(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091649
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】金型使用履歴自動管理システム
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20240628BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B22D17/22 Z
B22C9/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058531
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2021209725の分割
【原出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺川 昌法
(57)【要約】
【課題】
ダイカスト鋳造機に用いられる金型の使用履歴を自動的に管理する金型使用履歴自動管理システムを提供する。
【解決手段】
金型使用履歴自動管理システム200は、RFIDセンサ70と、固定型66や可動型67に設定された固有の識別情報を提供する金型用RFIDタグ61と、ダイカスト鋳造機65の稼働情報を管理する稼働情報管理部85と、RFIDセンサ70と、金型用RFIDタグ61と、稼働情報管理部85からの情報を取得してダイカスト鋳造機65に用いられる金型66,67の使用履歴の自動的な管理を行うホスト制御部81と、を含み、ホスト制御部81が、RFIDセンサ70と、金型用RFIDタグ61と、稼働情報管理部85からの情報を紐付けすることで、金型用RFIDタグ61が配置された固定型66又は可動型67のそれぞれの使用履歴を管理する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト鋳造機に用いられる金型の使用履歴を自動的に管理する金型使用履歴自動管理システムであって、
前記ダイカスト鋳造機に設置されるRFIDセンサと、
前記金型を構成する固定型と可動型のそれぞれに配置されることで、前記固定型や前記可動型に設定された固有の識別情報を提供する金型用RFIDタグと、
前記ダイカスト鋳造機の鋳造回数と鋳造時間を含む当該ダイカスト鋳造機の稼働情報を管理する稼働情報管理部と、
前記RFIDセンサと、前記金型用RFIDタグと、前記稼働情報管理部からの情報を取得して前記ダイカスト鋳造機に用いられる金型の使用履歴の自動的な管理を行うホスト制御部と、
を含み、
前記ホスト制御部が、前記RFIDセンサと、前記金型用RFIDタグと、前記稼働情報管理部からの情報を紐付けすることで、前記金型用RFIDタグが配置された前記固定型又は前記可動型のそれぞれの使用履歴を管理することを特徴とする金型使用履歴自動管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の金型使用履歴自動管理システムであって、
前記金型用RFIDタグは、前記金型を構成する前記固定型又は前記可動型の他に、前記ダイカスト装置に用いられる金型流用部品、消耗交換部品、再利用部品に対して適用可能であることを特徴とする金型使用履歴自動管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の金型使用履歴自動管理システムであって、
前記ダイカスト装置に用いられる部品のうち、前記金型用RFIDタグを取り付けることのできない部品であって、前記金型を構成する前記固定型ごと又は前記可動型ごとに用いられる部品については、前記ホスト制御部が、前記金型用RFIDタグが提供する固有の識別情報と、前記稼働情報管理部からの情報を紐付けすることで、前記金型用RFIDタグが配置された前記部品の使用履歴として管理することを特徴とする金型使用履歴自動管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型使用履歴自動管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場建屋内の床面上の任意の場所に載置された複数の製造設備品を効率よく管理するシステムの構築が求められていた。例えば、下記特許文献1には、天井クレーンに物品高さ測定用の下面センサを設置した物品の計測装置が開示されており、下面センサには光センサが用いられていた。
【0003】
また、従来から、ダイカスト法を行うダイカスト鋳造機を設置したダイカスト工場のような環境下において、センサ類を用いて自動的な制御・管理等を行う技術が求められていた。例えば、下記特許文献2には、成形条件が記憶されたRFIDタグを金型に設置し、RFIDタグから読み取った成形条件に基づいて、当該金型に最適な射出条件で溶融樹脂が射出されるよう、射出成形装置の動作制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-109426号公報
【特許文献2】特開2002-355872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上掲した特許文献1で開示された物品の計測装置では、光センサが用いられているので、工場建屋内の光環境によっては、光センサから照射されるレーザ光が遮られてしまい、物品の計測装置が満足のいく動作を実行できないといった課題が存在していた。
【0006】
一方、上掲した特許文献2で開示された技術のように、RFIDタグやRFIDセンサを用いたシステムの場合には、電波が届く範囲であれば、たとえRFIDタグが遠くにあっても、またRFIDタグやRFIDセンサの途中に両者を遮る設備が存在していたとしても、RFIDセンサによる読み取りが可能であるといった利点が存在している。ただし、ダイカスト法を行うダイカスト鋳造機を設置したダイカスト工場のような環境下でRFIDタグやRFIDセンサを好適に用いるシステムは発展途上の技術であり、特に、実際の工場に適用された事例は少ないのが現状である。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ダイカスト法を行うダイカスト鋳造機を設置したダイカスト工場のような環境下でRFIDタグやRFIDセンサを好適に用いるシステムを提供することにある。特に、本発明者は、ダイカスト鋳造機に用いられる金型の使用履歴を自動的に管理する金型使用履歴自動管理システムを提供することを、本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る金型使用履歴自動管理システム(200)は、ダイカスト鋳造機(65)に用いられる金型(66,67)の使用履歴を自動的に管理する金型使用履歴自動管理システム(200)であって、前記ダイカスト鋳造機(65)に設置されるRFIDセンサ(70)と、前記金型(66,67)を構成する固定型(66)と可動型(67)のそれぞれに配置されることで、前記固定型(66)や前記可動型(67)に設定された固有の識別情報を提供する金型用RFIDタグ(61)と、前記ダイカスト鋳造機(65)の鋳造回数と鋳造時間を含む当該ダイカスト鋳造機(65)の稼働情報を管理する稼働情報管理部(85)と、前記RFIDセンサ(70)と、前記金型用RFIDタグ(61)と、前記稼働情報管理部(85)からの情報を取得して前記ダイカスト鋳造機(65)に用いられる金型(66,67)の使用履歴の自動的な管理を行うホスト制御部(81)と、を含み、前記ホスト制御部(81)が、前記RFIDセンサ(70)と、前記金型用RFIDタグ(61)と、前記稼働情報管理部(85)からの情報を紐付けすることで、前記金型用RFIDタグ(61)が配置された前記固定型(66)又は前記可動型(67)のそれぞれの使用履歴を管理することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る金型使用履歴自動管理システム(200)において、前記金型用RFIDタグ(61)は、前記金型(66,67)を構成する前記固定型(66)又は前記可動型(67)の他に、前記ダイカスト装置(65)に用いられる金型流用部品、消耗交換部品、再利用部品に対して適用可能である。
【0011】
また、本発明に係る金型使用履歴自動管理システム(200)において、前記ダイカスト装置(65)に用いられる部品のうち、前記金型用RFIDタグ(61)を取り付けることのできない部品であって、前記金型(66,67)を構成する前記固定型(66)ごと又は前記可動型(67)ごとに用いられる部品については、前記ホスト制御部(81)が、前記金型用RFIDタグ(61)が提供する固有の識別情報と、前記稼働情報管理部(85)からの情報を紐付けすることで、前記金型用RFIDタグ(61)が配置された前記部品の使用履歴として管理することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダイカスト法を行うダイカスト鋳造機を設置したダイカスト工場のような環境下でRFIDタグやRFIDセンサを好適に用いるシステムを提供することができる。より具体的には、本発明によれば、ダイカスト鋳造機に用いられる金型の使用履歴を自動的に管理する金型使用履歴自動管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムの処理例を示すシーケンス図である。
【
図3】
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムが適用される工場建屋を平面視で見たときのシステム構成例を示す模式図である。
【
図4】
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムが適用される工場建屋の実施例を示す概略図である。
【
図5】
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムに含まれるホスト制御部による情報解析例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムの構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムの処理例を示すシーケンス図である。
【
図8】本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムが適用される鋳造機を示す模式図である。
【
図9】本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムに含まれるホスト制御部による情報解析例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な参考例と実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の参考例と実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、参考例と実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
[製造設備品位置情報管理システム]
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムについて、
図1~
図5を用いて説明する。ここで、
図1は、
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムの構成例を示す図である。
図2は、
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムの処理例を示すシーケンス図である。
図3は、
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムが適用される工場建屋を平面視で見たときのシステム構成例を示す模式図である。
図4は、
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムが適用される工場建屋の実施例を示す概略図である。
図5は、
参考例に係る製造設備品位置情報管理システムに含まれるホスト制御部による情報解析例を示す図である。
【0016】
図1に示される
参考例に係る製造設備品位置情報管理システム100は、複数のロケーションRFIDタグ11と、複数の製造設備品用RFIDタグ12と、RFIDセンサ20と、ホスト制御部31を有して構成されている。
【0017】
複数のロケーションRFIDタグ11は、工場建屋内の天井の適所に配置されることで、工場建屋を平面視したときの位置情報を提供する非接触式のRFID(Radio Frequency IDentification)タグであって、電波(電磁波)を用いて内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体である。
参考例のロケーションRFIDタグ11は、
図3で示すように、工場建屋を平面視したときに、工場建屋を複数の領域に分割して番地管理できるように格子状に配置されている。すなわち、複数のロケーションRFIDタグ11は、工場建屋の縦方向を「1」、「2」、「3」、「4」の4つの領域に区分けしており、また、工場建屋の横方向を「A」、「B」、「C」、「D」の4つの領域に区分けしている。そして、例えば「1-A」番地に相当する箇所の天井部分に、1つのロケーションRFIDタグ11が配置されており、この「1-A」番地に位置するロケーションRFIDタグ11には、「1-A」という位置情報が書き込まれている。したがって、「1-A」という位置情報が書き込まれたロケーションRFIDタグ11のデータを、後述するRFIDセンサ20(ロケーション認識用RFIDセンサ21)が読み取ることで、当該RFIDセンサ20(ロケーション認識用RFIDセンサ21)が「1-A」番地に位置していることを認識することができる。
【0018】
複数の製造設備品用RFIDタグ12は、工場建屋内の床面上の任意の場所に載置された複数の製造設備品のそれぞれに配置されることで、床面上に配置された製造設備品の個別の識別情報を提供する非接触式のRFID(Radio Frequency IDentification)タグである。この製造設備品用RFIDタグ12についても、ロケーションRFIDタグ11と同様に、電波(電磁波)を用いて内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きできる情報媒体である。
【0019】
なお、
参考例では、製造設備品用RFIDタグ12が配置される製造設備品は、ダイカスト法に用いられる金型を構成する固定型や可動型を想定している。そして、
図3および
図5で示すように、
参考例では、金型Aについての固定型と可動型、金型Bについての固定型と可動型、金型Cについての固定型と可動型に対して、それぞれ製造設備品用RFIDタグ12が配置されている。また、
参考例では、各製造設備品用RFIDタグ12に予め書き込まれた識別情報として、金型Aについての固定型に「0001」、金型Aについての可動型に「0002」、金型Bについての固定型に「0003」、金型Bについての可動型に「0004」、金型Cについての固定型に「0005」、金型Cについての可動型に「0006」といった番号情報が割り振られている。
【0020】
RFIDセンサ20は、工場建屋内に設置されるクレーン又は工場建屋内を走行するフォークリフトを含む搬送手段に設置されるセンサである。また、参考例のRFIDセンサ20は、ロケーション認識用RFIDセンサ21と、製造設備品認識用RFIDセンサ22という2つのセンサによって構成されている。
【0021】
ロケーション認識用RFIDセンサ21は、天井方向の上向きの電波を発信することで、天井の適所に配置されたロケーションRFIDタグ11のデータを非接触で読み取り可能なセンサとなっている。
【0022】
一方、製造設備品認識用RFIDセンサ22は、床面方向の下向き又は横向きの電波を発信することで、床面上の製造設備品に配置された製造設備品用RFIDタグ12のデータを非接触で読み書き可能なセンサとなっている。
【0023】
参考例では、RFIDセンサ20が、天井側に配置されたロケーションRFIDタグ11のデータを非接触で読み取るロケーション認識用RFIDセンサ21と、床面上の製造設備品に配置された製造設備品用RFIDタグ12のデータを非接触で読み書きする製造設備品認識用RFIDセンサ22という2種類のセンサを備えているので、例えば、クレーンが金型Aについての固定型を吊り上げようとする際には、
図3で示す例の場合には、工場建屋内の「1-A」番地に「0001」の番号情報を持った金型の位置を認識することで、金型Aについての固定型が当該位置に存在することを認識することができる。
【0024】
そして、上述のような位置情報の認識は、参考例に係る製造設備品位置情報管理システム100が備えるホスト制御部31によって実行することができる。参考例のホスト制御部31は、ロケーション認識用RFIDセンサ21と製造設備品認識用RFIDセンサ22からの情報を、インターネット回線41やイントラネット回線等を経由して取得することで、製造設備品位置情報管理システム100全体の制御を行うコンピュータとして構成されるものである。そして、参考例のホスト制御部31は、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって読み取られた製造設備品用RFIDタグ12に紐付けされた製造設備品の情報と、製造設備品用RFIDタグ12の読み取りを行った際にロケーション認識用RFIDセンサ21が最も感度高く読み取ったロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報を組み合わせることで、製造設備品の工場建屋内での位置情報を管理する処理を実行することができる。ホスト制御部31にこのような処理を実行させることで、参考例の製造設備品位置情報管理システム100は、製造設備品の工場建屋内での位置情報を管理することができる。
【0025】
次に、主として
図2を参照することで、
参考例の製造設備品位置情報管理システム100がホスト制御部31に実行させる処理の具体的内容についての説明を行う。
【0026】
まず、ロケーション認識用RFIDセンサ21と製造設備品認識用RFIDセンサ22が設置されたクレーンが、金型Aの固定型を吊り上げる位置に移動する際の処理例を説明する。
【0027】
図3で示す金型Aの固定型の位置(「1-A」番地の位置)にクレーンが移動すると、
図2の上段に示すように、まずは、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって製造設備品用RFIDタグ12に予め付与された情報が読み取られる(ステップS11)。この情報は、金型Aの固定型であることを示す「0001」の番号情報である。
【0028】
製造設備品認識用RFIDセンサ22によって読み取られた「0001」の番号情報は、直ちにホスト制御部31に情報送信される(ステップS12)。
【0029】
また、製造設備品認識用RFIDセンサ22の読み取り情報がホスト制御部31に情報送信された直後に、ロケーション認識用RFIDセンサ21がロケーションRFIDタグ11の情報の読み取りを実行する(ステップS13)。この際、ロケーション認識用RFIDセンサ21は、最も感度高く読み取ることができたロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報を採用する。
図3で示す例の場合、ロケーション認識用RFIDセンサ21が最も感度高く読み取ったロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報は、「1-A」番地という位置情報である。
【0030】
ロケーション認識用RFIDセンサ21によって読み取られた「1-A」番地という位置情報は、直ちにホスト制御部31に情報送信される(ステップS14)。
【0031】
ロケーション認識用RFIDセンサ21によって読み取られた「0001」の番号情報と、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって読み取られた「1-A」番地という位置情報を受け取ったホスト制御部31は、情報解析を実行する(ステップS15)。すなわち、ホスト制御部31は、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって読み取られた製造設備品用RFIDタグ12に紐付けされた製造設備品の情報(「0001」の番号情報)と、製造設備品用RFIDタグ12の読み取りを行った際にロケーション認識用RFIDセンサ21が最も感度高く読み取ったロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報(「1-A」番地という位置情報)を組み合わせることで、
図5に示すようなリスト情報を構築し、金型Aの固定型が、「0001」の番号情報を持つものであって、工場建屋内の「1-A」番地という位置に配置されていることを認識することができる。このように、ホスト制御部31に製造設備品の工場建屋内での位置情報を管理する処理を実行させることで、
参考例の製造設備品位置情報管理システム100は、製造設備品の工場建屋内での位置情報を管理することができる。
【0032】
次に、ロケーション認識用RFIDセンサ21と製造設備品認識用RFIDセンサ22が設置されたフォークリフトが、金型Cの固定型を「4-C」番地から「3-D」番地に移動する際の処理例を説明する。
【0033】
図2のステップS11~ステップS15の処理例で説明したように、ホスト制御部31は、金型Cの固定型は、「0005」の番号情報を持つとともに「4-C」番地に配置されていることを認識している。この初期状態から、フォークリフトによって金型Cの固定型を持ち上げて移動し、「3-D」番地に移動したとする。
【0034】
図3で示す「3-D」番地の位置に金型Cの固定型が移動すると、
図2の下段に示すように、まずは、ロケーション認識用RFIDセンサ21がロケーションRFIDタグ11の情報の読み取りを実行する(ステップS21)。この際、ロケーション認識用RFIDセンサ21は、最も感度高く読み取ることができたロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報を採用する。今回の例の場合、ロケーション認識用RFIDセンサ21が最も感度高く読み取ったロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報は、「3-D」番地という位置情報である。
【0035】
ロケーション認識用RFIDセンサ21によって読み取られた「3-D」番地という位置情報は、直ちにホスト制御部31に情報送信される(ステップS22)。
【0036】
この段階でホスト制御部31は、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって予め読み取られた「0005」の番号情報と、ロケーション認識用RFIDセンサ21によって読み取られた「3-D」番地という位置情報を受け取ることになる。かかる情報を受け取ったホスト制御部31は、情報解析を実行する(ステップS23)。すなわち、ホスト制御部31は、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって読み取られた製造設備品用RFIDタグ12に紐付けされた製造設備品の情報(「0005」の番号情報)と、製造設備品用RFIDタグ12の読み取りを行った際にロケーション認識用RFIDセンサ21が最も感度高く読み取ったロケーションRFIDタグ11に紐付けされた位置情報(「3-D」番地という位置情報)を組み合わせることで、
図5に示すリスト情報を更新し、金型Cの固定型が、「0005」の番号情報を持つものであって、工場建屋内の「3-D」番地という位置に配置換えされたことを認識することができる。
【0037】
また、
図5に示すリスト情報が更新されたため、製造設備品用RFIDタグ12の情報についても更新しておく必要がある。このため、ステップS23で示す情報解析を終えたホスト制御部31は、直ちに更新された解析情報を製造設備品認識用RFIDセンサ22に送信する処理を行う(ステップS24)。製造設備品認識用RFIDセンサ22に送信された更新情報は、製造設備品認識用RFIDセンサ22によって製造設備品用RFIDタグ12に書き込まれることで(ステップS25)、製造設備品用RFIDタグ12の情報更新が実行される(ステップS26)。このとき、製造設備品用RFIDタグ12において情報更新された情報は、「0005」の番号情報を持つ金型Cの固定型が「3-D」番地という位置情報を持つことを示す情報である。
【0038】
図2のステップS11~ステップS15で示す現状把握のための処理と、ステップS21~ステップS26で示す置き場位置変更後の情報更新のための処理を実行することで、
参考例の製造設備品位置情報管理システム100は、製造設備品の工場建屋内での位置情報を常時管理することができる。
【0039】
なお、
図2のシーケンス図を用いて説明した現状把握のための処理と、置き場位置変更後の情報更新のための処理の実行タイミングについては、ホスト制御部31を構成するコンピュータの性能や工場の稼働状況等に応じて任意に設定すればよい。例えば、
図2のステップS11~ステップS15で示す現状把握のための処理と、ステップS21~ステップS26で示す置き場位置変更後の情報更新のための処理については、常時実行させるようにしてもよいし、一定の時間間隔をおいて実行させるようにしてもよい。
【0040】
また、参考例に係る製造設備品位置情報管理システム100において、RFIDセンサ20を構成するロケーション認識用RFIDセンサ21と製造設備品認識用RFIDセンサ22は、クレーンやフォークリフト等の搬送手段ごとに1セットずつ設ければよい。したがって、参考例に係る製造設備品位置情報管理システム100は、設備投資額を安価に抑えた状態で導入することができるというメリットを有している。
【0041】
また、参考例のホスト制御部31に対して、その他の情報、例えば、工場操業上の帳票や生産状況に関する情報、あるいは金型の図面情報などを追加し、上述した金型の識別情報や位置情報と組み合わせることで、様々な管理を追加して実行することが可能である。つまり、参考例に係る製造設備品位置情報管理システム100は、管理範囲の拡張性を持ったシステムであるということができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、製造設備品用RFIDタグ12を固定型と可動型に配置した例を示したが、製造設備品用RFIDタグ12を配置する管理対象物は金型を構成する固定型と可動型に限られるものではない。例えば、カゴパレットやダイカスト法に用いられるその他の設備品など、あらゆる管理対象物に対して製造設備品用RFIDタグ12を配置して管理することが可能である。
【0043】
[金型使用履歴自動管理システム]
本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムについて、
図6~
図9を用いて説明する。ここで、
図6は、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムの構成例を示す図である。
図7は、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムの処理例を示すシーケンス図である。
図8は、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムが適用される鋳造機を示す模式図である。
図9は、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システムに含まれるホスト制御部による情報解析例を示す図である。
【0044】
図6に示される本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システム200は、金型を構成する固定型66や可動型67などの金型構成部材のそれぞれに設置される金型用RFIDタグ61と、作業者のヘルメットに取り付けられる作業者用RFIDタグ62と、ダイカスト鋳造機65に設置されるRFIDセンサ70と、ダイカスト鋳造機65の稼働情報を管理する稼働情報管理部85と、ホスト制御部81を有して構成されている。そして、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システム200では、RFIDセンサ70と稼働情報管理部85とホスト制御部81が、インターネット回線91やイントラネット回線等を経由して情報伝達することが可能となっている。
【0045】
金型用RFIDタグ61(61a,61b)は、
図8において例示するように、金型を構成する固定型66や可動型67のそれぞれに配置されることで、固定型66や可動型67に設定された固有の識別情報を提供する非接触式のRFIDタグである。また、本実施形態において、金型用RFIDタグ61は、金型を構成する固定型66や可動型67の他に、ダイカスト装置65に用いられる油圧シリンダーや、Wプラテン、金型流用部品、再利用部品などに対して設置することができる。
【0046】
RFIDセンサ70は、例えば
図8で例示するように、ダイカスト鋳造機65を構成する固定プラテンの天側に配置されることで、金型を構成する固定型66や可動型67に向けて電波を発信し、固定型66と可動型67のそれぞれに配置された金型用RFIDタグ61(61a,61b)のデータを非接触で読み書き可能なセンサとなっている。
【0047】
稼働情報管理部85は、ダイカスト鋳造機65の鋳造回数と鋳造時間を含む当該ダイカスト鋳造機65の稼働情報を管理するコンピュータである。通常、稼働情報管理部85は生産管理のために機能するコンピュータであるが、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システム200では、生産管理に使用されるダイカスト鋳造機65の鋳造回数や鋳造時間などの情報が、金型使用履歴の自動管理のために用いられる。
【0048】
ホスト制御部81は、RFIDセンサ70と、金型用RFIDタグ61と、稼働情報管理部85からの情報を取得してダイカスト鋳造機65に用いられる金型を構成する固定型66や可動型67の使用履歴の自動的な管理を行うコンピュータである。ホスト制御部81では、RFIDセンサ70と、金型用RFIDタグ61と、稼働情報管理部85からの情報を紐付けすることで、金型用RFIDタグ61(61a,61b)が配置された固定型66又は可動型67のそれぞれの使用履歴を管理することができる。
【0049】
次に、主として
図7と
図9を参照することで、本実施形態の金型使用履歴自動管理システム200がホスト制御部81に実行させる処理の具体的内容についての説明を行う。
【0050】
ここで、
図8で示すダイカスト鋳造機65は、
図9で示す鋳造機Aであり、「0001」の番号情報を持つ金型Aの固定ホルダー(固定型)が
図8で示す固定型66である場合を想定して説明する。
【0051】
図8で示すダイカスト鋳造機65が稼働している間中、RFIDセンサ70は固定型66に設置された固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)からの情報を常時読み取っている(
図7中のステップS31)。固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)からの情報は、
図9中の符号αで示す表中の情報を含むものであり、例えば、「0001」の番号情報を持つ金型Aの固定ホルダー(固定型66)が稼働中であることを示している。
【0052】
固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)からの情報を読み取ったRFIDセンサ70は、当該情報をホスト制御部81に情報送信する(
図7中のステップS32)。
【0053】
RFIDセンサ70から固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)の識別情報を受け取ったホスト制御部81は、稼働情報管理部85に情報送信要求を行う(
図7中のステップS33)。
【0054】
ホスト制御部81からの情報送信要求を受けた稼働情報管理部85は、その時点でのダイカスト鋳造機65の稼働状況に関する情報をホスト制御部81に対して情報送信する(
図7中のステップS34)。このとき稼働情報管理部85からホスト制御部81に対して送信される情報は、例えば、
図9中の符号βで示されるような情報であり、具体的には、鋳造機Aで使用されている金型Aの鋳造数が1,000ショットである、などというものである。
【0055】
固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)からの個別の識別情報と、稼働情報管理部85からの稼働状況に関する情報を受け取ったホスト制御部81は、情報解析を行う(
図7中のステップS35)。この情報解析によって、
図9中の符号γで示される表中のデータのように、固定型用の金型用RFIDタグ61(61a)からの個別の識別情報と、稼働情報管理部85からの稼働状況に関する情報が互いに紐付けされることで、例えば、鋳造機Aで使用されている「0001」の番号情報を持つ金型Aの固定ホルダー(固定型66)の鋳造数が1,000ショットであり、今後、この固定型66がどの程度使用を継続できるか、あるいは取り換え時期はどの程度か、などといった操業上の判断を行う際の根拠情報として使用することができる。
【0056】
なお、ダイカスト鋳造機65に用いられる部材については、金型を構成する固定型66や可動型67のように金型用RFIDタグ61(61a,61b)を配置可能な部材だけではなく、熱影響を受ける部材のように使用環境によっては金型用RFIDタグ61(61a,61b)の配置が困難な部材も存在する。そこで、例えばダイカスト装置65に用いられる部品のうち、金型用RFIDタグ61を取り付けることのできない部品であって、金型を構成する固定型66ごと又は可動型67ごとに用いられる部品については、ホスト制御部81が、金型用RFIDタグ61が提供する金型の固有の識別情報と、稼働情報管理部85からの情報を紐付けすることで、金型用RFIDタグ61が配置された金型の使用履歴が、部品の使用履歴であると推定して管理すればよい。
【0057】
このような推定管理の具体例としては、
図9中の符号αで示す表中の「RFIDなし」の「スリーブ」について、
図9中の符号βで示す表中の鋳造機Aの金型Aの鋳造数が「1,000」ショットであることを推定適用し、
図9中の符号γで示すように、当該「スリーブ」の鋳造数が「1,000」ショットであると判定することができる。
【0058】
なお、金型用RFIDタグ61(61a,61b)の配置が困難な部材については、上述した「スリーブ」の他に、イヌキピンやダイス、埋子、湯押えなどの部品を想定することができる。
【0059】
また、上述した本実施形態の金型使用履歴自動管理システム200については、さらなる使用方法が存在する。例えば、
図6で示すように、本実施形態に係る金型使用履歴自動管理システム200は、ダイカスト鋳造機65の操作を行う作業者のヘルメットに取り付けられる作業者用RFIDタグ62を含む構成とすることができる。この作業者用RFIDタグ62は、作業者の位置情報をホスト制御部81に対して認識させることができる。
【0060】
そこで、主として
図7を参照することで、本実施形態の金型使用履歴自動管理システム200が、作業者用RFIDタグ62からの情報を用いてホスト制御部81に実行させる処理の具体的内容についての説明を行う。
【0061】
図7の下段で示すように、ヘルメットに作業者用RFIDタグ62が取り付けられた作業者が、ダイカスト鋳造機65に対して所定の距離に近づいた場合に、RFIDセンサ70が作業者用RFIDタグ62からの情報を読み取れるように設定しておく。この場合、所定の距離とは、ダイカスト鋳造機65に対して作業者が近付くと危険が発生する虞のある距離である。このように危険な距離に作業者が近付くと、RFIDセンサ70が作業者用RFIDタグ62からの情報を読み取る(ステップS41)。また、作業者用RFIDタグ62からの情報を読み取ったRFIDセンサ70は、当該情報をホスト制御部81に送信する(ステップS42)。
【0062】
RFIDセンサ70から作業者用RFIDタグ62の読み取り情報を受け取ったホスト制御部81は、当該情報に対する判定を行い(ステップS43)、その判定結果が危険なものであると判定した場合には、ダイカスト鋳造機65を停止するべく鋳造機停止指令を実行する(ステップS44)。なお、危険か否かの判定については、RFIDセンサ70から作業者用RFIDタグ62の読み取り情報を受け取ったことをもって危険と判定してもよいし、さらには、稼働情報管理部85からの情報を取得し、当該情報を加味して判定するようにしてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態の金型使用履歴自動管理システム200を用いることで、ダイカスト鋳造機65に用いられる部品の履歴管理や、部品のメンテナンスのタイミングの把握、部品の寿命予想分析、部品等の在庫管理や部品探索、部品の棚卸の容易化、ダイカスト鋳造機65での作業の安全性向上を図ることが可能となる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0065】
100 製造設備品位置情報管理システム、11 ロケーションRFIDタグ、12 製造設備品用RFIDタグ、20 RFIDセンサ、21 ロケーション認識用RFIDセンサ、22 製造設備品認識用RFIDセンサ、31 ホスト制御部、41 インターネット回線、200 金型使用履歴自動管理システム、61 金型用RFIDタグ、61a 固定型用の金型用RFIDタグ、61b 可動型用の金型用RFIDタグ、62 作業者用RFIDタグ、65 ダイカスト鋳造機、66 固定型、67 可動型、70 RFIDセンサ、81 ホスト制御部、85 稼働情報管理部、91 インターネット回線。