IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インストゥルメンテイション ラボラトリー カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091571
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液体トロンビン試薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/74 20060101AFI20240627BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20240627BHJP
   C12Q 1/56 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C12N9/74
C12N9/99
C12Q1/56
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215622
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】18/088,068
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501480174
【氏名又は名称】インストゥルメンテイション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンホワ ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】チュン クン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボッテナス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ36
4B063QR41
4B063QR58
4B063QR67
4B063QS03
4B063QS10
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、トロンビン及び、一つ以上のグアニジン誘導体又は、一つ以上の抗凝固剤を含む構成要素を含む液体であり、一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジンを含み、一つ以上の抗凝固剤は、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトキサバン又は、ファクターXa抗凝固剤を含み得る。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体である組成物であって、
トロンビン及び、
一つ以上のグアニジン誘導体又は一つ以上の抗凝固剤を含む構成要素、
を含む組成物。
【請求項2】
一つ以上のグアニジン誘導体は、モノアルキル化グアニジン誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一つ以上のグアニジン誘導体は、ジアルキル化グアニジン誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジン(Nは窒素上の置換基を示す)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
一つ以上のグアニジン誘導体は、以下の式に示される化学構造を有するアルキル化グアニジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(R1は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、
R2は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、そして、
Nは窒素であり、Hは水素である。)
【請求項6】
一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むモノアルキル化グアニジン又は、1,1-ジメチルグアニジン若しくは1,1-ジエチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むジアルキル化グアニジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
一つ以上のグアニジン誘導体は硫酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
一つ以上のグアニジン誘導体は、組成物中において、約0.5mM(ミリモル)以上の濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
組成物は水ベースの溶液を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
トロンビンは、組成物中において、2U/mL(ミリリットル当たりのユニット)以上又は、20U/mL(ミリリットル当たりのユニット)以上の濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
一つ以上の抗凝固剤は、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトキサバン又は、ファクターXa抗凝固剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
更に、水溶液である緩衝液を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
緩衝液は、2-モルホリン-4-イルエタンスルホン酸(MES)及び、保存剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
緩衝液は、一つ以上のカルボン酸誘導体を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
組成物は、(i)クラウス試薬、(ii)トロンビンタイム試薬又は、(iii)直接トロンビン阻害剤に対する希釈トロンビン試薬として使用される液体試薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、
サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体を含み、
液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む、工程と、
混合物中のトロンビンの量又は、トロンビンに対する抗凝固剤の量を決定する工程と、を備える方法。
【請求項17】
液体試薬及び混合物がカートリッジ中にあり、そして、トロンビン又はトロンビン阻害剤の量が、カートリッジが挿入された機器により測定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
液体試薬は、トロンビンによる切断を受けやすい発色基質を含み、そして、トロンビン試薬は水ベースの溶液を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
サンプル中のトロンビン阻害剤を測定する方法であって、
前記方法は、液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、
サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体を含み、
液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む、工程と、
混合物中のトロンビン阻害剤の量を決定する工程と、を備える方法。
【請求項20】
グアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジンを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、例示的な液体トロンビン試薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
全血のような試験サンプルにおいて、トロンビンは、細いフィブリン繊維から構成される密集したフィブリン血栓の形成を起こさせる。
【0003】
トロンビン試薬は、凍結乾燥形態又は液体形態であり得る。液体形態のトロンビン試薬に関しては、試薬の安定性は、その液体中におけるトロンビン固有の自己分解及び変性特性により悪影響を受け得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,175,225号公報
【特許文献2】米国特許出願第2018/0306774号公開公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な組成物は、トロンビン及び、一つ以上のグアニジン誘導体又は、一つ以上の抗凝固剤を含む構成要素を含む。例示的な組成物は液体である。例示的な組成物は、以下の特徴の一つ以上を、単独で又は組合せて備えても良い。
【0006】
一つ以上のグアニジン誘導体は、モノアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。一つ以上のグアニジン誘導体は、ジアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジン(Nは窒素上の置換基を示す)を含み得る。一つ以上のグアニジン誘導体は、以下の式により示される化学構造を有するアルキル化グアニジンを含み得る。
【0007】
【化1】
【0008】
(R1は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、
R2は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、そして、
Nは窒素であり、そして、Hは水素である。)
【0009】
一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むモノアルキル化グアニジン又は、1,1-ジメチルグアニジン若しくは1,1-ジエチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むジアルキル化グアニジンを含み得る。一つ以上のグアニジン誘導体は、硫酸塩を含み得る。
【0010】
一つ以上のグアニジン誘導体は、組成物中に、トロンビンのミリリットル当たりの単位毎(U/mL)で、約0.5ミリモル(mM)以上の濃度を有していてもよい。一つ以上のグアニジン誘導体は、組成物中に、トロンビンのミリリットル当たりの単位毎で、約1mM以上の濃度を有していてもよい。一つ以上のグアニジン誘導体は、組成物中に、約20mM(ミリモル)以上の濃度を有していてもよい。トロンビンは、組成物中において、2U/mL(ミリリットル当たりの単位)以上又は、20U/mL(ミリリットル当たりの単位)以上の濃度を有していてもよい。一つ以上のグアニジン誘導体は、組成物中に、約70mM(ミリモル)以上の濃度を有していてもよい。
【0011】
一つ以上の抗凝固剤は、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトキサバン又は、ファクターXa抗凝固剤を含み得る。
【0012】
組成物は、水溶液である緩衝液を含み得る。緩衝液は、2-モルホリン-4-イルエタンスルホン酸(MES)及び、保存剤を含み得る。緩衝液は、一つ以上のカルボン酸誘導体を含み得る。
【0013】
組成物は、(i)クラウス試薬、(ii)トロンビンタイム試薬、又は(iii)直接トロンビン阻害剤に対する希釈トロンビン試薬として使用される液体試薬であり得る。
【0014】
組成物は、水ベースの溶液であり得る。組成物は、少なくとも20℃で液体であり得る。組成物は、少なくとも37℃で液体であり得る。
【0015】
例示的な方法は、以下の操作を備える:液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体であり、液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む。この方法は、混合物中のトロンビンの量又は、トロンビンに対する抗凝固剤の量を決定する工程、を備えてもよい。この方法は、以下の特徴の一つ以上を、単独又は組合せて備えても良い。
【0016】
液体試薬及び液体混合物はカートリッジ中にあっても良い。フィブリノーゲン又は、トロンビンに対する抗凝固剤は、カートリッジが挿入された機器により測定され得る。液体試薬は、トロンビンによる切断を受けやすい発色基質を含み得る。
【0017】
サンプル中のトロンビン阻害剤を測定する例示的な方法は、以下の操作を備えてもよい。液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体であり、液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む。この方法は、混合物中のトロンビン阻害剤の量を決定する工程も備えてもよい。 グアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジンを含み得る。決定され得るトロンビン阻害剤の具体例は、ダビガトランのようなトロンビンに対するDOACs(直接経口抗凝固剤)を含む。トロンビン阻害剤の別の具体例は、レピルジン、デシルジン、ビバリルジン及び、アルガトロバンのような直接トロンビン阻害剤(DTIs)を含む。
【0018】
この発明の概要部分を含む、本明細書中に記載のいずれかの2つ以上の特徴は、本明細書中に特に記載されていなくても、組合せて実施することが出来る。
【0019】
本明細書に記載のシステム及び、プロセス又は、それらの一部は、一つ以上の装置として、又は、方法として、実施することが出来、そして、多様な機能の制御を実施する実行指示を保存するための一つ以上のプロセス装置及びコンピュータメモリを備えてもよい。本明細書に記載されているシステム、プロセス及び、物は、限定されるものではないが、装置、方法、及び/又は、試薬を含み、例えば、デザイン、製造、建設、組成物、配置、設置、プログラミング、操作、活性化、非活性化、及び/又は制御を介して、形成され得る。
【0020】
1つ以上の実施の詳細は、添付の図面及び、以下に記載されている。別の特徴、目的、及び、利点は、記載及び図面、並びに、請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図1B図1Bは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図1C図1Cは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図1D図1Dは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図1E図1Eは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図1F図1Fは、本明細書に記載の例示的な液体トロンビン試薬において使用され得るグアニジン誘導体の具体例の構造式を示す。
図2A図2Aは、凝固アッセイを使用して経時的に得られた、α-トロンビン活性及び、α/β-トロンビン活性のプロットを示す。
図2B図2Bは、発色アッセイを使用して経時的に得られた、α-トロンビン活性及び、α/β-トロンビン活性のプロットを示す。
図3図3は、アピキサバンを含む液体トロンビン試薬と混合された試験サンプル及び、アピキサバンを含まない液体トロンビン試薬と混合された試験サンプルに対する時間対凝固(TTC)を示すプロットである。
図4図4は、グアニジン及びグアニジン誘導体の異なる濃度に対するファクターXa阻害を示すプロットである。
図5図5は、グアニジン誘導体を含む試験サンプル及び、グアニジン誘導体を含まない試験サンプルに対する経時的なトロンビン活性を示すプロットである。
図6図6は、37℃で保存後、異なる濃度のジメチルグアニジンを含む液体トロンビン試薬に対する残存トロンビン活性を示すプロットである。
図7図7は、37℃で保存後、グアニジン誘導体の存在下、異なるトロンビン濃度を含む液体トロンビン試薬に対する残存トロンビン活性を示すプロットである。
図8A図8Aは、凝固アッセイを使用した試験サンプル中のフィブリノーゲンの濃度を測定するための例示的な方法を示すフローチャートである。
図8B図8Bは、凝固アッセイを使用した試験サンプル中のトロンビン阻害剤の濃度を測定するための例示的な方法を示すフローチャートである。
図8C図8Cは、蛍光アッセイを使用した試験サンプル中のトロンビンに対する抗凝固剤の濃度を測定する例示的な方法を示すフローチャートである。
図8D図8Dは、発色アッセイを使用した試験サンプル中のトロンビンに対する抗凝固剤の濃度を測定する例示的な方法を示すフローチャートである。
【0022】
異なる図面中の同等の参照番号は、同等の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
少なくとも摂氏0℃~100℃の範囲の温度に渡って液体であり得、そして、少なくとも典型的な試薬保存温度の範囲で、使用温度範囲及び/又は室温において安定である、トロンビン試薬の具体例が本明細書に記載されている。本明細書に記載の全ての温度は、標準1気圧(101.325キロパルカル)におけるものである。本明細書で使用する「約」は、与えられた数字による偏差、限定されるものではないが、1%、2%、3%、4%又は5%の偏差を許容するものである。
【0024】
もし、液体トロンビン試薬が長期間にわたり、当初のトロンビン活性の約70%~約100%を、その場所で維持すると、液体トロンビン試薬は安定であると特徴付けられ得る。この文脈で、当初のトロンビン活性は、液体トロンビン試薬が、トロンビン自己分解を起こさせる、可能にさせる、又は、促進させる一つ以上の条件にさらされる前の液体トロンビンの活性を含む。そのような活性の具体例は、限定されるものではないが、約20℃の室温での一日以上の液体トロンビン試薬の保存、約2℃~約8℃又は約2℃~約45℃の温度範囲での一カ月以上の液体トロンビン試薬の保存、及び/又は、約37℃の体温での液体トロンビン試薬を使用するテストを含む。
【0025】
例示的な液体トロンビン試薬は、トロンビン、水性緩衝液及び、一つ以上の構成要素を含まない液体トロンビン試薬に対してトロンビンの安定性を向上させる一つ以上の構成要素を備える。液体トロンビン試薬の安定性は、液体トロンビン試薬の生物活性の顕著な減少がない範囲の上記の例示的な温度範囲において液体トロンビン試薬の自己分解の低減を通して達成され得る。
【0026】
いくつかの具体例では、液体トロンビン試薬中のトロンビンの濃度は、ミリリッタ当たり約2ユニット(U/mL)~約20U/mLを含む範囲内であり得る。いくつかの具体例では、液体トロンビン試薬中のトロンビンの濃度は、約7U/mL~約70U/mLを含む範囲内であり得る。特に、非限定的な具体例では、液体トロンビン試薬中のトロンビンの濃度は、約7U/mL、又は約15U/mL、又は約20U/mL、又は約70U/mLであり得る。液体トロンビン試薬中のトロンビンの濃度は、上記に示す値又は範囲に限定されるものではない。例えば、別の非限定的な具体例では、液体トロンビン試薬中のトロンビンの濃度は約100U/mlである。
【0027】
トロンビン、そして、結果として液体トロンビン試薬自体の安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得る一つ以上の構成要素の具体例は、一つ以上のグアニジン誘導体、一つ以上の抗凝固剤又は、一つ以上のグアニジン誘導体と一つ以上の抗凝固剤の組合せを含む。
【0028】
グアニジン(100)は、式HNC(NHを有する窒素含有量が高い有機化合物である。グアニジン(100)の構造式を図1Aに示す。
【0029】
液体トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体の具体例は、アルキル化グアニジンであり得る。アルキル化グアニジンは、グアニジン(100)中の水素原子(H)(101)又は(102)の一つ又は両方がより大きい化学基に置換され得、図1B中では、R1(111)、R2(112)と示され、R1(111)はメチル基(131)(図1D)、エチル基(141)(図1E)又は、ベンジル基(151)(図1F)、そして、R2(112)は、メチル基(132)、エチル基(142)又は、ベンジル基(151)であり得る。メチル基(131)は、化学式-CHを有する、3個の水素原子に結合された一つの炭素原子を含有する、メタンに由来するアルキルを含む。エチル基(141)は、エタン(C)に由来する化学式-CHCHを有するアルキル置換基を含む。ベンジル基(151)は、構造R-CH-Cを有する構成要素又は分子片を含む。ベンジルは、メチレン基(-CH-)が付けられたフェニル基(C)に特徴を有する。
【0030】
液体トロンビン試薬の安定性を向上させる液体トロンビン試薬に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、モノ-アルキル化グアニジン、ジアルキル化グアニジン又は、モノ-アルキル化グアニジンとジアルキル化グアニジンの組合せを含み得る。液体トロンビン試薬中に含まれ得る非限定的なグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジン(Nは窒素上の置換基を示す)。図1Cは、1-メチルグアニジン(120)の構造式、図1Dは、1,1-ジメチルグアニジン(130)の構造式、図1Eは、1,1-ジエチルグアニジン(140)の構造式、そして、図1Fは、N-ベンジル-N-メチルグアニジン(150)の構造式を示す。
【0031】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、図1Cの1-メチルグアニジン(120)のアルキル基よりも長さが異なるアルキル基を含むモノ-アルキル化グアニジン誘導体を含み得る。例えば、1-メチルグアニジン(120)中のアルキル基よりも長さが異なるアルキル基は、2つ以上の炭素原子を含み得る。2個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHCHを有する。2個の炭素原子を有するアルキル基を含むモノ-アルキル化グアニジン誘導体は、式-Cを有する。3個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHCHCHを有する。3個の炭素原子を有するアルキル基を含むモノ-アルキル化グアニジン誘導体は、式-C11を有する。4個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHCHCHCHを有する。4個の炭素原子を有するアルキル基を含むモノ-アルキル化グアニジン誘導体は、式-C13を有する。
【0032】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、図1Dの1,1-ジメチルグアニジン(130)のアルキル基よりも長さが異なるアルキル基を一つ又は両方含むジアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。例えば、1,1-ジメチルグアニジン(130)のアルキル基よりも長さが異なるアルキル基は、1つ以上の炭素原子を含み得る。1個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHを有する。1個の炭素原子を有するアルキル基を含むジアルキル化グアニジン誘導体は、式-C11を有する。
【0033】
液体トロンビン試薬の安定性を向上させる液体トロンビン試薬に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、図1Eの1,1-ジエチルグアニジン(140)のアルキル基よりも長さが異なる一つ又は両方のアルキル基を含むジアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。1,1-ジエチルグアニジン(140)中のアルキル基よりも長さが異なるアルキル基は、3個以上の炭素原子を含み得る。3個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHCHCHを有する。2個の炭素原子を有する1つのアルキル基及び、3個の炭素原子を有する1つのアルキル基を含むジアルキル化グアニジン誘導体は、式-C15を有する。4個の炭素原子を有するアルキル基は、式-CHCHCHCHを有する。2個の炭素原子を有する1つのアルキル基及び、4個の炭素原子を有する1つのアルキル基を含むジアルキル化グアニジン誘導体は、式-C17を有する。
【0034】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、1,1-ジメチルグアニジン(130)又は、1,1-ジエチルグアニジン(140)中のアルキル基よりも長さが長い一つのアルキル基を含み、そして、1,1-ジメチルグアニジン(130)又は、1,1-ジエチルグアニジン(140)のアルキル基と長さが同じ又は短い別のアルキル基を有する、ジアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。1,1-ジメチルグアニジン(130)中のアルキル基と同じ長さのアルキル基は、化学式-CHを有する。ジアルキル化グアニジン誘導体を含み得る。1,1-ジエチルグアニジン(140)中のアルキル基と同じ長さのアルキル基は、化学式-CHCHを有する。
【0035】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体の別の具体例は、化学式-C(NH を有する、グアニジンの共役酸を含む塩であり得る。液体トロンビン試薬に含まれ得るグアニジン誘導体の具体例は、グアニジンの共役酸を含む硫酸塩、グアニジンの共役酸を含む炭酸塩、グアニジンの共役酸を含む塩化物塩、グアニジンの共役酸を含む硝酸塩、グアニジンの共役酸を含む過塩素酸塩及び/又は、グアニジンの共役酸を含むピクリン酸塩を含み得る。
【0036】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体は、本明細書に記載の例示的なグアニジン誘導体の2つ以上の組合せを含み得る。液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体の例示的な組合せは、1-メチルグアニジン(120)と1,1-ジメチルグアニジン(130)の組合せ、1-メチルグアニジン(120)と1,1-ジエチルグアニジン(140)の組合せ、1-メチルグアニジン(120)とN-ベンジル-N-メチルグアニジン(150)の組合せは、1,1-ジメチルグアニジン(130)と1,1-ジエチルグアニジン(140)の組合せ、1,1-ジエチルグアニジン(140)とN-ベンジル-N-メチルグアニジン(150)の組合せ及び/又は、1,1-ジメチルグアニジン(130)とN-ベンジル-N-メチルグアニジン(150)の組合せを含み得る。
【0037】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体は、本明細書に記載の例示的なグアニジン誘導体の一つ以上と、グアニジンそれ自体の組合せを含み得る(図1A)。液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン及び、グアニジン誘導体の例示的な組合せは、グアニジンと1-メチルグアニジンの組合せ、グアニジンと1,1-ジメチルグアニジンの組合せ、グアニジンと1,1-ジエチルグアニジンの組合せ及び/又は、グアニジンとN-ベンジル-N-メチルグアニジンの組合せを含み得る。
【0038】
いくつかの実施において、本明細書に記載の個々のグアニジン誘導体は、液体トロンビン試薬中に、それぞれ、トロンビン ミリリッタ当たり(U/mL)約0.5ミリモル(U/mM)以上の濃度で存在し得る。いくつかの実施において、本明細書に記載の個々のグアニジン誘導体は、液体トロンビン試薬中に、それぞれ、トロンビン ミリリッタ当たり約1.0mM以上の濃度で存在し得る。いくつかの実施において、本明細書に記載の個々のグアニジン誘導体は、液体トロンビン試薬中に、それぞれ、約2mM~約20mMを含む濃度又は、約20mM以上の濃度で存在し得る。いくつかの実施において、本明細書に記載のグアニジン誘導体の2つ以上の組合せは、液体トロンビン試薬中に、それぞれ、約2mM~約20mMを含む濃度又は、約20mM以上の濃度で存在し得る。
【0039】
トロンビンの安定性を向上させる液体トロンビン試薬中に加えられ得る一つ以上の構成要素は、一つ以上の抗凝固剤を含み得る。液体トロンビン試薬に加えられ得る抗凝固剤の具体例は、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン及び、ベトキサバンのような、公知のファクターXa抗凝固剤を含み得る。これらの抗凝固剤は、液体トロンビン試薬に、個々に又は、それらを2つ以上組合せて加えることができる。液体トロンビン試薬に加えられ得る抗凝固剤の組合せの具体例は、限定されるものではないが、アピキサバンとリバロキサバンの組合せ、アピキサバンとエドキサバンの組合せ、アピキサバンとベトキサバンの組合せ、リバロキサバンとベトキサバンの組合せ、エドキサバンとベトキサバンの組合せ及び/又は、エドキサバンとリバロキサバンの組合せを含み得る。
【0040】
いくつかの実施において、本明細書に記載の個々の抗凝固剤は、それぞれ、液体トロンビン試薬中において、ミリリッタ当たり約20ナノグラム(ng/mL)~1000ng/mLの濃度で含まれ得る。
【0041】
いくつかの実施において、液体トロンビン試薬は、本明細書に記載の一つ以上のグアニジン誘導体及び、本明細書に記載の一つ以上の抗凝固剤を含み得る。液体トロンビン試薬中に含まれ得るグアニジン誘導体とファクターXa抗凝固剤の組合せの具体例は、限定されるものではないが、1-メチルグアニジン(120)とアピキサバンの組合せ、1,1-ジメチルグアニジン(130)とアピキサバンの組合せ、1,1-ジエチルグアニジン(140)とアピキサバンの組合せ、1,1-ジメチルグアニジン(130)とリバロキサバンの組合せ、1,1-ジメチルグアニジン(130)とエドキサバンの組合せ、及び/又は、1,1-ジメチルグアニジン(130)とベトキサバンの組合せを含む。
【0042】
いくつかの実施において、液体トロンビン試薬中の水性緩衝液は、2-モルホリン-4-イル-エタンスルホン酸(MES)又は、MESの構造類似体である、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)であるか又は、それらを含み得る。いくつかの実施において、液体トロンビン試薬中の水性緩衝液は、HEPES((4-2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、ビス-トリス緩衝液、クエン酸塩、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、N-(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸)緩衝液、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)緩衝液、PIPES(ピペラジン-N-N’-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液、イミダゾール/イミダゾリウム緩衝液、ビス-トリスプロパン緩衝液、マレイン酸緩衝液、リン酸緩衝液、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプルパンスルホン酸)緩衝液、BES(ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノ-エタンスルホン酸)緩衝液、MOPS緩衝液、TES(トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノメタンスルホン酸)緩衝液、及び/又は、MOBS(3-(N-モルホリノ)プルパンスルホン酸)緩衝液であるか又は、それらを含み得る。
【0043】
いくつかの実施において、液体トロンビン試薬中の水性緩衝液は、一つ以上のカルボン酸誘導体であるか又は、それらを含み得る。水性緩衝液中に含まれ得るカルボン酸誘導体の具体例は、カルボン酸塩アセテート、エチレンジアミンテトラアセテート、ブタンテトラカルボキシレート、プロパントリカルボキシレート、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、及び/又は、グルコン酸塩を含み得る。
【0044】
いくつかの実施において、液体トロンビン試薬中の水性緩衝液は、保存剤を含み得る。水性緩衝液中に含まれ得る保存剤の具体例は、ProClin(商標)300 (3%5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)及び、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT))、アジ化ナトリウム、ゲンタマイシン、チメロサール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ショ糖、トレハロース、グリセリン、クエン酸ナトリウム、ポロクサマー、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、又は、これらの2つ以上の組合せを含み得る。
を含み得る。
【0045】
いくつかの実施において、一つ以上の基質が、液体トロンビン試薬と試験サンプルの混合物に加えられ、試験サンプル中のトロンビン阻害剤の量を測定してもよい。液体トロンビン試薬に加えられ得る基質の具体例は、発色基質H-D-フェニルアラニル-L-ピペコニル-L-アルギニン-p-ニトロアニリン 二塩酸塩(H-D-Phe-Pip-Arg-pNA) (Chromogenix S-2238 商標)及び、L-ピログルタミル-L-プロリル-L-アルギニン-p-ニトロアニリン 二塩酸塩(Chromogenix S-2366(商標))、又は、蛍光基質Z‐Gly‐Gly‐Arg‐AMC, Technothrombin(登録商標)、及び/又は、校正済みの自動トロンボグラムが含まれ得る。
【0046】
(凝固アッセイ)
凝固に基づくアッセイは、試験サンプル中の(トロンビンの過剰な量と共に)フィブリノーゲンの濃度を決定するため及び/又は、試験サンプル中の(速度制限材料として働くトロンビンと共に)トロンビン阻害剤の濃度を決定するために使用され得る。この点に関して、フィブリノーゲンは、血液中を循環し、そして、血管の損傷において、酵素的にトロンビンによりフィブリンに転換されて、凝固プロセスを開始させる可溶性の蛋白質である。決定され得るトロンビン阻害剤の具体例は、ダビガトランのようなトロンビンに対するDOACs(直接経口抗凝固剤)を含む。トロンビン阻害剤の別の具体例は、レピルジン、デシルジン、ビバルジン、及びアルガトロバンのような直接トロンビン阻害剤(DTIs)を含む。
【0047】
試験サンプルは、全血、全血の一部、全血由来のサンプル、一つ以上の血液の構成要素(例えば、白血球、赤血球、血小板又は蛋白質(例えば、アルブミン)の使用))が使われた全血の一部、又は、分離された全血の構成要素を含み得る。具体例において、試験サンプルは、血液の構成要素(血小板)が使われた全血である、血小板なしの血漿であり得る。試験サンプルは、標準的な手法を使用して、ヒトのような被験者から採取され得る。
【0048】
凝固アッセイを使用した試験サンプルに関連したフィブリノーゲン濃度を決定するために実行され得る例示的プロセス(800)を、図8Aは示す。凝固アッセイは、液体トロンビン試薬と混合された試験サンプルが凝固する時間を決定する。プロセス(800)に従うと、試験サンプルは、受容されて(801)、そして、本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬と混合される(802)。得られた混合物のTTC(凝固する時間)が測定される(803)。この具体例において、既値のフィブリノーゲン濃度を有する一連のサンプルのTCCを前もって測定し、そして、(例えば、メモリーにアクセスして)得られたフィブリノーゲン濃度(804)に対してTTC値を関連させる標準曲線を作るために使用される。血液サンプル中のフィブリノーゲン濃度は、既値のフィブリノーゲン濃度サンプルの標準曲線と混合物のTTC濃度を比較することにより、決定される(805)。すなわち、混合物のTTCは、標準曲線上で特定され、そして、対応するフィブリノーゲン濃度は、標準曲線から得られる。しかし、フィブリノーゲン濃度の決定は、標準曲線を使用するプロセスに限定されるものではない。いくつかの実施において、例えば、機械学習アルゴリズムなどの追加の方法は、凝固アッセイの結果(例えば、TTC及び/又は結果に由来する別のパラメータ)を使用して、試験サンプル中のフィブリノーゲン濃度を導き出す。
【0049】
凝固アッセイを使用した試験サンプルに関連したトロンビン阻害剤の濃度を決定するために実行され得る例示的プロセス(810)を、図8Bは示す。凝固アッセイは、液体トロンビン試薬と混合された試験サンプルが凝固する時間を決定する。プロセス(800)に従うと、試験サンプルは、受容されて(811)、そして、本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬と混合される(812)。得られた混合物のTTCが測定される(813)。この具体例において、既値のトロンビン阻害剤濃度を有する一連のサンプルのTTCを前もって測定し、そして、操作(814)で得られたトロンビン阻害剤濃度に対してTTC値を関連させる標準曲線を作るために使用される。血液サンプル中のトロンビン阻害剤濃度は、既値のトロンビン阻害剤濃度サンプルの標準曲線と混合物のTTC濃度を比較することにより、決定される(815)。すなわち、混合物のTTCは、標準曲線上で特定され、そして、対応するトロンビン阻害剤濃度は、標準曲線から得られる。しかし、トロンビン阻害剤濃度の決定は、標準曲線を使用するプロセスに限定されるものではない。いくつかの実施において、例えば、機械学習アルゴリズムなどの追加の方法は、凝固アッセイの結果(例えば、TTC及び/又は結果に由来する別のパラメータ)を使用して、試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度を導き出す。
【0050】
血液試験システム中で使用される例示的なカートリッジは、凝固アッセイを実行するために使用され得、そして、試験サンプル、試薬、及び/又は、試験サンプルと試薬の混合物を受容する/含むための一つ以上のチャンバを備え得る。凝固アッセイは、試験サンプルと試薬の混合物上で実行されて、TTCのような混合物に基づいて、凝固特性を決定する。カートリッジは、カートリッジ中のサンプル又は材料の、例えば、圧力又は他の機構により制御される、流体の移動を可能に又は促進させる複数の流体経路を備え得る。
【0051】
非限定的な具体例において、凝固アッセイは、名称「血液試験システム及び方法」で、2019年、1月8日に特許された特許文献1に記載のシステムを使用して実行され得、特許文献1は参照により、本明細書に組込まれる。特許文献1は、分析コンソール及び、本明細書に記載のような液体トロンビン試薬を使用した試験サンプル中のフィブリノーゲンの量を決定するための試験を含む、試験を実行するための一つ以上のカートリッジを備える血液試験システムを記載している。この試験は、キャップと、Werfen(登録商標)S.A.により提供される、Rotem(登録商標)sigma及び、Rotem(登録商標)deltaシステムにおいて使用されるピン構造を使用して実行され得る。凝固特性は、関連する分析コンソールで使用されて、本明細書に記載の方法に実施されて、混合物中のフィブリノーゲンの量及び/又は、混合物中のトロンビン阻害剤の量を決定する。
【0052】
非限定的な別の具体例において、凝固アッセイは、発明の名称「止血機能の分析のための使い捨てシステム」で、2018年10月25日に公開の特許文献2に記載のシステムを使用して実行され得、特許文献2は参照により、本明細書に組込まれる。この特許公報はHemosonics(登録商標) Quantra(登録商標)止血分析器を記載している。
【0053】
更に、非限定的な別の具体例において、凝固アッセイは、Haemonetics(登録商標)により提供される、TEG(登録商標)6sカートリッジベースシステムを使用して実行され得る。そのシステムは、本明細書に記載の血液及び液体トロンビン試薬のような試験サンプルの混合物を保持し得る、一つ以上のチャンバを備えるカートリッジを備える。TEG(登録商標)6sシステム中での試験は、共振振動数技術と組合せた光学分析を使用して実行され、そして、TTCのような混合物に基づいて、凝固特性を決定するために使用される。より詳細には、TEG(登録商標)6sカートリッジベースシステムを使用した具体例において、Haemonetics(登録商標)USFDA 501K要約には、「このTEG(登録商標)6s技術は、4個までの独立した測定セルを含む使い捨てカートリッジに基づくものである。各セルは、短い垂直配向注入の成形チューブ(リング)から構成されている。TEG(登録商標)6s止血システム中における凝固の検出は、光学的に行われる。圧電アクチュエータは、異なる振動数で、合計正弦波から構成される移動プロファイルを通して、測定セルを振動させる。測定セルの移動は、サンプル半月板中で運動を誘導させ、それはフォトダイオードにより検出されることになる。得られた半月板の運動は光学的に検出され、そして、機器により分析されて、サンプルの共振振動数及び、弾性率(剛性)が計算される。半月板運動のデータ上で高速フーエリ変換(FFT)を実行することにより、共振振動数が決定され得る。分析器は、外部振動に応答する血液のハンギングドロップの調和運動を検出する。サンプルは、凝固の間、液体状態からゲル様状態に変換されることから、弾性率(剛性)、そして従って、共振振動数は増加する。TEG(登録商標)6s止血システムは、凝固及び溶解の間、共振振動数のこれらの変動を測定する。」と記載されている。TEG(登録商標)6s技術を使用して決定された凝固の特性は、分析器の使用により、本明細書中に記載のプロセスは実行され、混合物中のフィブリノーゲンの量を決定し、及び/又は、混合物中のトロンビン阻害剤の量を決定される。
更に、非限定的な別の具体例において、凝固アッセイは、Werfen(登録商標)S.Aにより提供される、VerifyNow(登録商標)システム上で実行され得る。
【0054】
(発色及び蛍光アッセイ)
いくつかの実施において、試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度は、発色又は蛍光アッセイにより決定し得る。そのようなアッセイで、トロンビン阻害剤は、試験サンプルを含む反応混合物中で、トロンビンの活性を阻害する。このアッセイは、発色又は蛍光基質に対するフリーのトロンビンの切断に基づいて、混合物中に残存するフリーのトロンビンを測定する。発色アッセイは、色付き基質を使用して、フリーのトロンビンの活性を定量化する。蛍光アッセイは、蛍光基質を使用して、フリーのトロンビンの活性を定量化する。各アッセイで、蛍光値又は吸光度値により規定されているように、トロンビン活性の量、そして、反応混合物中のトロンビン阻害剤濃度の量に基づいて、一つ以上の曲線が作成される。
【0055】
蛍光アッセイを使用した血液サンプルに関連したトロンビン阻害剤濃度を決定するために実行され得る例示的なプロセス(820)を、図8Cは示す。試験サンプルは、受容されて(821)、そして、液体トロンビン試薬及び蛍光基質と混合される(822)。得られた混合物中の切断された蛍光基質の蛍光が測定される(823)。この具体例において、既値のトロンビン阻害剤濃度を有する一連のサンプルの蛍光を前もって測定し、そして、操作(824)で得られたトロンビン阻害剤濃度に対して蛍光値を関連させる標準曲線を作るために使用される。血液サンプル中のトロンビン阻害剤濃度は、既値のトロンビン阻害剤濃度サンプルの標準曲線と混合物の蛍光濃度を比較することにより、決定される(825)。すなわち、混合物の蛍光は、標準曲線上で特定され、そして、対応するトロンビン阻害剤濃度は、標準曲線から得られる。しかし、トロンビン阻害剤濃度の決定は、標準曲線を使用するプロセスに限定されるものではない。いくつかの実施において、例えば、機械学習アルゴリズムなどの追加の方法は、蛍光アッセイの結果(例えば、蛍光及び/又は結果に由来する別のパラメータ)を使用して、試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度を導き出す。
【0056】
いくつかの実施において、蛍光アッセイは、BMG LABTECH(登録商標)Incにより提供されるPHERAstar(登録商標)FSX蛍光マイクロプレートリーダー上で実行され得る。このシステムは、本明細書に記載の試験サンプル及び、液体トロンビン試薬を高い処理能力で読解、マルチモードで読解するためのマイクロプレートに基づくシステムを備える。非限定的な別の具体例において、蛍光アッセイは、SAFAS(登録商標)Ltdにより提供されるXenius XOF蛍光分光計上で実行し得る。このシステムは、本明細書に記載の試験サンプルを及び、液体トロンビン試薬を、そのままで、高い処理能力で読解するためのマイクロプレート又はキュベットに基づくシステムを備える。
【0057】
発色アッセイを使用した試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度を決定するために実行され得る例示的なプロセス(830)を、図8Dは示す。プロセス(830)に従って、試験サンプルは、受容されて(821)、そして、発色基質及び、本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬と混合される(832)。得られた混合物中の切断された発色基質の吸光度は、分光光学的に測定される(833)。この具体例において、既値のトロンビン阻害剤濃度を有する一連のサンプルの吸光度を前もって測定し、そして、操作(834)で得られたトロンビン阻害剤濃度に対して吸光度値を関連させる標準曲線を作るために使用される。試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度は、既値のトロンビン阻害剤濃度サンプルの標準曲線と混合物の吸光度を比較することにより、決定される(835)。すなわち、混合物の吸光度は、標準曲線上で特定され、そして、対応するトロンビン阻害剤濃度は、標準曲線から得られる。しかし、トロンビン阻害剤濃度の決定は、標準曲線を使用するプロセスに限定されるものではない。いくつかの実施において、例えば、機械学習アルゴリズムなどの追加の方法は、発色アッセイの結果(例えば、吸光度及び/又は結果に由来する別のパラメータ)を使用して、試験サンプル中のトロンビン阻害剤濃度を導き出す。
【0058】
いくつかの実施において、発色アッセイは、Werfen(登録商標)S.Aにより提供されるACL TOP(登録商標)Family止血試験システム上において実行され得る。このシステムは、本明細書に記載の血液のような試験サンプル及び液体トロンビン試薬の混合物を保持するキュベットの積み降ろしをするための完全な自動システムを備える。非限定的な別の具体例において、発色アッセイは、BMG LABTECH(登録商標)Incにより提供される SPECTROstar Nano(登録商標)吸光度マイクロプレートリーダー上において実行され得る。このシステムは、本明細書に記載の試験サンプル及び液体トロンビン試薬の全範囲の吸光度を読解するためのマイクロプレート又はキュベットに基づくシステムを備える。
【0059】
(液体トロンビン試薬中のトロンビン活性試験)
この実験は、凝固アッセイ及び発色アッセイを使用した液体トロンビン試薬の安定性を示すために、提示されている。
【0060】
凝固アッセイでは、液体トロンビン試薬は、最終のトロンビン濃度が5~15U/mL内のトロンビンになるように水性緩衝液で希釈された。その後、20~40マイクロリッター(μL)の希釈された液体トロンビン試薬は、150mM NaCl及び、0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)を含む、20mM HEPES,pH7.4反応緩衝液、80μLと混合された。37℃で60~90秒間の培養後、80μLの通常のプール血漿が混合物に加えられ、そして、凝固するまでの時間を、閾値アルゴリズムを使用して決定した。
【0061】
発色アッセイでは、液体トロンビン試薬は、最終のトロンビン濃度が1~5U/mL内のトロンビンになるように水性緩衝液で希釈された。その後、20μLの希釈された液体トロンビン試薬は、凝固アッセイで使用した同じ反応緩衝液、90μLと混合された。37℃で60~90秒間の培養後、反応緩衝液中で調製された、90μLの0.2mMのトロンビン基質S-2238(H-D-Phe-Pip-Arg-pNA)が、混合物に加えられ、そして、液体トロンビン試薬の反応速度を、一次速度論アルゴリズムを使用して決定した。
【0062】
トロンビン活性、凝固アッセイにより決定された凝固する時間及び、発色アッセイにより決定された反応速度を標準化させるために、計算されたトロンビン活性は、国立生物学的製剤研究所(NIBSC)から一般に入手できるヒトα-トロンビン又はトロンビン標準品の検定反応速度曲線と比較された。
【0063】
(液体トロンビン試薬の安定性に対するβトロンビンの効果)
β-トロンビン及び、γ-トロンビンは、液体トロンビン試薬中のα-トロンビンを分解させることが知られている。特に、液体トロンビン試薬中のβ-トロンビンは、α-トロンビンの自己分解活性を増加させて、そして、例えば、β-トロンビンの含有量が合計のトロンビン含有量の30%を超えてしまうと、α-トロンビン活性の低下を導く。
【0064】
特定の条件下では、β-トロンビンは、本明細に記載の液体トロンビン試薬に対して少しの影響又は影響を与えないことを示すために、以下の実験が行われた。β-トロンビンの影響は、凝固及び発色アッセイを使用して分析された。
【0065】
この実験において、α-トロンビンを含む本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬は、最終のトロンビン濃度が100U/mLのα-トロンビンになるように、水性緩衝液で希釈された。α-トロンビン及び、β-トロンビンの両方(α/β-トロンビン)を含む本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬は、最終のトロンビン濃度が100U/mLのα-トロンビン及び、50U/mLのβ-トロンビンになるように、水性緩衝液で希釈された。この実験において、水性緩衝液は、20mM MES、pH6.3、100mM NaCl、25mM酢酸ナトリウム、25mMコハク酸ナトリウム、5mM CaCl、0.5%BSA及び、0.4g/L NaNを含有した。α-トロンビン及び、α/β-トロンビンの液体トロンビン試薬は、37℃で、0、1、2、3及び、4週間保存されて、そして、トロンビン活性が、上記に記載のように、凝固アッセイ及び発色アッセイの両方を使用して決定された。
【0066】
α-トロンビン及び、α/β-トロンビンの液体トロンビン試薬に対する凝固アッセイの結果は、図2Aに示されている。α-トロンビン及び、α/β-トロンビンの液体トロンビン試薬に対する発色アッセイの結果は、図2Bに示されている。
【0067】
図2Aに示されるように、凝固アッセイにより測定されたとき、37℃で、0週間保存したα-トロンビンの液体トロンビン試薬(200)及び、α/β-トロンビンの液体トロンビン試薬(201)は、同様のトロンビン活性を有した。37℃で、0、1、2、3及び、4週間の保存は、凝固アッセイにより測定されたとき、α-トロンビン及び、α/β-トロンビンを含む液体トロンビン試薬の両方に影響を与えた。
【0068】
図2Bに示されるように、発色アッセイにより測定されたとき、37℃で、0週間保存したとき、α/β-トロンビンの液体トロンビン試薬(201)は、α-トロンビンの液体トロンビン試薬(200)よりも33%高いトロンビン活性を有した。α/β-トロンビン試薬に対する活性の減少は、37℃で、1~2週間保存後のα-トロンビン液体試薬に対するものより大きかったが、しかし、37℃で、2~4週間保存の液体トロンビン試薬に対するものと同等であった。
【0069】
図2A及び図2Bに示された試験結果は、カルボン酸塩中の液体トロンビン試薬の熱安定性は軽減され、そして、これらの条件下で、β-トロンビンは、より不安定(切断されやすい)であり、そして、α-トロンビン活性に対して限定的な影響を有することを示す。
【0070】
(液体トロンビンの安定性に対するファクターXA阻害剤アピキサバンの影響)
ファクターXaは、トロンビンの自己分解を阻害又は予防する。本明細書に記載の液体トロンビン試薬中に含まれるとき、ファクターXaがトロンビンの安定性を向上させることを示すために、以下の実験が行われた。
【0071】
この実験において、直接ファクターXa阻害剤アピキサバンは、凝固アッセイにより分析された。低純度品のウシトロンビンを含む液体トロンビン試薬は、最終のトロンビン濃度が約100U/mLのトロンビンになるように、20mM MES、pH6.1、100mM NaCl、25mM酢酸ナトリウム、25mM乳酸ナトリウム、5mM CaCl、0.5%BSA及び、0.4g/L NaNを含有した水性緩衝液で希釈された。アピキサバンは、ジメチルスルホキシド(DMSF)中に溶解され、そして、液体トロンビン試薬のサンプル中において、最終濃度が500ng/mLのアピキサバンとなるように希釈された。
【0072】
アピキサバンあり及び、なしの液体トロンビン試薬は、45℃で、0、2、4、7、10及び14日保存され、そして、通常のプール血漿と混合した後、凝固アッセイにより4分割して試験された。各時間点における混合物に対する平均凝固時間は、45℃で、0日保存された混合物のベースラインと比較された。
【0073】
図3に示すように、アピキサバンを含まない液体試薬(301)は、アピキサバンを含む液体試薬よりも、(TTCが増加するために)試験サンプルを凝固させるために時間が長くなる。これは、液体試薬中のトロンビン活性が時間の経過と共に影響を受けていないため、アピキサバンは液体トロンビン試薬の安定性に寄与していることを示す。301と比較して、トロンビン活性の低下は、45℃で、7(302),10(303)及び14(305)日の液体トロンビン試薬の保存後に顕著であり、アピキサバンは、長期間、液体トロンビン試薬の安定性を向上させることを示した。
【0074】
(ファクターXA活性に対するアルキル化グアニジンの影響)
本明細書に記載のグアニジン及びそれらの誘導体がファクターXa活性を阻害し、そして、液体トロンビン試薬中のトロンビン活性を増加させることを示すために、以下の実験が行われた。
【0075】
この実験において、硫酸グアニジン及び、グアニジン誘導体:1-メチルグアニジン硫酸塩、1,1-ジメチルグアニジン硫酸塩、1,1-ジエチルグアニジン及び、N-ベンジル、N-メチルグアニジン硫酸塩は、発色アッセイを使用して分析された。一連の希釈は、本明細書に記載の種類のグアニジン又は、グアニジン誘導体と水中で調製された。40μLのグアニジン又は、グアニジン誘導体のそれぞれは、20mM HEPES、pH7.5緩衝液中に希釈された40μLのミリリッタ当たり6ナノカタール(nkat/mL)のファクターXaと、20~60秒間混合された。150~180秒の培養期間後、10μLのファクターXa発色基質S-2732(1.5mM)が、グアニジン及びファクターXaの混合物のそれぞれに加えられ、そして、20秒の後に、分当たりミリ吸光度405nm(mAbs/分)で、発色性を測定した。
【0076】
アルキル化グアニジン誘導体のようなグアニジン誘導体を含む混合物は、ファクターXa活性を阻害した。図4に示すように、ファクターXa阻害の最も大きい範囲は、ジアルキル化グアニジン(401)(ジメチルグアニジン硫酸塩及び、ジエチルグアニジン硫酸塩、)を含む混合物において見られた。ベンジル基(403)を含むグアニジン誘導体(N-ベンジル-N-メチルグアニジン硫酸塩)を含む混合物は、ジアルキル化グアニジン(401)を含む混合物中のファクターXa阻害と比較して、ファクターXa阻害を低減させた。グアニジン硫酸塩(404)を単独で含む混合物は、ファクターXa阻害を最も低減させなかった。これらの結果は、アルキル化グアニジンは、ファクターXa活性を阻害することを示す。アピキサバンのような直接ファクターXa阻害剤は、ファクターXa活性を阻害することにより、液体トロンビン試薬中のトロンビンの安定性をサポートし、そして、この実験は、グアニジン誘導体が、液体トロンビン試薬中におけるトロンビンに同様の安定性効果を提供することを示す。
【0077】
(液体トロンビン試薬の安定性に対するアルキル化グアニジン誘導体の影響)
アルキル化グアニジン誘導体が、本明細書に記載の液体トロンビン試薬中のトロンビン活性を安定化させることを示すために、以下の実験が行われた。
【0078】
グアニジン誘導体の影響は、凝固アッセイを使用して分析された。この実験において、ウシトロンビンを含む液体トロンビン試薬は、最終濃度が約70U/mLのトロンビンになるように、20mM MES、pH6.3、及び、0.1%ProClin(商標)300を含み、25mMの1-メチルグアニジン(MMG)、25mMの1,1-ジメチルグアニジン(DMG)及び、25mMの1,1-ジエチルグアニジン(DEG)を含有及び非含有の水性緩衝液で希釈された。
【0079】
グアニジン誘導体を含む、そして、グアニジン誘導体を含まない、本明細書に記載の種類の液体トロンビン試薬は、37℃で、0.7及び14日保存され、通常のプール血漿を混合した後、凝固アッセイを使用して試験された。図5に示すように、37℃で、7(502)及び14(503)日保存されグアニジン誘導体を含まない液体トロンビン試薬500(液体トロンビン+MES緩衝液単独)は、試薬におけるトロンビン活性の顕著な低減を生じた。しかし、37℃で、7及び14日保存されグアニジン誘導体(506)(1,1-メチルグアニジン硫酸塩、1,1-ジメチルグアニジン硫酸塩又は、1,1-ジエチルグアニジン硫酸塩)を有する液体トロンビン試薬は、トロンビン活性の低減はほとんどないか、全くなかった。グアニジン誘導体(506)を含む液体トロンビン試薬に対するこの相対的に一定の水準のトロンビン活性は、グアニジン誘導体が液体トロンビン試薬を安定化させることを示す。
【0080】
(トロンビンの安定性に対するアルキル化グアニジン濃度)
液体トロンビン試薬中のトロンビン活性を安定化させる、アルキル化グアニジン誘導体のようなグアニジン誘導体の例示的な濃度を示すために、以下の実験が行われた。
【0081】
ジメチルグアニジン(DMG)を含む一連の液体トロンビン試薬が、凝固アッセイを使用して分析された。7U/mLの液体トロンビンを含む一連の液体トロンビン試薬は、20mM MES、pH6.3、0.1%ProClin(商標)300を含み、そして、最終濃度が、5,10,15,20,25又は30mMのDMGを含む緩衝液から調製された。得られた液体トロンビン試薬は、37℃で20日間保存され、そして、残存するトロンビン活性を、2~8℃で20日間保存された同じ濃度のグアニジン誘導体を含む液体トロンビン試薬と比較した。図6に示すように、37℃で20日間(601)保存された、20mMより少ないDMGを含む液体トロンビン試薬中のトロンビン活性(600)は減少した(即ち、残存する量のトロンビン活性(605)は減少した)一方、20mM以上のDMGを含む液体トロンビン試薬は、同等の比率の残存トロンビン活性を有した。DMGを含む液体トロンビン試薬中のトロンビン活性のこの維持は、液体トロンビン試薬中において20mM以上のDMGが、考慮された温度及び範囲においてトロンビンの安定性を達成するためのDMGの例示的な量であることを示した。
【0082】
(液体トロンビン試薬の安定性に対するトロンビン濃度)
液体トロンビンを安定化させるためのグアニジン誘導体(この実験では、DMG)の例示的な量を示すために、以下の実験が行われた。
【0083】
一連のトロンビン濃度におけるグアニジン誘導体の効果は、凝固アッセイを使用して分析された。30mM DMGを含む一連の液体トロンビン試薬は、MES緩衝液(30mM DMG、20mM MES、pH6.3及び、0.1%ProClin(商標)300を含む)中で、100U/mLトロンビンの液体トロンビン試薬を希釈して、MES緩衝液で、最終濃度が、70,56,42,28,14又は7U/mLトロンビンとなるように、調製した。液体トロンビン試薬は、37℃で7日間保存され、そして、凝固アッセイを使用してトロンビン活性が試験された。図7に示すように、37℃で7日間保存された、30mM DMGと約20U/mLより少ない液体トロンビンを含む液体トロンビン試薬の活性(701)は減少した(即ち、残存する量のトロンビン活性は減少した)一方、30mM DMGと約20U/mL以上のトロンビンを含む液体トロンビン試薬は、顕著には減少しなかった。このデータは、20U/mL以上のトロンビン及び、アルキル化グアニジンを含む液体トロンビン試薬は安定であることを示す。
【0084】
本明細書に記載の液体トロンビン試薬を使用するアッセイは、手動又は自動で実行し得る。例えば、試薬は、例えば、ロボット操作又は流路式流体素子(flow-through fluidic device)でサンプルを混合して、そして、試験して、手動又は自動で活性化され得る。ソフトウエア―アプリケーションが使用され、試験結果を分析し、例えば、フィブリノーゲン濃度又はトロンビン阻害剤濃度のような、パラメータを提供又は計算し得る。ソフトウエア―アプリケーションが使用され、例えば、医療行為を知らせるために使用され得る追加の情報を作成するために使用され得る。液体トロンビン試薬の使用は、この開示に記載された具体例に限定されるものではなく、そして、適用可能なアッセイは、実施に対する特定のシステムにより限定されるものではない。液体トロンビン試薬は、包装されて、そして、バルク容量又はテスト容量で保存し得る。液体トロンビン試薬は、包装されて、そして、キット又はカートリッジの形態を含む、いかなる形態で保存し得る。以下に、非限定的な例示的なシステムが記載され、これらのシステム中における試薬の例示的な使用を示す。
【0085】
例えば、液体トロンビン試薬は、Claussフィブリノーゲンアッセイ試薬、トロンビンタイムアッセイ試薬又は、直接トロンビン阻害剤用に希釈されたトロンビン試薬として使用し得る。Claussフィブリノーゲンアッセイは、定量的な、血栓ベースの機能性アッセイである。このアッセイは、トロンビン試薬の影響下で、血漿又は全血のような試験サンプル中のフィブリノーゲンがフィブリンに転換される時間を測定する。これらの条件下では、フィブリノーゲン含有量は速度を制限するため、TTCが、試験サンプル中のフィブリノーゲン濃度の測定として使用され得る。特に、TTCは、試験サンプル中のフィブリノーゲン濃度に逆比例している。トロンビンタイムアッセイは、フィブリン血栓が、血液サンプルの血漿中に形成される時間を測定する試験である。この時間は、フィブリノーゲンの活性に対応する。
【0086】
本明細書に記載の診断試験機器/医療分析機器及び、アッセイは、コンピュータシステム又は、一つ以上のマイクロプロセッサ、一つ以上のマイクロコントローラ、一つ以上のフィールド-プログラマブルゲートアレイ(FGPAs)のようなプログラマブルロジック若しくは、一つ以上の特定用途向け半導体(ASICs)のような一つ以上のプロセス装置を有する、いかなる好適なコンピュータ装置を使用して制御し得る。本明細書に記載の診断試験機器/医療分析機器は、例えば、凝固アッセイを制御し、そして、本明細書に記載の方法の全部又は一部を実施する、一つ以上の一時的でない機械読解可能な媒体のような一つ以上の情報キャリア中で実体的に具体化された一つ以上のコンピュータプログラムのような一つ以上のコンピュータプログラム製品を実行し得る。
【0087】
本明細書に記載の異なる実施の構成要素は、組合せて、上記に特定して記載されていない別の実施を形成することも出来る。構成要素は、それらの操作に有害な影響を与えずに、本明細書に記載の構造から除くことが出来る。更に、多様な別々の要素は、一つ以上の個々の構成要素と組合せて、本明細書に記載の機能を実行することが出来る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体である組成物であって、
トロンビン及び、
一つ以上のグアニジン誘導体又は一つ以上の抗凝固剤を含む構成要素、
を含む組成物。
【請求項2】
一つ以上のグアニジン誘導体は、モノアルキル化グアニジン誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一つ以上のグアニジン誘導体は、ジアルキル化グアニジン誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジン(Nは窒素上の置換基を示す)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
一つ以上のグアニジン誘導体は、以下の式に示される化学構造を有するアルキル化グアニジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(R1は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、
R2は、H、メチル、エチル又はベンジルであり、そして、
Nは窒素であり、Hは水素である。)
【請求項6】
一つ以上のグアニジン誘導体は、1-メチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むモノアルキル化グアニジン又は、1,1-ジメチルグアニジン若しくは1,1-ジエチルグアニジンのアルキル基の長さと異なる長さを有するアルキル基を含むジアルキル化グアニジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
一つ以上の抗凝固剤は、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトキサバン又は、ファクターXa抗凝固剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、
サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体を含み、
液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む、工程と、
混合物中のトロンビンの量又は、トロンビンに対する抗凝固剤の量を決定する工程と、を備える方法。
【請求項9】
液体試薬は、トロンビンによる切断を受けやすい発色基質を含み、そして、トロンビン試薬は水ベースの溶液を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
サンプル中のトロンビン阻害剤を測定する方法であって、
前記方法は、液体試薬とサンプルを含む混合物を形成する工程であって、
サンプルは、全血、全血の一部又は、全血の誘導体を含み、
液体試薬は、トロンビン及び、グアニジン誘導体を含む、工程と、
混合物中のトロンビン阻害剤の量を決定する工程と、を備える方法。
【請求項11】
グアニジン誘導体は、1-メチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン又は、N-ベンジル-N-メチルグアニジンを含む、請求項10に記載の方法。