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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091560
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】拘束型人工膝
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214441
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】63/434,563
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/526,693
(32)【優先日】2023-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ティム ヨーコ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア バーカー
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダイケマ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス マリー バーノン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ディー.バード
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リーディー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC05
4C097CC16
4C097SC08
4C097SC09
(57)【要約】
【課題】拘束型人工膝を提供する。
【解決手段】プロテーゼアセンブリであって、ヒンジポストは、脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容され得る。大腿骨コンポーネントは、脛骨支承コンポーネントの関節表面と接触することができる。シャックルは、ヒンジポストに結合され、大腿骨コンポーネントの内側顆と外側顆との間に挿入されるように構成され得る。壁は大腿骨コンポーネントとシャックルとの間に位置決めされ得る。ヒンジ軸は、シャックルに対して大腿骨コンポーネントを固定するように構成され得る。バンプストップは、大腿骨コンポーネントに対して取外し可能な形で取付けることができ、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、シャックルと接触するように構成することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、
脛骨トレイと、
関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、
前記脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、前記脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、
前記脛骨支承コンポーネントの前記関節表面と接触し、かつ、前記脛骨支承コンポーネントと関節接合するように構成された大腿骨コンポーネントと、
第1の端部において前記ヒンジポストに結合され、前記大腿骨コンポーネントの内側顆と外側顆との間に挿入されるように構成されたシャックルであって、
第1の側部、及び、
前記第1の側部と反対側の第2の側部、
を含むシャックルと、
前記大腿骨コンポーネントと前記シャックルとの間に位置決めされ、かつ、前記大腿骨コンポーネントによって係合された壁であって、
前記シャックルの前記第1の側部を被覆するように構成された第1の壁、及び、
前記シャックルの前記第2の側部を被覆するように構成された第2の壁であって、前記第1の壁は、前記第2の壁に取付けられる、第2の壁、
を含む壁と、
前記シャックルに対して前記大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、
を含むプロテーゼアセンブリ。
【請求項2】
前記大腿骨コンポーネントに対して取外し可能に取付けられたバンプストップであって、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、前記シャックルと接触するように構成されたバンプストップを含む、請求項1に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項3】
前記バンプストップは、膝関節が屈曲状態にあるときに取外されるように構成されている、請求項2に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項4】
バンプストップのサイズは、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定する、請求項2に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項5】
前記バンプストップは、選択的に保守可能となるように構成されている、請求項4に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の壁は前記第2の壁に対して取外し可能に取付けられる、請求項1に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の壁及び前記第2の壁は、係合機構によって結合されている、請求項6に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項8】
前記係合機構は、前記第1の壁と前記第2の壁との間のダブテール連結を含む、請求項7に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項9】
前記第1の壁の外表面は、少なくとも部分的に第1の円錐台状プロファイルを含む、請求項6に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項10】
前記第2の壁の外表面は、少なくとも部分的に第2の円錐台状プロファイルを含む、請求項9に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項11】
前記大腿骨コンポーネントの前記内側顆の内壁は、前記第1の円錐台状プロファイルに相補的な第3の円錐台状プロファイルを含む、請求項10に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項12】
前記大腿骨コンポーネントの前記外側顆の内壁は、前記第2の円錐台状プロファイルに相補的な第4の円錐台状プロファイルを含む、請求項11に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項13】
拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、
脛骨トレイと、
関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、
前記脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、前記脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、
前記脛骨支承コンポーネントの前記関節表面と接触する大腿骨コンポーネントと、
第1の端部において前記ヒンジポストに結合され、前記大腿骨コンポーネントの内側顆と外側顆との間に挿入されるように構成されたシャックルと、
前記大腿骨コンポーネントと前記シャックルとの間に位置決めされ、かつ、前記大腿骨コンポーネントによって係合された壁と、
前記シャックルに対して前記大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、
前記大腿骨コンポーネントに取外し可能に取付けられたバンプストップであって、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、前記シャックルと接触するように構成されたバンプストップと、
を含むプロテーゼアセンブリ。
【請求項14】
前記バンプストップは、選択的に取外されるように構成されている、請求項13に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項15】
バンプストップのサイズは、前記バンプストップが前記シャックルに接触する前に、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定する、請求項13に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項16】
拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、
脛骨トレイと、
関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、
前記脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、前記脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、
前記脛骨支承コンポーネントの前記関節表面と接触する大腿骨コンポーネントであって、
顆間領域に対面し、第1の円錐台状プロファイルを含む内部内側顆壁、及び、
前記顆間領域に対面し、第2の円錐台状プロファイルを含む内部外側顆壁、
を含む大腿骨コンポーネントと、
第1の端部において前記ヒンジポストに結合され、前記顆間領域内に挿入されるように構成されたシャックルであって、
第1の側部、及び、
前記第1の側部と反対側の第2の側部、
を含むシャックルと、
前記シャックルの前記第1の側部及び前記第2の側部を被覆するように、前記大腿骨コンポーネントと前記シャックルとの間に位置決めされた壁であって、
前記内部内側顆壁の前記第1の円錐台状プロファイルに相補的な第3の円錐台状プロファイル、及び、
前記内部外側顆壁の前記第2の円錐台状プロファイルに相補的な第4の円錐台状プロファイル、
を含む壁と、
前記シャックルに対して前記大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、
を含むプロテーゼアセンブリ。
【請求項17】
前記大腿骨コンポーネントに対して取外し可能に取付けられたバンプストップであって、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、前記シャックルと接触するように構成されたバンプストップを含む、請求項16に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項18】
前記バンプストップは、膝関節が屈曲状態にあるときに取外されるように構成されている、請求項17に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項19】
バンプストップのサイズは、前記バンプストップが前記シャックルと接触したときに、前記脛骨支承コンポーネントに対する前記大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定する、請求項17に記載のプロテーゼアセンブリ。
【請求項20】
前記バンプストップは、選択的に保守可能となるように構成されている、請求項17に記載のプロテーゼアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、優先権の利益が本明細書により主張されておりかつその全体が参照により本明細書に組込まれている、2022年12月22日出願の米国仮特許出願第63/434,563号明細書及び2023年12月1日出願の米国特許出願第18/526,693号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本主題は、概して整形外科用プロテーゼに関する。より具体的には、本開示は、拘束型膝関節形成術において使用される整形外科用プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
人間の体内の損傷を受けた骨及び組織を修復又は置換するためには、整形外科的手技及びプロテーゼが一般的に利用される。概して、膝は、大腿骨の遠位部分にある顆対によって形成されており、その下位表面は脛骨の対応する形状をもつ近位表面プラトーを圧迫している。大腿骨及び脛骨は、後十字靭帯、外側側副靭帯、内側側副靭帯及び前十字靭帯などの靭帯によって連結されている。これらの靭帯は、膝関節に安定性を提供している。
【0004】
人工膝関節は、拘束型又は非拘束型の何れかとみなすことができる。拘束型人工膝システムは、大腿骨及び脛骨プロテーゼを含むことができ、これらは、大腿骨及び脛骨プロテーゼの間の相対的移動を制限するために、互いに対して機械的にリンクされるか又は拘束されている。このような機械的リンケージのための一般的なメカニズムは、ヒンジ、バンド又は他のリンケージ構造を含むことができる。非拘束型人工膝システムは、機械的にリンクされていない大腿骨及び脛骨プロテーゼを含む。非拘束型膝は、関節の安定性を提供するために患者の残存する靭帯及び他の軟組織を利用する。拘束型人工膝は、患者が靭帯喪失を経験するか/又は残存する靭帯が膝に対して適切な支持及び安定性を提供しない症例に特に利用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は概して、改良された拘束型膝プロテーゼ、特にヒンジポストを利用するものに関する。ヒンジポストを有するいくつかの拘束型膝プロテーゼは、大腿骨コンポーネント(及びヒンジポスト)が脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対して近位/遠位に自由に動くことのできる設計を利用する。このような配設は、膝関節の延伸(distraction)を可能にすることができる。しかしながら、当該発明者は、ヒンジポストを伴う拘束型膝プロテーゼを受入れる一定層の患者では、大腿骨コンポーネントが脛骨ベースプレート及び脛骨ベアリングから延伸しその後脱臼するのを防ぐのに充分な軟組織を膝関節内に有していない可能性がある。脱臼は、患者に疼痛及び他の合併症をもたらす結果となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
改良型プロテーゼの設計上の制約により、このようなコンポーネントの強度を改善するために幅を増加させたコンポーネントが求められることになる。さらに、本出願の発明者らは、当該膝プロテーゼの場合、それが脛骨ベースプレートに関係することから、大腿骨コンポーネントの回転を変更し得る調整が最小限であるということを発見した。
【0007】
添付図面の図中では、一例としてさまざまな実施形態が示されている。このような実施形態は例証的なものであって、本主題の網羅的又は排他的実施形態であるように意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本出願の一実施例に係る拘束型プロテーゼアセンブリを利用できる好適な環境を提供する膝関節構造を示す。
図2図2は、本出願の一実施例に係る拘束型プロテーゼアセンブリを利用できる好適な環境を提供する膝関節構造を示す。
図3図3は、本出願の一実施例に係る拘束型膝プロテーゼアセンブリの斜視図である。
図4図4は、図3の拘束型膝プロテーゼアセンブリの分解図である。
図5図5は、本出願の一実施例に係る拘束型膝プロテーゼの一実施例の横断面図である。
図6図6は、本出願の一実施例に係る大腿骨コンポーネントの一実施例の斜視図である。
図7図7は、本出願の一実施例に係る拘束型膝プロテーゼの一部分の斜視図である。
図8図8は、本出願の一実施例に係る図7の拘束型膝プロテーゼの一部分の分解図である。
図9図9は、本出願の一実施例に係る拘束型膝プロテーゼの一部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願は、拘束型膝プロテーゼに関する。プロテーゼは、シャックルの強度を改善するために増加した幅を有するシャックルを含むことができる。大腿骨コンポーネントは、増加した幅を有するシャックルを収容し、かつ同じ全体的プロテーゼエンベロープ内部に嵌合するように円錐台状プロファイルを含むことができる。プロテーゼは、また、シャックルを少なくとも部分的に取り囲み、かつ大腿骨コンポーネント上の円錐台状プロファイルに相補的である円錐台状プロファイルをまた含み得る大腿骨コンポーネント上の円錐台状プロファイルと係合するように構成された壁を含むことができる。
【0010】
プロテーゼは、また、膝関節が伸展状態にあるときバンプストップがシャックルと接触して脛骨ベースプレートに対する大腿骨コンポーネントのさらなる回転を防止するように大腿骨コンポーネントに対して取外し可能な形で取付けることのできるバンプストップを含むこともできる。プロテーゼは、バンプストップを保守可能となるように構成され得る。したがって、バンプストップは、取外すこと、例えばバンプストップを取外すことなく脛骨ベースプレートに対する大腿骨コンポーネントの回転を迅速に変更するべく調整すること、又は膝からプロテーゼを取外すことなく置換することができる。例えば、プロテーゼは、膝関節が屈曲状態にあるとき、バンプストップを取外すか、調整するか、又は置換するように構成され得る。
【0011】
膝関節置換術をより良く理解するためには、膝関節内部でさまざまな暫定的な及び恒久的なプロテーゼコンポーネントを配向する目的で形成することのできる骨カット部分と骨との間の関係を理解することが有用であり得る。図1及び図2は、膝関節構造のいくつかの特徴部及び配向を例示している。図1では、大腿骨104及び脛骨106を含む下肢102の正面図が、さまざまな下肢軸を例示している。大腿骨104は、概してその髄内管と一致する解剖学的軸108を有する。大腿骨104は、また、大腿骨頭部112の中心から膝関節114の中心まで延びる機械軸110又は負荷軸も有している。これら2つの軸間に延在する角度116は、患者集団間で変動するが、概して5度から7度の間である。大腿骨104と同様、脛骨106も、概してその髄内管と一致する解剖学的軸を有する。脛骨106の機械軸118は、膝関節114の中心から距腿部120の中心まで延びており、概してその解剖学的軸と共線的である。
【0012】
膝関節114が屈曲する中心である関節線122は、内側及び外側大腿骨顆124を通る線及び脛骨プラトー126に対してほぼ平行である。図1には直角に交わるものとして例示されているものの、関節線122は、それぞれ、大腿骨104及び脛骨106の機械軸110及び機械軸118に対して内反角度又は外反角度を成して延在することができる。通常は、部分置換術又は全置換術の間、大腿骨104の遠位端部又は脛骨106の近位端部の一部が、関節線122に対して平行又はほぼ平行に、したがってそれぞれ128及び130で標示されているように機械軸110及び機械軸118に対して直交するように切除される。
【0013】
典型的な膝は、大腿骨104の長手方向軸及び脛骨106の長手方向軸が本質的に平行である伸展状態と、大腿骨104の長手方向軸及び脛骨106の長手方向軸が互いに対して約140度の角度を成している屈曲状態との間で移動することができる。実施例においては、伸展状態を+/-10度に制限することができ、屈曲状態は140度よりもはるかに小さいものになり得る。例えば、屈曲状態は、大腿骨104の長手方向軸と脛骨106の長手方向軸が互いに対して約90度から140度の角度を成している限界を含むことができる。
【0014】
図2は、膝関節114とその座標系のより接近した図を例示しており、ここで内側/外側軸202は関節線122(図1参照)に凡そ対応し、近位/遠位軸204は、機械軸110(図1参照)、機械軸118(図1参照)に凡そ対応し、前方/後方軸206は、他の2本の軸に対して凡そ垂直である。矢印は、挿入したプロテーゼコンポーネントの内側/外側208、前方/後方210及び近位/遠位212の位置を表わす、これらの軸の各々に沿った位置を描くことができる。これらの軸の各々を中心とした回転もまた、矢印で描くことができる。近位/遠位軸204を中心とした回転は、解剖学的に大腿骨コンポーネントの外旋に対応でき、一方、前方/後方軸206及び内側/外側軸202を中心とした回転は、それぞれ、コンポーネントの伸展平面勾配及び内反/外反角度に対応し得る。形成された近位脛骨カット部分130(図1参照)の位置に応じて、内反/外反角度214、伸展平面角度216、外旋218又は関節伸展間隙が影響を受ける可能性がある。また、遠位大腿骨カット部分128(図1参照)の位置は、関節線122の場所、伸展間隙、内反/外反角度214又は伸展平面角度216に影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
本明細書中で使用されている「近位」及び「遠位」なる用語には、それらの一般的に理解されている解剖学的解釈が与えられるべきである。「近位」なる用語は、概して患者の胴に向かう方向を意味し、「遠位」なる用語は、近位とは反対の方向すなわち患者の胴から離れる方向を意味する。「近位」及び「遠位」なる用語は、あたかも膝関節を伸展させた状態で患者が立っているかのように解釈されなければならないと理解すべきである。その意図は、「近位」及び「遠位」なる用語を「前方」及び「後方」なる用語と区別することにある。本明細書中で使用されている「前方」及び「後方」なる用語には、それらの一般的に理解される解剖学的解釈が与えられるべきである。したがって、「後方」は患者の後部、例えば膝の背部を意味する。また、「前方」は患者の前部、例えば膝の前部を意味する。したがって、「後方」は「前方」の反対方向を意味する。また、「外側」なる用語は、「内側」の反対方向を意味する。「内側/外側」なる用語は、内側から外側又は外側から内側を意味する。「近位/遠位」なる用語は、近位から遠位又は遠位から近位を意味する。「前方/後方」なる用語は、前方から後方又は後方から前方を意味する。
【0016】
本明細書中で使用される脛骨ベースプレートの「周縁」とは、例えば概して横断方向の解剖学的平面内の上面図に見られる、何れかの周縁を意味する。代替的には、脛骨ベースプレートの周縁は、例えば概して横断方向平面内でかつ脛骨の切除された近位表面と接触するように適応された遠位表面を見た底面図に見られる何れかの周縁であってよい。
【0017】
図3は、拘束型膝用プロテーゼアセンブリ300を示す。プロテーゼアセンブリ300は、脛骨ベースプレート302、脛骨支承コンポーネント304(半月板コンポーネント、ポリ、関節コンポーネント又はベアリングと称されることもある)、大腿骨コンポーネント306及びヒンジポスト308を含むことができる。
【0018】
脛骨支承コンポーネント304を、脛骨ベースプレート302の近位表面310の頂部に位置決めすることができる。脛骨支承コンポーネント304は、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)などのポリマ材料で形成することができる。脛骨支承コンポーネント304は、当該技術分野において公知の通り、膝関節の屈曲及び伸展を通して大腿骨コンポーネント306と関節接合するように構成可能である。プロテーゼアセンブリ300は、互いに機械的にリンクされた大腿骨コンポーネント306と脛骨ベースプレート302とを有する。これは、図4でさらに例示され、論述されるヒンジポスト308及び他のコンポーネントによって達成される。ヒンジポスト308は、大腿骨コンポーネント306に結合され、脛骨支承コンポーネント304の凹部309及び脛骨ベースプレート302の凹部322(図4)内部に収容される。
【0019】
図4は、プロテーゼアセンブリ300、脛骨ベースプレート302、脛骨支承コンポーネント304、大腿骨コンポーネント306、ヒンジポスト308の分解図を示し、さらに、ヒンジ軸312、ポリボックス314、軸ブッシング316、シャックル318及びブッシングを例示している。
【0020】
ヒンジポスト308は、シャックル318、軸ブッシング316及びヒンジ軸312を介して大腿骨コンポーネント306に連結される。シャックル318の遠位部分は、脛骨支承コンポーネント304中の凹部309内に収容され、遠位部分は、ヒンジポスト308にネジ込まれるか又は他の形で連結される。ヒンジポスト308は、脛骨支承コンポーネント304の凹部309を通って遠位に延在し、脛骨ベースプレート302の凹部322内に収容される。ヒンジポスト308を収容する脛骨ベースプレート302の凹部322は、少なくとも部分的にベースプレート302のキール324によって形成されて得る。ヒンジポスト308は、脛骨支承コンポーネント304又は脛骨ベースプレート302に対して移動可能、例えば、回転可能又は延伸可能であり得る。ヒンジ軸312を介して、大腿骨コンポーネント306に対して回転可能にヒンジポスト308を連結することができる。したがって、ヒンジポスト308の中心線を画定する長手方向軸LAは、大腿骨コンポーネント306及び脛骨ベースプレート302が機械的にリンクされていることから、膝関節のための回転/関節接合軸ARAを画定することができる。
【0021】
組立てると、シャックル318をポリボックス314の対向する壁の間に設置することができる。ヒンジ軸312上に組立てると、軸ブッシング316はさらに、シャックル318の近位部分上の開口内部に存在する。シャックル318及びヒンジポスト308は、チタン合金、コバルト-クロム合金などの好適な材料で形成され得、一方、軸ブッシング316及びポリボックス314は、UHMWPEなどのプラスチックといった異なる材料で形成可能である。軸ブッシング316は、シャックル318とヒンジ軸312との間のベアリングとして作用することができる。ポリボックス314は、大腿骨コンポーネント306とシャックル318との間のベアリングとして作用することができる。
【0022】
図4のプロテーゼアセンブリ300は、膝の延伸がプロテーゼアセンブリ300の捕捉要素又は他の特徴部によって制限されていないコンポーネントのシステム326を示す。したがって、システム326は、組立てられたときに、完全に伸展するように構成されたコンポーネントを提供する。したがって、先に論述されているように、膝の軟組織は、大腿骨コンポーネント306と脛骨ベースプレート302及び脛骨支承コンポーネント304との間の延伸を制限することに依拠する。ブッシング320は、少なくとも脛骨ベースプレート302の凹部322内に挿入するように構成することができる。ブッシング320は、また、いくつかの実施例において脛骨支承コンポーネント304の凹部309(図3参照)内に又はそれを貫通して挿入することができる。ブッシング320は、ヒンジポスト308の少なくとも一部分を収容するように構成され得る。ブッシング320は、ヒンジポスト308と脛骨ベースプレート302との間のベアリングとして作用できる。ヒンジポスト308は、概してブッシング320に対して近位/遠位に移動可能であり得る。
【0023】
図5は、本出願の一実施例に係る、拘束型膝用プロテーゼアセンブリの一実施例(プロテーゼアセンブリ500)の横断面図である。プロテーゼアセンブリ500は、脛骨トレイ502、脛骨支承コンポーネント504、大腿骨コンポーネント506、ヒンジポスト508、シャックル518及びヒンジ軸512を含むことができる。
【0024】
脛骨トレイ502、例えば、図3から図4の脛骨ベースプレート302は、近位表面510、例えば図3の近位表面310から遠位表面まで延在できる。近位表面510及び遠位表面は、間に周縁を画定できる。周縁は、脛骨トレイ502の前方縁部と後方縁部との間に延在できる。近位表面510は、遠位表面に向かって延在できる凹部522を含むことができる。凹部522、例えば、図4の凹部322は、少なくとも部分的にヒンジポスト508を収容するように構成され得る。
【0025】
脛骨支承コンポーネント504、例えば図3から図4の脛骨支承コンポーネント304は、脛骨トレイ502と係合可能である。例えば、脛骨トレイ502は、脛骨支承コンポーネント504が大腿骨コンポーネント506と係合する一方で、脛骨支承コンポーネント504を支持することができる。一実施例において、脛骨支承コンポーネント504は、関節表面505を含むことができる。関節表面505は、大腿骨コンポーネント506と係合するように構成され得る。より具体的には、関節表面505を、大腿骨コンポーネント506の内側顆及び外側顆と係合するように構成することができる。
【0026】
大腿骨コンポーネント506、例えば、図3から図4の大腿骨コンポーネント306は、脛骨支承コンポーネント504の関節表面505と接触することができ、かつ、脛骨支承コンポーネント504と関節接合するように構成され得る。
【0027】
ヒンジポスト508、例えば図3から図4のヒンジポスト308は、脛骨支承コンポーネント504を通って延在でき、かつ少なくとも部分的に脛骨トレイ502の凹部522内に収容され得る。ヒンジポスト508は、脛骨トレイ502の凹部522内部の部分及び脛骨トレイ502の凹部522の外部に延在する部分を含むことができる。凹部522内部に延在するヒンジポスト508の部分は、凹部522内部のねじ山と相補的であるねじ山を含むことができる。凹部522外部に延在するヒンジポスト508の部分は、ヒンジポスト508が脛骨トレイ502の凹部522内に設置されると、大腿骨コンポーネント506がヒンジポスト508を取り囲むように、大腿骨コンポーネント506を通って延在するように構成され得る。凹部522の外部に延在するヒンジポスト508の部分は、シャックル518上の取付け機構と相補的であり得るねじ付き表面、他の任意の取付け機構などを含むブッシングによって収容され得る。
【0028】
シャックル518、例えば、図3及び図4のシャックル318は、ヒンジポスト508に連結するように構成され、追加のコンポーネントをプロテーゼアセンブリ500に取付けるために取付けられているプロテーゼアセンブリ500の他のコンポーネントを有することができる。シャックル518は、第1の端部530と第2の端部532との間に延在することができる。第1の端部530は、ヒンジポスト508に取付け、結合又は噛合させるように構成することができる。例えば、第1の端部530は、凹部522の外部に延在するヒンジポスト508の部分のねじ付き表面と相補的であるねじ付き表面を含むことができる。第2の端部532は、プロテーゼアセンブリ500の1つ又は複数のコンポーネントをシャックル518に取付けるためにヒンジ軸512を収容するように構成可能である。例えば、第2の端部532は、ヒンジ軸512を収容するように構成された開口を含むことができる。シャックル518は、大腿骨コンポーネント506の顆間領域507内に挿入されるように構成可能である。
【0029】
ヒンジ軸512、例えば図3及び図4のヒンジ軸312は、他のコンポーネントのなかでも大腿骨コンポーネント506をシャックル518にそしてシャックル518を介してヒンジポスト508に固定するように構成可能である。ヒンジ軸512は、大腿骨コンポーネント506を含めたコンポーネントをシャックル518上に保持するためにヒンジ軸512を使用できるように、大腿骨コンポーネント506の厚みよりも大きい距離だけ延在する細長い部材であり得る。例えば、ヒンジ軸512は、ヒンジ軸512を収容するように構成されたシャックル518内の開口を介してシャックル518に大腿骨コンポーネント506及び壁514を取付けることができる。プロテーゼアセンブリ500は、また、1つ又は複数のブッシング、ワッシャ又は、ヒンジ軸512とシャックル518内の開口との間の相互作用と相補的であり得る他の任意のコンポーネントを含むことができる。
【0030】
壁514、例えば、図3から図4のポリボックス314については、図7及び図8を参照して以下でさらに詳細に論述する。
【0031】
プロテーゼアセンブリ500は、また、大腿骨コンポーネント506に対して取外し可能な形で取付けることのできるバンプストップ528を含むことができる。図5に示すように、プロテーゼアセンブリ500が伸展状態にあるとき、バンプストップ528は、シャックル518に接触して、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506のさらなる回転を防止することができる。バンプストップ528については、図7から図9を参照して以下で詳細に論述する。
【0032】
図6は、本発明の一実施形態に係る、大腿骨コンポーネントの一実施例、例えば大腿骨コンポーネント506の斜視図である。実施例において、大腿骨コンポーネント506は、大腿骨コンポーネント506の内側顆と外側顆との間に延在する顆間領域507を含むことができる。大腿骨コンポーネント506は、内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511を含むことができる。顆間領域507は、内部内側顆壁509と内部外側顆壁511との間に延在することができる。顆間領域507、内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511は、プロテーゼアセンブリ500の関節接合中、シャックル518、より具体的には壁514と係合するように構成可能である。
【0033】
内部内側顆壁509は、円錐台状プロファイル513を含むことができ、内部外側顆壁511は、円錐台状プロファイル515を含むことができる。一実施例において、円錐台状プロファイル513は、内部内側顆壁509全体に延在できる。別の実施例においては、円錐台状プロファイル513は、内部内側顆壁509の一部分のみで延在できる。一実施例において、円錐台状プロファイル515は、内部外側顆壁511全体に延在できる。別の実施例において、円錐台状プロファイル515は内部外側顆壁511の一部分のみで延在できる。内部内側顆壁509の円錐台状プロファイル513及び内部外側顆壁511の円錐台状プロファイル515は、それぞれ内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511の厚みを最大化して、内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511の強度を最大化しながら内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511が占める空間を最小限に抑えることができる。さらに、円錐台状プロファイル513及び円錐台状プロファイル515は、それぞれ内部内側顆壁509及び内部外側顆壁511内の応力集中を低減するように構成可能である。
【0034】
図7及び図8は、以下で一緒に論述される。図7は、本出願の一実施例に係る、拘束型膝プロテーゼ、例えばプロテーゼアセンブリ500の一部分の斜視図である。図8は、プロテーゼアセンブリ500の分解図である。プロテーゼアセンブリ500は、2つ以上のポリ壁又は保守可能な壁(壁514)を含むことができる。壁514は、シャックル518の一部分を少なくとも取り囲むように構成可能である。実施例において、シャックル518は、壁514の開口を通って延在するヒンジ軸512によってシャックル518全体にわたり所定の位置に保持されるオーバーモールドであり得る。別の実施例において、壁514は、ヒンジ軸512がシャックル518上で壁514を保持するようにシャックル518全体にわたって嵌合し得る。ここで、壁514は、ヒンジ軸512及びシャックル518の第2の端部532内の開口を介してシャックル518に対して取付け可能である。
【0035】
上述の図3から図4で示されているように、ポリボックス314は、シャックル318を部分的に取り囲むように構成された一体型設計であり得る。しかしながら図7及び8で示されているように、壁514は、少なくとも部分的にシャックル518を取り囲むように構成されたツーピース設計でもあり得る。したがって、壁514は、第1の壁534及び第2の壁536を含むことができる。壁514のツーピース設計は、ポリボックス314の一体型設計ほど複雑でないことから、壁514をより容易に製造できるようにする。例えば、第1の壁534及び第2の壁536を別個に製造し、プロテーゼアセンブリ500の組立て前又は組立て中に組立てることができる。
【0036】
第1の壁534は、シャックル518の第1の壁540を被覆するように構成可能である。第2の壁536は、シャックル518の第2の壁542を被覆するように構成可能である。第1の壁534及び第2の壁536は、シャックル518の前方縁部544上で一緒にすることができる。第1の壁534及び第2の壁536は、第1の壁534を第2の壁536に取外し可能な形で結合して壁514を形成する取付け機構519を含むことができる。取付け機構519は、また、第1の壁534と第2の壁536との間の1つ又は複数の方向での相対的移動を抑制することもできる。例えば、取付け機構519は、第1の壁534と第2の壁536を結合するダブテール形成物を含むことができる。別の実施例において、取付け機構519は、第1の壁534と第2の壁536を結合できる実継ぎを含むことができる。さらに別の実施例では、取付け機構519は、第1の壁534と第2の壁536を共に結合できる任意の取付け機構であり得る。例えば、取付け機構519は、タブ、スロット、パターン、突出部、溝又は第1の壁534と第2の壁536を結合するために使用可能な他の任意の幾何学的特徴部などを含むことができる。
【0037】
実施例において、第1の壁534の少なくとも一部分は、円錐台状プロファイル535を含むことができ、第2の壁536の少なくとも一部分は、円錐台状プロファイル537を含むことができる。第1の壁534の円錐台状プロファイル535は、内部内側顆壁509の円錐台状プロファイル513と相補的であり得、第2の壁536の円錐台状プロファイル537は、内部外側顆壁511の円錐台状プロファイル515と相補的であり得る。例えば、プロテーゼアセンブリ500の係合の間、内部内側顆壁509の円錐台状プロファイル513は、第1の壁534の円錐台状プロファイル535と係合でき、内部外側顆壁511の円錐台状プロファイル515は、第2の壁536の円錐台状プロファイル537と係合できる。円錐台状プロファイル、例えば円錐台状プロファイル513、円錐台状プロファイル515、円錐台状プロファイル535及び円錐台状プロファイル537は、段付き設計又は大腿骨コンポーネント506とシャックル518との間のクリアランスを改善するために使用可能な他の任意の設計と比べて、大腿骨コンポーネント506及び壁514の強度を維持しながら、大腿骨コンポーネント506と壁514との間に追加のクリアランスを提供することができる。
【0038】
図8は、本出願の一実施例に係る、プロテーゼアセンブリ500の一部分の横断面図である。図8において、プロテーゼアセンブリ500は、プロテーゼアセンブリ500の操作中にプロテーゼアセンブリ500の異なるコンポーネントが互いにどのように相互作用するかを例示するため、異なる配向で示されている。
【0039】
配向802において、膝関節又はプロテーゼアセンブリ500は、バンプストップ528がシャックル518と接触して、大腿骨コンポーネント506が脛骨コンポーネント、例えば、図5の脛骨支承コンポーネント504に対して、さらに回転するのを防ぐように伸展され得る。例えば、バンプストップ528は、プロテーゼアセンブリ500のさらなる回転(又はさらなる伸展)を防ぐために、シャックル518と接触させることができる。図8に示されるように、プロテーゼアセンブリ500がどの程度の回転を許容するかは、バンプストップ528のサイズによって決定され得る。例えば、大腿骨コンポーネント506に対面するバンプストップ528の表面とシャックル518に接触するように構成されたバンプストップ528との間の高さ又は厚みが、脛骨支承コンポーネント504(図5参照)に対する大腿骨コンポーネント506の回転の限界を決定できる。例えば、バンプストップ528の厚みを減少させることで、バンプストップ528がシャックル51に接触する前により多くの回転を可能にすることができる。脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506のより少ない回転を可能にするためには、バンプストップ528の厚みを増加させることができる。別の実施例においては、バンプストップ528がシャックル518に接するときを変更するように、バンプストップ528の表面の形状を変えることができる。例えば、バンプストップ528は、平担であるか、丸味を帯びているか、又は脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量に影響を及ぼすことのできる他の任意の形状であることなどが可能である。
【0040】
実施例において、システムには、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の多数の回転角度を提供する目的で、多数のバンプストップ528を含むことができる。ここで、システムは、バンプストップ528がシャックル518と接触する前に脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を調整するため、プロテーゼアセンブリ500の組立て前又は組立て中に、あるいはプロテーゼアセンブリ500の移植後にバンプストップ528を選択できるように、多数のバンプストップ528を提供することができる。例えば、外科医は、プロテーゼアセンブリ500を移植し、可動域試験又は他の任意の指標に基づいて、適切なバンプストップ528を決定することができる。別の実施例では、患者の膝が治癒しつつある間に、バンプストップ528を変更することができる。例えば、バンプストップ528は、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506のより大きな回転を防止するために当初大きいものであり得、患者の治癒につれて、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506のより多くの回転を可能にするためにより小さいサイズのバンプストップ528へとバンプストップ528を変更することができる。
【0041】
配向804において、膝関節及びプロテーゼアセンブリ500は、バンプストップ528をシャックル518から離れるように移動させるべくヒンジ軸512周りに大腿骨コンポーネント506を回転させるように関節接合できる。例えば、バンプストップ528が軸から最も離れたところにあるプロテーゼアセンブリ500又は膝関節の状態を、屈曲状態と呼ぶことができる。屈曲状態では、バンプストップ528は、露出されているか又はプロテーゼアセンブリ500の前部からアクセス可能であり得る。屈曲状態で、バンプストップ528を整備することができる。例えば、バンプストップ528を取外すか又は異なるサイズのバンプストップで置換することができる。図8から分かるように、バンプストップ538は、バンプストップ538が大腿骨コンポーネント506内に圧入され、バンプストップ538を大腿骨コンポーネント506と結合できるように、大腿骨コンポーネント506の座部又は溝の内部に嵌合できる頂上部(ridge)又は隆起部(bulge)を含むことができる。また、バンプストップ538は、大腿骨コンポーネント506の溝を通過してバンプストップ538の頂上部又は隆起部を通すことによって取外し可能である。別の実施例では、大腿骨コンポーネント506の内部にバンプストップ538を固定するために、他の任意のプレス嵌め又は迅速な着脱取付け具を使用することができる。
【0042】
別の実施例において、大腿骨コンポーネント506内部のバンプストップ528の据付けを調整して、バンプストップ528がシャックル518と接触する前に脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を変更することができる。例えば、バンプストップ528は、大腿骨コンポーネント506がシャックル518と接触した場合にバンプストップ528の据え付けを調整し、大腿骨コンポーネント506とシャックル518との間の間隙を変更するように、大腿骨コンポーネント506の溝内に嵌合できる多数の頂上部(ridge)又は突出部を含むことができる。このような調整は、バンプストップ528がシャックル518と接触する前の回転量を変更して、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を改変させることができる。
【0043】
配向806で示されている実施例において、配向802及び804のバンプストップ528を取外し、配向806及び808で示すような異なるサイズのバンプストップ528などのバンプストップと置換することができる。配向806で示されているように、バンプストップ528を、さらに大きいバージョンのバンプストップ528で置換することができる。以上で論述されたように、バンプストップ528のさらに大きいバージョンは、より早くシャックル518と接触して脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転を防止することができる。別の実施例では、バンプストップ528のサイズを小さくして、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を増加させることができる。
【0044】
配向808で示されているように、バンプストップ、例えば配向806及び808で示された異なるサイズのバンプストップ528を設置することによって、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を改変することができる。配向808で示されているように、配向802及び804におけるバンプストップ528と比べて増加したサイズのバンプストップ528が、脛骨支承コンポーネント504に対する大腿骨コンポーネント506の回転量を減少させることができる。
【0045】
以下の非限定的な実施例は、課題を解決し、なかでも本明細書中で論述されたメリットを提供するための当該主題のいくつかの態様を詳述する。
【実施例0046】
実施例1は、拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、脛骨トレイと、関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、脛骨支承コンポーネントの関節表面と接触しかつ脛骨支承コンポーネントと関節接合するように構成された大腿骨コンポーネントと、第1の端部においてヒンジポストに結合され、大腿骨コンポーネントの内側顆と外側顆との間に挿入されるように構成されたシャックルであって、第1の側部及び第1の側部と反対側の第2の側部を含むシャックルと、大腿骨コンポーネントとシャックルとの間に位置決めされ、かつ、大腿骨コンポーネントによって係合された壁であって、シャックルの第1の側部を被覆するように構成された第1の壁及びシャックルの第2の側部を被覆するように構成された第2の壁であって、第1の壁は第2の壁に取付けられている第2の壁を含む壁と、シャックルに対して大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、を含むプロテーゼアセンブリである。
【0047】
実施例2において、実施例1の主題は、大腿骨コンポーネントに対して取外し可能に取付けられたバンプストップであって、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、シャックルと接触するように構成されたバンプストップ、を含む。
【0048】
実施例3において、実施例2の主題は、バンプストップは、膝関節が屈曲状態にあるときに取外されるように構成されていることを含む。
【0049】
実施例4において、実施例2から実施例3の主題は、バンプストップのサイズは、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定することを含む。
【0050】
実施例5において、実施例4の主題は、バンプストップは、選択的に保守可能となるように構成されたことを含む。
【0051】
実施例6において、実施例1から実施例5の主題は、第1の壁は、第2の壁に対して取外し可能に取付けられることを含む。
【0052】
実施例7において、実施例6の主題は、第1の壁及び第2の壁は、係合機構によって結合されていることを含む。
【0053】
実施例8において、実施例7の主題は、係合機構は、第1の壁と第2の壁との間のダブテール連結を含むことを含む。
【0054】
実施例9において、実施例6から実施例8の主題は、第1の壁の外表面は、少なくとも部分的に第1の円錐台状プロファイルを含むことを含む。
【0055】
実施例10において、実施例9の主題は、第2の壁の外表面は、少なくとも部分的に第2の円錐台状プロファイルを含むことを含む。
【0056】
実施例11において、実施例10の主題は、大腿骨コンポーネントの内側顆の内壁は、第1の円錐台状プロファイルに相補的な第3の円錐台状プロファイルを含むことを含む。
【0057】
実施例12において、実施例11の主題は、大腿骨コンポーネントの外側顆の内壁は、第2の円錐台状プロファイルに相補的な第4の円錐台状プロファイルを含むことを含む。
【0058】
実施例13は、拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、脛骨トレイと、関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、脛骨支承コンポーネントの関節表面と接触する大腿骨コンポーネントと、第1の端部においてヒンジポストに結合され、大腿骨コンポーネントの内側顆と外側顆との間に挿入されるように構成されたシャックルと、大腿骨コンポーネントとシャックルとの間に位置決めされ、かつ、大腿骨コンポーネントによって係合された壁と、シャックルに対して大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、大腿骨コンポーネントに対して取外し可能に取付けられたバンプストップであって、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、シャックルと接触するように構成されたバンプストップと、を含むプロテーゼアセンブリである。
【0059】
実施例14において、実施例13の主題は、バンプストップは、選択的に取外されるように構成されていることを含む。
【0060】
実施例15において、実施例13から実施例14の主題は、バンプストップのサイズは、バンプストップがシャックルに接触する前に、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定することを含む。
【0061】
実施例16は、拘束型膝用プロテーゼアセンブリであって、脛骨トレイと、関節表面を含む脛骨支承コンポーネントと、脛骨支承コンポーネントを貫通して延在し、脛骨トレイの凹部内に少なくとも部分的に収容されたヒンジポストと、脛骨支承コンポーネントの関節表面と接触する大腿骨コンポーネントであって、顆間領域に対面し、第1の円錐台状プロファイルを含む内部内側顆壁、及び、顆間領域に対面し、第2の円錐台状プロファイルを含む内部外側顆壁を含む大腿骨コンポーネントと、第1の端部においてヒンジポストに結合され、顆間領域内に挿入されるように構成されたシャックルであって、第1の側部、及び、第1の側部と反対側の第2の側部を含むシャックルと、シャックルの第1の側部及び第2の側部を被覆するように大腿骨コンポーネントとシャックルとの間に位置決めされた壁であって、内部内側顆壁の第1の円錐台状プロファイルに相補的な第3の円錐台状プロファイル、及び、内部外側顆壁の第2の円錐台状プロファイルに相補的な第4の円錐台状プロファイルを含む壁と、シャックルに対して大腿骨コンポーネントを固定するように構成されたヒンジ軸と、を含むプロテーゼアセンブリである。
【0062】
実施例17において、実施例16の主題は、大腿骨コンポーネントに対して取外し可能に取付けられたバンプストップであって、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界において、シャックルと接触するように構成されたバンプストップを含む。
【0063】
実施例18において、実施例17の主題は、バンプストップは、膝関節が屈曲状態にあるときに取外されるように構成されていることを含む。
【0064】
実施例19において、実施例17から実施例18の主題は、バンプストップのサイズは、バンプストップがシャックルと接触したときに、脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの回転の設定限界を決定することを含む。
【0065】
実施例20において、実施例17から実施例19の主題は、バンプストップは、選択的に保守可能となるように構成されていることを含む。
【0066】
実施例21は、実施例1から実施例20の何れかを実装するための手段を含む器具である。
【0067】
実施例22は、実施例1から実施例20の何れかを実装するためのシステムである。
【0068】
実施例23は、実施例1から実施例20の何れかを実装するための方法である。
【0069】
以上の詳細な説明は、この詳細な説明の一部を成す添付図面に対する参照を含む。図面は、例示として、実践可能である具体的実施形態を示している。これらの実施形態は、本明細書において「実施例」とも呼ばれている。このような実施例は、図示又は説明された要素に加えて他の要素を含んでいてよい。しかしながら、当該発明者らは、また、図示又は説明された要素のみが具備されている実施例も企図している。さらに、当該発明者らは、特定の実施例(又はその1つ又は複数の態様)に関して、あるいは本明細書中に図示又は説明されている他の実施例(又はその1つ又は複数の態様)に関しての何れかについて、図示又は説明されたもの(又はその1つ又は複数の態様)の任意の組合せ又は置換を用いた実施例をも企図している。
【0070】
本明細書中で言及されている全ての刊行物、特許及び特許文書は、本明細書中にその全体が、あたかも参照によって個別に組込まれているかのように組込まれている。本明細書とこれらの文書の間に用法上の矛盾が発生した場合、組込まれた参考文献中の用法は、本明細書のものを補足するものとみなされるべきである。
【0071】
本明細書において、「a」又は「an」なる用語は、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」の何れかの他の事例又は用法とは無関係に、1つ又は2つ以上を内含するように使用される。本明細書中では、別段の標示の無いかぎり、「or(又は)」なる用語は、非排他的orを意味するように使用されるか、あるいは「A or B(A又はB)」が「A but B(BではなくA)」、「B but not A(AではなくB)」、及び「A and B(A及びB)」を含むように使用される。添付クレーム中で、「including(~を含む)」及び「in which」なる用語は、それぞれ「comprising(~を含む)」及び「wherein」なる用語のプレイン・イングリッシュ等価物として使用される。また、以下のクレームにおいて、「including」及び「comprising」なる用語は、オープンエンドである。すなわち、クレーム中でこのような用語の後に列挙されている要素に加えて他の要素を含むシステム、デバイス、物品又はプロセスがなおもそのクレームの範囲内に入るものとみなされる。その上、以下のクレームにおいて、「first(第1の)」「second(第2の)」及び「third(第3の)」なる用語は、単なるラベルとして使用されているにすぎず、その目的語について数値的要件を課すように意図されていない。
【0072】
本明細書中で使用される「約(about)」なる用語は、凡そ(approximately)、~の領域内(in the region of)、おおまかに(roughly)又は約(around)を意味する。「about」なる用語が数値範囲と併用される場合、それは、記載された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を修正する。概して、「about」なる用語は本明細書中で、表示された値の上下に10%の差異で数値を修正するために使用されている。一態様において、「about」なる用語は、それが共に使用されている数字の数値の±10%を意味する。したがって、約50%は、45%~55%の範囲内を意味する。端点によって本明細書中に記載されている数値範囲は、その範囲内に包含される全ての数字及び分数を含み、例えば1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、4.24及び5を含む。また、端点によって本明細書中に記載されている数値範囲は、その範囲内に包含される部分範囲を含み、例えば1~5は、1~1.5、1.5~2、2~2.75、2.75~3、3~3.90、3.90~4、4~4.24、4.24~5、2~5、3~5、1~4及び2~4を含む。また、全ての数字及びその分数が、「about」なる用語によって修正されるものと推定されるということも理解すべきである。
【0073】
以上の説明は、限定的であることを意図したものではなく、例示を意図したものである。例えば、上述の実施例(又はその1つ又は複数の態様)は互いに組合せて使用されてよい。例えば上述の説明を精査した上で当業者であれば他の実施例を使用してもよい。要約書は、技術的開示の内容を読者が迅速に確認できるようにするためのものであり、それがクレームの範囲又は意味を解釈又は限定するのに使用されることはないとの了解の上で提出されるものである。また、以上の詳細な説明においては、開示を簡素化するために、さまざまな特徴がまとめられている可能性がある。これは、請求されていない開示対象の特徴が何れかのクレームにとって不可欠であることを意図しているものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明力ある主題は、特定の開示された実施形態の全てよりも少ない特徴の中に存在し得る。したがって、以下のクレームは、本明細書により詳細な説明の中に組込まれており、各クレームは別個の実施形態として自立している。実施形態の範囲は、添付クレームが権利を有する等価物の全範囲と共に、添付クレームを参照して決定されなければならない。
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【外国語明細書】