(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091603
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた管の内面を金属化するための方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/20 20060101AFI20240627BHJP
G21C 3/16 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G21C3/20 110
G21C3/16 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217017
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】2214402
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロレット
(72)【発明者】
【氏名】マリー・デュメルヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ノニー
(57)【要約】
【課題】従来の方法の欠点のない方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた管(12)の内面(14)を金属化するための方法に関する。
方法は、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管(12)の内面(14)に金属管(10)をメッキするステップを少なくとも含み、
メッキするステップは、金属管(10)に内部圧力および加熱を適用することによる、この管のクリープを含み、クリープは、金属管(10)の外面(16)がセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管(12)の内面(14)に押し付けられるまで、金属管(10)の外径(d1)における増加をもたらすことを特徴とする。
本発明は、金属化方法を実施する管状核燃料金属被覆を製造するための方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた管(12)の内面(14)に金属管(10)をメッキするステップを少なくとも含む、前記セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管(12)の前記内面(14)を金属化するための方法であって、
前記メッキするステップは、前記金属管(10)に内部圧力および加熱を適用することによる前記金属管(10)のクリープを含み、前記クリープは、前記金属管(10)の外面(16)が前記セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管(12)の前記内面(14)をメッキするまで、前記金属管(10)の外径(d1)における増加をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属管への内部圧力の前記適用は、前記金属管の等方加圧を含む、請求項1に記載の金属化方法。
【請求項3】
前記等方加圧は、気体の吸入を含む、請求項2に記載の金属化方法。
【請求項4】
前記気体は、不活性ガスである、請求項3に記載の金属化方法。
【請求項5】
前記金属管の前記加熱は、ジュール効果によって行われる、請求項1に記載の金属化方法。
【請求項6】
前記金属管は、ジルコニウム、チタン、またはこれらの合金から作られる、請求項1に記載の金属化方法。
【請求項7】
前記金属管は、ジルコニウム合金から作られる、請求項6に記載の金属化方法。
【請求項8】
前記セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管は、炭化ケイ素、または炭化ケイ素マトリックスと繊維強化材との複合材料から作られた管である、請求項1に記載の金属化方法。
【請求項9】
前記繊維強化材は、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、または酸化物繊維を含む、請求項8に記載の金属化方法。
【請求項10】
前記繊維強化材は、炭化ケイ素繊維を含む、請求項9に記載の金属化方法。
【請求項11】
前記メッキするステップの前に、前記セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管への前記金属管の挿入をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の金属化方法。
【請求項12】
金属層で内面が覆われるセラミックマトリックス複合材料から作られる層を含む管状核燃料金属被覆を製造するための方法であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の金属化方法の実施を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記セラミックマトリックス複合材料の層は、前記金属被覆の外面を形成し、前記金属層は、前記金属被覆の内面を形成する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記セラミックマトリックス複合材料の層は、炭化ケイ素マトリックスと炭化ケイ素繊維とから作られた層であり、前記金属層は、ジルコニウム合金から作られた層である、請求項12または請求13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記金属被覆は、軽水炉のための核燃料の金属被覆である、請求項12または請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
金属層で内面が覆われるセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られる層を壁が備える管状の液体もしくは固体のガスタンク、または管状の推進剤タンクを製造するための方法であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の金属化方法の実施を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の層は、前記タンクの壁の外面を形成し、前記金属層は、前記タンクの壁の内面を形成する、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管要素の金属化の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、セラミックに基づいた管の内面、つまり、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から成る管の内面を金属化するための方法に関し、ここで、「金属化」という用語は、本明細書では、その内面を金属層と関連付けることを意味するものと理解され、この方法は、具体的には、管の内面と、この内面と関連付けられる金属層との間の結合を得ることを可能とする。
【0003】
本発明は、まず、核燃料、より具体的には、加圧水型原子炉(またはPWR)および沸騰水型原子炉(またはBWR)などの軽水炉に向けて意図されたE-ATF(高度事故耐性燃料)核燃料を金属被覆することについてだけでなく、この金属被覆が、その内面が金属層と関連付けられるセラミックに基づいた層を伴う多層管設計と適合すれば、他の種類の核燃料を金属被覆することについても、原子力産業において用途を見出す。
【0004】
また、本発明は、金属化方法を実施する管状核燃料金属被覆を製造するための方法に関する。
【0005】
しかしながら、本発明による金属化方法は、他の産業分野において、例えば、高い付加価値の製品(液体または固体の水素、推進剤の種類の固体燃料など)を含むように意図された管状タンクの製造において、および、より一般的には、その内面が金属層(ライニングなど)と関連付けられるセラミックに基づいた層を備えるように意図された管状要素の製造などにおいても、実施することができる。
【背景技術】
【0006】
2011年の福島第一原発事故の後、数多くの国家的および国際的な研究プログラムが、現在の核燃料要素と比べて事故の状況においてより堅牢である、E-ATFと称される新規の核燃料要素の概念の設計および開発において、着手されている。
【0007】
これらの研究プログラムは、具体的には、金属被覆材料についての期待される性質が、具体的には(しかし、唯一ではない)、すべての状況(通常、事件、または事故)の下で核分裂性物質および核分裂生成物の汚染を保証することができる気密性、ならびに、同じくすべての状況の下で核反応によって生成される熱を熱伝達流体に向けて排出する能力であるという認識の上で、新規の核燃料金属被覆に関する。
【0008】
現在研究されている金属被覆の解決策のうちの1つは、より簡潔にはSiCf/SiCと称される炭化ケイ素複合材料マトリックスおよび繊維材料の使用に基づかれる。これらの材料は、実際、非常に高い温度まで(つまり、1600℃を上回ってさえ)、空気における耐酸化性、機械的強度、および寸法安定性に関する優れた性能のため、非常に魅力的であり、これは、事故の状況において、溶融における安全マージンを相当に増加させ、それによって、炉心を保護するための応答時間を相当に増加させる可能性を示している。
【0009】
しかしながら、この魅力にも拘らず、SiCf/SiCセラミック金属被覆燃料要素の原子炉への組み込みは、実質的な技術的障壁が依然として取り除かれる必要があるため、何年にもわたって見込まれていない。これらの障壁のうちの1つは、すべての状況の下で、耐用期間を通じて、熱伝達流体に関してだけでなく、核分裂性物質および核分裂生成物に関しても、気密性を保持するセラミックの能力の無さ、または、少なくとも、この性質を実証する能力の無さに関係する。
【0010】
また、気密性のこの損失を防止するために、2つの多層金属被覆設計が想定されており、そこでは、事故の条件の下で金属被覆の堅牢性を確保することができるSiCf/SiC複合材料から作られた層が、モノリシックのSiCまたは金属のいずれかから作られ、すべての状況の下で、核分裂性物質の汚染および核分裂生成物への気密性を保証するように意図されている層と関連付けられる。
【0011】
「すべてセラミック」の金属被覆の場合、気密性の機能が基づかれるモノリシックSiC層は、概して、気体処理方法によって、または、粉末を焼結させることで、SiCf/SiC複合材料から作られる層と同時に、現場で準備される。この設計は、熱伝達にとって好ましい材料の連続体をもたらす一方で、経験から、このように得られた金属被覆が脆く、保守または事故の負荷の下で、セラミックが0.1%の程度であるその降伏強度に達すると、微小亀裂によってその気密性を失うことが分かっている。
【0012】
この理由のため、気密性の保持を伴う1%より大きい変形度合いを示す「複合材料/金属」のハイブリッド金属被覆を優先することが、発明者らが属するCommissariat a l’energie atomique et aux energies alternatives (CEA)によって決定されている。
【0013】
このような金属被覆の製造の間、それぞれがSiCf/SiC複合材料および金属である2つの層を関連付けるために実施される方法が、これらの層の間に結合をもたらすことが適切であり、この結合は最適な熱伝達を保証する。実際、結合の欠如の否定的な結果は、文献(L. Duquesne、Caracterisation thermique de structures composites SiC/SiC tubulaires pour applications nucleaires. Genie des procedes. Ecole nationale superieure d’arts et metiers - ENSAM、2015を参照されたく、以後において参考文献[1])から知られている。
【0014】
現在、証拠となる代替手段が無い場合、金属層がSiCf/SiC複合材料層の内面に位置付けられる、「複合材料/金属」のE-ATF金属被覆を製作するためのCEAにおける参考実験方法は、滑り公差を伴う「押し込み」嵌め合い方法である。この方法は、2つの事前に準備された単位管状構成要素を、軸方向の力(未公表データ)の効果の下で、調整された径方向の隙間(50μm未満)で関連付けることを目的としている。
【0015】
CVI(化学気相含浸)式の気体処理で金属基板へと直接的に数百時間にわたって繊維プリフォームを含浸させることから成る方法は、適切ではない。実際、これらの含浸状態は、1000℃に加熱された炉においてキャリヤガスとして使用される二水素によって搬送される塩素化された前駆物質を使用し、水以外の熱伝達流体で動作する原子炉(例えば、ヘリウムで冷却される高速中性子炉)に向けて意図された燃料金属被覆の製造のために使用させることができるタンタルまたはニオブなどの耐熱性金属に適用可能であるが、ジルコニウム合金およびチタンなどの「複合材料/金属」のE-ATF金属被覆の製造のために現在留められており、軽水炉に向けて意図された金属材料の場合には、受け入れることができない。
【0016】
最後に、SiCf/SiC複合材料の管の内面へと金属管をメッキすることへの、周囲温度においての、典型的には水-油の乳化物である加圧された流体の作用の下で、金属管を塑性的に変形させることから成るハイドロフォーミング関連の方法は、すぐに断念された。
【0017】
実際、この方法が、2つの層の間の結合の確立に反して、金属または金属合金の不可避的な弾性的な戻りを伴うという事実に加えて、この方法は、複合材料層を不可逆的に損傷させることになりやすい非常に高い圧力条件を必要とする。
【0018】
上記のことに鑑みて、本発明者らは、セラミックに基づいた管の内面、具体的には、「複合材料/金属」のE-ATF金属被覆を生成するためのSiCf/SiCの種類の複合材料から作られた管の内面を、金属化することを可能にする方法であって、大まかな形として、金属層をセラミックに基づいた管の内面と関連付けることについてこれまで提案された方法によって提起されたすべての欠点のない方法を提供するという目的を設定した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】L. Duquesne、Caracterisation thermique de structures composites SiC/SiC tubulaires pour applications nucleaires. Genie des procedes. Ecole nationale superieure d’arts et metiers - ENSAM、2015
【非特許文献2】T. Forgeronら、Experiment and Modelling of Advanced Fuel Rod Cladding Behavior Under LOCA Conditions: Alpha-Beta Phase Transformation Kinetics and EDGAR Methodology、Zirconium in the Nuclear Industry: Twelfth International Symposium、ASTM STP、2000、1354、256~278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、まさしくこのような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明は、第一に、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた管の内面に金属管をメッキするステップを少なくとも含む、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内面を金属化するための方法であって、メッキするステップは、金属管に内部圧力および加熱を適用することによる金属管のクリープを含み、クリープは、金属管の外面がセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内面をメッキするまで、金属管の外径における増加をもたらすことを特徴とする方法に関する。
【0022】
以前および以後において、「金属管」は、金属または金属合金から成る管を意味し、「セラミックマトリックス複合材料」は、繊維強化材で強化されたセラミックから成る材料を意味し、この強化材は任意選択で、具体的にはそれ自体がセラミック繊維から成る。
【0023】
さらに、クリープは、材料の不可逆的な変形を得るために、十分な時間にわたって適用される一定の応力の効果の下でのこの変形に対応することが、思い起こされる。
【0024】
したがって、本発明の方法では、クリープは、金属管を形成する金属または金属合金の弾性的な戻りが不可能となるように、金属管の外面がセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内面をメッキするまで、金属管を径方向に不可逆的に変形させることができる。したがって、金属層とセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の層との間の結合によって特徴付けられる二層構造は、特典として、最適な熱伝達が得られる。
【0025】
先に述べられているように、金属管のクリープで引き起こされるメッキは、この管への内部圧力および加熱の適用を含む。
【0026】
好ましくは、内部圧力は、金属管の等方加圧によって均一に、つまり、金属管のクリープがこの管のすべての点において同じとなるようにすべての方向に等しく、この管に適用される。
【0027】
典型的には、この等方加圧は気体の吸入によって行われ、その気体は、金属管を形成する金属または金属合金との反応または相互作用の危険性を防止するために、好ましくはヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスであるが、この金属またはこの金属合金の性質に応じて、および、金属化の後に得られた管状構造について求められる結果に応じて、他の気体も適切であり得る。
【0028】
金属管の加熱に関して、これはジュール効果によって有利に行われ、この効果は、金属管との直接的な結合によって、任意選択で、金属管の素早い加熱と、金属管が達する温度の正確な制御とを可能とする、金属管において電流を流すことで引き起こされるか、または、電磁誘導によって引き起こされる。
【0029】
金属管をあらかじめ加圧させ、次に、その管およびセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管によって形成された全体を炉において加熱させ、次に、金属管をその2つの端において閉じさせることも可能である。
【0030】
好ましくは、クリープを得るために金属管に適用される圧力および温度の条件だけでなく、これらの条件の適用時間も、この管の外面がセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内面をメッキすることで、2つの面の間の結合を確保するが、
- 一方で、金属管を形成する金属または金属合金の結晶構造および結晶学的組織を変えることのないように(過度に高い温度が金属または金属合金の粒子の拡大をもたらす可能性があるため)、および、
- 他方で、金属管に適用される圧力レベルによって引き起こされる径方向の応力がセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の損傷閾値を超えてはならず、この閾値が、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の降伏強度に実質的に対応することを意味する、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管を損傷させることのないように、
この管を径方向において十分に変形させることを可能とするような方法で選択されることになる。
【0031】
そのため、これらの条件は、金属管を形成する金属または金属合金の特性と、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管を形成するセラミックまたは複合材料の特性とに応じて選択されることになるが、これらの管の形状、具体的には、金属管の壁の厚さの他に、金属管の外面とセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内面との間に最初に存在し、メッキによって埋められることになる空間または径方向の隙間に応じても選択されることになる。
【0032】
この点において、金属管に適用される温度条件および圧力条件の他に、これらの条件の適用時間が、T. Forgeronら(Experiment and Modelling of Advanced Fuel Rod Cladding Behavior Under LOCA Conditions: Alpha-Beta Phase Transformation Kinetics and EDGAR Methodology、Zirconium in the Nuclear Industry: Twelfth International Symposium、ASTM STP、2000、1354、256~278;以後において参考文献[2])によって説明され、次に、検証されるか、または、必要とされる場合には、2つの管を表す試験片におけるクリープベンチを用いてクリープ試験を実施することで実験的に洗練されたものなど、クリープ則を用いて理論的に決定できることが、明示されている。
【0033】
本発明の範囲内で、金属管は、好ましくは、ジルコニウム、チタン、またはこれらの合金から作られるが、好ましいのはジルコニウム合金である。
【0034】
金属管がジルコニウム合金から作られる場合、この管が達せられる温度は、有利には0.25Tfから0.5Tfの間であり、好ましくは0.4Tfから0.5Tfの間であり、Tfは、この管を形成するジルコニウム合金の絶対融点である。さらに、先に言及されているように、ジルコニウム合金管に適用される圧力は、この圧力によって引き起こされる径方向の応力が、この管を径方向に変形させるのに十分である一方で、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の降伏強度未満となるように、適切に選択される。
【0035】
このようなジルコニウム合金の例には、ジルカロイ-4、Zirlo(商標)、またはM5(商標)の合金があり得、これらの合金は、熱中性子の異常に低い吸収、十分な機械的特性、および、高い温度条件の元であっても非常に優れた耐腐食性など、軽水炉に向けて意図された核燃料の金属被覆への本発明の金属化方法の適用にとって、数多くの利点を有する。
【0036】
しかしながら、金属管が、鋼鉄、ニッケルに基づいた合金、鉄-クロム-アルミニウムの種類の合金、等モルの比率でのいくつかの金属元素から成る高エントロピ合金、およびより一般的には、クリープによって変形することができ、金属管がメッキされなければならない内面における管のセラミックと熱機械的な観点において適合している任意の金属または金属合金など、先に言及されたもの以外の金属または金属合金から作られてもよい。
【0037】
本発明によれば、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管は、好ましくは、セラミックから作られる場合にはSiCから成る管、または、セラミックマトリックス複合材料から作られる場合には、セラミック繊維で強化されたSiCから作られる管のいずれかであり、これらのセラミック繊維は、任意選択で、具体的には、炭素繊維、SiC繊維、または酸化物繊維であり、特に好ましいのはSiC繊維である。
【0038】
使用され得るSiC繊維の例は、具体的には、NGS Advanced Fibersによって生産されるNicalon(商標)、Hi-Nicalon(商標)、およびHi-Nicalon(商標)type Sの繊維、または、UBE Industries, Ltd.によって生産されるTyranno(商標)、Tyranno(商標)SA、Tyranno(商標)SA3、もしくはTyranno(商標)SA4の繊維である。
【0039】
これらのうち、特に好ましいのは、それらの純度、結晶化度、および、中性子照射において非常に特有の安定性を与える準化学量論的組成(Si/C比≒1)のため、Hi-Nicalon(商標)type S、Tyranno(商標)SA3、またはTyranno(商標)SA4の繊維である。
【0040】
さらに、それ自体知られているように、強化材の繊維は、有利には熱分解炭素である相関材料で覆うことができ、相関材料の主な役目は、機械的応力の下で、受け入れている荷重伝達を確保すること、および、SiCマトリックスの弾性範囲を超えての急激な破裂を防止することである。
【0041】
本発明によれば、方法は、有利には、メッキするステップの前に、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管への金属管の挿入をさらに含む。この挿入は、例えば、金属管をセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管へと滑り込ませるだけで行うことができる。金属管が、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管の内径より小さい外径を有し、これによってこの挿入を可能とすることは、言うまでもない。
【0042】
本発明による金属化方法は、一方では、金属管の弾性的な戻りの危険性がなく、他方では、金属層の特性を悪化させやすいCVI炉通過動作を使用せずに、具体的にはジルコニウム合金から作られた金属管を、具体的にはSiCに基づいたセラミックマトリックス複合材料の管の内面をメッキする能力を提供する点において、管状核燃料金属被覆の製造に特に良好に適することが分かっている。
【0043】
したがって、本発明は、金属層で内面が覆われるセラミックマトリックス複合材料から作られる層を含む管状核燃料金属被覆を製造するための方法であって、上記において定められたような金属化方法の実施を少なくとも含むことを特徴とする方法にも関する。
【0044】
好ましくは、金属被覆は二層金属被覆であり、つまり、セラミックマトリックス複合材料の層が金属被覆の外面を形成し、金属層が金属被覆の内面を形成する。
【0045】
しかしながら、金属被覆が、セラミックマトリックス複合材料の層の外面または金属層の内面のいずれかに1つまたは複数の追加の層が存在する二層以外であってもよいことは、言うまでもない。
【0046】
典型的には、管状金属被覆は円形の断面を有するが、楕円形、長方形、正方形、または六角形の断面など、他の形状も可能である。
【0047】
好ましくは、金属被覆のセラミックマトリックス複合材料の層は、炭化ケイ素マトリックスおよび炭化ケイ素繊維から作られる層であり、この金属被覆の金属層は、ジルカロイ-4、Zirlo(商標)、またはM5(商標)の合金などのジルコニウム合金から作られる層である。
【0048】
本発明によれば、金属被覆は、好ましくは、軽水炉のための核燃料金属被覆であり、具板的には、加圧水型原子炉または沸騰水型原子炉のための核燃料金属被覆であり、好ましくは、加圧水型原子炉のための核燃料金属被覆であり、その場合、金属被覆は、典型的には、4メートルの長さと、600μmの厚さの壁とを有し、層は炭化ケイ素マトリックスから作られ、そのため、炭化ケイ素繊維は好ましくは400μmから500μmまでの厚さを有し、一方、金属層は好ましくは100μmから200μmまでの厚さを有する。
【0049】
本発明による金属化方法は、水素の例について、管状の液体もしくは固体のガスタンクの製造、または、管状の推進剤タンクの製造によく適してもおり、そのタンクの壁は、金属層で内面が覆われるセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた層を備える。
【0050】
したがって、本発明は、このようなタンクを製造するための方法であって、上記において定められたような金属化方法の実施を少なくとも含むことを特徴とする方法にも関する。
【0051】
好ましくは、タンク壁は二層の壁であり、つまり、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の層がタンクの外面を形成し、金属層が金属被覆の内面を形成する。
【0052】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図を参照する以下の追加の記載を読むことで明らかになる。
【0053】
この追加の記載は、本発明の主題の例示として提供されているだけであり、決してこの主題の限定として解釈されるべきではないことは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明による方法で実施されるクリープで引き起こされるメッキの原理の概略図であって、A部は、金属管がクリープによって変形される前のセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の管における金属管を長手方向の断面図で示しており、B部は、金属管のクリープ変形の後に得られた二層管状構造を示しており、この図では、管の寸法および相対的な比率は、理解のしやすさの目的のために、本発明による方法の実施の実際の状況において管によって呈され得る寸法および相対的な比率を表していない、概略図である。
【
図2】A部およびB部が、
図1のB部で示されているような二層管状構造の断層撮影法によって撮られた2つの画像に対応する図であり、A部は、その構造の一部分を断面図で示しおり、B部は、その構造の一部分を長手方向断面図示している、図である。
【
図3】SiC
f/SiC複合材料試験片におけるジルカロイ-4試験片のクリープによる0.70%の径方向変形を、これらの試験片の間に最初に存在する径方向の空間を埋めるようにして可能にすることができるクリープ条件についてのパラメータ調査の結果を示す図であって、この図では、y軸は、[数1]で記されるジルカロイ-4試験片の周方向変形の百分率に対応しており、x軸は、tで記され、秒単位で表されている、圧力条件および温度条件の適用時間に対応している図である。
【数1】
【
図4】管状のジルカロイ-4試験片だけにおいて行われたクリープ試験の前および後で、これらの試験片の径方向変形を評価することが目的とされた形状測定計量検査の結果を示す図であり、この図では、y軸は、φで記され、mmで表されている試験片の外径に対応しており、x軸は、Eで記され、mmで表されている、これらの試験片の径方向変形の長手方向の範囲に対応している、図である。
【
図5】第1の一連のクリープ試験の前および後で、管状のSiC
f/SiC複合材料試験片における管状のジルカロイ-4試験片の径方向変形を評価することが目的とされた形状測定計量検査の結果を示す図であり、この図では、y軸は、φで記され、mmで表されている、ジルカロイ-4試験片の外径に対応しており、x軸は、Eで記され、mmで表されている、これらの試験片の径方向変形の長手方向の範囲に対応している、図である。
【
図6】
図5と同様の図であるが、異なるクリープ条件で行われた第2の一連のクリープ試験についての図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
I-クリープで引き起こされるメッキの原理
図1が初めに参照され、
図1は、セラミックまたはセラミックマトリックス複合材料から作られた管12の内面14への、金属または金属合金から作られた管10のクリープで引き起こされるメッキの原理を概略的に示しており、管10および12は、この図では、長手方向の断面で示されている。
【0056】
図1のA部によって示されているように、外径d1の管10は、d1より大きい内径d2の管12へと事前に挿入されており、d1とd2との間に存在する隙間は、好ましくは、管10を管12へと滑り入れることによって挿入することを可能にする一方で、その後に管10のクリープによって容易に埋めることができるように選択される。したがって、隙間は、好ましくは約10ミクロンから1ミリメートルの間である。
【0057】
管10のクリープは、圧力、延いてはクリープが、この管のすべての点において同じとなるように、直線的な白い矢印によって表されているように、好ましくは等方的な圧力の管10の内面への適用の効果の下で得られる。この圧力の適用は、θが上にある波状の黒い矢印によって表されている管10の加熱と関連付けられる。
【0058】
クリープによって、管10は、その外径d1が増加することで、不可逆的に、つまり、管10を形成する金属または金属合金の可能な弾性的な戻りなしで、管10の外面16が管12の内面14をメッキする結果となるように、径方向に変形させられる。これにより、
図1のB部に示されているように、二層管状構造18が得られる。この構造は、
図2の断層撮影画像に示されているように、金属層とセラミックまたはセラミックマトリックス複合材料の層との間の結合によって特徴付けられる。
【0059】
クリープは、
図1のB部によっても示されているように、管10の伸長によって裏打ちされた管10の壁の厚さeを薄くすることで、金属または金属合金の流れを結果的にもたらす。
【0060】
II-クリープで引き起こされるメッキの実験的適用
以後において報告されているデータは、E-ATFプログラムの範囲内で準備されたジルカロイ-4から作られた管状試験片およびSiCf/SiC複合材料から作られた管状試験片について得られている。
【0061】
これらの試験片の寸法は、以後において表に示されている。
【0062】
【0063】
II.1-クリープ条件の選択
ジルカロイ-4試験片の外面とSiCf/SiC複合材料試験片の内面との間の結合を得るために適し得るクリープ条件は、公式を有する、参考文献[2]に記載されているクリープ則を用いて決定される。
【0064】
【0065】
ここで、[数3]は、等容粘塑性流れを考慮する周方向変形の速さを表している。
【0066】
【0067】
σθは周方向応力を表している。
Tは絶対温度を表している。
kBはボルツマン定数を表している。
Ai、Qi、およびniは、所与の材料について実験的に決定されたクリープ則の係数である。
iは相変態領域を表している(i=α、β)。
【0068】
周方向応力は、以下の[数5]の関係に従う粘塑性周方向変形[数4]に関連させられる。
【0069】
【0070】
【0071】
ここで、σθは上記で定められている。
Δpは、ジルカロイ-4試験片に適用される圧力差を表している。
[数6]は、ジルカロイ-4試験片の初期の平均直径を表している。
【0072】
【0073】
e0は、ジルカロイ-4試験片の壁の初期の厚さを表している。
【0074】
この法則の適用において、温度条件および圧力条件は、ジルカロイ-4試験片において均一に適用されると仮定されている。
【0075】
さらに、ジルカロイ-4試験片に課される周方向変形が、ジルカロイ-4試験片とSiCf/SiC複合材料試験片との間に初期に存在する径方向の隙間を埋めるように、問題になっている形状について0.70%でなければならないことが、前提条件として理解される。
【0076】
図3は、[数7]で記される周方向変形の百分率を、tで記される時間の関数として表している曲線の形態で、5つの異なる圧力/温度の対について得られた結果、つまり、
- 700℃の温度と関連付けられた1MPaの圧力、
- 700℃の温度と関連付けられた1.5MPaの圧力、
- 600℃の温度と関連付けられた2MPaの圧力、
- 720℃の温度と関連付けられた2.2MPaの圧力、および、
- 600℃の温度と関連付けられた3MPaの圧力
について得られた結果を示している。
【0077】
【0078】
この図に示されているように、3つの圧力/温度の対は、1000秒未満で0.70%の周方向変形を得ることを可能にしており、つまり、2.2MPa/720℃の対についての変形は42秒で得られ、3MPa/600℃の対および1.5MPa/700℃の対についての変形は800秒で得られる。
【0079】
しかしながら、3MPaの圧力を適用することは、SiCf/SiC複合材料試験片に、56MPaの径方向の応力、つまり、複合材料の降伏強度より大きい径方向の応力を課すことと等価であり、そのため試験片を損傷させる可能性があることが、単軸引張試験から分かった。
【0080】
一方、1.5MPaまたは2.2MPaの圧力を適用することは、SiCf/SiC複合材料試験片に、それぞれ28MPaおよび41MPaの径方向の応力、つまり、複合材料の降伏強度より小さい径方向の応力を課すことと等価であり、そのため試験片の損傷を防止することができる。
【0081】
そのため、一方で1.5MPaで、他方で2.2MPaの圧力を用いるクリープ条件が、以後において試験された。
【0082】
II.2-ジルカロイ-4試験片だけにおけるクリープ試験
クリープ試験が、これらの条件を実験的に立証するために、1.5MPaの圧力および700℃の温度を800秒間にわたって適用することで、ジルカロイ-4試験片だけにおいて、つまり、SiCf/SiC複合材料試験片の存在なしで実施された。
【0083】
これらの試験は、参考文献[2]に記載されているように、金属の管を把持するように適合された、クリープベンチを用いて行われた。圧力が不活性ガスの吸入によって試験片の内面に均一に適用され、試験片がジュール効果によって加熱された。試験片は、制御された雰囲気において作用することを可能にする包囲体に配置された。温度は、二色式高温計によって試験片の外面において測定され、熱電対を使用して試験片の内部で測定された。
【0084】
試験片の形状測定計量検査がクリープ試験の前後で行われた。
【0085】
この検査の結果が
図4に示されており、点線のプロファイルは、φで記され、mmで表されているクリープ試験前の試験片の外径の最小変化、平均変化、および最大変化にそれぞれ対応し、実線のプロファイルは、クリープ試験の後の試験片の同じ外径の最小変化、平均変化、および最大変化にそれぞれ対応する。
【0086】
この図は、クリープ試験の後に、ジルカロイ-4試験片の外径の1.2%の平均の増加が、おおよそ120mmの長手方向の範囲にわたって均一に得られたことを示しており、この範囲は、SiCf/SiC試験片の内壁と関連付けられるジルカロイ-4試験片の「使用可能部分」と称される一部分に対応する(上記の表に提示されているジルカロイ-4試験片およびSiCf/SiC複合材料試験片のそれぞれの長さを参照されたい)。
【0087】
II.3-SiCf/SiC複合材料試験片におけるジルカロイ-4試験片へのクリープ試験
上記の項目II.2に記載されている試験と同様にクリープ試験が、SiCf/SiC複合材料試験片へと挿入されたジルカロイ-4試験片において行われたことを除いて、行われた。
【0088】
以下の2つの一連の試験が行われた。
- 800秒間にわたって、700℃の温度と関連付けられた1.5MPaの圧力をジルカロイ-4試験片に適用することによる第1の一連。
- 1600秒間にわたって、720℃の温度と関連付けられた2.2MPaの圧力をジルカロイ-4試験片に適用することによる第2の一連であって、実際には、
図3は、この圧力/温度の対について、42秒間が、求められる径方向変形を得るのに十分であることを示しているが、より長い時間が、安心のために第2の一連の試験では使用された。
【0089】
ここでもまた、試験片の形状測定計量検査がクリープ試験の前後で行われた。
【0090】
第1の一連の試験(1.5MPa/700℃/800s)
この第1の一連の試験における計量検査の結果が
図5に示されており、点線のプロファイルは、φで記され、mmで表されているクリープ試験前のジルカロイ-4試験片の外径の最小変化、平均変化、および最大変化にそれぞれ対応し、実線のプロファイルは、クリープ試験の後の試験片の同じ直径の平均変化に対応する。この図では、ジルカロイ-4試験片の外径の変化は、それらの使用可能部分を含むこれらの試験片の全体の長さについて示されている。
【0091】
この図は、クリープ試験に続いて、ジルカロイ-4試験片の0.97%の径方向変形が、SiCf/SiC複合材料試験片によって覆われていないこれらの試験片の一部分について得られており、これは、使用可能部分におけるジルカロイ-4試験片のクリープで引き起こされるメッキが実際に実施されたことを示唆している。
【0092】
図5は、ジルカロイ-4試験片のクリープによる径方向変形が、関連するクリープ条件の下で、SiC
f/SiC複合材料試験片において発生していないことを示しており、試験片の外径はクリープ試験の前と後とで同じであった。
【0093】
第2の一連の試験(2.2MPa/720℃/1600s)
この第2の一連の試験における計量検査の結果が
図6に示されており、ここでも、点線のプロファイルは、クリープ試験前のジルカロイ-4試験片の外径φの最小変化、平均変化、および最大変化にそれぞれ対応し、実線のプロファイルは、クリープ試験の後の試験片の同じ外径の平均変化に対応する。
【0094】
この図は、クリープ試験に続いて、ジルカロイ-4試験片の最大27%の径方向変形が、SiCf/SiC複合材料試験片によって覆われていないこれらの試験片の一部分について得られており、これは、使用可能部分におけるジルカロイ-4試験片のクリープで引き起こされるメッキが実際に実施されたことを同じく示唆している。
【符号の説明】
【0095】
10 管
12 管
14 内面
16 外面
18 二層管状構造
d1 管10の外径
d2 管12の内径
e 壁の厚さ
θ 加熱
【外国語明細書】