(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091587
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/727 20060101AFI20240627BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240627BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240627BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240627BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240627BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240627BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240627BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K31/727
A61K8/73
A61K8/67
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/20
A61K8/49
A61K8/36
A61K8/04
A61K8/02
A61P17/00
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/28
A61K47/46
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216351
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022206153
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】大塚 日加里
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA24
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD01
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4C076DD41
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4C076DD59
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4C076FF63
4C083AA111
4C083AA112
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4C083AB032
4C083AB242
4C083AB331
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4C083AB372
4C083AC022
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
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4C083AC132
4C083AC182
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4C083AC311
4C083AC312
4C083AC402
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
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4C083AC552
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC812
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC882
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD272
4C083AD311
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4C083AD352
4C083AD432
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB60
4C083CC05
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4C083DD21
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE03
4C086AA01
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4C086EA27
4C086MA03
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4C086MA28
4C086MA32
4C086MA34
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA89
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、ヘパリン類似物質及びその他の有効成分を含有する皮膚外用剤において、ヘパリン類似物質の保存安定性を向上させた皮膚外用剤を提供することである。
【解決手段】皮膚外用剤であって、ヘパリン類似物質と、成分(A)と、を含有し、前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、皮膚外用剤。
(A-1)トコフェロール類;(A-2)グリチルリチン酸類;(A-3)生薬類;(A-4)トラネキサム酸類;(A-5)ジフェンヒドラミン類;(A-6)無機塩(A-7)ピロリドン類;(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;(A-9)フェルビナク
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚外用剤であって、
ヘパリン類似物質と、成分(A)と、を含有し、
前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、皮膚外用剤。
(A-1)トコフェロール類;
(A-2)グリチルリチン酸類;
(A-3)生薬類;
(A-4)トラネキサム酸類;
(A-5)ジフェンヒドラミン類;
(A-6)無機塩
(A-7)ピロリドン類;
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;
(A-9)フェルビナク
【請求項2】
皮膚外用剤における前記ヘパリン類似物質の含有量が、0.1~10質量%である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚外用剤における前記成分(A)の含有量が、0.01~10質量%である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
さらにアルコール類を含有する、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
皮膚外用剤における前記アルコール類の含有量が、0.1~70.0質量%である、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記アルコール類が低級アルコールである、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記アルコール類が多価アルコールである、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
前記アルコール類が低級アルコールおよび多価アルコールを含む、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
ヘパリン類似物質と前記成分(A)との質量比(ヘパリン類似物質/成分(A))が0.01~100である、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
剤形が外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤、ゲル剤、貼付剤、又は外用固形剤である、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
剤形が外用液剤である、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
さらに界面活性剤を含有する、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
前記界面活性剤がポリソルベートである、請求項12に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
60℃1箇月保管後におけるヘパリン類似物質の残存率が90%以上である、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項15】
下記成分(A)を含有する、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤の安定化剤であって、
前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、安定化剤。
(A-1)トコフェロール類;
(A-2)グリチルリチン酸類;
(A-3)生薬類;
(A-4)トラネキサム酸類;
(A-5)ジフェンヒドラミン類;
(A-6)無機塩
(A-7)ピロリドン類;
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;
(A-9)フェルビナク
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤に関する。より詳しくは、本発明は、ヘパリン類似物質を含有する液状又は半固形状の組成物におけるヘパリン類似物質の保存安定性を向上させた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、健康な食用獣、主としてウシの気管軟骨を含む肺臓から抽出したコンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖である。ムコ多糖類の硫酸エステルで、ウロン酸とグルコサミンが交互に1,4結合した構造を有するヘパリンに似た構造を持つためこのような名称で呼ばれている。ヘパリン類似物質は、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有することが知られている。ヘパリン類似物質を配合した皮膚外用剤の効能効果は、血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結及び疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮質欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)とされている。ヘパリン類似物質含有皮膚外用剤の剤形としては、クリーム、ソフト軟膏、ローション、スプレーが販売されている。
【0003】
へパリン類似物質を他の有効成分とともに外用組成物に配合する場合、それぞれの有効成分の保存安定性や組成物としての品質の維持が課題となる。例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物において、リドカインとアミノアルコールとを配合するまたはピロリドンカルボン酸塩を配合することでヘパリン類似物質、リドカイン及びビタミンAパルミテートの安定性を向上させ得ることが開示されている。また、特許文献2には、ヘパリン類似物質とビタミンB6とを含有する皮膚外用組成物において、pHを4以上とすることでヘパリン類似物質とビタミンB6の安定性を向上させ得ることが開示されている。
【0004】
しかしながら、ヘパリン類似物質の多様な作用に基づいて更なる皮膚外用剤組成物の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-307491
【特許文献2】WO2020/138403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤を開発するにあたり、ヘパリン類似物質の保存安定性について本発明者らが検討したところ、ヘパリン類似物質を精製水に溶解させた場合、その安定性が著しく低下するという課題を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ヘパリン類似物質が安定に配合された皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記問題点を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、ヘパリン類似物質を含有する液状又は半固形状の組成物にある種の化合物を配合することによりヘパリン類似物質の安定性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) 皮膚外用剤であって、
ヘパリン類似物質と、成分(A)と、を含有し、
前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、皮膚外用剤。
(A-1)トコフェロール類;
(A-2)グリチルリチン酸類;
(A-3)生薬類;
(A-4)トラネキサム酸類;
(A-5)ジフェンヒドラミン類;
(A-6)無機塩;
(A-7)ピロリドン類;
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;
(A-9)フェルビナク
(2) 皮膚外用剤における前記ヘパリン類似物質の含有量が、0.1~10質量%である、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) 皮膚外用剤における前記成分(A)の含有量が、0.01~10質量%である、(1)または(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) さらにアルコール類を含有する、(1)~(3)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(5) 皮膚外用剤における前記アルコール類の含有量が、0.1~70.0質量%である、(4)に記載の皮膚外用剤。
(6) 前記アルコール類が低級アルコールである、(4)又は(5)に記載の皮膚外用剤。
(7) 前記アルコール類が多価アルコールである、(4)又は(5)に記載の皮膚外用剤。
(8) 前記アルコール類が低級アルコールおよび多価アルコールを含む、(4)又は(5)に記載の皮膚外用剤。
(9) ヘパリン類似物質と成分(A)との質量比(ヘパリン類似物質/成分(A))が0.01~100である、(1)~(8)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(10) 剤形が外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤、ゲル剤、貼付剤、又は外用固形剤である、(1)~(9)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(11) 剤形が外用液剤である、(1)~(10)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(12) さらに界面活性剤を含有する、(1)から(11)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(13) 前記界面活性剤がポリソルベートである、(12)に記載の皮膚外用剤。
(14) 60℃1箇月保管後におけるヘパリン類似物質の残存率が90%以上である、(1)から(13)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(15) 下記成分(A)を含有する、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤の安定化剤であって、前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、安定化剤。
(A-1)トコフェロール類;
(A-2)グリチルリチン酸類;
(A-3)生薬類;
(A-4)トラネキサム酸類;
(A-5)ジフェンヒドラミン類;
(A―6)無機塩
(A-7)ピロリドン類;
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;
(A-9)フェルビナク
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤によれば、ヘパリン類似物質の安定性が向上しているため、保存安定性を高め、保存後でも、ヘパリン類似物質の薬効を効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚外用剤(以下、外用剤と呼ぶこともある)は、ヘパリン類似物質、および、成分(A)と、を含有し、
前記成分(A)が、下記成分(A-1)~(A-9)よりなる群から選ばれる1種以上である、皮膚外用剤。
(A-1)トコフェロール類;
(A-2)グリチルリチン酸類;
(A-3)生薬類;
(A-4)トラネキサム酸類;
(A-5)ジフェンヒドラミン類;
(A-6)無機塩
(A-7)ピロリドン類;
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩;
(A-9)フェルビナク
【0012】
本発明におけるヘパリン類似物質は、別名ムコ多糖類多硫酸エステル又はヘパリノイドと呼ばれる物質であり、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖で、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有することが知られている公知の薬剤である。ヘパリン類似物質には、例えば、ヘパリン;コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸Eのようなコンドロイチン多硫酸などが含まれる。本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシやブタ等の気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。ヘパリン類似物質としては、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されているヘパリン類似物質が好ましい。
【0013】
ヘパリン類似物質は、必要に応じ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物若しくは炭酸塩、又はアミン類等を用いる造塩反応により得られる生理学的に許容される塩形態のものでもよい。
本発明におけるヘパリン類似物質の有機硫酸基の割合(%)は、特に限定されないが、例えば、消炎鎮痛効果の向上及び皮膚刺激の低減などの観点から、20~40%(質量%)が好ましく、25~38%(質量%)が特に好ましい。なお、有機硫酸基の量は、日本薬局方外医薬品規格2002中、「ヘパリン類似物質」の項に記載の方法により測定する。
また、本発明におけるヘパリン類似物質の平均分子量は、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量(MW)にて、1,000~1,000,000が好ましく、5,000~100,000が特に好ましい。
【0014】
また、本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質の類縁体も任意成分として含んでいてもよい。ヘパリン類似物質の類縁体としては、例えば、その他の酸性ムコ多糖であってよい。
ヘパリン類似物質の類縁体としての酸性ムコ多糖としては、例えば、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等のコンドロイチン硫酸類、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
すなわち、本発明の皮膚外用剤においては、ヘパリン類似物質と併せて、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ヘパリン類似物質の類縁体としての酸性ムコ多糖をさらに加えてもよい。
これらヘパリン類似物質の類縁体は、場合によっては製薬上許容される塩及び/又は溶媒和物の形態であってよい。製薬上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
また、溶媒和物としては水和物が挙げられる。
【0015】
(A-1)トコフェロール類としては、トコフェロール、トコトリエノール及びそれらの誘導体(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステル、ニコチン酸エステル等のエステル化誘導体など)並びにそれらの塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩など)を挙げることができる。トコフェロールとしては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールのいずれであってもよいが、α-トコフェロールが好ましい。また、トコトリエノールとしては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールのいずれであってもよいが、α-トコトリエノールが好ましい。トコフェロール類としては、トコフェロール酢酸エステルが特に好ましい。
【0016】
トコフェロール類を使用する場合における皮膚外用剤におけるトコフェロール類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.03~4質量%がより好ましく、0.05~2質量%が特に好ましい。
【0017】
(A-2)グリチルリチン酸類としては、例えば、グリチルリチン酸またはその塩、グリチルレチン酸またはその塩を挙げることができる。塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩などを挙げることができる。また、グリチルリチン酸類としては、グリチルリチン酸類を含有するカンゾウ(甘草)やその抽出物を用いてもよい。
【0018】
グリチルリチン酸類を使用する場合における皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0019】
(A-3)生薬類としては、例えば、カンゾウ、アルニカチンキ、アカメガシワ、アセンヤク、インヨウカク、ウイキョウ、ウコン、エンゴサク、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、ガジュツ、カノコソウ、カミツレ、カロニン、キキョウ、キョウニン、クコシ、クコヨウ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウカ、コウブシ、ゴオウ、ゴミシ、サイシン、サンシシ、サンショウ、シオン、ジコッピ、シコン、シャクヤク、ジャコウ、シャジン、シャゼンシ、シャゼンソウ、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、ショウキョウ、ジリュウ、シンイ、セイヨウトチノキ、セキサン、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、タイサン、チクセツニンジン、チンピ、トウキ、トコン、ナンテンジツ、ニンジン、バイモ、バクモンドウ、ハンゲ、バンコウカ、ハンピ、ビャクシ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボタンピ、ヨウバイヒ、ロクジョウ等の生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)等が挙げられる。なお、カンゾウは、グリチルリチン酸類として用いてもよく、生薬類としても用いてもよく、グリチルリチン酸類及び生薬類の両方の役割を兼ねて用いてもよい。
【0020】
生薬類を使用する場合における皮膚外用剤における生薬類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0021】
(A-4)トラネキサム酸類は、例えば、トラネキサム酸またはその塩、トラネキサム酸誘導体またはその塩を含んでいてもよい。
トラネキサム酸の塩としては、特に制限はないが、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属塩;リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ステアリルアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。また、トラネキサム酸誘導体またはその塩であってもよく、具体的には、トラネキサム酸セチルエステル等のエステル誘導体;トラネキサム酸メチルアミド等のアミド誘導体が例示できる。
【0022】
トラネキサム酸類を使用する場合における皮膚外用剤におけるトラネキサム酸類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量%が特に好ましい。
【0023】
(A-5)ジフェンヒドラミン類としては、例えば、ジフェンヒドラミンまたはその塩を挙げることができる。ジフェンヒドラミンの塩としては、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。ジフェンヒドラミン類としては、ジフェンヒドラミンまたはジフェンヒドラミン塩酸塩が好ましい。
【0024】
ジフェンヒドラミン類を使用する場合における皮膚外用剤におけるジフェンヒドラミン類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量%が特に好ましい。
【0025】
(A-6)無機塩
無機塩は、マグネシウム又はカルシウム等のアルカリ土類金属の塩、ナトリウム又は等のアルカリ金属の塩、またはアンモニウム塩など挙げられ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムが好ましく、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0026】
無機塩を使用する場合における皮膚外用剤における無機塩の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.1~10質量%がより好ましく、1~10質量%が特に好ましい。
【0027】
(A-7)ピロリドン類としては、dl-ピロリドンカルボン酸またはその塩が挙げられ、例えば、ピロリドンカルボン酸ナトリウムが好ましい。
ピロリドン類を使用する場合における皮膚外用剤におけるピロリドン類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.1~10質量%がより好ましく、1~10質量%が特に好ましい。
【0028】
(A-8)ジクロフェナク及び/又はその塩
本発明の皮膚外用剤においては、ジクロフェナク及び/又はその塩を用いてもよい。
ジクロフェナクとは2-(2-(2,6-ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸とも称される非ステロイド性消炎鎮痛薬である。
ジクロフェナク及び/又はその塩を使用する場合における皮膚外用剤におけるジクロフェナク及び/又はその塩の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~10質量%が特に好ましい。
【0029】
(A-9)フェルビナクは、フェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬である。
フェルビナクを使用する場合における皮膚外用剤におけるフェルビナクの含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~10質量%が特に好ましい。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は、さらにアルコール類を含有してもよい。
本発明におけるアルコール類とは低級アルコールおよび多価アルコールのことを指す。本発明における低級アルコールとは、可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる炭素数1~4個の脂肪族アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコールとも言う)、プロパノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコールとも言う)、およびブチルアルコール等からなる群より選ばれる1種または2種以上であり、好ましくはエタノールである。エタノール含量が99.5体積%以上のものは無水エタノールとも呼ばれる。
【0031】
本発明における多価アルコールとは、可溶化剤、基剤、湿潤剤、粘稠剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる、分子内に水酸基が2個以上あるアルコールであり、例えば、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、マクロゴール(ポリエチレングリコールともいう)、グリセリン、D‐ソルビトール、ジプロピレングリコールであり、医薬品添加物事典2021に収載されている。なお、マクロゴールの分子量は特に限定されないが、例えば、数平均分子量で200~20000であってもよい。
また、本発明におけるアルコール類の分子量は、特に限定されないが、例えば、400以下であってもよく、400未満であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましく、200以下であることが特に好ましく、100以下であってもよい。
【0032】
また、本発明の外用剤における、ヘパリン類似物質の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、外用剤全量に対して、0.1~10質量%であり、より好ましくは、0.1~0.5質量%である。なお、外用剤の剤形が貼付剤(パップ剤、テープ剤)の場合においても、ヘパリン類似物質の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、貼付剤の膏体全量に対して、0.1~10質量%であり、より好ましくは、0.1~0.5質量%である。
【0033】
本発明の外用剤が、アルコールを含有する場合、アルコールの質量に対する、ヘパリン類似物質の含有量の比(ヘパリン類似物質/アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~100であり、より好ましくは、1.4×10-3~10であり、さらに好ましくは2.0×10-3~5.0である。
本発明の外用剤が、低級アルコールを含有する場合、低級アルコールの質量に対する、ヘパリン類似物質の含有量の比(ヘパリン類似物質/低級アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~100であり、より好ましくは、1.4×10-3~10であり、さらに好ましくは2.0×10-3~5.0である。
本発明の外用剤が、多価アルコールを含有する場合、多価アルコールの質量に対する、ヘパリン類似物質の含有量の比(ヘパリン類似物質/多価アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~100であり、より好ましくは、1.4×10-3~10であり、さらに好ましくは2.0×10-3~5.0である。
【0034】
本発明の外用剤が、アルコールを含有する場合、アルコールの質量に対する、成分(A)の含有量の比(成分(A)/アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~150であり、より好ましくは、1.4×10-3~100であり、さらに好ましくは、2.0×10-3~35である。
本発明の外用剤が、低級アルコールを含有する場合、低級アルコールの質量に対する、成分(A)の含有量の比(成分(A)/低級アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~150であり、より好ましくは、1.4×10-3~100であり、さらに好ましくは、2.0×10-3~20である。
本発明の外用剤が、多価アルコールを含有する場合、多価アルコールの質量に対する、成分(A)の含有量の比(成分(A)/多価アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~150であり、より好ましくは、1.4×10-3~100であり、さらに好ましくは、2.0×10-3~35である。
【0035】
本発明の外用剤におけるヘパリン類似物質と成分(A)との質量比は、特に限定されないが、ヘパリン類似物質/成分(A)(HP/成分(A)質量比)が0.01~100であってよく、0.01~10であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の外用剤におけるアルコールの含有量の範囲は、特に限定されないが、 剤形に応じて選択してよく、 好ましくは、外用剤全量に対して、0.1~70.0質量%であってもよい。なお、外用剤の剤形が貼付剤(パップ剤、テープ剤)の場合においても、アルコールの含有量は、特に限定されないが、好ましくは、貼付剤の膏体全量に対して、0.1~70.0質量%である。
また、本発明の外用剤における低級アルコールの含有量の範囲は、特に限定されないが、剤形に応じて選択してよく、好ましくは、外用剤全量に対して、0.1~70.0質量%であり、より好ましくは、0.1~50.0質量%である。
【0037】
例えば、本発明の外用剤が外用液剤・ゲル剤の場合には、低級アルコールの添加量含有量の範囲は、例えば、外用液剤・ゲル剤の全量に対して、特に限定されないが、好ましくは10.0~70.0質量%であり、より好ましくは、10.0~60.0質量%である。
例えば、本発明の外用剤がパップ剤の場合には、低級アルコールの添加量含有量の範囲は、例えば、パップ剤の膏体全量に対して、好ましくは0.1~50質量% であり、より好ましくは0.1%~30質量%である。
例えば、本発明の外用剤がテープ剤の場合には、低級アルコールを含有する場合と含有しない場合とがあり、低級アルコールを含有する場合の含有量の範囲は、例えば、テープ剤の膏体全量に対して、好ましくは0.1~10質量% であり、より好ましくは0.1%~5質量%である。
【0038】
さらに、本発明の外用剤における多価アルコールの含有量の範囲は、特に限定されないが、剤形に応じて選択してよく、好ましくは外用剤全量に対して、0.1~70質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは0.5~20質量%であり、さらに好ましくは、1.0~15質量%である。
例えば、本発明の外用剤が外用液剤・ゲル剤の場合には、多価アルコールの添加量含有量の範囲は、特に限定されないが、例えば、外用液剤・ゲル剤の全量に対して、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは、1.0~15質量%である。
【0039】
例えば、本発明の外用剤がパップ剤の場合には、多価アルコールの添加量含有量の範囲は、特に限定されないが、例えば、パップ剤の膏体全量に対して、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは3~60質量%である。
例えば、本発明の外用剤がテープ剤の場合には、多価アルコールを含有する場合と含有しない場合とがあり、多価アルコールを含有する場合の含有量の範囲は、例えば、テープ剤の膏体全量に対して、好ましくは0.1~15質量% であり、より好ましくは0.1%~10質量%である。
【0040】
また、皮膚外用剤のpHの範囲は、特に限定されないが、好ましくは5.0~7.5であり、より好ましくは6.0~7.5である。
【0041】
本発明の皮膚外用剤において、上記成分以外の鎮痛消炎用の皮膚外用剤に通常使用される、薬物や医薬品添加物を添加することができる。
【0042】
本発明の皮膚外用剤においては、さらに成分(B)を含んでいてもよく、前記成分(B)が下記成分(B―1)~(B―4)よりなる群から選ばれる1種以上を含有してよい。
(B-1)テルペン類;
(B-2)バニロイド類;
(B-3)ニコチン酸類;
(B-4)クロルフェニラミン類 ;
【0043】
(B-1)テルペン類とは、テルペン炭化水素のほか、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド、テルペンケトン、テルペンオキシド、テルペンラクトンなどを包含する総称(テルペノイド)を意味し、その構造は特に限定されるものではなく、モノテルペン、セスキテルペン又はそれらの誘導体等が挙げられる。また、環式でも鎖式でもよい。テルペン類としては、例えば、イソボルネオール、イロン、オシメン、カルベオール、カルボタナセトン、カルボメントン、カルボン、カレン、カロン、カンフェン、カンフル、ゲラニオール、サビネン、サフラナール、シクロシトラール、シトラール、シトロネラール、シトロネル酸、シトロネロール、シネオール、シメン、シルベストレン、チモール、イソツジョール、ツジョン、テルピネオール、テルピネン、テルピノレン、トリシクレン、ネロール、ピネン、ピノカンフェオール、ピノール、ピペリテノン、フェランドラール、フェランドレン、フェンチェン、フェンチルアルコール、ペリリルアルコール、ペリルアルデヒド、ボルネオール、ミルセン、メントール、メントン、ヨノール、ヨノン、リナロール、リモネン等が挙げられる。
【0044】
テルペン類としては、テルペン類を含む精油を用いてもよい。精油としては、例えば、アニス油、イランイラン油、イリス油、ウイキョウ油、オレンジ油、カナンガ油、カミツレ油、カヤプト油、カラウェー油、クベブ油、グレープフルーツ油、ケイヒ油、コリアンダー油、サフラン油、サンショウ油、シソ油、シトリオドラ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、ショウズク油、樟脳油、ジンジャーグラス油、スペアミント油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、ダイウイキョウ油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、バジル油、ハッカ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレン油、ベイ油、ペニローヤル油、ヘノポジ油、ベルガモット油、ボアドローズ油、ホウショウ油、マジョラン油、マンダリン油、メリッサ油、ユーカリ油、ライム油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
テルペン類としては、好ましくは、l-メントール、dl―カンフル、メントキシプロパンジオール(3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール)、3-(l-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、イソプレゴール、チモール、ハッカ油、ユーカリ油などを使用することができる。
【0046】
テルペン類を使用する場合における皮膚外用剤におけるテルペン類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~6質量%がより好ましく、0.1~4質量%が特に好ましい。
【0047】
(B-2)バニロイド類は、バニリル基を含む化合物の総称である、本発明におけるバニロイド類としては、バニリル基を含む化合物であれば特に限定されず、例えば、バニリン、バニリン酸、カプサイシン、バニリルマンデル酸(VMA)、バニリルブチルエーテル(4-ブトキシメチル-2-メトキシフェノール)などが挙げられる。
また、本発明におけるバニロイド類は、バニリル基を含む化合物を含む天然物を含んでいてもよく、バニリル基を有する化合物の誘導体やさらにバニリル基に官能基を付与した合成化合物などを含んでいてもよい。
また、本発明におけるバニロイド類としては、バニリル基を含む化合物を含有するトウガラシ類を用いてもよく、バニロイド類の一部として含んでいてもよい。
トウガラシ類としては、例えば、第17改正日本薬局方に収載のトウガラシ(Capsicum annuum Linne(Solanaceae)の果実)などを好適に用いることができる。トウガラシは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、トウガラシを粉末とした「トウガラシ末」も本発明の「トウガラシ」として用いることができる。また、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(トウガラシエキス、トウガラシチンキなど)を用いてもよい。なお、トウガラシの抽出物は、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものでもよい。さらに、トウガラシ類としては、トウガラシの主成分であるカプサイシノイドを用いてもよい。カプサイシノイドとしては、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドが好ましい。トウガラシ類としては、好ましくは、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、ノニル酸バニリルアミド、又はカプサイシンを使用することができる。
【0048】
バニロイド類を使用する場合における皮膚外用剤におけるバニロイド類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量% が特に好ましい。
また、トウガラシ類を使用する場合における皮膚外用剤におけるトウガラシ類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量%が特に好ましい。
【0049】
(B-3)ニコチン酸類としては、ニコチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩を挙げることができる。ニコチン酸の誘導体としては、例えば、ニコチン酸エステル(具体的にはニコチン酸メチルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、ニコチン酸ベンジルエステル、イノシトールヘキサニコチネート、ヘプロニカートなど)、ニコチン酸アミド、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸など)などが挙げられる。ニコチン酸エステルとしては、ニコチン酸のモノエステルが好ましい。ニコチン酸類としては、ニコチン酸ベンジルエステルが好ましい。
【0050】
ニコチン酸類を使用する場合における皮膚外用剤におけるニコチン酸類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.015~4質量%がより好ましく、0.02~2質量%が特に好ましい。
【0051】
(B-4)クロルフェニラミン類としては、クロルフェニラミン類およびその塩が挙げられる。クロルフェニラミンの塩としては、具体的には、マレイン酸塩、フマル酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;金属塩等の各種塩が挙げられる。クロルフェニラミン類としては、クロルフェニラミンマレイン酸塩が好ましい、
【0052】
クロルフェニラミン類を使用する場合における皮膚外用剤におけるクロルフェニラミン類の含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量の質量に対して一般的には0.01~10質量%であり、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量%が特に好ましい。
これらの成分(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0053】
上記成分以外の医薬品添加物は、例えば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を目的として必要に応じて添加するものであり、例えば、湿潤剤、保湿剤、粘稠剤、粘着剤、粘着付与樹脂、架橋剤、充填剤、油脂類、軟化剤、防腐剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、溶解補助剤、pH調節剤、抗酸化剤、清涼化剤、界面活性剤、乳化剤、等を挙げることができる。特に、本発明の皮膚外用剤は、界面活性剤を含有することが好ましい。また、本発明の皮膚外用剤は、その他、任意の成分を含んでいてもよい。なお、本発明の皮膚外用剤は、好ましくは、N-メチルピロリドン(N-メチル-2-ピロリドン)を含まない。
【0054】
湿潤剤としては、例えば、ヒアルロン酸、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウムまたはその塩(例えば、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム)等を用いることができる。
保湿剤としては、例えば、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、グリセリン、マクロゴール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の多価アルコールを用いることができる。
増粘剤(粘稠剤・ゲル化剤)としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、メチルセルロース、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸プロピレングリコール等を用いることができる。
【0055】
粘着剤としては、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン溶液、メタクリル酸・アクリル酸n-ブチルコポリマー、アクリル酸シルクフィブロイン共重合樹脂、アクリル酸デンプン300、アクリル酸デンプン1000、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸イソノニル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル・ジアセトンアクリルアミド共重合体等のアクリル系粘着剤;シスイソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、シスポリイソプレンゴム、ハイシスポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン(PIB)、クロロプレンゴム、ポリブテン、天然ゴムラテックス、SBR合成ラテックス等の合成ゴム系粘着剤;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーン系粘着剤の他、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、グァーガム、トラガントガム、アラビアゴム等に加えて、これらをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩で架橋したもの等を用いることができる。
【0056】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、マレイン酸レジン、マレイン化ロジングリセリンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロサルタイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等を用いることができる。
充填剤としては、例えば、アルミナ、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸亜鉛、亜鉛酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ(二酸化ケイ素)等を用いることができる。
油脂類としては、例えば、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化水素等の炭化水素類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル類;べへニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;ベヘニン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;カルナウバロウ、鯨ロウ、セラック、ホホバ油、ミツロウ、サラシミツロウ、モンタンロウ、ラノリン、精製ラノリン、還元ラノリン等のロウ類;シリコーン油等を用いることができる。
【0057】
軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン;スクワレン;綿実油、パーム油、ヤシ油、アーモンド油、ナタネ油、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジイソプロピル等の液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトン;グリセリン等を用いることができる。
【0058】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。
経皮吸収促進剤としては、例えば、アルコール、脂肪酸、アジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、テルペン系化合物、ピロリドン誘導体、有機酸、有機酸エステル、精油、炭化水素、炭化プロピレン、エイゾン又はその誘導体等を用いることができる。
安定化剤としては、例えば、オキシベンゾン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エデト酸ナトリウム、UV吸収剤(例えば、ジベンゾイルメタン誘導体)等を用いることができる。
【0059】
溶解補助剤としては、例えば、ベンジルアルコール;ピロチオデカン;ミリスチン酸イソプロピル;クロタミトン;N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類;高級アルコール類;アジピン酸ジエチル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸類;ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のオキシアルキレン脂肪酸エステル等を用いることができる。
pH調節剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、有機酸、有機アミン(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなど)、リン酸等を用いることができる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸水和物、無水クエン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、dI-αートコフェロール、ジクロルイソシアヌル酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、プチルヒドロキシアニソール、大豆レシチン、ペンタエリスリルーテトラキス[3一(3,5-ジーt-ブチルー4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル等を用いることができる。
清涼化剤としては、例えば、l-メントール、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、チモール等を挙げることができる。
【0060】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤を用いてもよく、イオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0061】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコールアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテルエステル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;オクチルドデカノール等の高級アルコールなどが挙げられる。本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等を挙げることができる。
【0062】
本発明におけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等を挙げることができる。
本発明におけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0063】
本発明における非イオン性界面活性剤は、医薬品添加物事典2021に収載されている。
【0064】
イオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート等のアニオン界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0065】
本発明におけるイオン性界面活性剤は、医薬品添加物事典2021、第17改正日本薬局方に収載されている。
本発明における乳化剤は、例えば、上記各種界面活性剤、上記高級アルコールなどで挙げたものを任意に用いてもよい。
本発明におけるその他の任意の成分としては、例えば、ジクロフェナク及び/又はその塩やフェルビナクとは異なる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含んでいてもよい。
具体的に、本発明の皮膚外用剤においては、さらにジクロフェナク及び/又はその塩やフェルビナクとは異なるNSAIDs、例えば、ロキソプロフェン、その塩およびそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0066】
本発明の皮膚外用剤の具体的な剤形としては、例えば、外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤)、ゲル剤、貼付剤(テープ剤、パップ剤)、又は外用固形剤等を挙げることができ、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、第17改正日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。本発明における皮膚外用剤の剤形としては、外用液剤が特に好ましい。
【0067】
また、本発明の皮膚外用剤の製剤は、例えば、ガラス製の容器・包装、又は、アルミニウム等の金属製の容器・包装、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂製の容器・包装に収容し、密封することができ、さらにアルミニウム等の金属を含む防湿袋に収容することができる。また、容器・包装には、再生プラスチックやバイオマス原料など環境に配慮された原料・材料を含む容器・包装を用いてもよく、必要に応じ、ラミネート構造の材料やガスバリア材料、高温環境などの際の熱や光など、医薬品の容器・包装の外部からの因子・要素・環境変化による皮膚外用剤の劣化を防ぎ、適切に皮膚外用剤の品質が保持されるような任意の材料などを用いてもよい本発明の一実施形態においては、適切な容器・包装に皮膚外用剤の製剤・組成物が収容された医薬品としてもよい。
本発明の皮膚外用剤によれば、ヘパリン類似物質と成分(A)を配合することによって、ヘパリン類似物質の安定性を向上させることができる。このことによって、皮膚外用剤の保存安定性を高め、保存後でも、ヘパリン類似物質の薬効を効果的に発揮することができる。本発明の皮膚外用剤においては、好ましくは、60℃1箇月保管後におけるヘパリン類似物質の残存率が90%以上である。
また、本発明の皮膚外用剤によれば、界面活性剤および増粘剤のうち少なくとも1つによる(界面活性剤や増粘剤等に起因する)ヘパリン類似物質の含量低下を抑制可能である。
【0068】
本発明は、一実施形態として、成分(A)を含有する、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤の安定化剤として使用してもよい。具体的には、成分(A)を含有する、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤におけるヘパリン類似物質の安定化剤として使用してもよい。
また、上記一実施形態においては、界面活性剤および増粘剤のうち少なくとも1つによる前記ヘパリン類似物質の含量低下を抑制可能である。
【0069】
以下に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0070】
(試験例1)ヘパリン類似物質の保存安定性の検討
ヘパリン類似物質の保存安定性を向上させる成分について、検討した。
(1)試験材料及び検体の調製
以下の表1~4の各検体に記載された成分を混合・溶解し、全量100gとなるよう精製水を添加後、塩酸を2倍に希釈した溶液または水酸化ナトリウムを10倍に希釈した溶液(pH調整剤)でpHを6.5になるよう調節し、検体1~13の液剤を得た。また、表5については各検体に記載された成分を混合・溶解し、全量100gとなるよう精製水を添加後、乳酸でpHを6.5になるよう調節し、検体14~15の液剤を得た。
なお、ヘパリン類似物質はアピ(株)製のもの(ヘパリン類似物質全体に対する有機硫酸基の割合が35.2%(質量%)のもの)を、トコフェロール酢酸エステルは三菱ケミカルフーズ(株)製のものを、チモールは富士フィルム和光純薬(株)製のものを、無水エタノールは今津薬品工業(株)製のものを、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびポリソルベート80は日光ケミカルズ(株)製のものを、トラネキサム酸は協和ファーマケミカル(株)製のものを、カンゾウ乾燥エキスはアルプス薬品工業(株)製のものを、グリチルリチン酸ジカリウムはアルプス薬品工業(株)製のものを、塩化ナトリウムはナカライテスク(株)製のものを、ジフェンヒドラミンは東京化成工業(株)製のものを、ジフェンヒドラミン塩酸塩は金剛化学(株)製のものを、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液は味の素ヘルシーサプライ(株)製のものを、ジクロフェナクナトリウムおよびフェルビナクは東京化成工業(株)製のものを、ジイソプロパノールアミンは富士フィルム和光純薬(株)製のものを、DL-りんご酸は純正化学(株)製のものを、塩酸および水酸化ナトリウムは関東化学(株)製のものをそれぞれ使用した。
【0071】
得られた製剤を胴径30mmの透明ガラスバイアルに分注し、密栓した。透明ガラスバイアルは(株)マルエム製のマイティバイアル(透明、No.6)を使用した。分注した検体1~16を60℃(遮光条件下)にて1箇月間保管した。
保管前、及び保管後のサンプルについてヘパリン類似物質の組成物中の含有量を日本薬局方外医薬品成分規格2002ヘパリン類似物質の確認試験(1)及び、デキストラン硫酸ナトリウム腸溶錠の定量法に基づいて規定した、下記方法で測定し、ヘパリン類似物質の残存率(%)を下記式に基づき算出した。
【0072】
<ヘパリン類似物質の残存率(%)の算出方法>
・試料原液の調製
残存率測定対象の試料検体をヘパリン類似物質の濃度が6×10-3mg/mLとなるように水で希釈したものを試料原液とした。なお、剤形によっては、適切になるように、任意で塩を用いて試料原液を調製してもよい。
・検量線作成用標準原液の調製
定量用ヘパリン類似物質を水で希釈し、試料原液のヘパリン類似物質の濃度を含む範囲のヘパリン類似物質濃度の検量線作成用の標準原液を調製した。なお、剤形によっては、適切になるように、任意で塩を用いて検量線作成用の標準原液を調製してもよい。
・試料溶液等の調製、および、ヘパリン類似物質の残存率(%)の測定
試料原液、標準原液、水をそれぞれ5mLを正確に量り、0.1mol/L クエン酸
・ 0.2mol/L リン酸水素二ナトリウム(19:1)混液で調整したトルイジンブルーO溶液(1→50000)5mLを正確に加えてよく振り混ぜ、試料溶液、標準溶液、ブランク溶液(ヘパリン類似物質が含まれていない溶液)を調製した。
試料溶液、標準溶液、及びブランク溶液のそれぞれについて、水を対照として、溶液調製後直ちに紫外可視吸光度測定法により試験を行い、波長630nmにおける吸光度AT(試料溶液の吸光度)、吸光度AS(標準溶液の吸光度)、及び吸光度AB(ブランク溶液の吸光度)を測定した。
ブランク溶液から得られた吸光度ABから、各ヘパリン類似物質の濃度を有する標準溶液から得られた吸光度ASの値を引いた値(AB-AS)を用いて検量線(回帰直線)を作成した。試料溶液から得られた吸光度ATと検量線から検体中のヘパリン類似物質の配合量に対する割合(%)を算出した。
このとき、ブランク溶液から得られた吸光度ABは1.0以上を示し、検量線から得られた相関係数は-0.99以下を示し、吸光度測定において適切な条件であることを確認し、実験を行った。
なお、吸光度は島津製作所(株)製 分光光度計UV-2700を用いて測定した。
・検体中のヘパリン類似物質の残存率(%)の算出方法
ヘパリン類似物質の残存率(%)=保存後のヘパリン類似物質配合量に対する割合(%)/初期のヘパリン類似物質配合量に対する割合(%)×100
なお、初期のヘパリン類似物質配合量に対する割合とは、皮膚外用組成物を調製した直後に、または、調製後2カ月以内に室温以下で保管した試料を測定した成分含量である。
このような手順により、各種検体においてもヘパリン類似物質の残存率(%)の算出を行った。
【0073】
なお、ヘパリン類似物質の残存率について、下記判定基準を設け、判定基準に基づきB判定以上が良好であるとして、60℃(遮光条件下)1箇月保管後にB判定以上であったものを合格とした。
[判定基準]
A判定:95%以上
B判定:90%以上95%未満
C判定:80%以上90%未満
D判定:80%未満
【0074】
(3)試験結果
検体1~16の結果を表1~5に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表1の結果から、ヘパリン類似物質のみを配合した検体1は、苛酷条件にて経時的なヘパリン類似物質の含量低下が見られ、保存安定性に劣ることが明らかとなった。一方、ヘパリン類似物質と成分(A):トコフェロール酢酸エステルまたはチモールを配合した検体2、3では、ヘパリン類似物質の含量低下が抑制され、保存安定性に優れていることが明らかとなった。
表2の結果から、ヘパリン類似物質のみを配合した検体4は、苛酷条件にて経時的なヘパリン類似物質の含量低下が見られ、保存安定性に劣ることが明らかとなった。一方、ヘパリン類似物質とさらに成分(A):トラネキサム酸、カンゾウ乾燥エキス、グリチルリチン酸ジカリウムを配合した検体5、6、7では、へパリン類似物質の含量低下が抑制され、保存安定性に優れていることが明らかとなった。
表3の結果から、ヘパリン類似物質を配合した検体8は、苛酷条件にて経時的なヘパリン類似物質の含量低下が見られ、保存安定性に劣ることが明らかとなった。一方、ヘパリン類似物質とさらに成分(A):塩化ナトリウム、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩を配合した検体9、10、11では、ヘパリン類似物質の含量低下が抑制され、保存安定性に優れていることが明らかとなった。
表4の結果から、ヘパリン類似物質のみを配合した検体12は、苛酷条件にて経時的なヘパリン類似物質の含量低下が見られ、保存安定性に劣ることが明らかとなった。一方、ヘパリン類似物質とさらに成分(A):dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液を配合した検体13では、ヘパリン類似物質の含量低下が抑制され、保存安定性に優れていることが明らかとなった。
表5の結果から、ヘパリン類似物質とさらに成分(A):ジクロフェナクナトリウム、フェルビナクを配合した検体14、15では、ヘパリン類似物質の含量低下が抑制され、よりヘパリン類似物質の保存安定性を向上できることが判明した。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0082】
(製剤例)
以下の表6~表13に記載した成分を攪拌・混合して溶解後、各製剤例の皮膚外用剤を得ることができる。
製造方法としては、上記成分及び分量を取り、日本薬局方製剤総則「外用液剤」、「ゲル剤」、「パップ剤」、「テープ剤」の項に準じて製造することができる。
なお、例えば、液状又は半固形状の組成物を具体的な剤形として製剤化する場合においては、剤形に応じて適宜、液状又は半固形状の組成物を容器(例えば、ボトル状容器、チューブ状容器、シート状容器、スプレー剤用容器等)に収容する、液状又は半固形状の組成物を支持体に展延して成形する、噴射剤と混合したうえでエアゾール缶に収容する等、各剤形について公知の手段を適用すればよい。
また、パップとテープの製造を行う場合にも、液状又は半固形状の組成物を支持体に展延して成形する等、公知の手段を適用すればよい。
【0083】
【0084】
【0085】
なお、表6~表7に記載された※1~※8の注釈は以下に示す内容に対応する。
※1 ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※2 ロキソプロフェンナトリウム2g(無水物換算)に相当する
※3 ロキソプロフェンナトリウム0.5g(無水物換算)に相当する
※4 原生薬として0.2g相当
※5 原生薬として0.1g相当
※6 pH調整剤として任意で1種類以上選択し、適量添加する
※7 カンゾウエキスは、カンゾウ乾燥エキスである
※8 原生薬として2.5g相当
【0086】
【0087】
【0088】
なお、表8~表9に記載された※1~※8の注釈は以下に示す内容に対応する。
※1 ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※2 ロキソプロフェンナトリウム2g(無水物換算)に相当する
※3 ロキソプロフェンナトリウム0.5g(無水物換算)に相当する
※4 原生薬として0.2g相当
※5 原生薬として0.1g相当
※6 任意で1種類以上選択し、適量添加する
※7 カンゾウエキスは、カンゾウ乾燥エキスである
※8 原生薬として2.5g相当
【0089】
【0090】
【0091】
なお、表10~表11に記載された※1~※7の注釈は以下に示す内容に対応する。
※1 ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※2 ロキソプロフェンナトリウム2g(無水物換算)に相当する
※3 ロキソプロフェンナトリウム0.5g(無水物換算)に相当する
※4 原生薬として0.2g相当
※5 原生薬として0.1g相当
※6 カンゾウエキスは、カンゾウ乾燥エキスである
※7 原生薬として2.5g相当
【0092】
【0093】
【0094】
なお、表12~表13に記載された※1~※7の注釈は以下に示す内容に対応する。
※1 ロキソプロフェンナトリウム5g(無水物換算)に相当する
※2 ロキソプロフェンナトリウム6g(無水物換算)に相当する
※3 ロキソプロフェンナトリウム8g(無水物換算)に相当する
※4 原生薬として0.2g相当
※5 原生薬として0.1g相当
※6 カンゾウエキスは、カンゾウ乾燥エキスである
※7 原生薬として2.5g相当
【0095】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。