(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091670
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20240628BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E02F3/43 B
E02F9/20 N
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060750
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2020074337の分割
【原出願日】2020-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥脇 立太
(72)【発明者】
【氏名】大井 健
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健治
(57)【要約】
【課題】自動排土制御においてバケットの最下点の低下を抑える。
【解決手段】自動制御判定部は、自動排土制御を開始するか否かを判定する。排土制御部は、自動排土制御を開始すると判定した場合に、バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまで、バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成する。排土制御部は、バケットの傾きが、自動排土制御の開始時の傾きから排土完了角度になるまでの間に、ブームを上げ方向に回転させる第2指令を生成する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械本体と、前記作業機械本体に回転可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットとを備える作業機械の制御システムであって、
自動排土制御を開始するか否かを判定する自動制御判定部と、
前記自動排土制御を開始すると判定した場合に、前記バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまで、前記バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成し、前記バケットの傾きが、前記自動排土制御の開始時の傾きから前記排土完了角度になるまでの間に、前記ブームを上げ方向に回転させる第2指令を生成する排土制御部と
を備える制御システム。
【請求項2】
前記排土制御部は、前記バケットの傾きが、前記自動排土制御の開始時の傾きから前記排土完了角度になるまでの間に、前記アームを一方向に回転させる第3指令を生成する 請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記排土制御部は、前記アームと前記バケットとを接続するピンと、前記バケットの刃先とを結ぶ線分を直径とする円より内側の点である基準点の移動量が低減するように前記第2指令を生成する
請求項1または請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記基準点は、前記バケットの側面の幾何重心である
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
ベッセルの位置を特定するベッセル特定部と、
前記バケットを側面から見たときの輪郭の位置を特定するバケット特定部と、
前記バケットを側面から見たときの輪郭と前記ベッセルとの距離が、所定の近接閾値以内である場合に、前記ブームを上げ方向に回転させる第4指令、または前記アームを一方向に回転させる第5指令を生成し、前記第1指令の出力を停止する回避制御部と
を備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記自動排土制御を開始すると判定した場合に、前記自動排土制御による前記バケットの高さの変化量以上、ベッセルの高さより高い排土開始位置まで前記バケットが移動するように前記ブームを回転させる第6指令を生成する排土位置調整部
を備え、
前記排土制御部は、前記バケットの最下点が前記排土開始位置まで移動した後に、前記第1指令を生成する
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記排土位置調整部は、前記排土開始位置の前記ベッセルの水平方向の位置を、同一の前記ベッセルへの前記自動排土制御の回数に応じて異ならせる
請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
作業機械本体と、前記作業機械本体に回転可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットとを備える作業機械の制御方法であって、
自動排土制御を開始するか否かを判定するステップと、
前記自動排土制御を開始すると判定した場合に、前記バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまで、前記バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成するステップと、 前記第1指令によって、前記バケットの傾きが、前記自動排土制御の開始時の傾きから前記排土完了角度になるまでの間に、前記ブームを上げ方向に回転させる第2指令を生成するステップと
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業システムの制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機械の自動積込制御に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の作業機械は、バケットが運搬車両に接触することを防ぎながら自動的にホイスト旋回制御を行い、その後、掘削物を排土する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業機械は、バケットを排土方向に回転させることで掘削物を排土する。一般的にバケットの外殻のうちバケットピンから最も遠い点はバケットの刃先であるため、バケットを排土方向に回転させるとバケットの最下点が下がる。そのため、特許文献1に記載の作業機械は、バケットの回転による最下点の軌跡を考慮して、高い位置から掘削物を排土させる必要がある。一方で、排土位置が高いほど、運搬車両から掘削物がこぼれる可能性が高くなる。掘削物のこぼれが多いと、運搬車両の目標停車位置周辺の足場が荒れて停車が困難になる。
本開示の目的は、自動排土制御において低い位置での排土を実現できる制御システムおよび制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、制御システムは、作業機械本体と、前記作業機械本体に回転可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットとを備える作業機械の制御装置であって、自動排土制御を開始するか否かを判定する自動制御判定部と、前記自動排土制御を開始すると判定した場合に、前記バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまで、前記バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成するバケット制御部と、前記バケット指令によって、前記バケットの傾きが、前記自動排土制御の開始時の傾きから前記排土完了角度になるまでの間に、前記ブームを上げ方向に回転させる第2指令を生成するブーム制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、制御システムは、自動排土制御においてバケットの最下点の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る作業システムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る作業機械100の外観図である。
【
図3】第1の実施形態に係る管制装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る作業機械の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における掘削前のバケットの軌跡の例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における掘削後のバケットの軌跡の例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土時のバケットの軌跡の例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る回避制御の例を示す第1の図である
【
図10】第1の実施形態に係る回避制御の例を示す第2の図である
【
図11】第1の実施形態に係る管制装置による自動掘削積込指示の出力方法を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態に係る作業機械による自動掘削積込制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《作業システム1》
図1は、第1の実施形態に係る作業システムの構成を示す概略図である。
作業システム1は、作業機械100と、1または複数の運搬車両200と、管制装置300とを備える。作業システム1は、管制装置300によって作業機械100と運搬車両200とを自動制御する無人搬送システムである。
【0009】
運搬車両200は、管制装置300から受信するコースデータ(例えば速度データ、運搬車両200が進むべき座標)に基づいて無人走行する。運搬車両200と管制装置300とは、アクセスポイント400を介した通信により接続される。管制装置300は、運搬車両200から位置および方位を取得し、これらに基づいて運搬車両200の走行に用いるコースデータを生成する。管制装置300は、コースデータを運搬車両200に送信する。運搬車両200は、受信したコースデータに基づいて無人走行する。なお、第1の実施形態に係る作業システム1は、無人搬送システムを備えるが、他の実施形態においては、一部または全部の運搬車両200が有人運転されてもよい。この場合、管制装置300は、コースデータおよび積込に関する指示の送信を行う必要がないが、運搬車両200の位置および方位を取得する。
【0010】
作業機械100は、管制装置300から受信する指示に従って無人制御される。作業機械100と管制装置300とは、アクセスポイント400を介した通信により接続される。
【0011】
作業機械100および運搬車両200は、作業現場(例えば、鉱山、採石場)に設けられる。他方、管制装置300は、任意の場所に設けられてよい。例えば、管制装置300は、作業機械100および運搬車両200から離れた地点(例えば、市街、作業現場内)に設けられてよい。
【0012】
《運搬車両200》
第1の実施形態に係る運搬車両200は、ベッセル201ベッセルを備えるダンプトラックである。なお、他の実施形態に係る運搬車両200は、ダンプトラック以外の運搬車両であってもよい。
運搬車両200は、ベッセル201、位置方位演算器210および制御装置220を備える。位置方位演算器210は、運搬車両200の位置および方位を演算する。位置方位演算器210は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。GNSSの例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。2つの受信器は、それぞれ運搬車両200の異なる位置に設置される。位置方位演算器210は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における運搬車両200の位置を検出する。位置方位演算器210は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、運搬車両200の向く方位を演算する。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、例えば運搬車両200が慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を備え、慣性計測装置の計測結果に基づいて方位を演算してもよい。この場合、運搬車両200の走行軌跡に基づいて慣性計測装置のドリフトを補正してもよい。
【0013】
制御装置220は、位置方位演算器210が検出した位置および演算した方位を管制装置300に送信する。制御装置220は、管制装置300からコースデータおよび排土指示、積込点P3への進入指示、および積込点P3からの発進指示を受信する。制御装置220は、受信したコースデータに従って運搬車両200を走行させ、または排土指示に従って運搬車両200のベッセル201を上下させる。制御装置220は、運搬車両が指示に基づいて目的地に到達して停止したときに、目的地(例えば、
図4に示す積込点P3)への到達を示す到達通知を管制装置300に送信する。
【0014】
《作業機械100》
図2は、第1の実施形態に係る作業機械100の外観図である。
第1の実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベル以外の作業車両であってもよい。
作業機械100は、油圧により作動する作業機110と、作業機110を支持する旋回体120と、旋回体120を支持する走行体130とを備える。
【0015】
作業機110は、ブーム111と、アーム112と、バケット113と、ブームシリンダ114と、アームシリンダ115と、バケットシリンダ116と、ブーム角度センサ117と、アーム角度センサ118と、バケット角度センサ119とを備える。
【0016】
ブーム111の基端部は、旋回体120の前部にピンを介して取り付けられる。
アーム112は、ブーム111とバケット113とを連結する。アーム112の基端部は、ブーム111の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット113は、土砂などの掘削物を掘削するための刃と掘削物を搬送するための容器とを備える。バケット113の基端部は、アーム112の先端部にピンを介して取り付けられる。掘削物の例としては、土砂、鉱石、砕石、石炭などが挙げられる。
【0017】
ブームシリンダ114は、ブーム111を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ114の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ114の先端部は、ブーム111に取り付けられる。
アームシリンダ115は、アーム112を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ115の基端部は、ブーム111に取り付けられる。アームシリンダ115の先端部は、アーム112に取り付けられる。
バケットシリンダ116は、バケット113を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ116の基端部は、アーム112に取り付けられる。バケットシリンダ116の先端部は、バケット113に取り付けられる。
【0018】
ブーム角度センサ117は、ブーム111に取り付けられ、ブーム111の傾斜角を検出する。
アーム角度センサ118は、アーム112に取り付けられ、アーム112の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ119は、バケット113に取り付けられ、バケット113の傾斜角を検出する。
第1の実施形態に係るブーム角度センサ117、アーム角度センサ118、およびバケット角度センサ119は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサが取付部を基準とした相対角を検出するものであってもよいし、各シリンダのストロークを計測しシリンダのストロークを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0019】
作業機械100は、位置方位演算器123、傾斜計測器124、制御装置125を備える。
【0020】
位置方位演算器123は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器123は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器123は、一方の受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(例えば、旋回体120の旋回中心)の位置を検出する。
位置方位演算器123は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。なお、制御装置125は、現場座標系における旋回体120の代表点の位置を用いることで、現場座標系の位置と機械座標系の位置とを互いに変換することができる。機械座標系とは、旋回体120の代表点を基準とする直交座標系である。
【0021】
傾斜計測器124は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器124は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器124は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0022】
制御装置125は、旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム111、アーム112およびバケット113の傾斜角、走行体130の走行速度、ならびに旋回体120の姿勢を、管制装置300に送信する。以下、作業機械100または運搬車両200が各種センサから収集したデータを車両データともよぶ。なお、他の実施形態に係る車両データは、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る車両データは、旋回速度、位置、方位、傾斜角、走行速度、姿勢のいずれかを含まなくてもよいし、その他のセンサによって検出された値を含んでもよいし、検出された値から演算された値を含んでもよい。
制御装置125は、管制装置300から制御指示を受信する。制御装置125は、受信した制御指示に従って、作業機110、旋回体120、または走行体130を駆動させる。制御装置125は、制御指示に基づく駆動が完了したときに、管制装置300に自動掘削積込制御の完了通知を送信する。制御装置125の詳細な構成については後述する。
【0023】
《管制装置300》
図3は、第1の実施形態に係る管制装置300の構成を示す概略ブロック図である。 管制装置300は、作業機械100の動作および運搬車両200の走行を管理する。 管制装置300は、プロセッサ310、メインメモリ330、ストレージ350、インタフェース370を備えるコンピュータである。ストレージ350は、プログラムを記憶する。プロセッサ310は、プログラムをストレージ350から読み出してメインメモリ330に展開し、プログラムに従った処理を実行する。管制装置300は、インタフェース370を介してネットワークに接続される。プロセッサ310の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0024】
プログラムは、管制装置300のコンピュータに発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、管制装置300は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ310によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0025】
ストレージ350は、制御位置記憶部351、走行経路記憶部352としての記憶領域を有する。ストレージ350の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ350は、管制装置300の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース370を介して管制装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ350は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0026】
制御位置記憶部351は、掘削点P22(
図6を参照)および積込点P3の位置データを記憶する。掘削点P22および積込点P3は、例えば予め作業現場の管理者等の操作によって設定される点である。なお、制御位置記憶部351が記憶する掘削点P22および積込点P3の位置データは、作業の進捗等によって管理者等によって更新されてもよい。
【0027】
図4は、走行経路の例を表す図である。
走行経路記憶部352は、運搬車両200ごとに走行経路Rを記憶する。走行経路Rは、2つのエリアA(例えば、積込場A1と排土場A2)を結ぶあらかじめ定められた接続経路R1、ならびにエリアA内の経路である進入経路R2、アプローチ経路R3および退出経路R4を有する。進入経路R2は、エリアA内において接続経路R1の一端である待機点P1と所定の切り返し点P2とを接続する経路である。アプローチ経路R3は、エリアA内の切り返し点P2と積込点P3または排土点P4とを接続する経路である。退出経路R4は、エリアA内の積込点P3または排土点P4と接続経路R1の他端である出口点P5とを接続する経路である。切り返し点P2は、積込点P3の位置に応じて管制装置300によって設定される点である。管制装置300は、積込点P3が変更されるたびに、進入経路R2、アプローチ経路R3および退出経路R4を計算する。
【0028】
プロセッサ310は、プログラムの実行により、収集部311、運搬車両特定部312、走行コース生成部313、通知受信部314、ベッセル特定部315、自動掘削積込指示部316を備える。
【0029】
収集部311は、アクセスポイント400を介して作業機械100および運搬車両200から車両データを収集する。
【0030】
運搬車両特定部312は、収集部311が収集した運搬車両200の車両データに基づいて、掘削物の積込対象となる運搬車両200を特定する。
走行コース生成部313は、走行経路記憶部352が記憶する走行経路と、収集部311が収集した車両データとに基づいて、運搬車両200の移動を許可する領域を示すコースデータを生成し、コースデータを運搬車両200に送信する。コースデータは、例えば、運搬車両200が所定の速度で一定時間以内に走行可能かつ他の運搬車両200の走行経路と重複しない領域を表すデータである。
【0031】
通知受信部314は、作業機械100から自動掘削積込制御の完了通知を受信し、運搬車両200から積込点P3への到達通知を受信する。
【0032】
ベッセル特定部315は、運搬車両200から積込点P3への到達通知を受信した場合に、運搬車両200の車両データに基づいて、現場座標系におけるベッセル201の位置を特定する。例えば、ベッセル特定部315は、ベッセル201の底面の中心位置を特定する。ベッセル特定部315は、例えば、以下の手順でベッセル201の位置を特定する。ベッセル特定部315は、ベッセル201を含む運搬車両200の形状を表す三次元データを、運搬車両200の位置データが示す位置に、ベッセル201の底面が上を向くように配置する。、ベッセル特定部315は、三次元データを運搬車両200の方位データが示す方向に回転させることで、現場座標系におけるベッセル201の位置を特定する。ベッセル特定部315は、特定したベッセル201の位置を作業機械100に送信する。
【0033】
自動掘削積込指示部316は、制御位置記憶部351が記憶する掘削点P22の位置および積込点P3の位置を含む自動掘削積込指示を作業機械100に送信する。
【0034】
《作業機械の制御装置125》
図5は、第1の実施形態に係る作業機械の制御装置125の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置125は、管制装置300の指示に基づいて作業機械100のアクチュエータを制御する。
制御装置125は、プロセッサ1210、メインメモリ1230、ストレージ1250、インタフェース1270を備えるコンピュータである。ストレージ1250は、プログラムを記憶する。プロセッサ1210は、プログラムをストレージ1250から読み出してメインメモリ1230に展開し、プログラムに従った処理を実行する。制御装置125は、インタフェース1270を介してネットワークに接続される。プロセッサ1210の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0035】
プログラムは、制御装置125のコンピュータに発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置125は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLDなどのカスタムLSIを備えてもよい。この場合、プロセッサ1210によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0036】
ストレージ1250の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1250は、制御装置125の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1270を介して制御装置125に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ1250は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0037】
プロセッサ1210は、プログラムの実行により、車両データ取得部1211、バケット特定部1212、指示受信部1213、座標変換部1214、回避位置特定部1215、掘削位置特定部1216、下げ停止判定部1217、開始位置決定部1218、ダウン旋回制御部1219、掘削制御部1220、ホイスト旋回制御部1221、排土制御部1222、回避制御部1223、指令出力部1224を備える。
【0038】
車両データ取得部1211は、作業機械100が備える各種センサから車両データを取得し、取得した車両データを管制装置300に送信する。
【0039】
バケット特定部1212は、車両データ取得部1211が取得した車両データに基づいて、作業機械100を基準とした機械座標系におけるバケット113の位置を特定する。バケット特定部1212は、刃先および底部を含むバケット113の輪郭上の複数の点の位置を特定する。バケット113の輪郭とは、バケット113の形状のうち異なる面どうし(例えば、側面と底面など)を区分する線をいう。バケット特定部1212は、少なくともバケット113を側面から見たときの輪郭上の複数の点の位置を特定する。
具体的には、バケット特定部1212は、以下の手順でバケット113の輪郭上の複数の点の位置を特定する。バケット特定部1212は、ブーム111の傾斜角から求められるブーム111の絶対角度と既知のブーム111の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム111の先端部の位置を求める。バケット特定部1212は、ブーム111の絶対角度と、アーム112の傾斜角とに基づいて、アーム112の絶対角度を求める。バケット特定部1212は、ブーム111の先端部の位置と、アーム112の絶対角度と、既知のアーム112の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、アーム112の先端部の位置を求める。
バケット特定部1212は、アーム112の絶対角度と、バケット113の傾斜角とに基づいて、バケット113の絶対角度を求める。バケット特定部1212は、アーム112の先端部の位置と、バケット113の絶対角度と、バケット113のピンからバケット113の輪郭上の複数の点までの距離とに基づいて、バケット113の輪郭上の複数の点の位置を求める。
【0040】
指示受信部1213は、管制装置300から自動掘削積込指示を受信する。指示受信部1213は、自動掘削積込指示の受信をもって、自動掘削積込制御を開始すると判定する。自動掘削積込制御は、自動排土制御を含む。つまり、指示受信部1213は、自動排土制御を開始するか否かを判定する自動制御判定部の一例である。
【0041】
座標変換部1214は、管制装置300から、運搬車両200のベッセル201の位置を受信し、車両データ取得部1211が取得した車両データに基づいて、当該ベッセル201の位置を現場座標系から機械座標系に変換する。座標変換部1214は、機械座標系におけるベッセル201の位置を特定する積込容器特定部の一例である。
【0042】
図6は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における掘削前のバケットの軌跡の例を示す図である。
回避位置特定部1215は、作業機械100の位置と、ベッセル201の位置と、制御開始時のバケット113のピンの位置(空荷旋回開始位置P01)とに基づいて、作業機110と運搬車両200とが上方からの平面視において干渉しない点である干渉回避位置P02を特定する。干渉回避位置P02は、空荷旋回開始位置P01と同じ高さを有し、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が、当該旋回中心から排土開始位置P07までの距離と等しく、かつ下方に運搬車両200が存在しない位置である。なお、バケット113のピンは、後述する排土制御によって排土開始位置P07より高い空荷旋回開始位置P01へ移動する。回避位置特定部1215は、例えば、旋回体120の旋回中心を中心とし、当該旋回中心と空荷旋回開始位置P01との距離を半径とする円を特定し、当該円上の位置のうち、バケット113の外形が上方からの平面視で運搬車両200と干渉せず、かつ空荷旋回開始位置P01に最も近い位置を、干渉回避位置P02と特定する。回避位置特定部1215は、運搬車両200の位置、ならびにバケット113の輪郭上の複数の点の位置に基づいて、運搬車両200とバケット113とが干渉するか否かを判定することができる。ここで、「同じ高さ」、「距離が等しい」とは、必ずしも高さまたは距離が完全に一致するものに限られず、多少の誤差やマージンが許容されるものとする。
【0043】
掘削位置特定部1216は、自動掘削積込指示に含まれる掘削点P22から、バケット113のピンから刃先までの距離だけ離れた点を、掘削位置P05として特定する。つまり、バケット113は、排土方向に刃先を向けた所定の掘削姿勢をとっている場合において、バケット113の刃先が掘削点P22に位置するとき、バケット113のピンは掘削位置P05に位置することとなる。
また掘削位置特定部1216は、掘削位置P05より所定高さだけ上方の位置を、旋回終了位置P04に決定する。
【0044】
下げ停止判定部1217は、旋回体120の空荷旋回と同時に作業機110の下げ操作をしているときに、バケット113のピンの高さが旋回終了位置P04と同じ高さになったか否かを判定する。このときのアーム112の先端の位置を、下げ停止位置P03という。
【0045】
図7は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における掘削後のバケットの軌跡の例を示す図である。
開始位置決定部1218は、ベッセル201の位置に基づいて、排土開始位置P07を決定する。具体的には、開始位置決定部1218は、排土開始位置P07の高さを、ベッセル201の高さに、予め求められた自動排土制御によるバケット113の高さの変化量と、バケット113の高さと、バケット113の制御余裕分の高さを加算した高さに決定する。バケット113の高さとは、例えば、地表からバケット113の最下点までの高さである。制御余裕分の高さとは、センサの誤差や制御の遅れによって生じるバケット113の高さの誤差のばらつきに応じて決定される余裕しろである。自動排土制御によるバケット113の最下点の移動距離については後述する。
また、開始位置決定部1218は、同一の運搬車両200への積込回数に応じて、排土開始位置P07のベッセル201の長手方向成分を変化させる。具体的には、開始位置決定部1218は、初めの排土開始位置P07をベッセル201の奥側(運搬車両200の前方側)の位置に決定し、積込回数が多くなるにつれて排土開始位置P07をベッセル201の手前側(運搬車両200の後方側)の位置に移動させる。
【0046】
ダウン旋回制御部1219は、指示受信部1213が掘削積込指示を受信した場合に、掘削位置P05および干渉回避位置P02に基づいて、バケット113を掘削位置P05まで移動させるために、旋回体120、ブーム111、アーム112、およびバケット113を制御するための指令を生成する。すなわち、ダウン旋回制御部1219は、空荷旋回開始位置P01から、干渉回避位置P02、下げ停止位置P03、および旋回終了位置P04を経由して、掘削位置P05に到達するように、各指令を生成する。なお、ダウン旋回とは、バケット113をベッセル201の上から掘削位置まで移動させるために、ブーム111を下げながら旋回体120を旋回させることをいう。
【0047】
掘削制御部1220は、バケット113が掘削位置P05に到達すると、バケット113を掘削方向へ回転させ、また移動させるための指令を生成する。
【0048】
ホイスト旋回制御部1221は、排土開始位置P07および干渉回避位置P02に基づいて、バケット113を排土開始位置P07まで移動させるために、旋回体120、ブーム111、アーム112およびバケット113を制御するための指令を生成する。すなわち、ホイスト旋回制御部1221は、掘削完了位置P05´から、積荷旋回開始位置P06、および干渉回避位置P02を経由して、排土開始位置P07に到達するように、各指令を生成する。このとき、ホイスト旋回制御部1221は、ブーム111およびアーム112が駆動してもバケット113の高さが変化しないように、バケット113を回転させる指令を生成する。なお、排土開始位置P07が干渉回避位置P02より低い場合、ホイスト旋回制御部1221は、干渉回避位置P02から旋回体120を旋回させる指令のみを出力してバケット113のピンが排土開始位置P07に到達した後に、ブーム111を下げる指令を出力し、バケット113のピンを排土開始位置P07へ移動させる。ホイスト旋回制御部1221は、排土開始位置P07までバケット113が移動するようにブーム111を回転させる指令を生成する排土位置調整部の一例である。なお、ホイスト旋回とは、土砂を抱えたバケット113をベッセル201の上へ移動させるために、ブーム111を上げながら旋回体120を旋回させることをいう。
【0049】
排土制御部1222は、バケット113が排土開始位置P07に到達すると、バケット113を排土方向へ回転させるために、ブーム111、アーム112およびバケット113を制御するための指令を生成する。
図8は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土時のバケットの軌跡の例を示す図である。
排土制御部1222は、バケット113の高さの変動を抑えるために、以下の手順で各指令を生成する。排土制御部1222は、バケット113の傾きが所定の排土完了角度になるまで、バケット113を排土方向に回転させる指令を生成する。排土制御部1222は、バケット113の回転中に、例えばバケット113が、当該バケット113の側面の幾何重心Gを中心に回転するようにブーム111およびアーム112を駆動するための指令を生成する。
排土制御部1222による自動排土制御時のバケット113のピンの軌跡Lpは予め計算により求められる。排土制御部1222は、当該軌跡Lpに沿ってバケット113のピンが移動するように、ブーム111およびアーム112を駆動するための指令を生成する。
【0050】
バケット113の絶対角度が排土完了角度になるまでバケット113を排土方向に回転させるときのバケット113の幾何重心Gの軌跡Lgは、予め計算により求めることができる。
図8において、排土開始時のバケット113の位置および傾きは、実線で描画されるバケット113によって表される。また、バケット113のピンの位置を維持したままバケット113を回転させたときのバケット113の位置および傾きは、破線で描画されるバケット113によって表される。なお、バケット113の絶対角度とは、例えば車体座標系または現場座標系における軸に対するバケット113の角度である。軌跡Lgを180度回転させ、始点をバケット113のピンに合わせることで、幾何重心Gの位置を一定に保つためのバケット113のピンの軌跡Lpを求めることができる。
図8において、軌跡Lpに従ってバケット113のピンを移動させながらバケット113を回転させたときのバケット113の位置および傾きは、一点鎖線で描画されるバケット113によって表される。なお、
図8に示すように軌跡Lgを反転させた軌跡が極大点Mを持つ場合、すなわち軌跡Lgを反転させた軌跡が途中から下降する場合、バケット113のピンの軌跡Lpは、当該極大点Mから水平方向に移動するよう定めておく。軌跡Lgを反転させた軌跡は、
図8において破線の矢印で表される。これは、当該極大点を境にブーム111の駆動方向が上げ方向から下げ方向に切り替わることで作業機110の挙動が不安定になることを防ぐためである。
ピンの軌跡Lpは、
図8に示すように、バケット113の上方向かつ手前方向へ向かう。したがって、排土制御部1222は、バケット113の傾きが自動排土制御の開始時の傾きから排土完了角度になるまでの間に、ブーム111を上げ方向に回転させる指令を出力する。また、排土制御部1222は、バケット113の傾きが自動排土制御の開始時の傾きから排土完了角度になるまでの間に、アームを引き方向に回転させる指令を出力する。
なお、
図8に示すように、バケット113のピンを軌跡Lpに沿って移動させながらバケット113を回転させたときのバケット113の最下点の移動距離d1は、バケット113のピンを中心にバケット113を回転させたときの移動距離d0より小さくなる。このように、自動排土制御によるバケット113の最下点の移動距離d1は、予め求めておくことができる。
【0051】
図9および
図10は、第1の実施形態に係る回避制御の例を示す図である。
回避制御部1223は、バケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値th以内である場合に、ブーム111を上げ方向に回転させる指令、またはアーム112を引き方向に回転させる指令を生成し、バケット113を駆動させる指令の出力を停止する。具体的には、回避制御部1223は、ベッセル201とバケット113とを最短距離で結ぶ線分Vの伸びる方向にバケット113を移動させるようにブーム111またはアーム112を駆動させる指令を生成する。例えば、
図9に示すように、ベッセル201の底面とバケット113との距離が最短となる場合、回避制御部1223は、ベッセル201とバケット113とを最短距離で結ぶ線分Vの伸びる上方向へバケット113が移動するように、ブーム111を駆動させる。他方、
図10に示すように、ベッセル201のフロントパネル部分とバケット113との距離が最短となる場合、回避制御部1223は、ベッセル201とバケット113とを最短距離で結ぶ線分Vの伸びる後ろ方向へバケット113が移動するように、アーム112を駆動させる。なお、回避制御部1223は、バケット113を駆動させる指令の出力を停止することに代えて、バケット113の駆動を停止する指令を出力してもよい。なお、他の実施形態においては、回避制御部1223は、ベッセル201のサイドゲート部分とバケット113との距離が最短となる場合に、上方向へバケット113が移動するように、ブーム111を駆動させてもよい。
【0052】
指令出力部1224は、各種指令を出力する。
【0053】
《自動掘削積込制御》
図11は、第1の実施形態に係る管制装置による自動掘削積込指示の出力方法を示すフローチャートである。
管制装置300の通知受信部314が、運搬車両200から積込点P3への到達通知を受信すると(ステップS1)、ベッセル特定部315は、運搬車両200から車両データを取得する(ステップS2)。ベッセル特定部315は、取得した車両データに基づいて現場座標系におけるベッセル201の位置を特定する(ステップS3)。ベッセル特定部315は、特定したベッセル201の位置を作業機械100に送信する。
自動掘削積込指示部316は、制御位置記憶部351から掘削点P22と積込点P3の位置を読み出す(ステップS4)。自動掘削積込指示部316は、読み出した掘削点P22と積込点P3の位置を含む自動掘削積込指示を、作業機械100に送信する(ステップS5)。
【0054】
図12は、第1の実施形態に係る作業機械による自動掘削積込制御を示すフローチャートである。
制御装置125の指示受信部1213が、管制装置300から自動掘削積込指示の入力を受け付けると、
図12に示す自動掘削積込制御を実行する。なお、自動掘削積込制御中、車両データ取得部1211は、所定の周期に従って旋回体120の位置および方位、ブーム111、アーム112およびバケット113の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢を取得する。
【0055】
座標変換部1214は、管制装置300から、現場座標系におけるベッセル201の位置を取得する(ステップS101)。座標変換部1214は、車両データ取得部1211が取得した旋回体120の位置、方位、および姿勢に基づいて、ベッセル201の位置を現場座標系から機械座標系に変換する(ステップS102)。
【0056】
バケット特定部1212、回避位置特定部1215、掘削位置特定部1216、および開始位置決定部1218は、それぞれ空荷旋回開始位置P01、干渉回避位置P02、旋回終了位置P04、および排土開始位置P07を決定する(ステップS103)。
【0057】
ダウン旋回制御部1219は、ステップS103で決定した各制御位置に基づいて掘削位置P05に到達するように、旋回体120、ブーム111、アーム112、およびバケット113を駆動させる指令を生成する。指令出力部1224は、生成した各指令を出力する(ステップS104)。
【0058】
バケット113が掘削位置P05に到達すると、掘削制御部1220は、バケット113を掘削方向へ回転させ、また移動させるために、アーム112およびバケット113を駆動させる指令を生成する。指令出力部1224は、生成した各指令を出力する(ステップS105)。
【0059】
ステップS105の掘削制御が終了すると、ホイスト旋回制御部1221は、ステップS103で決定した各制御位置に基づいて、バケット113を排土開始位置P07まで移動させるために、旋回体120、ブーム111、アーム112およびバケット113を制御するための指令を生成する。指令出力部1224は、ステップS111で生成した各指令を出力する(ステップS106)。
【0060】
バケット113が排土開始位置P07に到達すると、回避制御部1223は、バケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値以内であるか否かを判定する(ステップS107)。バケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値以内でない場合(ステップS107:NO)、排土制御部1222は、バケット113を一定角速度で排土方向へ回転させるための指令を生成する(ステップS108)。排土制御部1222は、バケット113のピンの位置と、軌跡Lpとに基づくPID制御により、ブーム111およびアーム112を駆動させる指令を生成する(ステップS109)。すなわち、排土制御部1222は、ブーム111を上げ方向に回転させる指令と、アーム112を引き方向に回転させる指令とを生成する。指令出力部1224は、ステップS108で生成した指令、およびステップS109で生成した指令を出力する(ステップS110)。
【0061】
他方、バケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値以内である場合(ステップS107:YES)、回避制御部1223は、高さ方向においてバケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値以内となったか否かを判定する(ステップS111)。バケット113とベッセル201との距離が高さ方向において近接閾値以内である場合(ステップS111:YES)、回避制御部1223は、ブーム111を上げ方向に回転させる指令を生成する(ステップS112)。また、回避制御部1223は、水平方向においてバケット113とベッセル201との距離が、所定の近接閾値以内となったか否かを判定する(ステップS113)。バケット113とベッセル201との距離が水平方向において近接閾値以内である場合(ステップS113:YES)、回避制御部1223は、アーム112を引き方向に回転させる指令を生成する(ステップS114)。指令出力部1224は、ステップS107で生成した指令、およびステップS108で生成した指令の少なくとも一方を出力する(ステップS115)。このとき、指令出力部1224は、バケット113を回転させる指令を出力しない。
【0062】
排土制御部1222は、バケット113の傾きが排土完了角度になったか否かを判定する(ステップS116)。バケット113の傾きが排土完了角度になっていない場合(ステップS116:NO)、制御装置125は処理をステップS107に戻し、排土制御を続ける。他方、バケット113の傾きが排土完了角度になった場合(ステップS116:YES)、排土制御部1222は、同一の運搬車両200への積込回数が所定回数に達したか否かを判定する(ステップS117)。同一の運搬車両200への積込回数が所定回数に達していない場合(ステップS117:NO)、ステップS101に戻り、制御装置125は、再度、自動掘削積込制御を実行する。他方、同一の運搬車両200への積込回数が所定回数に達した場合(ステップS117:YES)、排土制御部1222は、自動掘削積込制御の完了通知を管制装置300に送信し(ステップS118)、処理を終了する。
【0063】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る作業機械100の制御装置125は、自動排土制御を開始すると判定した場合に、バケット113の傾きが排土完了角度になるまで、バケット113を排土方向に回転させる指令を生成し、バケット113の傾きが、自動排土制御の開始時の傾きから排土完了角度になるまでの間に、ブーム111を上げ方向に回転させる指令を生成する。つまり、バケット113の高さの低下を、ブーム111の上げ処理により打ち消すことができるため、バケット113の高さの変動を低減することができる。なお、バケット113に対して運搬車両200のベッセル201が小さいほど、バケット113の軌跡を小さくできる分、バケット113の高さの変動を低減する効果が大きくなる。
【0064】
また、第1の実施形態に係る制御装置125は、バケット113の傾きが、自動排土制御の開始時の傾きから前記排土完了角度になるまでの間に、アーム112を引き方向に回転させる指令を生成する。これにより、掘削物の落下点のばらつきを低減することができる。
アーム112を動かさずにバケット113を排土方向に回転させると、バケット113の刃先の水平方向の位置は回転に伴って移動する。他方、バケット113が排土方向に回転しているときにアーム112を引き方向に回転させることで、バケット113の刃先の水平方向の移動を打ち消すことができる。なお、他の実施形態に係る制御装置125は、ブーム111を上げ方向に移動させ、アーム112を動かさないものであってもよい。
【0065】
また、第1の実施形態に係る制御装置125は、ブーム111およびアーム112を制御しない場合と比較してバケット113の側面の幾何重心Gの移動量が低減するように指令を生成する。なお、他の実施形態においては、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置125は、バケット113の側面の輪郭に接する外接円の中心点の移動量が低減するように指令を生成してもよい。なお、制御装置125は、バケット113の刃先とピンとを結ぶ線分を直径とする円の内側の点の移動量が低減するように指令を生成すれば、バケット113の移動量を適切に低減することができる。
【0066】
また、第1の実施形態に係る制御装置125は、バケットの輪郭とベッセル201との距離が、近接閾値以内である場合に、ブーム111を上げ方向に回転させる指令、またはアーム112を引き方向に回転させる指令を生成し、バケット113を駆動させる指令の出力を停止する。これにより、作業機械100の足場のがたつきなど外乱が生じる場合にも、バケット113とベッセル201との接触が生じる可能性を低減することができる。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、排土開始位置の水平方向の位置は、同一の運搬車両200への自動排土制御の回数に応じて異なる。これにより、運搬車両200への排土位置の集中を避け、ベッセル201から掘削物がこぼれることを防ぐことができる。
【0068】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0069】
上述した実施形態では、作業機械100は管制装置300によって自動運転制御がなされるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械100はオペレータによって操作されてもよい。この場合、オペレータは、運転席に設けられた図示しない自動掘削積込ボタンを押下することで、制御装置125に自動掘削積込指示を出力してもよい。また、他の実施形態においては、作業機械100は、アクセスポイントを介した通信でなく、車車間通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0070】
上述した実施形態に係る制御装置125は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置125の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置125として機能するものであってもよい。このとき、制御装置125を構成する一部が管制装置300によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100…作業機械 110…作業機 111…ブーム 112…アーム 113…バケット 120…旋回体 130…走行体 125…制御装置 1211…車両データ取得部 1212…バケット特定部 1213…指示受信部 1214…座標変換部 1215…回避位置特定部 1216…掘削位置特定部 1217…下げ停止判定部 1218…開始位置決定部 1219…ダウン旋回制御部 1220…掘削制御部 1221…ホイスト旋回制御部 1222…排土制御部 1223…回避制御部 1224…指令出力部 200…運搬車両 201…ベッセル 300…管制装置
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、前記旋回体を支持する走行体を備える作業機械本体と、前記作業機械本体に回転可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットとを備える作業機械の制御システムであって、
自動排土制御を開始する場合に、前記バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成し、前記バケットの高さの変動を低減するように、前記ブームおよび前記アームを駆動させる第2指令を生成する排土制御部と
を備える制御システム。
【請求項2】
前記排土制御部は、前記バケットが前記バケットの側面の幾何重心を中心に回転するように、前記ブームおよび前記アームを駆動させる前記第2指令を生成する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記排土制御部は、前記自動排土制御の開始時の前記バケットの傾きから所定の排土完了角度になるまでの間に、前記ブームおよび前記アームを駆動させる前記第2指令を生成する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記排土制御部は、前記バケットの回動中に、前記ブームおよび前記アームを駆動させる前記第2指令を生成する、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記排土制御部は、前記バケットが、前記自動排土制御の開始時から前記バケットの高さの変動を低減するように、前記ブームを上げ方向に回転させる前記第2指令を生成する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記排土制御部は、前記バケットが、前記自動排土制御の開始時から前記バケットの高さの変動を低減するように、前記アームを引き方向に回転させる前記第2指令を生成する
請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記排土制御部は、前記アームと前記バケットとを接続するピンと、前記バケットの刃先とを結ぶ線分を直径とする円より内側の点である基準点の移動量が低減するように前記第2指令を生成する
請求項1または請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記基準点は、前記バケットの側面の幾何重心である
請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
ベッセルの位置を特定するベッセル特定部と、
前記バケットを側面から見たときの輪郭の位置を特定するバケット特定部と、
前記バケットを側面から見たときの輪郭と前記ベッセルとの距離が、所定の近接閾値以内である場合に、前記ブームを上げ方向に回転させる第3指令、または前記アームを引き方向に回転させる第4指令を生成し、前記第1指令の出力を停止する回避制御部と
を備える請求項1から請求項8の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記自動排土制御を開始すると判定した場合に、前記自動排土制御による前記バケットの高さの変化量以上、ベッセルの高さより高い排土開始位置まで前記バケットが移動するように前記ブームを回転させる第5指令を生成する排土位置調整部
を備え、
前記排土制御部は、前記バケットの最下点が前記排土開始位置まで移動した後に、前記第1指令を生成する
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記排土位置調整部は、前記排土開始位置の前記ベッセルの水平方向の位置を、同一の前記ベッセルへの前記自動排土制御の回数に応じて異ならせる
請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
旋回体と、前記旋回体を支持する走行体を備える作業機械本体と、前記作業機械本体に回転可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットとを備える作業機械の制御方法であって、
自動排土制御を開始する場合に、前記バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成するステップと、
前記第1指令によって、前記バケットの高さの変動を低減するように、前記ブームおよび前記アームを駆動させる第2指令を生成するステップと
を備える制御方法。