一次光が分極を引き起こしながら、誘電体中を伝搬する。分極により作られる電荷対(電気双極子:electric dipole)は、一次光の電場振動に応答して振動する。誘電体では、電子分極が形成する電気双極子振動の共鳴角周波数は紫外光領域にあり、共鳴角周波数から低角周波数側に十分離れた可視光領域では、電気双極子は入射一次光の電場振動に追従してほぼ同位相で応答振動する。
【0016】
一次光L1の交流電場によって振動する電気双極子では、電荷の加速度が絶えず変化するので、電気双極子からは同じ周波数の電磁波(二次光)が電気双極子放射(electric dipole radiation)される。電気双極子放射は、双極子中心のドーナツ状の強度パターンで放射状に拡がるが、後方からの一次光由来の放射と重畳するので前方散乱成分が多く伝搬する(この共鳴状態はポラリトンと呼ばれる)。この電気双極子放射の放射過程は、振動の90°の位相遅れを伴う。結果的に、可視光領域では、電気双極子が入射一次光の電場振動とほぼ同位相(位相遅れはほぼ0°)で応答し、位相遅れ90°で二次光を放射するので、入射一次光と電気双極子放射光の合成である透過光(ここでは、ポラリトン成分光とも称する)の位相遅れを引き起こし、遅れた透過光は次に出会う電気双極子の入射光となるため、透過光は原子と出会う度に累進的に遅れていくことになる。波長ごとの透過光の伝搬速度vが遅くなる割合を真空中の光速cとの速度比n=c/vで定義したものが誘電体の屈折率である。誘電率εが高く分極しやすい誘電体ほど、屈折率が大きく、誘電体中の光の伝搬速度は遅くなる。
【0017】
(双極子成分光)
蛍光材料における蛍光は、蛍光材料原子を励起する一次光L1によって引き起こされる発光である。励起状態になる前の蛍光材料原子(発光センターともいう)の電子配置は基底状態にある。一次光を吸収することにより原子の電子励起状態に引き上げ、励起状態の電子は一部の振動エネルギーを失い、電子は光子の放出を伴って安定した基底状態に戻る。励起された電子が基底状態に戻ると、吸収された一次光よりも長い波長に対応するより低いエネルギーの二次光(蛍光)を放出する。すなわち、蛍光材料に光を照射すると、蛍光材料原子は遷移双極子モーメントに沿った方向の偏光をよく吸収し、遷移双極子モーメントの方向の偏光を放出して失活する。基底状態から励起状態の励起であれば吸収と発光の遷移双極子モーメントは平行であるため、静止している原子の場合は入射一次光と同じ方向に偏光した蛍光(ここでは、双極子成分光とも称する)を放出する。電子が励起状態から基底状態に移行するときには、振動エネルギーの損失があるので、蛍光波長は放射エネルギーに反比例するため、エネルギー損失によって蛍光スペクトルの波長は一次光の励起スペクトルより長波長となる(ストークスの法則)。蛍光は、励起一次光が蛍光材料を照らす間、持続する。励起光の照射が止まると、停止する。例えばYAG(Y3Al5O12:Ce)結晶の内部でCe原子はYのサイトに置換すると発光センターとして、短波長の光(300nm~500nm)を吸収して新たに黄色(500nm~700nm)の長波長の蛍光(双極子成分光)を発する。
【0018】
このように、受光面S1及び光出射面S2を有する波長変換体14は、受光面S1からの入射光の一次光L1をポラリトン成分光L1aとする誘電体材料及び受光面S1からの入射光から双極子成分光を生成する蛍光材料を含み、ポラリトン成分光L1a及び双極子成分光を光出射面S2から出射する。なお、実際上は、双極子成分光は媒体の散乱によりポラリトン成分光(すなわち双極子成分光誘起ポラリトン成分光)を発生させる。以下の記述では、双極子成分光と双極子成分光誘起ポラリトン成分光とをまとめて、双極子ポラリトン混合光L2として説明する。
【0019】
蛍光材料としては、例えば、Y3Al5O12:Ceの他、ZnS:Mn等の黄色系蛍光体や、Lu3Al5O12:Ce、BaMg2Al16O27:Eu,Mn等の緑色系蛍光体や、CaS:Eu、CASN、SCASN等の赤色系蛍光体が利用できる。
【0020】
波長変換体14に含まれる蛍光材料は、任意であり量子ドット蛍光体等も含まれ、蛍光材料粒子でも利用可能である。蛍光材料粒子の粒子径は必ずしも揃っている必要はない。量子ドット蛍光体としては、半導体量子ドット(例えばInP/ZnS量子ドット等)やペロブスカイト量子ドット、例えば、複合ハロゲン化物ペロブスカイトCsPb(Cl/Br)3、CsPbBr3、CsPb(Br/I)3、CsPbI3等が用いられる。
【0021】
波長変換体14の厚さは、好ましくは500nm~50μmであり、より好ましくは500nm~10μm、さらに好ましくは500nm~2000nmである。
【0022】
波長変換体14の動作を、
図1の拡大概略部分断面の
図2を用いて説明する。誘電体材料の酸化アルミニウム(アルミナAl
2O
3)中に均一に分散された蛍光材料粒子Y
3Al
5O
12:Ceガーネット結晶粉末YAGを有するセラミックプレートの波長変換体14内において、例えば、第1点にてYAG/アルミナ界面で青色光(ポラリトン成分光L1a)が散乱され、第2点にてYAGに青色光(一次光L1)が吸収されて黄色光の蛍光(双極子ポラリトン混合光L2の双極子成分)に変換され、第3点にてYAG/アルミナ界面で蛍光(双極子ポラリトン混合光L2のポラリトン成分)が散乱され、それぞれの点が発光点となる。このようにして、波長変換体14は二次光源機能を発揮する。
【0023】
図3に示すように、変形例として、波長変換体14は、蛍光薄膜14Bと受光面S1に接して支持する透光材部14Cを有する構造としてもよい。光源12側に透光材部14Cを配置して蛍光薄膜14B側が光出射面S2となるように構成されていることが好ましい。基板である透光材部14Cには、光学ガラスやサファイアプレートを用いることができる。
【0024】
透光材部14Cは屈折率が波長変換体14と同程度以下であることが好ましい。透光材部14Cとしては近い屈折率を有し且つ熱伝導率の高いサファイア(アルミナ)板が好ましく、もしくは発光中心であるCeがドープされていないYAG基板を用いてもよい。YAG基板は屈折率だけでなく熱膨張係数も波長変換体14(YAG:Ce)とほぼ同じのため高温動作時に波長変換体14と透光材部14Cが剥離する可能性が低く好ましい。
【0025】
蛍光薄膜14Bは、例えば、透光材部14Cの一方面に少なくとも500nmの膜厚(双極子ポラリトン混合光L2を得るために)で直接形成される。蛍光薄膜14Bは、例えば、粒子状の蛍光材料(蛍光材料粒子)と、この蛍光材料粒子を接着するバインダとを含んでいてもよい。また、蛍光薄膜14Bは、透光材部14Cの一方面に、蛍光材料とバインダとを含む蛍光薄膜原料を塗布し、常温で反応させるか、又は、2000℃以下の温度で熱処理することにより形成されたものでもよい。塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ディスペンサーによる描画法、又はインクジェット法が挙げられる。
【0026】
なお、蛍光材料は、光源12の発光波長の種類等に応じて選択される。蛍光材料には、1種又は2種以上の蛍光材料粒子が用いられ、複数種を用いる場合には、混合して用いてもよく、また、複数層に分けて積層するようにして蛍光薄膜14Bとしてもよい。
【0027】
さらに、波長変換体14は、基板を用いずに、蛍光材料単結晶、蛍光材料単一相セラミック、蛍光材料粒子含有誘電体セラミックのプレート形態であってもよい。例えば、
図4Aに示すように、波長変換体14は、誘電体材料のアルミナAl
2O
3中に均一に緻密に分散された蛍光材料粒子YAGを有するセラミックプレート形態であってもよい。
図4Bに示すように、蛍光薄膜14Bは、誘電体材料のアルミナAl
2O
3中に均一に緻密に分散されたナノ粒子の蛍光材料粒子YAGを有して基板上に備えられたものとしてもよい。
図5Aに示すように、波長変換体14は、誘電体材料のアルミナAl
2O
3中に均一に緻密に分散された量子ドット蛍光体QDが含まれるセラミックプレートであってもよい。また、
図5Bに示すように、蛍光薄膜14Bは、誘電体材料のアルミナAl
2O
3中に均一に緻密に分散されたナノ粒子の量子ドット蛍光体QDを有して基板上に備えられたものとしてもよい。なお、これらの蛍光材料粒子の粒子径は蛍光波長に応じて必ずしも揃っている必要はない。
【0028】
このように、波長変換体14は、受光面S1及び光出射面S2を有しかつ、受光面S1からの入射光をポラリトン成分光とする誘電体材料及び受光面S1からの入射光を双極子成分光とする蛍光材料を含み、ポラリトン成分光及び双極子成分光を光出射面S2から出射させる構造を有する。
【0029】
(構造物)
透光体16の光出射側に形成された複数の構造物15は、波長変換体14の光出射面S2上に突出して光出射面S2に沿って所定周期で配列されかつ、各々が柱状又は上方に窄められた錐台状の側面FSを備える。構造物15の各々がポラリトン成分光及び双極子成分光を出射する。透光体16の構造物15の各々は、波長変換体14から出射される照明光L3の狭角な配光特性の制御を行う。
【0030】
透光体16は、構造物15と波長変換体14の間に挟まれて設けられた300nm以下の厚さを有する透光支持層15Bを一体的に有する。透光支持層15Bにより、複数の構造物15がナノインプリントで形成できるようになる。透光体16を形成する透光材料は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)を共重合させたMS樹脂やSAN樹脂や、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、透明シリコーン樹脂、UV硬化樹脂等の有機化合物樹脂である。透光体16を形成する透光材料は、セラミックスや、ガラス、サファイア等の無機透明誘電体でもよい。透光体16を形成する透光材料は、その屈折率が波長550nmの光に対して1.30~2.50の範囲内にあるものが選択される。透光体16の材料も誘電体であるので、光源12からの一次光L1やポラリトン成分光L1aを受光し、ポラリトン成分光L1aを放射する機能を有する。
【0031】
構造物15の各々の側面FSは波長変換体14の光出射面S2から40~90度の角度(テーパー角度)で傾斜しており、かつ、側面FSに対して鈍角で交わる頂面FTを有している。また、構造物15の底面(側面FSの下端部を通る面)から頂面FTまでの高さは250~2000nmである。
【0032】
波長変換体14の光出射面S2に平行な、構造物15の各々の頂面FTの幅は300~2000nmである。
【0033】
構造物15の動作を、
図1の構造物15の拡大概略断面の
図6、
図7を用いて説明する。本実施形態では、構造物15の側面FSの内面側に斜め方向から多波長光を照射して側面FSの界面で多波長光を全反射(臨界角より大なる入射角で照射)させている。このように多波長光を界面で全反射させる場合、
図6に示すように、多波長光のうちの1つの光線Lに側面FSの界面における入射点Oと反射光の出射点Rとの間にはグースヘンシェンシフトが発生する。このグースヘンシェンシフトは、
図6に破線で示すように、界面で全反射する光は界面よりも外(空間、すなわち構造物15の外側)に染み出して界面近傍に閉じ込められたエバネッセント光を生成する。
【0034】
構造物15の側面FSに対して内側斜め方向から継続的に光線Lを照射して全反射させた場合、空間側表面でエバネッセント波が頂面FT中央部へ伸び、反対側から伸びてくるエバネッセント波と結合して進行波となり、構造の外部へ照明光として取り出される。
【0035】
図7に示すようにエバネッセント光電場は側面FSの界面に存在し、その光電場の裾は構造物15の頂面FTの中央に及ぶ。よって、本実施形態によれば、それぞれのポラリトン成分光L1aと双極子ポラリトン混合光L2は頂面FT上部界面近傍でエバネッセント波の結合を発生し、構造物15の頂面より強く放出させることができる。
【0036】
このエバネッセント電場結合の結果、ポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2は、狭角な配光特性(低エタンデュ)となって構造物15から出射される。すなわち、柱状又は錐台状の構造物15は、波長変換体14内のポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2の出射方向を絞ると同時にポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2の光取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0037】
エバネッセント光の取り出し効率は、各構造物15と波長変換体14の誘電体材料及び蛍光材料の発光点の距離に依存する。これは、
図8に示すように例えば、疑似白色で狭角光源を実現する青色光の発光点(散乱点又は生成点)(p1)が錐台状の構造物15から発光点(p2)より遠い場合、構造物15の側面FSに対して発光点(p1)の形成する空間角(k1)が発光点(p2)の形成する空間角(k2)より減少し、その作用も薄れていくためである。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、波長変換体14の光出射面S2が構造物15から300nm以下しか離れていないので(透光支持層15Bは300nm以下の厚さであるため)、波長変換体14の発光点と各構造物15の距離による結合効果は大きい。
【0039】
このように、本実施形態によれば、光源12から出た一次光L1が波長変換体14内でポラリトン成分光L1aと双極子ポラリトン混合光L2を励起し、異なるメカニズムで発光した二次光それぞれが、同一形状の複数の構造物15(側面FS)で全反射することで、
図8に示すように、構造物15の頂面Fから出射される照明光L3が指向性の高い狭角光として取り出される。よって、光源12の面発光及び多波長(広帯域光波)に対して狭角発光効果を得ることができる。
【0040】
具体的に、
図9に上方に窄められた円錐台状の側面FS(テーパー角度Θ=40度)を備える円錐台構造物15を示す。
図10に円柱状の側面FS(テーパー角度Θ=90度)を備える円柱構造物15を示す。これら円錐台と円柱の構造物15は、波長変換体14の光出射面S2側の底面FBの幅φbottom(直径)と該底面に平行な頂面FTの幅φtop(直径)を有し、該底面から頂面FTまでの高さhを有する。
【0041】
(実施例及び比較試験)
構造物15はその形成材料の屈折率nによってサイズが変わるので、実施例とその効果を確認する比較試験を行った。
【0042】
円錐台状の単一構造物の形成材料の屈折率nを変化させて、側面FSのテーパー角度を固定した場合のサイズの異なる構造物サンプルを種々作製した。そして、シミュレーションした結果をもとに、構造物の好適なサイズの範囲を求めた。
【0043】
下記表1に、構造物サンプルのうちのI~Vの5つのサイズ仕様(頂面FTの幅φtop、底面の幅φbottom、高さh、テーパー角度Θ)を示す。
【0044】
【0045】
株式会社科学技術研究所のkeyFDTDの電界強度2Dシミュレーションを使用して、単一構造物15における多波長光取り出し効果を検証した。
【0046】
図11は、電界強度2Dシミュレーションの解析モデルの解析範囲を示す図である。
図12は、一例としての上記表1の構造物サンプルIVの単一構造物において、発光波長Λの3種(450nm/560nm/610nm)の取り出し効果を示す電界強度2Dシミュレーション結果を示す。構造物サンプルIVにて発光波長Λの違いで狭角性発光(電場強度)に多少の違いはあるが、構造物サンプルIVにより多波長を単一構造で制御できることが確認された。
【0047】
構造物サンプルIVのように構造物15の内部でなく外部(底辺下の深さ300nm)に位置する発光点によっても照明光L3の狭角な配光特性が得られることが確認された。これにより、黄色光(双極子ポラリトン混合光L2)及び青色光(ポラリトン成分光L1a)が混色され、白色光として視認される照明光L3が出力されることがわかる。
【0048】
下記表2、表3に、構造物15の側面FSのテーパー角度Θを変化させて構造物サンプルの上記比較試験を行った結果に基づいて求めた好適な構造物サイズの範囲と、より好適な構造物サイズの範囲を示す。
【0049】
【0050】
【0051】
実施例1として、
図3に示す装置構造を採用して、
図4Bに示す誘電体材料のアルミナAl
2O
3中に均一に緻密に分散されたナノ粒子の蛍光材料粒子YAG(黄色蛍光体)を有する種々の膜厚の蛍光薄膜14Bをそれぞれ透明透過基板(透光材部14C)上に備えた波長変換体14を用いて、青色発光LEDと組み合わせ、蛍光薄膜14B上に透明樹脂(屈折率n=1.4)で複数の円錐台の構造物15(
図9、参照)を形成した発光装置11を複数作成した。
【0052】
なお、光源12は、380~490nmにピーク波長を有する発光スペクトルを有する青色発光LEDを用いて波長変換体14と組み合わせ、白色光源としたところ、この光源からの白色光におけるポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2の強度割合が1:2程度であった。なお、この割合は、波長変換体14の厚み等を変更することにより、変えることができ、好ましくは1:1~1:3である。
【0053】
発光装置11は、ポラリトン成分光L1a及び双極子ポラリトン混合光L2は、合わせて380~780nmの中に2つのピーク波長を有する発光スペクトルを有する多波長狭角白色光源となった。
【0054】
ポラリトン成分光L1aはピーク波長λ1が380~490nm内にある発光スペクトルを有し、双極子ポラリトン混合光L2はピーク波長λ2が490~780nm内にある発光スペクトルを有する。
【0055】
当該発光スペクトル中のピーク波長λ1とピーク波長λ2は、50nm以上離れていた。
【0056】
複数の円錐台の構造物15は、
図13に示すように最密配置されるように構成された。
【0057】
実施例1の発光装置において、各円錐台構造物15は上記表1に記載の構造物サンプルIのサイズ仕様で設定した。
【0058】
例えば目視の発光比較試験によれば、構造物15下面と蛍光薄膜14Bの距離は0.3μm程度の場合、蛍光薄膜14Bの膜厚は0.5~2μm程度が好ましいという結果を得た。また、複数の構造物15は互いに同程度の構造物高さhを有することが好ましいことが分かった。
【0059】
以上の実施形態及び実施例によれば、光源12から出た一次光が波長変換体14で双極子ポラリトン混合光L2、ポラリトン成分光L1aとなり、各構造物15に作用することで、広範囲の成分光の波長に対して狭角光源を実現できる。
【0060】
(構造物の変形例)
図14は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の円柱構造物15を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0061】
図15は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の三角錐台構造物15を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0062】
図16は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の三角柱構造物15を有し、各構造物間に0より大きく200nm以下の隙間を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0063】
図17は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の四角錐台構造物15を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0064】
図18は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の四角柱構造物15を有し、各構造物間に0より大きく200nm以下の隙間を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0065】
図19は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の六角錐台構造物15を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0066】
図20は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の六角柱構造物15を有し、各構造物間に0より大きく200nm以下の隙間を有している以外は、上記実施例1と同じである。
【0067】
図21は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15を最密配置するのではなく複数の円錐台構造物15を(行列)マトリックス状に配置する以外は、上記実施例1と同じである。
【0068】
図22は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の円柱柱構造物15を有している以外は、上記
図21の変形例と同じである。
【0069】
図23は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15を最密配置するのではなく複数の円錐台構造物15を上記実施例1の所定ピッチより大きな周期(構造物周期)で配置した以外は、上記実施例1と同じである。
【0070】
図24は、他の変形例に係る発光装置11の光軸方向から見た模式的な概略上面図を示す。この変形例は、円錐台構造物15に替えて複数の円柱柱構造物15を有している以外は、上記
図23の変形例と同じである。
【0071】
図25は、他の変形例に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この変形例は、透光体16の構造物15下の透光支持層15B全体に多数の微小空洞を周期的又はランダムに含む。この微小空洞により、波長変換体14内の多重反射を抑制し、ポラリトン成分光の双極子成分光に対する比率を調整する以外は、上記
図1の実施形態と同じである。微小空洞の領域は微小空気層等のボイドであり、ポラリトン成分光L1aの青色光の散乱を増やす制御をする。微小空洞領域は、ボイド或いは屈折率の異なる粒子すなわち低屈折率材料と高屈折材料の粒子又は低屈折材料層と高屈折材料層の積層でもよい。
【0072】
図26は、他の変形例に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この変形例は、波長変換体14内の本体の透光体16側に多数の微小空洞を周期的又はランダムに含むことで波長変換体14内の多重反射を抑制し、ポラリトン成分光の双極子成分光に対する比率を調整する以外は、上記
図1の実施形態と同じである。
【0073】
図27は、他の変形例に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この変形例は、透光体16の構造物15下の透光支持層15Bと波長変換体14との界面に多数の微小空洞を周期的又はランダムに含むことで波長変換体14内の多重反射を抑制し、ポラリトン成分光の双極子成分光に対する比率を調整する以外は、上記
図1の実施形態と同じである。
【0074】
図28は、他の変形例に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この変形例は、波長変換装置13と光源12の垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)とを空間を開けて互いに保持し、光源12側の波長変換体14に散乱体層を張り付け、一次光のレーザ光を散乱させるようにした以外は、上記
図3の実施形態と同じである。
【0075】
図29は、他の変形例に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この変形例は、波長変換装置13と光源12の半導体レーザとを空間を開けて互いに保持し、光源12側の波長変換体14に散乱体層を張り付け、光源12として分割された半導体レーザアレイ等の一次光のレーザ光を散乱させるようにした以外は、上記
図3の実施形態と同じである。この場合、光源12の分割された半導体レーザは、各々が構造物15のそれぞれ又はグループ毎へ向けて入射光を出射する複数の発光素子のアレイからなる光源12アレイである。
【0076】
(更なる実施形態)
上記の実施形態や変形例の波長変換装置では、ポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2を出射する薄膜状の波長変換体14と、波長変換体14上に突出して配列され、かつ、各々が柱状又は上方に窄んだ錐台状の側面を備える複数の構造物15を有する透光体16とを有し、複数の構造物15の各々がポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2を出射することを特徴とする波長変換体14を用いている。すなわち、上記の実施形態や変形例では、配列した複数の構造物15の下にポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2を出射する薄膜状の波長変換体14が一様に(全面に)配置されている。
【0077】
上記の実施形態や変形例の波長変換装置13では、エバネッセント光が結合して伝搬光に変換される効率が構造物15と発光点の距離(構造物中心線の縦方向の距離)に依存するとして波長変換体14の厚みを指定している。しかし、発光点の構造物に対する横方向位置に留意することにより、さらに狭角性を高めることができる。
【0078】
上記の実施形態では狭角性に寄与する発光点と寄与しない発光点とが構造物15周りの波長変換体14に混在している。
【0079】
そこで、波長変換体14中の発光点の横方向変位による電界強度3Dシミュレーションの解析を行った。
図30は、
図11に示した電界強度2Dシミュレーションの解析モデルを、構造物15が上記表1の構造物サンプルIVの円錐台として、
図13に示すような最密配置された構成のうちの3つの構造物15の3Dへ拡張したモデルにおいて、発光波長560nmの取り出し効果を示す電界強度3Dシミュレーション結果を示す。
図30に示すように、構造物サンプルIVにて発光点の横方向変位(
図30中、発光点が構造物15の中心線上の位置、同中心線近傍の右の位置及び隣接構造物15間の位置)により、狭角性発光(電場強度)の放射方向の角度に違いが生じることが確認された。
図30から明らかなように、発光点が構造物15の中心線上(又は近傍)の位置する場合に最も良い狭角性発光が得られる。
【0080】
よって、更なる実施形態では、波長変換体14の光出射面S2(光取り出し面)に遮光層SKを設置し、遮光層SKにおいて個々の円錐台の構造物15の頂面FTの下の中心部のみ開口部KKを設けている(
図31)。
【0081】
図31は、更なる実施形態に係る発光装置11の模式的な概略部分断面図を示す。この更なる実施形態の発光装置11は、波長変換体14と透光体16の間に、複数の構造物15の頂面FTのそれぞれの中心線と同軸に配置され、かつ、ポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2を出射する複数の開口部KKを有する遮光層SKが配置されている以外は、上記
図1の実施形態と同じである。すなわち、更なる実施形態に係る波長変換装置13においては、波長変換体14と透光体16の間には、上面視において複数の構造物15の頂面FTのそれぞれと重なるように配置された複数の開口部KKを有する遮光層SKが配置されている。
【0082】
更なる実施形態に係る発光装置11により、狭角性に寄与しにくい円錐台の構造物15の頂面FTの下の中心から離れた発光点(p3)からの光は遮光層SKにより遮られ、狭角性への寄与が大きい円錐台の構造物15の頂面FTの下の中心部近傍の発光点(p4,p5)の光のみを選択的に取り出すことができる。発光点は円錐台の構造物15の頂面FT直下の中心軸に近いほど狭角性に寄与し、離れるほど寄与しない。
【0083】
したがって、発光点の横方向位置依存性があるため、波長変換装置13は、狭角性を高めるためには下記(1)~(4)のような波長変換装置構造を有することが好ましい。
【0084】
(1)波長変換装置13は、波長変換体14の光出射面上に遮光層SKを有し、遮光層SKは構造物15と同じ配列の開口部KKであって開口部KKが構造物15の直下で中心軸を同じとして備え、開口部KKの直上に構造物15を有する。かかる波長変換装置13によれば、構造物15の直下の中心部以外に遮光層SKを設置することで狭角性に影響の大きい発光点の光を効率良く取り出すことができる。
【0085】
(2)遮光層SKはポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2(380~780nm)の吸収が少ないことが好ましく、金属ミラーや誘電体多層膜ミラー、又はその両方等の光反射膜がよい。この場合、反射した両成分光は反射、散乱により別の発光点位置への変換を繰り返し、開口部KKから放出される。
【0086】
遮光層SKは金属ミラーや誘電体多層膜ミラーを含み、ポラリトン成分光L1a及び双極子成分光L2の吸収を抑制し、反射する。遮光層SKは、開口部KKを形成する都合上、上限値としては5μm以下の厚みが望ましい。一方で、遮光層SKは、下限値としては遮光機能を有し得る厚さとして5nm以上が望ましい。
【0087】
(3)遮光層SKの開口部KKの位置に接するように蛍光体(波長変換体14)を設置しても良い。この変形例の一例を
図31に示す。
図31は、更なる実施形態に係る発光装置11の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
図31に示す波長変換装置13の透光体16は、構造物15と波長変換体14の間に挟まれた透光支持層15Bを一体的に有する。よって、遮光層SKの縦方向の位置としては、遮光層SKはその下面が透光支持層15Bの下面とコプレーナ(同一平面又は共平面)として形成され波長変換体14に接触している。これにより、遮光層SKの開口部KKに蛍光材料を含む波長変換体14を有する波長変換装置13が得られる。この場合、遮光層SKの上の透光支持層15Bの部分は300nm以下の厚さを有するように形成される。
【0088】
この他の変形例を
図32に示す。
図32は、更なる実施形態に係る発光装置11の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。発光装置11の遮光層SKの縦方向の位置としては、遮光層SKはその上面が波長変換体14の上面とコプレーナ(同一平面又は共平面)として形成され、透光体16(透光支持層15B)に接触している。
【0089】
更なる他の変形例を
図33に示す。
図33は、更なる実施形態に係る発光装置11の変形例の構成を示す模式的な概略部分断面図である。
図33に示す更なる他の変形例は、
図3に示す発光装置11と、透光材部14C上に蛍光薄膜14Bを開口部KKに充填して遮光層SKを備えた以外同一である。この更なる他の変形例により、遮光層SKの開口部KKにのみ蛍光材料を含む波長変換装置13が得られる。この場合、遮光層SKの開口部KKに蛍光体を充填するには、例えば、蛍光体を含んだ樹脂又はインクを開口部KKパターンの遮光層SKを設けた透光材部14Cに塗布し、スキージ等を押し付けて開口部KKに充填することができる(いわゆるスクリーン印刷)。また、遮光層SK上に余分に付着する蛍光体が不要な場合は、研磨等により不要蛍光体を除去可能である。
【0090】
(4)発光装置11の波長変換装置13における遮光層SKの開口部KKの好適なサイズを設定する。
【0091】
図34は、更なる実施形態における波長変換装置13の変形例であり、3つの構造物15の各々の底面FBの外縁近傍に遮光層SKの開口部KKの内縁があるものを示す概略部分断面図である。
図35は、
図34に対応する波長変換装置13の変形例の3つの構造物15の配列を示す部分上面図である。
【0092】
図34及び
図35に示すように、発光装置11の波長変換装置13における遮光層SKの開口部KKのサイズKdは、構造物15の底面FBのサイズBd以下が好ましい。遮光層SKの複数の開口部KKの各々は、構造物15の底面の面積以下の開口面積を有する。すなわち、遮光層SKの複数の開口部KKの各々は、上面視において複数の構造物15の底面FBの外縁と重なるか、内側に形成されている。なお、
図34及び
図35は、発光装置11の遮光層SKの開口部KKが構造物15の底面FBの外縁の近傍内側に形成されている場合(Kd<Bd)を示す。
【0093】
図36は、
図35に示す発光装置11において、構造物15が上記表1の構造物サンプルIVの円錐台であり、開口部KKのサイズKdが構造物15の底面FBのサイズBdに一致している場合(Kd=Bd)の1個の構造物15の頂面FTから放射される放射光の配光特性を示す図である。
【0094】
図37は、更なる実施形態における波長変換装置13の他の変形例であり、3つの構造物15の各々の中心線近傍に遮光層SKの開口部KKの内縁があるものを示す概略部分断面図である。
図38は、
図37に対応する波長変換装置13の変形例の3つの構造物15の配列を示す部分上面図である。
【0095】
図37、
図38に示すように、発光装置11の波長変換装置13における遮光層SKの開口部KKのサイズKdは、構造物15の頂面FTのサイズTd以下が好ましい。遮光層SKの複数の開口部KKの各々は、複数の構造物15の底面の面積以下の開口面積を有する。すなわち、遮光層SKの複数の開口部KKの各々は、上面視において複数の構造物15の頂面FTの外縁と重なるか、内側に形成されている。なお、
図37及び
図38は、発光装置11の遮光層SKの開口部KKが構造物15の頂面FTの外縁の近傍内側に形成されている場合(Kd<Td)を示す。
【0096】
図39は、
図37に示す発光装置11において、構造物15が上記表1の構造物サンプルIVの円錐台であるとき、1個の構造物15の頂面FTから放射される放射光の配光特性を示す図である。
図39(A)は開口部KKを円錐台構造物15の中心軸から半径0.1μm(=Kd/2)の円の開口部KKとした場合の、
図39(B)は、開口部KKを円錐台構造物15の中心軸から半径0.2μm(=Kd/2)の円の開口部KKとした場合の、それぞれの放射光の配光特性を示す。
図36(
図35)に示す発光装置の狭角な配光特性に比べて、
図39に示す発光装置11は照明光の更に狭角な配光特性を有することが分かる。
【0097】
また、上記いずれの実施形態や、実施例、変形例の構成要素を適宜改変し、組合せたものが本発明に含まれることは明らかである。なお、いずれの実施形態や、実施例、変形例の発光装置11は、光源12及び該光源12の出射光の光軸上に配置された波長変換装置13を含み、例えば、プロジェクタ、車両用灯具、一般発光装置等の光源として用いられることができる。
【0098】
(車両用前照灯)
図40は、上記実施形態や図例の発光装置を発光モジュール21として搭載した灯体LMP(LEDヘッドランプ)の構成を示す模式的な断面図である。灯体LMPは、電源部20とランプユニット30とを含む。本実施例においては、灯体LMPが車両用前照灯である場合について説明する。
【0099】
ランプユニット30は、発光モジュール21、集光ミラー32、投影レンズ33及びシェードSHを収容する。また、発光モジュール21、集光ミラー32、投影レンズ33及びシェードSHは、支持部SUによってランプユニット30内において支持されている。また、ランプユニット30は灯体ハウジングHSに収容されている。灯体ハウジングHSには、投影レンズ33周りからエクステンション部31を介して、投影レンズ33から投影光PLが出射する側の領域にはアウターレンズOLが設けられている。投影光PLは、アウターレンズOLを介して外部に取出される。また、ランプユニット30は、灯体ハウジングHSに対してその光軸を調整するためのブラケット光軸調整部AJを有している。
【0100】
発光モジュール21は電力供給線22で電源部20に接続され、発光モジュール21にはこれから発生する熱を放熱する放熱部SUHが設けられている。また、電源部20には、バッテリ(図示せず)及び制御部(図示せず)等に接続された電源信号線CBが設けられている。
【0101】
集光ミラー32は、例えば楕円反射面であって、第1の焦点に配置された発光モジュール21からの拡散光DLを集光して第2の焦点F2に集光する集光光FLを生成する。投影レンズ33は、集光ミラー32からの集光光FLを投影して投影光PLを生成する。
【0102】
集光ミラー32は、例えば樹脂等で成形された成形体の表面にアルミや銀等の高い光反射性を有する膜を成膜することによって形成することができる。また、集光ミラー32は、保護膜によって覆われていても良い。投影レンズ33は、例えばガラス、ポリカーボネート、アクリル等、拡散光DLに対して透光性を有する材料からなる。
【0103】
光源からの拡散光DLは、
図40に示すように、第1の焦点(発光モジュール21)から放射状に進み、集光ミラー32に入射する。拡散光DLは、集光ミラー32によって他の焦点(第2の焦点)F2に集光される。また、第2の焦点F2は、投影レンズ33の焦点として機能する。
【0104】
なお、ランプユニット30は、自動車用前照灯におけるすれ違い用ビーム配光(いわゆるロービーム)を形成するためのシェードSHを有する。具体的には、シェードSHは、投影レンズ33に向けて集光光FLを部分的に反射するように構成されている。シェードSHは、その端部に第2の焦点F2が位置するようにランプユニット30内に配置されている。シェードSHは、例えば耐熱性を有する耐熱体に高い反射性を有する金属(例えばアルミや銀等)が成膜された構造を有する。また、シェードSHは、ロービームのカットオフラインの明暗境界線を形成するような形状を有する。集光光FLは、その一部がシェードSHによって反射することによって、全体としてロービームの形状に成形されて投影レンズ33に入射される。なお、シェードSHは可動式であってもよい。シェードSHは、例えば実線で示した集光光FLの光路内位置と破線で示した集光光FLの光路外位置との間で移動可能なように構成されている。従って、ランプユニット30は、シェードSHを集光光FLの光路外に移動することで、ロービームだけでなく、前照灯の走行用ビーム配光(いわゆるハイビーム)を形成することができる。
【0105】
図41は、本実施例の車両用前照灯装置の左右の灯体LMPから前方へ照射される光により、例えば車両前方25メートルの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるべきロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターンを示す図である。
【0106】
図41のロービーム用配光パターンPLは灯体LMPのシェードSHによって形成される。ロービーム用配光パターンPLは左側通行の地域で利用される左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に明暗境界線(第1カットオフラインCL1、第2カットオフラインCL2及び第3カットオフラインCL3)を有する。第1カットオフラインCL1と第2カットオフラインCL2は、灯具正面方向に設定された鉛直線V-V(V軸)を境にして左右段違いで水平方向に延在する。第2カットオフラインCL2は、鉛直線V-Vより右側かつ灯具正面方向に設定された水平線H-H(V軸)より下方において水平方向に延在する。このため、第2カットオフラインCL2は対向車線カットオフラインとして利用される。
【0107】
第3カットオフラインCL3は、第2カットオフラインCL2の左端部から左上方に向かって例えば45°の傾斜角度で斜めに延在する。第1カットオフラインCL1は、第3カットオフラインCL3と水平線H-Hとの交点から左側において水平線H-H上に延在する。このため、第1カットオフラインCL1は自車線側カットオフラインとして利用される。なお、ロービーム用配光パターンPLにおいて、第2カットオフラインCL2と鉛直線V-Vとの交点であるエルボ点Eは交点H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左よりに囲むようにして高光度領域とすべきホットゾーンHZが含まれる。
【0108】
図42のハイビーム用配光パターンHLは、灯体LMPのシェードSHの可動開放によって明暗境界線(ロービーム用配光パターンPL)の上部が開放されて、ホットゾーンHZが拡大したものとなる。なお、いずれの配光パターンHL、PLにおいても、高光度領域ホットゾーンHZの周りに中光度(midd)領域、広く低光度(wide)領域が順に照明される。
【0109】
上記のようなヘッドランプにおいては、発光モジュール21には高輝度化と共に輝度分布の均一性が求められる。また、発光モジュール21が狭角配光特性を有することで、集光ミラー32をより小さくすることができ、灯体LMPの小型化を図ることができる。このため、本発明を適用した発光装置は、より好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
11 発光装置
12 光源
13 波長変換装置
14 波長変換体
14C 透光材部
15 構造物
15B 透光支持層
16 透光体
S1 受光面
S2 光出射面
L1a ポラリトン成分光
L2 双極子成分光
SK 遮光層
KK 開口部