(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091596
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ミクロトームのためのコントローラ、ミクロトームシステムおよび対応する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/06 20060101AFI20240627BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N1/06 B
G02B21/34
G01N1/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216728
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】22216638
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501129941
【氏名又は名称】ライカ ミクロジュステーメ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヘヒト
(72)【発明者】
【氏名】パウル ヴアツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス カッツェングルーバー
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052BA16
2G052CA03
2G052CA08
2G052EC03
2G052EC05
2G052EC22
2G052EC23
2G052GA32
2G052HA11
2G052HC04
2G052HC06
2G052HC36
2G052HC42
2G052HC44
2G052JA06
2G052JA08
2H052AE08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミクロトームにおける試料ブロックのアライメントを改善する。
【解決手段】コントローラは、試料ブロックの仮想表現340が視覚化されるようにディスプレイ320を制御し、仮想表現における試料ブロックの前面を示す第1のユーザ入力データを受け取り、第1のユーザ入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面342を決定し、仮想表現340における試料ブロックの前面の縁部を示す第2のユーザ入力データを受け取り、第2のユーザ入力データに基づいて試料ブロックの前面の仮想縁部344を決定し、仮想表現において試料ブロックと交差する切断面を示す第3のユーザ入力データを受け取り、第3のユーザ入力データに基づいて、試料ブロックと交差する仮想切断面を決定し、仮想前面342、仮想縁部344および仮想切断面に基づいて、仮想切断面と仮想前面と仮想縁部との間の関係を定義するミクロトームのためのアライメントパラメータを決定する。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイフ(132)を用いて試料ブロック(140,240)からスライスを切断するように構成されたミクロトーム(130)のためのコントローラ(110)であって、前記コントローラ(110)は、
前記試料ブロックの仮想表現(340,440)が視覚化されるようにディスプレイ(120,320,420)を制御し、
前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックの前面(242)を示す第1のユーザー入力データ(704)を受け取り、
前記第1のユーザー入力データに基づいて、前記試料ブロックの仮想前面(342)を決定し、
前記試料ブロックの仮想表現(340)における前記試料ブロックの前面の縁部(244)を示す第2のユーザー入力データ(710)を受け取り、
前記第2のユーザー入力データに基づいて、前記試料ブロックの前面の仮想縁部(344)を決定し、
前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックと交差する切断面(250)を示す第3のユーザー入力データ(716)を受け取り、
前記第3のユーザー入力データに基づいて、前記試料ブロックと交差する仮想切断面(450)を決定し、
前記試料ブロックの仮想前面(342)、前記試料ブロックの前面の仮想縁部(344)および前記仮想切断面(450)に基づいて、前記仮想切断面と前記試料ブロックの仮想前面と前記試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義する前記ミクロトーム(130)のためのアライメントパラメータを決定する、
ように構成されているコントローラ(110)。
【請求項2】
前記コントローラ(110)は、さらに、
前記試料ブロックの現実の前面および前記試料ブロックの前面の現実の縁部に基づいて、前記ミクロトーム内で前記試料ブロックが前記ナイフに対してプリアライメントされた後に、前記アライメントパラメータに従って前記試料ブロック(140,240)が前記ナイフ(132)に対してアライメントされるように前記ミクロトーム(130)を制御すべく構成されているか、または
前記試料ブロックの現実の前面および前記試料ブロックの前面の現実の縁部に基づいて、前記ミクロトーム内で前記試料ブロックが前記ナイフに対してプリアライメントされた後に、前記アライメントパラメータに従って前記試料ブロックを前記ナイフに対してどのようにアライメントするかに関するユーザー命令を提供するように構成されている、
請求項1記載のコントローラ(110)。
【請求項3】
前記第1のユーザー入力データは、3つの異なるユーザー定義表面位置(342.1,342.2,342.3)に関するデータを含み、
前記3つの異なるユーザー定義表面位置のそれぞれは、前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックの前面(242)を示す、
請求項1または2記載のコントローラ(110)。
【請求項4】
前記第1のユーザー入力データに基づいて、前記試料ブロックの仮想前面(342)を決定することは、
前記3つの異なるユーザー定義表面位置(342.1,342.2,342.3)のそれぞれに対して、前記試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、前記試料ブロックの仮想表現における試料表面上の表面位置を決定することと、
前記試料表面上の表面位置に基づいて、前記試料ブロックの仮想前面(342)を決定することと、
を含む、
請求項3記載のコントローラ(110)。
【請求項5】
前記3つの異なるユーザー定義表面位置(342.1,342.2,342.3)のそれぞれに対して、前記試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、前記試料ブロックの仮想表現における試料表面上の表面位置を決定することは、
前記試料ブロックの仮想表現において、予め定められた閾値を上回る強度値を有しかつユーザー定義位置に基づく予め定められた方向に沿った第1の位置である閾値位置を決定することと、
前記閾値位置を前記試料表面上の表面位置として使用することと、
を含む、
請求項4記載のコントローラ(110)。
【請求項6】
前記第2のユーザー入力データは、前記試料ブロックの仮想前面(342)の平面である前面平面における2つの異なるユーザー定義縁部位置(344.1,344.2)に関するデータを含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載のコントローラ(110)。
【請求項7】
前記第3のユーザー入力データは、前記切断面(250)と前記試料ブロックの仮想表現(340)との間の関係を定義する少なくとも1つの切断パラメータのユーザー定義値に関するデータを含み、
好ましくは、前記少なくとも1つの切断パラメータは、ピッチ角、ヨー角、回転角および横方向位置のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から6までのいずれか1項記載のコントローラ(110)。
【請求項8】
前記コントローラ(110)は、
前記少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値を受け取り、
前記少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値に基づいて、前記試料ブロックの仮想表現におけるその時点の仮想切断面が視覚化されるようにディスプレイを制御する、
ようにさらに構成されている、
請求項7記載のコントローラ(110)。
【請求項9】
前記試料ブロック(140,240)は、試料(246)および残りの材料(248)を含み、
前記コントローラは、前記試料ブロックの仮想表現(340,440)がそれぞれ異なるビューにおいて視覚化されるように前記ディスプレイ(120,320,420)を制御するようにさらに構成され、前記試料(446)および前記残りの材料(348)のうちの少なくとも一方は、前記それぞれ異なるビュー(340,440)においてそれぞれ異なる透明度を有し、
前記コントローラは、前記それぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるよう、前記ディスプレイ(120,320,420)を制御するようにさらに構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のコントローラ(110)。
【請求項10】
前記それぞれ異なるビューは、第1のビュー(340)および第2のビュー(440)を含み、
前記第1のビュー(340)では、前記試料ブロックの仮想表現における残りの材料(348)は、前記第2のビューにおけるよりも低い透明度を有し、
前記第2のビュー(440)では、前記試料ブロックの仮想表現における前記試料(446)は、前記残りの材料よりも低い透明度を有し、
好ましくは、前記第1のビューでは、前記試料ブロックの仮想表現は、前記第2のビューにおけるよりも大きい前記残りの材料の部分と前記第2のビューにおけるよりも小さい前記試料の部分とを含む、
請求項9記載のコントローラ(110)。
【請求項11】
前記コントローラ(110)は、
前記第1のユーザー入力データおよび前記第2のユーザー入力データのうちの少なくとも一方を生成できるようにするために、前記第1のビュー(340)において前記試料ブロックの仮想表現が視覚化されるように前記ディスプレイ(120,320,420)を制御することと、
前記第3のユーザー入力データを生成できるようにするために、前記第2のビュー(440)において前記試料ブロックの仮想表現が視覚化されるように前記ディスプレイを制御することと、
のうちの少なくとも1つを行うようにさらに構成されている、
請求項10記載のコントローラ(110)。
【請求項12】
前記試料ブロックの仮想表現は、複数の画像に基づいており、
前記コントローラは、前記複数の画像の強度に基づいて、前記試料ブロックの仮想表現が視覚化されるように前記ディスプレイを制御すべく構成されており、それぞれ異なるビューにおいては、前記試料ブロックの仮想表現は、前記複数の画像のそれぞれ異なる強度値範囲(550a,550b)に基づいている、
請求項9から11までのいずれか1項記載のコントローラ。
【請求項13】
前記それぞれ異なる強度範囲は、第1の強度範囲(550a)および第2の強度範囲(550b)を含み、
前記第1の強度範囲(550a)は、前記第2の強度範囲(550b)に比べて、前記残りの材料に対応する強度値をより多く、かつ前記試料に対応する強度値をより少なく含む、
請求項12記載のコントローラ。
【請求項14】
前記コントローラは、前記試料ブロックの仮想表現に対して実行されるその時点のタスクに基づいて、前記それぞれ異なるビュー間の自動的な切り替えが行われるように前記ディスプレイを制御すべくさらに構成されている、
請求項9から13までのいずれか1項記載のコントローラ。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記試料ブロックの仮想表現(640a,640b)が視覚化されるように前記ディスプレイ(620)を制御し、
前記試料ブロックの仮想表現(640a)におけるユーザー定義位置を示す第1のユーザー入力位置データを受け取り、
前記試料ブロックの仮想表現の、前記ユーザー定義位置を含む拡大ビュー(640b)が視覚化されるように前記ディスプレイを制御し、
前記拡大ビューにおいて第1の位置において第1のシンボル(660)が視覚化されるように前記ディスプレイを制御し、
第2の位置の移動を示す第2のユーザー入力位置データを受け取り、ここで、前記第2の位置は、前記第1の位置とは異なり、前記第1の位置と前記第2の位置との間の相対位置を定義しており、
前記第2のユーザー入力位置データに基づいて、前記第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御し、ここで、前記第1の位置と前記第2の位置との間の相対位置が変化しない、
ようにさらに構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載のコントローラ。
【請求項16】
前記ディスプレイは、タッチディスプレイであるかまたはタッチディスプレイを含み、
前記第2のユーザー入力位置データは、前記タッチディスプレイから受け取られ、
前記第2のユーザー入力位置データは、前記タッチディスプレイにタッチしているタッチ物体を移動させることによって生成されている、
請求項15記載のコントローラ。
【請求項17】
前記第2のユーザー入力位置データは、前記第1の位置の外側の予め定められた領域において前記タッチディスプレイにタッチしているタッチ物体を移動させることによって生成されている、
請求項16記載のコントローラ。
【請求項18】
ミクロトームとディスプレイと請求項1から17までのいずれか1項記載のコントローラとを含むミクロトームシステム(100)であって、前記ミクロトームは、前記ナイフを用いて前記試料ブロックからスライスを切断するように構成されている、
ミクロトームシステム(100)。
【請求項19】
ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトーム(130)のためのアライメントパラメータを取得する方法であって、前記方法は、
前記試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御するステップ(700)と、
前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックの前面を示す第1のユーザー入力データ(704)を受け取るステップ(702)と、
前記第1のユーザー入力データ(704)に基づいて、前記試料ブロックの仮想前面を決定するステップ(706)と、
前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックの前面の縁部を示す第2のユーザー入力データ(710)を受け取るステップ(708)と、
前記第2のユーザー入力データ(710)に基づいて、前記試料ブロックの前面の仮想縁部を決定するステップ(712)と、
前記試料ブロックの仮想表現における前記試料ブロックと交差する切断面を示す第3のユーザー入力データ(716)を受け取るステップ(714)と、
前記第3のユーザー入力データに基づいて、前記試料ブロックと交差する仮想切断面を決定するステップ(718)と、
前記試料ブロックの仮想前面、前記試料ブロックの前面の仮想縁部および前記仮想切断面に基づいて、前記仮想切断面と前記試料ブロックの仮想前面と前記試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義する前記ミクロトームのためのアライメントパラメータを決定するステップ(720)と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本的に、ミクロトームのためのコントローラ、ミクロトームおよび当該コントローラを含むミクロトームシステムならびに対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経科学の分野だけでなく、他の分野、例えば生物学および医学の分野においても、例えば電子顕微鏡を用いて組織もしくは他の試料もしくは顕微鏡検査用試料の薄切片を検査することができる。このような切片は、ミクロトームによって試料ブロックから切断され、次いで試料担体上に配置可能である。試料ブロックは、ミクロトームの試料ホルダ内に位置決めされるかまたは配置される。所望の通りに試料ブロックから試料(またはスライス)を切断するために、試料ブロックをミクロトームのナイフに対して正確にアライメントする必要がある。このことは困難でありうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上述した状況の観点から、ミクロトームにおける試料ブロックのアライメントを改善することが求められている。本発明の実施形態により、各独立請求項の特徴を有する、ミクロトームのためのコントローラ、ミクロトームシステムおよび対応する方法が提案される。有利なさらなる発展形態は、各従属請求項および後続の説明の主題をなす。
【0004】
本発明の一実施形態は、ナイフを用いて試料ブロック(または標本ブロック)からスライスを切断するように構成されたミクロトームのためのコントローラに関する。典型的なミクロトームでは、ナイフはミクロトームのナイフホルダ内に配置可能であり、試料ブロックはミクロトームの試料ホルダ内に配置可能である。一実施形態では、ミクロトームは、試料ブロックとナイフとの間の所望のアライメントを達成するために、ナイフに対して相対的な試料ブロックの配向および/または位置を変更するように構成されている。一実施形態では、ミクロトームは、ナイフを試料ブロックに対してアライメントするための1つもしくは複数のアクタを含むことができ、当該アクタはコントローラによってまたはコントローラを介して制御可能である。別の実施形態では、ミクロトームは、例えばユーザーへと提示される指示に基づいて手動でのアライメントを可能とするように構成されていてもよい。
【0005】
前記コントローラは、試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御し、さらに第1のユーザー入力データを受け取るように構成されている。試料ブロックの仮想表現は、例えば、試料ブロックの3D表現である。第1のユーザー入力データは、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面を示す。さらに、コントローラは、第1のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面を決定するように構成されているが、ここで、仮想前面は、当該仮想前面の位置および/または配向が特に試料ブロックの仮想表現の座標系に関して決定されるように決定可能であることに留意されたい。
【0006】
さらに、コントローラは、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面の縁部を示す第2のユーザー入力データを受け取るように構成されている。さらに、コントローラは、第2のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの前面の仮想縁部を決定するように構成されているが、ここで、前面の仮想縁部は、特に試料ブロックの仮想表現の座標系に関して前面の仮想縁部の位置および/または配向が決定されるように決定可能であることに留意されたい。
【0007】
さらに、コントローラは、試料ブロックの仮想表現において試料ブロックと交差する切断面(例えば、ナイフに沿って試料ブロックを切断する平面)を示す第3のユーザー入力データを受け取るように構成されている。さらに、コントローラは、第3のユーザー入力データに基づいて試料ブロックと交差する仮想切断面を決定するように構成されているが、ここで、仮想切断面は、当該仮想切断面の位置および/または配向が特に試料ブロックの仮想表現の座標系に関して決定されるように決定可能であることに留意されたい。
【0008】
さらに、コントローラは、試料ブロックの仮想前面、試料ブロックの前面の仮想縁部および仮想切断面に基づいて、ミクロトームのためのアライメントパラメータを決定するように構成されている。アライメントパラメータは、仮想切断面と試料ブロックの仮想前面と試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義するものである。
【0009】
このようにして試料ブロックの仮想表現をユーザーに提供(または表示)することができ、ユーザーは、所望の正確なアライメントを達成するために、(ディスプレイがタッチディスプレイである場合)タッチディスプレイにタッチするというような簡単なユーザー入力によって、アライメントパラメータの決定に必要な種々の特徴を試料ブロックの仮想表現において容易に定義することができる。
【0010】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、試料ブロックのボリュームイメージングによって取得される複数の画像を含む画像データセットを受け取り、当該複数の画像に基づいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。換言すれば、試料ブロックの仮想表現はボリュームイメージングまたは画像取得によって取得することができ、複数の画像が取得される。
【0011】
ただし、こうした手法または別の手法で取得された試料ブロックの仮想表現においては、典型的には、試料ブロックの現実の前面が、取得された画像の画像平面に対してアライメントされておらず、または当該画像平面に含まれていない。しかも、現実の試料ブロックに対してナイフをアライメントするためには、試料ブロックの仮想表現におけるこのような現実の平面の実際の位置および/または配向、さらには前面の縁部の位置および/または配向も既知である必要がある。典型的なアライメントプロセスには、試料ブロックの前面に対して平行にナイフの縁部をアライメントすること、特に試料ブロックの前面の縁部をアライメントすることが含まれる。さらに、試料ブロックの前面は、典型的には、ミクロトームの切断方向に対して平行にアライメントされている。このようなアライメントが実行された場合にのみ、所望の切断面に沿った切断を行うためのさらなるアライメントを適正に行うことができる。上述した仮想前面、縁部および切断面を決定する手法は、所望の切断面に沿って切断を行うために、現実の試料ブロックの正確なアライメントを可能にする。
【0012】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、例えば上述したように、試料ブロックの現実の前面および試料ブロックの前面の現実の縁部に基づいて、ミクロトーム内で試料ブロックがナイフに対してプリアライメントされた後に、アライメントパラメータに従って試料ブロックがナイフに対してアライメントされるようにミクロトームを制御すべく構成されている。付加的なもしくは代替的な一実施形態では、コントローラは、試料ブロックの現実の前面および試料ブロックの前面の現実の縁部に基づいて、ミクロトーム内で試料ブロックがナイフに対してプリアライメントされた後に、アライメントパラメータに従って試料ブロックをナイフに対してどのようにアライメントするかに関するユーザー命令を提供するように構成されている。ここでのユーザー命令は、所望のアライメントを達成するためにどれだけの数の異なる手動アクタを作動させるべきかの値を含むことができる。どちらの方式も、容易であって同時に正確なアライメントを可能にする。
【0013】
本発明の一実施形態では、第1のユーザー入力データは、3つの異なるユーザー定義表面位置に関するデータを含み、3つの異なるユーザー定義表面位置のそれぞれは、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面を示す。ここでのユーザー定義表面位置は、例えば、試料ブロックの仮想表現における、(タッチディスプレイが使用される場合の)ユーザーがディスプレイにタッチした位置またはユーザーがコンピュータマウスをクリックしたときまたはキーボード上のキーを押したとき等にコンピュータマウスポインタが存在する位置でありうるかまたはこれらの位置を含みうる。これにより、試料ブロックのその時点の表現に基づいて、仮想前面を容易に定義することができる。
【0014】
本発明の一実施形態では、第1のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面を決定することは、3つの異なるユーザー定義表面位置のそれぞれに対して、試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、試料ブロックの仮想表現における試料表面上の表面位置を決定することと、試料表面上の表面位置に基づいて試料ブロックの仮想前面を決定することとを含む。試料ブロックの仮想表現が強度情報に基づいているかまたはこれを含んでいる場合、強度は試料ブロックの外側と内側との間で、すなわち前面において著しく変化するので、試料ブロックの現実の表面上の位置に対応する位置を(特に自動的に)決定することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、3つの異なるユーザー定義表面位置のそれぞれに対して、試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、試料ブロックの仮想表現における試料表面上の表面位置を決定することは、予め定められた方向に沿った第1の位置である閾値位置を決定することであって、ここで、当該閾値位置は、試料ブロックの仮想表現における予め定められた閾値よりも大きい透明度値を有し、当該予め定められた方向は、ユーザー定義位置に基づいている、ことと、当該閾値位置を試料表面上の表面位置として使用することとを含む。これにより、強度情報に基づいて、実際の前面を容易に自動的に決定することができる。予め定められた方向は、例えば、ユーザー定義位置を含みかつ試料ブロックの外側から前面へ向かって配向された直線に沿うものでありうる。
【0016】
本発明の一実施形態では、第2のユーザー入力データは、試料ブロックの仮想前面の平面である前面平面における2つの異なるユーザー定義縁部位置に関するデータを含む。これは、試料ブロックの仮想前面が決定された後、試料ブロックの仮想表現における前面の縁部を正確に定義するための簡単な手法である。この場合にも、ユーザーは、例えば(タッチディスプレイが使用される場合)ディスプレイへのタッチを行うことができ、またはコンピュータマウスポインタが所望の位置に存在するときにクリックを行うことができる。これにより、試料ブロックのその時点での表現に基づいて、前面の仮想縁部を容易に定義することができる。
【0017】
本発明の一実施形態では、第3のユーザー入力データは、切断面と試料ブロックの仮想表現との間の関係を定義する少なくとも1つの切断パラメータのユーザー定義値に関するデータを含む。ユーザーは、例えば、ディスプレイ上にレンダリングされるユーザーインタフェースにおいて、少なくとも1つのパラメータの特定の値を入力することができる。また、ユーザーは、例えばディスプレイ上にレンダリングされるユーザーインタフェースに示されるスケールまたはボタンまたはスライダによって特定の値を選択することもできる。これにより、切断面を容易に定義することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、コントローラはさらに、少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値を受け取り、当該少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値に基づいて、試料ブロックの3D表現におけるその時点の仮想切断面が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。このようにして、ユーザーは、ディスプレイ上で、定義された切断面を観察することができる。
【0019】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの切断パラメータは、ピッチ角、ヨー角、回転角および並進位置のうちの少なくとも1つを含む。これらの角度のそれぞれは、典型的なミクロトームにおいて設定または変更することのできる回転角を定義するものである。加えて、典型的には、切断面の並進位置も可能である。これらのパラメータを使用することにより、容易かつ正確なアライメントが可能となる。
【0020】
本発明の一実施形態では、試料ブロックは試料および残りの材料を含んでおり、残りの材料は特に、試料を埋め込むために使用される材料、例えば樹脂等を含みうる。コントローラはさらに、第1のビューおよび第2のビューにおいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。第1のビューでは、試料ブロックの仮想表現における残りの材料が第2のビューにおけるよりも低い透明度を有する。第2のビューでは、試料ブロックの仮想表現における試料が残りの材料よりも低い透明度を有する。これにより、ユーザーは、例えばどのような入力を行うかに応じて、試料または残りの材料のいずれかをより良く観察するために、異なるビュー間での選択を行うことができる。極端なケースでは、例えば第1のビューでは残りの材料のみが可視であって試料は可視でなく、第2のビューでは試料のみが可視であって残りの材料は可視でない。
【0021】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、第1のユーザー入力データおよび第2のユーザー入力データのうちの少なくとも1つを生成できるようにするために、第1のビューにおいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。これにより、試料ブロックの特徴の定義に関する第1のユーザー入力および/または第2のユーザー入力、すなわち、残りの材料を観察することが試料を観察することよりも重要であるという第1のユーザー入力および/または第2のユーザー入力を容易に生成することができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、第3のユーザー入力データを生成できるようにするために、第2のビューにおいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。これにより、試料の特徴の定義(切断面が試料に交差すること)に関する第3のユーザー入力、すなわち、残りの材料を観察することが試料を観察することよりも重要でないという第3のユーザー入力を容易に生成することができる。
【0023】
さらなる態様もしくは別個の態様としての本発明の別の実施形態は、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームのためのコントローラに関する。なお、ミクロトームは上述したミクロトームであってよい。試料ブロックは、試料および残りの材料を含む。前記コントローラは、試料ブロックの仮想表現がそれぞれ異なるビューにおいて視覚化されるようにディスプレイを制御し、ここで、試料および残りの材料のうちの少なくとも一方がそれぞれ異なるビューにおいてそれぞれ異なる透明度を有するように構成されている。さらに、コントローラは、例えばユーザー入力データの受け取りに基づいてそれぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されている。これにより、例えばどのような入力が行われるかに応じて、試料または残りの材料のいずれかをより良く観察するために、異なるビューにおいて試料ブロックの仮想表現をユーザーに提示または表示することが可能となる。
【0024】
本発明の一実施形態では、第1のビューでは、試料ブロックの仮想表現が、第2のビューにおけるよりも大きい残りの材料の部分と、第2のビューにおけるよりも小さい試料の部分と、を含む。極端なケースとして、例えば、第1のビューでは残りの材料のみが可視であって試料は可視でなく、第2のビューでは試料のみが可視であって残りの材料は可視でない。これにより、ユーザーは、例えば、試料ブロックに関して良好な決定を下すために、双方の部分(試料および残りの材料)を良好に区別することができる。
【0025】
本発明の一実施形態では、試料ブロックの仮想表現が複数の画像に基づいており、コントローラは、複数の画像の強度に基づいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。それぞれ異なるビューにおいては、試料ブロックの仮想表現が複数の画像のそれぞれ異なる強度値範囲に基づく。このようにして2つの異なるビューを容易に区別することができ、また、2つの異なるビューを容易に生成することができる。範囲は、例えば特定の必要性に基づいて選択可能である。
【0026】
本発明の一実施形態では、それぞれ異なる強度範囲が第1の強度範囲および第2の強度範囲を含み、第1の強度範囲は、第2の強度範囲に比べて、残りの材料に対応する強度値をより多く、かつ試料に対応する強度値をより少なく含む。これにより、それぞれ異なるビューにおける2つの部分の良好な区別、すなわち試料と残りの材料との良好な区別がもたらされる。
【0027】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、試料ブロックの仮想表現に対して実行されるその時点のタスクに基づいて、異なるビュー間の自動的な切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されている。例えばユーザーが試料の特徴を観察しようとしている場合または試料に関する入力を行おうとしている場合には、主に試料を示すビューが他のビューよりも有用であり、例えば入力が迅速化される。同様に、ユーザーが残りの材料の特徴を観察しようとしている場合または残りの材料に関する入力を行おうとしている場合には、主に残りの材料を示すビューが他のビューよりも有用である。
【0028】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、試料および残りの材料のうちの少なくとも一方の透明度が連続的にまたは準連続的に変化するよう、連続モードまたは準連続モードにおいてそれぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されている。このようにして、ユーザーは、例えば、特定のユーザーに最良に適したビューを選択することができる。
【0029】
付加的な態様もしくは別個の態様としての本発明の別の実施形態は、例えばミクロトームのためのコントローラに関する。コントローラは、対象物、例えば試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御し、さらに第1のユーザー入力位置データを受け取るように構成されている。第1の入力位置データは、対象物の仮想表現におけるユーザー定義位置を示す。コントローラはさらに、対象物の仮想表現の、ユーザー定義位置を含む拡大ビューが視覚化されるようにディスプレイを制御し、さらに拡大ビューにおいて第1の位置において第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。第2の位置は、第1の位置とは異なり、第1のシンボルと第2のシンボルとの間の相対位置を定義する。第1の位置は、ユーザー定義位置または別の位置、例えば近傍の位置とすることができる。第1のシンボルは、例えばドットまたはクロスであってよい。第2のシンボルは、例えば4つの方向を示す方向のクロスであってよい。
【0030】
さらに、コントローラは、第2の位置の移動を示す第2のユーザー入力位置データを受け取るように構成されている。第2の位置は、第1の位置とは異なり、第1の位置と第2の位置との間の相対位置を定義するものである。第1の位置は、ユーザー定義位置または他の位置、例えば近傍の位置とすることができる。第1のシンボルは、例えばドットまたはクロスであってよい。一実施形態では、第2のシンボルは、ユーザーを支援するために第2の位置で拡大ビューにおいて視覚化可能である。第2のシンボルは、例えば4つの方向を示す方向のクロスであってよい。さらに、コントローラは、第2のユーザー入力位置データに基づいて第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されており、ここで、第1の位置と第2の位置との間の相対位置は変化しない。
【0031】
このように、ユーザーは、第1のユーザー位置入力によって特定の位置を大まかに定義し、次いで、最初に定義された位置またはその近傍の第1のシンボルを持続的に見ながら、拡大ビューにおいて移動動作を実行することができる。よって、ユーザーは、最初大まかにのみ定義された位置から出発して、所望の位置を正確に定義することができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、コントローラはさらに、移動動作の完了後の第1の位置に対応する、対象物の仮想表現における最終的なユーザー定義位置を示す第3のユーザー入力位置データを受け取るように構成されている。例えば、ユーザーは、第3のユーザー入力位置データを、例えば(タッチディスプレイが使用される場合)ディスプレイにタッチすることによって、または移動の完了後に第1のシンボルがユーザーの所望位置に来るようにする別の手法で、提供することができる。これにより、拡大されていないビューにおいて最初に正確な位置を選択することができなくても、簡単かつ迅速に位置を定義することができる。
【0033】
本発明の一実施形態では、ディスプレイは、タッチディスプレイであるかまたはタッチディスプレイを含む。第2のユーザー入力位置データは、タッチディスプレイから受け取られ、またタッチディスプレイにタッチしているタッチ物体を移動させることによって生成される。これにより、ユーザーがタッチしているディスプレイ部分(例えばタッチ物体としての指またはスタイラスでタッチされている部分)がユーザーに見えなくても、簡単かつ迅速に位置を定義することができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、第2のユーザー入力位置データは、第1の位置の外側の予め定められた領域においてタッチディスプレイにタッチしているタッチ物体を移動させることによって生成される。好ましくは、第2のユーザー入力位置データは、予め定められた領域の外側でタッチディスプレイへのタッチが行われた場合には生成されない。このようにすれば、ユーザーが第1のシンボルを移動させる際に常に当該第1のシンボルを観察することができる。
【0035】
本発明の一実施形態では、コントローラは、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームのためのコントローラであり、ここで、対象物は、例えば上述したように、試料ブロックであるかまたは試料ブロックを含む。
【0036】
本発明の別の実施形態は、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームのためのアライメントパラメータを取得する方法に関する。方法は、次の各ステップ、すなわち、試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御するステップと、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面を示す第1のユーザー入力データを受け取るステップと、第1のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面を決定するステップと、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面の縁部を示す第2のユーザー入力データを受け取るステップと、第2のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの前面の仮想縁部を決定するステップと、試料ブロックの仮想表現において試料ブロックと交差する切断面を示す第3のユーザー入力データを受け取るステップと、第3のユーザー入力データに基づいて試料ブロックと交差する仮想切断面を決定するステップと、試料ブロックの仮想前面、試料ブロックの前面の仮想縁部および仮想切断面に基づいて、仮想切断面と試料ブロックの仮想前面と試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義するミクロトームのためのアライメントパラメータを決定するステップと、を含む。
【0037】
本発明の別の実施形態は、試料および残りの材料を含む試料ブロックを視覚化する方法に関する。方法は、次の各ステップ、すなわち、それぞれ異なるビューにおいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御するステップであって、ここで、試料および残りの材料のうちの少なくとも一方はそれぞれ異なるビューにおいてそれぞれ異なる透明度を有するステップと、それぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるようにディスプレイを制御するステップと、を含む。
【0038】
本発明の別の実施形態は、対象物における位置を定義するための方法に関する。対象物は、例えば試料ブロックであってよい。方法は、次の各ステップ、すなわち、対象物の仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御するステップと、対象物の仮想表現におけるユーザー定義位置を示す第1のユーザー入力位置データを受け取るステップと、対象物の仮想表現の、ユーザー定義位置を含む拡大ビューが視覚化されるようにディスプレイを制御するステップと、拡大ビューにおいて第1の位置における第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御するステップと、第2の位置の移動を示す第2のユーザー入力位置データを受け取るステップであって、ここで、第2の位置は、第1の位置とは異なり、第1の位置と第2の位置との間の相対位置を定義しているステップと、第2のユーザー入力位置データに基づいて第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御するステップであって、ここで、第1の位置と第2の位置との間の相対位置は変化しないステップと、を含む。
【0039】
方法の別の実施形態および利点に関しては、本明細書において相応に適用されているコントローラについての上述の言及が参照される。
【0040】
本発明の種々の態様、すなわち、(i)前面、前面の縁部および切断面を定義すること、(ii)透明度に基づいてそれぞれ異なるビューを生成すること、および(iii)位置を定義するために拡大ビューを使用することは、独立にまたはその各実施形態において使用可能であるが、これらの態様およびこれらの種々の実施形態を組み合わせることもできる。例えば、それぞれ異なるビューを使用して、それぞれ異なる特徴(一方では前面および縁部、他方では切断面)を定義することができる。例えば、拡大ビューは、前面の縁部を定義するために使用することができる。これは、正確に位置を定義する必要があるからであり、またこれ以外の場合、すなわち拡大ビューおよびシフトされるシンボルが存在しない場合にタッチディスプレイによっては困難となりうるからである。
【0041】
本発明の別の実施形態は、ミクロトームのためのコントローラが使用される場合の、ミクロトーム、ディスプレイおよび上述した種々の態様および実施形態のいずれか1つもしくは複数の組み合わせのコントローラを含む、ミクロトームシステムに関する。ミクロトームは、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されている。
【0042】
本発明のさらなる実施形態は、プロセッサ上で実行される際に上記の方法のうちの1つもしくは複数を実行するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラムに関する。
【0043】
本発明のさらなる利点および実施形態は、説明および添付の図から明らかとなる。
【0044】
前述した特徴および以下でさらに説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ示されている組み合わせにおいてだけでなく別の組み合わせにおいてもまたは単独でも使用可能であることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態によるミクロトームシステムを概略的に示す図である。
【
図2a】本発明の一実施形態を例示するための試料ブロックを概略的に示す図である。
【
図2b】本発明の一実施形態によるミクロトームシステムの一部を概略的に示す図である。
【
図3a】本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイを概略的に示す図である。
【
図3b】本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイを概略的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイを概略的に示す図である。
【
図5a】本発明の一実施形態を例示するためのグラフを概略的に示す図である。
【
図5b】本発明の一実施形態を例示するためのグラフを概略的に示す図である。
【
図6a】本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイを概略的に示す図である。
【
図6b】本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイを概略的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1には、本発明の一実施形態によるミクロトームシステム100が概略的に示されている。ミクロトームシステム100は、ミクロトーム130、ミクロトームのためのコントローラ110およびディスプレイ120を含む。コントローラ110は、本発明の一実施形態によるコントローラであってよい。一実施形態では、ディスプレイ120は、タッチディスプレイであるかまたはタッチディスプレイを含む。例えば、ディスプレイ120は、タブレットのようなハンドヘルドデバイスの一部であってよい。
【0047】
一実施形態では、コントローラ110とディスプレイ120とを相互に組み合わせることも、または相互に一体化することもできる。例えば、コントローラ110をディスプレイ120に組み込むことができる。一実施形態では、コントローラ110とミクロトーム130とを相互に組み合わせることも、または相互に一体化することもできる。例えば、コントローラ110をミクロトーム130に組み込むことができる。一実施形態では、コントローラ110、ディスプレイ120およびミクロトーム130を相互に組み合わせることも、または相互に一体化することもできる。
【0048】
ミクロトーム130は、例えば、内部にナイフ132を配置することのできるナイフホルダ134を備えている。ナイフ132もミクロトームの一部であってよい。さらに、ミクロトーム130は、例えば、内部に試料ブロック140を配置することのできる試料ホルダもしくは標本ホルダ136を備えている。ミクロトームは、切断方向Rに沿って試料ブロック140とナイフ132とを相互に相対的に移動させることにより、ナイフ132を用いて試料ブロック140からスライスを切断するように構成されている。さらに、ミクロトーム130は、例えば接眼レンズ131を含む。
【0049】
一実施形態では、ミクロトーム130は2つのアクタ138.1および138.2を含み、これらのアクタ138.1および138.2を用いて、試料ブロック140とナイフ132とを相互にアライメントすることができる。なお、これらのアクタは例示的に示しているのみであり、ここでのアライメントがどのように行われうるかについてのさらなる説明は後述することに留意されたい。また、例えば、3つのアクタを用いることも可能である。一実施形態では、ミクロトーム130は、試料ブロック140からスライスを切断するための切断プロセスの実行に使用可能な、例えばハンドホイールを含む駆動機構138.3を含む。
【0050】
図2aには試料ブロック240が概略的に示されており、
図2bには試料ブロック240が配置されたミクロトーム230が示されている。ミクロトーム230は、
図1のミクロトーム130に対応するものであってよい。
図1とは異なり、試料ブロック240が配置された試料ホルダ236とナイフエッジ233を備えたナイフ232が配置されたナイフホルダ234とを含むミクロトームの一部のみが示されている。
【0051】
試料ブロック240は、試料246と残りの材料248とを含む。残りの材料248は、樹脂または試料246を埋め込むための他材料でありうる。このような試料ブロックの典型的な形状は、
図2に示されているような角錐台状である。ただし、他の形状を使用することもできる。
【0052】
さらに、試料ブロック240は、前面242を有する。前面242は、試料ブロック240をミクロトーム内またはその試料ホルダ内に配置するときにミクロトームのナイフへ向かって配向されるべき試料ブロックの面である。さらに、前面242は典型的には4つの縁部を有しており、これらの縁部のうちの1つが244にて示されている。試料ブロック240がミクロトームに配置されると、当該試料ブロック240は、その縁部のうちの1つが上側に位置するように、すなわち、当該縁部が(最初に)ナイフエッジに対してアライメントされるように配置される。次いで縁部244が上側に来るが、他のいずれかの縁部が上側に配置されてもよい。
【0053】
さらに、切断面250が
図2aに示されており、当該切断面250は、試料ブロック240と交差し、例えばこれによりさらに試料246とも交差する。当該切断面250は、試料ブロック240の部分そのものではなく、ミクロトームによって試料ブロックからスライスが切断される際の平面、または当該スライスに沿った平面を示すものである。このため、ミクロトーム内でナイフが切断面250に沿ってまたは切断面250において切断を行うようにナイフと試料ブロック240とをアライメントさせることが要求される。
【0054】
ミクロトーム内に試料ブロック240が配置されたとき、現実には切断面は存在していないので、ナイフを切断面250に対してアライメントすることは直接には不可能である。その代わりに、前面242と縁部244とをナイフ232またはそのエッジ233に対してアライメントすることができる(アライメントすることになる)。ナイフエッジが縁部244に対して平行となるように、またミクロトームの切断方向が前面242に対して平行となるようにアライメントが行われなければならない。こうした初期アライメントまたはプリアライメントは、ユーザーが前面242、縁部244およびナイフを例えば接眼レンズを介してまたはカメラを使用して確認できたとき、つまりここでのプリアライメントを実行できたときに、手動で行うことができる。
【0055】
図2bには、このようなアライメントがどのように行われうるかについての可能な手法が示されている。ミクロトーム230の直交座標系の3つの軸x,y,zが例として示されている。試料ホルダ236(ひいては試料ブロック240)は、y軸を中心として(傾角またはピッチ角θ
tでの試料傾斜で)、またx軸を中心として(回転角またはロール角θ
rでの試料回転で)、回転可能である。ナイフホルダ234(ひいてはナイフ232)は、z軸を中心として(ヨー角θ
kでのナイフ傾斜で)回転可能である。これらの角度のそれぞれは、例えば電動でかつ/または手動で調整することができる。なお、回転手段が別の形式で実現されていてもよく、例えば、ピッチ角を調節するためにナイフホルダ234がy軸を中心として回転可能であってもよいことに留意されたい。
【0056】
切断方向Rは、ナイフおよび試料ブロックが相互に相対的に移動する方向として定義することができる。例えば、切断方向はz軸に沿ったものでありうる。
【0057】
その後、ナイフエッジが切断面250に対して平行となるように、かつ切断方向が切断面に対して平行となるように、ナイフと試料ブロック240とをアライメントしなければならない。以下では、上述したアライメントを達成するために、初期アライメントまたはプリアライメントから出発して、試料ブロック240とナイフとを手動でまたは自動でアライメントできるようにするためのアライメントパラメータをどのように取得するかについて説明する。
【0058】
一実施形態では、コントローラ110(
図1を参照)は、試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイ120を制御し、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面242を示す第1のユーザー入力データを受け取り、当該第1のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面を決定し、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面の縁部244を示す第2のユーザー入力データを受け取り、当該第2のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの前面の仮想縁部を決定し、試料ブロックの仮想表現において試料ブロックと交差する切断面250を示す第3のユーザー入力データを受け取り、当該第3のユーザー入力データに基づいて試料ブロックと交差する仮想切断面を決定し、試料ブロックの仮想前面、試料ブロックの前面の仮想縁部および仮想切断面に基づいて、仮想切断面と試料ブロックの仮想前面と試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義するミクロトーム130のためのアライメントパラメータを決定する、ように構成されている。
【0059】
コントローラ110が実行するように構成されているこれらのステップおよびその種々の実施形態につき、以下で詳細に説明する。
【0060】
図3aには、本発明の実施形態を説明するためのディスプレイ320が概略的に示されている。ディスプレイ320は、
図1のディスプレイ120に対応するものでありうるが、より詳細に示されている。一実施形態では、ディスプレイ320はタッチディスプレイである。ユーザーインタフェース322は、例えば、ディスプレイ320を制御するコントローラにより、ディスプレイ320上にレンダリング可能である。
【0061】
ディスプレイ320上には、試料ブロック240の仮想表現340が示されている。例として、仮想表現340が第1のビューにおいて3D(3次元)で示されている。
図3aに示されている実施形態では、第1のビューにおいて、試料ブロックの仮想表現340における残りの材料348が可視である。加えて、例として、ボタン(例えばソフトボタン)324.1,324.2,324.3,324.4,324.5,324.6等の種々の入力手段が示されており、これらは、ディスプレイおよびコントローラとユーザーとの対話を可能にするユーザーインタフェース322の一部であってよい。
【0062】
第1のワークフローステップにおいて、例えば、試料ブロックの仮想前面342および仮想縁部344を決定することができる。第1のワークフローステップは、例えばボタン324.1にタッチすることによって開始することができる。当該ワークフローステップの開始には、第1のビューに仮想表現340が存在していない場合に当該第1のビューに仮想表現340を表示させることも含まれうる。
【0063】
試料ブロックの仮想前面342、すなわち現実の前面に対応する仮想表現における前面を決定するために、第1のユーザー入力データが受け取られる。こうしたサブステップは、例えばボタン324.3にタッチすることによって開始することができる。
【0064】
一実施形態では、第1のユーザー入力データは、
図3aに示されている3つの異なるユーザー定義表面位置342.1,342.2,342.3に関するデータを含む。3つの異なるユーザー定義表面位置のそれぞれは、試料ブロックの仮想表現340における試料ブロックの前面を表している。第1のユーザー入力データを生成するために、ユーザーは、例えば(タッチディスプレイが存在する場合に)ディスプレイ320にタッチすることができる。なお、一般的に、前面と同様の平面を定義するには3つの位置で十分であることに留意されたい。これは、ユーザーが、例えば、3つの異なる位置、例えば342.1,342.2,342.3に対応する3つの位置でディスプレイにタッチできることを意味する。なお、3つの位置は、共通の一直線上に位置しないことに留意されたい。1つの位置においてディスプレイにタッチすることにより、例えばタッチの時点で示されている仮想表現に関するタッチ位置を示す信号を生成することができ、この信号がコントローラにおいて受け取られる。
【0065】
一実施形態では、誘導または指示を、例えばディスプレイ320上に表示するかたちでユーザーに提供し、例えばディスプレイにタッチすることによってディスプレイ上の仮想前面342の近傍の3つの位置(ここではユーザー定義表面位置342.1,342.2,342.3)を定義するようユーザーを誘導することができる。さらに、共通の一直線上に位置しない3つの点を選択するようにユーザーに指示することもできる。
【0066】
一実施形態では、第1のユーザー入力データに基づいて試料ブロックの仮想前面342を決定することが、3つの異なるユーザー定義表面位置342.1,342.2,342.3のそれぞれに対して、試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、試料ブロックの仮想表現340における試料表面上の表面位置を決定することを含む。次いで、試料ブロックの仮想前面342が、試料表面上の表面位置に基づいて決定される。
【0067】
図3bには、断面図において、すなわち
図3aの図平面に対して直交する方向に沿った図で、
図3aのディスプレイ320が示されている。試料ブロックの仮想表現340も示されている。なお、
図3bでの例示は、説明している特徴の基礎となっている概念を示すための理論的なものにすぎないことに留意されたい。
【0068】
図3bから見て取れるように、仮想前面342は、ディスプレイ320上に提示されている仮想表現の最前面すなわちディスプレイ面326には対応しない。むしろ、仮想前面342は、ディスプレイ面326に対して傾斜している。コントローラは仮想前面342を回転させることができるようにまたは他の形式で運動させることができるように構成可能であるが、
図3bに示されている状況が発生する可能性がある(または発生する可能性が極めて高い)。ユーザーにはこうした傾斜は認識されないかもしれない。
【0069】
ユーザー定義表面位置は、ユーザー定義表面位置342.1で示されているように、ディスプレイ面326上に生成される位置である。なお、上述した表面位置は、表面位置342.1’で示されているように、仮想表現における試料ブロックの(仮想)前面での位置に対応する。
【0070】
一実施形態では、3つの異なるユーザー定義表面位置342.1,342.2,342.3のそれぞれに対して、試料ブロックの仮想表現における試料表面342上の表面位置342.1’を決定することが、試料ブロックの仮想表現の強度情報に基づいて、試料ブロックの仮想表現において予め定められた閾値よりも大きい強度値を有する予め定められた方向に沿った第1の位置である閾値位置を決定することと、当該閾値位置を試料表面上の表面位置として使用することとを含む。
【0071】
上述したように、ディスプレイにその時点で提示されている最前面またはディスプレイ面326は実際の前面に対応しないか、または少なくとも全ての位置について対応するわけではない。ただし、仮想表現における試料ブロックの実際の前面は、ユーザー定義表面位置342.1および表面位置342.1’につき見て取れるように、ディスプレイ面の近傍に存在する。
【0072】
試料ブロックの仮想表現340は、試料ブロック自体(
図3aでは、これは残りの材料348に対応する)が試料ブロックの周囲よりも高い強度を有するように、つまり、仮想表現の生成に使用されるデータにおいて、試料ブロックを表現する点には(何も存在しない)外部よりも高い強度値または閾値よりも高い値を割り当てることができるように構成可能である。したがって、試料ブロックの仮想表現における、閾値を上回るユーザー定義表面位置342.1の最も近傍にある点または位置を見出すことができる。よって、例えば
図3bに示されているのと同様の所定の方向Dを辿ったときの次の点は、実際の前面に属することになり、これが表面位置342.1’となる。方向Dは、例えば、前面342またはディスプレイ面326に対して直交していてよく、また前面342へ向かって配向されていてよい。一般的に(ディスプレイにおいて見て、すなわち方向Dに従って)前方から後方へ向かって閾値を上回る強度値を有する、仮想表現における平面を見出すことができる。なお、これは、試料ブロックの仮想表現が
図3bの右側に示されているように部分的にディスプレイの「外側」にある位置についても当てはまることに留意されたい。
【0073】
試料ブロックの外側には何も存在せず、つまり強度がゼロであるため、閾値をゼロに設定することができる。誤って生じたいずれかの強度値が選択されることを防止するために、例えば、閾値をゼロよりも僅かに高い値に設定することもできる。
【0074】
なお、一実施形態では、コントローラはユーザーが4個以上のユーザー定義位置を選択できるように構成可能であり、すなわち、第1のユーザー入力データは、4個以上の異なるユーザー定義表面位置に関するデータを含みうることに留意されたい。このようにすることで、前面をいっそう正確に決定することができる。
【0075】
試料ブロックの前面の仮想縁部を決定するために、第2のユーザー入力データが受け取られる。こうしたサブステップは、例えばボタン324.4にタッチすることによって開始することができる。
【0076】
一実施形態では、第2のユーザー入力データは、試料ブロックの仮想前面342の平面である前面平面、すなわち仮想前面342が位置する平面である前面平面の2つの異なるユーザー定義縁部位置344.1,344.2に関するデータを含む。2つの異なるユーザー定義縁部位置344.1,344.2は、
図3aに示されている例における仮想前面のコーナーに対応する。なお、実際の縁部上の他の2つの(またはそれ以上の)点または位置を選択できることに留意されたい。
【0077】
前面342ひいては前面平面が既に決定されているので、コントローラは、縁部がどの平面に位置するかを認識している。よって、ユーザーは、前面の縁部344にできるだけ近い2つの位置を選択するだけでよい。特に、タッチディスプレイが使用される場合、2つの点を極めて正確にタッチすることは困難でありうる。これにもかかわらず2つの位置または点を正確に定義できるようにする手法については、
図6aおよび
図6bに関連して以下に説明する。
【0078】
第2のワークフローステップでは、例えば、試料ブロックに交差する仮想切断面を決定することができる。第2のワークフローステップは、例えばボタン324.2にタッチすることによって開始することができる。当該ワークフローステップの開始には、第2のビューにおいて仮想表現を表示することも含まれていてよく、第2のビューにおいて仮想表現が存在していない場合には、すなわち仮想表現を第2のビューへと切り替えることができる。
【0079】
図4には、本発明の一実施形態を説明するためのディスプレイ420が概略的に示されている。ディスプレイ420は、
図3aのディスプレイ320に対応するものであってよい。ユーザーインタフェース422は、例えばディスプレイ420を制御するコントローラによってディスプレイ420上にレンダリング可能である。換言すれば、ディスプレイ420は、別のユーザーインタフェースまたは少なくとも示されている別のビューを有するディスプレイ320に対応するものであってよい。
【0080】
ディスプレイ420には、試料ブロック240の仮想表現440が示されている。例として、仮想表現440が第2のビューにおいて3D(3次元)で示されている。
図4に示されている実施形態では、第2のビューにおいて、試料ブロックの仮想表現440における試料446が可視である。加えて、例として、ボタン(例えばソフトボタン)またはスライダ424.1,424.2,424.3,424.4,424.5,424.6,424,7,424.8のような種々の入力手段が示されており、これらの入力手段は、ユーザーとの対話を可能にするユーザーインタフェース422の一部であってよい。ボタン424.1,424.2は、例えばボタン324.1,324.2に対応するものであってよく、これにより、ボタン424.1にタッチすることで
図3aに示されている第1のビューまたはユーザーインタフェースへの切り替えが生じる。
【0081】
図4に示されている仮想切断面450を決定するために、第3のユーザー入力データが受け取られる。一実施形態では、第3のユーザー入力データは、切断面250と試料ブロックの仮想表現440との間の関係を定義する少なくとも1つの切断パラメータのユーザー定義値に関するデータを含む。一実施形態では、コントローラは、少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値を受け取り、当該少なくとも1つの切断パラメータのその時点の値に基づいて、試料ブロックの仮想表現440におけるその時点の仮想切断面450が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。
【0082】
一実施形態では、少なくとも1つの切断パラメータは、切断面のピッチ角θ
p、ヨー角θ
y、切断面の回転角θ
sおよび並進位置zのうちの少なくとも1つを含む。これらの切断パラメータの全てが
図4に示されている。
【0083】
入力手段424.3,424.4,424.5,424.8は、例えば、ユーザーが操作可能なスライダまたは(仮想)ホイールとすることができる。例えば、ユーザーは、こうしたスライダの位置で、タッチ物体(例えば指)でディスプレイ420にタッチし、当該タッチ物体を移動させることで、切断パラメータを調節することができる。例えば、スライダ424.3を介して切断面のピッチ角θpを調節することができ、スライダ424.4を介してヨー角θyを調節することができ、スライダ424.5を介して切断面の回転角θsを調節することができ、スライダ424.8を介して並進位置zを調節することができる。試料ブロックの仮想表現440におけるその時点の仮想切断面450は、例えば、切断パラメータのその時点の値に基づくものとすることができる。ユーザーが1つの切断パラメータまたはその値を変更すると、これに応じてその時点の仮想切断面450も変化する。このようにして、ユーザーは、例えば要求に応じて、その時点の仮想切断面450を定義することができる。この場合、最終的に選択される切断パラメータの値は、第3のユーザー入力データに対応するものとすることができる。
【0084】
さらに、試料ブロックの仮想前面、試料ブロックの前面の仮想縁部および仮想切断面に基づいて、ミクロトームのためのアライメントパラメータが決定される。アライメントパラメータは、仮想切断面と試料ブロックの仮想前面と試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義するものである。
【0085】
ミクロトーム上に初期的にアライメントされた、試料ブロックから当該試料ブロックの仮想表現への回転に関するアライメント変換行列T
aは、例えば、前面(例えば前面242)上の法線ベクトル(n
x,n
y,n
z)と前面の縁部(例えば縁部244)に沿った正規化ベクトル(v
x,v
y,v
z)とから計算可能であり、すなわち、
【数1】
である。
【0086】
3つの角度(切断パラメータ)は、アライメントされた試料ブロック座標系に関して、すなわちミクロトーム内で試料ブロックがプリアライメントされた際の試料ブロックの座標系に関して、定義することができる。切断変換行列T
cは、
【数2】
によって計算可能である。
【0087】
試料ブロックの仮想表現から切断面への変換のための変換行列は、切断変換行列Tcにアライメント変換行列Taを乗算することによって計算可能である。
【0088】
一実施形態では、コントローラは、試料ブロックの現実の前面および試料ブロックの現実の前面縁部に基づいて、ミクロトーム内で試料ブロックがナイフに対してプリアライメントされた後に、アライメントパラメータに従って試料ブロックがナイフに対してアライメントされるようにミクロトーム130を制御すべく構成されている。
【0089】
回転のみが考慮される場合、ミクロトームナイフ座標(x
m,y
m,z
m)から試料ブロック座標(x
s,y
s,z
s)への変換のための変換行列Tは、y軸を中心とした角度θ
kでのナイフ傾斜と、回転されたz軸を中心とした角度θ
rでの試料ブロック回転と、2回回転されたy軸を中心とした角度θ
tでの試料ブロック傾斜と、の組み合わせであり、
【数3】
となる。
【0090】
ミクロトームの制御のための角度θ
r、θ
tおよびθ
kを決定するには、駆動機構(またはアクタ)の角度の初期値および選択された切断面の角度の初期値が考慮されなければならない。角度の初期値θ
ri、θ
tiおよびθ
kiから、変換T
i、すなわち
【数4】
が得られ、ユーザー選択された切断面から、変換T
c、すなわち
【数5】
が得られる。
【0091】
この場合、ミクロトームのための所望の変換行列Tは、T=T
i*T
cであり、すなわち
【数6】
である。
【0092】
まず、変換行列Tが計算可能となり、次いで、角度が、行列要素から、
【数7】
によって計算可能となる。
【0093】
このようにして、試料ブロックがナイフに対して自動的にアライメントされるようにミクロトームを制御することができ、これにより、上述したように、ユーザーによって定義された切断面に沿ってスライスを切断することができる。
【0094】
軸および角度を定義する種々の手法を選択することができ、これにより種々の変換が得られることに留意されたい。なお、示されている手法は、変換を実装する1つの手法である。
【0095】
図5aおよび
図5bは、本発明の一実施形態を例示するための概略図である。この点に関しては、
図3aおよび
図4も参照される。一実施形態では、コントローラは、それぞれ異なるビューにおいて試料ブロックの340,440のような仮想表現が視覚化されるようにディスプレイ、例えばディスプレイ120、320または420を制御すべく構成されている。
図3aおよび
図4に関連して、それぞれ異なるビュー(
図3aの第1のビューおよび
図4の第2のビュー)については既に言及した。試料446および残りの材料348のうちの少なくとも一方は、それぞれ異なるビュー340,440においてそれぞれ異なる透明度を有する。コントローラはさらに、それぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されており、このことは
図4に関連しても言及した。
【0096】
一実施形態では、それぞれ異なるビューには、第1のビュー340および第2のビュー440が含まれる(
図3a、
図4を参照)。第1のビュー340では、試料ブロックの仮想表現340における残りの材料348が第2のビューにおけるよりも低い透明度を有する。第2のビュー440では、試料ブロックの仮想表現440における試料446が残りの材料よりも低い透明度を有する。
【0097】
一実施形態では、第1のビューにおいて、試料ブロックの仮想表現340が、第2のビューにおけるよりも大きい残りの材料の部分と、第2のビューにおけるよりも小さい試料の部分と、を含む。極端なケースでは、
図3aのケースと同様に、第1のビューでは残りの材料のみが可視であり、試料は可視でない。別の極端なケースでは、
図4のケースと同様に、第2のビューでは試料のみが可視であり、残りの材料は可視でない。
【0098】
一実施形態では、試料ブロックの仮想表現は、(既に上述したように)複数の画像に基づいている。コントローラは、複数の画像の強度に基づいて試料ブロックの仮想表現が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されており、ここでは、それぞれ異なるビューにおいて、試料ブロックの仮想表現が、複数の画像のそれぞれ異なる強度値範囲に基づいている。
【0099】
これらのそれぞれ異なる範囲が、
図5a、
図5bに示されている。どちらのグラフも、試料ブロックの例としての仮想表現またはその基礎となっている画像を含むデータについての、それぞれ異なる強度値Iの相対数(または頻度)Nを示している。このことは、例えば、データセット内の種々の点またはピクセルがそれぞれ異なる強度値を有することを意味する。典型的には、樹脂等の残りの材料に対応する点またはピクセルは低い強度値を有し、試料に対応する点またはピクセルは高い強度値を有する。2つのグラフとも同じ強度値分布を示している。
【0100】
残りの材料および/または試料に対してそれぞれ異なる透明度を有するそれぞれ異なるビューを生成するために、それぞれ異なる範囲550a,550bを使用することができる。
図5aの範囲550aは下方閾値L
bから上方閾値U
bまでの下方の強度値を有しており、このため、試料は(試料に対応する強度値が範囲550aの外側にあるので)当該ビューにおいては可視でないかまたは殆ど見えず、これが第1のビューとなりうる。
図5bの範囲550bは下方閾値L
sから上方閾値U
sまでの上方の強度値を有しており、このため、残りの材料は(残りの材料に対応する強度値が範囲550bの外側にあるので)当該ビューにおいて可視でないかまたは殆ど見えず、これが第2のビューとなりうる。
【0101】
ボリューム取得からの画像スタックは、透明度レンダリングを使用して視覚化することができる。スタックを通るスクリーンまたはディスプレイに対して平行な平面は、後方から前方へ処理可能である。レンダリングバッファは、背景強度値Iによって初期化することができる。この場合、各スクリーンピクセルに対して、
I’=I
v*f(I
v)+I*(1-f(I
v))
により、レンダリングバッファ値を新たな強度値I’へと更新することができ、ここで、I
vはスクリーンピクセルに対して平面から補間された強度であり、Iはフレームバッファの先行の強度値である。透明度関数fを使用することができ、これは、その時点のビューに使用されるべき強度値範囲の下方閾値Lから上方閾値Uまでの線形補間であり、すなわち、
【数8】
である。
【0102】
上述したように、それぞれ異なるビュー(または少なくとも2つの異なるビュー)を設けることができる。これらは、種々の透明度の設定を使用して生成可能である。閾値LおよびUは、
図5a、
図5bに示されているような画像スタックの強度ヒストグラムから導出することができる。範囲550aを定義する閾値は、例えば、
L
b=I
Hmax, U
b=I
Hmax+2・(t-I
Hmax)
として定義することができ、ここで、I
minは画像スタックにおける最小強度値であり、I
Hmaxはヒストグラムにおける最大頻度を有する強度値であり、tは、
【数9】
のように定義される。
【0103】
範囲550bを定義する閾値は、例えば、
【数10】
のように定義することができ、ここで、I
maxは画像スタックにおける最大強度である。いずれのケースにおいても、Otsu(I
1,I
2)は、“Nobuyuki Otsu. A threshold selection method from grey level histograms. In: IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics. New York, 9.1979, S.62-66. ISSN1083-4419”に記載されている、強度I
1から強度I
2までのヒストグラム部分についてのヒストグラムの画像セグメンテーションに最適な閾値を自動的に選択するための、Otsuによる方法の結果である。なお、範囲、特に範囲550bを定義する他の適切な手法も使用可能であることに留意されたい。例えば、手動での選択も可能でありうる。
【0104】
したがって、第1の強度範囲550aは、第2の強度範囲550bに比べて、残りの材料に対応する強度値をより多く、かつ試料に対応する強度値をより少なく含む。これにより、第1のビューでは主に残りの材料を示すことができ、第2のビューでは主に試料を示すことができる。
【0105】
一実施形態では、コントローラはさらに、試料ブロックの仮想表現につき実行されるその時点のタスクに基づいてそれぞれ異なるビュー間の自動的な切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されている。このことは既に
図3aおよび
図4に関連して説明しており、例えば、切断面を定義する場合、試料を示している第2のビューを自動的に使用することができる。
【0106】
一実施形態では、コントローラはさらに、試料および残りの材料のうちの少なくとも一方の透明度が連続的にまたは準連続的に変化するよう、連続モードまたは準連続モードにおいてそれぞれ異なるビュー間の切り替えが行われるようにディスプレイを制御すべく構成されている。例えば、さらなる範囲を上記の範囲のように定義することができ、これにより、あるビューから別のビューへ移行したとき、残りの材料をより少なく示しかつ試料をより多く示すビューが得られる。
【0107】
図6a、
図6bには、本発明の一実施形態を例示するためのディスプレイが概略的に示されている。ディスプレイ620は、
図1のディスプレイ120、
図3aのディスプレイ320または
図4のディスプレイ420に対応するものであってよい。ユーザーインタフェース622は、例えば、ディスプレイ620を制御するコントローラにより、ディスプレイ620上にレンダリング可能である。換言すれば、ディスプレイ620は、別のユーザーインタフェースまたは少なくとも示されている別のビューを有するディスプレイ120、320または420に対応するものであってよい。
【0108】
一実施形態では、コントローラは、対象物の仮想表現が視覚化されるようにディスプレイ(例えばディスプレイ620)を制御すべく構成されている。一実施形態では、対象物は試料ブロックである。コントローラはさらに、対象物の仮想表現640a(
図6aを参照)におけるユーザー定義位置を示す第1のユーザー入力位置データを受け取り、さらに、ユーザー定義位置を含む、対象物の仮想表現の拡大ビュー640b(
図6bを参照)が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。コントローラはさらに、拡大ビューにおいて、第1の位置において第1のシンボル660が第2の位置において視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されている。コントローラはさらに、第2の位置の移動を示す第2のユーザー入力位置データを受け取るように構成されている。第2の位置は、第1の位置とは異なり、第1の位置と第2の位置との間の相対位置を定義している。一実施形態では、コントローラはさらに、
図6bに示されているように、拡大ビューにおいて、第2の位置において第2のシンボル662が視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成可能である。コントローラはさらに、第2のユーザー入力位置データに基づいて第1のシンボルが視覚化されるようにディスプレイを制御すべく構成されており、ここで、第1の位置と第2の位置との間の相対位置は変化しない。
【0109】
なお、
図6bに示されている第2のシンボル662は、例えばどこでディスプレイにタッチすべきかまたは何をなすべきかにつきユーザーを支援するために使用可能であることに留意されたい。ただし、第2の位置でディスプレイにタッチして移動動作を実行すること、すなわち第2の位置の移動は、第2のシンボルなしでも行えるので、第2のシンボルの視覚化は必ずしも要求されない。
【0110】
上述したように、試料ブロックの縁部に関連する位置を正確に定義することは、特に、ディスプレイがタッチディスプレイであり、タッチ物体、例えば指がディスプレイ(または実際にはコントローラ)との対話に使用される場合に困難でありうる。以下の説明は特に試料ブロックの縁部に対する位置を定義することに関連するが、ここでの定義は、ディスプレイに示されている試料ブロック以外の他の対象物にも適用することができる。
【0111】
図6aに示されている試料ブロックの仮想表現のビュー640aは、基本的に、
図3aに示されているビュー(このケースでは第1のビュー)に対応する。例えば、ユーザー定義表面位置は位置に関してそれほど正確である必要はないが、ユーザー定義縁部位置については(上述したように)このことが真であるとは言えない。
【0112】
したがって、例えば、ここで説明している実施形態を実現するユーザー定義縁部位置を定義するためのモードを使用することができる。受け取られる第1のユーザー位置入力は、(タッチディスプレイが使用される場合)ユーザーが
図6aを参照したときの指670(または任意の他の適切なタッチ物体)を用いてディスプレイの縁部上の位置の大まかな近傍にタッチすることによって、生成することができる。ユーザーは、ユーザー定義位置664、すなわち自身がタッチしている実際の位置を正確に見ることができない。
【0113】
こうした第1のユーザー位置入力に基づいてまたはこうした第1のユーザー位置入力の後に、対象物の仮想表現の拡大ビュー640bが視覚化されるようにディスプレイが制御され、ここで、拡大ビューは、ユーザー定義位置664(このケースでは、試料ブロックの左下コーナーまたはその近傍)を含む。さらに、拡大ビューにおいて、第1の位置において第1のシンボル660が、また一実施形態で第2の位置において第2のシンボル662が視覚化されるようにディスプレイが制御され、ここで、第2の位置は、第1の位置とは異なり、第1の位置と第2の位置との間の相対位置を定義する。第1の位置は、例えば、ユーザー定義位置664に対応するものであってよい。
【0114】
図6bでは、第1のシンボル660が試料ブロックの前面の縁部に位置しているが、この状態は、
図6aに示されているようなディスプレイにユーザーがタッチした場合には生じない可能性が極めて高い。さらに、第2のユーザー入力位置データが受け取られ、ここで、第2のユーザー入力位置データは、例えば第2のシンボル662を移動させることによる第2の位置の移動を示す。第2のユーザー入力位置データを生成するために、ユーザーは、例えば、第2のシンボル662にタッチし、(タッチを続けている間)指670を移動させることができる。既述のように、ユーザーは、第2のシンボルを表示させることなく、第2の位置においてディスプレイにタッチすることもできる。さらに、一実施形態では、第2のユーザー入力位置データに基づいて第1のシンボル660およびさらに第2のシンボル662が視覚化されるようにディスプレイが制御され、ここで、第1の位置と第2の位置との間の相対位置は変化しない。換言すれば、第2の位置または第2のシンボル662を移動させている間、第1のシンボル660も移動される。拡大ビューによって、ユーザーは、第1のシンボル660を極めて正確に縁部に(または位置させるべきいずれの場所にも)配置することができる。
【0115】
一実施形態では、第2のユーザー入力位置データは、タッチディスプレイにタッチしているタッチ物体を第1のシンボルの外側の予め定められた領域において移動させることによって生成される。換言すれば、予め定められた領域にあるとき、例えば第2のシンボル(または例えば当該シンボルから1cmのマージン内のような所定の領域内)がタッチされているときにのみ、移動操作が実行可能となる。例えば、ディスプレイの予め定められた領域の外側がタッチされたときには、第1のシンボルを移動させることはできない。
【0116】
一実施形態では、第3のユーザー入力位置データを受け取ることができ、ここで、第3のユーザー入力位置データは、対象物の仮想表現における、第2の位置の移動後の第1の位置に対応する最終的なユーザー定義位置を示す。当該最終的なユーザー定義位置は、例えば、
図6bに示されている第1のシンボル660の位置、すなわちユーザーが実際に定義したいと望む位置でありうる。
【0117】
一実施形態では、最終的なユーザー定義位置が決定された後、例えば、別の位置を同じ方式で定義できるようにするために、拡大ビューの先行のビューを再び示すことができる。
【0118】
図7には、本発明の一実施形態による方法がフローチャートにおいて概略的に示されている。当該方法は、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームのためのアライメントパラメータを取得する方法である。例えば、上記の実施形態のいずれかにおいて説明したミクロトームまたはミクロトームシステムを使用することができる。
【0119】
当該方法は、次の各ステップを含む。ステップ700では、ディスプレイが、試料ブロックの仮想表現が視覚化されるように制御され、例えば、
図3aに示されているような仮想表現をディスプレイ上に表示させることができる。ステップ702では、第1のユーザー入力データ704が受け取られ、当該第1のユーザー入力データ704は、例えば
図3aに関連して説明したように、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面を示す。ステップ706では、当該第1のユーザー入力データ704に基づいて、試料ブロックの仮想前面が決定される。
【0120】
ステップ708では、第2のユーザー入力データ710が受け取られ、当該第2の入力データ710は、例えば
図3aに関連して説明したように、試料ブロックの仮想表現における試料ブロックの前面の縁部を示す。ステップ712では、例えば
図3aに関連して説明したように、当該第2のユーザー入力データ710に基づいて、試料ブロックの前面の仮想縁部が決定される。
【0121】
ステップ714では、第3のユーザー入力データ716が受け取られ、当該第3のユーザー入力データ716は、例えば
図4に関連して説明したように、試料ブロックの仮想表現において試料ブロックに交差する切断面を示す。ステップ718では、例えば
図4に関連して説明したように、当該第3のユーザー入力データ716に基づいて、試料ブロックに交差する仮想切断面が決定される。
【0122】
ステップ720では、試料ブロックの仮想前面、試料ブロックの前面の仮想縁部および仮想切断面に基づいて、ミクロトームのためのアライメントパラメータが決定される。当該アライメントパラメータは、例えば
図4に関連して説明したように、仮想切断面と試料ブロックの仮想前面と試料ブロックの前面の仮想縁部との間の関係を定義するものである。
【0123】
一実施形態では、ステップ722において、試料ブロックの現実の前面および試料ブロックの前面の現実の縁部に基づいて、ミクロトーム内で試料ブロックがナイフに対してプリアライメントされた後に、アライメントパラメータに従って試料ブロックがナイフに対してアライメントされるようにミクロトームを制御することができる。
【0124】
方法のさらなるステップまたは別の実施形態は、上記のミクロトームシステムに関連して説明した実施形態に対応する。
【0125】
図8には、本発明の実施形態による方法がフローチャートにおいて概略的に示されている。当該方法は、試料および残りの材料を含む試料ブロックを視覚化する方法である。試料ブロックは、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームによって切断されることが意図されているものでありうる。例えば、上記の実施形態のいずれかにおいて説明したミクロトームまたはミクロトームシステムを使用することができる。
【0126】
当該方法は次の各ステップを含む。ステップ800では、例えば
図3aおよび
図4に関連して説明したように、ディスプレイが、試料ブロックの仮想表現がそれぞれ異なるビューにおいて視覚化されるように制御される。試料および残りの材料のうちの少なくとも一方は、それぞれ異なるビューにおいてそれぞれ異なる透明度を有する。ステップ802では、
図3aおよび
図4に関連して説明したように、ディスプレイが、それぞれ異なるビュー間の切り替え、例えば
図3aのビューから
図4のビューへの切り替えが行われるように制御される。
【0127】
方法のさらなるステップまたは別の実施形態は、上記のミクロトームシステムに関連して説明した実施形態に対応する。
【0128】
図9には、本発明の一実施形態による方法がフローチャートにおいて概略的に示されている。当該方法は、対象物における位置を定義する方法である。一実施形態によれば、対象物は、ナイフを用いて試料ブロックからスライスを切断するように構成されたミクロトームによって切断されることが意図されている試料ブロックである。例えば、上記の実施形態のいずれかにおいて説明したミクロトームまたはミクロトームシステムを使用することができる。
【0129】
当該方法は、次の各ステップを含む。ステップ900では、ディスプレイが、例えば
図6aに関連して説明したように、対象物の仮想表現が視覚化されるように制御される。ステップ902では、第1のユーザー入力位置データ904が受け取られ、当該第1の位置入力データ904は、例えば
図6aに関連して説明したように、対象物の仮想表現におけるユーザー定義位置を示す。
【0130】
ステップ906では、ディスプレイが、例えば
図6bに関連して説明したように、対象物の仮想表現の拡大ビューが視覚化されるように制御され、ここで、拡大ビューは、ユーザー定義位置を含む。ステップ908では、ディスプレイが、拡大ビューにおいて第1の位置における第1のシンボルと移動位置における第2のシンボルとが視覚化されるように制御される。移動位置は、第1の位置とは異なり、例えば
図6bに関連して説明したように、第1のシンボルと第2のシンボルとの間の相対位置を定義するものである。
【0131】
ステップ910では、第2のユーザー入力位置データ912が受け取られ、当該第2のユーザー入力データは、例えば
図6bに関連して説明したように、第2のシンボルの移動を示す。ステップ914では、ディスプレイが、例えば
図6bに関連して説明したように、当該第2のユーザー入力データに基づいて、第1のシンボルおよび第2のシンボルが視覚化されるように制御され、ここで、第1のシンボルと第2のシンボルとの間の相対位置は変化しない。
【0132】
一実施形態では、ステップ916において、第3のユーザー入力位置データ918が受け取られ、当該第3のユーザー入力位置データ918は、対象物の仮想表現における最終的なユーザー定義位置を示す。当該最終的なユーザー定義位置は、例えば
図6bに関連して説明したように、第2のシンボルを移動させた後の第1の位置に対応する。
【0133】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0134】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0135】
いくつかの実施形態は、
図1~
図9の1つもしくは複数の図に関連して説明したシステムを含むミクロトームに関する。代替的に、ミクロトームは、
図1~
図9の1つもしくは複数の図に関連して説明したシステムの一部であってもよいし、またはこのシステムに接続されたものであってもよい。
図1には、本明細書に記載の方法を実行するように構成されたシステム100の概略図が示されている。システム100は、ミクロトーム130およびコンピュータシステムまたはコントローラ110を含む。ミクロトームはコンピュータシステム110に接続されている。コンピュータシステム110は、本明細書に記載の方法の少なくとも一部を実行するように構成されている。コンピュータシステム110は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成可能である。コンピュータシステム110とミクロトーム130とは別個のエンティティであってよいが、1つの共通のハウジング内に共に組み込まれていてもよい。コンピュータシステム110は、ミクロトーム130の中央処理システムの一部であってよく、かつ/またはミクロトーム130のセンサ、アクタ、カメラまたは照明ユニット等のミクロトーム130のサブコンポーネントの一部であってもよい。
【0136】
コンピュータシステム110は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム110は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム110は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるプロセッサとは、例えばミクロトームまたはミクロトームコンポーネント(例えばカメラ)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路の、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックスプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような任意の種類の計算回路を意味しうるが、これらに限定されない。コンピュータシステム110に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム110は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム110はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム110に情報を入力すること、およびコンピュータシステム110から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0137】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0138】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0140】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0141】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0142】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0143】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0144】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0145】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0146】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0147】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0149】
100 ミクロトームシステム
110 コントローラ
120,320,420,620 ディスプレイ
130,230 ミクロトーム
131 接眼レンズ
132,232 ナイフ
134,234 ナイフホルダ
136,236 試料ホルダ
138.1,138.2 アクタ
138.3 駆動機構
140,240 試料ブロック
242 試料ブロックの前面
244 前面の縁部
246 試料
248 残りの材料
250 切断面
322,422,622 ユーザーインタフェース
324.1~324.6,424.1~424.8 入力手段
340 第1のビューにおける試料ブロックの仮想表現
342 仮想前面
342.1~342.3 ユーザー定義表面位置
342.1’ 表面位置
344.1,344.2 ユーザー定義縁部位置
344 仮想縁部
348 仮想表現における残りの材料
440 第2のビューにおける試料ブロックの仮想表現
446 仮想表現における試料
450 仮想切断面
550a 第1の強度値範囲
550b 第2の強度値範囲
640a 試料ブロックの仮想表現
640b 拡大ビューにおける試料ブロックの仮想表現
660 第1のシンボル
662 第2のシンボル
664 第1の位置
670 タッチ物体
700,702,706,708,712,714,718,720,722 方法ステップ
704 第1のユーザー入力データ
710 第2のユーザー入力データ
716 第3のユーザー入力データ
800,802 方法ステップ
900,902,906,908,910,914,916 方法ステップ
904 第1のユーザー入力位置データ
912 第2のユーザー入力位置データ
918 第3のユーザー入力位置データ
D 予め定められた方向
I 強度
Lb,Ls 下方閾値
R 切断方向
Ub,Us 上方閾値
x,y,z 座標軸
θt,θr,θk ミクロトームの角度
θp,θs,θy,z 切断パラメータ
【外国語明細書】