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特開2024-91582ZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091582
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/16 20060101AFI20240627BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20240627BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20240627BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20240627BHJP
   C22C 18/04 20060101ALN20240627BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
C22F1/16 B
B23K20/00 310F
B23K35/28 310D
B23K35/40 340H
C22C18/04
C22F1/00 613
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630G
C22F1/00 630C
C22F1/00 630K
C22F1/00 614
C22F1/00 682
C22F1/00 661Z
C22F1/00 683
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216328
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2022207204
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】池田 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA01
4E167BA05
4E167BA09
4E167CA04
4E167CB03
(57)【要約】
【課題】表面酸化による接合強度の低下を抑制しつつ、接合体の形成時に必要な加圧力を抑制可能なZnAl共析系合金接合材、当該接合材を用いた接合体、及び当該接合体の製造方法の提供を目的とした。
【解決手段】本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を作製する合金塊作製工程と、合金塊作製工程において作製された合金塊を機械加工することにより、合金塊からZnAl共析系合金接合材の体積に基づいて規定される体積分の合金小塊を作製する合金小塊作製工程と、合金小塊を溶体化温度以上,融点以下の温度雰囲気下において加熱する熱処理工程と、熱処理工程において加熱された合金小塊を冷却する冷却工程と、を含むこと、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnAl共析系合金を含んで構成されるZnAl共析系合金接合材の製造方法であって、
ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を作製する合金塊作製工程と、
前記合金塊作製工程において作製された前記合金塊を機械加工することにより、前記合金塊から前記ZnAl共析系合金接合材の体積に基づいて規定される体積分の合金小塊を作製する合金小塊作製工程と、
前記合金小塊を溶体化温度以上、融点未満の温度雰囲気下において加熱する熱処理工程と、
前記熱処理工程において作製された前記ZnAl共析系合金を冷却する冷却工程と、
を含むこと、を特徴とするZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程において前記合金小塊を常温または加熱しつつ圧延することにより、前記合金小塊を合金圧延体とすること、を特徴とする請求項1に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程において冷却された前記ZnAl共析系合金の表面酸化膜を表面研磨あるいは化学的な方法により除去する表面酸化膜除去工程を含むこと、を特徴とする請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程よりも後の工程として、前記ZnAl共析系合金の表面を被覆する表面被覆工程を含むこと、を特徴とする請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項5】
前記合金塊作製工程において、前記合金塊を薄い板状に作製すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程が、前記ZnAl共析系合金を水冷により冷却するものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法。
【請求項7】
基材、及び請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成される接合部を備えていること、を特徴とする接合体。
【請求項8】
基材、及び請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成される接合部を備えた接合体の製造方法であって、
非加熱状態において前記基材と前記接合材とを接触させつつ加圧することにより、前記基材と前記接合材との密着度を向上させる密着度向上工程と、
前記密着度向上工程において密着させた前記基材及び前記接合材を前記ZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度条件下において加熱することにより前記基材及び前記接合材を接合する拡散接合工程と、
を含むこと、を特徴とする接合体の製造方法。
【請求項9】
少なくとも前記拡散接合工程が、酸素濃度が30[ppm]以下とされた雰囲気下において行われること、を特徴とする請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記密着度向上工程において、前記基材及び前記接合材に作用させる加圧力を、1[mm/分]よりも低い速度で増加させること、を特徴とする請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
前記密着度向上工程において、前記基材及び前記接合材に作用させた加圧力を維持したまま、前記拡散接合工程を開始すること、を特徴とする請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記密着度向上工程の後、前記拡散接合工程において前記拡散接合可能な温度条件となるように昇温させる昇温工程を有し、
前記昇温工程において、前記基材及び前記接合材が晒される雰囲気温度を連続的に昇温させること、を特徴とする請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項13】
前記密着度向上工程よりも後の工程において、前記基材及び前記接合材を加熱している期間中に前記基材及び前記接合材に作用させた加圧力を低下させること、を特徴とする請求項8に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体部にSiを用いたデバイスに代わって、これよりも半導体として優れた特性を示すSiCやGaNを半導体部に用いたデバイスが注目されている。半導体部にSiを用いたデバイスの動作温度がおおよそ摂氏150度であるのに対し、SiCやGaNを半導体部に用いたデバイスは、おおよそ摂氏200度~250度、あるいはそれ以上の温度でも動作する。そこで、このような高温の温度条件下で作動するデバイスにおいて使用するための接合材として、融点の高いものの提供が求められている。
【0003】
ここで、高温環境下において使用可能な接合材として、鉛含有はんだがある。しかしながら、鉛が環境や身体に及ぼす悪影響を考慮して、鉛含有はんだの使用を可能な限り回避したいという要望がある。具体的には、欧州においては、RoHS指令により低温域において作動する機器類においては鉛含有はんだの使用が禁止されており、高温域において作動する機器類においても使用可能な鉛を含有しない接合材の提供が求められている。
【0004】
かかる要望に応えるべく、下記特許文献1に開示されているように、ZnAl共析系合金材料が、鉛含有はんだに代わりうる接合材として注目されている。特許文献1に開示されているZnAl共析系合金接合材料は、17~30wt%Al-0~1.5wt%Cu-0~0.5wt%Mg-Zn系からなり、超塑性現象を利用して対象物を接合するものとされている。
【0005】
特許文献1に開示されているZnAl共析系合金接合材は、ZnAl共析系合金を急冷することにより結晶粒を微細化してから板状に切断して成形し、板はんだとして使用するものとされている。また、特許文献1において開示されているZnAl共析系合金接合材を接合対象物に対して接合する場合には、5~50MPaの圧力で加圧しながら、ZnAl共析系合金が超塑性を発現する摂氏200~275度の温度条件下において所定時間保持することにより、接合対象物とZnAl共析系合金接合材とを密着させた後、摂氏280度~410度の温度まで昇温することにより拡散接合を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-113050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、本発明者らがZnAl共析系合金材料や、これを用いた接合方法について鋭意検討したところ、上記特許文献1に係る従来技術のように摂氏200度を越える温度条件下においてZnAl共析系合金接合材と接合対象物との間に隙間が存在していると、仮に酸素濃度が30[ppm]以下の低酸素濃度雰囲気下において接合を行ったとしても、ZnAl共析系合金接合材の表面が酸化して十分な接合強度が得られないとの知見が得られた。これにより、本発明者らは、特許文献1に係る従来技術のように、ZnAl共析系合金が超塑性を発現する摂氏200~275度の温度条件下において所定時間保持し、接合対象物とZnAl共析系合金接合材とを密着させるような方法により接合を行おうとすると、ZnAl共析系合金接合材の表面が酸化してしまい、十分な接合強度が得られない可能性が高いとの知見に至った。
【0008】
また、上述したSiCやGaN等の化合物半導体は、結晶構造が脆く、大きな加圧力を作用させると破損してしまうという問題がある。そのため、接合対象物とZnAl共析系合金接合材とを接合して接合体を形成する際に必要な加圧力を抑制可能なZnAl共析系合金接合材や、これを用いて形成される接合体の製造方法の提供が求められている。
【0009】
そこで本発明は、ZnAl共析系合金接合材の表面が酸化することによる接合強度の低下を抑制しつつ、接合対象物とZnAl共析系合金接合材とを接合して接合体を形成する際に必要な加圧力を抑制可能なZnAl共析系合金接合材、当該ZnAl共析系合金接合材を用いて構成される接合体、及び当該接合体の製造方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を作製する合金塊作製工程と、前記合金塊作製工程において作製された前記合金塊を機械加工することにより、前記合金塊から前記ZnAl共析系合金接合材の体積に基づいて規定される体積分の合金小塊を作製する合金小塊作製工程と、前記合金小塊を溶体化温度以上、融点未満の温度雰囲気下において加熱する熱処理工程と、前記熱処理工程において加熱された前記合金小塊を冷却する冷却工程と、を含むこと、を特徴とするものである。
【0011】
(2)本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、前記熱処理工程の前に前記合金小塊を圧延することにより、前記合金小塊を合金圧延体とすること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
(3)本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、前記冷却工程において冷却された前記ZnAl共析系合金の表面を研磨する表面研磨工程を含むこと、を特徴とするものであると良い。
【0013】
(4)本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、前記冷却工程よりも後の工程として、前記ZnAl共析系合金の表面を被覆する表面被覆工程を含むこと、を特徴とするものであると良い。
【0014】
(5)本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、前記合金塊作製工程において、前記合金塊を板状に作製すること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
(6)本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、前記冷却工程が、前記ZnAl共析系合金を水冷により冷却するものであること、を特徴とするものであると良い。
【0016】
(7)本発明の接合体は、基材、及び請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成される接合部を備えていること、を特徴とするものである。
【0017】
(8)本発明の接合体の製造方法は、基材、及び請求項1又は2に記載のZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成されるものであって、非加熱状態において前記基材と前記接合材とを接触させつつ加圧することにより、前記基材と前記接合材との密着度を向上させる密着度向上工程と、前記密着度向上工程において密着させた前記基材及び前記接合材を前記ZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度条件下において加熱することにより前記基材及び前記接合材を接合する拡散接合工程と、を含むこと、を特徴とするものである。
【0018】
(9)本発明の接合体の製造方法は、少なくとも前記拡散接合工程が、酸素濃度が30[ppm]以下とされた雰囲気下において行われること、を特徴とするものであると良い。
【0019】
(10)本発明の接合体の製造方法は、前記密着度向上工程において、前記基材及び前記接合材に作用させる加圧力を、1[mm/分]よりも低い速度で増加させること、を特徴とするものであると良い。
【0020】
(11)本発明の接合体の製造方法は、前記密着度向上工程において前記基材及び前記接合材に作用させた加圧力を維持したまま、前記拡散接合工程を開始すること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
(12)本発明の接合体の製造方法は、前記密着度向上工程の後、前記拡散接合工程において前記拡散接合可能な温度条件となるように昇温させる昇温工程を有し、前記昇温工程において、前記基材及び前記接合材が晒される雰囲気温度を連続的に昇温させること、を特徴とするものであると良い。
【0022】
(13)本発明の接合体の製造方法は、前記密着度向上工程よりも後の工程において、前記基材及び前記接合材を加熱している期間中に、前記基材及び前記接合材に作用させた加圧力を低下させること、を特徴とするものであると良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上述した課題を解決可能なZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るZnAl共析系合金接合材の製造方法を示したフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造に用いられる製造装置の構成を示した説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係るZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法を示したフローチャートである。
図4図3に示したフローに則りZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造を行う際の温度条件、及び加圧条件の変化と、基材及びZnAl共析系合金接合材との接合状態を模式的に示した説明図である。
図5】粒径の異なるZnAl共析系合金接合材について行った引張試験の結果を示したグラフと、当該試験に用いた試験片の構造を示した説明図である。
図6】ZnAl共析系合金接合材について、引張速度を相違させた場合の公称ひずみと公称応力の関係を調べたグラフと、当該試験に用いた試験片の構造を示した説明図である。
図7】実施例に係る疲労試験に用いた試験片の準備方法を説明した説明図である。
図8】(a),(b)は、それぞれ実施例に係る引張試験に用いた試験片の構成を説明した説明図である。
図9】(a)、(b)はそれぞれ、実施例に係る引張試験において、加圧速度を0.005[mm/min]としたサンプルについての破断後の状態を示す写真、及び接合工程の温度と荷重の履歴を示すグラフである。
図10】(a)、(b)はそれぞれ、実施例に係る引張試験において、加圧速度を1[mm/min]としたサンプルについての破断後の状態を示す写真、及び接合工程の温度と荷重の履歴を示すグラフである。
図11】実施例1に係る静的引張試験による破断前の状態、及び破断後の状態を示す写真である。
図12】実施例1に係る機械的疲労試験前(0サイクル)、及び10000サイクル後における亀裂の発生状態を示す写真である。
図13】実施例2に係るサンプルの化学組成、及び物理特性に係る表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法について説明する。
【0026】
本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法は、前述のような従来技術のような技術的思想とは異なる技術的思想に立脚して、ZnAl共析系合金接合材の表面酸化による接合強度の低下を抑制しつつ、接合に際して必要な加圧力を抑制しようとするものである。具体的には、上述したように、特許文献1等に係る従来技術においては、ZnAl共析系合金が持つ高温での超塑性特性を活用して基板とZnAl共析系合金との高密着化、酸化膜の破壊を行い、そのまま拡散接合を行おうとするものである。しかしながら、ZnAl共析系合金が持つ高温での超塑性特性を活用して基板とZnAl共析系合金とを拡散接合するためには、接合時に大きな加圧力を作用させる必要がある。
【0027】
それに対し、本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法は、基板及びZnAl共析系合金接合材に対して加圧力を作用させるときに、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力を下げることによって、金属同士を密着させ、ZnAl共析系合金接合材の表面酸化による接合強度の低下の抑制、及び接合時に必要な加圧力の抑制を図ろうとするものである。さらに詳細には、本発明者らが鋭意検討したところ、ZnAl共析系合金接合材の結晶粒径を小さくすること、及び接合体の製造時におけるひずみ速度を抑制することにより、常温での超塑性の発現が期待できること、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力の低下を図れることから、ZnAl共析系合金接合材が常温において大きな変形能力を発現できるとの知見に至った。本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法は、かかる知見に基づいたものであり、ZnAl共析系合金接合材の結晶粒径を小さくすること、及び接合体の製造時におけるひずみ速度を抑制し、ZnAl共析系合金接合材が常温において大きな変形能力を発現できるようにすることにより金属同士の密着度を向上させ、ZnAl共析系合金接合材の表面酸化による接合強度の低下の抑制、及び接合時に必要な加圧力の抑制を図ろうとするものである。以下、本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法について、さらに具体的に説明する。
【0028】
≪ZnAl共析系合金接合材の製造方法について≫
以下、本実施形態に係るZnAl共析系合金接合材の製造方法について説明する。図1に係るフローチャートに示すように、本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、大別して、合金塊作製工程、合金小塊作製工程、熱処理工程、冷却工程、表面酸化膜除去工程、及び表面被覆工程を含む、複数の工程によって構成されている。以下、図1のフローチャートを参照しつつ、ZnAl共析系合金接合材の製造方法について、順を追って説明する。
【0029】
≪合金塊作製工程≫
本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法においては、先ずステップ1-1の合金塊作製工程において、ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を作製する。ZnAl共析系合金を含む合金塊は、例えば、所定比で準備したZnとAlを、高周波溶解炉等からなる溶解炉にセットしたるつぼや匣鉢等に入れ、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下において溶解させた後、大気中で金型等に鋳込むことにより作製できる。
【0030】
ZnAl共析系合金を含む合金塊は、板状、直方体状、立方体状、球状等の特定の形状を有するものや、不特定の形状のもの等とすることができる。本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法において、合金塊作製工程に続く工程における加工の容易さ、品質の安定性確保等の観点からすると、合金塊作製工程は、ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を、予め規定された厚みを有する板状のものとして作製するものであると良い。
【0031】
≪合金小塊作製工程≫
上述したステップ1-1に係る合金塊作製工程においてZnAl共析系合金を含む合金塊が準備されると、製造工程がステップ1-2の合金小塊作製工程に進む。合金小塊作製工程は、合金塊作製工程において作製された合金塊を機械加工することにより、合金塊から最終的に作製されるZnAl共析系合金接合材の体積に基づいて規定される体積分の合金小塊を作製する工程である。上述した合金塊作製工程においてZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を予め規定された厚みを有する板状のものとして準備したときには、予め規定された面積となるように縦横の長さを定めて切断加工することにより、所定の体積分の合金小塊を容易かつ安定的に作製することができる。
【0032】
≪熱処理工程≫
上述したステップ1-2に係る合金小塊作製工程においてZnAl共析系合金を含む合金小塊が準備されると、製造工程がステップ1-3の熱処理工程に進む。熱処理工程は、合金小塊を溶体化温度以上,融点未満の温度雰囲気下において加熱した状態する工程である。熱処理工程は、ZnAl共析系合金を含む合金小塊を大気圧下において加熱する工程としても良いが、ZnAl共析系合金を含む合金小塊を加熱するのに加えて、加圧して圧延することにより合金圧延体を作製する工程とすると良い。
【0033】
≪冷却工程≫
上述したステップ1-3に係る熱処理工程においてZnAl共析系合金を含む合金小塊の加熱や圧延等が行われると、製造工程がステップ1-4の冷却工程に進む。冷却工程は、熱処理工程において加熱されたZnAl共析系合金を含む合金小塊や合金圧延体を冷却する工程である。冷却工程における合金小塊や合金圧延体の冷却は、熱処理工程において用いられた加熱炉内で冷却する炉冷による方法や、加熱炉から取り出して空冷する方法、加熱炉外において特有のガス雰囲気下において自然冷却する方法、水や液体窒素等の冷媒を用いて冷却する方法等、様々な方法によって実現できる。水が熱伝導率及び比熱の双方が大きいという特徴を有する冷媒であることを考慮すれば、合金圧延体の冷却は、水を冷媒として水冷する方法により行うと良い。
【0034】
≪表面酸化層除去工程≫
上述したステップ1-4に係る冷却工程においてZnAl共析系合金の冷却が完了すると、製造工程がステップ1-5の表面酸化層除去工程に進む。表面酸化層除去工程は、冷却工程において冷却されたZnAl共析系合金の表面を覆っている酸化膜を除去する工程であり、表面を研磨することにより、ZnAl共析系合金の表面から酸化皮膜を除去する方法などにより行うと良い。表面酸化層除去工程は、ZnAl共析系合金の表面にある酸化層を除去できれば良く、例えば、機械的研磨等による機械的な方法、高温水素や還元薬剤などによる化学的な方法等を表面酸化層の除去のために好適に利用できる。
【0035】
≪表面被覆工程≫
上述したステップ1-5に係る表面研磨工程においてZnAl共析系合金の表面研磨が完了すると、製造工程がステップ1-6の表面被覆工程に進む。表面被覆工程は、表面酸化膜除去工程において表面酸化膜を除去されたZnAl共析系合金の表面を他の物質によって被覆することにより、ZnAl共析系合金の表面が酸化されてしまうのを抑制するための工程である。表面被覆工程においてZnAl共析系合金の表面を被覆する被覆物質は、ZnAl共析系合金に対する付着性や耐久性、ZnAl共析系合金接合材としての使用において電気導電性や、接合特性、使用のしやすさ等に対して許容される範囲を超えて悪影響を及ぼさないものとすると良い。このような観点からすれば、表面被覆工程において用いられる被覆物質は、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル等の金属や、導電性のある非金属によって構成されると良い。また、表面被覆工程は、真空蒸着や、CVD、EVD等の蒸着による方法や、めっき、スパッタリング等の手法を用いて、ZnAl共析系合金を含むZnAl共析系合金の表面を被覆物質によって被覆すると良い。
【0036】
上述したZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材は、所定の基材、及びZnAl共析系合金接合材を含んで構成される接合部を含む接合体を構成できる。前述のZnAl共析系合金接合材を用いることによる接合体の形成(接合)は、以下に記載する接合体の製造方法によって実現できる。以下、ZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0037】
≪ZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法について≫
以下、本実施形態に係るZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法について説明する。ZnAl共析系合金接合材を用いた接合体は、例えば、図2に示した製造装置10を用いることにより製造できる。具体的には、製造装置10は、中空に形成された本体部20を有する。
【0038】
本体部20には、導入部24及び排出部26が配管接続されている。導入部24には、窒素やアルゴン等の不活性ガスを供給するためのガス供給源30が接続されている。また、排出部26には、酸素濃度計測器40が接続されている。これにより、製造装置10は、導入部24から不活性ガスを供給しつつ、排出部26から本体部20の内部に存在している気体を排出することにより、本体部20の内部を不活性ガスによって置換することができる。
【0039】
本体部20の内部には、加圧装置50が設けられている。加圧装置50は、対向配置されるとともに相対移動可能とされた第一挟持部52、及び第二挟持部54を備えている。本実施形態では、第一挟持部52が図示しない動力源に接続されており、第一挟持部52が第二挟持部54に対して近接方向及び離反方向に移動可能とされている。加圧装置50において、第一挟持部52及び第二挟持部54の間に位置する領域は、基材及びZnAl共析系合金接合材をセットするための設置部56とされる。加圧装置50は、第一挟持部52及び第二挟持部54を近接させることにより、両者の間に位置する設置部56にセットされた基材及びZnAl共析系合金接合材を加圧することができる。また、加圧装置50は、図示しない加圧制御装置により動力源の動作制御を行うことにより、設置部56にセットされた基材及びZnAl共析系合金接合材に作用する加圧力の大きさや、加圧力の増減速度を制御することができる。
【0040】
また、製造装置10は、加圧装置50の設置部56に設置された基材及びZnAl共析系合金接合材を加熱するための加熱装置60を備えている。図示例においては、第一挟持部52及び第二挟持部54に内蔵された発熱体62,64が加熱装置60として機能する。加熱装置60は、例えば熱電対等によって構成される温度計測器66と、加熱制御装置68とを備えている。温度計測器66は、設置部56に設置された基材及びZnAl共析系合金接合材の温度を直接的あるいは間接的に計測できる。加熱装置60は、温度計測器66により計測された基材及びZnAl共析系合金接合材の温度に基づいて発熱体62,64の発熱制御(通電制御)を行うことにより、基材及びZnAl共析系合金接合材を予め定められた条件で加熱することができる。
【0041】
本実施形態のZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法は、上述した製造装置10のように、接合対象である基材及びZnAl共析系合金接合材を加圧しつつ加熱することにより接合することにより、接合体を製造できる。本実施形態の製造方法は、図3に係るフローチャートに示すように、大別して、接合対象物設置工程、酸素濃度低減工程、密着度向上工程、昇温工程、拡散接合工程を含む、複数の工程を経て実現できる。また、本実施形態の製造方法は、図4に示すようにして温度条件、及び加圧力を変化させることにより実現できる。以下、図3のフローチャートに則って、ZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法について、順を追って説明する。
【0042】
≪接合対象物設置工程≫
本実施形態のZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法においては、先ずステップ2-1の接合対象物設置工程において、接合対象物が設置される。図2に示した製造装置10を用いる場合には、加圧装置50の設置部56に、第一挟持部52及び第二挟持部54の近接・離反方向に基材とZnAl共析系合金接合材とを含む接合対象物が重ね合なるように配置することにより、製造装置10に対して接合対象物が設置される。
【0043】
≪酸素濃度低減工程≫
上述した接合対象物設置工程において接合対象物の設置が完了すると、製造工程が、ステップ2-2の酸素濃度低減工程に移行する。酸素濃度低減工程においては、接合対象物が設置された領域の酸素濃度を低減させる処理が行われる。図2に示した製造装置10を用いる場合には、酸素濃度計測器40により接合対象物が配置された本体部20の内部に残存している酸素濃度を確認しつつ、ガス供給源30から導入部24を介して窒素やアルゴン等の不活性ガスを供給する。これにより、本体部20の内部に存在する空気を不活性ガスによって置換し、接合対象物が設置された領域の酸素濃度を予め規定された所定値以下(例えば、30[ppm]以下)となるまで低減させる。
【0044】
≪密着度向上工程≫
上述した酸素濃度低減工程において接合対象物が設置された領域の酸素濃度が十分に低下した状態になると、製造工程がステップ2-3の密着度向上工程に進められる。密着度向上工程においては、非加熱状態(常温)において基材とZnAl共析系合金接合材とを接触させつつ加圧することにより、基材とZnAl共析系合金接合材との密着度の向上が図られる。図2に示した製造装置10を用いる場合には、加圧装置50の設置部56に、第一挟持部52及び第二挟持部54の近接・離反方向に基材とZnAl共析系合金接合材とが重なりあうように配置したうえ、加圧装置50をなす第一挟持部52及び第二挟持部54によって挟み込む。
【0045】
ここで、基材及びZnAl共析系合金接合材に作用させる加圧力は、所定の加圧上限速度以下の速度で増加させると良い。加圧上限速度は、例えば実験的に決定された値、あるいは所定の計算式等に基づいて演算により導出された値として適宜設定可能である。後述する実施例における考察に基づけば、加圧上限速度は、1[mm/分]以下とすると良い。本実施形態では、密着度向上工程は、1[mm/分]よりも低い速度で基材及びZnAl共析系合金接合材に作用させる加圧力を増加させることにより、基材及びZnAl共析系合金接合材の密着度を向上させる。これにより、基材及びZnAl共析系合金接合材の隙間を可能な限り解消し、両者の間に介在する酸素の量を最小限に抑制する。
【0046】
また、密着度向上工程においては、基材及びZnAl共析系合金接合材に作用させる加圧力が所定の設定圧に達するまで高めることにより、基材及びZnAl共析系合金接合材を十分に密着させる。ここで、密着度向上工程における設定圧は、例えば実験的に決定された値、あるいは所定の計算式等に基づいて演算により導出された値として適宜設定可能である。例えば、後述する実施例を鑑みれば、0.005[mm/min]以下とすると良い。具体的には、密着度向上工程における設定圧の下限値は、3[MPa]以上の圧力に設定すると良い。また、密着度向上工程における設定圧の上限値は、例えば、ZnAl共析系合金接合材を用いて接合される基材や、半導体部品等の接合対象物の強度を考慮する等して設定すると良い。
【0047】
≪昇温工程≫
上述したステップ2-3に係る密着度向上工程において基材及びZnAl共析系合金接合材の密着度を向上させた状態とされると、製造工程がステップ2-4の昇温工程に進む。昇温工程は、非加熱状態(常温)から、後述する拡散接合工程において拡散接合可能な温度条件となるように基材及びZnAl共析系合金接合材を含む接合対象物が晒される雰囲気温度を昇温させる工程である。例えば、ZnAl共析系合金接合材がZn22Al合金を主成分として含むものである場合には、摂氏395度前後で拡散接合可能であるため、昇温工程は、摂氏395度以上の温度を目標温度として雰囲気温度を昇温させる。昇温工程における目標温度は、ZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度以上の温度に設定されると良い。また、目標温度は、製造装置10の特性や、接合を行う環境等に起因する誤差を考慮して設定すると良い。
【0048】
昇温工程においては、基材及びZnAl共析系合金接合材が晒される雰囲気温度を連続的に昇温させる。昇温工程においては、目標温度まで、速やかに昇温して良く、特許文献1で開示されているZnAl共析系合金が超塑性を発現する摂氏200~275度の温度域で、昇温速度を緩やかにする必要も無い。
【0049】
≪拡散接合工程≫
上述したステップ2-4に係る昇温工程において基材及びZnAl共析系合金接合材が晒される雰囲気温度が、基材及びZnAl共析系合金接合材を拡散接合可能な温度まで昇温した状態とされると、製造工程がステップ2-5の拡散接合工程に進む。拡散接合工程は、密着度向上工程において密着させた基材及び接合材をZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度条件下において、予め規定された加熱時間に亘って加熱することにより基材及び接合材を接合する工程である。拡散接合工程においては、密着度向上工程において基材及び接合材に作用させた加圧力を維持したまま加熱し、拡散接合による接合を行う。拡散接合工程における加熱時間は、例えば実験的に決定された値、あるいは所定の計算式等に基づいて演算により導出された値として適宜設定可能である。後述する実施例における考察に基づけば、拡散接合工程における加熱時間は、10分以上とすると良い。
【0050】
本実施形態において例示した本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法、接合体、及び接合体の製造方法は、以下の(a)~(n)に係る特徴を有する。これにより、以下に記載のような、特有の効果を奏することができる。
【0051】
(a)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、ZnAl共析系合金を含んで構成される合金塊を作製する合金塊作製工程と、前記合金塊作製工程において作製された前記合金塊を機械加工することにより、前記合金塊から前記ZnAl共析系合金接合材の体積に基づいて規定される体積分の合金小塊を作製する合金小塊作製工程と、前記合金小塊を溶体化温度以上、融点以下未満の温度雰囲気下において加熱する熱処理工程と、前記熱処理工程において加熱された前記合金小塊を冷却する冷却工程と、を含むこと、を特徴とするものである。
【0052】
本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(a)のような特徴を有するものであるため、ZnAl共析系合金の結晶粒径を小さくすることができる。これにより、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力を低下させることができる。従って、本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法によれば、これを用いて接合を行う際に必要な加圧力を抑制することができる。
【0053】
(b)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、合金小塊を圧延することにより、合金小塊を合金圧延体とするものであると良い。圧延する温度は、常温のままでも、加熱しても、いずれでも良い。
【0054】
本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(b)のようなものとすることにより、熱処理工程において合金小塊から、接合材に供する非常に薄い合金圧延体とすることにより、体積に対する表面積比を大きくし、その後の冷却工程における冷却速度を極限まで高めることができる。これにより、ZnAl共析系合金の結晶粒径を一層微細化し、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力を低下させ、常温においても超塑性の発現が期待でき、変形を開始しやすい状態とすることができる。すなわち、ZnAl共析系合金接合材が常温において大きな変形能力を発現できるようにすることができる。
【0055】
(c)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上述したように、冷却工程において冷却されたZnAl共析系合金の表面の酸化層を除去する工程を含むものであると良い。表面の酸化層を除去する工程は、機械的に表面を研磨するか、高温水素、還元薬品などを用いるものであれば良い。
【0056】
本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(c)のようなものとすることにより、ZnAl共析系合金の表面が酸化することによる接合強度の低下を抑制できる。
【0057】
(d)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上述したように、冷却工程よりも後の工程として、ZnAl共析系合金の表面を被覆する表面被覆工程を含むものであると良い。
【0058】
本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(d)のようなものとすることにより、表面被覆工程によって形成された被覆によってZnAl共析系合金の表面の酸化を抑制し、表面酸化に伴う接合強度の低下を抑制できる。
【0059】
(e)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上述したように、合金塊作製工程において、合金塊を非常に薄い板状に作製することを特徴とするものであると良い。
【0060】
本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(e)のようなものとすることにより、体積に対する表面積比の極めて大きな合金塊を形成することができる。これにより、合金塊作製工程においてもZnAl共析系合金の結晶粒径を非常に小さくすることができる。
【0061】
(f)本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上述したように、冷却工程が、ZnAl共析系合金を水冷により冷却するものであること、を特徴とするものであると良い。
【0062】
水は、熱伝導率及び比熱の双方が大きいという特徴を有する冷媒である。そのため、本実施形態で例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上記(f)のようなものとすることにより、冷却工程において他の冷媒を用いてZnAl共析系合金を冷却する場合に比べて冷却効率が高く、ZnAl共析系合金の結晶粒径を小さなものとすることができる。
【0063】
(g)本実施形態で例示した接合体は、本実施形態において例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成される接合部を備えているものである。
【0064】
本実施形態で例示した接合体は、上記(g)のようなものとすることにより、接合強度が高く、接合対象物とZnAl共析系合金接合材とを接合する際に大きな加圧力を作用させることなく製作可能なものとすることができる。
【0065】
(h)本実施形態で例示した接合体の製造方法は、基材、及び上述した本実施形態のZnAl共析系合金接合材の製造方法により製造されたZnAl共析系合金接合材を含んで構成されるものであって、非加熱状態において基材と接合材とを接触させつつ加圧することにより、基材と接合材との密着度を向上させる密着度向上工程と、密着度向上工程において密着させた基材及び接合材をZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度条件下において加熱することにより基材及び接合材を接合する拡散接合工程と、を含むものである。
【0066】
本実施形態の接合体の製造方法は、上述したZnAl共析系合金接合材の製造方法によって製造された接合材を用いて行われる。そのため、本実施形態の接合体の製造方法において用いられるZnAl共析系合金接合材は、ZnAl共析系合金の結晶粒径が微細化され、降伏応力の低いものである。本実施形態の接合体の製造方法は、このような降伏応力の低いZnAl共析系合金接合材を用いて接合対象物である基材とZnAl共析系合金接合材とを接合するものであるため、接合時に必要な加圧力を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の接合体の製造方法は、上記(h)のように、非加熱状態において基材と接合材とを接触させつつ加圧する密着度向上工程において基材と接合材との密着度を十分に向上させることにより、基材と接合材との間に介在する残存酸素量を最小限に抑制した後に、拡散接合工程において基材及び接合材をZnAl共析系合金接合材により拡散接合可能な温度条件下において加熱するものとされている。すなわち、従来技術においては、非加熱状態において基材と接合材との間に介在する残存酸素量を考慮することなく、ZnAl共析系合金が超塑性を発現する温度域において所定時間に亘って保持することによって基材と接合材との密着度を向上させようとするアプローチにより、接合体の製造方法が行われていた。これに対し、本実施形態の接合体の製造方法は、非加熱状態において基材と接合材との間に介在する残存酸素量を十分低減させた状態にしてから基材及び接合材をZnAl共析系合金接合材により拡散接合しようとするものであり、この点において従来技術とは全く異なる技術的思想に立脚したものである。
【0068】
本実施形態の接合体の製造方法は、上述したような従来技術とは全く異なる技術的思想に立脚したものである。そのため、本実施形態の接合体の製造方法によれば、従来技術のようにZnAl共析系合金が超塑性を発現する温度域において保持するための保持時間を設けることなく、高い接合強度で基材及び接合材を接合した接合体を製造できる。また、本実施形態の接合体の製造方法によれば、従来技術のようにZnAl共析系合金が超塑性を発現する温度域において保持することによりZnAl共析系合金が酸化し、これに伴う接合強度の低下が生じるのを抑制できる。従って、本実施形態の接合体の製造方法によれば、従来技術と比較して、より一層高い接合強度で基材及び接合材を接合した接合体を製造できる。
【0069】
(i)本実施形態で例示した接合体の製造方法は、少なくとも拡散接合工程が、酸素濃度が30[ppm]以下とされた雰囲気下において行われるものであると良い。
【0070】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記(i)のようなものとすることにより、ZnAl共析系合金接合材の酸化をより一層確実に抑制し、ZnAl共析系合金接合材の酸化に伴う接合強度の低下を抑制できる。
【0071】
(j)本実施形態で例示した接合体の製造方法は、密着度向上工程において、基材及び接合材に作用させる加圧力を、1[mm/分]よりも低い速度で増加させるものであると良い。
【0072】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記(i)のようなものとすることにより、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力をより一層低減させることができる。これにより、本実施形態の接合体の製造方法は、接合のために必要な加圧力を抑制しつつ、接合強度をより一層向上させることができる。
【0073】
(k)本実施形態で例示した接合体の製造方法は、密着度向上工程において基材及び接合材に作用させた加圧力を維持したまま、拡散接合工程を開始すること、を特徴とするものであると良い。
【0074】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記(k)のようなものとすることにより、基材及びZnAl共析系合金接合材を十分に密着させた状態を維持して拡散接合工程を開始できる。そのため、本実施形態の接合体の製造方法によれば、拡散接合工程においても基材とZnAl共析系合金接合材との間に酸素が介在することを抑制できる。また、本実施形態の接合体の製造方法によれば、高温条件下において酸素が介在することによるZnAl共析系合金接合材の酸化が原因となる接合強度の低下を抑制できる。
【0075】
(l)本実施形態の接合体の製造方法は、密着度向上工程の後、拡散接合工程において拡散接合可能な温度条件となるように昇温させる昇温工程を有し、昇温工程において、基材及び接合材を連続的に昇温させること、を特徴とするものである。
【0076】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記(l)のようなものとすることにより、例えば、上述した従来技術のように、ZnAl共析系合金が超塑性を発現する温度域において所定時間に亘って保持する保持期間を設ける場合に比べて、拡散接合工程に至るまでの期間を短縮できる。
【0077】
(m)本実施形態の接合体の製造方法は、昇温工程において、常温から、拡散接合温度まで速やかに昇温するものである。これにより、基材と接合体の界面に残存する微量の酸素により、界面が酸化して接合界面の密着力が低下することを最小限に抑えることができる。
【0078】
ここで、上述した本実施形態に係る接合体の製造方法は、密着度向上工程において基材とZnAl共析系合金接合材との密着度を向上させるべく加圧した後、その加圧力を維持した状態で拡散接合工程を行うものとすることができるが、加圧力を密着度向上工程よりも後において変動させることも可能である。例えば、密着度向上工程における加圧力を維持したまま、拡散接合工程において拡散接合を開始すると、軟化した基材が押しつぶされて、目的とする接合範囲の外にはみ出てしまう場合が想定される。このような現象が生じることによる接合力には影響がないとしても、例えば製品として使用すること等を考慮すると、接合体は大きく変形しない方が都合が良いと考えられる。本実施形態に係る接合体の製造方法においては、密着度向上工程において基材とZnAl共析系合金接合材とを十分に密着させた後、その密着度を保てば十分本発明の目的を達成できる。従って、基材が軟化すると想定される時点よりも前の段階において加圧力を低下させ、拡散温度での変形を最小限に抑えることにより、十分な接合強度を確保しつつ、基材の変形等を最小限に抑制した製品価値の高い接合体を製造できるものと考えられる。
【0079】
(n)かかる知見に基づけば、本実施形態の接合体の製造方法は、密着度向上工程よりも後の工程において、基材及び接合材を加熱している期間中に、基材及び接合材に作用させた加圧力を低下させるものとすると良い。
【0080】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記(n)のようなものとすることにより、例えば、十分な接合強度を確保しつつ、基材の変形等を最小限に抑制した製品価値の高い接合体を製造できる。
【0081】
本発明は、上述した実施形態として示したものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変形例が想定される。例えば、本実施形態では、酸素濃度低減工程を密着度向上工程に先だって行う例を示したが、基材とZnAl共析系合金接合材との間に介在する酸素の濃度を低減する等の観点から、本発明の趣旨に照らして問題ない条件下であれば、酸素濃度低減工程を密着度向上工程と並行処理する等しても良い。
【0082】
また、本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、上述した(a)~(f)の全てを満足するものである必要はなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で(a)~(f)の一部を満足しないものとすることができる。また、本発明の接合体や、接合体の製造方法は、上述した(a)~(f)の全てを満足した製造方法で作製されたZnAl共析系合金接合材を用いるものである必要はなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で(a)~(f)の一部を満足しない製造方法により準備されたZnAl共析系合金接合材を用いるものとすることが可能である。さらに、本発明の接合体の製造方法は、上述した(h)~(n)の全てを満足するものである必要はなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で(h)~(n)の一部を満足しないものとすることが可能である。
【実施例0083】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例においては、以下の[1]に係るZnAl共析系合金接合材の準備方法に則って、ZnAl共析系合金接合材を準備した。また、ZnAl共析系合金接合材の準備に際して、ZnAl共析系合金接合材の特性についての試験を行った。また、以下の[2]に係る接合体の準備方法に則って、接合体を準備した。さらに、[2]に係る接合体の準備方法に則って準備した接合体を利用して、以下の[3]及び[4]に係る方法にて、引張試験(接合強度の評価試験)、及び疲労試験を行った。
【0084】
[1]ZnAl共析系合金接合材の準備方法
本実施例においては、ZnAl共析系合金接合材としてZn22Al合金を主成分とするものを作製すべく、純Zn:780g、純Al:220gを高周波溶解炉にセットした黒鉛るつぼに入れ、アルゴンガス雰囲気下において約12.5kW(摂氏500~550度)にて加熱して完全溶解させ、溶湯状態において5分間保持した後、大気中において船形の金型に鋳込むことにより作製した。このようにして、ZnAl共析系合金を主成分とする合金塊を作製した(合金塊作製工程)。
【0085】
また、ZnAl共析系合金接合材の作製に際し、前述したようにして作製したZnAl共析系合金を主成分とする合金塊について、切断等の機械加工を施すことにより合金小塊とする加工(合金小塊作製工程)を施した後、摂氏375度で3時間保持することにより熱処理する工程(熱処理工程)、及び冷却する工程(冷却工程)を経て準備された。
【0086】
ここで、上述した作製方法によりZnAl共析系合金を準備する場合について、冷却工程における冷却条件と、結晶粒径の関係を調べた結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、ZnAl共析系合金の作製に際して、熱処理工程後に行う冷却方法として、水冷、空冷、液体窒素による冷却、炉冷からなる4種類の方法を採用し、それぞれの冷却方法により冷却して得られたZnAl共析系合金の結晶粒径の大きさを比較した。その結果、冷却速度を高めることにより、ZnAl共析系合金の結晶粒径が小さくなる傾向にあることが見いだされた。また、水は熱伝導率及び比熱の双方が大きいという特徴を有する冷媒であることから、ZnAl共析系合金の作製に際して熱処理後に水冷により冷却した場合には、他の冷媒を用いた場合に比べて冷却効率が高く、ZnAl共析系合金の結晶粒径の大きさが最も小さくなることが見いだされた。そのため、ZnAl共析系合金の作製に際して、結晶粒径を小さくするためには、熱処理後に行う冷却として水冷が最適であることが見いだされた。
【0089】
また、ZnAl共析系合金の結晶粒径を小さくすることを考慮すれば、冷却速度をできる限り早くする必要があり、このためには、体積に対する比表面積を大きくすると良い。かかる知見に基づき、本実施例では、ZnAl共析系合金を含むZnAl共析系合金接合材の製造に際し、合金塊作製工程においてZnAl共析系合金の合金塊を薄い板状のものとして準備しつつ、合金小塊作製工程において板状の合金塊を切断等して合金小塊とした後、摂氏375度で3時間保持することにより熱処理工程における熱処理を行った。これにより、ZnAl共析系合金の体積に対する表面積の比が大きくなるため、冷却工程における冷却速度を速くできる。
【0090】
冷却工程において冷却された後のZnAl共析系合金は、P1200からP2500のエメリー紙で研磨して酸化膜を除去する工程(表面研磨工程)、及び表面研磨されたZnAl共析系合金について、所定時間(本実施例では3分間)の超音波洗浄を行い、所定の厚み(本実施例では厚さ50nm)の金蒸着を行うことにより酸化対策を施す工程(表面被覆工程)を経ることにより、ZnAl共析系合金接合材とされた。
【0091】
ここで、前述した4種類の冷却方法により冷却することにより得られた結晶粒径の異なるZnAl共析系合金接合材について、図5(b)のような試験片を作製し、これについて引張強度を確認する試験を行った。その結果、図5(a)に示すような公称ひずみと公称応力の関係が確認された。この試験結果に基づけば、結晶粒径の微細化を図ることが、降伏応力の低下に対して有効であることが判明した。
【0092】
また、ZnAl共析系合金接合材の作製に際して、熱処理工程後に水冷による冷却を行って作製したものについて引張試験を行うことにより、引張速度を相違させた場合の公称ひずみと公称応力の関係を調べた。その結果、図6に示すような結果が得られた。これにより、引張速度を低下させるほど、ZnAl共析系合金接合材の降伏応力の低下に対して有効であることが判明した。
【0093】
[2]接合体の準備方法
上述したようにして準備したZn22Al合金を主成分とするZnAl共析系合金接合材を用いつつ、上記実施形態において例示した製造装置10を利用し、銅板からなる銅試験片を基材としてこれとZnAl共析系合金接合材とを接合した接合体を準備した。銅試験片をなす銅板は、市販の無酸素銅板により構成され、ZnAl共析系合金接合材との接合面をP1200からP2500のエメリー紙で研磨して酸化膜を除去し、所定時間(本実施例では3分間)の超音波洗浄を行った後、金蒸着により表面を被覆することにより準備した。
【0094】
ここで、ZnAl共析系合金は非常に酸化しやすい金属であり、高温においては酸素濃度が40[ppm]以下であっても簡単に厚い酸化膜を形成する特性を有する。そのため、ZnAl共析系合金及び銅試験片(基材)を常温で高密着化させて接合面をガスに触れさせないことが肝要である。そこで、本実施例では、接合体の準備に際し、上記実施形態において例示したように、図3に示したフローチャートに則り、昇温工程(ステップ2-4)に至る前に、ZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)が配される環境の酸素濃度を低下させると共に、ZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)を常温において高密着化させた。
【0095】
具体的には、先ず、ZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)を重ね合わせた状態で加圧装置50の設置部56に設置する接合対象物設置工程(ステップ2-1)を行い、酸素濃度低減工程(ステップ2-2)において本体部20の内部を酸素濃度が1[ppm]以下となるまで不活性ガス(本実施例では窒素ガス)によって置換した後、密着度向上工程(ステップ2-3)において加圧装置50をなす第一挟持部52及び第二挟持部54によってZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)の積層体を挟み込み、所定の加圧速度により、所定の加圧力(本実施形態では3[MPa])に到達するまで加圧力を高めることにより、ZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)を高密着化させた。
【0096】
上述したようにして常温において密着度向上工程(ステップ2-3)が完了すると、酸素濃度が1ppm以下の窒素雰囲気中において、2枚の銅試験片(基材)によってZnAl共析系合金接合材を加圧装置50をなす第一挟持部52及び第二挟持部54によって挟んだ状態のまま、拡散接合を行う温度(本実施形態では摂氏395度)まで雰囲気温度を昇温させる昇温工程(ステップ2-4)を実行した。雰囲気温度が拡散接合を行う温度まで到達した後、拡散接合工程において拡散接合可能な温度条件、及び加圧力を維持したまま、予め規定された加熱時間に亘って加熱することにより、ZnAl共析系合金接合材及び銅試験片(基材)を構成する金属原子を相互拡散させ、接合体(以下、「ラップジョイント試験片」とも称する)を作製した。
【0097】
[3]引張試験方法(接合強度の評価試験方法)
上述した[2]に係る接合体の準備方法によって準備した接合体(ラップジョイント試験片)について、室温で負荷速度1[mm/min]の条件で引張試験を行うことにより、接合強度を評価した。公称応力の算出には、接合前のZnAl共析系合金接合材の面積を使用した。
【0098】
[4]疲労試験方法
疲労試験に用いる試験片は、図7のようにして、上述した[2]に係る接合体の準備方法によって準備された接合体(試験片)から切り出すことで作製した。具体的には、疲労試験に用いる試験片の準備に際し、上述した[2]に係る接合体の準備方法において、加圧速度0.005[mm/min]、加圧力3[MPa]の条件で接合した接合体(試験片)を用い、これを低速切断機によって1.5[mm]間隔に切り出した。その後、切断加工による残留ひずみの影響を除去するために、自動研磨機で研磨することにより幅を0.5[mm]にした。観察面については、コロイダルシリカで鏡面仕上げを行なった。このようにして作製した疲労試験片に対し、引張強さの7割から3割の範囲で繰り返し荷重を与えることにより、疲労試験を行なった。疲労試験には、鷺宮製作所製の微小疲労試験機を用いた。疲労試験は、顕微鏡で観察しながら行なった。
【0099】
≪試験結果及び考察≫
以下、上述した[3]に係る引張試験方法、及び[4]に係る疲労試験方法によって行った引張試験、及び疲労試験に係る試験結果、及び当該試験結果を踏まえた考察について説明する。
【0100】
≪引張試験に係る試験結果≫
(1)超塑性発現温度域での温度保持が接合強度に与える影響についての検討
上記実施形態において例示したZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法が、ZnAl共析系合金接合材の結晶粒径を小さくし、降伏応力を下げるうえで有効な方法であることを確認すべく、引張試験を行った。
【0101】
具体的には、図8(a)に示した構造のラップジョイント試験片を加圧力2[MPa]、加圧速度0.01[mm/min]の条件で統一しつつ、常温から拡散接合に適した温度(本実施例では摂氏395度)まで昇温させる過程において、超塑性発現温度域(摂氏250度前後の温度域)に到達した時点で、当該温度域において温度を保持する保持時間を0、10、20[min]の3パターンに変化させて作製し、引張試験を行なった。すなわち、超塑性発現温度域(摂氏250度前後の温度域)での保持時間を0[min]としたサンプルは、上記実施形態において示したZnAl共析系合金接合材の製造方法により作製したものに相当し、昇温工程において連続的に昇温させる方法で作製したものである。
【0102】
一方、超塑性発現温度域での保持時間を10、20[min]としたサンプルは、比較例として作製されたものである。保持時間を10、20[min]としたサンプルは、上記実施形態において示したZnAl共析系合金接合材の製造方法とは異なり、従来技術のように上記実施形態における昇温工程に相当する期間内において、超塑性発現温度域に到達した時点において、10[min]あるいは20[min]に亘って超塑性発現温度域の温度に保持する方法で作製したものである。各サンプルについての引張試験の結果を、表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示すように、比較例として作製したサンプルのように、超塑性発現温度域である摂氏250度前後の温度において、10、20[min]の保持時間に亘って保持する方法により加熱した場合には、接合強度の向上が確認できず、むしろ保持時間が0[min]のサンプルよりも接合強度が大幅に低くなることが見いだされた。一方、上記実施形態に係るZnAl共析系合金接合材の製造方法に即して、昇温工程において超塑性発現温度域の温度に保持することなく昇温させたサンプル(保持時間が0[min]のサンプル)は、超塑性発現温度域で温度を保持したサンプルと比較して、引張強度が1.5~1.8倍程度まで向上し、最大公称応力についても1.6~1.8倍程度まで向上することが認められた。
【0105】
上述した試験結果に基づけば、従来技術のように超塑性発現温度域(摂氏250度前後)において温度を保持する期間を設けることが、仮に接合界面の高密着化を促進することに繋がったとしても、接合強度の向上の観点からすると十分な効果が得られるものではないと考えられる。その理由として、従来技術のように超塑性発現温度域(摂氏250度前後)において温度を保持する期間を設けると、酸化しやすい性質を有するZnAl共析系合金が完全に接合が終わっていない状態において、わずかに残留している酸素分子と反応し、接合面の酸化が発生することになり、接合強度の向上に対してむしろ有害になることが考えられる。
【0106】
これに対し、上記実施形態において示した本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法のように、密着度向上工程において基材とZnAl共析系合金接合材とを十分に密着させた後、昇温工程において超塑性発現温度域で保持時間を設けることなく連続的に昇温させることとすれば、従来技術と比べて接合強度を向上させることができるとの知見が得られた。また、本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法によれば、超塑性発現温度域での保持時間を設けない分、接合作業に要する時間を短縮できるとの知見が得られた。
【0107】
(2)加圧速度が接合強度に与える影響についての検討
上記実施形態において例示したZnAl共析系合金接合材を用いた接合体の製造方法の密着度向上工程において、基材及びZnAl共析系合金接合材に付与する圧力の上昇速度(加圧速度)が接合強度に与える影響についての検討を行うべく、試験を行った。具体的には、密着度向上工程における設定圧を3[MPa]で統一しつつ、設定圧に到達するまでの圧力の上昇速度(加圧速度)を1[mm/min]としたサンプル、及び加圧速度を0.005[mm/min]としたサンプルを準備して、それぞれについて引張試験を行った。本試験に用いた試験片は、図8(b)に示すような構造とした。本試験の結果を表3に示す。加圧速度を0.005[mm/min]としたサンプルについての破断後の状態を示す写真を図9(a)に、温度及び荷重の履歴を示すグラフを図9(b)に示す。また、加圧速度を1[mm/min]としたサンプルについての破断後の状態を示す写真を図10(a)に、温度及び荷重の履歴を示すグラフを図10(b)に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示すように、密着度向上工程における加圧速度を1[mm/min]としたサンプルは、引張強度の平均値が590[N]、最大公称応力の平均値が23.6[MPa]であった。これに対し、加圧速度を0.005[mm/min]としたサンプルは、引張強度の平均値が1058[N]、最大公称応力の平均値が42.4[MPa]であった。これにより、密着度向上工程における加圧速度の低い0.005[mm/min]としたサンプルは、加圧速度の高い1[mm/min]としたサンプルと比較して、引張強度の平均値が1.79倍、最大公称応力の平均値が1.79倍に向上ことが認められた。かかる試験結果により、密着度向上工程における加圧速度を低くすることが、接合強度の向上に寄与するとの知見が得られた。また、加圧速度を1[mm/min]としたサンプルについても十分な接合強度が得られることから、密着度向上工程における加圧速度は、1[mm/min]以下であることが好ましく、1[mm/min]よりも低速とするとより一層接合強度が高まることが見いだされた。
【0110】
(3)ZnAl共析系合金接合材の製造過程における冷却方法が接合強度に与える影響についての検討
上記実施形態において例示したZnAl共析系合金接合材の製造方法において、熱処理工程の後に行われる冷却工程におけるZnAl共析系合金の冷却方法が、ZnAl共析系合金接合材の接合性能に与える影響についての検討を行うべく、試験を行った。具体的には、ZnAl共析系合金接合材の製造に際して冷却工程において水冷により冷却を行ったZnAl共析系合金接合材を用いて接合したサンプル、及び冷却工程において炉冷により冷却を行ったZnAl共析系合金接合材を用いて接合したサンプルを準備し、それぞれのサンプルについて引張試験を行った。
【0111】
なお、本試験において用いたZnAl共析系合金接合材は、冷却工程におけるZnAl共析系合金の冷却方法以外の条件や製造方法を同一としたものである。また、本試験においては、サンプルとなる試験片(接合体)を同一条件の製造方法により準備して引張試験を行った。具体的には、密着度向上工程における設定圧を3[MPa]で統一しつつ、設定圧に到達するまでの圧力の上昇速度(加圧速度)を5N/min(0.01~0.008[mm/min]に相当)で統一してサンプルとなる試験片(接合体)を準備した。このようにして準備したサンプルについて、引張試験を行った。本試験に用いた試験片は、図8(a)に示すような構造とした。本試験の結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
上述した試験の結果、冷却工程における冷却方法を水冷としたZnAl共析系合金接合材を用いて接合したサンプルは、冷却工程における冷却方法を炉冷としたZnAl共析系合金接合材を用いて接合したサンプルと比較して、引張強度及び最大公称応力の双方とも、1.18倍~1.46倍に向上することが認められた。かかる試験結果により、冷却工程における冷却方法として冷却効率の高い方法を採用したZnAl共析系合金接合材を用いれば、当該接合材を用いて形成される接合体の接合強度の向上に寄与できるとの知見が得られた。また、冷却工程における冷却方法を水冷としたZnAl共析系合金接合材を用いれば、当該接合材を用いて形成される接合体の接合強度の向上において高い効果を示すとの知見が得られた。また、冷却工程における冷却方法を炉冷としたZnAl共析系合金接合材を用いたサンプル(接合体)についても十分な接合強度が得られることから、ZnAl共析系合金接合材の製造に際して冷却工程において行われる冷却方法は、炉冷であっても良く、炉冷よりも冷却効率の高いと考えられる室温等における空冷による方法や、液体窒素等の冷媒を用いた冷却方法、水冷による冷却方法とすることがより一層好ましいとの知見が得られた。
【0114】
≪疲労試験に係る試験結果≫
(1)静的引張試験
機械的疲労試験において付与する荷重の大きさを決定すべく、図7に示した方法で作製した微小疲労試験片に対して10[μm/s]の負荷速度で静的引張試験を行なった。その結果を表5に示す。静的引張試験による破断前の状態、及び破断後の状態を示す写真を、図11に示す。ここで、公称応力の算出に用いた面積の大きさは、試験片の厚さと接合面の長さの積としている。疲労試験を5回行うことにより得られた平均公称応力は23.3[MPa]となった。この結果に基づき、本実施例に係る疲労試験においては、引張強さの7割から3割の範囲の負荷となる16.3[MPa]から7.0[MPa]の応力を10[μm/s]の変位速度で繰り返し与えることにした。
【0115】
【表5】
【0116】
(2)機械的疲労試験
顕微鏡で観察しながら、微小疲労試験片に対して16.3[MPa]から7.0[MPa]の範囲の応力を変位速度10[μm/s]で繰り返し与えることにより、機械的疲労試験を行った。機械的疲労試験前(0サイクル)、及び10000サイクル後の状態を示す写真を、図12に示す。当該試験を3回行なったが、図12を参照して分かるように、いずれにおいても10000サイクルまでに、き裂の発生は確認できなかった。
【0117】
≪考察≫
上述した試験結果により、上記実施形態において例示した本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法のように、ZnAl共析系合金を薄く加工してから熱処理と急冷を行うことにより、より結晶粒径を小さくしたZnAl共析系合金接合材を製造すれば、接合強度の高い接合体の作製に際して有効な接合材を製造できることが見いだされた。また、上記実施形態において例示した本発明の接合体の製造方法のように、本発明に係る製造方法で製造したZnAl共析系合金接合材を用いつつ、常温時に低い加圧速度で圧縮した後に加圧しつつ加熱することとすれば、3[MPa]といった低い加圧力での拡散接合においても高い強度を持つ接合体を作製できるとの知見が得られた。さらに、本発明の接合体の製造方法のように、常温の時点で接合する金属同士を十分に高密着化するプロセスを設けた手法を採用することにより、ZnAl共析系合金が超塑性を発現する温度域における保持時間を省略できるとの知見が得られた。また、本発明の接合体の製造方法によるサンプルとして作製された試験片(接合体)は、引張強度の7割から3割の範囲の片振り疲労試験では10000サイクルまでにき裂が発生せず、疲労に対して十分な強さを有するものであるとの知見が得られた。
【実施例0118】
続いて、第二の実施例について説明する。本実施例では、ZnAl共析系合金接合材として、図13の表に示すように、サンプル1~サンプル9を準備し、それぞれについて物理的特性を調べた。本実施例では、物理的特性として、固相線温度、液相線温度、引張強度、公称応力、伸び、及び硬度について調べた。サンプル1~サンプル3、サンプル5、サンプル6、サンプル8、及びサンプル9に係るZnAl共析系合金接合材は、Zn22Al合金を主成分とするものである。また、サンプル4は、Zn25Al合金を主成分とするもの、サンプル7及びサンプル9は、Zn28Al合金を主成分とするものである。サンプル1~9のうち、サンプル2~サンプル9については、Zn及びAlに加えて、Cu及びMgのいずれか一方又は双方を添加したものとした。これらのサンプルは、それぞれ上記実施例1において説明したのと同一の方法により準備された。
【0119】
本実施例においては、以下に示す測定条件及び測定方法により、固相線温度、及び液相線温度を測定した。
【0120】
(固相線温度の測定条件及び測定方法)
・試料重量:約10mg
・測定装置:示差走査熱量計(リガク社製、Thermo Plus DSC8230)
・昇温速度:2℃/min
・準拠規格:JIS Z 3198-1 (方法A)
・測定方法:示差走査熱量計(リガク社製、Thermo Plus DSC8230)を用い、測定試料約10mgを量り取り、昇温速度2℃/minの条件で測定を行った。得られたDSCチャートより、JIS Z 3198-1(方法A)の方法にて固相線温度を求めた。
【0121】
(液相線温度の測定条件及び測定方法)
・試料重量:約150g
・測定装置:データロガー(キーエンス社製、NR-500)、K型熱電対、パーソナルコンピュータ、ステンレス容器
・準拠規格:JIS Z 3198-1『鉛フリーはんだ試験方法 第1部:溶融温度範囲測定方法』
・測定方法:ステンレス容器内で完全溶融させた試料(約150g)の中央部に熱電対を挿入し、静置させる。自然放冷によって変化する試料温度を、データロガーを用いて取得し、完全凝固に至るまでの時間-温度曲線、いわゆる冷却曲線を得る。取得した冷却曲線を、JIS Z 3198-1に記述の溶融温度範囲測定方法(方法B)によって液相線温度を求めた。
【0122】
また、本実施例においては、以下に示す測定条件及び測定方法により、引張強度、公称応力、伸び、及び硬度を測定した。
【0123】
(引張強度、公称応力、伸びの測定条件、及び測定方法)
・試料寸法:全長85mm、把持部長さ15mm
標点部長さ25mm、標点部直径5mm
・測定装置:万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-IS 10kN)
・試験速度:5mm/min
・測定方法:直径15mm、長さ85mmの円柱形状の合金塊を鋳造により得、旋盤切削加工により、所定の寸法の試料を作製する。試料を、375℃の電気炉内に1時間静置し、取り出し後、ただちに20℃の水中に投入する。冷却後、試料を万能試験機に把持し、5mm/minの試験速度で長さ方向に引っ張り、測定された最大応力値を引張強度とした。また公称応力は、上記の引張強度を、試験前の評点部の面積で除して求めた。さらに伸びは、試験後の試料の破断面を突きつけ合わせたときの標点長さから、試験前の標点長さを差し引いた数値を、試験前の標点長さで除して100を掛けて求めた。
【0124】
(硬度の測定条件及び測定方法)
・試料寸法:直径20mm、厚さ3mm
・測定装置:ビッカース硬さ試験機(明石製作所社製、AKASHI MVK-F)
・準拠規格:JIS Z 2244『ビッカース硬さ試験-試験方法』
・測定方法:所定の組成の合金塊を鋳造により得、旋盤切削加工により、直径20mm、厚さ3mmの円柱形状の試料を作製する。測定面を800番のエメリー紙で研磨した後、375℃の電気炉内に1時間静置し、取り出し後、ただちに20℃の水中に投入する。冷却後、室温で24時間経過した試料を測定に用いた。測定ならびに硬度の算出は、JIS Z 2244に記載の方法を用いた。
【0125】
ここで、各種デバイスにおける部品実装に際してZnAl共析系合金接合材を用いることを考慮すれば、液相線温度が摂氏510度未満であることが好ましい。かかる観点においてサンプル1~サンプル9を検討したところ、いずれのサンプルについても液相線温度が摂氏510度未満であった。従って、サンプル1~サンプル9に係るZnAl共析系合金接合材、すなわちZn22Al合金を主成分とする接合剤、Zn25Al合金を主成分とする接合剤、及びZn28Al合金を主成分とする接合剤は、いずれも各種デバイスにおける部品実装において好適に使用できるとの知見が得られた。
【0126】
図13を参照して分かるように、サンプル1~サンプル9について伸び及び硬度の観点から検討すると、Zn及びAlのみからなるサンプル1に対し、サンプル2~サンプル9のようにCu及びMgのいずれか一方又は双方を添加したものにおいては、伸びが大幅に低下する一方で、硬度が大幅に向上することが見いだされた。従って、各種デバイスにおける部品実装に際して必要とされる伸び及び硬度に係る特性に応じて、Zn及びAlに加えてCu及びMgのいずれか一方又は双方を添加するか否かを決定することが好ましいとの知見が得られた。
【0127】
また、図13を参照して分かるように、サンプル1~サンプル9について引張強度、及び公称応力の観点から検討すると、サンプル1~サンプル5の引張強度、及び公称応力に比べて、サンプル6~サンプル9の引張強度、及び公称応力が大きく低下することが見いだされた。そのため、ZnAl共析系合金接合材の引張強度、及び公称応力は、Cu及びMgの添加量がそれぞれ1.0[質量%]よりも多くなると低下する傾向にあることが見いだされた。
【0128】
ここで、図13に示した試験結果を参照すると、Mgを添加することにより、固相線温度が低下する傾向にあると考えられる。そのため、固相線温度を低下させる観点からすれば、Mgの添加量を増加させることが考えられる。その一方で、公称応力の観点からすると、Mgを5.0[質量%]添加したサンプル8、及びサンプル9において公称応力が他のサンプルよりも低くなる傾向が確認された。従って、固相線温度を低下させつつ、公称応力が過度に低下するのを抑制するという観点からすれば、Mgを添加しつつ、その添加量を5.0[質量%]未満とすることが適切であるとの知見が得られた。
【0129】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のZnAl共析系合金接合材の製造方法は、高温の温度条件下で作動するデバイス等において使用するための接合材として、鉛含有はんだに代えて利用可能なZnAl共析系合金接合材の製造において好適に利用できる。また、本発明の接合体は、高温の温度条件下で作動するデバイス等を構成するものとして好適に利用できる。本発明の接合体の製造方法は、高温の温度条件下で作動するデバイス等の製造に際して必要とされる接合体の製造において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0131】
10:製造装置
20:本体部
24:導入部
26:排出部
30:ガス供給源
40:酸素濃度計測器
50:加圧装置
52:第一挟持部
54:第二挟持部
56:設置部
60:加熱装置
62:発熱体
64:発熱体
66:温度計測器
68:加熱制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13