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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091653
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、硬化物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20240628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240628BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059210
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2020143426の分割
【原出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅子
(57)【要約】
【課題】加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れる粘着剤組成物の提供。
【解決手段】粘着剤組成物は、架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70~0℃であるアクリル系ポリマー(a)と、脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート及びブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)と、を含み、(a)の総質量に対する、架橋性官能基を有する単量体単位の含有量が0.1~20質量%であり、(b2)の含有量が(a)100質量部に対して0.1~20質量部である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下であるアクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート及びブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)と、を含み、
前記アクリル系ポリマー(a)の総質量に対する、架橋性官能基を有する単量体単位の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記架橋剤成分(b2)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数が2以上である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ブロック剤が活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ブロック剤が活性メチレン系化合物であり、
前記活性メチレン系化合物が2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ブロック剤が活性メチレン系化合物であり、
前記活性メチレン系化合物が2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤成分(b2)の重量平均分子量Mwが1.0×10以上1.0×10以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートが、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、及びイソシアヌレート構造からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記アクリル系ポリマー(a)が、炭素数が1以上20以下のアルキル基をエステル基の末端に有するアクリル酸エステル単位を1種以上含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記架橋性官能基が水酸基、カルボキシ基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である、請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量Mwが3.0×10以上2.5×10以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を熱又は光によって硬化させてなる、硬化物。
【請求項12】
基材と、
前記基材上に粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物の硬化物からなる、粘着シート。
【請求項13】
前記粘着剤層の厚みが0.1μm以上1000μm以下である、請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
前記粘着剤組成物を厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、120℃で2時間乾燥することにより算出されるゲル分率が20質量%以上98質量%以下である、請求項12又は13に記載の粘着シート。
【請求項15】
前記粘着剤組成物を厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える、幅20mm及び長さ100mmの粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に、被着体としてSUS304BAの鋼板を用いて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.05N/20mm以上40N/20mm以下である、請求項12~14のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、硬化物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、水酸基やカルボキシ基を有するポリマーにおいて、常温以上の比較的低温から150℃程度までの工業的に利用しやすい温度で架橋可能であり、基材等に対する密着性に優れ、常温では適度なポットライフを有する。そのため、粘着剤、接着剤、塗料、プラスチック等様々な用途に使用されている。その中でも、粘着剤用途において、芳香族系、脂環族系及び脂肪族系ポリイソシアネートが使用されている。しかしながら、粘着剤に含まれるポリマーがカルボキシ基を有する場合に、脂環族系及び脂肪族系ポリイソシアネートを架橋剤成分として用いると、1時間以内という短時間で急激な増粘やゲル化してしまうため、量産レベルでは使用し難い課題がある。また、架橋官能基量が多い場合に増粘しやすいという課題もある。
【0003】
特許文献1には、カルボキシ基含有アクリル系樹脂に、多官能イソシアネート系化合物と、β-ジカルボニル化合物及び炭素数が2以上のアルコールを配合させてなる粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-259922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着剤組成物は、多官能イソシアネート系化合物からなる架橋剤成分に加えて、さらに2種の化合物を添加する必要がある点において煩雑である。さらに、β-ジカルボニル化合物としてアセチルアセトンを配合した場合に、該アセチルアセトンは急性毒性を有し、沸点が140℃と高いことから、粘着剤組成物の加熱後にも硬化物中に残存する可能性がある。したがって、ゲル化や増粘を抑制可能で、配合する成分の数がより少なく、より安全な組成である粘着剤組成物が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れる粘着剤組成物、並びに、前記粘着剤組成物を用いた硬化物及び粘着剤シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下であるアクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b1)と、
2級若しくは3級アルコール(c)と、を含む、
又は
前記アクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート及びブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)と、を含み、
前記アクリル系ポリマー(a)の総質量に対する、架橋性官能基を有する単量体単位の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記架橋剤成分(b1)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下であり、
前記2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して5質量部以上300質量部以下であり、
前記架橋剤成分(b2)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、粘着剤組成物。
(2) 前記脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数が2以上である、(1)に記載の粘着剤組成物。
(3) 前記2級若しくは3級アルコール(c)が3級アルコールを含む、(1)又は(2)に記載の粘着剤組成物。
(4) 前記ブロック剤が活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(5) 前記ブロック剤が活性メチレン系化合物であり、
前記活性メチレン系化合物が2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含む、(1)~(4)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(6) 前記ブロック剤が活性メチレン系化合物であり、
前記活性メチレン系化合物が2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含む、(1)~(5)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(7) 前記架橋剤成分(b1)及び前記架橋剤成分(b2)の重量平均分子量Mwがそれぞれ1.0×10以上1.0×10以下である、(1)~(6)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(8) 前記脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートが、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、及びイソシアヌレート構造からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、(1)~(7)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(9) 前記アクリル系ポリマー(a)が、炭素数が1以上20以下のアルキル基をエステル基の末端に有するアクリル酸エステル単位を1種以上含む、(1)~(8)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(10) 前記架橋性官能基が水酸基、カルボキシ基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である、(1)~(9)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。(11) 前記アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量Mwが3.0×10以上2.5×10以下である、(1)~(10)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物。
(12) (1)~(11)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物を熱又は光によって硬化させてなる、硬化物。
(13) 基材と、
前記基材上に粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、(1)~(11)のいずれか一つに記載の粘着剤組成物の硬化物からなる、粘着シート。
(14) 前記粘着剤層の厚みが0.1μm以上1000μm以下である、(13)に記載の粘着シート。
(15) 前記粘着剤組成物を厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、120℃で2時間乾燥した際のゲル分率が20質量%以上98質量%以下である、(13)又は(14)に記載の粘着シート。
(16) 前記粘着剤組成物を厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える、幅20mm及び長さ100mmの粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に、被着体としてSUS304BAの鋼板を用いて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.05N/20mm以上40N/20mm以下である、(13)~(15)のいずれか一つに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の粘着剤組成物によれば、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れる粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
【0010】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
【0011】
本明細書において、「構成単位」とは、ポリイソシアネートやブロックポリイソシアネート、アクリル系ポリマーを構成する構造において、一分子の単量体(モノマー)に起因する構造を意味する。例えば、架橋性官能基を有する単量体単位とは、アクリル系ポリマー中の一分子の架橋性官能基を有する単量体(モノマー)に起因する構造を示す。構成単位は、単量体の(共)重合反応によって直接形成された単位であってもよく、(共)重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
【0012】
≪粘着剤組成物≫
本実施形態の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下であるアクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b1)と、
2級若しくは3級アルコール(c)と、を含む、
又は
前記アクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート及びブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)と、を含む。
【0013】
すなわち、本実施形態の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下であるアクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b1)と、
2級若しくは3級アルコール(c)と、を含む。
或いは、本実施形態の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下であるアクリル系ポリマー(a)と、
脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート及びブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)と、を含む。
【0014】
前記アクリル系ポリマー(a)の総質量に対する、架橋性官能基を有する単量体単位の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、0.1質量%以上18質量%以下が好ましく、0.1質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上12質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。架橋性官能基を有する単量体単位の含有量が上記範囲内であることで、加熱硬化後の粘着性を良好なものとすることができる。架橋性官能基を有する単量体単位の含有量は、例えば、合成に使用した全単量体の総質量に対する、架橋性官能基を有する単量体の質量の割合(百分率)を算出することで得られる。或いは、例えば、アクリル系ポリマー(a)の酸価や水酸基価の測定と、赤外分光(IR)分析法、核磁気共鳴(NMR)分析法や質量分析法による測定とを組み合わせることで、算出することができる。
【0015】
本実施形態の粘着剤組成物が架橋剤成分(b1)を含む場合に、前記架橋剤成分(b1)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下であり、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下であることがさらに好ましく、0.2質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。架橋剤成分(b1)の含有量が上記範囲内であることで、加熱硬化後の粘着剤の凝集力と粘着力を良好なものとすることができる。架橋剤成分(b1)の含有量は、例えば、粘着剤組成物の製造時のアクリル系ポリマー(a)及び架橋剤成分(b1)の配合量から算出することができる。或いは、架橋剤成分(b1)の含有量は、例えば、IR分析法、NMR分析法、質量分析法によって測定することができる。
また、前記2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して5質量部以上300質量部以下であり、10質量部以上250質量部以下が好ましく、15質量部以上250質量部以下がより好ましく、20質量部以上250質量部以下がさらにより好ましく、26質量部以上250質量部以下がさらに好ましく、28質量部以上250質量部以下がよりさらに好ましく、40質量部以上200質量部以下が特に好ましく、45質量部以上200質量部以下がより特に好ましく、50質量部以上200質量部以下が最も好ましい。
2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が上記下限値以上であることで、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、ポットライフに優れる粘着剤組成物とすることができる。一方で、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が上記上限値以下であることで、粘着力が保持された粘着剤組成物が得られる。2級若しくは3級アルコール(c)の含有量は、例えば、粘着剤組成物の製造時のアクリル系ポリマー(a)及び2級若しくは3級アルコール(c)の配合量から算出することができる。或いは、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量は、例えば、IR分析法、NMR分析法、質量分析法によって測定することができる。
【0016】
本実施形態の粘着剤組成物が架橋剤成分(b2)を含む場合に、前記架橋剤成分(b2)の含有量が前記アクリル系ポリマー(a)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下であり、0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下がさらに好ましく、0.1質量部以上5質量部以下が特に好ましく、0.5質量部以上4質量部以下が最も好ましい。架橋剤成分(b2)の含有量が上記下限値以上であることで、凝集力と粘着力を優れたものとすることができ、一方上記上限値以下であることで加熱硬化後の粘着力及びポットライフを良好に保つことができる。架橋剤成分(b2)の含有量は、例えば、粘着剤組成物の製造時のアクリル系ポリマー(a)及び架橋剤成分(b2)の配合量から算出することができる。或いは、架橋剤成分(b2)の含有量は、例えば、IR分析法、NMR分析法、質量分析法によって測定することができる。
【0017】
本実施形態の粘着剤組成物は、上記構成を有することで、加熱硬化後の粘着性、凝集力を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れる。
次いで、本実施形態の粘着剤組成物に含まれる各成分について以下に詳細を説明する。
【0018】
<アクリル系ポリマー(a)>
アクリル系ポリマー(a)は、架橋性官能基を有し、ガラス転移温度Tgが-70℃以上0℃以下である。
アクリル系ポリマー(a)は、架橋性官能基を有する重合性アクリルモノマー単位を1種以上含み、且つ架橋性官能基を有さない重合性アクリルモノマー単位を1種以上含み、これらモノマーを共重合させることで得られる。
【0019】
架橋剤成分(b)と架橋し得る架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基等が挙げられるが、中でも、水酸基が好ましい。
アクリル系ポリマー(a)は、架橋性官能基を1種類単独で含んでいてもよく、異なる種類の架橋性官能基を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。すなわち、アクリル系ポリマー(a)は、一分子中に1個以上の架橋性官能基を有する重合性モノマーを1種類単独で重合させてなるものであってもよく、異なる種類の架橋性官能基を有する重合性モノマーを2種類以上組み合わせて共重合させてなるものであってもよい。
【0020】
前記一分子中に1個以上の架橋性官能基を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、アクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、アクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル等の水酸基を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、メタクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル等の水酸基を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(iv)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。(v)メタクリル酸グリシジル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する重合性モノマー。
【0021】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(ii)(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の不飽和アミド。
(iii)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル。
【0022】
さらに、前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとして参考文献1(特開平1-261409号公報)及び参考文献2(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を用いてもよい。
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0023】
中でも、アクリル系ポリマー(a)は、炭素数が1以上20以下のアルキル基をエステル基末端に有するアクリル酸エステル単位を1種以上含むことが好ましい。
炭素数が1以上20以下のアルキル基をエステル基末端に有するアクリル酸エステル単位としては、架橋性官能基を含有するものであってもよく、含有しないものであってもよい。
架橋性官能基を含有するアクリル酸エステル単位が有するアルキル基の炭素数としては、1以上20以下であり、1以上18以下が好ましく、2以上18以下がより好ましい。 一方、架橋性官能基を含有しないアクリル酸エステル単位が有するアルキル基の炭素数としては、1以上20以下であり、1以上18以下が好ましく、2以上18以下がより好ましく、4以上18以下がさらに好ましい。
【0024】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリル系ポリマー(a)を得ることができる。
【0025】
水系ベースのアクリル系ポリマー(a)を得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0026】
[アクリル系ポリマー(a)のガラス転移温度]
アクリル系ポリマー(a)のガラス転移温度Tgは-70℃以上0℃以下であり、-70℃以上-5℃以下が好ましく、-70℃以上-10℃以下がより好ましく、-70℃以上-15℃以下がさらに好ましい。アクリル系ポリマー(a)のガラス転移温度Tgが上記範囲内であることで、粘着剤組成物の硬化物の粘着力及び凝集力がより優れる傾向がある。アクリル系ポリマー(a)のガラス転移温度は、例えば、アクリル系ポリマー(a)溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いることができる。
【0027】
[アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量]
アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量Mwは、3.0×10以上2.5×10以下であることが好ましく、4.0×10以上2.0×10以下であることがより好ましく、4.5×10以上1.8×10であることがさらに好ましく、4.5×10以上1.7×10以下であることが特に好ましい。アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量が上記範囲内であることで、粘着剤組成物の硬化物の粘着力、凝集力、及び耐久性がより優れる傾向がある。アクリル系ポリマー(a)の重量平均分子量Mwは、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0028】
<架橋剤成分(b)>
本実施形態の粘着剤組成物は、架橋剤成分(b)として、ポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b1)又はブロックポリイソシアネートを含む架橋剤成分(b2)を含有する。
【0029】
[架橋剤成分(b1)]
架橋剤成分(b1)に含まれるポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートである。
ジイソシアネートとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。ジイソシアネートとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらジイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(1)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート。
(2)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート。
【0030】
また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、架橋剤成分を低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
【0031】
また、ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれかを単独で用いてもよく、或いはそれらを組み合わせて用いてもよいが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることが好ましく、HDI及びIPDIを用いることが特に好ましい。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを用いることで、粘着剤の弾性率及び凝集力を向上させることができる。
【0032】
ポリイソシアネートにおいて、粘着剤の弾性率及び凝集力向上の観点において、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比(脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位/脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位)は、50/50以上95/5以下が好ましく、55/45以上93/7以下がより好ましく、60/40以上91/9以下がさらに好ましく、65/35以上90/10以下がさらに好ましい。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が上記下限値以上であることで、粘着剤の伸びや柔軟性が低下することをより効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、粘着剤の弾性率及び凝集力をより向上させることができる。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中の脂肪族ジイソシアネート濃度及び脂環族ジイソシアネート濃度とから、未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量を算出する。次いで、仕込んだ脂肪族ジイソシアネートの質量及び脂環族ジイソシアネートの質量から、上記算出した未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれ脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量とする。次いで、脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量を脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量で除することで、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が得られる。
【0033】
ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、以下に示すようなイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0034】
(ポリオール)
ポリイソシアネートは、上述したジイソシアネートと平均水酸基官能基数が2.0以上8.0以下であるポリオールとから誘導されたものであることが好ましい。これにより、得られるポリイソシアネートの平均イソシアネート基数をより大きくすることができる。当該ポリイソシアネートでは、ポリオールの水酸基と、ジイソシアネートのイソシアネート基との反応により、ウレタン基が形成されている。
【0035】
ポリオールの平均水酸基官能基数は2.0以上8.0以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上5以下がさらに好ましい。なお、ここでいうポリオールの平均水酸基官能基数はポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
【0036】
ポリオールの数平均分子量としては、粘着剤の柔軟性の観点から、50以上5000以下が好ましく、100以上4500以下が好ましく、130以上4300以下がより好ましく、200以上4200以下がさらに好ましい。
ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、架橋剤成分(b1)を含む粘着組成物は、粘着力、凝集力、及び柔軟性により優れる。ポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0037】
このようなポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、3価以上の多価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル社の「プラクセル303」(数平均分子量300)、「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)、「プラクセル312」(数平均分子量1250)、「プラクセル320」(数平均分子量2000)、「プラクセル205」(数平均分子量530)「プラクセル210」(数平均分子量1000)、「プラクセル220」(数平均分子量2000)、「プラクセル230」(数平均分子量3000)、「プラクセル240」(数平均分子量4000)等が挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネートは、アロファネート構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びビウレット構造からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の構造を有することができる。中でも、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、及びイソシアヌレート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有することが好ましい。
【0039】
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート構造を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン構造を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン構造を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート構造を形成するイソシアヌレート化反応、ウレア構造を形成するウレア(尿素)化反応、ウレタン構造を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット構造を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びビウレット構造からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0040】
(1)アロファネート構造含有ポリイソシアネートの製造方法
アロファネート構造含有ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
アロファネート構造の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
【0041】
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。 また、後述するイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(以下、「イソシアヌレート型ポリイソシアネート」と称する場合がある)も当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
【0042】
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppmであることが好ましく、20質量ppmであることがより好ましく、40質量ppmであることがさらに好ましく、80質量ppmであることが特に好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、800質量ppmであることがより好ましく、600質量ppmであることがさらに好ましく、500質量ppmであることが特に好ましい。
すなわち、上述したアロファネート化反応触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以上600質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることが特に好ましい。
【0043】
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、40℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましく、100℃であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の上限値としては、180℃であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、40℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上160℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上140℃以下であることが特に好ましい。 アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0044】
(2)ウレトジオン構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレトジオン構造を有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、イソシアネートモノマーを、ウレトジオン化反応触媒を用いて、又は、熱により、多量化することによって製造することができる。
ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリアルキルホスフィン、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィン、ルイス酸等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等が挙げられる。
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとしては、例えば、トリス-(ジメチルアミノ)ホスフィン等が挙げられる。
シクロアルキルホスフィンとしては、例えば、シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、酸塩化亜鉛等が挙げられる。
【0045】
ウレトジオン化反応触媒の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進しうる。
ウレトジオン化反応触媒を用いる場合には、所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止することが好ましい。
また、ウレトジオン化反応触媒を用いることなく、上記脂肪族ジイソシアネート及び上記脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートを加熱してウレトジオン基を有するポリイソシアネートを得る場合、その加熱温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。また、加熱時間は1時間以上4時間以下が好ましい。
【0046】
(3)イミノオキサジアジンジオン構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイミノオキサジアジンジオン構造含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、通常、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を用いる。
イミノオキサジアジンジオン化触媒としては、例えば、以下の1)又は2)に示すもの等が挙げられる。
1)一般式M[F]、又は、一般式M[F(HF)]で表される(ポリ)フッ化水素
(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
2)一般式R-CR’-C(O)O-、又は、一般式R=CR’-C(O)O-で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、又は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基である。)
【0047】
1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3-トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸、3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等が挙げられる。
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、1)が好ましく、安全性の観点からは、2)が好ましい。
【0048】
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の下限値は、特に限定されないが、反応性の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制や反応制御の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5000ppmが好ましく、2000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量は、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上2000ppm以下がより好ましく、20ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
【0049】
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の下限値は、特に限定されないが、反応速度の観点から、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制の観点から、150℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。 すなわち、イミノオキサジアジンジオン化の反応温度は、40℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上110℃以下がさらに好ましい。
【0050】
イミノオキサジアジンジオン化反応が所望のイミノオキサジアジンジオン基含有量に達した時点で、イミノオキサジアジンジオン化反応を停止させることができる。イミノオキサジアジンジオン化反応は、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、停止することができる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。これにより、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を中和させる、又は、熱分解若しくは化学分解等により不活性化させる。反応停止後、必要があれば、ろ過を行う。
【0051】
(4)イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
【0052】
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0053】
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0054】
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0055】
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0056】
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ブロックポリイソシアネート成分をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
【0057】
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0058】
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0059】
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。 強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0061】
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
【0063】
(5)ウレア構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレア構造を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、水又は1級若しくは2級アミンと、を混合し、必要に応じてウレア化反応触媒を添加することで製造することができる。
ウレア構造を含有するポリイソシアネートは、例えば、23℃以上の温度で、30分間以上(好ましくは60分間以上)撹拌することで得られる。
【0064】
(6)ウレタン構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレタン構造を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、上記ポリオールと、必要に応じて上記ポリオール以外のアルコールと、を混合し、必要に応じてウレタン化反応触媒を添加することで製造することができる。
前記ポリオールとしては、上記「ポリオール」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
前記ポリオール以外のアルコールとしては、上記「イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法」において例示されたもののうち、上記「ポリオール」において例示されたものを除くものが挙げられる。
ウレタン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
ウレタン化反応温度としては、50℃以上160℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることがより好ましい。
ウレタン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
また、ウレタン化反応時間としては、30分以上4時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましく、1時間以上2時間以下であることがさらに好ましい。
ポリオール(及び、必要に応じてポリオール以外のアルコール)の水酸基のモル量に対するイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、2/1以上50/1以下が好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができる。当該モル比が上記上限値以下であることによって、ウレタン基含有ポリイソシアネートの収率をより高められる。
【0065】
(7)ビウレット構造含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからビウレット構造を含有するポリイソシアネートを誘導するためのビウレット化剤としては、特に限定されないが、例えば、水、1価の第3級アルコール、蟻酸、有機第1モノアミン、有機第1ジアミン等が挙げられる。
ビウレット化剤1モルに対して、イソシアネート基を6モル以上とすることが好ましく、10モル以上とすることがより好ましく、10モル以上80モル以下とすることがさらに好ましい。ビウレット化剤1モルに対するイソシアネート基のモル量が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネートが十分に低粘度になり、上記上限値以下であれば、樹脂膜としたときの低温硬化性がより向上する。
【0066】
また、ビウレット化反応の際に溶剤を用いてもよい。溶剤は、イソシアネートモノマーと水等のビウレット化剤を溶解し、反応条件下で均一相を形成させるものであればよい。 前記溶剤として具体的には、例えば、エチレングリコール系溶剤、リン酸系溶剤等が挙げられる。
エチレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、エチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
リン酸系溶剤としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、エチレングリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート又はジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、リン酸系溶剤としては、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルが好ましい。
【0067】
ビウレット化反応温度としては、70℃以上200℃以下が好ましく、90℃以上180℃以下がより好ましい。上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に防止できる傾向にある。
【0068】
上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
【0069】
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
【0070】
(ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数は、粘着剤組成物の硬化性及び凝集力を高める点で、2以上が好ましく、2以上20以下がより好ましく、2以上10以下がさらに好ましく、2以上9以下が特に好ましく、2以上8以下が最も好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0071】
[架橋剤成分(b2)]
架橋剤成分(b2)に含まれるブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとブロック剤との反応物である。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基がブロック剤でブロック化されている。
【0072】
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネートであり、上記「架橋剤成分(b1)」で例示されたポリイソシアネートと同様のものが挙げられる。
【0073】
(ブロック剤)
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤として具体的には、例えば、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
【0074】
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジフェニル等の1級アルキル基を有するマロン酸エステル;マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸イソプロピルエチル等の2級アルキル基を有するマロン酸エステル;マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸tert-ブチルエチル等の3級アルキル基を有するマロン酸エステル;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、アセチルアセトン等。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
【0075】
上記ブロック剤の中でも、入手容易性や、得られるブロックポリイソシアネートの粘度や硬化温度、硬化時間の点で、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、活性メチレン系化合物がより好ましく、2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は3級アルキル基を有するマロン酸エステルがさらに好ましい。
2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)である。ブロック剤は、化合物(I)を1種単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。中でも、ブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0076】
【化1】
【0077】
(一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、環状であってもよい。
12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、環状であってもよい。但し、R12、R13及びR14のうち水素原子は1つ以下である。)
【0078】
11が置換基を有しないアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。置換基を有しないアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0079】
また、R11が置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
【0080】
11が置換基を有するアミノ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアルキル基である。
置換基としてヒドロキシ基を有するアミノ基としては、ヒドロキシアミノ基(-NH-OH)が挙げられる。
置換基としてアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、2、6-ジメチルピペリジル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンアミノ基、ヒドロキシエチレンアミノ基、ヒドロキシプロピレンアミノ基、ヒドロキシブチレンアミノ基等が挙げられる。
2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基、2、6-ジメチルピペリジル基、ヘキサメチレンイミノ基等の環状2級アミノ基が挙げられる。
【0081】
11が置換基を有しないアリール基である場合、該アリール基としては、炭素数は5以上30以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6以上14以下であることがさらに好ましい。前記アリール基として具体的には、例えば、単環式芳香族炭化水素基、2環式芳香族炭化水素基、3環式芳香族炭化水素基、4環式芳香族炭化水素基、5環式芳香族炭化水素基、6環式芳香族炭化水素基、7環式芳香族炭化水素基等が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
2環式芳香族炭化水素基としては、例えば、インダニル基、インデニル基、ペンタレニル基、アズレニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基等が挙げられる。
3環式芳香族炭化水素基としては、例えば、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
4環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基等が挙げられる。
5環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ペリレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
6環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフトピレニル基等が挙げられる。
7環式芳香族炭化水素基としては、例えば、コロネニル基等が挙げられる。
【0082】
11が置換基を有するアリール基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアリール基としては、例えば、フェノール基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アニリン基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アミノフェノール基(ヒドロキシアニリン基)等が挙げられる。
【0083】
11が置換基を有しないアルコキシ基である場合、該アルコキシ基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。前記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、n-ヘキトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキトキシ基、3-メチルヘキトキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、2,4-ジメチルペントキシ基、3,3-ジメチルペントキシ基、3-エチルペントキシ基、2,2,3-トリメチルブトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、2-エチルヘキトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基等が挙げられる。
【0084】
11が置換基を有するアルコキシ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンオキシ基、ヒドロキシエチレンオキシ基、ヒドロキシプロピレンオキシ基、ヒドロキシブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、アミノメチレンオキシ基、アミノエチレンオキシ基、アミノプロピレンオキシ基、アミノブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノエチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノプロピリジンオキシ基等が挙げられる。
【0085】
中でも、R11としては、置換基を有する又は有しないアルコキシ基が好ましく、置換基を有しないアルコキシ基がより好ましい。
【0086】
一般式(I)中、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち水素原子は1つ以下である。
上記アルキル基及び上記アリール基としては、上記「R11」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
上記2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基等の環状2級アミノ基が挙げられる。
中でも、R12が水素原子又は置換基を有する若しくは有しないアルキル基であり、且つ、R13及びR14がそれぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しないアルキル基であることが好ましく、R12が水素原子又は置換基を有しないアルキル基であり、且つ、R13及びR14がそれぞれ独立に置換基を有しないアルキル基がより好ましい。
【0087】
化合物(I)として好ましいものとして具体的には、例えば、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸イソプロピルエチル、マロン酸ジ-sec-ブチル等の2級アルキル基を有するマロン酸エステル;マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル等の3級アルキル基を有するマロン酸エステルが挙げられる。
中でも、化合物(I)が2級アルキル基を有するマロン酸エステルである場合には、マロン酸ジイソプロピルが特に好ましく、化合物(I)が3級アルキル基を有するマロン酸エステルである場合には、マロン酸ジ-tert-ブチルが特に好ましい。
【0088】
(ブロックポリイソシアネートの製造方法)
ブロックポリイソシアネートは、例えばポリイソシアネートと上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
【0089】
ポリイソシアネートと、ブロック剤との混合比率は、粘着剤組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を1とした場合におけるブロック剤に含まれる活性水素基のモル比が、0.5以上3.0以下であることが好ましく、0.8以上2.0以下であることがより好ましく、0.9以上1.5以下であることがより好ましく、0.9以上1.3以下であることがさらに好ましく、0.9以上1.2以下であることが特に好ましい。
【0090】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0091】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上130℃以下で行うことが好ましく、10℃以上120℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0092】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法等を用いて、イソシアネート基の消失又は減少を確認することによって、判断することができる。
【0093】
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。 溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する固形分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、15質量部以上90質量部以下であることが好ましく、20質量部以上85質量部以下であることがより好ましい。
【0094】
[架橋剤成分(b)の物性]
架橋剤成分(b1)及び架橋剤成分(b2)の重量平均分子量Mwは、それぞれ8.0×10以上1.0×10以下が好ましく、1.0×10以上8.0×10以下がより好ましく、1.5×10以上7.0×10以下がさらに好ましい。重量平均分子量Mwが上記範囲内であることで、架橋剤成分(b1)及び架橋剤成分(b2)の粘度をより良好に保つことができる。重量平均分子量Mwは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある)により測定することができる。
【0095】
<2級若しくは3級アルコール(c)>
本実施形態の粘着剤組成物は、架橋剤成分(b1)を含む場合に、2級若しくは3級アルコール(c)を含有する。本実施形態の粘着剤組成物は、所定の量の2級若しくは3級アルコール(c)を含むことで、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、凝集力及びポットライフに優れる。
【0096】
2級若しくは3級アルコール(c)としては、例えば、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の2級アルコール;tert-ブチルアルコール等の3級アルコール等が挙げられる。これら2級若しくは3級アルコールを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、2級アルコールのみ又は3級アルコールのみを用いてもよく、2級アルコール及び3級アルコールを組み合わせて用いてもよい。
【0097】
中でも、2級若しくは3級アルコール(c)は、3級アルコールを含むことが好ましく、tert-ブチルアルコールを含むことがより好ましく、tert-ブチルアルコールであることがさらに好ましい。
【0098】
<その他成分>
本実施形態の粘着剤組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、アクリル系ポリマー(a)中の架橋性官能基と反応しうる架橋剤成分(b)以外の硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0099】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0100】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。 前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0101】
前記溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0102】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0103】
<粘着剤組成物の製造方法>
粘着剤組成物は、従来公知の方法により製造できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、コーター等によりキザイフィルムに塗工した後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
【0104】
本実施形態の粘着剤組成物は、軽量化、柔軟化、密着性の向上効果を図るため、発泡させてもよい。発泡方法としては、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤若しくは有機系発泡剤等の化学的発泡剤又は物理的発泡剤等の添加、或いは熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。
【0105】
また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0106】
本実施形態の粘着剤組成物は、粘着力、凝集力調整のため粘着付与樹脂を添加してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂、スチレン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これら粘着付与樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の軟化点は90℃以上160℃以下であることが好ましい。
【0107】
≪硬化物≫
本実施形態の硬化物は、上述した粘着剤組成物を熱又は光によって硬化させてなる。 本実施形態の硬化物は、粘着性が良好である。
【0108】
本実施形態の硬化物は、例えば、上述した粘着剤組成物を溶解可能な溶剤に溶解し、コーター等を用いて、被着体上に塗工し、必要に応じて乾燥し、その後熱又は光によって硬化させることにより製造することができる。
粘着剤組成物を被着体上に塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等を使用して塗布する方法が挙げられる。前記塗工後に乾燥を行う場合は、例えば、得られた積層体を乾燥機等に入れ、例えば、50℃以上150℃以下の温度で、1分間以上30分間以下乾燥させる加熱乾燥方法が挙げられる。或いは、その他の乾燥方法としては、例えば自然乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。
【0109】
熱による硬化である場合に、加熱温度としては、70℃以上150℃以下とすることができ、75℃以上145℃以下とすることができ、80℃以上140℃以下とすることができる。
【0110】
光による硬化である場合に、光としては、例えば、紫外線等が挙げられる。紫外線照射する方法としては、例えば、キセノンランプ、キセノン-水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ等の公知の紫外線光照射装置を用いる方法が挙げられる。紫外線の照射量としては、例えば、0.01J/cm以上5J/cm以下の範囲とすることができる。
【0111】
≪粘着シート≫
本実施形態の粘着シートは、基材と、前記基材上に粘着剤層と、を備える。
粘着剤層は、上述した粘着剤組成物の硬化物からなる。
本実施形態の粘着シートにおいて、粘着剤層は、粘着性に優れる。
【0112】
基材としては、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、キャストコート紙、感熱紙、インクジェット紙等の紙;織布、不織布等の布;ポリ塩化ビニル、合成紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリイミド等の樹脂フィルム;多孔質ポリプロピレンフィルム等の多孔質樹脂フィルム;PET、ポリオレフィン等にアルミニウム等を金属蒸着した蒸着フィルム;金属箔等が例示される。基材としては、表面に剥離処理が施されたものであってもよい。
【0113】
本実施形態の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚みとしては、使用される用途に応じて適宜決定することができるが、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.5μm以上900μm以下であることがより好ましく、1μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、3μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0114】
本実施形態の粘着シートは、例えば、粘着剤組成物を基材上に塗工し、必要に応じて乾燥し、その後硬化させることによって製造することができる。塗工方法、硬化方法としては、上記「硬化物」において例示された方法と同様の方法が挙げられる。
【0115】
本実施形態の粘着シートは、上記粘着剤組成物を厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、120℃で2時間乾燥した際のゲル分率が20質量%以上98質量%以下であることが好ましく、25質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、33質量%以上98質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上98質量%以下であることが特に好ましく、37質量%以上98質量%以下であることが最も好ましい。ゲル分率が上記範囲内であることで、硬化性により優れる。
【0116】
本実施形態の粘着シートは、上記粘着剤組成物を厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥して硬化させてなる厚み45μmの粘着剤層を備える、幅20mm及び長さ100mmの粘着シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後に、被着体としてSUS304BAの鋼板を用いて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.05N/20mm以上40N/20mm以下であることが好ましく、0.1N/20mm以上40N/20mm以下であることがより好ましく、0.1N/20mm以上38N/20mm以下であることがさらに好ましく、0.1/20mm以上35N/20mm以下であることが特に好ましく、0.1/20mm以上33N/20mm以下であることが最も好ましい。
【実施例0117】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0118】
<試験項目>
合成例で得られたアクリル系ポリマー、ポリイソシアネート成分及びブロックポリイソシアネート成分について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0119】
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネート成分のNCO含有率を測定するために、ブロックポリイソシアネート成分については、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
【0120】
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(質量%)を算出した。
【0121】
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0122】
[物性2]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。ポリイソシアネート成分の数平均分子量を測定するために、ブロックポリイソシアネート成分については、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。また、重量平均分子量については、ブロックポリイソシアネート成分をそのまま測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
【0123】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0124】
[物性3]
(平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネート成分の平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、ブロックポリイソシアネート成分については、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネート成分の数平均分子量であり、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロックポリイソシアネート成分については、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率であり、上記「物性1」において算出された値を用いた。
【0125】
平均イソシアネート官能基数 = (Mn×MCO含有率×0.01)/42
【0126】
[物性4]
(ポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートの固形分量)
ポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートの固形分量は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に実施例及び比較例で製造されたポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネート約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートを均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートを105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートを精秤した(W2)。次いで、下記式からポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートの固形分量(質量%)を算出した。
【0127】
ポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートの固形分量(質量%)
= W2/W1×100
【0128】
[物性5]
(ガラス転移温度Tg)
アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、アクリル系ポリマー溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いた。
【0129】
[粘着シートの作製1]
(180度ピール粘着力測定用粘着シートの作製)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物をアプリケーターにより乾燥後の厚みが45μmになるように、25μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥した。その後、23℃、50%RH環境下で7日間保管し、180度ピール粘着力測定用粘着シートを得た。尚、ポットライフが短くゲル化等起こるものはゲル化前に塗工を行った。一方、調整後直ちにゲル化しないものに関しては粘着剤組成物を作製して8時間経過後に塗工を行い、180度ピール粘着力測定用粘着シートを作製した。
【0130】
[粘着シートの作製2]
(ゲル分率測定用粘着シートの作製)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物をアプリケーターにより乾燥後の厚みが45μmになるように、厚み38μmの剥離処理をされたPETフィルム上に塗工し、130℃で3分間乾燥した。その後、23℃、50%RH環境下で7日間保管し、ゲル分率測定用粘着シートを得た。
【0131】
[評価1]
(ポットライフ)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物を23℃50%RH環境下で8時間保管後の粘度を測定した。以下の式を用いて増粘率(倍)を算出した。8時間後にゲル化しないものについてポットライフが良好であると評価し、増粘率が2倍以下であるものについてポットライフがより良好であると評価し、増粘率が1倍に近いもの、又は、1倍以下であるものをポットライフがさらに良好であると評価し、増粘率が0.9倍以上1.1倍以下であるものを特に良好であると評価した。
【0132】
(増粘率)=(保管8時間後の粘着剤組成物の粘度)/(配合直後の粘着剤組成物の粘度)
【0133】
[評価2]
(180度ピール粘着力)
上記方法で得られた粘着シートを幅20mm、長さ100mmに切断し、試験片を得た。被着体としてSUS304BAの鋼板を用いて、2kgローラーを1往復させて試験片を鋼板に圧着させ、23℃で30分間養生後、速度300mm/minで180度ピール粘着力を測定した。180度ピール粘着力が0.05N/20mm以上(粘着性があるもの)であるものについて粘着性が良好であると評価した。
【0134】
なお、実施例1~17、22及び比較例4については、粘着力保持率(%)を、以下の式を用いて算出した。粘着力保持率が90%以上130%以下であるものについて粘着性の保持が良好であると評価した。
【0135】
(粘着力保持率)=
{(2級若しくは3級アルコールを配合した粘着剤組成物の180度ピール粘着力)/(2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力)}×100
【0136】
すなわち、実施例1~4、9~16及び比較例4で得られた粘着剤組成物については、比較例1で得られた粘着剤組成物の180度ピール粘着力を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力」として上記式を用いて粘着力保持率を算出した。
また、実施例5~6で得られた粘着剤組成物については、比較例2で得られた粘着剤組成物の180度ピール粘着力を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力」として上記式を用いて粘着力保持率を算出した。
また、実施例7~8で得られた粘着剤組成物については、比較例3で得られた粘着剤組成物の180度ピール粘着力を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力」として上記式を用いて粘着力保持率を算出した。
また、実施例17で得られた粘着剤組成物については、比較例6で得られた粘着剤組成物の180度ピール粘着力を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力」として上記式を用いて粘着力保持率を算出した。
また、実施例22で得られた粘着剤組成物については、比較例5で得られた粘着剤組成物の180度ピール粘着力を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物の180度ピール粘着力」として上記式を用いて粘着力保持率を算出した。
【0137】
[評価3]
(ゲル分率)
上記方法で得られた粘着シートを0.1g以上0.2g以下程度採取し、メッシュ状のシートにつつみ、酢酸エチルに1週間浸漬させた後、120℃で2時間乾燥した。次いで、以下の式を用いてゲル分率(質量%)を算出した。ゲル分率が20質量%以上であるものについて硬化性が良好であると評価した。
【0138】
(ゲル分率)
=(乾燥後のサンプル質量)/(酢酸エチル投入前のサンプル質量)×100
【0139】
なお、実施例1~17、22及び比較例4については、ゲル分率保持率(%)として、以下の式を用いて算出した。ゲル分率保持率が90%以上であるものについて硬化性の保持が良好であると評価した。
【0140】
(ゲル分率保持率)=
((2級若しくは3級アルコールを配合した粘着剤組成物のゲル分率)/(2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率))×100
【0141】
すなわち、実施例1~4、9~16及び比較例4で得られた粘着剤組成物については、比較例1で得られた粘着剤組成物のゲル分率を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率」として上記式を用いてゲル分率保持率を算出した。
また、実施例5~6で得られた粘着剤組成物については、比較例2で得られた粘着剤組成物のゲル分率を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率」として上記式を用いてゲル分率保持率を算出した。
また、実施例7~8で得られた粘着剤組成物については、比較例3で得られた粘着剤組成物のゲル分率を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率」として上記式を用いてゲル分率保持率を算出した。
また、実施例17で得られた粘着剤組成物については、比較例6で得られた粘着剤組成物のゲル分率を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率」として上記式を用いてゲル分率保持率を算出した。
また、実施例22で得られた粘着剤組成物については、比較例5で得られた粘着剤組成物のゲル分率を「2級若しくは3級アルコールを配合していない粘着剤組成物のゲル分率」として上記式を用いてゲル分率保持率を算出した。
【0142】
<アクリル系ポリマー(a)の合成>
[合成例1-1]
(アクリル系ポリマーa-1の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)97質量部と、アクリル酸(AA)3質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15質量部を投入し、65℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-1を得た。アクリル系ポリマーa-1の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.8×10であり、ガラス転移温度Tgは-52.2℃であった。
【0143】
[合成例1-2]
(アクリル系ポリマーa-2の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)82質量部と、メチルアクリレート(MA)14質量部と、アクリル酸(AA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、63℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-2を得た。アクリル系ポリマーa-2の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.6×10であり、ガラス転移温度Tgは-58.1℃であった。
【0144】
[合成例1-3]
(アクリル系ポリマーa-3の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)96.4質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)0.6質量部と、アクリル酸(AA)3質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、65℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-3を得た。アクリル系ポリマーa-3の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.9×10であり、ガラス転移温度Tgは-52.1℃であった。
【0145】
[合成例1-4]
(アクリル系ポリマーa-4の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)81.5質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)0.5質量部と、メチルアクリレート(MA)14質量部と、アクリル酸(AA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、63℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-4を得た。アクリル系ポリマーa-4の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.8×10であり、ガラス転移温度Tgは-57.9℃であった。
【0146】
[合成例1-5]
(アクリル系ポリマーa-5の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)96質量部と、アクリル酸(AA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、62℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-5を得た。アクリル系ポリマーa-5の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.9×10であり、ガラス転移温度Tgは-66.2℃であった。
【0147】
[合成例1-6]
(アクリル系ポリマーa-6の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、イソノニルアクリレート(iNA)96質量部と、アクリル酸(AA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、61℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-6を得た。アクリル系ポリマーa-6の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは7.2×10であり、ガラス転移温度Tgは-54.2℃であった。
【0148】
[合成例1-7]
(アクリル系ポリマーa-7の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)96質量部と、アクリル酸(AA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、62℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-7を得た。アクリル系ポリマーa-7の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.9×10であり、ガラス転移温度Tgは-66.2℃であった。
【0149】
[合成例1-8]
(アクリル系ポリマーa-8の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)87質量部と、N-ビニルピロリドン10質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)3質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチル150質量部を投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤としてAIBN0.15質量部を投入し、65℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマーa-8を得た。アクリル系ポリマーa-8の溶媒を除いて測定した重量平均分子量Mwは6.6×10であり、ガラス転移温度Tgは-57.1℃であった。
【0150】
<ポリイソシアネート及びブロックポリイソシアネートの合成>
[合成例2-1]
(ポリイソシアネートP-1の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部を仕込み、3官能のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル308」(商品名)、平均水酸基官能基数:3、数平均分子量850、水酸基価195mgKOH/g)224.9質量部(NCO/OH=15.2となる量)を撹拌しながら、反応器内温度を100℃に保持し110分間保持した。収率が41質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネートP-1を得た。得られたポリイソシアネートP-1のNCO含有率は9.3質量%、平均イソシアネート官能基数は3.9、数平均分子量Mnは1.76×10、重量平均分子量Mwは2.62×10であった。また、得られたポリイソシアネートP-1についてH-NMR分析、IRスペクトル分析を行い、ウレタン構造が存在することを確認した。
【0151】
[合成例2-2]
(ブロックポリイソシアネートBP-1の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたポリイソシアネートP-1のイソシアネート基100mol%に対して、マロン酸ジイソプロピル及びマロン酸ジ-tert-ブチルをそれぞれ80mol%及び20mol%となる量比で仕込み、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて固形分が65質量%になるように調製した。次いで、溶液を攪拌しながらナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部滴下した後、溶液温度が52℃になるように外浴を調製し、52℃で7時間以上反応させて、固形分が65質量%のブロックポリイソシアネートBP-1を得た。ブロックポリイソシアネートBP-1の平均イソシアネート官能基数は3.9、重量平均分子量Mwは6.21×10であった。
【0152】
[合成例2-3]
(ポリイソシアネートP-2の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導される3官能のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)、平均水酸基官能基数:3、数平均分子量300):5.2質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を86℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を62℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が51質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-2」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP-2のNCO含有率は18.9質量%、平均イソシアネート官能基数は5.4、数平均分子量は1200、重量平均分子量Mwは3.18×10であった。また、得られたポリイソシアネートP-2についてH-NMR分析を行い、イソシアヌレート基が存在することを確認した。
【0153】
[合成例2-4]
(ブロックポリイソシアネートBP-2の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-3で得られたポリイソシアネートP-2のイソシアネート基100mol%に対して、マロン酸ジイソプロピル及びマロン酸ジ-tert-ブチルをそれぞれ85mol%及び15mol%となる量比で仕込み、DPDMを加えて固形分が65質量%になるように調製した。次いで、溶液を攪拌しながらナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部滴下した後、溶液温度が48℃になるように外浴を調製し、48℃で8時間以上反応させて、固形分が65質量%のブロックポリイソシアネートBP-2を得た。ブロックポリイソシアネートBP-2の平均イソシアネート官能基数は5.4、重量平均分子量Mwは8.22×10であった。
【0154】
[合成例2-5]
(ポリイソシアネートP-3の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:70質量部、IPDI:30質量部、及び、3価アルコールである、トリメチロールプロパン(平均水酸基官能基数:3、分子量:134):3.2質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を85℃に1.5時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を78℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエート:0.012質量部を加え、収率が44質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDI及びIPDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-3」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP-3のNCO含有率は19.0質量%、平均イソシアネート基数は5.5、数平均分子量は1210、重量平均分子量Mwは2.95×10であった。また、得られたポリイソシアネートP-3についてH-NMR分析を行い、イソシアヌレート基が存在することを確認した。
【0155】
[合成例2-6]
(ブロックポリイソシアネートBP-3の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-5で得られたポリイソシアネートP-3のイソシアネート基100mol%に対して、マロン酸ジイソプロピル及びマロン酸ジ-tert-ブチルをそれぞれ83mol%及び17mol%となる量比で仕込み、DPDMを加えて固形分が65質量%になるように調製した。次いで、溶液を攪拌しながらナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部滴下した後、溶液温度が52℃になるように外浴を調製し、52℃で8時間以上反応させて、固形分が65質量%のブロックポリイソシアネートBP-3を得た。ブロックポリイソシアネートBP-3の平均イソシアネート官能基数は5.5、重量平均分子量Mwは7.22×10であった。
【0156】
[合成例2-7]
(ポリイソシアネートP-4の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部を仕込み、反応器内温度を50℃に昇温後、撹拌しながらトリメチロールプロパン8.0質量部を加え、反応器内温度を67℃に保持し5時間保持した後に反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去し、ポリイソシアネートP-4を得た。得られたポリイソシアネートP-4のNCO含有率は17.3質量%、平均イソシアネート官能基数は3.5、数平均分子量Mnは8.52×10、重量平均分子量Mwは1.22×10であった。また、得られたポリイソシアネートP-4についてH-NMR分析、IRスペクトル分析を行い、ウレタン構造が存在することを確認した。
【0157】
[合成例2-8]
(ブロックポリイソシアネートBP-4の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-7で得られたポリイソシアネートP-4のイソシアネート基100mol%に対して、マロン酸ジイソプロピル及びマロン酸ジ-tert-ブチルをそれぞれ80mol%及び20mol%となる量比で仕込み、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて固形分が65質量%になるように調製した。次いで、溶液を攪拌しながらナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部滴下した後、溶液温度が53℃になるように外浴を調製し、53℃で7時間以上反応させて、固形分が65質量%のブロックポリイソシアネートBP-4を得た。ブロックポリイソシアネートBP-4の平均イソシアネート官能基数は3.5、重量平均分子量Mwは3.25×10であった。
【0158】
[合成例2-9]
(ブロックポリイソシアネートBP-5の合成)
温度計、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたポリイソシアネートP-1のイソシアネート基100mol%に対して、マロン酸ジイソプロピル及びマロン酸ジ-tert-ブチルをそれぞれ90mol%及び10mol%となる量比で仕込み、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて固形分が65質量%になるように調製した。次いで、溶液を攪拌しながらナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部滴下した後、溶液温度が52℃になるように外浴を調製し、52℃で7時間以上反応させて、固形分が65質量%のブロックポリイソシアネートBP-5を得た。ブロックポリイソシアネートBP-5の平均イソシアネート官能基数は3.9、重量平均分子量Mwは6.91×10であった。
【0159】
<粘着剤組成物の製造>
[実施例1~22及び比較例4]
(粘着剤組成物A-a1~A-a22及びA-b4の製造)
アクリル系ポリマー100質量部に対して、ポリイソシアネートの種類及び添加量、並びに、tert-ブチルアルコール(tBu-OH)及び酢酸エチルの添加量が表1~表3又は表6に記載の量となるように、ポリイソシアネートにtBu-OH、酢酸エチルの順に加え撹拌後、アクリル系ポリマー加え、均一になるまで撹拌して、固形分25質量%の粘着剤組成物を得た。
【0160】
[実施例23~36]
(粘着剤組成物A-a23~A-a36の製造)
アクリル系ポリマー100質量部に対して、ブロックポリイソシアネートの種類及び添加量、並びに、酢酸エチルの添加量が表4~表5に記載の量となるように予め混合しておいた溶液を加え、均一になるまで撹拌して、固形分25質量%の粘着剤組成物を得た。
【0161】
[比較例1~3及び5~6]
(粘着剤組成物A-b1~A-b3及びA-b5~A-b6の製造)
アクリル系ポリマー100質量部に対して、ポリイソシアネートの種類及び添加量、並びに、酢酸エチルの添加量が表6に記載の量となるように予め混合しておいた溶液を加え、均一になるまで撹拌して、固形分25質量%の粘着剤組成物を得た。
【0162】
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物について、上記方法を用いて、各種評価を行った。結果を以下の表1~表6に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
【表6】
【0169】
表1~表3から、アクリル系ポリマー(a)、架橋剤成分(b1)としてポリイソシアネート、及び2級若しくは3級アルコール(c)を含む粘着剤組成物A-a1~A-a22(実施例1~22)では、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れていた。
また、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が異なる粘着剤組成物A-a1~A-a4(実施例1~4)の比較において、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が減少するほど、加熱硬化後の粘着性がより優れる傾向がみられ、一方、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量が増加するほど、ゲル分率がより高く(硬化性がより優れ)、ゲル分率保持率がより優れる傾向がみられた。
【0170】
表4~表5から、アクリル系ポリマー(a)、及び架橋剤成分(b2)としてブロックポリイソシアネートを含む粘着剤組成物A-a23~A-a36(実施例23~36)では、粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れていた。
また、ブロックポリイソシアネートの含有量が異なる粘着剤組成物A-a23~A-a24、A-a30~A-a31(実施例23~24、30~31)の比較、粘着剤組成物A-a25~A-a26(実施例25~26)の比較、粘着剤組成物A-a27~A-a28(実施例27~28)、及び粘着剤組成物A-a32~A-a33(実施例32~33)の比較において、ブロックポリイソシアネートの含有量が増加するほど、硬化性に優れる傾向がみられ、一方、ブロックポリイソシアネートの含有量が減少するほど、加熱硬化後の粘着性に優れる傾向がみられた。
また、ブロックポリイソシアネートの種類が異なる粘着剤組成物A-a28及びA-a34(実施例28及び34)の比較において、平均イソシアネート官能基数がより大きいブロックポリイソシアネートを含むものほど、硬化性がより優れる傾向がみられ、一方、重量平均分子量Mwがより小さいブロックポリイソシアネートを含むものほど、加熱硬化後の粘着性により優れる傾向がみられた。
また、アクリル系ポリマー(a)の種類が異なる粘着剤組成物A-a23及び-a27(実施例23及び27)の比較、粘着剤組成物A-a24及びA-a28(実施例24及び28)の比較、並びに、粘着剤組成物A-a25及びA-a29(実施例25及び29)の比較において、架橋性官能基としてカルボキシ基を有する単量体単位の含有量がより多いアクリル系ポリマー(a)を用いたものほど、硬化性により優れる傾向がみられた。 また、アクリル系ポリマー(a)の種類が異なる粘着剤組成物A-a34及びA-a35(実施例34及び35)の比較において、アクリル系ポリマーa-4を用いたもののほうが加熱硬化後の粘着性により優れる傾向がみられ、一方、アクリル系ポリマーa-8を用いたもののほうが硬化性により優れる傾向がみられた。
【0171】
一方、表6から、アクリル系ポリマー(a)、及び架橋剤成分(b1)としてポリイソシアネートを含むが、2級若しくは3級アルコール(c)を含まない粘着剤組成物A-b1~A-b3及びA-b5~A-b6(比較例1~3及び5~6)では、硬化性及び加熱硬化後の粘着性は良好であったが、保管時にゲル化し、ポットライフが不良であった。 また、アクリル系ポリマー(a)、架橋剤成分(b1)としてポリイソシアネート、及び2級若しくは3級アルコール(c)を含むが、2級若しくは3級アルコール(c)の含有量がアクリル系ポリマー(a)100質量部に対して1質量部である、粘着剤組成物A-b4(比較例4)では、硬化性及び加熱硬化後の粘着性は良好であったが、保管時にゲル化し、ポットライフが不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本実施形態の粘着剤組成物によれば、加熱硬化後の粘着性を良好に保ちながら、硬化性及びポットライフに優れる粘着剤組成物を提供することができる。