(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091676
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】パイプ部材
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B60R19/18 P
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061212
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020078580の分割
【原出願日】2020-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】清水 慧
(57)【要約】
【課題】パイプ部材に対する線状体の配置の自由度が高い車両用構造体を提供すること。
【解決手段】車両用構造体1は、車両の骨格の一部を構成するパイプ部材2と、可撓性を有する第1線状体3Aおよび第2線状体3Bとを備える。パイプ部材2は、管状をなすパイプ部22と、パイプ部22から突出形成されたフランジ部23Aおよびフランジ部23Bとを有し、パイプ部22とフランジ部23Aとフランジ部23Bとが連続する1部材で構成される。第1線状体3Aおよび第2線状体3Bは、フランジ部23A(フランジ部23B)に沿う第1状態と、フランジ部23Aまたはフランジ部23Bをまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の骨格の一部を構成するパイプ部材と、可撓性を有する線状体とを備える車両用構造体であって、
前記パイプ部材は、管状をなすパイプ部と、該パイプ部から突出形成されたフランジ部とを有し、前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成され、
前記線状体は、前記フランジ部に沿う第1状態と、前記フランジ部をまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置されることを特徴とする車両用構造体。
【請求項2】
前記線状体は、前記パイプ部の外側に前記第1状態で配置される請求項1に記載の車両用構造体。
【請求項3】
前記線状体は、前記パイプ部の内側に前記第1状態で配置される請求項1に記載の車両用構造体。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記パイプ部の中心軸方向に沿って形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【請求項5】
前記フランジ部は、互いに反対方向に突出して2つ形成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記パイプ部材の周方向に沿った丸みを有する請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【請求項7】
前記フランジ部は、突出量が大なる第1フランジ部と、突出量が小なる第2フランジ部とを含み、
前記線状体は、前記第1状態で配置されており、前記第1フランジ部での太さまたは本数は、前記第2フランジ部での太さまたは本数よりも増加する請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【請求項8】
前記パイプ部材に接合され、該パイプ部材を補強する補強部材を備え、
前記補強部材は、前記パイプ部材との間で管状を形成する管状形成部と、該管状形成部の縁部に折り曲げて形成された折り曲げ部とを有し、
前記線状体は、前記第2状態で配置されており、前記折り曲げ部をまたぐ請求項1~7のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【請求項9】
前記折り曲げ部は、前記フランジ部よりも突出量が小さい請求項8に記載の車両用構造体。
【請求項10】
前記パイプ部材は、前記フランジ部の突出方向が上方または下方を向く状態で前記車両に使用される請求項1~9のいずれか1項に記載の車両用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の前後には、それぞれ、衝突時の衝撃を受けるバンパが設けられている。バンパとしては、例えば、車幅方向に延びるバンパリインホースと、バンパリインホースを支持するクラッシュボックスとを備えるバンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のバンパリインホースは、上下に2本配置されている。そして、上側のバンパリインホースは、例えばアルミニウムの押出材からなる断面略目の字形の一定断面を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記上側のバンパリインホースには、外側(上側または下側)に向かって突出し、鋭利なエッジを有する凸部が形成されている(特許文献1の
図1、
図2中の「第1バンパリインホース17」参照)。そのため、ケーブル(ハーネス)を引き回す場合には、エッジとの接触によるケーブルの損傷を防止するために、ケーブルを凸部からできる限り離間させなければならず、その分、ケーブルの配置箇所が限られてしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、パイプ部材に対する線状体の配置の自由度が高い車両用構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用構造体の一つの態様は、車両の骨格の一部を構成するパイプ部材と、可撓性を有する線状体とを備える車両用構造体であって、
前記パイプ部材は、管状をなすパイプ部と、該パイプ部から突出形成されたフランジ部とを有し、前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成され、
前記線状体は、前記フランジ部に沿う第1状態と、前記フランジ部をまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パイプ部材は、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されているため、全体として丸みを有する形状となる。これにより、線状体を第1状態、第2状態のいずれの状態で配置しても、フランジ部との接触による損傷が防止される。これにより、パイプ部に対する位置に関わらず、線状体を自由に配置することができる、すなわち、パイプ部材に対する線状体の配置の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の車両用構造体(第1実施形態)が内蔵された自動車の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図3中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大図である。
【
図5】
図2示す車両用構造体が備えるパイプ部材を製造する過程(一例)を順に示す図(型開き状態)である。
【
図6】
図2示す車両用構造体が備えるパイプ部材を製造する過程(一例)を順に示す図(型締め状態)である。
【
図7】本発明の車両用構造体の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図10】
図7に示す車両用構造体が備えるパイプ部材を製造する過程(一例)を順に示す図(型開き状態)である。
【
図11】
図7に示す車両用構造体が備えるパイプ部材を製造する過程(一例)を順に示す図(型開き状態)である。
【
図12】本発明の車両用構造体(第3実施形態)が内蔵された自動車の一例を示す斜視図である。
【
図14】
図13中の一点鎖線で囲まれた領域[F]の拡大図である。
【
図15】本発明の車両用構造体の第4実施形態を示す横断面図である。
【
図16】本発明の車両用構造体の第5実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用構造体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1~
図6を参照して、本発明の車両用構造体の第1実施形態について説明する。なお、以下では、説明の都合上、車両の全長方向をX軸方向、車両の車幅方向をY軸方向、車両の車高方向をZ軸方向とする。また、X軸方向正側を車両の前方、X軸方向負側を車両の後方、Y軸方向正側を車両の右方、Y軸方向負側を車両の左方、Z軸方向正側を車両の上方、Z軸方向負側を車両の下方とする。
【0010】
図1、
図2に示すように、本実施形態では、車両用構造体1は、乗用車である自動車100に搭載して使用されている。
図3に示すように、車両用構造体1は、パイプ部材2と、第1線状体3Aと、第2線状体3Bとを備える。
【0011】
パイプ部材2は、XY平面に平行に配置され、車両の骨格の一部を構成する部材である。本実施形態では、パイプ部材2は、自動車(乗用車)100のフロントバンパに適用されている。この場合、パイプ部材2は、例えば「バンパリンフォース(バンパリインホース)」や「バンパビーム」と呼ばれる。また、パイプ部材2は、X軸方向正側からの衝突時に生じる衝撃を受ける「第1バンパ」として使用してもよいし、X軸方向正側からの障害物等の巻き込みを防止する「第2バンパ(足払いビーム)」として使用してもよい。
【0012】
図2に示すように、パイプ部材2は、長手方向の途中が湾曲した(または屈曲した)湾曲部21を2つ有する。そして、パイプ部材2は、各湾曲部21のX軸方向負側で、クラッシュボックス101に支持されている。
なお、パイプ部材2は、フロントバンパに適用されるのに限定されず、リアバンパに適用されていてもよい。
【0013】
図3に示すように、パイプ部材2は、管状をなすパイプ部22と、パイプ部22の外周部から一体的に突出形成されたフランジ部(上側フランジ部)23Aおよびフランジ部(下側フランジ部)23Bとを有する。
パイプ部材2は、後述するように、1つの円筒状の母材2’を成形してなる。そして、この成形後、パイプ部材2は、パイプ部22と、フランジ部23Aと、フランジ部23Bとが連続して形成された状態となる。このように、パイプ部材2は、1部材で構成されている。これにより、パイプ部材2は、例えば複数の部材を接合してなる接合体で構成されている場合よりも、外力に対する機械的強度が例えば1.5倍以上に高まる。
【0014】
パイプ部22は、パイプ部材2の中で、フランジ部23Aやフランジ部23Bよりも占有率(体積比率)が高い。このパイプ部22は、X軸方向正側に設けられた第1凹部221と、X軸方向負側に設けられた第2凹部222とを有する。
【0015】
第1凹部221は、X軸方向負側に向かって凹没して変形しており、パイプ部22の中心軸O22方向に沿って溝状に形成されている。
第2凹部222は、X軸方向正側に向かって凹没して変形しており、第1凹部221と同様に、パイプ部22の中心軸O22方向に沿って溝状に形成されている。
【0016】
このような形状の第1凹部221および第2凹部222により、パイプ部22は、横断面形状が丸みを帯びた非円形のパイプ状(リング状)をなす。これにより、パイプ部材2の機械的強度の向上を図ることができる。
なお、第1凹部221と第2凹部222との深さの大小関係や幅の大小関係については、特に限定されない。
【0017】
パイプ部22の上側には、フランジ部23Aが設けられ、下側には、フランジ部23Bが設けられている。そして、フランジ部23Aとフランジ部23Bとは、互いに反対方向に突出して形成されている。すなわち、フランジ部23Aは、上方(Z軸方向正側)に向かって突出形成され、フランジ部23Bは、下方(Z軸方向負側)に向かって突出形成されている。これにより、パイプ部材2は、上下対称的な形状となり、よって、上下反転しても(上下方向を問わず)使用することができる。
【0018】
図3に示すように、本実施形態では、パイプ部材2は、フランジ部23Aの突出方向が上方を向き、フランジ部23Bの突出方向が下方を向く状態で自動車100に使用される。また、フランジ部23Aとフランジ部23Bとは、パイプ部22とともに、パイプ部材2の最前面に位置する。このような使用状態により、例えば自動車100が正面衝突した際、その衝撃をできる限り広い面積(範囲)で受けることができ、よって、パイプ部材2の不本意な折れ曲がり等の変形を十分に防止または抑制することができる。これにより、自動車100の搭乗者に対する安全が確保される。
【0019】
フランジ部23Aとフランジ部23Bとは、形成箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、フランジ部23Aについて代表的に説明する。
フランジ部23Aは、パイプ部材2となる母材2’が潰されて、母材2’の管壁の一部同士がX軸方向に重なり合った重なり部となっている。これにより、フランジ部23A自体の機械的強度が向上する。なお、前記管壁の一部同士は、接していてもよいし、離間していてもよい。
【0020】
このフランジ部23Aは、パイプ部22の中心軸O22方向に沿って、パイプ部22の全長にわたって板状に形成されている。これにより、パイプ部材2は、長手方向に沿って、機械的強度が均一に確保され、よって、衝突箇所に関わらず、衝撃を十分に受けることができる。
【0021】
また、フランジ部23Aの突出量をC、パイプ部材2の管壁の厚さをTとしたとき、突出量Cは、厚さTの0.5倍あるいは1mmの小さい方以上20倍以下であるのが好ましく、1mm以上50mm以下であるのがより好ましい。これにより、母材2’からパイプ部材2を成形する際、母材2’の管壁を過不足なく折り曲げて、フランジ部23Aを十分に形成することができる。
【0022】
また、フランジ部23Aの突出方向に沿ったパイプ部22の幅をWとしたとき、幅Wは、X軸方向負側に向かって漸減している。そして、突出量Cは、幅Wの最大値の0.01倍あるいは1mmの小さい方以上1倍以下であるのが好ましく、1mm以上50mm以下であるのがより好ましい。パイプ部材2を自動車100に搭載するにあたり、パイプ部材2のZ軸方向の長さ(幅)が決められている場合、幅W(最大値)をできる限り大きく確保するのが好ましい。突出量Cと幅Wとの大小関係が上記数値範囲を満足することにより、幅Wをできる限り大きく確保することができ、パイプ部材2の機械的強度の向上を図ることができる。
【0023】
第1線状体3Aおよび第2線状体3Bは、それぞれ、可撓性を有する線状体である。
図3に示すように、本実施形態では、一例として、第1線状体3Aは、第2線状体3Bよりも細い。なお、第1線状体3Aおよび第2線状体3Bとしては、特に限定されず、例えば、電気ケーブル(ハーネス)やチューブ等が挙げられる。ハーネスは、ワイヤハーネスとも言われる。また、チューブとしては、例えば、冷却水、オイル、ウォッシャ液等の各種の液体を供給するためのチューブ等が挙げられる。
【0024】
第1線状体3Aおよび第2線状体3Bは、いずれも、フランジ部23A(フランジ部23B)に沿う第1状態と、フランジ部23Aまたはフランジ部23Bをまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置される。
図3に示す構成では、第1線状体3Aは、パイプ部22の外側に第1状態で配置されている。一方、第2線状体3Bは、パイプ部22の内側に第1状態で配置されている。なお、第1線状体3Aおよび第2線状体3Bは、それぞれ、蛇行していてもよい。
【0025】
また、
図4に示すように、フランジ部23Aは、パイプ部材2の周方向に沿った丸みを帯びた端部231を有する。パイプ部22も、周方向に沿って丸みを帯びた丸み部223を、外周部および内周部に複数有する。このようにパイプ部材2が全体として丸みを有する形状となる理由としては、パイプ部材2が1つの円筒状の母材2’を成形してなるからである。
【0026】
図3に示すように、パイプ部材2のX軸方向負側には、例えばラジエータやバッテリ等の自動車100の走行に用いられる走行用構造体102が配置されている。
そして、走行用構造体102と、パイプ部材2のフランジ部23Aとの間のデッドスペース103を利用して、当該デッドスペース103に第1線状体3Aを配置することができる。この場合、第1線状体3Aを走行用構造体102から遠ざけて配置したいため、第1線状体3Aをフランジ部23Aに近づけるのが好ましい。
【0027】
前述したように、フランジ部23Aは、丸みを帯びた端部231を有する。これにより、パイプ部22の外側では、第1状態の第1線状体3Aをフランジ部23Aに近づけて配置しても、端部231との接触による損傷が防止される。従って、車両用構造体1では、第1線状体3Aが走行用構造体102から離間していれば、パイプ部22上の位置に関わらず、第1線状体3Aを自由に配置することができる、すなわち、パイプ部材2に対する第1線状体3Aの配置の自由度が高い。
【0028】
なお、第1線状体3Aの最頂点HPは、フランジ部23Aの端部231と同じ高さかまたは低いのが好ましい。これにより、第1線状体3Aをフランジ部23Aで保護することができる。
【0029】
また、第1線状体3Aの配置後、クランプ部材等を用いて、第1線状体3Aを固定するのが好ましい。これにより、自動車100の走行中も、第1線状体3Aの位置ズレが防止される。
【0030】
パイプ部22の内側でも、複数の丸み部223が形成されているため、パイプ部22の内周部との接触による、第2線状体3Bの損傷が防止される。これにより、パイプ部22内の位置に関わらず、第2線状体3Bを自由に配置することができる、すなわち、パイプ部材2に対する第2線状体3Bの配置の自由度が高い。
【0031】
また、第2線状体3Bの配置後、クランプ部材等を用いて、第2線状体3Bを固定するのが好ましい。これにより、自動車100の走行中も、第2線状体3Bの位置ズレが防止される。
【0032】
次に、パイプ部材2を製造する方法について、
図5、
図6を参照して説明する。
本製造方法では、成形装置5Aを用いる。成形装置5Aは、上金型51と、下金型52と、気体供給部53と、加熱部54と、冷却部55と、駆動部56と、制御部57とを備える。
【0033】
下金型52は、固定され、上金型51は、下金型52に対して接近、離間可能に支持される。
図5に示すように、上金型51と下金型52とは、型開き状態で、上金型51と下金型52との間に母材2’を配置することができる。また、
図6に示すように、上金型51と下金型52とは、型締め状態で、パイプ部22を形成する第1キャビティ58と、フランジ部23Aを形成する第2キャビティ59Aと、フランジ部23Bを形成する第2キャビティ59Bとを画成することができる。
【0034】
気体供給部53は、母材2’内に高圧空気を供給する。気体供給部53の構成としては、特に限定されず、例えば、コンプレッサを有する構成とすることができる。
加熱部54は、母材2’を加熱する。加熱部54の構成としては、特に限定されず、例えば、母材2’に電気的に接続される2つの電極と、これらの電極間に電圧を印可する電圧印加部とを有する構成とすることができる。これにより、母材2’を通電状態として、母材2’を加熱して軟化させることができる。
【0035】
冷却部55は、パイプ部材2(母材2’)を急冷却する。冷却部55の構成としては、特に限定されず、例えば、上金型51および下金型52にそれぞれ設けられ、冷媒が通過する流路を有する構成とすることができる。そして、冷媒が流路を通過した際、上金型51および下金型52ごと、パイプ部材2を急冷却することができる。なお、冷媒は、液体、気体いずれでもよい。また、冷却部55は、例えば下金型52に内蔵されているのが好ましい。これにより、パイプ部材2に対する急冷却を迅速に行うことができる。
【0036】
駆動部56は、上金型51を移動させて、上金型51を下金型52に対して接近、離間させることができる。これにより、型開き状態と、型締め状態とを切り換えることができる。駆動部56の構成としては、特に限定されず、例えば、モータと、モータに接続されたボールねじと、ボールねじに接続されたリニアガイドとを有する構成とすることができる。
【0037】
制御部57は、気体供給部53、加熱部54、冷却部55、駆動部56の作動を制御する。制御部57の構成としては、特に限定されず、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、各種メモリとを有する構成とすることができる。
【0038】
成形装置5Aは、以下のように作動する。
まず、
図5に示すように、上金型51と下金型52とを型開き状態として、上金型51と下金型52との間に母材2’を配置する。
次いで、型開き状態のまま、加熱部54を作動させる。これにより、母材2’を軟化させることができる。
【0039】
次いで、上金型51を下金型52に接近させた状態とする。この状態は、
図6に示す型締め状態には至らず、上金型51と下金型52との間に隙間が形成された状態である。そして、気体供給部53を作動させて、1次ブローを行う。これにより、上金型51と下金型52との間の前記隙間に母材2’の一部が膨出して入り込む。この膨出した母材2’の一部がのちのフランジ部23Aおよびフランジ部23Bとなる。
【0040】
次いで、
図6に示す型締め状態とする。これにより、フランジ部23Aおよびフランジ部23Bが形成される。そして、気体供給部53を作動させて、2次ブローを行う。これにより、母材2’は、パイプ部材2の形状に向かって変形することができる、すなわち、パイプ部22、フランジ部23Aおよびフランジ部23Bを有するパイプ部材2となる。
【0041】
また、型締め状態とするのと同期して、冷却部55によってパイプ部材2を急冷却する。これにより、パイプ部材2では、オーステナイトがマルテンサイトに変態する。
次いで、再度型開き状態として、パイプ部材2を取り出す。その後、パイプ部材2を所望の長さに切断して、自動車100のバンパに用いることができる。
【0042】
<第2実施形態>
以下、
図7~
図11を参照して本発明の車両用構造体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、各フランジ部の構成がそれぞれ異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0043】
図7に示すように、本実施形態では、フランジ部23Aは、パイプ部22の外周部からの突出量(幅)が異なる2つのフランジ部を含む構成となっている(フランジ部23Bについても同様)。すなわち、フランジ部23Aは、突出量が大なる第1フランジ部232と、突出量が小なる第2フランジ部233とを含む。ここで、本発明では、「突出量が小なる」には、突出量がゼロとなる場合も含む。
【0044】
なお、
図7に示す構成では、第1フランジ部232が2つ形成され、当該2つの第1フランジ部232の間に第2フランジ部233が1つ形成されているが、形成態様については、これに限定されない。
【0045】
また、パイプ部22の外側には、3本の第1線状体3Aが第1状態で配置されている。各第1線状体3Aをそれぞれ「第1線状体3A-1」、「第1線状体3A-2」「第1線状体3A-3」と言う。
【0046】
そして、第1線状体3A-1~第1線状体3A-3は、束ねられて、Y軸方向負側から正側に向かって引き回されているが、途中から、第1線状体3A-2と第1線状体3A-3とが一括してX軸方向負側に向かって引き回され、その後さらに、第1線状体3A-1がX軸方向負側に向かって引き回されている。これにより、第1フランジ部232では、第1線状体3Aの本数を3本とすることができ(
図8参照)、第2フランジ部233では、第1線状体3Aの本数を1本とすることができる(
図9参照)。
【0047】
このように、突出量が大なる第1フランジ部232での第1線状体3Aの本数(合計の太さ)は、突出量が小なる第2フランジ部233での第1線状体3Aの本数(合計の太さ)よりも増加している。これにより、第1フランジ部232および第2フランジ部233で、それぞれ、第1線状体3Aを過不足なく保護することができる。
【0048】
次に、パイプ部材2を製造する方法について、
図10、
図11を参照して説明する。
本製造方法では、成形装置5Bを用いる。ここでは、成形装置5Bの成形装置5Aとの相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。成形装置5Bは、上金型51および下金型52の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。なお、
図10および
図11の(a)と(b)とは、それぞれ、成形装置5Bをパイプ部材2(母材2’)の長手方向の途中の異なる2箇所で切断した断面図である。
【0049】
母材2’は、長手方向に沿って、外径および内径が異なっており、大径部24と、小径部25とを有する。
【0050】
上金型51と下金型52とは、第1成形部501と、第2成形部502とを共有する。
第1成形部501は、上金型51と下金型52との間で、大径部24を、パイプ部22および第1フランジ部232に成形することができる。
第2成形部502は、上金型51と下金型52との間で、小径部25を、パイプ部22および第2フランジ部233に成形することができる。
【0051】
成形装置5Bは、以下のように作動する。
まず、
図10に示すように、上金型51と下金型52とを型開き状態として、上金型51と下金型52との間に母材2’を配置する。このとき、第1成形部501に大径部24を配置し、第2成形部502に小径部25を配置する。
【0052】
次いで、前述したように、気体供給部53、加熱部54、冷却部55、駆動部56を作動させつつ、
図11に示すように、上金型51と下金型52とを型締め状態とする。
このとき、第1成形部501には、パイプ部22を成形する第1キャビティ58と、各第1フランジ部232を成形する第2キャビティ59A-1および第2キャビティ59B-1とが画成される。これにより、パイプ部22および第1フランジ部232が成形される。
【0053】
一方、第2成形部502には、パイプ部22を成形する第1キャビティ58と、各第2フランジ部233を成形する第2キャビティ59A-2および第2キャビティ59B-2とが画成される。これにより、パイプ部22および第2フランジ部233が成形される。
そして、再度型開き状態として、パイプ部材2を取り出す。このパイプ部材2は、第1フランジ部232と第2フランジ部233とを有する部材となっている。
【0054】
<第3実施形態>
以下、
図12~
図14を参照して本発明の車両用構造体の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、自動車における車両用構造体の適用箇所と、第1線状体の配置状態とが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0055】
図12に示すように、本実施形態では、車両用構造体1は、自動車100の側方下部に配置され、パイプ部材2は、自動車100のサイドシルに適用されている。
図13に示すように、車両用構造体1は、パイプ部材2を補強する補強部材4を備える。補強部材4は、パイプ部材2のY軸方向正側、すなわち、車内側に接合されている。補強部材4は、板部材を折り曲げてなり、パイプ部材2との間で管状を形成する管状形成部41と、管状形成部41の上側の縁部に折り曲げて形成されたフランジ部(折り曲げ部)42Aと、管状形成部41の下側の縁部に折り曲げて形成されたフランジ部(折り曲げ部)42Bとを有する。
【0056】
管状形成部41は、凹部411を有する。凹部411は、Y軸方向負側に向かって凹没して変形しており、パイプ部22の第2凹部222と同様に、パイプ部22の中心軸O22方向に沿って溝状に形成されている。また、管状形成部41は、外側に、丸みを帯びた丸み部412を複数有する。
【0057】
フランジ部42Aは、パイプ部材2のフランジ部23Aに接合され、フランジ部42Bは、パイプ部材2のフランジ部23Bに接合される。この接合方法としては、特に限定されず、例えば、スポット溶接を用いることができる。また、フランジ部42Aは、フランジ部23Aよりも低い。同様に、フランジ部42Bは、フランジ部23Bよりも低い。
【0058】
第1線状体3Aは、フランジ部23Aに沿う第1状態と、フランジ部23Aをまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置される。
図13、
図14に示すように、本実施形態では、第1線状体3Aは、パイプ部22の外側に第2状態で配置されており、これによりフランジ部42Aをまたぐことができる。
【0059】
前述したように、フランジ部23Aは、丸みを帯びた端部231を有する。これにより、第1線状体3Aを第2状態で配置しても、端部231との接触による損傷が防止される。従って、車両用構造体1では、パイプ部22上の位置に関わらず、第1線状体3Aを自由に配置することができる、すなわち、パイプ部材2に対する第1線状体3Aの配置の自由度が高い。
【0060】
また、フランジ部42Aは、前述したようにフランジ部23Aよりも低い、すなわち、フランジ部23Aよりも突出量が小さい。これにより、
図14に示すように、第1線状体3Aを第2状態で配置しても、第1線状体3Aをフランジ部42Aから離間させることができ、よって、当該フランジ部42Aとの接触による損傷を防止することができる。
【0061】
<第4実施形態>
以下、
図15を参照して本発明の車両用構造体の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、車両用構造体の構成が異なること以外は前記第3実施形態と同様である。
【0062】
図15に示すように、本実施形態では、車両用構造体1は、2本のパイプ部材2を備える。これらのパイプ部材2同士は、一方のフランジ部23Aと他方のフランジ部23Aとが接合され、一方のフランジ部23Bと他方のフランジ部23Bとが接合される。これにより、各パイプ部材2は、互いに補強し合うことができ、よって、車両用構造体1全体としての機械的強度が高まる。
【0063】
<第5実施形態>
以下、
図16を参照して本発明の車両用構造体の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、パイプ部材の構成(横断面形状)が異なること以外は前記第4実施形態と同様である。
【0064】
図16に示すように、本実施形態では、パイプ部材2は、前記第4実施形態での2本のパイプ部材2を、1部材で構成した形態となっている。この場合、フランジ部23Aおよびフランジ部23Bは、それぞれ、パイプ部22のY軸方向の中央部に設けられた状態となる。このような構成により、パイプ部材2は、パイプ部22の大きさが拡張された分、機械的強度が高まる。
【0065】
以上、本発明の車両用構造体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、車両用構造体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の車両用構造体は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0066】
また、車両用構造体1は、前記各実施形態では乗用車に搭載して使用された状態となっているが、これに限定されず、乗用車以外の他の車両に搭載して使用することもできる。他の車両としては、特に限定されず、例えば、ダンプカーやショベルカー等の工事用車両、旅客鉄道用または貨物鉄道用の車両等が挙げられる。
【0067】
また、車両用構造体が備えるパイプ部材の本数は、前記各実施形態では1本または2本であるが、これに限定されず、例えば、3本以上であってもよい。
また、乗用車に搭載されたパイプ部材は、前記各実施形態ではバンパリンフォースまたはサイドシルに適用されているが、これに限定されず、例えば、サイドルーフレールやステアリングメンバ(インパネリンフォース)にも適用可能である。
【0068】
また、車両用構造体が備える線状体の本数は、前記各実施形態では1本または2本であるが、これに限定されず、例えば、3本以上であってもよい。
また、パイプ部材が有するフランジ部の形成数は、前記各実施形態では2つであるが、これに限定されず、例えば、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0069】
また、線状体は、前記各実施形態では第1状態および第2状態のうちの一方の状態で配置されているが、これに限定されず、第1状態および第2状態の双方を有する状態で配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用構造体
2 パイプ部材
2’ 母材
21 湾曲部
22 パイプ部
221 第1凹部
222 第2凹部
223 丸み部
23A フランジ部(上側フランジ部)
23B フランジ部(下側フランジ部)
231 端部
232 第1フランジ部
233 第2フランジ部
24 大径部
25 小径部
3A 第1線状体
3A-1 第1線状体
3A-2 第1線状体
3A-3 第1線状体
3B 第2線状体
4 補強部材
41 管状形成部
411 凹部
412 丸み部
42A フランジ部(折り曲げ部)
42B フランジ部(折り曲げ部)
5A 成形装置
5B 成形装置
501 第1成形部
502 第2成形部
51 上金型
52 下金型
53 気体供給部
54 加熱部
55 冷却部
56 駆動部
57 制御部
58 第1キャビティ
59A 第2キャビティ
59A-1 第2キャビティ
59A-2 第2キャビティ
59B 第2キャビティ
59B-1 第2キャビティ
59B-2 第2キャビティ
100 自動車(乗用車)
101 クラッシュボックス
102 走行用構造体
103 デッドスペース
C 突出量
HP 最頂点
O22 中心軸
T 厚さ
W 幅
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する線状体が配置される車両用構造体の車両の骨格の一部を構成するパイプ部材であって、
前記パイプ部材は、管状をなすパイプ部と、該パイプ部から突出形成されたフランジ部とを有し、前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成され、
前記線状体が、前記フランジ部に沿う第1状態と、前記フランジ部をまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置可能となっており、
前記フランジ部の端部は丸みを帯びた丸み部を有することを特徴とするパイプ部材。
【請求項2】
前記線状体は、前記パイプ部の外側に前記第1状態で配置される請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項3】
前記線状体は、前記パイプ部の内側に前記第1状態で配置される請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記パイプ部の中心軸方向に沿って形成されている請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項5】
前記フランジ部は、互いに反対方向に突出して2つ形成されている請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項6】
前記フランジ部は、突出量が大なる第1フランジ部と、突出量が小なる第2フランジ部とを含み、
前記線状体は、前記第1状態で配置されており、前記第1フランジ部での太さまたは本数は、前記第2フランジ部での太さまたは本数よりも増加する請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項7】
前記パイプ部材に接合され、該パイプ部材を補強する補強部材を備え、
前記補強部材は、前記パイプ部材との間で管状を形成する管状形成部と、該管状形成部の縁部に折り曲げて形成された折り曲げ部とを有し、
前記線状体は、前記第2状態で配置されており、前記折り曲げ部をまたぐ請求項1に記載のパイプ部材。
【請求項8】
前記折り曲げ部は、前記フランジ部よりも突出量が小さい請求項7に記載のパイプ部材。
【請求項9】
前記パイプ部材は、前記フランジ部の突出方向が上方または下方を向く状態で前記車両に使用される請求項1に記載のパイプ部材。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、パイプ部材に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一つの態様は、可撓性を有する線状体が配置される車両用構造体の車両の骨格の一部を構成するパイプ部材であって、
前記パイプ部材は、管状をなすパイプ部と、該パイプ部から突出形成されたフランジ部とを有し、前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成され、
前記線状体が、前記フランジ部に沿う第1状態と、前記フランジ部をまたぐ第2状態のうちの少なくとも1つの状態で配置可能となっており、
前記フランジ部の端部は丸みを帯びた丸み部を有することを特徴とする。