(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091679
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】運転支援装置、及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240628BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240628BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W60/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061576
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020098600の分割
【原出願日】2020-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳弘 崇文
(57)【要約】
【課題】より好適な駐車動作の実現が可能な運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両1の運転を支援する運転支援装置であって、教師走行モードにおいて、ユーザの運転操作により車両1が走行した際の移動経路を記憶し、当該移動経路に基づいて、目標経路に係る教師データを生成する教師データ生成部130と、自動走行モードの実行指令を受け付けた場合、車両を目標経路に沿って走行させる車両制御部160と、を備え、教師データ生成部130は、上記移動経路内の第1地点と、第2地点とにおいて、車両1が走行した際の方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である場合、上記第1地点又は上記第1地点に上記移動経路内で隣接する地点と、上記第2地点又は上記第2地点に上記移動経路内で隣接する地点とを連結した目標経路を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの運転操作による教師走行に基づき、車両の自動運転を支援する運転支援方法であって、
前記教師走行における前記車両の移動経路を記憶させるステップと、
前記教師走行における前記車両の移動経路を表示装置に表示させるステップと、
前記教師走行に基づく前記車両の自動走行における目標経路を表示装置に表示させるステップと、
を備え、
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記表示装置に表示される前記教師走行における前記移動経路よりも短い、
運転支援方法。
【請求項2】
前記教師走行は、前記車両の切り返しを少なくとも一回以上含む走行である、
請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項3】
前記車両の切り返しは、前記車両の走行方向を前進から後進へ切り返すこと、又は、前記車両の走行方向を後進から前進へ切り返すことのいずれかである、
請求項2に記載の運転支援方法。
【請求項4】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置を含まない、
請求項3に記載の運転支援方法。
【請求項5】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路の切り返しの位置と、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置は異なる、
請求項4に記載の運転支援方法。
【請求項6】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路の切り返しの位置は、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置と異なる位置であり、かつ前記移動経路上の位置である、
請求項5に記載の運転支援方法。
【請求項7】
前記車両の自動走行における前記切り返しの位置を変更するか否かをユーザーに選択させるアイコンを表示させる、
請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項8】
ユーザの運転操作による教師走行に基づき、車両の自動運転を支援する運転支援装置であって、
前記教師走行における前記車両の移動経路を記憶する記憶装置と、
を備え、
前記運転支援装置は、前記教師走行における前記車両の移動経路を表示装置に表示させ、
前記運転支援装置は、前記教師走行に基づく前記車両の自動走行における目標経路を表示装置に表示させ、
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記表示装置に表示される前記教師走行における前記移動経路よりも短い、
運転支援装置。
【請求項9】
前記教師走行は、前記車両の切り返しを少なくとも一回以上含む走行である、
請求項8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記車両の切り返しは、前記車両の走行方向を前進から後進へ切り返すこと、又は、前記車両の走行方向を後進から前進へ切り返すことのいずれかである、
請求項9に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置を含まない、
請求項10に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路の切り返しの位置と、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置は異なる、
請求項11に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路の切り返しの位置は、前記教師走行における前記移動経路の切り返しの位置と異なる位置であり、かつ前記移動経路上の位置である、
請求項12に記載の運転支援装置。
【請求項14】
前記車両の自動走行における前記切り返しの位置を変更するか否かをユーザーに選択させるアイコンを表示させる、
請求項8に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋における駐車スペースは狭隘な箇所が多く、駐車を自動運転で行うことへのニーズが高い。この種の自動運転を実現するため、様々な運転支援装置が知られている。この種の運転支援装置としては、例えば、ドライバが車両を所定の初期停止位置に停止させると、初期停止位置から駐車スペース内の目標駐車位置までの駐車走行を自動で支援する自動運転を行う。そして、かかる運転支援装置は、車両に搭載された各種センサにて駐車空間や当該車両の位置を自動認識し、ステアリング操作、アクセル操作、及びブレーキ操作等を自動的に行う。
【0003】
特許文献1には、かかる自動運転を実現するため、車両に乗車するユーザ(以下、「ユーザ」と略称する)の運転操作により、駐車スペース外の所定位置から駐車スペース内の目標駐車位置まで車両を走行させ、その際の移動経路を教師データとして記憶しておくことで、その後の駐車シーンにおいて、車両を当該移動経路に沿って自動的に走行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mikael Persson et al.“Lambda Twist: An Accurate Fast Robust Perspective Three Point (P3P) Solver.”, ECCV 2018, pp 334-349,published in 2018, http://openaccess.thecvf.com/content_ECCV_2018/papers/Mikael_Persson_Lambda_Twist_An_ECCV_2018_paper.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る従来技術の運転支援装置によれば、ユーザの運転操作により、一回、教師走行(教師データを生成するためのユーザの運転操作による走行を意味する。以下同じ)を実行するだけで、その後は、自動的に駐車動作を実行させることが可能となるため、かかる技術は、利便性が高いと言える。
【0007】
しかしながら、ユーザが車両を切り返しながら(車両の走行方向を前進から後進へ切り返すこと、又は、車両の走行方向を後進から前進へ切り返すことを意味する。以下同じ)、車両を駐車スペースに移動させる場合において、車両が姿勢変更(車両が向く方位を変更することを意味する。以下同じ)するために必ずしも必要とは言えない経路(以下、「不必要な経路」と称する)を走行する可能性がある。つまり、教師走行により生成された移動経路には、不必要な経路が含まれている可能性がある。
【0008】
換言すると、特許文献1に記載された運転支援装置のように、教師走行時の移動経路を、そのまま、車両を駐車スペースに自動的に駐車させる際の目標経路とした場合には、毎回不必要な走行を行うことになってしまう。
【0009】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、より好適な駐車動作の実現が可能な運転支援装置、及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、
ユーザの運転操作による教師走行に基づき、車両の自動運転を支援する運転支援方法であって、
前記教師走行における前記車両の移動経路を記憶させるステップと、
前記教師走行における前記車両の移動経路を表示装置に表示させるステップと、
前記教師走行に基づく前記車両の自動走行における目標経路を表示装置に表示させるステップと、
を備え、
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記表示装置に表示される前記教師走行における前記移動経路よりも短い、
運転支援方法である。
【0011】
又、他の局面では、
ユーザの運転操作による教師走行に基づき、車両の自動運転を支援する運転支援装置であって、
前記教師走行における前記車両の移動経路を記憶する記憶装置と、
を備え、
前記運転支援装置は、前記教師走行における前記車両の移動経路を表示装置に表示させ、
前記運転支援装置は、前記教師走行に基づく前記車両の自動走行における目標経路を表示装置に表示させ、
前記表示装置に表示される前記車両の自動走行における前記目標経路は、前記表示装置に表示される前記教師走行における前記移動経路よりも短い、
運転支援装置である。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る運転支援装置によれば、より好適な駐車動作の実現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2A】運転支援装置の機能ブロック(教師走行モード時)の一例を示す図
【
図2B】運転支援装置の機能ブロック(自動走行モード時)の一例を示す図
【
図3A】教師走行モードで、車両が走行した際の移動経路(実線矢印の経路)の一例を示す図
【
図3B】自動走行モードで、車両が自動走行することになる目標経路(実線矢印の経路)の一例を示す図
【
図4】教師データ生成部に生成される教師データの一例を示す図
【
図5】教師データの生成方法の一例について、説明する図
【
図6】教師データ生成部に生成される地図データの一例を示す図
【
図7】位置推定部の処理の一例について、説明する図
【
図8】運転支援装置が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャート
【
図9A】変形例1において、教師走行モードで、車両が走行した際の移動経路(実線矢印の経路)の一例を示す図
【
図9B】変形例1において、自動走行モードで、車両が自動走行することになる目標経路(実線矢印の経路)の一例を示す図
【
図10】変形例1に係る運転支援装置が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャート
【
図11】変形例4に係る運転支援装置において、ユーザが選択操作を行うためのHMIに表示されるユーザインタフェイス画面の一例を示す図
【
図12】変形例5の教師データ生成部が行う処理について、模試的に説明する図
【
図13】変形例5に係る運転支援装置が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
[車両の全体構成]
以下、
図1を参照して、一実施形態に係る車両の構成の一例について説明する。
【0016】
図1は、車両1の全体構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
車両1は、運転支援装置10、車両駆動装置20、車載センサ30、車載カメラ40、外部記憶装置50、及び、HMI(Human Machine Interface)60を備えている。
【0018】
車両駆動装置20は、車両1の走行に必要な駆動、制動、旋回運動を実現する手段であって、例えば、駆動モータ、動力伝達機構、ブレーキ装置、及びステアリング装置等とそれらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを含んで構成される。車両駆動装置20は、例えば、駆動モータで動力を生成し、当該動力を動力伝達機構(プロペラシャフト、デファレンシャルギヤ及びドライブシャフト等)を介して車輪に伝達して、車両1を走行させる。尚、本実施形態に係る車両駆動装置20は、自動走行モード時には、運転支援装置10によって動作制御が行われる。
【0019】
車載センサ30は、車両1に搭載され、車両1の走行状態を検出する各種センサである。車載センサ30は、例えば、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、ステアリング装置の操舵角を検出する操舵角センサ、車両1の前後方向に作用する加速度を検出する加速度センサ、車両1の車輪と駆動モータとの間の動力伝達機構に作用するトルクを検出するトルクセンサ、及び、車両1の車速を検出する車速センサ等を含む。車載センサ30は、検出により得られたセンサ情報を、運転支援装置10に出力する。
【0020】
車載カメラ40は、車両1に搭載され、車両1の周囲環境を監視する周囲センサである。本実施形態では、車載カメラ40は、例えば、車両1の周囲に存在する物体(典型的には、地上に固定された物体)を検出し、車両1と車両1の周囲に存在する物体との位置関係から、車両1の存在位置を推定する用途に適用される。車載カメラ40は、例えば、車両1の前方向、後方向、左方向、及び右方向の四方向を撮影し得るように配設された4個のカメラによって構成されている。車載カメラ40は、自身が生成したカメラ画像を、運転支援装置10へ出力する。尚、車両1の自己位置を推定するための周囲センサとしては、車載カメラ40に代えて、LiDAR、レーダ、又は、超音波センサ等が用いられてもよい。
【0021】
外部記憶装置50は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。外部記憶装置50には、例えば、が教師走行モード時に運転支援装置10に生成される教師データD1及び地図データD2等が格納される。
【0022】
HMI60は、タッチパネル、コマンダー、ボタン、又は操作キー等、車両1に乗車するユーザの入力操作を受け付けるユーザインタフェイスである。HMI60は、例えば、教師走行モードを実行させる際の実行指令や、自動走行モードを実行させる際の実行指令等の入力操作を受け付け可能に構成されている。HMI60は、ユーザから受け付けた入力操作に係る情報を、運転支援装置10へ出力する。
【0023】
運転支援装置10は、車両1の各部を統括制御する電子制御ユニットである。運転支援装置10は、自動走行モードの際には、車載センサ30から取得するセンサ情報を参照しつつ、車両駆動装置20を制御して、車両1を自動的に(即ち、自律的に)走行させ得るように構成されている。
【0024】
運転支援装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、入力ポート(図示せず)、及び、出力ポート(図示せず)等を含んで構成される。運転支援装置10が有する後述する各機能は、例えば、CPU10aがRAM10cやROM10bに記憶された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、運転支援装置10の各機能の一部又は全部は、CPU10aによる処理に代えて、又は、これと共に、DSP(Digital Signal Processor)や、専用のハードウェア回路(例えば、ASIC又はFPGA)による処理によって実現されてもよい。
【0025】
運転支援装置10は、車両駆動装置20、車載センサ30、車載カメラ40、外部記憶装置50、及びHMI60と、車載ネットワーク(例えば、CAN通信プロトコルに準拠した通信ネットワーク)を介して、相互に接続され、必要なデータや制御信号を相互に送受信可能となっている。
【0026】
[運転支援装置の構成]
次に、
図2A~
図7を参照して、運転支援装置10の構成の一例について、説明する。
【0027】
運転支援装置10は、ユーザの入力操作に基づいて、教師走行モードと自動走行モードとを切り替え可能に構成されている。教師走行モードは、自動走行モードで、車両1を自動走行させる際の目標経路を登録するためのモードである。教師走行モードにおいては、車両1は、ユーザの運転操作により、走行制御される。一方、自動走行モードは、教師走行モードで登録された目標経路に従って、車両1を自動走行させるモードである。自動走行モードにおいては、車両1は、ユーザの運転操作を要することなく、運転支援装置10により、自動的に走行制御される。
【0028】
但し、本実施形態に係る運転支援装置10は、車両1が教師走行した際の移動経路のうち、切り返し時の不必要な経路をカットして、車両1を自動走行させる際の目標経路を生成する構成となっている。
【0029】
図2A、
図2Bは、運転支援装置10の機能ブロックの一例を示す図である。尚、
図2Aには、車両1が教師走行モード時に機能する機能部のみを記載し、
図2Bには、車両1が自動走行モード時に機能する機能部のみを記載している。
【0030】
図3Aは、教師走行モードで、車両1が走行した際の移動経路(実線矢印の経路)の一例を示す図である。
図3Bは、自動走行モードで、車両1が自動走行することになる目標経路(実線矢印の経路)の一例を示す図である。
【0031】
図3Aでは、教師走行モードで、ユーザの運転操作により、駐車スペース外のある位置P1から、駐車スペース内の目標駐車位置P2までの駐車動作が実行された態様を示している。
図3Bの目標経路は、
図3Aの教師走行モードで車両1が走行した際の移動経路に基づいて生成されており、目標経路の大部分は、移動経路と同一の経路となっている。そして、目標経路は、目標経路内の切り返し位置のみが、元の移動経路から変更されて生成されている。
【0032】
具体的には、
図3Aの移動経路では、位置T1、T2において車両の切り返し(ここでは、前進から後進への切り返し)が行われた態様となっているが、
図3Bの目標経路では、当該移動経路内における車両1の切り返しの際の不必要な経路がカットされ、位置T1’ 、T2’で車両1の切り返しが行われる態様となっている。
【0033】
<教師走行モード実行時>
まず、教師走行モード実行時に機能する運転支援装置10の機能構成について、説明する。
【0034】
教師走行モード実行時には、運転支援装置10においては、車両情報取得部110、デッドレコニング部120、及び、教師データ生成部130が機能する(
図2Aを参照)。
【0035】
車両情報取得部110は、車載センサ30から車両1の走行状態を示すセンサ情報を取得する。そして、車両情報取得部110は、取得したセンサ情報を、デッドレコニング部120に送出する。
【0036】
デッドレコニング部120は、車両1の走行状態を検出する車載センサ30のセンサ値の時間的変化に基づいて、車両1の現在位置を推定する。デッドレコニング部120は、例えば、車載センサ30が示す車速及びヨーレートの時間的変化に基づいて、基準位置(例えば、教師走行モードを開始した際の走行開始位置)からの車両1の移動量を算出し、当該移動量に基づいて、車両1の現在位置を推定する。
【0037】
デッドレコニング部120に推定された車両1の現在位置は、車両1のおおまかな現在位置であり、デッドレコニング部120による位置推定は推定精度が低いため、本実施形態に係る運転支援装置10においては、車両1の実際の現在位置は、車載カメラ40に生成されたカメラ画像に基づいて補正されることになる。尚、デッドレコニング部120による位置推定の推定精度が低い理由としては、完全な運動力学モデル(例えば、タイヤ径やトレッド幅)の構築が困難である点、車載センサ30の観測値には必ずノイズが含まれている点、及び、車載センサ30で観測できない外部要因(例えば、タイヤのスリップ)が位置推定に大きく影響する点等が挙げられる。又、デッドレコニング部120による位置推定においては、これらに起因した誤差が累積することになる。
【0038】
教師データ生成部130は、教師走行時の移動経路を記憶し、当該移動経路から、自動走行モード時に車両1を自動走行させる際の目標経路(以下、単に「目標経路」と称する)に係る教師データD1を生成する。教師データ生成部130は、例えば、ユーザからの教師走行モード開始指令を契機として、移動経路の記憶を開始し、ユーザからの教師走行モード終了指令を契機として、移動経路の記憶を終了する。教師走行は、典型的には、車両1が駐車スペース外の所望の位置(
図3AのP1)に停止した状態で開始され、車両1が駐車スペース内の駐車目標位置(
図3AのP2)に停止した状態で終了される。尚、教師データ生成部130に生成された教師データD1は、外部記憶装置50に格納される。
【0039】
図4は、教師データ生成部130に生成される教師データD1の一例を示す図である。
図4に示すデータD1aは、教師走行時に順次記憶される車両1が実際に走行した移動経路及び当該移動経路中の各位置における走行態様を示すデータであり、教師データD1は、この教師走行時のデータD1aから生成される。
【0040】
図5は、教師データD1の生成方法の一例について、説明する図である。
【0041】
尚、
図4、
図5では、
図3の切り返し位置T1の前後の不必要な経路をカットする際の処理について、説明している。
図4、
図5のWP_1、WP_2、・・WP_Gは、教師走行時に記憶された車両1の移動経路の各位置を順番に表しており、WP_1が移動経路の始点に相当し、WP_Gが移動経路の終点に相当する。
【0042】
教師データD1は、例えば、車両1を自動走行させる際の目標経路、目標経路の各目標位置における車両1の方位(即ち、向き)、目標経路の各目標位置における車両1の走行方向(即ち、前進又は後進)、及び、目標経路中の各目標位置における参考走行情報を含む。
【0043】
ここで、教師データD1の「目標経路」は、例えば、教師走行時の移動経路のデータD1aのうち、切り返し位置の前後で不必要な経路を削除し、その間を連結することで生成される。
【0044】
具体的には、教師データ生成部130は、教師走行時の移動経路において、走行方向の切り返し位置を挟んで、車両1が走行した際の方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である(以下、「連結条件」と称する)第1及び第2地点のペアを探索する。そして、教師データ生成部130は、連結条件を充足する第1及び第2地点のペアが検出された場合、第1地点又は第1地点に移動経路内で隣接する地点と、第2地点又は第2地点に移動経路内で隣接する地点とを連結し、移動経路を上記の切り返し位置においてショートカットした経路に変更することで、目標経路を生成する。つまり、教師データ生成部130は、教師走行時の移動経路における切り返し位置に代えて、第1地点(又は第1地点に移動経路内で隣接する地点)と第2地点(又は第2地点に移動経路内で隣接する地点)とを連結した位置を、目標経路における車両1の切り返し位置に設定する。
【0045】
尚、連結条件の基準となる方位(車両1が当該位置を走行した際の車両1の方位)の差に係る第1閾値は、例えば、0度以上で且つ3度以下の値である。又、連結条件の基準となる距離の差に係る第2閾値は、例えば、0m以上で且つ1m以下の値である。
【0046】
教師データ生成部130においてこのような処理を行うのは、連結条件を充足する第1及び第2地点のペアは、教師走行時の移動経路において、車両1の切り返し位置の前後で、略同一の姿勢で且つ略同一の位置を通過している地点とみなせるからである。換言すると、当該第1及び第2地点のペアと、移動経路内の切り返し位置との間の部分は、車両1の姿勢変更に有効でない不必要な経路であると言える。尚、
図5では、移動経路内の地点WP_Nと地点WP_Kとが、連結条件を充足する第1及び第2地点のペアに該当する。
【0047】
ここで、好ましくは、教師データ生成部130は、目標経路を生成する際、連結された2点間の経路が、その前後の経路に対して直交した経路とならないように、第1地点及び第2地点の少なくとも一方については、当該地点に移動経路内で隣接する地点を、連結対象とする。例えば、
図5では、連結条件を充足するペアである地点WP_Nと地点WP_Kとを連結するのではなく、地点WP_N-1と地点WP_Kとを連結するのが好ましい。つまり、
図5では、車両1を、地点WP_N-1の次に地点WP_Kまで前進走行させた後、地点WP_Kにおいて、切り返しを行うように、目標経路が設定されるのが好ましい(
図4の教師データD1の連結位置を参照)。
【0048】
これによって、連結位置において、車両1を横方向(即ち、車幅方向)に移動させるような目標経路となることを抑制し、円滑に車両1が走行可能な目標経路とすることが可能となる。特に、
図5に示すように、連結対象の一方を、地点WP_Nに代えて地点WP_N-1とする(即ち、第1及び第2地点のペアのうち移動経路の始点側の地点を、始点側に一つずらす)ことによって、車両1を地点WP_K以降の移動経路に沿って移動させる際の操舵角が過大となることを抑制することが可能となる。
【0049】
尚、教師データ生成部130にて、目標経路を生成する際の処理の一例については、
図8を参照して、後述する。
【0050】
教師データD1の「目標経路の各目標位置における車両1の方位」、及び「目標経路の各目標位置における車両1の走行方向」は、例えば、教師走行時における車両1の方位、及び走行方向がそのまま反映されたものである。
【0051】
又、教師データD1の「目標経路中の各目標位置における参考走行情報」は、例えば、車両1が教師走行した際に、移動経路中の各位置で検出された走行情報(例えば、操舵角及び車速)である。この参考走行情報は、後述する車両制御部160にて、自動走行を実行させる際の移動経路の各位置における、車両駆動装置20(例えば、ステアリング装置の操舵角)を制御する際の基準となる(例えば、フィードフォワード要素として参照される)。
【0052】
尚、教師データ生成部130は、好ましくは、教師データD1の「目標経路中の各目標位置における参考走行情報」のうち、目標経路中の連結位置(ここでは、地点WP_K)の車速については、教師走行時の車速からゼロ[m/sec]に変更する。これによって、連結位置で、車両1の切り返しが行われる際の車速の急変が生じることを抑制することができる。
【0053】
ここで、教師データ生成部130は、例えば、車載カメラ40のカメラ画像から車両1の現在位置を推定するための地図データD2を作成しながら、教師データD1を生成する。この技術は、SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)法とも称される。
【0054】
図6は、教師データ生成部130に生成される地図データD2の一例を示す図である。尚、
図6には、地図データD2に記憶された実景中の特徴点Qの実空間上の位置を、鳥瞰図で表している。
【0055】
地図データD2は、実景中の複数の特徴点各々について、実空間における当該特徴点の三次元位置と、地図データD2作成時に撮影されたカメラ画像から得られた当該特徴点の特徴量と、を関連付けて記憶するデータである。地図データD2として記憶される特徴点は、例えば、実景中において目印となり得る物体(例えば、樹木、壁、又は柱等)のカメラ画像から特徴的な画像パターンが得られる部分(例えば、コーナー部)である。尚、地図データD2の複数の特徴点は、例えば、識別番号によって各別に識別可能に記憶されている。
【0056】
地図データD2に記憶される特徴点の実空間における三次元位置は、三次元の直交座標系(X、Y、Z)で表されている。
【0057】
地図データD2に記憶される特徴点の特徴量としては、カメラ画像上の輝度や濃度の他、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)特徴量、又はSURF(Speeded Up Robust Features)特徴量等が用いられる。尚、地図データD2に記憶される特徴点の特徴量データは、同一の三次元位置の特徴点であっても、当該特徴点を撮影したときのカメラの撮影位置や撮影方向毎に別個に記憶されていてもよい。又、地図データD2に記憶される特徴点の特徴量データは、当該特徴点を有する物体の画像と関連付けて記憶されていてもよい。
【0058】
教師データ生成部130は、例えば、ステレオ写真測量に基づき、実景中の特徴点の座標を特定する。具体的には、教師データ生成部130は、異なるタイミングで生成された複数のカメラ画像を読み出し、それらの複数のカメラ画像に共通して写る同一の特徴点を対応付ける。そして、教師データ生成部130は、例えば、それらの複数のカメラ画像が生成されたときの車両1の仮位置に係る情報をデッドレコニング部120から取得し、三角測量の原理により、実景中の特徴点の仮座標を特定する。そして、教師データ生成部130は、例えば、車両1の仮位置及び実景中の特徴点の仮座標を参考情報として用いて、バンドル調整を行い、全てのカメラ画像に対して実景中の各特徴点を投影したときの再投影誤差が最小化するように、車両1の正式位置、及び、実景中の特徴点の正式座標を算出する。そして、教師データ生成部130は、車両1の正式位置を、教師走行時の車両1の位置を示すデータD1aとして記憶する。又、教師データ生成部130は、実景中の特徴点の正式座標を地図データD2として、外部記憶装置50に記憶する。
【0059】
尚、地図データD2は、SLAM法によらず、事前に、LIDAR(Light Detection and Ranging)やステレオカメラを用いて生成されてもよい。但し、地図データD2を生成する際には、その測定方法に依拠して歪みが含まれる場合が多いため、地図データD2自体の歪みに起因した位置推定精度の低下を抑制する観点から、SLAM法を用いるのが好ましい。
【0060】
<自動走行モード実行時>
次に、自動走行モード実行時に機能する運転支援装置10の機能構成について、説明する。
【0061】
自動走行モード実行時には、運転支援装置10においては、車両情報取得部110、デッドレコニング部120、位置推定部140、目標経路読み出し部150、及び、車両制御部160が機能する(
図2Bを参照)。
【0062】
車両情報取得部110及びデッドレコニング部120は、上記と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0063】
位置推定部140は、地図データD2と、車載カメラ40のカメラ画像と、に基づいて、車両1の現在位置を推定する。
【0064】
図7は、位置推定部140の処理の一例について、説明する図である。
図7中の点R1、R2、R3は車載カメラ40のカメラ画像から抽出された3個の特徴点を表し、点Q1、Q2、Q3は地図データD2に記憶された特徴点R1、R2、R3の実空間上の三次元位置を表している。又、RP1は、車載カメラ40の撮像面を表している。又、点P1は、車載カメラ40のカメラ画像から抽出された3個の特徴点R1、R2、R3と、地図データD2に記憶された点Q1、Q2、Q3と、から求められた車載カメラ40の位置(即ち、車両1の位置)を表している。
【0065】
例えば、位置推定部140は、まず、パターンマッチングや特徴量探索等を用いて、車載カメラ40のカメラ画像から抽出された特徴点と、地図データD2に記憶されている特徴点とを照合する。そして、位置推定部140は、車載カメラ40のカメラ画像から抽出された特徴点で、かつ地図データD2に記憶されている特徴点と照合することができた特徴点のうち数個(例えば、3個~6個)の特徴点をランダムに選択して、これらの数個の特徴点のカメラ画像内における位置と、当該数個の特徴点の地図データD2に記憶されている実空間における三次元位置と、に基づいて、実空間における車両1の位置を推定する。この際、位置推定部140は、例えば、Lambda Twist等の公知の手法(例えば、非特許文献1を参照)を用いて、PnP問題を解くことによって、車両1の位置を算出する。
【0066】
尚、位置推定部140は、車載カメラ40のカメラ画像から抽出された特徴点と、地図データD2に記憶されている特徴点とを照合する際、例えば、デッドレコニング部120により推定された車両1の現在位置を基準として、地図データD2に記憶された特徴点のうち、車載カメラ40のカメラ画像から抽出される特徴点と照合する対象の特徴点を絞り込んでもよい。
【0067】
位置推定部140が推定した車両1の現在位置に係る情報は、車両制御部160に送出される。尚、位置推定部140が推定する車両1の現在位置に係る情報は、例えば、実空間における車両1の二次元位置に係る情報(X座標、Y座標)、及び、車両1の方位(即ち、向き)に係る情報を含む。
【0068】
目標経路読み出し部150は、車両1を移動させる教師データD1を、外部記憶装置50から読み出し、車両制御部160に送出する。
【0069】
車両制御部160は、ユーザからの自動走行モードの実行指令を受け付けた場合、車両1の現在位置を認識しながら、車両1を、目標経路読み出し部150から取得した教師データD1が示す目標経路に沿って移動させる。そして、車両制御部160は、目標経路の終点(即ち、教師走行時の移動経路の終点に相当する位置)で、車両1を停止させる。
【0070】
車両制御部160は、典型的には、位置推定部140により推定される車両1の現在位置と、教師データD1が示す目標経路中の各目標位置と、に基づくフィードバック制御により、車両1の走行(例えば、車両1のステアリング装置の操舵角)を制御する。かかる制御を行う理由としては、自動走行モードを開始した際の車両1の初期位置が、教師データD1が示す目標経路の初期位置と正確に一致しない場合があるためである。又、デッドレコニングのみによる移動経路の再現方法では、特に低速域や切り返しのある移動経路では誤差が大きくなりやすい。加えて、自動走行時の目標経路は、教師走行時の移動経路に対して変更を加えたものであるため、教師走行時の車速や操舵角をそのまま用いると、実際の走行経路が目標経路から逸れたものとなってしまうおそれがある。
【0071】
尚、車両制御部160は、この際、教師データD1に設定された参考走行情報(車速、及び操舵角等)を、フィードフォワード要素として用いてもよい。
【0072】
又、車両制御部160は、車両1を自動走行させる際には、必ずしも教師データD1が示す目標経路の始点の位置から自動走行を開始させる必要はなく、教師データD1が示す目標経路の始点と終点の間の位置から自動走行させてもよい。この場合、車両制御部160は、例えば、所定の評価関数を用いて、自動走行モード開始時の車両1の初期位置及び方位から、教師データD1が示す目標経路の始点から終点までの間の各目標位置のうち、最も進入しやすい目標位置を決定すればよい。これによって、自動走行モード開始時の車両1の初期位置が目標経路の始点の位置からずれている場合でも、車両1を、より円滑に目標経路まで到達させることができる。
【0073】
[運転支援装置の動作フロー]
図8は、運転支援装置10(教師データ生成部130)が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、例えば、教師走行終了後、運転支援装置10が実行する処理である。尚、
図8のフローチャートでは、移動経路内の各地点WP_1、WP_2、・・・・WP_Gのうち、2地点ペアのうちの一方の候補地点を表す変数として、WP_Nが用いられている。
【0074】
ステップS1において、まず、運転支援装置10は、N=1として、2地点ペアのうちの一方の候補地点を、移動経路内の始点に設定する。
【0075】
ステップS2において、運転支援装置10は、地点WP_Nを走行した際の車両1の方位及び位置を基準として、連結条件を充足する地点を、移動経路内の地点WP_Gから地点WP_N+1までの間の各地点から探索する。即ち、ここでは、運転支援装置10は、移動経路内において、移動経路の終点側から、連結条件を充足する地点WP_Nとペアとなる地点を順次探索する。これにより、移動経路内において、連結条件を充足する地点WP_Nとペアとなる地点が存在する場合には、移動経路の最も終点側の地点が始めに検出されることになる。
【0076】
ステップS3において、運転支援装置10は、移動経路内の地点WP_Gから地点WP_N+1までのうちのいずれかの地点において、連結条件を充足する地点が検出されたか否かを判定する。ここで、運転支援装置10は、移動経路内の地点WP_Gから地点WP_N+1までのうちのいずれの地点においても、連結条件を充足する地点が検出されない場合(S3:NO)、ステップS4に処理を進め、移動経路内の地点WP_Gから地点WP_N+1までのうちのいずれかの地点(ここでは、地点WP_Kとする)において、連結条件を充足する地点が検出された場合(S3:YES)、ステップS5に処理を進める。
【0077】
ステップS4において、運転支援装置10は、2地点ペアのうちの一方の候補地点を、N=N+1にインクリメントして(即ち、2地点ペアのうちの一方の候補地点を、移動経路の終点側に一地点分ずらす)、ステップS8に処理を進める。
【0078】
ステップS5において、運転支援装置10は、教師走行時に生成された移動経路に係るデータD1aのWP列から、WP_N~WP_K-1を取り除き、WP_N-1とWP_Kを連結する。これにより、教師走行時の移動経路のうち、不必要な経路が削除された目標経路に係る教師データD1が生成されることになる(
図4、
図5を参照)。
【0079】
ステップS6において、運転支援装置10は、教師データD1において、地点WP_Kが切り返し点になるように設定する。具体的には、教師走行時には、地点WP_Kにおいて、車速が非ゼロとなっているため、運転支援装置10は、教師データD1においては、教師走行時に生成された移動経路に係るデータD1aの地点WP_Kにおける車速を、ゼロに変更する。尚、この際、運転支援装置10は、切り返し時の車速の変化を、より抑制する観点から、地点WP_Kの前後の地点(WP_K+1、及びWP_N-1等)の車速についても、ゼロに近い値に変更してもよい。
【0080】
ステップS7において、運転支援装置10は、2地点ペアのうちの一方の候補地点を、N=K+1にインクリメントして、ステップS8に処理を進める。尚、ここで、N=K+1にインクリメントするのは、ステップS5の処理により、WP_N~WP_K-1が連結されたためである。
【0081】
ステップS8において、運転支援装置10は、2地点ペアのうちの一方の候補地点に係る変数を、N=G-1までインクリメントしたか否かを判定する。そして、運転支援装置10は、当該候補地点に係る変数を、N=G-1までインクリメントしていない場合(S8:NO)、ステップS2に戻って同様の処理を実行し、当該候補地点に係る変数を、N=G-1までインクリメントした場合(S8:YES)、ステップS9に処理を進める。
【0082】
ステップS9において、運転支援装置10は、ステップS2~S8により生成された教師データD1を、外部記憶装置50に保存する。
【0083】
以上のような処理によって、教師走行時の移動経路のうち、不必要な経路がカットされた目標経路が生成されることになる。
【0084】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る運転支援装置10は、移動経路において、走行方向の切り返し位置を挟んで、車両1が走行した際の方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である第1及び第2地点のペアを探索し、当該ペアが検出された場合、第1地点又は第1地点に移動経路内で隣接する地点と、第2地点又は第2地点に移動経路内で隣接する地点とを連結し、移動経路を切り返し位置においてショートカットした経路に変更することで、自動走行時の目標経路を生成する。
【0085】
これによって、自動走行時には、車両1を駐車スペース内の目標駐車位置に自動的に駐車させる際に、車両1を、不必要な経路を辿ることなく、当該目標駐車位置に移動させることが可能となる。これにより、自動走行時の走行時間の短縮ができ、車両走行の最適化を図ることが可能となる。
【0086】
尚、従来技術に係る目標経路の生成方法として、例えば、移動経路のうち、始点、切り返し点、及び終点のみを記憶して、それらを円滑に結ぶように、評価関数を用いた演算処理により、自動的に経路を生成する手法も検討されている。しかしながら、かかる手法では、経由位置間は、評価スコアによって最適化されてしまうため、ユーザが意図的に通りたくない場所(例:芝生)や、センサで障害物として検知が困難な通れない場所(例:細いポール、チェーン、池など)を避けて教師走行を行っていたとしても、自動走行時に通ろうとしてしまう。
【0087】
この点、本実施形態に係る運転支援装置10は、基本的には、ユーザが意図した経路を通るように、車両1を走行制御するため、従来技術のような問題の発生を抑制し得る点でも有用である。
【0088】
(変形例1)
上記実施形態では、教師データ生成部130は、目標経路を生成する際、走行方向の切り返し位置を挟んで、走行方向が互いに異なる2地点のペアを連結する態様を示した。しかしながら、教師データ生成部130は、目標経路を生成する際、走行方向の切り返し位置を挟んで、連結条件を充足する2地点のペアであれば、走行方向が同一の2地点のペアを連結してもよい。
【0089】
図9Aは、本変形例1において、教師走行モードで、車両1が走行した際の移動経路(実線矢印の経路)の一例を示す図である。
図9Bは、本変形例1において、自動走行モードで、車両1が自動走行することになる目標経路(実線矢印の経路)の一例を示す図である。
【0090】
図9Aでは、ユーザの運転操作により、車両1が駐車スペース外のある位置P1から駐車スペース内の目標駐車位置P2まで走行した際に、走行方向の切り返しが2回行われた態様を示している。ここでは、教師データ生成部130は、探索実行時、その移動経路内の地点WP_L及び地点WP_Mのペアが、方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満の条件を充足したと判定している。そのため、本変形例1では、教師データ生成部130は、
図9Bに示すように、地点WP_L-1(地点WP_Lに移動経路内で始点側に隣接する地点)と地点WP_Mとを連結して目標経路を生成している。尚、この際には、地点WP_Lの走行方向と地点WP_Mの走行方向とは同一方向(ここでは、後進走行)となる。
【0091】
かかる構成によっても、教師走行時の移動経路内の不必要な経路をカットした目標経路を生成することが可能である。但し、この場合、2地点が連結された位置においては、車両1は切り返しを行うことなく走行することになる。このような状況で、上記実施形態と同様に、自動走行時、2地点が連結された位置において、一旦、車両1を停止させると、ユーザに違和感を与えるものとなってしまう。そのため、本変形例1においては、教師データ生成部130は、走行方向が同一の2地点を連結する場合には、当該連結位置における車速を非ゼロ(例えば、教師走行時の車速のまま)とするのが好ましい。
【0092】
図10は、変形例1に係る運転支援装置10(教師データ生成部130)が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS1~S9の処理は、
図8のフローチャートで説明した処理と同様であり、このフローチャートは、ステップS4とステップS5の間に、ステップSaが挿入されている点で、
図8のフローチャートと相違する。
【0093】
ステップSaは、連結条件を充足する2地点のペアWP_N、WP_Kが検出され、これら2地点のペアに対応する地点WP_N-1とWP_Kを連結した後に行われる処理である。
【0094】
ステップSaでは、運転支援装置10は、例えば、教師走行時の地点WP_Nにおけるシフト情報と地点WP_Kにおけるシフト情報とを参照して、地点WP_Nにおける走行方向と地点WP_Kにおける走行方向が同一方向であるか、逆方向かを判定する。そして、運転支援装置10は、地点WP_Nにおける走行方向と地点WP_Kにおける走行方向が逆方向である場合(ステップSa:No)、教師データD1に連結位置(ここでは、地点WP_K)を切り返し点と設定した上で(ステップS6)、ステップS7に処理を進め、地点WP_Nにおける走行方向と地点WP_Kにおける走行方向が同一方向である場合(ステップSa:Yes)、教師データD1に連結位置(ここでは、地点WP_K)を切り返し点と設定することなく、ステップS7に処理を進める。
【0095】
ここで、運転支援装置10は、教師データD1に連結位置を切り返し点と設定する場合(ステップS6)には、例えば、上記実施形態と同様に、教師データD1に設定する連結位置(ここでは、地点WP_K)における目標車速をゼロと設定する。一方、運転支援装置10は、教師データD1に連結位置を切り返し点と設定しない場合には、例えば、教師データD1に設定する連結位置(ここでは、地点WP_K)における目標車速を、教師走行時の車速のままとする。
【0096】
以上のように、本変形例1に係る目標経路設定方法によれば、上記実施形態に係る目標経路設定方法と比較して、より最適な目標経路を設定できる場合がある。
【0097】
(変形例2)
上記実施形態では、教師データ生成部130は、2地点ペアを探索する際、各候補地点に適用する連結条件(方位に係る第1閾値、及び距離に係る第2閾値)を同一のものとした。しかしながら、教師データ生成部130は、2地点ペアを探索する際、候補地点から教師走行時の移動経路の終点までの距離が離れるほど、上記した連結条件に係る第1閾値及び/又は第2閾値を大きく設定してもよい。換言すると、教師データ生成部130は、目標駐車位置からの距離が離れている候補地点については、2地点ペアに該当するか否かを判定するための連結条件を緩和してもよい。
【0098】
一般に、目標駐車位置近辺には、狭隘なスペースしか存在しない場合が多いが、目標駐車位置から離れた位置には、比較的スペースにゆとりがある場合が多い。換言すると、車両1を自動走行させる際に、目標駐車位置近辺では、教師走行時の移動経路からわずかでも逸れると車両1が障害物に衝突するおそれがあるが、目標駐車位置から離れた位置では、教師走行時の移動経路からの多少外れても車両1を障害物に衝突させることなく、車両1を目標駐車位置まで導くことが可能である。
【0099】
この点、本変形例2のように、2地点ペアを探索する際、候補地点から教師走行時の移動経路の終点までの距離が離れるほど、上記した連結条件に係る第1閾値及び/又は第2閾値を大きく設定することによって、不必要な経路をより積極的に削除することが可能である。
【0100】
(変形例3)
上記実施形態では、教師データ生成部130が2地点ペアを探索する際、教師走行時の移動経路の始点から終点まですべての地点を探索対象とした。しかしながら、教師データ生成部130は、2地点ペアを探索する際、教師走行時の移動経路のうち、曲率が第3閾値以上となる地点については、探索対象から除外してもよい。尚、ここで、第3閾値は、例えば、車両1の一般的な操舵角の限界から換算される曲率である。
【0101】
一般に、車両1の操舵角の限界から、車両1をある経路に沿って走行させる際には、当該経路の曲率が所定値以下である必要がある。この点、走行方向の切り返しの後には、通常、ある程度の曲率を有する経路に沿って車両1を走行させるため、曲率が当該所定値以上の地点を、2地点ペアの一方として連結した場合には、その後の経路の曲率が過剰に大きくなるおそれがある。その結果、車両1が目標経路に沿って走行できず、当該目標経路から逸れながら走行することになる。尚、かかる状況が目標駐車位置近辺で生じた場合、車両1が障害物に衝突するおそれがある。これは、目標駐車位置近辺には、通常、狭隘なスペースしか存在しないためである。
【0102】
この点、本変形例3のように、探索対象を制限することによって、目標経路の曲率が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0103】
尚、本変形例3で判定する各地点における曲率は、当該地点とその隣接する地点とを結ぶ曲線の曲率であってもよいが、当該地点と目標駐車位置とを結ぶ曲線の曲率であってもよい。この場合、目標駐車位置近辺の地点のみを探索対象から除外することができる。
【0104】
(変形例4)
教師データ生成部130は、連結条件を充足する2地点ペアが検出された場合、ユーザの選択操作に基づいて、当該2地点ペアを連結するか否かを決定してもよい。
【0105】
図11は、変形例4に係る運転支援装置10において、ユーザが選択操作を行うためのHMI60に表示されるユーザインタフェイス画面の一例を示す図である。尚、
図11の左図は、教師走行時の移動経路を表し、
図11の右図は、教師走行データ生成部130にて提案された目標経路を表している。
【0106】
図11では、ユーザは、ユーザインタフェイス画面を視認しながら、切り返し位置T1、T2それぞれについて、ショートカットした経路に変更するか否かを選択し得るようになっている。尚、
図11のRb1、Rb2、Rb3は、それぞれ、ユーザが入力操作を行うためのアイコンである。
【0107】
ユーザが教師走行で車両1を走行させた際に、何らかの意図をもって、その移動経路を走行させる場合がある。例えば、所定位置を通過することで、駐車スペースに設置された監視センサを作動させる場合がある。このような場合に、目標経路を、教師走行で走行された移動経路からショートカットしたものに変更してしまうとユーザの意図に反することになる。
【0108】
この点、本変形例4のように、ユーザが選択操作により、目標経路を、教師走行時の移動経路のうち、連結条件を充足する2地点ペアの位置においてショートカットした経路に変更したものとするか、又は、教師走行時の移動経路そのままの経路とするかを決定し得る構成とすることによって、ユーザの意図に沿った目標経路を設定することが可能となる。
【0109】
(変形例5)
上記実施形態では、教師データ生成部130は、一回の教師走行の移動経路のデータのみを参照して、当該移動経路を最適化することで、自動走行時の目標経路を生成する態様を示した。しかしながら、教師データ生成部130は、自動走行時の目標経路を生成する際、今回の教師走行時の移動経路のデータに加えて、過去に行った教師走行時の移動経路のデータを参照して、これらを組み合わせることで、目標経路を生成してもよい。
【0110】
教師走行のための駐車運転時、運転に熟練したユーザでなければ、一回の教師走行だけでは、その移動経路内に不必要な経路が含まれる場合がある。この点、教師走行を何度か行って、それらの教師走行時の移動経路を組み合わせることで、最適な移動経路を生成できれば、利便性が高い。本変形例5に係る運転支援装置10は、かかる要請に対応するものである。
【0111】
図12は、変形例5の教師データ生成部が行う処理について、模試的に説明する図である。
図12の左図は、駐車スペース外のある位置P1から駐車スペース内の目標駐車位置P2まで教師走行が行われた際の移動経路を示しており、実線は、今回の教師走行時の移動経路を示し、破線は、過去に行った教師走行時の移動経路(即ち、保存済みのデータ)を示している。
図12の右図は、今回の教師走行時の移動経路と、過去に行った教師走行時の移動経路とを組み合わせることで生成した目標経路を示している。
【0112】
教師データ生成部130は、例えば、今回の教師走行時の移動経路の各位置における車両の姿勢と、過去に行った教師走行時の移動経路の各位置における車両の姿勢と、を比較して、方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である地点を探索する。そして、教師データ生成部130は、方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である地点が存在する場合、今回の教師走行時の移動経路と過去に行った教師走行時の移動経路とを組み合わせる候補地点(以下、「姿勢類似地点」とも称する)とする。
【0113】
教師データ生成部130は、例えば、スタート地点から候補地点までの間の経路、当該候補地点から次の候補地点までの間の経路、及び、次の候補地点からゴール地点までの間の経路等、それぞれについて、今回の教師走行時の移動経路か又は過去に行った教師走行時の移動経路のいずれかを選択することで、今回の教師走行時の移動経路と過去に行った教師走行時の移動経路とを組み合わせた目標経路を生成する。尚、この際、教師データ生成部130は、各地点を結ぶ移動経路について、切り返し回数、及び距離の長さ等を基準とした評価関数を用いて、今回の教師走行時の移動経路と、過去に行った教師走行時の移動経路と、のうちいずれが最適な移動経路かを決定して、今回の教師走行時の移動経路か又は過去に行った教師走行時の移動経路のいずれかを選択することになる。
【0114】
図12では、地点Ts11及び地点Ts12が、方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である候補地点に相当し、
図12の右図では、スタート地点から候補地点Ts11までの間の経路としては、過去に行った教師走行時の移動経路が選択され、候補地点Ts11から候補地点Ts12までの間の経路としては、今回の教師走行時の移動経路が選択され、候補地点Ts12からゴール地点までの間の経路としては、過去に行った教師走行時の移動経路が選択された態様を示している。
【0115】
図13は、変形例5に係る運転支援装置10(教師データ生成部130)が目標経路を生成する際の動作の一例を示すフローチャートである。
【0116】
ステップS11において、運転支援装置10は、保存済みの経路A(過去に行った教師走行時の移動経路を表す。以下同じ)と、今回の経路Bとを比較して、姿勢類似地点Ts(即ち、方位の差が第1閾値未満であり、且つ、距離の差が第2閾値未満である地点)が存在するか否かを探索する。
【0117】
ステップS12において、運転支援装置10は、姿勢類似地点Tsが存在するか否かを判定する。そして、運転支援装置10は、姿勢類似地点Tsが存在する場合には、ステップS13に処理を進め、姿勢類似地点Tsが存在しない場合には、ステップS15に処理を進める。
【0118】
ステップS13において、運転支援装置10は、スタート点から姿勢類似地点Tsまでの最適な経路として、経路A又は経路Bのいずれかを選択する。そして、運転支援装置10は、前の姿勢類似地点Tsから次の姿勢類似地点Ts(次の姿勢類似地点Tsが存在しない場合はゴール点)までの最適な経路として、経路A又は経路Bのいずれかを選択する。そして、運転支援装置10は、それぞれ最適な経路同士を姿勢類似地点Tsで結合する。運転支援装置10は、かかる処理を、検出された姿勢類似地点Tsの全地点について、実行する。
【0119】
ステップS14において、運転支援装置10は、ステップS13にて、最適化された経路を、経路A及び経路Bと共にユーザに提示し、ユーザにいずれの経路を採用するかを選択させ、ステップS16に処理を進める。
【0120】
ステップS15において、運転支援装置10は、経路Aと経路Bの両方をユーザに提示し、ユーザにいずれの経路を採用するか選択させ、ステップS16に処理を進める。
【0121】
ステップS16において、運転支援装置10は、ユーザにて選択された経路を、教師データ(即ち、自動走行時の目標経路)として外部記憶装置50に格納する。
【0122】
以上のように、本変形例5に係る目標経路設定方法によれば、上記実施形態に係る目標経路設定方法と比較して、より最適な目標経路を設定できる場合がある。
【0123】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示に係る運転支援装置によれば、より好適な駐車動作の実現が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 車両
10 運転支援装置
20 車両駆動装置
30 車載センサ
40 車載カメラ
50 外部記憶装置
110 車両情報取得部
120 デッドレコニング部
130 教師データ生成部
140 位置推定部
150 目標経路読み出し部
160 車両制御部
D1 教師データ
D2 地図データ