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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091626
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】火災予兆検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20240627BHJP
   G08B 17/117 20060101ALI20240627BHJP
   G01N 5/02 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
G08B17/10
G08B17/117
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061282
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2022206287の分割
【原出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 成紀
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AA18
5C085AB02
5C085AC03
5C085CA08
(57)【要約】
【課題】監視エリアの環境空気が異常状態となったときに、要因を識別して発報することのできる火災予兆検知システムを得る。
【解決手段】火災予兆検知信号を出力する火災予兆検知部と、監視エリアで発生したニオイに対応する物理量をニオイ検知信号として出力するニオイ検知部と、監視エリアの環境空気が通常状態から異常状態に変化したことを発報する発報部と、火災予兆検知信号に基づいて発報部による発報を制御する制御部とを備え、制御部は、冷媒配管内のオイルが空調機の冷媒ガスとともにミスト状となって監視エリア内に漏洩する冷媒ガス漏洩を特定要因として識別するために、特定要因が発生したときのニオイ検知信号を特定要因ニオイ検知信号としてあらかじめ記憶しておき、ニオイ検知信号として特定要因ニオイ検知信号が検出された場合には、特定要因が発生したことを識別可能な情報を発報部から発報させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災予兆検知信号を出力する火災予兆検知部と、
監視エリアで発生したニオイに対応する物理量をニオイ検知信号として出力するニオイ検知部と、
前記監視エリアの環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化したことを発報する発報部と、
前記火災予兆検知部からの前記火災予兆検知信号に基づいて前記発報部による発報を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記異常状態の原因となる複数の要因の中の特定要因を識別するために、前記特定要因が発生したときの前記ニオイ検知信号を特定要因ニオイ検知信号としてあらかじめ記憶しておき、
前記ニオイ検知部から出力される前記ニオイ検知信号をモニタし、前記ニオイ検知信号として前記特定要因ニオイ検知信号が検出された場合には、前記特定要因が発生したことを識別可能な情報を前記発報部から発報させ、
前記特定要因は、冷媒配管内のオイルが空調機の冷媒ガスとともにミスト状となって前記監視エリア内に漏洩する冷媒ガス漏洩であり、
前記制御部は、
前記冷媒ガス漏洩が発生したときの前記ニオイ検知信号を前記特定要因ニオイ検知信号としてあらかじめ記憶しており、
前記ニオイ検知部から出力される前記ニオイ検知信号をモニタし、前記冷媒ガス漏洩が発生したか否かを識別可能な情報を前記発報部から発報させる
火災予兆検知システム。
【請求項2】
前記ニオイ検知部は、持ち運び可能なハンディタイプとして構成される
請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境空気が通常状態から異常状態に変化したことを検知し、火災を未然に防ぐ火災予兆検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災予兆センサのように高感度な煙センサによって室内環境の異常を検知し、火災を未然に防ぐ火災予兆検知システムがある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に係る火災予兆検知システムは、監視エリアの空気を多数のサンプリング孔から吸引し、監視エリア全体の環境空気を光学的に監視するシステムである。
【0003】
火災予兆センサは、通常の環境変化を正確に捉える高感度レベルによって監視を行っており、電気火災の可能性がある異常などをいち早く検出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】能美防災株式会社 ホームページ、火災予兆検知システム(超高感度煙検知システム)(URL: https://www.nohmi.co.jp/product/yochou/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
室内空気は、目には見えない塵埃など、多くの浮遊物が存在している。非特許文献1に係る火災予兆検知システムは、この空気の変化を連続して正確に監視することにより、日常と異なった環境状態をいち早く検知することを可能としている。
【0006】
しかしながら、火災予兆センサのように高感度な煙センサによって室内環境の異常を検知した場合には、検知したものが煙であっても目視確認が難しい。このため、現地対応者にとっては、異常検知の原因が発煙によるものなのか、その他の要因によるものであるのかがわかりにくく、要因特定に時間を要することがある。
【0007】
火災予兆センサによる異常検知事例を見ると、52%は発煙事故であり、20%は空調機冷媒ガス漏洩によるものである。空調機冷媒ガスが漏洩した場合には、冷媒配管内のオイルが冷媒ガスとともにミスト状になって漏洩するため、火災予兆センサは、このオイルミストの漏洩を検知しているものと考えられている。
【0008】
従って、火災予兆センサにより異常が検知された場合に、その要因特定を行うことができる火災予兆検知システムが強く望まれる。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、監視エリアの環境空気が異常状態になったことが火災予兆として検知された際に、異常状態となった特定要因を識別して発報することのできる火災予兆検知システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る火災予兆検知システムは、火災予兆検知信号を出力する火災予兆検知部と、監視エリアで発生したニオイに対応する物理量をニオイ検知信号として出力するニオイ検知部と、監視エリアの環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化したことを発報する発報部と、火災予兆検知部からの火災予兆検知信号に基づいて発報部による発報を制御する制御部とを備え、制御部は、異常状態の原因となる複数の要因の中の特定要因を識別するために、特定要因が発生したときのニオイ検知信号を特定要因ニオイ検知信号としてあらかじめ記憶しておき、ニオイ検知部から出力されるニオイ検知信号をモニタし、ニオイ検知信号として特定要因ニオイ検知信号が検出された場合には、特定要因が発生したことを識別可能な情報を発報部から発報させ、特定要因は、冷媒配管内のオイルが空調機の冷媒ガスとともにミスト状となって監視エリア内に漏洩する冷媒ガス漏洩であり、制御部は、冷媒ガス漏洩が発生したときのニオイ検知信号を特定要因ニオイ検知信号としてあらかじめ記憶しており、ニオイ検知部から出力されるニオイ検知信号をモニタし、冷媒ガス漏洩が発生したか否かを識別可能な情報を発報部から発報させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、監視エリアの環境空気が異常状態になったことが火災予兆として検知された際に、異常状態となった特定要因を識別して発報することのできる火災予兆検知システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1における火災予兆検知システムの概略構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係るニオイ検知部により検知されるニオイのパターンを例示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1における発報制御部により実行される一連処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の火災予兆検知システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る火災予兆検知システムは、火災予兆検知情報とニオイ検知情報とを併用し、特定要因のニオイパターンをあらかじめ記憶しておき、火災予兆検知情報が得られた際のニオイ検知情報が特定要因のニオイパターンであるか否かを判断することで、特定要因が発生したことを識別可能とする構成を備えていることを技術的特徴としている。
【0014】
なお、以下の実施の形態1においては、特定要因が、冷媒配管内のオイルが空調機の冷媒ガスとともにミスト状となって前記監視エリア内に漏洩する冷媒ガス漏洩である態様を具体例として、詳細に説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における火災予兆検知システムの概略構成図である。本実施の形態1に係る火災予兆検知システム1は、火災予兆検知部10、サンプリング管20、吸引ファン30、ニオイ検知部40、制御部50、および発報部60を備えて構成されている。
【0016】
サンプリング管20は、火災の監視エリアである例えば文化財の、天井等の屋内に張り巡らせているとともに、監視エリアの空気を吸引するためのサンプリング孔21が設けられている。
【0017】
高感度な煙センサに相当する火災予兆検知部10の後段に設けられた吸引ファン30は、サンプリング管20内の空気を吸引し、火災予兆検知部10に取り込む役目を果たす。この吸引ファン30の働きにより、火災予兆検知部10は、サンプリング管20に設けられた複数のサンプリング孔21を介して、監視エリアの環境空気を取得し、取得した環境空気を光学的に監視する。
【0018】
さらに、火災予兆検知部10は、監視結果として、環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化した場合に火災予兆検知信号を出力する。例えば、火災予兆検知部10は、取得した環境空気に煙の粒子が含まれているか否かを感知することで、煙発生の有無を判断でき、煙が発生したと判断した場合に火災予兆検知信号を出力する。
【0019】
また、上述した[発明が解決しようとする課題]において説明したように、火災予兆検知部10は、監視エリアにおいて空調機冷媒ガスが漏洩した場合には、冷媒配管内のオイルが冷媒ガスとともにミスト状になって漏洩するため、このオイルミストの漏洩を検知し、火災予兆検知信号を出力する。
【0020】
なお、吸引ファン30の位置は、図1では火災予兆検知部10の後段であるが、このような位置には限定されず、吸引ファン30を火災予兆検知部10の前段に設けることも可能である。すなわち、監視エリアの空気を複数のサンプリング孔21から吸引し、火災予兆検知部10に供給できる構成であればよい。
【0021】
ニオイ検知部40は、監視エリア内における周囲のニオイをモニタしている。本実施の形態1においては、トランスデューサおよび複数種類の感応膜を備えた水晶振動子式のセンサを、ニオイ検知部40の一例として採用する。また、以下の説明においては、一例として、16種類の感応膜がニオイ検知部40に備えられているものとする。
【0022】
ここで、感応膜とは、ニオイ成分を吸着すると感応するセンサである。感応膜は、水晶基板の面上に、電極とともに設けられており、電極に電圧が加えられることにより振動する。この感応膜の振動周波数は、ニオイ成分が吸着すると、吸着したニオイ成分の重量に応じて変化する。
【0023】
トランスデューサは、感応膜に生ずる振動周波数の変化を検知し、この変化量を、デジタル処理可能な形式のデータに変換する。
【0024】
ニオイ検知部40は、各感応膜に応じたニオイの検出値を、規定の周期によって取得することにより、検出値の時間的な変化をあらわす波形を生成する。本実施の形態1では、16種類の異なる感応膜がニオイ検知部40に備えられている。
【0025】
従って、ニオイ検知部40は、感応膜の種類に対応して16チャネルの波形を生成し、ニオイ検知信号として出力することができる。この16チャネルの波形を組み合わせたパターンを、ニオイのパターンまたは単にパターンと称する。
【0026】
図2は、本開示の実施の形態1に係るニオイ検知部40により検知されるニオイのパターンを例示した説明図である。図2では、ニオイのパターンとして、以下のパターンA、パターンB、パターンCの3種に関する検知結果を示している。
【0027】
パターンA:監視エリアにおいて、サーバー、生産設備障害による発煙が発生したときの16チャネルのニオイ検知信号によるパターン。
パターンB:監視エリアにおいて、空調機障害による発煙が発生したときの16チャネルのニオイ検知信号によるパターン。
パターンC:監視エリアにおいて、空調機冷媒ガス漏洩が発生したときの16チャネルのニオイ検知信号によるパターン。
【0028】
図2において、ニオイ検知部40は、パターンAおよびパターンBによる発煙が発生したときのニオイに関しては、16チャネルのうち1番、2番のチャネルが大きく反応し、その他のチャネルについては中程度、もしくは小さく反応するパターンを得ることができている。
【0029】
また、ニオイ検知部40は、パターンCによる空調機冷媒ガス漏洩が発生したときのニオイに関しては、パターンAおよびパターンBと比較すると、16チャネルのうち1番、2番のチャネルが小さく反応し、その一方で、5番、15番、16番のチャネルが大きく反応するパターンを得ることができている。
【0030】
従って、パターンCを、パターンAおよびパターンBと明確に識別でき、発煙と空調機冷媒ガス漏洩とを識別することができる。このように、ニオイ検知部40は、発煙と空調機冷媒ガス漏洩とを識別するために適した16種類の異なる感応膜を備えることで、それぞれのニオイを識別可能なパターンを有するニオイ検知信号を出力することができる。
【0031】
また、監視環境に応じて、特定したい所望の要因に合わせて、適切な複数の感応膜の組合せを選定することで、ニオイ検知部40は、所望の要因を容易に識別することができるニオイ検知信号を出力することができる。
【0032】
制御部50は、発報制御部51および記憶部52を備えている。発報制御部51は、火災予兆検知部10から出力される火災予兆検知信号、およびニオイ検知部40から出力されるニオイ検知信号に基づいて、発報部60による発報を制御するコントローラである。
【0033】
また、記憶部52には、特定要因が発生したときの複数種類の感応膜によるニオイのパターンが特定要因ニオイパターンとしてあらかじめ記憶されている。ここで、本実施の形態1では、図2に示したパターンC、すなわち空調機冷媒ガス漏洩が発生したときの16チャネルのニオイ検知信号によるパターンが、「特定要因ニオイパターン」として記憶部52に記憶されている場合について説明する。
【0034】
火災予兆検知部10は、パターンAによる発煙、パターンBによる発煙、およびパターンCによる空調機冷媒ガス漏洩のいずれが発生した場合にも、火災予兆検知信号を出力する。従って、発報制御部51は、火災予兆検知信号がオン状態となっただけでは、パターンA、パターンB、パターンCの要因を識別することができない。
【0035】
そこで、発報制御部51は、異常状態の原因となる複数の要因の中から特定要因を識別するために、ニオイ検知部40から出力されたニオイ検知信号を活用する。発報制御部51は、火災予兆検知部10から火災予兆検知信号が出力された際に、ニオイ検知部40から出力されるニオイ検知信号をモニタする。
【0036】
発報制御部51は、ニオイ検知部40から得られたニオイのパターンであるニオイ検知信号と、記憶部52に記憶された特定要因ニオイパターンとを比較し、それぞれのチャネルでの出力値の相違が許容範囲内であるか否かを判定する。両パターンの比較結果から、発報制御部51は、16チャネル全てで出力値の相違が許容範囲内である場合には、ニオイ検知信号として特定要因ニオイパターンが検出されたと判断する。
【0037】
この結果、発報制御部51は、火災予兆検知部10から火災予兆検知信号が出力されたことを示す情報とともに、ニオイ検知信号として特定要因ニオイパターンが検出された場合には、特定要因が発生したことを識別可能な情報を、発報部60を介して発報させることができる。
【0038】
なお、上述した具体例では、空調機冷媒ガス漏洩が発生したときの16チャネルのニオイ検知信号によるパターンが、「特定要因ニオイパターン」として記憶部52に記憶され、空調機冷媒ガス漏洩を特定する場合について説明したが、発煙、あるいはその他の要因についても、「特定要因ニオイパターン」として記憶部52に記憶させておくことで、所望の要因を特定することが可能となる。
【0039】
また、複数の要因について、それぞれ「特定要因ニオイパターン」として記憶部52に記憶させておくことで、複数の要因のそれぞれを識別することも可能である。
【0040】
なお、発報制御部51は、ニオイ検知部40から得られたニオイのパターンと、記憶部52にあらかじめ記憶された特定要因ニオイパターンとを比較する手法の代わりに、AI(Artificial Intelligence)による機械学習により要因を識別する手法を採用することも可能である。
【0041】
機械学習を用いる場合には、ニオイ検知部40を用いてあらかじめ生成された種々のニオイのパターンを教師データとして、識別を行いたいそれぞれの特定要因に関して学習を行わせることで得られる機械学習判別機能を、発報制御部51にあらかじめ持たせておく。
【0042】
そして、発報制御部51は、監視時においてニオイ検知部40から出力されるニオイのパターンを入力パラメータとして、機械学習判別機能を用いて、ニオイのパターンに応じた特定要因を識別することが可能となる。
【0043】
発報部60は、火災警報を発報する警報機であり、アンプおよびスピーカを含んで構成することができる。発報制御部51は、火災予兆検知部10から火災予兆検知信号を受信した場合には、環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化したことを示す情報を発報部60から発報させることができる。
【0044】
さらに、発報制御部51は、ニオイ検知部40から受信したニオイ検知信号として、特定要因ニオイパターンが検出された場合には、特定要因が発生したことを識別可能な情報を発報部60から発報させることができる。
【0045】
なお、発報部60には、無線通信または有線通信を可能にする通信機器が備えられていてもよい。通信機器を備えている場合には、発報部60は、発報すべき情報を、遠方に設置されている図示しない外部装置、設備管理者等が所有している携帯端末等に送信することができる
【0046】
図3は、本開示の実施の形態1における発報制御部51により実行される一連処理の流れを示したフローチャートである。ステップS301において、発報制御部51は、火災エリアの監視時において、火災予兆検知部10から出力される火災予兆検知信号をモニタする。
【0047】
次に、ステップS302において、発報制御部51は、火災予兆検知信号がオンになったか否かを判断し、オンになったと判断した場合には、ステップS303に進み、オンになっていないと判断した場合には、ステップS301およびステップS302の処理を繰り返す。
【0048】
ステップS303に進むと、発報制御部51は、ニオイ検知部40から出力されるニオイ検知信号をモニタし、ニオイ検知信号として、記憶部52に記憶されている特定要因ニオイパターンが検出されたか否かを判断する。
【0049】
発報制御部51は、ニオイ検知信号として特定要因ニオイパターンが検出されたと判断した場合にはステップS304に進み、ニオイ検知信号として特定要因ニオイパターンが検出されなかったと判断した場合にはステップS305に進む。
【0050】
特定ニオイパターンとして、複数種類の要因に関するニオイパターンを記憶部52にあらかじめ記憶させておくことで、発報制御部51は、複数種類の要因を識別することが可能となる。
【0051】
ステップS304に進むと、発報制御部51は、火災予兆検知信号がオン状態となったことから環境空気が異常状態になったことを発報するとともに、その要因として特定要因が発生したことを、発報部60を介して発報させ、一連処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS305に進むと、発報制御部51は、火災予兆検知信号がオン状態となったことから環境空気が異常状態になったことを発報部60を介して発報させ、一連処理を終了する。なお、発報制御部51は、ステップS305において、火災予兆検知信号がオン状態となったことから環境空気が異常状態になった要因として、特定要因以外が発生したことをさらに発報させることも可能である。
【0053】
以上のように、実施の形態1によれば、火災予兆検知情報とニオイ検知情報とを併用し、要因分析を行いたい特定要因のニオイパターンをあらかじめ記憶しておき、火災予兆検知情報が得られた際のニオイ検知情報が特定要因のニオイパターンであるか否かを判断する構成を備えている。
【0054】
この結果、火災予兆検知情報が得られた際に、監視エリアの環境空気が異常状態に変化したこととともに、その要因が特定要因であるか否かを識別可能とする報知を行うことができる火災予兆検知システムを実現できる。すなわち、種々の監視エリアの設置環境に応じて、識別したい特定要因を、ニオイのパターンに基づいて識別することが可能となる。
【0055】
特定要因の具体例としては、空調機冷媒ガス漏洩、薬品溶剤等による発煙などが挙げられ、これらの特定要因をニオイのパターンに基づいて特定することができる。
【0056】
目視確認では、異常検知の原因が発煙によるものなのか、その他の要因によるものであるのかがわかりにくく、要因特定に時間を要していた。これに対して、上述した効果を実現できる本実施の形態1に係る火災予兆検知システムを適用することで、火災予兆検知部により異常検知された際の原因を、ニオイパターンに基づいて容易に識別することが可能となる。
【0057】
なお、ニオイ検知部に関しては、監視エリアに常設しておく代わりに、現地対応者等が持ち運び可能なハンディタイプの構成を採用することも可能である。
【0058】
また、上述した実施の形態1では、ニオイ検知部として、複数種類の感応膜を備えており、各感応膜によって検知されたニオイのパターンをニオイ検知信号として出力する水晶振動子式のセンサを採用する場合を具体例として説明したが、本開示に係るニオイ検知部は、このような複数種類の感応膜を備えた構成を有するセンサに限定されるものではない。
【0059】
例えば、ニオイ検知部として、以下のような半導体式センサを用いることも可能である。半導体式センサとは、半導体表面におけるニオイ分子の吸着と表面反応によって半導体の抵抗値が変化することを利用する方式を採用するものである。センサ部の上面には、感ガス材料である酸化物半導体SnO(酸化錫)がアルミナ基板上に形成される。一方、センサ部の下面には、加熱用のヒータが取り付けられる。
【0060】
清浄な空気中に置かれた場合、感ガス素子の表面上に酸素が吸着する。酸素は、電子親和力があるため、感ガス素子中の電子をとらえる。このとき、電子の流れが妨げられることから、感ガス素子内部の電気抵抗が増大する。
【0061】
一方、臭気ガス中に置いた場合、感ガス素子の表面で臭気ガスと吸着酸素との酸化反応が起こり、吸着酸素が取り去られる。そのため、電子は動きやすくなり、電気抵抗が低下する。
【0062】
ニオイ分子の多くは、還元性のガス体であり、ガスが感ガス素子に接触することで電気抵抗が低下する。従って、大気中に含まれるニオイ分子に応じて電気抵抗が変化するので、電気抵抗の変化を電圧に変換した値をニオイ検知信号として用いることで、ニオイを電気的に識別して検出できる。
【0063】
すなわち、本開示に係るニオイ検知部としては、監視エリアで発生したニオイに対応する物理量をニオイ検知信号として出力することができる任意の方式を適用することが可能であり、設置現場、用途等に応じて所望の方式のニオイ検知部を採用することができる。また、複数方式のニオイ検知部を併用することも可能である。
【0064】
なお、複数種類の感応膜を備えた水晶振動子式のセンサの代わりに、「半導体式センサ」をニオイ検知部40として用いる場合には、「特定要因ニオイパターン」の代わりに「特定要因ニオイ検知信号」が記憶部52に記憶されることとなる。
【0065】
複数の感応膜を用いる方式では、感応膜の種類を増やし、より多くのチャネル数に基づくニオイのパターンを採用することで、ニオイの識別力を向上させることができる。また、半導体式センサを用いた場合には、ヒータにより加熱されているため、湿度の影響を極めて少なくできるメリットがある。
【0066】
また、上述した実施の形態1では、火災予兆検知部として、監視エリアの空気を複数のサンプリング孔から吸引することで監視エリアの環境空気を光学的に監視し、環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化した場合に火災予兆検知信号を出力する検知方式を使用する場合を具体例として説明したが、本開示に係る火災予兆検知部は、このような検知方式に限定されるものではない。
【0067】
本開示に係る火災予兆検知部としては、監視エリアの環境空気が通常状態を示す許容範囲から逸脱して異常状態に変化した場合に火災予兆検知信号を出力することができる機能を有するものであれば、適用可能である。例えば、自動火災報知設備で用いられる煙感知器、熱感知器などを火災予兆検知部として適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 火災予兆検知システム、10 火災予兆検知部、20 サンプリング管、21 サンプリング孔、30 吸引ファン、40 ニオイ検知部、50 制御部、51 発報制御部、52 記憶部、60 発報部。
図1
図2
図3