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特開2024-91642荷電粒子銃を操作する方法、荷電粒子銃、および荷電粒子ビーム装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091642
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】荷電粒子銃を操作する方法、荷電粒子銃、および荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/073 20060101AFI20240628BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20240628BHJP
   H01J 37/065 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01J37/073
H01J37/09 Z
H01J37/065
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024045118
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2022546500の分割
【原出願日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】16/777,276
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー ディーター
(57)【要約】
【課題】荷電粒子銃(102)を操作する方法を提供する。
【解決手段】この方法は、荷電粒子銃内にエミッタ(122)を第1のエミッタ電位で用意すること、および荷電粒子銃内にトラップ電極(142)を第1の電極電位で用意することであり、第1のエミッタ電位および第1の電極電位が、エミッタおよびトラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように供給される、用意することと、トラップ電極において静電トラップ電界を生成するために、トラップ電極を第1の電極電位から第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることと、トラップ電極を第1の電極電位から第2の電極電位に切り替えた後に、エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えることとを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子銃を操作する方法であって、
前記荷電粒子銃内にエミッタを第1のエミッタ電位で用意すること、および前記荷電粒子銃内にトラップ電極を第1の電極電位で用意することであり、前記第1のエミッタ電位および前記第1の電極電位が、前記エミッタおよび前記トラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように供給される、用意することと、
前記トラップ電極において静電トラップ電界を生成するために、前記トラップ電極を前記第1の電極電位から前記第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることと、
前記トラップ電極を前記第1の電極電位から前記第2の電極電位に切り替えた後に、前記エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記静電放出電界をオンに切り替えることが、
前記エミッタを前記第1のエミッタ電位から動作エミッタ電位に切り替えること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アノードを第1のアノード電位で用意することと、
前記荷電粒子銃の銃ハウジングを第1のハウジング電位で用意することと、
前記トラップ電極を切り替えた後に、前記アノードを、前記荷電粒子銃の動作アノード電位に切り替えることであり、前記動作アノード電位が、前記第1のアノード電位と異なる、切り替えることと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のエミッタ電位、前記第1の電極電位、前記第1のアノード電位、および前記第1のハウジング電位が、保守中のそれぞれの電位に対応する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トラップ電極の切り替えにより、前記銃ハウジング内の粒子が、前記トラップ電極に引き付けられ、前記エミッタまたは前記銃チャンバ内の他の構成要素から離れる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の電極電位が、前記エミッタを前記動作エミッタ電位に切り替えた後に、前記トラップ電極に粒子をトラップするための電界強度を前記トラップ電極に供給する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記静電トラップ電界が、前記エミッタにおける前記静電放出電界をオンに切り替える前に、および前記エミッタにおける前記静電放出電界をオンに切り替えた後に第1の方向を有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記荷電粒子銃の相対電位を以下のように用意することができ、
前記動作エミッタ電位が、-0.3kV~-2kVであり、抽出器電極の電位が、+5kV~+10kVであり、前記動作アノード電位が、+10kV~+100kVであり、サプレッサ電極の電位が、-0.6kV~-2.3kVであり、試料の電位が接地であり、前記相対電位が、一般に、シフトされ得る、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃であって、
銃ハウジングと、
前記銃ハウジング内に設けられたエミッタであり、前記エミッタが、軸に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成される、エミッタと、
前記エミッタに接続されたエミッタ電源と、
前記銃ハウジング内に設けられたトラップ電極であり、前記トラップ電極が前記軸を少なくとも部分的に囲む、トラップ電極と、
前記トラップ電極に接続されたトラップ電源と、
前記銃ハウジングの動作中、前記トラップ電極の静電界を前記軸からシールドするシールド要素と
を含む、荷電粒子銃。
【請求項10】
前記銃ハウジング内の抽出器電極と、
前記銃ハウジング内のサプレッサ電極と、
少なくとも部分的に前記銃ハウジング内にあるアノードと
をさらに含む、請求項9に記載の荷電粒子銃。
【請求項11】
前記シールド要素が、前記トラップ電極と前記軸との間に少なくとも部分的に設けられた前記アノードによって提供される、請求項10に記載の荷電粒子銃。
【請求項12】
プロセッサと、前記プロセッサによって実施されたとき、前記荷電粒子銃に、請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行させる命令を格納するメモリとを含むコントローラ
をさらに含む、請求項9~11のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項13】
前記トラップ電極が回転対称である、請求項9~12のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項14】
前記トラップ電極が、前記軸と平行な断面に曲面を有する、請求項9~13のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項15】
前記トラップ電極は、保守、立ち上げ、および動作中、前記エミッタの異なる電圧に対して、前記静電界が同じ極性のままであるように成形される、請求項9~14のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項16】
前記トラップ電極が、20mm以下の曲率半径を有する、請求項9~15のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項17】
前記軸に沿った前記トラップ電極と異なる位置にさらなるトラップ電極
をさらに含む、請求項9~16のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項18】
前記エミッタが電界エミッタである、請求項9~17のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項19】
請求項9~18のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃と、
荷電粒子を試料上に誘導するための荷電粒子ビームカラムと
を含む、荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、荷電粒子ビーム装置の粒子トラップ、詳細には、超高真空(UHV)銃チャンバの粒子トラップに関する。さらに、実施形態は、荷電粒子銃または銃チャンバおよび荷電粒子ビーム装置に関する。実施形態はさらに、荷電粒子ビーム装置の洗浄、例えば、荷電粒子ビーム装置の荷電粒子銃または銃チャンバの洗浄に関する。実施形態は、詳細には、荷電粒子銃を操作する方法、荷電粒子銃、および荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、限定はしないが、電子ビーム検査(EBI)、生産中の半導体装置の限界寸法(CD)測定、生産中の半導体装置の欠陥レビュー(DR)、リソグラフィの露光システム、検出装置、および試験システムを含む、複数の工業分野において多くの役割を有する。したがって、マイクロメートルおよびナノメートルスケール内の試料の構造化、試験、および検査への高い要望がある。マイクロメートルおよびナノメートルスケールのプロセス制御、検査、または構造化は、電子顕微鏡などの荷電粒子ビーム装置で生成および集束された荷電粒子ビーム、例えば、電子ビーム、を用いて行うことができる。荷電粒子ビームは、短い波長のため、例えば、光子ビームと比較して優れた空間分解能を提供する。
【0003】
この分野での、すなわち、工業規格による荷電粒子ビーム装置の運用では、システムの立ち上げおよびシステムの保守が考慮されなければならない。特に、システムの全体的なスループットは、ダウンタイムによって影響される。その結果、システムの運用の速くて信頼できる開始は有益である。最初の開始または保守の後では、注意深い洗浄の後でさえ、荷電粒子ビーム装置、例えば、銃チャンバに、塵埃粒子が残っていることがある。特に、銃チャンバでは、粒子が、エミッタのアーク放電および破壊を引き起こす可能性がある。
【0004】
現在、多くの時間を要する洗浄が行われており、エミッタにバイアスをかけるいくつかの試みが行われる場合がある。アークの後、銃チャンバを再び開けることができ、再検査して、残った粒子を発見し除去することができる。
【0005】
上述に鑑みて、荷電粒子ビーム装置の荷電粒子銃または銃チャンバを操作する改善された方法、ならびに改善された荷電粒子銃および改善された荷電粒子ビーム装置は有益である。
【発明の概要】
【0006】
上述に照らして、独立請求項による荷電粒子銃を操作する方法、荷電粒子銃、および荷電粒子ビーム装置が提供される。さらなる態様、利点、および特徴が、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかである。
【0007】
1つの実施形態によれば、荷電粒子銃を操作する方法が提供される。この方法は、荷電粒子銃内にエミッタを第1のエミッタ電位で用意すること、および荷電粒子銃内にトラップ電極を第1の電極電位で用意することであり、第1のエミッタ電位および第1の電極電位が、エミッタおよびトラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように供給される、用意することと、トラップ電極において静電トラップ電界を生成するために、トラップ電極を第1の電極電位から第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることと、トラップ電極を第1の電極電位から第2の電極電位に切り替えた後に、エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えることとを含む。
【0008】
1つの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃が提供される。荷電粒子銃は、銃ハウジングと、銃ハウジング内に設けられたエミッタであり、エミッタが、軸に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成される、エミッタと、エミッタに接続されたエミッタ電源と、銃ハウジング内に設けられたトラップ電極であり、トラップ電極が軸を少なくとも部分的に囲む、トラップ電極と、トラップ電極に接続されたトラップ電源と、銃ハウジングの動作中、トラップ電極の静電界を軸からシールドするシールド要素とを含む。
【0009】
1つの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる荷電粒子銃と、荷電粒子を試料上に誘導するための荷電粒子ビームカラムとを含む。
【0010】
実施形態はまた、開示される方法を実行するための装置に関し、各々の記載の方法の態様を実行するための装置部分を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素によって、適切なソフトウェアによりプログラムされたコンピュータによって、2つのものの任意の組合せによって、または任意の他の方法で実行され得る。その上、本開示による実施形態はまた、記載の装置を操作するための方法に関する。この方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法の態様を含む。
【0011】
本開示の上述で列挙した特徴を詳細に理解できるように、上述で簡潔に要約した本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られる。添付の図面は、本開示の実施形態に関し、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本明細書に記載の実施形態による、粒子をトラップするための電極を含む荷電粒子ビーム装置の一部の概略図である。
図1B図1Aに示された荷電粒子ビーム装置の一部の断面図である。
図2A-2C】本明細書に記載のさらなる実施形態による、粒子をトラップするための動作を示す荷電粒子ビーム装置の一部の概略図である。
図3】本開示の実施形態による、粒子トラップを含む荷電粒子ビーム装置の概略図である。
図4】本開示の実施形態による、荷電粒子ビーム装置の一部を操作する方法の流れ図である。
図5】本明細書に記載の実施形態による、粒子をトラップするための電極とさらなるトラップ電極とを含む荷電粒子ビーム装置の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本開示の様々な実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例が図に示される。図面の以下の説明の範囲内で、同じ参考番号は同じ構成要素を指す。個々の実施形態に関する相違点のみが説明される。各例は、本開示の説明のために提供されるものであり、本開示の限定を意味するものではない。さらに、ある実施形態の一部として図示または記載された特徴を、他の実施形態で使用して、または他の実施形態とともに使用して、さらに、さらなる実施形態をもたらすことができる。説明はそのような変形および変更を含むことが意図される。
【0014】
本出願の保護の範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素は、例示的に、電子を荷電粒子として使用する荷電粒子ビーム装置と呼ばれることになる。しかしながら、他のタイプの一次荷電粒子、例えば、イオンを使用することができる。荷電粒子ビーム(「一次荷電粒子ビーム」とも呼ばれる)によって試料またはサンプルを照射すると、二次電子(SE)などの信号荷電粒子が作り出され、信号荷電粒子は、サンプルのトポグラフィ、化学成分、および/または静電位などに関する情報を伝えることができる。二次電子は、後方散乱電子、二次電子、およびオージェ電子のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0015】
荷電粒子ビーム装置は、高真空下で操作される。特に、エミッタを含む荷電粒子銃は、超高真空(UHV)圧力で操作することができる。エミッタの操作では、銃ハウジングを超高真空圧力にしながら、高電圧を印加する。様々な洗浄手順が、銃ハウジングの排気前および排気中に適用される。銃ハウジング、すなわち、荷電粒子銃のUHVチャンバの初期ポンプダウンの後、塵埃粒子などの粒子が、荷電粒子銃のチャンバまたはハウジングに残っている可能性がある。
【0016】
エミッタの先端は、荷電粒子、例えば、電子を放つ。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、エミッタによって放出された荷電粒子は、電子またはイオンとすることができる。以下では、電子である荷電粒子を参照することになる。例えば、荷電粒子ビーム装置は、単一ビームを有するか、多数のビームレットを有する走査電子顕微鏡とすることができる。しかしながら、イオンである荷電粒子に対して同様の実施形態を提供することができる。電子ビーム装置の電位を説明する実施形態は、イオンビーム装置の場合には異なる極性の電位を利用することになることに留意されたい。
【0017】
荷電粒子銃の銃ハウジングに残っている可能性がある粒子は、特に、エミッタ電圧がオンに切り替えられたとき、エミッタの先端に付着することがある。エミッタの先端のこの小さい曲率半径により、エミッタでの高い電界強度がもたらされ、それは、粒子がエミッタに付着する可能性をさらに高めることがある。例えば、塵埃粒子などの粒子は、負にバイアスされたエミッタに静電的によって引き付けられ得る。さらに、エミッタ先端における粒子は、エミッタのアーク放電および破壊さえもたらす可能性がある。エミッタにおけるアーク放電は、エミッタに付着した塵埃粒子などの粒子の電界強度のさらにさらなる増加によってトリガされ得る。したがって、荷電粒子銃の立ち上げの間に、すなわち、とりわけ、エミッタに動作電位を印加している間に、アーク放電が検出されるとすぐに、システムの立ち上げを停止し、さらなる洗浄措置を適用することがある。荷電粒子銃の立ち上げおよび追加の洗浄の一巡の試みは、例えば、新しいシステムの設置中に、または既存のシステムの保守の後に、多くの時間を要することがある。
【0018】
本開示の実施形態は、塵埃粒子などの粒子向けの粒子トラップを、エミッタを収容する荷電粒子銃の銃ハウジングなどの真空チャンバに、特に、UHVチャンバに設ける。粒子トラップは、UHV電荷分割銃に、例えば、電子銃、特に、UHV電子銃におけるアーク放電を低減または回避することができる。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態によれば、電極が銃ハウジング内に設けられ、電圧が電極に印加され、その後、銃ハウジングに配置されたエミッタがオンに切り替えられる。その結果、銃ハウジングに残っている粒子、例えば、荷電粒子銃のUHVチャンバ、すなわち、銃ハウジング内に分散している塵埃粒子は、静電的に電極に引き付けられる。粒子は、電極に引き付けられたままである。その後でのみ、荷電粒子銃の動作電圧、特に、エミッタの動作電圧が印加される。
【0020】
上述に照らして、本開示の実施形態は、荷電粒子銃のより速い立ち上げを可能にする。追加としてまたは代替として、荷電粒子銃の立ち上げ中のアーク放電およびエミッタ破壊のリスクが低減される。
【0021】
図1Aは、荷電粒子ビーム装置100の一部を示す。荷電粒子ビーム装置100は、荷電粒子銃102を含む。荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子源120をさらに含む。荷電粒子源120は、エミッタ122およびエミッタ電源124を含む。エミッタ122にバイアスをかけるための電圧は、導体121を用いて電源によって供給することができる。例えば、高電圧は、絶縁体126によって支持された導体128を用いて、荷電粒子銃102の真空チャンバ110に供給することができる。荷電粒子銃102は、銃ハウジング111によって設けられた真空チャンバ110を含む。エミッタ122は、銃ハウジング111内に、すなわち、真空チャンバ110内に設けられる。荷電粒子源によって生成された電子ビームを制御するために、エミッタ122のエミッタ電圧は、エミッタ電源124によって制御することができる。電子ビームはさらに、サプレッサ電極125、抽出器132、およびアノード152によって制御することができる。
【0022】
抽出器132の抽出器電位は、抽出器電源134によって制御することができる。アノード152のアノード電位は、アノード電源154によって制御することができる。例えば、アノード152は、荷電粒子ビーム装置100のカラムの真空チャンバ110とさらなる真空チャンバ112との間に設けることができる。いくつかの実施形態によれば、アノードは、少なくとも部分的に銃ハウジング111内に設けることができる。
【0023】
本開示の実施形態によれば、トラップ電極142は、銃ハウジング111内に設けられる。トラップ電源144は、トラップ電極にバイアスをかけるためのトラップ電極に接続される。エミッタ122から放出された電子ビームは、本質的に軸123に沿って進む。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極は、少なくとも部分的に軸123を囲む。
【0024】
1つの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃が提供される。荷電粒子銃102は、銃ハウジングと、銃ハウジング内に設けられたエミッタとを含む。エミッタは、軸123に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成することができる。荷電粒子銃102は、エミッタに接続されたエミッタ電源をさらに含む。トラップ電極は、銃ハウジング内に設けられ、トラップ電極は、少なくとも部分的に軸を囲む。トラップ電源は、トラップ電極に接続される。荷電粒子銃102は、銃チャンバの動作中に、トラップ電源からトラップ電極に供給される電位を、軸からシールドするシールド要素をさらに含む。
【0025】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、エミッタは、電界エミッタ、例えば、ショットキーエミッタなどの熱電界エミッタ(TFE)、または冷電界エミッタ(CFE)とすることができる。CFEは、エミッタの破壊をもたらす可能性があるアーク放電に対してより一層敏感であり得るので、本開示の実施形態は、CFEにとって特に有利であり得る。
【0026】
図1Aの例示的な実施形態において、シールド要素は、アノード152によって提供され得る。これは、図1Bの断面概略図でも見ることができる。図1Bは、銃ハウジング111、トラップ電極142、およびアノード152を示す断面図を示す。トラップ電極142は、アノード152を囲む。アノード152は、トラップ電極142の電位を、図1Bに示される回転対称の構成の中心からシールドする。
【0027】
本開示の実施形態によれば、シールド要素は、軸123に沿って進む電子ビームへのトラップ電極の電位の影響を低減または回避する。さらなる追加または代替の変形によれば、トラップ電極は、回転対称、特に、リング状とすることができる。例えば、回転対称は、軸123のまわりに設けることができる。その結果、電子ビームへのトラップ電極電位の潜在的に残る影響は、対称的に生じ得る。さらなるオプションの実施態様によれば、荷電粒子銃は、図1Aに示されるように、銃ハウジング内の抽出器電極と、銃ハウジング内のサプレッサ電極と、少なくとも部分的に銃ハウジング内にあるアノードとをさらに含むことができる。
【0028】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、荷電粒子銃102および/または荷電粒子ビーム装置100は、コントローラ190を含むことができる。図1Aに示されるように、コントローラ190は、エミッタ電源124、抽出器電源134、トラップ電源144、およびアノード電源154に接続され得る。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、コントローラ190は、荷電粒子ビームの動作を制御するために、荷電粒子ビーム装置の電源および/または荷電粒子銃の電源のうちの1つまたは複数に接続され得る。
【0029】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、荷電粒子銃は、プロセッサと、プロセッサによって実施されたとき、装置に、本開示の実施形態のいずれかに記載の方法を実行させる命令を格納するメモリとを有するコントローラを含む。
【0030】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置は、基板支持体(図1Aには図示せず)、特に、荷電粒子ビーム装置の動作中に試料電圧を供給するための電源に接続された基板支持体をさらに含むことができる。コントローラ190はまた、試料電位を制御することができる。その結果、試料への電子の入射エネルギーは、試料とエミッタ122との間の電位差によって制御することができる。
【0031】
コントローラ190は、中央処理装置(CPU)と、メモリと、例えばサポート回路とを含む。荷電粒子ビーム装置および/または荷電粒子銃の制御を容易にするために、CPUは、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するのに工業環境で使用できる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つとすることができる。メモリはCPUに結合される。メモリ、またはコンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フロッピーディスク、ハードディスク、またはローカルもしくはリモートのいずれかの任意の他の形態のデジタルストレージなどの1つまたは複数の容易に入手可能なメモリ装置とすることができる。サポート回路は、従来の方法でプロセッサをサポートするためにCPUに結合することができる。これらの回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、および関連するサブシステムなどを含む。荷電粒子ビーム装置(または、それぞれ、荷電粒子銃)を操作および洗浄するためのイメージングプロセス命令および/または命令は、通常、方策として一般に知られているソフトウェアルーチンとしてメモリに格納される。ソフトウェアルーチンはまた、CPUによって制御されているハードウェアから遠隔に配置された第2のCPU(図示せず)によって格納および/または実施されてもよい。ソフトウェアルーチンは、CPUによって実施されたとき、汎用コンピュータを、装置動作を制御する専用コンピュータ(コントローラ)、例えば、とりわけ、荷電粒子ビーム装置および/または荷電粒子銃の1つまたは複数の電源を制御するためのものなどに変換する。本開示の方法および/またはプロセスは、ソフトウェアルーチンとして実装されるとして論じられているが、本明細書で開示される方法ステップの一部は、ハードウェアで、ならびにソフトウェアコントローラによって実行されてもよい。そのため、実施形態は、コンピュータシステム上で実施されるソフトウェアで、および特定用途向け集積回路または他のタイプのハードウェア実施態様としてのハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの組合せで実装されてもよい。コントローラは、本開示の実施形態による荷電粒子銃を操作する方法または荷電粒子ビーム装置を操作する方法を実施または実行することができる。
【0032】
実施形態は、電子銃、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)の電子銃のアーク保護を可能にする。粒子トラップにより、粒子汚染を一段と低減する必要性を軽減することができる。さらに、例えば、電子銃の保守の後、UHV環境でエミッタを操作するときのアーク放電のリスクを低減することができる。
【0033】
本開示の実施形態によれば、トラップ電極は、銃ハウジング111内に追加の電極を備える。すなわち、荷電粒子ビームの誘導または荷電粒子ビームへの影響に役立つ電極に加えての電極が導入される。荷電粒子ビームの誘導に役立つ電極は、サプレッサ、抽出器、アノード、レンズの電極、荷電粒子ビームのための偏向器の電極、およびビーム収差補正要素の電極からなる群から選択することができる。例えば、追加の電極またはトラップ電極は、リング電極とすることができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極は、真空チャンバ110もしくは銃ハウジング111の底部に、またはエミッタのすぐ近くに、それぞれ、設けることができる。
【0034】
荷電粒子銃または荷電粒子ビーム装置をそれぞれ動作させるために、トラップ電極は、汚染粒子を引き付けるのに、正電位または負電位、例えば、プラスまたはマイナス数百ボルト~数kVにバイアスをかけられる。静電トラップ電界はトラップ電極で生成される。トラップ電極は、エミッタまたは銃をそれぞれ動作させるために高電圧をオンに切り替える前の電位に切り替えられる。その後、第2のステップにおいて、荷電粒子銃の他の電圧がオンに切り替えられる。静電トラップ電界が生成された後に、エミッタの静電放出電界が生成される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、静電トラップ電界の方向は、静電放出電界をオンに切り替えたときトラップ電子においては同じままである。トラップ電極で吸収された粒子は、トラップ電極にとどまる。アーク放電の危険が低減する。
【0035】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、保守の後に、または荷電粒子銃の動作の立ち上げの前に、エミッタおよび/または荷電粒子銃に電界はない。電界は本質的にゼロである。荷電粒子銃に、例えば、銃ハウジング内に、および/またはエミッタに隣接して供給される最初の電界または静電界は、静電トラップ電界である。その後でのみ、静電放出電界などのさらなる静電界が、それぞれ、荷電粒子銃または銃ハウジングに供給される。トラップ電極における静電トラップ電界の方向は、さらなる静電界の追加の際に持続する。その結果、粒子は、トラップ電極にとどまる。
【0036】
図2A図2Cは、図4に図示の流れ図に示された荷電粒子銃を操作する方法の動作中の荷電粒子銃102を示す。動作602において、荷電粒子銃102内の電圧は、非動作値である。例えば、電界は、エミッタおよびトラップ電極において本質的にゼロである。非動作値は、例えば、保守中、または真空チャンバ110のポンプダウン中と同じ値であり得る。例えば、エミッタ122、抽出器132、アノード152、およびトラップ電極142は、接地電位であり得る。図2A図2Cに示された例では、さらに、荷電粒子ビームカラムは、参照214によって示されるように接地電位にある。エミッタ電源124、抽出器電源134、アノード電源154、およびトラップ電源144は、例えば、オフに切り替えることができる。銃ハウジングの内部の汚染を低減するために銃ハウジング、すなわち、荷電粒子銃102の真空チャンバを洗浄した後、粒子202が、真空チャンバにとどまることがある。
【0037】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、粒子202は、塵埃粒子または他の汚染粒子であり得、それは、トラップされていないとき、エミッタ122の先端に付着する可能性がある。
【0038】
動作604において、トラップ電極がオンに切り替えられる。トラップ電源144によりトラップ電極142に電圧を供給すると、静電トラップ電界が生成され、粒子202はトラップ電極142の方に引き付けられる。これが、図2Bに示されている。例えば、電子ビーム銃では、トラップ電極142に印加される電圧は、プラスまたはマイナス数百ボルト~キロボルト、例えば、100V~9kV、または-100V~-9kV、例えば、約-6kVなどとすることができる。荷電粒子銃の他の構成要素のうちの1つまたは複数は、粒子のトラップのために、動作電圧にまだ切り替えられていない。静電トラップ電界は、銃チャンバ内の唯一の電界である。特に、エミッタおよび/または抽出器は、まだ動作電圧になく、例えば、接地電位にバイアスすることができる。トラップ電極の切り替えにより、銃ハウジング内の粒子は、トラップ電極に引き付けられ、エミッタから離れる。追加としてまたは代替として、トラップ電極を切り替えると、粒子は、トラップ電極に引き付けられ、銃チャンバの他の構成要素、特に、粒子が付着したときにアーク放電を増加させる可能性がある他の構成要素から離れる。そのような構成要素は、他の電極またはビーム誘導要素、例えば、アノード、サプレッサ、レンズ電極、または銃ハウジングの構成要素などであり得る。
【0039】
荷電粒子銃または荷電粒子ビーム装置の動作中、静電放出電界がエミッタに供給されているにもかかわらず、1つまたは複数の構成要素は、接地電位にバイアスすることができる。さらに、保守中、複数の構成要素は、接地電位にバイアスすることができる。その結果、保守電圧と動作電圧との間のオーバラップが存在する場合があり、例えば、動作中、接地電位にバイアスされる構成要素はまた、動作604中、すなわち、トラップ電極がオンに切り替えられているとき、接地電位にあってもよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、電界は、エミッタおよび/または荷電粒子銃に供給されない。電界は本質的にゼロとすることができる。荷電粒子銃に、例えば、銃ハウジング内に、および/またはエミッタに隣接して供給される最初の電界または静電界は、静電トラップ電界である。その後でのみ、静電放出電界などのさらなる静電界が、それぞれ、荷電粒子銃または銃ハウジングに供給される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極142は、粒子をトラップするために第2の電極電位に切り替えられるが、他のすべての構成要素が動作電圧にあるわけではなく、または構成要素の大部分は動作電圧にない。詳細には、トラップ電極は、粒子をトラップするための静電トラップ電位を生成するために第2の電極電位に切り替えることができるが、荷電粒子銃の1つのさらなる構成要素のみが潜在的に1つのさらなる構成要素の動作電圧(例えば、接地)にある可能性があり、さらなる電界は、動作電位(例えば、接地)で供給されない。より詳細には、1つのさらなる構成要素の動作電圧は、接地電位にあり得る。
【0040】
動作606において、残りの構成要素のうちの1つまたは複数、特に、エミッタ122が、動作電圧に切り替えられる。例えば、エミッタは、エミッタ電源124により+8kV~+12kVにバイアスをかけることができる。さらに、抽出器132は、抽出器電源134により-3kV~-7kVにバイアスをかけることができ、アノード152は、接地電位に近い電位にバイアスすることができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、アノード電源154は、アノード152が常に接地のままである実施形態では省略することができる。トラップ電極142は、例えば、+3kV~+9kVにバイアスをかけられたままである。粒子202は、トラップ電極にトラップされたままである。トラップ電極の電界は、銃の他の電圧がオンに切り替えられた場合でも、トラップ電極の表面で負のままである。
【0041】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、荷電粒子銃の相対電位は以下のように供給することができる。動作エミッタ電位は、-0.3kV~-2kVであり、抽出器電極の電位は、+5kV~+10kVであり、動作アノード電位は、+10kV~+100kVであり、サプレッサ電極の電位は、-0.6kV~-2.3kVであり、試料の電位は接地であり、相対電位は、一般に、特に、約-15kV~-45kVだけシフトさせることができる。
【0042】
1つの実施形態によれば、荷電粒子銃を操作する方法が提供される。この方法は、荷電粒子銃内にエミッタを第1のエミッタ電位で用意することと、荷電粒子銃内にトラップ電極を第1の電極電位で用意することとを含み、第1のエミッタ電位および第1の電極電位は、エミッタおよびトラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように供給される(例えば、動作602を参照)。この方法は、トラップ電極に静電トラップ電界を生成するために、トラップ電極を第1の電極電位から第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることをさらに含む(例えば、動作602を参照)。トラップ電極を第1の電極電位から第2の電極電位に切り替えた後に、エミッタの静電放出電界がオンに切り替えられる(例えば、動作606を参照)。
【0043】
実施形態によれば、荷電粒子銃を操作する方法が提供される。この方法は、荷電粒子銃内にエミッタを第1のエミッタ電位で用意することと、銃ハウジング内にトラップ電極を第1の電極電位で用意することとを含む(例えば、動作602を参照)。この方法は、トラップ電極を第1の電極電位から第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることをさらに含む(例えば、動作602を参照)。トラップ電極を切り替えた後、この方法は、エミッタを荷電粒子銃の動作エミッタ電位に切り替えることであり、動作電位が第1のエミッタ電位と異なる、切り替えることをさらに含む。さらなるオプションの変形および実施態様によれば、同様の切り替え挙動をもつ荷電粒子銃102の他の構成要素が含まれてもよい。例えば、この方法は、アノードを第1のアノード電位で用意することと、荷電粒子銃の銃ハウジングを第1のハウジング電位で用意することとを含むことができる。トラップ電極を切り替えた後に、アノードは、荷電粒子銃の動作アノード電位に切り替えることができ、動作アノード電位は第1のアノード電位と異なる。
【0044】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のエミッタ電位、第1の電極電位、第1のアノード電位、および第1の銃ハウジング電位は、保守中のそれぞれの電位に対応することができる。
【0045】
図1Aおよび図1Bに戻ると、アノード152は、トラップ電極142と軸123との間に設けられる。電子ビームは軸123に沿って進む。その結果、アノードは、トラップ電極によって与えられる電界から電子ビームをシールドする。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極の形状寸法および/またはトラップ電極の設計は、ビーム経路の電子の部分、すなわち、本質的に軸に沿って進む電子ビームに影響を及ぼすことを低減または回避するように選ばれる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極の回転対称設計が有利である。電子への潜在的に残っている影響は、回転対称であることになる。
【0046】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、シールド要素が、トラップ電極の静電界をシールドするために設けられてもよい。上述のように、アノードまたは別のビーム誘導要素は、シールド要素として機能することができる。さらに、さらなるシールド要素が設けられてもよい。
【0047】
図5は、ビーム経路に沿った電子をシールドするために、シールド要素712が設けられている本開示による一実施形態を示す。さらに、トラップ電極142、すなわち、第1のトラップ電極が設けられ、第2のトラップ電極が設けられる。トラップ電極142およびさらなるトラップ電極742は、軸123に沿って異なる位置に位置付けることができる。さらなる追加または代替の実施態様によれば、さらなるトラップ電極742は、トラップ電極142と異なる外径を備えることができ、トラップ電極142と異なる内径を備えることができ、および/または異なる断面形状を有することができる。
【0048】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1つまたは複数のトラップ電極の設計および/または場所は、荷電粒子銃102の他の電圧がオンに切り替えられた場合でも、電界が1つまたは複数のトラップ電極の表面で負のままであるように選ぶことができる。
【0049】
汚染粒子を1つまたは複数のトラップ電極にトラップさせるために、他の電圧が荷電粒子銃の操作のためにオンに切り替えられるとしても、1つまたは複数のトラップ電極は、軸123と平行な断面、例えば、図5に示される断面、特に、リング状トラップ電極の片側の断面において曲面を有することができる。例えば、1つまたは複数のトラップ電極は、保守、立ち上げ、および動作中に、電界が、エミッタの異なる電圧に対して同じ極性のままであるように成形することができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、トラップ電極は、20mm以下、特に、10mmの曲率半径を有することができる。曲率半径は、静電トラップ電界の電界強度に影響を与える。その結果、曲率半径が小さいほど、静電トラップ電界を生成する第2の電極電位を小さくすることができる。最大曲率半径に関して、平坦な面または線の曲率半径は、無限に大きく、特に、20mmよりもはるかに大きいことが理解される。
【0050】
図3は、本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置100の概略図を示す。荷電粒子ビーム装置100は、走査電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡であり得る。荷電粒子ビーム装置100は、本開示の実施形態による荷電粒子銃を含む。荷電粒子ビーム装置100は、電子ビームを試料324上に誘導するためのカラム302をさらに含む。試料324は、試料テーブル322上に支持され得る。
【0051】
荷電粒子ビーム装置100は、(一次)荷電粒子ビームを放出するように構成された荷電粒子源120と、本明細書に記載のようなトラップ電極142とを含む。コントローラ190は、荷電粒子銃102の立ち上げ中および荷電粒子銃の動作中、電圧を制御することができる。上述のように、荷電粒子源120が操作される前に、トラップ電位が、トラップ電源144によってトラップ電極142に供給される。
【0052】
荷電粒子ビーム装置は、コンデンサレンズ構成304と、荷電粒子ビームを軸123に位置合わせするための位置合わせ偏向器306とを含むことができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、軸123は、対物レンズ310の光軸とすることができる。
【0053】
図3は、ストレートビジョンシステムを示す。位置合わせ偏向器306はまた、非ストレートビジョンシステムを提供するために利用されてもよい。例えば、第1の偏向器を利用して、荷電粒子ビームの傾きを生成することができ、第2の偏向器を利用して、ビームが試料324の表面に対して垂直になるように向け直すことができる。特に、磁気的な第2の偏向器では、一次電子ビームと信号ビームとの間の分離を行うことができる。
【0054】
図3に示されるように、対物レンズ310は、電子ビームを試料324上に集束する。対物レンズ内または対物レンズの上流に設けられた1つまたは複数の走査偏向器312は、画像生成のために試料にわたって電子ビームを走査することができる。一次電子ビームが試料に衝突したときに生成された信号粒子は、検出器308によって検出することができる。図3に示されるように、検出器は、軸上検出器とすることができる。追加としてまたは代替として、軸外検出器を備えることができる。
【0055】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、対物レンズ310は、静電磁気複合レンズとすることができ、特に、カラム内のエネルギーをカラム内の高いエネルギーから低い入射エネルギーに低減する静電レンズを有することができる。
【0056】
図3は、単一ビーム走査電子顕微鏡を示す。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、トラップ電極を含む本開示の実施形態は、マルチビーム走査電子顕微鏡またはマルチビームリソグラフィシステムでも利用することができる。マルチビーム荷電粒子ビーム装置またはマルチビームシステムは、磁気レンズ、静電磁気複合レンズを、またはマルチビームシステムの個々のビームレットのための個々のレンズ開口を有する静電レンズを備えることができる。
【0057】
1つの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、本開示の実施形態のいずれかによる荷電粒子銃と、荷電粒子を試料上に誘導するための荷電粒子ビームカラムとを含む。
【0058】
上述に照らして、複数の実施形態を提供することができる。実施形態は、とりわけ、以下の通りである。
実施形態1
荷電粒子銃を操作する方法であって、荷電粒子銃内にエミッタを第1のエミッタ電位で用意すること、および荷電粒子銃内にトラップ電極を第1の電極電位で用意することであり、第1のエミッタ電位および第1の電極電位が、エミッタおよびトラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように供給される、用意することと、トラップ電極において静電トラップ電界を生成するために、トラップ電極を第1の電極電位から第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることと、トラップ電極を第1の電極電位から第2の電極電位に切り替えた後に、エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えることとを含む、方法。
【0059】
実施形態2
静電放出電界をオンに切り替えることが、エミッタを第1のエミッタ電位から動作エミッタ電位に切り替えることを含む、実施形態1に記載の方法。
【0060】
実施形態3
アノードを第1のアノード電位で用意することと、荷電粒子銃の銃ハウジングを第1のハウジング電位で用意することと、トラップ電極を切り替えた後に、アノードを、荷電粒子銃の動作アノード電位に切り替えることであり、動作アノード電位が、第1のアノード電位と異なる、切り替えることとをさらに含む、実施形態2に記載の方法。
【0061】
実施形態4
第1のエミッタ電位、第1の電極電位、第1のアノード電位、および第1のハウジング電位が、保守中のそれぞれの電位に対応する、実施形態3に記載の方法。
【0062】
実施形態5
トラップ電極の切り替えにより、銃ハウジング内の粒子が、トラップ電極に引き付けられ、エミッタまたは銃チャンバ内の他の構成要素から離れる、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0063】
実施形態6
第2の電極電位が、エミッタを動作エミッタ電位に切り替えた後に、トラップ電極に粒子をトラップするための電界強度をトラップ電極に供給する、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施形態7
静電トラップ電界が、エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替える前に、およびエミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えた後に第1の方向を有する、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施形態8
荷電粒子銃の相対電位を以下のように用意することができ、動作エミッタ電位が、-0.3kV~-2kVであり、抽出器電極の電位が、+5kV~+10kVであり、動作アノード電位が、+10kV~+100kVであり、サプレッサ電極の電位が、-0.6kV~-2.3kVであり、試料の電位が接地であり、相対電位は、一般に、特に、約-15kV~-45kVだけシフトさせることができる、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施形態9
荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃であって、銃ハウジングと、銃ハウジング内に設けられたエミッタであり、エミッタが、軸に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成される、エミッタと、エミッタに接続されたエミッタ電源と、銃ハウジング内に設けられたトラップ電極であり、トラップ電極が軸を少なくとも部分的に囲む、トラップ電極と、トラップ電極に接続されたトラップ電源と、銃ハウジングの動作中、トラップ電極の静電界を軸からシールドするシールド要素とを含む、荷電粒子銃。
【0067】
実施形態10
銃ハウジング内の抽出器電極と、銃ハウジング内のサプレッサ電極と、少なくとも部分的に銃ハウジング内にあるアノードとをさらに含む、実施形態9に記載の荷電粒子銃。
【0068】
実施形態11
シールド要素が、トラップ電極と軸との間に少なくとも部分的に設けられたアノードによって提供される、実施形態10に記載の荷電粒子銃。
【0069】
実施形態12
プロセッサと、プロセッサによって実施されたとき、荷電粒子銃に、実施形態1~6のいずれかに記載の方法を実行させる命令を格納するメモリとを含むコントローラをさらに含む、実施形態9~11のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0070】
実施形態13
トラップ電極が、回転対称、特に、リング状である、実施形態9~12のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0071】
実施形態14
トラップ電極が、軸と平行な断面に曲面を有する、実施形態9~13のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0072】
実施形態15
トラップ電極は、保守、立ち上げ、および動作中、エミッタの異なる電圧に対して、静電界が同じ極性のままであるように成形される、実施形態9~14のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0073】
実施形態16
トラップ電極が、20mm以下の曲率半径を有する、実施形態9~15のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0074】
実施形態17
特に、軸に沿ったトラップ電極と異なる位置にさらなるトラップ電極をさらに含む、実施形態9~16のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0075】
実施形態18
エミッタが電界エミッタである、実施形態9~17のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【0076】
実施形態19
実施形態9~16のいずれかに記載の荷電粒子銃と、荷電粒子を試料上に誘導するための荷電粒子ビームカラムとを含む荷電粒子ビーム装置。
【0077】
上述に照らして、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供することができる。荷電粒子銃の立ち上げ中のアーク放電を低減することができる。その結果、エミッタ、特に、電界エミッタの破壊のリスクを低減することができる。さらに、荷電粒子銃の立ち上げのための洗浄労力を低減することができる。したがって、保守を加速することができ、および/またはシステムの可用時間を増加させることができる。その結果、荷電粒子ビーム装置の全体的なスループットを改善することができる。
【0078】
前述は本開示の実施形態に関するが、本開示の他のおよびさらなる実施形態を、その基本的な範囲から逸脱することなく、考案することができ、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム装置(100)のための荷電粒子銃(102)であって、
銃ハウジング(111)と、
前記銃ハウジング内に設けられたエミッタ(122)であり、前記エミッタが、軸に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成される、エミッタ(122)と、
前記エミッタ(122)に接続されたエミッタ電源(124)と、
前記銃ハウジング(111)内に設けられたトラップ電極(142)であり、前記トラップ電極(142)が前記軸(123)を少なくとも部分的に囲み、前記トラップ電極(142)が汚染粒子を引き付けるように構成され、ビーム経路内の電子の部分に影響を及ぼすことを低減又は回避するように構成される、トラップ電極(142)と、
前記トラップ電極に接続されたトラップ電源(144)と、
前記銃ハウジングの動作中、前記トラップ電極の静電界を前記軸からシールドするシールド要素と
を含む、荷電粒子銃。
【請求項2】
前記銃ハウジング(111)内の抽出器電極と、
前記銃ハウジング内のサプレッサ電極(125)と、
少なくとも部分的に前記銃ハウジング内にあるアノード(152)と
をさらに含む、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項3】
前記シールド要素が、前記トラップ電極と前記軸との間に少なくとも部分的に設けられた前記アノードによって提供される、請求項2に記載の荷電粒子銃。
【請求項4】
プロセッサと、命令を格納するメモリとを含むコントローラ(190)を更に備え、
前記プロセッサによって実施されたとき、前記命令は、
第1のエミッタ電位を前記エミッタ(122)に提供すること、及び、第1の電極電位を前記トラップ電極(142)に提供することであって、前記第1のエミッタ電位及び前記第1の電極電位が、前記エミッタ及び前記トラップ電極において本質的にゼロの電界を有するように提供される、提供することと、
前記トラップ電極において静電トラップ電界を生成するために、前記トラップ電極を前記第1の電極電位から前記第1の電極電位と異なる第2の電極電位に切り替えることと、
前記トラップ電極を前記第1の電極電位から前記第2の電極電位に切り替えた後に、前記エミッタにおける静電放出電界をオンに切り替えることと
を前記荷電粒子銃に実行させる、
請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項5】
前記トラップ電極(142)が回転対称である、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項6】
前記トラップ電極(142)が、前記軸と平行な断面に曲面を有する、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項7】
前記トラップ電極(142)は、保守、立ち上げ、および動作中、前記エミッタの異なる電圧に対して、前記静電界が同じ極性のままであるように成形される、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項8】
前記トラップ電極(142)が、20mm以下の曲率半径を有する、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項9】
前記軸に沿った前記トラップ電極(142)と異なる位置にさらなるトラップ電極
をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項10】
前記エミッタが電界エミッタである、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子銃。
【請求項11】
請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置のための荷電粒子銃(102)と、
荷電粒子を試料上に誘導するための荷電粒子ビームカラムと
を含む、荷電粒子ビーム装置(100)。
【外国語明細書】