(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091561
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20240627BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20240627BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240627BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20240627BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20240627BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240627BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M107/34
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
C10N30:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214597
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022206495
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】木口 真之介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義光
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB41A
4H104CB08C
4H104CB14A
4H104EA01C
4H104EA03C
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、粘度指数及び低温粘度が良好な潤滑油組成物を提供することである。
【解決手段】下記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を61重量%以上含み、潤滑油組成物に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)の比率(EOB/EOA)が0.1~1.2である潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を61重量%以上含み、潤滑油組成物に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EO
A)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EO
B)の比率(EO
B/EO
A)が0.1~1.2である潤滑油組成物。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基;R
2は炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基;pは1~100の整数。]
【請求項2】
前記(共)重合体(A)が、単量体(a)以外の炭素数1~19の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(共)重合体(A)が、炭素数20~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アルキルエステル(c)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が5,000~1,000,000である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記(共)重合体(A)の溶解性パラメータが9.4~11.0(cal/cm3)1/2である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)が下記一般式(2)で表される化合物であり、数平均分子量が2000以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
R3-[-O-(A1O)j-H]k (2)
[一般式(2)中、R3は水素原子又は炭素数1~12であるk価の炭化水素基であり、kは1~6の整数であり、A1Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、A1Oとして少なくとも1つはエチレンオキシ基を有し、jはアルキレンオキシ基の付加モル数を表す1以上の整数である。]
【請求項7】
潤滑油組成物に含まれる前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)がプロピレンオキシ基を有し、前記(B)を構成するエチレンオキシ基(EO)のモル数とプロピレンオキシ基(PO)のモル数とのモル比(EO/PO)が100/0~50/50である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記(共)重合体(A)の含有量が0.4~25重量%である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
さらに清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してなる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出量低減のために自動車や建設機械、航空機など種々の機械に対して、一層省燃費要求が厳しくなっている。また、一般的に潤滑油に使用される基油としては、安価であることから鉱物油が広く使われているが、環境に排出されると生分解性が低いため、悪影響を及ぼすことが危惧されている。この問題に対してはポリアルキレングリコール系基油が提案されている(特許文献1~2)。
【0003】
しかしながら、省燃費性に寄与する粘度指数と低温粘度が不十分であり、またポリアルキレングリコール系基油は水溶性であるため、粘度指数向上剤やその他種々の添加剤が溶解しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-84050号公報
【特許文献2】特開2017-186529号公報
【特許文献3】特開2013-517355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、粘度指数及び低温粘度が良好な潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を61重量%以上含み、潤滑油組成物に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)の比率(EOB/EOA)が0.1~1.2である潤滑油組成物である。
【0007】
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基;R
2は炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基;pは1~100の整数。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物は粘度指数及び低温粘度が良好であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を61重量%以上含み、潤滑油組成物に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)の比率(EOB/EOA)が0.1~1.2である潤滑油組成物である。
【0010】
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基;R
2は炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基;pは1~100の整数。]
【0011】
<(共)重合体(A)>
本発明において、(共)重合体(A)は前記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体として含み、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を61重量%以上含む。
前記単量体(a)を61重量%以上含むことで、アルキレンオキサイド付加物(以下においてPAG油と略記することがある)及び水への溶解性と粘度指数向上効果が高まる。
【0012】
本発明において、(共)重合体(A)は、前記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体として含む。
一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、粘度指数向上効果の観点から、メチル基が好ましい。
【0013】
一般式(1)において、pはエチレンオキシ基(CH2CH2O)の付加モル数を表し、1~100の整数である。
本発明において、(共)重合体(A)を構成する単量体における単量体(a)1モルあたりのpの平均値((A)を構成する単量体中の単量体(a)の有するエチレンオキシ基の平均付加モル数)は、粘度指数向上効果の観点から、1~90が好ましく、より好ましくは2~90であり、さらに好ましくは2~40である。
【0014】
一般式(1)において、R2は炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基を表す。
炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、n-ドデシル基及びイソドデシル基等が挙げられる。
これらのうち、基油溶解性の観点から、直鎖アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0015】
単量体(a)としては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピルオキシエチル(メタ)アクリレート、ブチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシエチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルオキシエチル(メタ)アクリレート、デシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ウンデシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオキサイドが1~99モル付加物したものに炭素数1~12のアルキル基がエーテル基を介して結合した構造を有する化合物{例えば、メトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、プロピルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、ペンチルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、オクチルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、デシルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート、ドデシルオキシポリエチレングリコール(エチレンオキシ単位の繰り返し数2~100)(メタ)アクリレート等}等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート及び/又はアクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「メタクリル及び/又はアクリル」を意味する。
【0016】
単量体(a)としては、粘度指数向上効果の観点から、一般式(1)におけるpが1~90の(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは一般式(1)におけるpが2~90の(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは一般式(1)におけるpが2~40の(メタ)アクリレートである。
【0017】
単量体(a)に由来する構成単位((a)の有する重合性ビニル基が反応して単結合になった構造)は、基油溶解性の観点から、特定の溶解性パラメータ(以下においてSP値と略記することがある)を有するものが好ましい。
単量体(a)に由来する構成単位のSP値は、好ましくは9.0~12.0(cal/cm3)1/2であり、さらに好ましくは9.1~11.0(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは9.1~10.0(cal/cm3)1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、P147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)により算出される値を意味する。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔei及びviの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2
【0018】
【0019】
なお、(共)重合体(A)が単量体として2種以上の単量体(a)を併用する場合は、単量体(a)のSP値は、(A)を構成する複数のそれぞれの単量体のSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体(a)のSP値を、重量分率に基づいて相加平均した値が前記範囲内であることが好ましい。
【0020】
単量体(a)中のエチレンオキシ基の含有率(単量体(a)の化学式量に含まれるエチレンオキシ基の化学式量の重量割合)は、粘度指数向上効果の観点から、30~99重量%が好ましく、更に好ましくは40~98重量%である。
【0021】
単量体(a)は、公知の方法で得ることができ、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオキサイドを1~99モル付加物し、さらに炭素数1~12のアルキル基をエーテル化したり、(メタ)アクリル酸にエチレンオキサイドを1~100モル付加し、さらに炭素数1~12のアルキル基をエーテル化する等により得ることができる。
また、単量体(a)としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(製品名「ブレンマーPME-100」、「ブレンマーPME-200」、「ブレンマーPME-400」、「ブレンマーPME-1000」、「ブレンマーPME-4000」、日油株式会社製)、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート(製品名「ブレンマーPLE-1300」、日油株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(製品名「ブレンマーAME-400」、日油株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(製品名「M-20G」、「M-40G」、「M-90G」、「M-130G」、「M-230G」、「M-450G」、新中村化学株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(製品名「AM-90G」、「AM-130G」、「AM-230G」、新中村化学株式会社製)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(製品名「ライトアクリレートEC-A」、共栄社化学株式会社)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(製品名「ライトアクリレートMTG-A」、共栄社化学株式会社)、2-エチルヘキシルジエチレングリコールアクリレート(製品名「ライトアクリレートEHDG-AT」、共栄社化学株式会社)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(製品名「ライトアクリレート130A」、共栄社化学株式会社)、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート(製品名「ライトエステルBC」、共栄社化学株式会社)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(製品名「ライトエステル130MA」、「ライトエステル041MA」、共栄社化学株式会社)等が市販されており、入手可能である。
【0022】
本発明において、(共)重合体(A)は、単量体(a)以外の炭素数1~19の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b){以下において単量体(b)と略記することがある}、炭素数20~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c){以下において単量体(c)と略記することがある}を構成単量体として含んでもよい。単量体(b)及び/又は単量体(c)を構成単量体として含むと、粘度指数向上効果が期待できる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル及び(メタ)アクリル酸ノナデシル等が挙げられる。
これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、炭素数1~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらに好ましくは炭素数1~16の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸トリアコンチル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル等が挙げられる。
これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、炭素数22~34の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらに好ましくは炭素数24~32の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0024】
本発明において、(共)重合体(A)は、前記以外の単量体を構成単量体として含んでいてもよく、例えば、窒素原子含有単量体(d)、水酸基含有単量体(e)、リン原子含有単量体(f)等が挙げられる。
【0025】
窒素原子含有単量体(d)としては、以下の単量体(d1)~(d4)が挙げられる。
アミド基含有単量体(d1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオニルアミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等のアミド基のみに窒素原子を有するものが挙げられる。
【0026】
ニトロ基含有単量体(d2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0027】
1~3級アミノ基含有単量体(d3):
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};
2級アミノ基含有ビニル単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキレン基(炭素数2~6)を有するもの、例えばt-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};
3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族ビニル系単量体[N,N-ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0028】
ニトリル基含有単量体(d4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0029】
窒素原子含有ビニル単量体(d)のうち好ましいのは、(d1)及び(d3)であり、更に好ましいのは、N,N-ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0030】
水酸基含有単量体(e)としては、具体的には以下のものが挙げられる。
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はジ-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等が挙げられる。
【0031】
リン原子含有単量体(f)としては、以下の単量体(f1)~(f2)が挙げられる。
【0032】
リン酸エステル基含有単量体(f1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。
【0033】
ホスホノ基含有単量体(f2):
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0034】
リン原子含有単量体(f)のうち好ましいのは(f1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0035】
(共)重合体(A)は、以下の単量体(h)~(n)を構成単量体としてもよい。
【0036】
脂肪族炭化水素単量体(h):
炭素数2~20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)等が挙げられる。
【0037】
脂環式炭化水素単量体(i):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0038】
芳香族炭化水素系単量体(j):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、インデン、4-クロチルベンゼン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0039】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(k):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0040】
エポキシ基含有単量体(l):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン元素含有単量体(m):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0042】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート等)等]等が挙げられる。
【0043】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(a)の重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、61重量%以上であり、好ましくは65重量%、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。61重量%未満であると、基油への溶解性と粘度指数向上効果が低下する傾向がある。
【0044】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(b)の重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温粘度と基油溶解性の観点から、39重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0045】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(c)の重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温粘度と基油溶解性の観点から、39重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0046】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(b)及び(c)の合計重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温粘度と基油溶解性の観点から、39重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0047】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(d)~(f)の合計重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温粘度の観点から、15重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0048】
(共)重合体(A)を構成する単量体中の単量体(h)~(n)の合計重量割合は、(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、粘度指数の観点から、15重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0049】
本発明において、(共)重合体(A)のSP値は、粘度指数向上効果と低温粘度の観点から、9.4~11.0(cal/cm3)1/2が好ましく、さらに好ましくは9.45~10.5(cal/cm3)1/2である。
【0050】
(共)重合体(A)のSP値は、前記SP値の算出方法を用いて(A)を構成する各単量体に由来する構成単位((A)を構成する各単量体に含まれるビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CH3が2個、CH2が1個、Cが1個、CO2が1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm3)1/2であることが分かる。同様に計算して、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm3)1/2であることがわかる。
ΣΔei=1125×2+1180+350+4300=8080
Σvi=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm3)1/2
重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、重合体のSP値は、下記の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
重合体(A)のSP値は、使用する単量体、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の長い単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の短い単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。また、エチレンオキシ基の含有率を多くすることでSP値を大きくすることができる。
【0051】
(共)重合体(A)の重量平均分子量(以下においてMwと略記する)は、低温粘度と粘度指数の観点から、好ましくは5,000~1,000,000であり、更に好ましくは10,000~500,000である。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定することができる。
<(共)重合体(A)のMwの測定条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0052】
(共)重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的に例えば、前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、2-プロパノール及び後述の水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
(共)重合体(A)が共重合体である場合の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0053】
本発明において、潤滑油組成物は、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含む。
<水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)>
本発明において、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)(以下においてPAG油(B)と略記することがある)としては、例えば1~6個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B1)のアルキレンオキサイド付加物が含まれ、粘度指数向上効果の観点から、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
R3-[-O-(A1O)j-H]k (2)
[一般式(2)中、R3は水素原子又は炭素数1~12であるk価の炭化水素基であり、kは1~6の整数であり、A1Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、A1Oとして少なくとも1つはエチレンオキシ基を有し、jはアルキレンオキシ基の付加モル数を表す1以上の整数である。]
【0054】
前記一般式(2)中、R3は水素原子又は炭素数1~12であるk価の炭化水素基であり、kは1~6の整数である。R3が水素原子のときは、kは1の整数である。
kとしては、生分解性の観点から、1~3の整数が好ましい。
R3としては、生分解性の観点から、水素原子又は炭素数1~8の1~3価の炭化水素基が好ましく、更に好ましくは水素原子又は炭素数1~4の1~3価の炭化水素基である。
炭素数1~12であるk価の炭化水素基としては、例えば、1~6個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B1)から全ての水酸基を除いた残基が含まれる。
1~6個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B1)としては、例えば、1個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B11)、2個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B12)、3個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B13)、4個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B14)、5個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B15)、6個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B16)等が挙げられる。
【0055】
1個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B11)としては、炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等)等が挙げられる。
2個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B12)としては、炭素数1~12の鎖状脂肪族ジオール(例えば、ジヒドロキシメチル、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等)、炭素数6~12の脂環式ジオール(例えば、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等)、炭素数6~12の芳香環含有ジオール(例えば、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等)等が挙げられる。
3個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B13)としては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等が挙げられる。
4個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B14)としては、例えば、テトリトール(例えば、エリスリトール等)及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
5個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B15)としては、ペンチトール(例えば、アドニトール等)等が挙げられる。
6個の水酸基を有する炭素数2~12の化合物(B16)としては、ヘキシトール(例えば、ソルビトール等)等が挙げられる。
1~6個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(B1)としては、生分解性の観点から、1~3個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(より好ましくは脂肪族化合物)が好ましく、更に好ましくは1~2個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物(より好ましくは脂肪族化合物)であり、特に好ましくは炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールである。
【0056】
前記一般式(2)において、A1はそれぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基であり、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。また、A1Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、A1Oとして少なくとも1つはエチレンオキシ基を有し、アルキレンオキシ基としては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基等が挙げられる。これらのうち、生分解性の観点から、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基が好ましい。また、A1Oとして2種以上有している場合は、ブロック付加(A1Oとして同じものを2つ以上隣り合って結合している)でもランダム付加でもよい。
前記一般式(2)において、jはアルキレンオキシ基の付加モル数を表す1以上の整数である。
一般式(2)におけるkが1の場合、粘度指数向上剤組成物に含まれる水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の1モルあたりのjの平均値(アルキレンオキシ基の平均付加モル数)は、粘度指数向上効果の観点から、3~44が好ましく、更に好ましくは4~44である。
一般式(2)におけるkが2以上の場合、粘度指数向上剤組成物に含まれる水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の1モルあたりのjの合計値(アルキレンオキシ基の平均付加モル数)は、粘度指数向上効果の観点から、3~44が好ましく、更に好ましくは4~44である。
【0057】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)として、好ましい具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
(1)R3が炭素数1~12の1価の鎖状脂肪族炭化水素基であるもの
例えば、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールの炭素数2~4のアルキレンオキサイド(以下においてアルキレンオキサイド及びアルキレンオキシ基をAOと略記することがある)付加物{例えば、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールのエチレンオキサイド(以下においてエチレンオキサイド及びエチレンオキシ基をEOと略記することがある)(平均付加モル数1~44モル)付加物、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールのEO(平均付加モル数1~40モル)及び1,2-プロピレンオキサイド(以下において1,2-プロピレンオキサイド及びプロピレンオキシ基をPOと略記することがある)(平均付加モル数1~30モル)付加物、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールのEO(平均付加モル数1~40モル)及び1,2-ブチレンオキサイド(以下において1,2-ブチレンオキサイド及びブチレンオキシ基をBOと略記することがある)(平均付加モル数1~25モル)付加物等、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族モノアルコールのEO(平均付加モル数1~40モル)及びテトラヒドロフラン(以下においてTHFと略記することがある)(平均付加モル数2~25モル)付加物等}等;
【0058】
(2)R3が水素原子又は炭素数1~12の2価の鎖状脂肪族炭化水素基であるもの
例えば、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族ジオールの炭素数2~4のAO付加物{例えば、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族ジオールのEO(平均付加モル数2~44モル)付加物、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族ジオールのEO(平均付加モル数1~40モル)PO(平均付加モル数1~30モル)付加物、前記炭素数1~12の鎖状脂肪族ジオールのEO(平均付加モル数1~40モル)BO(平均付加モル数1~25モル)付加物等}等;
【0059】
(3)R3が炭素数1~12の3価の鎖状脂肪族炭化水素基であるもの
例えば、グリセリンのEO(平均付加モル数3~44モル)付加物、グリセリンのEOPO(合計の平均付加モル数3~44モル)付加物、グリセリンのEOBO付加物(合計の平均付加モル数3~44モル)、トリメチロールプロパンのEO(平均付加モル数3~44モル)付加物、トリメチロールプロパンのEOPO(合計の平均付加モル数3~44モル)付加物、トリメチロールプロパンのEOBO付加物(合計の平均付加モル数3~44モル)等;
【0060】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)としては、前記一般式(2)において、生分解性の観点から、A1Oとしてエチレンオキシ基(EO)のみ有する化合物及び/又はエチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(PO)とを有する化合物が好ましい。
また、粘度指数向上剤組成物中に含まれる水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を構成するEOのモル数とPOのモル数とのモル比は、粘度指数向上効果の観点から、100/0~50/50が好ましく、更に好ましくは70/30~50/50である。
【0061】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の水酸基価は、共重合体(A)の溶解性の観点から、28~280mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは28~200mgKOH/gである。
なお、水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定することができる。
【0062】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、生分解度が60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明において、生分解度は、OECD301Fの方法により測定できる。
生分解度は、例えば、EOのモル比率を高くすることにより高くすることができ、POのモル比率が高くなると低くなる傾向がある。
また、例えば分子量を小さくすることで高くすることができ、分子量を大きくすることで低くなる傾向がある。
また、R3の水酸基数が少ないほど高くなる傾向があり、水酸基数が多いほど低くなる傾向がある。
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の生分解度の具体例としては、重合度4~22のポリエチレングリコール(生分解度60~70%)等が挙げられる。
【0063】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)としては、生分解性の観点から、ポリエチレングリコール、メタノールのEO付加物、エタノールのEO付加物、プロパノールのEO付加物、ブタノールのEO付加物、グリセリンのEO付加物、トリメチロールプロパンのEO付加物、ペンタエリスリトールのEO付加物、ソルビトールのEO付加物、メタノールのEO/PO付加物、エタノールのEO/PO付加物、プロパノールのEO/PO付加物、ブタノールのEO/PO付加物、1,6-ヘキシレングリコールのEO/PO付加物、ジエチレングリコールのEO/PO付加物、グリセリンのEO/PO付加物、トリメチロールプロパンのEO/PO付加物、ペンタエリスリトールのEO/PO付加物、ソルビトールのEO/PO付加物が好ましく、更に好ましくはポリエチレングリコール、メタノールのEO付加物、エタノールのEO付加物、プロパノールのEO付加物、ブタノールのEO付加物、グリセリンのEO付加物、メタノールのEO/PO付加物、エタノールのEO/PO付加物、プロパノールのEO/PO付加物、ブタノールのEO/PO付加物、ジエチレングリコールのEO/PO付加物である。
本発明において、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は公知の方法で製造することができ、例えば、公知の方法で1~6個の水酸基を有する炭素数1~12の化合物にエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを付加する等により得ることができる。
【0065】
本発明において、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の数平均分子量は、低温粘度の観点から、2000以下あることが好ましく、さらに好ましくは200~2000が好ましく、特に好ましくは250~2000である。
【0066】
本発明において、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリプロピレングリコールを基準物質として、40℃で測定される。
装置本体:HLC-8120(東ソー株式会社製)
カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL
検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器
溶離液:0.5重量%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
溶離液流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
試料:0.25重量%の溶離液溶液
注入量:200μl
標準物質:東ソー株式会社製TSK STANDARD OXIDE
データ処理ソフト:GPC-8020modelII(東ソー株式会社製)
【0067】
<粘度指数向上剤組成物>
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤組成物として前記(共)重合体(A)と前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有し、粘度指数向上剤組成物に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)との比率(EOB/EOA)が0.1~1.2であるものを用いることが好ましい。
比率(EOB/EOA)が0.1~1.2であることで、粘度指数向上剤組成物を本発明の潤滑油組成物にもちいた際に、基油溶解性に優れており、粘度指数向上効果が高く、得られる潤滑油組成物は低温粘度が低いものとすることができる。
比率(EOB/EOA)は、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは0.2~1.2であり、特に好ましくは0.4~1.2である。
【0068】
粘度指数向上剤組成物中に含まれる(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)は、粘度指数向上効果の観点から、30~99重量%が好ましく、更に好ましくは35~85重量%である。
【0069】
粘度指数向上剤組成物中に含まれる水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)は、(A)の溶解性及び粘度指数向上効果の観点から、10~80重量%が好ましく、更に好ましくは10~42重量%である。
【0070】
粘度指数向上剤組成物中の(共)重合体(A)の含有量は、25重量%を超え70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましい上限としては、60重量%である。
70重量%以下であると、(共)重合体(A)が水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中に析出することなく溶解することができ、25重量%を超えると(A)を高濃度に含む添加剤としてハンドリング性がよいので好ましい。
【0071】
前記粘度指数向上剤組成物は、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物を基油として用いるギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)の用途の粘度指数向上剤として好適に用いられ、特にギヤ油および作動油として有用である。
【0072】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、前記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて単量体(a)を61重量%以上含み、潤滑油組成物中に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)との比率(EOB/EOA)が0.1~1.2である潤滑油組成物である。
本発明においては、エチレンオキシ基を有する単量体(a)を61重量%と高含有量で用いた(共)重合体(A)と、エチレンオキシ基を有するアルキレンオキサイド付加物(B)とにおいて、各成分中のエチレンオキシ基の重量割合の比率(EOB/EOA)を上記範囲にすることにより、(B)中で(A)のポリマー鎖が高温では広がり粘度が高いものとすることができ、低温では小さくまとまり粘度への影響が少なくすることができ、粘度指数が高く、低温粘度が低い潤滑油組成物を得られることを見出したものである。
【0073】
本発明において、潤滑油組成物中の前記(共)重合体(A)の含有量は0.4~25重量%が好ましく、さらに好ましい下限は0.8重量%、特に好ましい下限は1.0重量%である。0.4重量%以上であると、粘度指数向上効果に優れる傾向があるので好ましい。
【0074】
本発明において、(共)重合体(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)との合計含有量は、粘度指数向上効果の観点から、90重量%以上が好ましく、更に好ましくは95重量%以上である。
【0075】
本発明の潤滑油組成物においては、エステル油を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、生態系やシール適合性に影響を与える程度に含まないという意味であり、例えば、好ましくは8重量%未満、更に好ましくは6重量%未満、より好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0076】
本発明において、潤滑油組成物中に含まれる前記(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)に対する前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)との比率(EOB/EOA)は0.1~1.2であり、好ましくは0.2~1.2、さらに好ましくは0.4~1.2であり、特に好ましくは0.5~1.2である。
前記比率(EOB/EOA)が0.1未満であると、粘度指数向上効果が劣る傾向があり、1.2を超えると潤滑油組成物の低温粘度が高くなる傾向がある。
【0077】
潤滑油組成物中に含まれる(共)重合体(A)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOA)は、低温粘度及び粘度指数の観点から、30~99重量%が好ましく、更に好ましくは35~85重量%である。
【0078】
潤滑油組成物中に含まれる水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中のエチレンオキシ基の重量割合(EOB)は、低温粘度及び粘度指数の観点から、10~80重量%が好ましく、更に好ましくは10~42重量%である。
【0079】
本発明において、潤滑油組成物中にはさらに清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してもよい。
【0080】
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
【0081】
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等;
(10)流動点降下剤:
ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等。
【0082】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.3~20重量%である。
【0083】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられ、特にギヤ油や作動油として有用である。
【実施例0084】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」は重量部を意味する。
【0085】
<製造例1 (B-1)の製造>
ステンレス製加圧反応装置にブタノール100部と水酸化カリウム2部を仕込み、窒素置換後に、110~130℃でエチレンオキサイド123部、プロピレンオキサイド160部を2時間で圧入した。同温度でさらに10時間反応させて、エチレンオキサイドの重量割合が32重量%であるブタノールのEO/PO付加物(B-1)を得た。なお、生成物のMnを前記の方法で測定した。
【0086】
<製造例2 (B-2)の製造>
ステンレス製加圧反応装置にブタノール100部と水酸化カリウム2部を仕込み、窒素置換後に、110~130℃でエチレンオキサイド308部、プロピレンオキサイド325部を2時間で圧入した。同温度でさらに10時間反応させて、エチレンオキサイドの重量割合が42重量%であるブタノールのEO/PO付加物(B-2)を得た。なお、生成物のMnを前記の方法で測定した。
【0087】
<製造例3 (B-3)の製造>
ステンレス製加圧反応装置にブタノール100部と水酸化カリウム2部を仕込み、窒素置換後に、110~130℃でエチレンオキサイド600部、プロピレンオキサイド480部を2時間で圧入した。同温度でさらに10時間反応させて、エチレンオキサイドの重量割合が51重量%であるブタノールのEO/PO付加物(B-3)を得た。なお、生成物のMnを前記の方法で測定した。
【0088】
<製造例4 (B-4)の製造>
ステンレス製加圧反応装置にブタノール100部と水酸化カリウム2部を仕込み、窒素置換後に、110~130℃でエチレンオキサイド27部、プロピレンオキサイド550部を2時間で圧入した。同温度でさらに10時間反応させて、エチレンオキサイドの重量割合が4重量%ブタノールのEO/PO付加物(B-4)を得た。なお、生成物のMnを前記の方法で測定した。
【0089】
<製造例5 (B-5)の製造>
ステンレス製加圧反応装置にブタノール100部と水酸化カリウム2部を仕込み、窒素置換後に、110~130℃でエチレンオキサイド260部、プロピレンオキサイド960部を2時間で圧入した。同温度でさらに10時間反応させて、エチレンオキサイドの重量割合が20重量%ブタノールのEO/PO付加物(B-5)を得た。なお、生成物のMnを前記の方法で測定した。
【0090】
<製造例6~20、比較製造例1~2>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、表2に記載の種類及び量の水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)(表においてはPAG油(B)と記載)を投入し、別のガラス製ビーカーに、表2に記載の種類及び量の単量体配合物、連鎖移動剤、及び重合開始剤を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下系内温度を70~80℃に保ちながら、3時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から2時間、90℃で熟成した後、120℃に昇温後、同温度で減圧度を0.027~0.040MPaになるまで徐々に減圧し、その後、気泡の発生が完全に消失するまで未反応の単量体を除去した。
上記手順により、(共)重合体(A)を含有する粘度指数向上剤組成物(R1)~(R15)、(S1)~(S2)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A1)~(A13)及び(A’1)~(A’2)のMwを上記の方法で測定した結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
表2に記載の単量体(a)~(e)、連鎖移動剤、重合開始剤、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は下記のものを用いた。
(a-1):日油(株)製メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数2)のメタクリレート[ブレンマーPME-100]、エチレンオキシ基含有率46.8重量%
(a-2):日油(株)製メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数4)のメタクリレート[ブレンマーPME-200]、エチレンオキシ基含有率63.7重量%
(a-3):日油(株)製メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数9)のメタクリレート[ブレンマーPME-400]、エチレンオキシ基含有率79.8重量%
(a-4):日油(株)製メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数23)のメタクリレート[ブレンマーPME-1000]、エチレンオキシ基含有率91重量%
(a-5):日油(株)製メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数90)のメタクリレート[ブレンマーPME-4000]、エチレンオキシ基含有率97.5重量%
(a-6):日油(株)製ラウロキシポリエチレングリコール(平均付加モル数4)のメタクリレート[ブレンマーPLE-200]、エチレンオキシ基含有率63.7重量%
(b-1):メタクリル酸メチル
(b-2):メタクリル酸エチル
(b-3):メタクリル酸イソデシル
(b-4):Neodol23(シェルケミカルズ社製、炭素数12~13の直鎖又は分岐アルキルアルコール(重量比=直鎖C12:分岐C12:直鎖C13:分岐C13=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物
(b-5):Neodol45(シェルケミカルズ社製、炭素数14~15の直鎖又は分岐アルキルアルコール(重量比=直鎖C14:分岐C14:直鎖C15:分岐C15=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物
(b-6):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(b-7):メタクリル酸n-オクタデシル
(c-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(c-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
(c-3):メタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル
(d-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(e-1):メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
連鎖移動剤
(X-1):ドデシルメルカプタン
重合開始剤
(Z-1):2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
PAG油(B-1):ブタノールのエチレンオキサイド(平均付加モル数2)及びプロピレンオキサイド(平均付加モル数2)付加物、Mn=280、水酸基価200mgKOH/g
PAG油(B-2):ブタノールのエチレンオキサイド(平均付加モル数5)及びプロピレンオキサイド(平均付加モル数4)付加物、Mn=530、水酸基価105.8mgKOH/g
PAG油(B-3):ブタノールのエチレンオキサイド(平均付加モル数10)及びプロピレンオキサイド(平均付加モル数6)付加物、Mn=860、水酸基価65.2mgKOH/g
PAG油(B-4):ブタノールのエチレンオキサイド(平均付加モル数0.46)及びプロピレンオキサイド(平均付加モル数7)付加物、Mn=500、水酸基価112.2mgKOH/g
PAG油(B-5):ブタノールのエチレンオキサイド(平均付加モル数4.4)及びプロピレンオキサイド(平均付加モル数11.8)付加物、Mn=950、水酸基価59.1mgKOH/g
【0093】
<共重合体(A)の基油への溶解性>
粘度指数向上剤組成物(R1)~(R15)及び(S1)~(S2)の外観を目視で観察し、以下の評価基準で基油溶解性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0094】
<実施例1~10、13~14及び比較例1~4(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、表3又は4に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、40℃動粘度が46.0mm2/sになるように潤滑油組成物を調製した。
【0095】
<実施例11、比較例5(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、表5に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、40℃動粘度が32.0mm2/sになるように潤滑油組成物を調製した。
【0096】
<実施例12、比較例6(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、表6に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、40℃動粘度が68.0mm2/sになるように潤滑油組成物を調製した。
得られた潤滑油組成物の100℃動粘度、粘度指数、低温粘度(-20℃)を以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で40℃と100℃における動粘度を測定し、ASTM D 445の方法で計算した。数値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0102】
<潤滑油組成物の低温粘度(-20℃)の測定方法>
JPI-5S-26の方法で-20℃での粘度を測定した。数値が小さいほど低温粘度が低く、低温特性が高いことを意味する。
【0103】
表3~6の結果から、本発明の潤滑油組成物は、粘度指数及び低温粘度が優れていることがわかる。一方、比率(EOB/EOA)が1.2を超える比較例1及び3は、低温粘度が高く劣ることがわかる。さらに、比率(EOB/EOA)が0.1未満の比較例2と単量体(a)の含有量が61重量%未満の比較例3~6は粘度指数が低く、劣ることが分かる。
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられ、特にギヤ油や作動油として有用である。