(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091688
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】包装物、包装体、積層シート、原反シート、及び包装物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240628BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240628BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240628BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B65D77/20 F
B65D65/40 A
B65D77/20 G
B65D77/20 Q
B32B27/00 H
B32B15/08 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062128
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2023001608の分割
【原出願日】2018-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】高萩 敦子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内容物が包装体に収容された包装物であって、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層の端面の腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物を提供する。
【解決手段】内容物12が包装体11に収容された包装物10であって、前記包装物は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられ、前記包装体は、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13から構成されており、前記包装体は、前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が融着されることによって、前記内容物を収容しており、前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していない、包装物。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が包装体に収容された包装物であって、
前記包装物は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられ、
前記包装体は、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹
脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、
前記包装体は、前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂
層同士が融着されることによって、前記内容物を収容しており、
前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア
層の端面が外部に露出していない、包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物、包装体、積層シート、原反シート、及び包装物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室、キッチン、貯水槽内部、屋外などの水に接触する機会の多い場所において、内容物(例えば、センサ(温度、圧、水流、水圧など)、無線機器、電源、電子部材、熱交換物など)が水性液体に接触することを長期間にわたって防ぐ目的で、樹脂や金属で形成された包装体が使用されている。
【0003】
一方、内容物を水から保護するためのシート状の包装体としては、種々のものが知られており、例えば、内容物を水や光などから保護するものとしては、レトルト食品用包装材料により形成された包装体が一般的である。
【0004】
レトルト食品用包装材料は、アルミニウム箔などのバリア層の両側に樹脂層が配された構造を備えており、加熱によって食品を殺菌した後、内容物である食品を空気や光などから保護しつつ、加熱調理する際に、食品が熱湯に直接接触することを防ぐ役割を果たしている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のレトルト食品用包装材料は、長期間にわたって水に接触することが前提になっていない。このため、レトルト食品用包装材料により形成された包装体を用いて、内容物を封止した包装物を、長期間水に接触させると、包装体の端部に露出したバリア層の端面が腐食するという問題がある。
【0007】
内容物が収容された包装物において、包装体の端部におけるバリア層の端面の腐食は、包装体の内部への水分の浸入につながり、内容物が水性液体に接触することを長期間にわたって防ぐことができない要因になっている。
【0008】
このため、従来のレトルト食品用包装材料により形成された包装体を用いて内容物を収容した包装物は、浴室、キッチン、貯水槽内部、屋外などの水に接触する機会の多い場所において、内容物が水性液体に接触することを長期間にわたって防ぐには適していない。
【0009】
このような状況下、本発明は、内容物が包装体に収容された包装物であって、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層の端面の腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、内容物が包装体に収容された包装物であって、前記包装物は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられ、前記包装体は、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、前記包装体は、前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が融着されることによって、前記内容物を収容しており、前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していないため、包装物は、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、包装体の端部におけるバリア層の端面の腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適していることを見出した。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 内容物が包装体に収容された包装物であって、
前記包装物は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられ、
前記包装体は、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、
前記包装体は、前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が融着されることによって、前記内容物を収容しており、
前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していない、包装物。
項2. 前記バリア層の端面の少なくとも一部が、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が熱融着された融着周縁部内に位置している、項1に記載の包装物。
項3. 前記バリア層の端面の全周が、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が熱融着された融着周縁部内に位置している、項1または2に記載の包装物。
項4. 前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記樹脂層及び前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、前記バリア層の端面を覆っている、項1~3のいずれかに記載の包装物。
項5. 前記包装体は、封止部材を備えており、
前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部を前記封止部材が覆っている、項1~4のいずれかに記載の包装物。
項6. 前記包装体の前記外面の全体が、前記封止部材で構成されている、項5に記載の包装物。
項7. 前記封止部材が、ポリオレフィンにより構成されている、項5または6に記載の包装物。
項8. 前記封止部材が、熱収縮フィルムである、項5~7のいずれかに記載の包装物。項9. 前記樹脂層と前記封止部材との間に易接着層を有している、項5~8のいずれかに記載の包装物。
項10. 前記樹脂層及び前記熱可塑性樹脂層が、同じ熱可塑性樹脂により構成されている、項1~9のいずれかに記載の包装物。
項11. 前記積層シートは、前記熱可塑性樹脂層側から前記樹脂層側に向かうように形成された凹形状を少なくとも有している、項1~10のいずれかに記載の包装物。
項12. 前記樹脂層は、ポリエステル及びポリオレフィンの少なくとも一方を含む、項1~11のいずれかに記載の包装物。
項13. 連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装体であって、
前記包装体は、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、
前記包装体は、前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士が融着されることによって、内容物を収容する形状を備えており、
前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していない、包装体。
項14. 連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる積層シートであって、
前記積層シートは、少なくとも、前記外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備えており、
前記積層シートの周縁部の少なくとも一部において、前記バリア層の端面が、前記樹脂層の端面よりも、内側に位置している、積層シート。
項15. 項14に記載の積層シートを得るための原反シートであって、
前記原反シートは、少なくとも、外側面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、
前記バリア層は、部分的に設けられている、原反シート。
項16. 連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装物の製造方法であって、
前記包装物の内容物を収容する包装体として、少なくとも、外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートからなり、前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していないものを用い、
前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士を融着させることによって、前記内容物を収容して前記包装物を得る工程を備えている、包装物の製造方法。
項17. 連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装体を用いて、内容物を収容する方法であって、
前記包装体として、少なくとも、外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートからなり、前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していないものを用い、
前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士を融着させることによって、前記内容物を収容する工程を備えている、内容物の収容方法。
項18. 連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装物の製造方法であって、
前記包装物の内容物を収容する包装体として、少なくとも、外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートからなり、前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部において、前記積層シートの前記バリア層の端面が外部に露出していないものを用い、
前記積層シートの周縁部において、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂層同士を融着させることによって、前記内容物を収容して前記包装物を得る工程を備えている、包装物の製造方法。
項19. 前記包装体は、封止部材を備えており、
前記積層シートの前記周縁部の少なくとも一部を前記封止部材が覆うように、前記封止部材を設ける、項18に記載の包装物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、包装体の端部におけるバリア層の端面の腐食が効果的に抑制されており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装体であって、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、包装体の端部におけるバリア層の端面の腐食が効果的に抑制されており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装体及び積層シート、さらに当該積層シートを得るための原反シートを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本発明の包装物の断面構造(
図1,2のA-A’におけるz方向の断面)の一例(第1の態様)を示す模式図である。
【
図4】本発明の包装物の断面構造の一例(第2の態様)を示す模式図である。
【
図5】本発明の包装物の断面構造の一例(第3の態様)を示す模式図である。
【
図6】本発明の包装物の断面構造の一例(第4の態様)を示す模式図である。
【
図7】本発明の包装物の断面構造の一例(第5の態様)を示す模式図である。
【
図8】本発明の包装物の断面構造の一例(第6の態様)を示す模式図である。
【
図9】本発明の包装物の断面構造の一例(第7の態様)を示す模式図である。
【
図10】本発明の包装物の断面構造の一例(第7の態様の変形例)を示す模式図である。
【
図11】本発明の積層シートの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図12】本発明の積層シートを得るために用いる原反シートの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の包装物は、内容物が包装体に収容されたものである。本発明の包装物は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる。本発明の包装物において、包装体は、少なくとも、外面側に位置する樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されている。さらに、包装体は、積層シートの周縁部において、積層シートの熱可塑性樹脂層同士が融着されることによって、内容物を収容している。本発明の包装物は、積層シートの周縁部の少なくとも一部において、積層シートのバリア層の端面が外部に露出していないことを特徴としている。以下、本発明の包装物、包装体、積層シート、内容物の収容方法、及び包装物の製造方法について、詳述する。
【0016】
なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本発明において、バリア層の端面が外部に露出していないとは、バリア層の端面が外部環境と接していないことを意味している。
【0017】
1.包装物及び包装体の用途、構造
図3~
図10の模式図に示すように、本発明の包装物10は、内容物12が包装体11に収容された構造を備えている。本発明の包装物10は、連続又は断続的に、外面11aに水性液体が接触する用途に用いられる。本発明の包装物10の具体的な用途は特に制限されないが、例えば、水性液体に接触する機会の多い場所(例えば、浴室、キッチン、貯水槽内部、屋外)において、内容物(例えば、センサ(温度、圧、水流、水圧など)、無線機器、熱交換器、電子部材など)が水性液体に接触することを長期間にわたって防ぐ目的で使用される。本発明の包装物10は、例えば、温度センサなど熱を感知する材料、熱交換する材料が、水性液体と直接接触することによって分解・反応などすることを、長期間にわたって抑制する目的で使用される。特に、内容物12が電子部材である場合、水性液体が電子部材に接触すると故障の原因となるため、本発明の包装体11によって電子部材が密封された包装物10を電子機器自体又はその構成部材の一部とすることにより、電子機器を長期間にわたって連続又は断続的に水性液体が接触する用途に好適に使用することが可能となる。
【0018】
従来のレトルト食品用包装材料を用いた包装物は、通常、数分間程度、長くても30分程度の間、水性液体に連続または断続的に接触される程度であるが、本発明の包装物10は、長期間にわたり連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いられる包装物である。本発明の包装物10は、例えば2時間以上という長期間、さらには、12時間以上、24時間以上、72時間以上、7日以上、30日以上、または1年以上という長期間にわたって、連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いてもよい。また、包装物は、加温された水性液体が接触する用途に使用されることがあり、本発明の包装物10は、例えば0~98℃程度の水性液体が接触する用途に好適に用いることができる。
【0019】
包装体11は、例えば
図3から
図10に示すように、少なくとも、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3をこの順に有する積層シート13から構成されている。包装体11において、樹脂層1が最外層側になり、熱可塑性樹脂層3は最内層になる。包装体11によって内容物12を密封する際には、熱可塑性樹脂層3が包装体11の内面11bを構成する(内側になる)ようにして内容物12を収容することにより、内容物12を水性液体の接触から長期間にわたって保護することができる。
【0020】
なお、本発明において、水性液体とは、水を含む液体を意味しており、水性液体中の水の含有量としては、例えば、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、99質量%以上、100質量%などが挙げられる。水の他には、例えば凝固点や沸点を調整するために有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒としては、例えばエチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂層3が包装体11の内面11bを構成する(内側になる)ようにして内容物12を収容する際には、例えば、積層シート13を成形した包装体11とし、内容物12の周縁に位置する熱可塑性樹脂層3同士を融着して、内容物12を密封することができる。すなわち、本発明の包装物10において、包装体11は、内容物12を収容する空間を形成した成形体とし、当該空間に内容物12を配置して熱可塑性樹脂層3同士を融着(より具体的には熱融着)させることにより、内容物12を収容・密封することができる。内容物12の具体例は、前述のとおりである。
【0022】
図3から
図10においては、2枚の積層シート13が、それぞれ、熱可塑性樹脂層3から樹脂層1に向かう凹形状に成形されており、積層シート13の周縁部13aにおいて、熱可塑性樹脂層3同士が融着されることによって、内容物12が包装体11に収容されている。
【0023】
包装体11が内容物12を収容するための形状としては、内容物12を収容する空間が形成されていれば特に制限されない。例えば、
図1~
図10には、積層シート13が、熱可塑性樹脂層3側から、外面11a側に位置する樹脂層1に向かうように形成された凹形状を有する各種態様を示している。このような形状は、包装体11を形成する積層シート13を金型で成型することによって、形成することができる。なお、
図1には、2枚の積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が対向するようにして、4辺の周縁部13aを融着させた形状を図示している。一方、
図2には、1枚の積層シート13の中心で折り返すことにより熱可塑性樹脂層3同士が対向するようにして、3辺の周縁部13aを融着させた形状を図示している。
【0024】
包装体11は、
図1~
図10に示された形状のように金型によって成形された形状に限定されず、袋状であってもよい。袋状の具体例としては、例えば、スタンディングパウチ、二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、ピロー包装袋、角底袋、バッグインボックスのバッグ(内袋)、その他等、各種の包装体の形状から選択することができる。
【0025】
なお、本発明において、積層シートの周縁部とは、積層シートの外周部に沿った一定幅(積層シートの端部から中央に向かう方向の一定距離)の領域を意味している。包装体11を構成する積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30は、この周縁部13aの全周、または周縁部13aの少なくとも一部に形成される。例えば、
図1は、矩形状の2枚の積層シート13の熱可塑性樹脂層3が対向するように重ね合わせ、積層シート13の周縁部13aのうち、全周(4辺)を融着して包装物10とした模式図の平面図を表している。
図1の着色されている領域が、融着されている領域を示している。また、
図2は、前述の通り、矩形状の1枚の積層シート13を中心Pの位置で折り返すことにより熱可塑性樹脂層3同士が対向するようにして、3辺の周縁部13aを融着させた形状を図示している。
図2の着色されている領域が、融着されている領域を示している。
図2の包装物10においては、積層シートの周縁部13aは、融着されている領域に対応している。なお、
図2の包装体11において、折り返した部分13bは融着せずとも開封していない部分となるため、
図2においては、融着されていない。本発明において、周縁部の前記一定幅は、包装物10の大きさなどによって適宜設定されるため、特に制限されないが、例えば、0.5~100mm程度、1~50mm程度、2~20mm程度などが挙げられる。
【0026】
包装体11の形状が例えばピロー包装袋である場合、いわゆる背貼り部分についても、熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30となり、背貼り部分も積層シート13の周縁部13aとなる。このため、背貼り部分を含めて、積層シートの周縁部13aの少なくとも一部において、包装体を構成する積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していないことが好ましい。
【0027】
包装体11を形成する積層シート13の厚さとしては、特に制限されないが、積層シート13の厚さを薄くして、内容物12を収容した製品を小型化しつつ、長期間にわたる耐水性に優れたものとする観点からは、上限については、例えば約200μm以下、約180μm以下、約150μm以下が挙げられ、下限については、約50μm以上、約60μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、50~200μm程度、50~180μm程度、50~150μm程度、60~200μm程度、60~180μm程度、60~150μm程度が挙げられる。なお、包装体11において、積層シート13の厚さは、前述の融着がなされていない部分における厚さである。
【0028】
本発明の包装物10において、包装体11は、少なくとも、外面側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13から構成されており、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していないことを特徴としている。長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食をより効果的に抑制する観点から、本発明の包装物10においては、積層シート13の周縁部13aの全周において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していないことが好ましい。本発明の包装物10の構造の具体的な態様として、以下の第1の態様から第7の態様を以下に説明する。
【0029】
第1の態様
図3に示されるように、本発明の包装物10の第1の態様において、包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13から構成されている。また、第1の態様では、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方が、バリア層2の端面2aを覆っている。
図3の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、本発明の包装物10において、包装体11を構成する積層シート13の樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側には、表面被覆層が設けられていてもよい。樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0030】
第1の態様においては、
図3に示されるように、包装体11のバリア層2の端面2aの少なくとも一部が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置しており、周縁部13aの少なくとも一部において、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方が、バリア層2の端面2aを覆っている。これにより、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出しておらず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していることにより、バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が効果的に向上する。
【0031】
第1の態様において、好ましくは、包装体11のバリア層2の端面2aの全周が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置しており、周縁部13aの全周において、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方が、バリア層2の端面2aを覆っている。これにより、積層シート13の周縁部13aの全周において、バリア層2の端面2aが外部に露出せず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食がより一層効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に特に適した包装物10となる。バリア層2の端面2aが、積層シート13の周縁部13aの全周において、融着周縁部30内に位置していることにより、融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が特に効果的に向上する。
【0032】
なお、例えば、後述の第6の態様には、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、樹脂層1が、バリア層2の端面2aを覆っている態様を示しており、後述の第7の態様には、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、熱可塑性樹脂層3が、バリア層2の端面2aを覆っている態様を示している。
【0033】
図3では、積層シート13の周縁部13aにおいて、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方が、バリア層2の端面2aを覆っており、かつ、バリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側(包装体11の中心側)に位置している。
【0034】
本発明の包装物10において、
図3に示されるように、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方が、バリア層2の端面2aを覆うようにするためには、例えば、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を熱融着させる際に、周縁部13aにおいて樹脂層1と熱可塑性樹脂層3とが融着するようにして、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の両方を端面2aに接触させる。
【0035】
第2の態様
図4に示されるように、本発明の包装物10の第2の態様において、包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備えており、さらに、包装体11は、封止部材4を備えている。第2の態様において、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4が覆っている。
図4の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側には、表面被覆層が設けられていてもよい。樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層や、封止部材4の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0036】
図4に示されるように、第2の態様においては、包装体11のバリア層2の端面2aの少なくとも一部が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置しており、さらに、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部が封止部材4で覆われている。これにより、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出しておらず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していることにより、バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が効果的に向上する。
【0037】
第2の態様において、包装体11のバリア層2の端面2aの全周が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置しており、さらに、積層シート13の周縁部13aの全周が封止部材4で覆われていることが好ましい。これにより、積層シート13の周縁部13aの全周において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出せず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食がより一層効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に特に適した包装物10となる。バリア層2の端面2aが、積層シート13の周縁部13aの全周において、融着周縁部30内に位置していることにより、融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が特に効果的に向上する。
【0038】
封止部材4で積層シート13の周縁部13aを覆う方法としては、特に制限されないが、例えば、封止部材4を積層シート13の周縁部13aに融着させる方法や、樹脂層1と封止部材4との間に易接着層を設けて接着させる方法、接着剤やコーキング材を用いる方法などが挙げられる。封止部材4で積層シート13の周縁部13aを覆う方法の詳細については、後述の通りである。
【0039】
図4に示される第2の態様では、積層シート13の周縁部13aにおいて、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っている図を示しているが、第1の態様と同様、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の少なくとも一方が、バリア層2の端面2aを覆っていてもよい。
【0040】
図4に示されるように、第2の態様においては、バリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側(包装体11の中心側)に位置しており、封止部材4が樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側に入り込むことによって、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っていることが好ましい。
【0041】
第3の態様
図5に示すように、第3の態様の包装物10は、第2の態様の包装物10と比較すると、バリア層2の端面2aが、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達しており、封止部材4が樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側に入り込むことなく、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っている点で相違しているが、その他の点で共通している。第3の態様においても、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4が覆っている。
図5の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側には、表面被覆層が設けられていてもよい。樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層や、封止部材4の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0042】
第3の態様において、包装体11のバリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達している(すなわち、バリア層2の端面2aが、融着周縁部30内に位置していない)が、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っているため、包装体11のバリア層2の端面2aの少なくとも一部が外部に露出しておらず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。
【0043】
さらに、第3の態様において、包装体11のバリア層2の端面2aの全周が、封止部材4で覆われていることが好ましい。これにより、積層シート13の周縁部13aの全周において、包装体11のバリア層2の端面2aが外部に露出せず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食がより一層効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に特に適した包装物10となる。
【0044】
封止部材4で積層シート13の周縁部13aを覆う方法としては、特に制限されず、第2の態様と同様、例えば、封止部材4を積層シート13の周縁部13aに融着させる方法や、樹脂層1と封止部材4との間に易接着層を設けて接着させる方法、接着剤やコーキング材を用いる方法などが挙げられる。封止部材4で積層シート13の周縁部13aを覆う方法の詳細については、後述の通りである。
【0045】
第4の態様
図6に示されるように、本発明の包装物10の第4の態様において、包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備えており、さらに、包装体11の外面11aの全体が、封止部材4で構成されている。すなわち、第4の態様においては、積層シート13の外面側に位置する樹脂層1のさらに外側の全体が、封止部材4で覆われている。
図6の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側(ただし、封止部材4の内側)には、表面被覆層が設けられていてもよい。樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層や、封止部材4の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0046】
図6に示されるように、第4の態様においては、第1の態様及び第2の態様と同じく、包装体11のバリア層2の端面2aの少なくとも一部が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置している。さらに第4の態様においては、包装体11の外面11aの全体が、封止部材4で構成されている。このため、積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出しておらず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。バリア層2の端面2aが熱可塑性樹脂層3同士の融着周縁部30内に位置していることにより、バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が効果的に向上する。
【0047】
また、第4の態様においても、包装体11のバリア層2の端面2aの全周が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着された融着周縁部30内に位置していることが好ましい。バリア層2の端面2aが、積層シート13の周縁部13aの全周において、融着周縁部30内に位置していることにより、融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が特に効果的に向上する。
【0048】
さらに、第4の態様においては、包装体11の外面11aの全体が封止部材4で構成されているため、融着周縁部30の耐水性だけでなく、包装体11全体としての耐水性が特に優れている。
【0049】
包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する方法としては、積層シート13を外側から封止部材4で被覆する方法が挙げられる。後述のように、例えば、封止部材4として熱収縮フィルムを用いることにより、積層シート13の外側を当該熱収縮フィルムで覆い、加熱することによって、熱収縮フィルムが収縮して、積層シート13の外面の形状に沿った形状の封止部材4が形成され、包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成することができる。包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する方法の詳細については、後述の通りである。
【0050】
図6に示される第4の態様では、積層シート13の周縁部13aにおいて、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っている図を示しているが、第1の態様及び第2の態様と同様、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の少なくとも一方が、バリア層2の端面2aを覆っていてもよい。
【0051】
なお、
図6に示されるように、第4の態様においては、バリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側(包装体11の中心側)に位置しており、封止部材4が樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側に入り込むことによって、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っていることが好ましい。
【0052】
第5の態様
図7に示すように、第5の態様の包装物10と第4の態様との相違点としては、第5の態様においては、バリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達しており、封止部材4が樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側に入り込むことなく(すなわち、バリア層2の端面2aが、融着周縁部30内に位置していない)、封止部材4がバリア層2の端面2aを覆っている点にあり、その他の点で共通している。
図7の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側(ただし、封止部材4の内側)には、表面被覆層が設けられていてもよい。第5の態様においても、樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層や、封止部材4の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0053】
図7に示されるように、第5の態様においても、第3の態様と同じく、包装体11のバリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達しているが、封止部材4がバリア層2の端面2aの全周を覆っているため、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。
【0054】
第5の態様においては、第4の態様と同じく、包装体11の外面11aの全体が封止部材4で構成されているため、融着周縁部30の耐水性だけでなく、包装体11全体としての耐水性が特に優れている。
【0055】
包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する方法としては、第4の態様と同じく、積層シート13の外側を封止部材4で被覆する方法が挙げられる。後述のように、例えば、封止部材4として熱収縮フィルムを用いることにより、積層シート13の外側を当該熱収縮フィルムで覆い、加熱することによって、熱収縮フィルムが収縮して、積層シート13の外面の形状に沿った形状の封止部材4が形成され、包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成することができる。包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する方法の詳細については、後述の通りである。
【0056】
第6の態様及び第7の態様
図8(第6の態様)及び
図9(第7の態様)に示すように、第6の態様及び第7の態様の包装物10は、それぞれ、第1の態様の包装物10と比較すると、相違点は以下の通りである。第6の態様においては、樹脂層1のみが、バリア層2の端面2aを覆っており、第7の態様においては、熱可塑性樹脂層3のみが、バリア層2の端面2aを覆っている。また、第6の態様においては、バリア層2の端面2aは、熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達しており、樹脂層1によってバリア層2の端面2aが覆われている。一方、第7の態様においては、バリア層2の端面2aは、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面よりも内側(包装体11の中心側)に位置しており、熱可塑性樹脂層3によってバリア層2の端面2aが覆われている。これらの点で、第6の態様及び第7の態様の包装物10は、それぞれ、第1の態様の包装物10と相違しているが、その他の点は共通している。
図8及び
図9の模式図において、包装体11を構成する積層シート13としては、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3のみを図示しているが、後述の通り、本発明の包装物10において、包装体11を構成する積層シート13の樹脂層1とバリア層2との間には接着剤層が設けられていてもよいし、バリア層2と熱可塑性樹脂層3との間には、接着層が設けられていてもよい。さらに、樹脂層1のさらに外側には、表面被覆層が設けられていてもよい。第6の態様及び第7の態様においても、樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3などの各層や、封止部材4の組成等の詳細は、後述の通りである。
【0057】
第7の態様において、
図9に示されるように、包装体11のバリア層2の端面2aの少なくとも一部が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着している融着周縁部30内に位置しており、バリア層2の端面2aが熱可塑性樹脂層3で覆われている。これにより、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出しておらず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食が効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適した包装物10となる。第7の態様において、バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していることにより、バリア層2の端面2aが融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が効果的に向上する。
【0058】
第7の態様において、包装体11のバリア層2の端面2aの全周が、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が熱融着している融着周縁部30内に位置しており、バリア層2の端面2aの全周が熱可塑性樹脂層3で覆われていることが好ましい。これにより、積層シート13の周縁部13aの全周において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出せず、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、バリア層2の端面2aの腐食がより一層効果的に抑制され、長期間にわたって水性液体と接触する用途に特に適した包装物10となる。第7の態様において、バリア層2の端面2aが、積層シート13の周縁部13aの全周において、融着周縁部30内に位置していることにより、融着周縁部30内に位置していない場合に比して、融着周縁部30の耐水性が特に効果的に向上する。
【0059】
本発明の包装物10において、
図8に示されるように、樹脂層1のみでバリア層2の端面2aを覆うためには、例えば、樹脂層1とバリア層2と熱可塑性樹脂層3とが順に積層された積層シートであって、樹脂層1が外側に張り出したものを用意し、当該積層シートの熱可塑性樹脂層3同士を熱融着させる際に、周縁部13aにおいて樹脂層1がバリア層2と熱可塑性樹脂層3の端面を覆うようにして成形する。
【0060】
また、本発明の包装物10において、
図9に示されるように、熱可塑性樹脂層3のみでバリア層2の端面2aを覆うためには、例えば、積層シート13の熱可塑性樹脂層3として、溶融しやすい樹脂を用い、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を熱融着させる際に、周縁部13aにおいて熱可塑性樹脂層3がバリア層2の端面2aを覆うようにして成形する。
【0061】
本発明の包装物10において、
図10に示されるように、
図9の包装物10の周縁部13aを封止部材4でさらに覆ってもよい。
【0062】
2.包装体を形成する各層と封止部材
本発明の包装物10において、包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13から構成されている。また、必要に応じて、当該積層シート13には、接着剤層、接着層、表面被覆層が設けられている。さらに、包装体11は、必要に応じて、封止部材4を備えている。各々の組成、厚みなどの詳細について、以下に詳述する。
【0063】
[樹脂層1]
本発明の包装物10において、包装体11を形成する積層シート13の樹脂層1は、外面11a側に位置する層である。樹脂層1は、包装体11の最外面11aの少なくとも一部を構成していてもよい。具体的には、第4の態様(
図6)や第5の態様(
図7)のように、包装体11の外面11aの全体が封止部材4で構成されている場合や、樹脂層1の外側にさらに後述の表面被覆層を備えている場合を除き、樹脂層1は、包装体11の最外面11aの少なくとも一部を構成することができる。
【0064】
樹脂層1を形成する素材については、耐水性に優れたものであれば、特に制限されない。樹脂層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂が挙げられ、より好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0065】
前記の耐水性に優れている観点から、樹脂層1は、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリプロピレンのうち少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリプロピレンのうち少なくとも1種により構成されていることがより好ましい。
【0066】
樹脂層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、長期間にわたる耐水性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムを複数層積層させた多層構造、ポリエステルフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造などが挙げられる。多層構造の好ましい具体例としては、ポリブチレンテレフタレートフィルムを2層積層させた多層構造、ポリエチレンナフタレートフィルムを2層積層させた多層構造、ポリブチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンナフタレートフィルムを積層させた多層構造、ポリブチレンテレフタレートフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造、ポリエチレンナフタレートフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造などが挙げられる。樹脂層1を多層構造とする場合、各層の厚さとして、好ましくは2~25μm程度が挙げられる。
【0067】
樹脂層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量などについては、後述する接着剤層の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚さとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。
【0068】
樹脂層1の厚さとしては、好ましくは3~50μm程度、より好ましくは10~35μm程度が挙げられる。
【0069】
[接着剤層]
包装体11を形成する積層シート13において、接着剤層は、樹脂層1とバリア層2を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である(図示は省略する)。
【0070】
接着剤層は、樹脂層1とバリア層2とを接着可能である接着剤(樹脂)によって形成される。接着剤層の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
【0071】
接着剤層の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤またはエポキシ系接着剤が挙げられる。
【0072】
また、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層の形成に使用できる接着成分としては、耐水性に優れたものを使用することが好ましい。耐水性に優れた接着成分としては、ポリウレタン、ポリウレタン-ポリイソシアネート(ポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物の混合物)、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0073】
また、接着剤層の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も好適に使用できる。すなわち、接着剤層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着剤層を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0074】
積層シート13の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、変性されるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0075】
接着剤層において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0076】
さらに、積層シート13の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
【0077】
以下、接着剤層が、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である種々の態様について、詳述する。
【0078】
接着剤層は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。なお、接着剤層に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
【0079】
また、接着剤層は、ウレタン樹脂、アミドエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことも好ましく、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。接着剤層は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。
【0080】
また、接着剤層は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることも好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ウレタン樹脂などが挙げられる。接着剤層がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
【0081】
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
【0082】
接着剤層における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着剤層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0083】
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0084】
接着剤層における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着剤層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0085】
エポキシ基を有する化合物としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本発明において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
【0086】
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
接着剤層における、エポキシ樹脂の割合としては、接着剤層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0088】
ウレタン樹脂としては、特に制限されず、公知のウレタン樹脂を使用することができる。接着剤層は、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物であってもよい。
【0089】
接着剤層における、ウレタン樹脂の割合としては、接着剤層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0090】
なお、本発明において、接着剤層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂は、それぞれ、硬化剤として機能する。
【0091】
接着剤層の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば接着剤層の形成に使用できる接着成分として例示したものを用いる場合であれば、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂により構成する場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。また、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。なお、接着剤層が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着剤層を形成することができる。
【0092】
[バリア層2]
包装体11を形成する積層シート13において、バリア層2は、包装体11の強度向上の他、包装体11の内部に水蒸気、酸素、光などが浸入することを防止する機能を有する層である。バリア層2は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層2を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層2は、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム合金箔により形成することがさらに好ましい。包装体11の製造時に、バリア層2にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム合金箔により形成することがより好ましい。
【0093】
バリア層2の厚さとしては、長期間にわたる優れた耐水性を発揮できれば、特に制限されないが、好ましくは0.1~300μm程度、より好ましくは10~100μm程度、さらに好ましくは10~80μm程度が挙げられる。
【0094】
また、バリア層2は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒ
ドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。
【0100】
また、バリア層2に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、バリア層2の表面に耐酸性皮膜を形成する方法が挙げられる。また、耐酸性皮膜の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミン又はその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
また、耐酸性皮膜を具体的に設ける方法としては、たとえば、一つの例として、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面にリン酸クロム塩、リン酸チタン塩、リン酸ジルコニウム塩、リン酸亜鉛塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、これらとアクリル系樹脂ないしフェノール系樹脂ないしウレタン系樹脂などの水系合成樹脂との混合物からなる処理液(水溶液)をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法などの周知の塗工法で塗工することにより、耐酸性皮膜を形成することができる。たとえば、リン酸クロム塩系処理液で処理した場合は、リン酸クロム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となり、リン酸亜鉛塩系処理液で処理した場合は、リン酸亜鉛水和物、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となる。
【0102】
また、耐酸性皮膜を設ける具体的方法の他の例としては、たとえば、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面に周知の陽極酸化処理を施すことにより、耐酸性皮膜を形成することができる。
【0103】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸クロムなどが挙げられ、クロム酸系としては、クロム酸クロムなどが挙げられる。
【0104】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物などの耐酸性皮膜を形成することによって、エンボス成形時のアルミニウムと樹脂層との間のデラミネーション防止、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の樹脂層とアルミニウムとのデラミネーション防止、エンボスタイプにおいてはプレス成形時の樹脂層とアルミニウムとのデラミネーション防止の効果を示す。耐酸性皮膜を形成する物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成された水溶液をアルミニウム表面に塗布し、乾燥焼付けの処理が良好である。
【0105】
また、耐酸性皮膜は、酸化セリウムと、リン酸又はリン酸塩と、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤とを有する層を含み、前記リン酸又はリン酸塩が、前記酸化セリウム100質量部に対して、1~100質量部程度配合されていてもよい。耐酸性皮膜が、カチオン性ポリマー及び該カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を有する層をさらに含む多層構造であることが好ましい。
【0106】
さらに、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、あるいは(メタ)アクリル酸又はその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、前記架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0107】
また、前記リン酸又はリン酸塩が、縮合リン酸又は縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0108】
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロメート処理や、クロム化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせた化成処理などが好ましい。クロム化合物の中でも、クロム酸化合物が好ましい。
【0109】
耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオールのうち少なくとも1種を含むものが挙げられる。また、セリウム化合物を含む耐酸性皮膜も好ましい。セリウム化合物としては、酸化セリウムが好ましい。
【0110】
また、耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩系皮膜、クロム酸塩系皮膜、フッ化物系皮膜、トリアジンチオール化合物皮膜なども挙げられる。耐酸性皮膜としては、これらのうち1種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。さらに、耐酸性皮膜としては、アルミニウム合金箔の化成処理面を脱脂処理した後に、リン酸金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液、又はリン酸非金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液で形成されたものであってもよい。
【0111】
なお、耐酸性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐酸性皮膜の組成の分析により、例えば、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される。
【0112】
アルミニウム合金箔の表面に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む耐酸性皮膜を備えていることが好ましい。なお、包装体11のアルミニウム合金箔の表面の耐酸性皮膜中に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素が含まれることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、まず、包装体11において、アルミニウム合金箔に積層されている熱可塑性樹脂層、接着剤層などを物理的に剥離する。次に、アルミニウム合金箔を電気炉に入れ、約300℃、約30分間で、アルミニウム合金箔の表面に存在している有機成分を除去する。その後、アルミニウム合金箔の表面のX線光電子分光を用いて、これら元素が含まれることを確認する。
【0113】
化成処理においてバリア層2の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、バリア層2の表面1m2当たり、クロム化合物がクロム換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40
mg程度、リン化合物がリン換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0114】
耐酸性皮膜の厚さとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層2や熱可塑性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~10μm程度、より好ましくは1~100nm程度、さらに好ましくは1~50nm程度が挙げられる。なお、耐酸性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
【0115】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0116】
[熱可塑性樹脂層3]
包装体11を形成する積層シート13において、熱可塑性樹脂層3は、最内層に該当し、例えば、内容物12を収容する際に熱可塑性樹脂層同士を融着させて、包装体11によって内容物12を密封することができる。
【0117】
熱可塑性樹脂層3に使用される樹脂成分については、融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱可塑性樹脂層3を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱可塑性樹脂層3を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0118】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0119】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0120】
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
【0121】
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0122】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;さらに好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0123】
熱可塑性樹脂層3は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱可塑性樹脂層3は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0124】
本発明において、樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3は、同じ熱可塑性樹脂によって構成されていてもよい。
【0125】
また、熱可塑性樹脂層3の厚さとしては、熱可塑性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、長期間にわたって優れた耐水性を発揮する観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは15~60μm程度、さらに好ましくは15~40μm程度が挙げられる。
【0126】
[接着層]
包装体11を形成する積層シート13において、接着層は、バリア層2と熱可塑性樹脂層3を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。
【0127】
接着層は、バリア層2と熱可塑性樹脂層3とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層は、接着剤層で例示した接着成分、樹脂と同様のものが使用できる。
【0128】
前述の接着剤層と同様、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着層の形成に使用できる接着成分としては、耐水性に優れたものを使用することが好ましい。耐水性に優れた接着成分としては、ポリウレタン、ポリウレタン-ポリイソシアネート(ポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物の混合物)、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0129】
また、接着層の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。すなわち、接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0130】
積層シート13の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた包装体11とする観点からは、接着層は、接着剤層と同様、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、前述の接着剤層で説明したとおりである。
【0131】
接着層において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0132】
さらに、積層シート13の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた包装体11とする観点からは、接着層は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
【0133】
接着層が、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である種々の態様については、前述の接着剤層と同じである。
【0134】
接着層の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば接着層の形成に使用できる接着成分として例示したもの(すなわち、接着剤層の形成に使用できる接着成分)を用いる場合であれば、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂により構成する場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。また、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。なお、接着層が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着層を形成することができる。
【0135】
[表面被覆層]
包装体11を形成する積層シート13においては、意匠性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、樹脂層1の上(樹脂層1のバリア層2とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層を設けてもよい(図示を省略する)。表面被覆層は、包装体11が封止部材4を有していない場合に、本発明の包装体11の最外層に位置する。
【0136】
表面被覆層は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層には、微粒子等の添加剤を配合してもよい。また、耐水性の観点から、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0137】
表面被覆層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂を樹脂層1の一方の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0138】
表面被覆層の厚さとしては、表面被覆層としての付与すべき機能に応じて設定すれば、特に制限されないが、例えば、0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
【0139】
[封止部材4]
本発明の包装物10の包装体においては、包装体11の端部におけるバリア層の腐食をより一層効果的に抑制する観点から、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4が覆っていることが好ましく、積層シート13の周縁部13aの全周を封止部材4が覆っていることが特に好ましい(第2の態様及び第3の態様を参照)。さらに、包装体11の外面11aの全体は、封止部材4で構成されていることも好ましい(第4の態様及び第5の態様を参照)。
【0140】
封止部材4を構成する素材としては、耐水性を備えていれば、特に制限されない。例えば、第2の態様及び第3の態様のように、包装体11において、積層シート13の周縁部13aを覆うようにして封止部材4を設ける場合であれば、樹脂フィルム、接着剤、コーキング材などを用いることができる。また、第4の態様及び第5の態様のように、包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する場合であれば、樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0141】
また、封止部材4が樹脂フィルムにより構成されている場合、封止部材4と積層シート13との密着性を高める観点から、積層シート13と封止部材4との間に、易接着層を有していてもよい。
【0142】
封止部材4を構成し得る樹脂フィルムとしては、耐水性を備えていれば特に制限されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂が挙げられ、より好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリプロピレンなどにより構成された樹脂フィルムが挙げられる。
【0143】
第4の態様及び第5の態様のように、包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する場合、樹脂フィルムの中でも、特に、熱収縮フィルムにより封止部材4を形成することが好ましい。熱収縮フィルムは、熱によって収縮し、積層シート13の形状に沿って密着した状態で、包装体11の外面11aの全体を構成することができる。従って、包装体11の全体としての耐水性を効果的に高めることができる。熱収縮フィルムのシール部(とじ目の位置)は、包装体11の端部にかからないようにシールすることが望ましい。
【0144】
熱収縮フィルムとしては、熱収縮性を備えていればよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが使用でき、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンにより構成されている熱収縮フィルムが好ましい。
【0145】
また、封止部材4と積層シート13との間に、必要時応じて設けられる易接着層は、これらの層間の密着性を向上できればよく、例えば、前述の接着剤層で例示した接着剤により形成することができる。易接着層の厚みとしては、上限については、好ましくは、約20μm以下、約10μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1μm以上、約1μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、0.1~20μm程度、0.1~10μm程度、1~20μm程度、1~10μm程度が挙げられる。
【0146】
包装体の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点から、封止部材4が樹脂フィルムである場合、封止部材4の厚みとしては、上限については、好ましくは、約200m以下、約100μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約5μm以上、約10μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、5~200μm程度、5~100μm程度、10~200μm程度、10~100μm程度が挙げられる。なお、封止部材4の厚みは、積層シート13の周縁部13aにおける封止部材4の厚みを意味している。
【0147】
また、封止部材4を構成し得る接着剤としては、耐水性を備えていれば特に制限されず、例えば、前述の接着剤層で例示した接着剤により形成することができる。
【0148】
なお、コーキング材とは、対象物の隙間を埋める目的で使用される充填材料であり、封止部材4を構成し得るコーキング材としては、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン、変性シリコーン、ポリサルファイドなどを含むコーキング材が挙げられる。
【0149】
包装体の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点から、封止部材4が接着剤により形成されたもの(すなわち、接着剤の硬化物)である場合、封止部材4の厚みとしては、上限については、好ましくは、約2000μm以下、約1000μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約10μm以上、約50μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、10~2000μm程度、10~1000μm程度、50~2000μm程度、50~1000μm程度が挙げられる。また、封止部材4がコーキング材により形成されたものである場合、封止部材4の厚みとしては、上限については、好ましくは、約5mm以下、約2μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1mm以上、約0.5mm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、0.1~5mm程度、0.1~2mm程度、0.5~5mm程度、0.5~2mmが挙げられる。
【0150】
3.包装体
本発明の包装体は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装体である。
図1から
図9に示されるように、本発明の包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13から構成されている。本発明の包装体11は、積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士が融着されることによって、内容物12を収容する形状を備えている。さらに本発明の積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していない。
【0151】
本発明の包装体11の具体的な態様については、前述の「1.包装物及び包装体の用途、構造」及び「2.包装体を形成する各層と封止部材」の欄で説明したとおりである。
【0152】
また、本発明の包装体11を構成する積層シート13の製造方法については、後述の「6.積層シート」の欄で説明するとおりである。
【0153】
4.包装物の製造方法
本発明の包装物10の製造方法は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装物10の製造方法である。すなわち、本発明の包装物10の製造方法によって、前述の「1.包装物及び包装体の用途、構造」及び「2.包装体を形成する各層と封止部材」の欄で説明した本発明の包装物10を好適に製造することができる。
【0154】
本発明の包装物10の製造方法において、前述の第1の態様、第6の態様、及び第7の態様のように、包装物10が封止部材4を備えない場合、包装物10の内容物12を収容する包装体11として、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13からなり、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していないものを用いることができる。前述の第2の態様及び第4の態様のように、包装物10が封止部材4を備える場合にも、バリア層2の端面2aが外部に露出していない積層シート13を用いることができる。本発明の包装物10の製造方法においては、当該積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させることによって、少なくともバリア層2の端面2aの外部への露出を無くしつつ、内容物12を収容して包装物10を得る工程を備えている。
【0155】
包装体11の詳細については、前述の通りである。本発明の製造方法においては、該積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させることによって、内容物12を収容して包装物10を得る。融着の条件としては、熱可塑性樹脂層3同士が融着する条件であれば、特に制限されず、熱可塑性樹脂層3に用いる熱可塑性樹脂の種類や、熱可塑性樹脂層3の厚みなどに応じて適宜設定することができ、例えば、温度120~250℃程度、圧力0.05~3MPa程度の条件で、積層シート13の周縁部13aを加熱・加圧すればよい。
【0156】
また、本発明の製造方法においては、包装体11が封止部材4を備えており、積層シートの周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4が覆うように、封止部材4を設けることができる。より具体的には、包装体11が封止部材4を有する場合において、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4によって覆う場合(例えば、前述の第2の態様(
図4)や第3の態様(
図5))には、積層シート13の周縁部13aにおいて、熱可塑性樹脂層3同士を融着させた後、周縁部13aを封止部材4によって覆ってもよいし、積層シート13の周縁部13aを封止部材4によって覆った後、封止部材4を積層シート13に融着させると共に、熱可塑性樹脂層3同士を融着させて融着周縁部30を形成してもよい。
【0157】
また、包装体11が封止部材4を有する場合(例えば、前述の4の態様(
図6)や第5の態様(
図7))において、包装体11の外面11aの全体を封止部材4で構成する場合には、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させて内容物12を収容した後、積層シート13の外側から全体を封止部材4で覆うことによって、包装体11を完成させると同時に、本発明の包装物10を得てもよい。なお、封止部材4を用いる場合、前述の第3の態様及び第5の態様のように、積層シート13として、バリア層2の端面2aが樹脂層1及び熱可塑性樹脂層3の端面の位置にまで到達しているものを使用することができる。
【0158】
5.内容物の収容方法
本発明の内容物12の収容方法は、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる包装体を用いて、内容物12を収容する方法である。すなわち、本発明の内容物12の収容方法によって、内容物12を包装体11に収容することにより、前述の「1.包装物及び包装体の用途、構造」及び「2.包装体を形成する各層と封止部材」の欄で説明した本発明の包装物10が好適に得られる。
【0159】
本発明の内容物12の収容方法においては、内容物12を収容する包装体11として、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13からなり、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部において、積層シート13のバリア層2の端面2aが外部に露出していないものを用いる。そして、当該積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させることによって、内容物12を収容する工程を備えている。例えば、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させる際には、真空シール後、ヒートシールを行い、内容物を収容することが挙げられる。
【0160】
包装体11の詳細については、前述の通りである。本発明の内容物12の収容方法においては、該積層シート13の周縁部13aにおいて、積層シート13の熱可塑性樹脂層3同士を融着させることによって、内容物12を収容する。融着の条件としては、熱可塑性樹脂層3同士が融着する条件であれば、特に制限されず、熱可塑性樹脂層3に用いる熱可塑性樹脂の種類や、熱可塑性樹脂層3の厚みなどに応じて適宜設定することができ、前述の「4.包装物の製造方法」と同様とすることができる。
【0161】
また、包装体11が封止部材4を有する場合の内容物12の収容方法についても、前述の「4.包装物の製造方法」と同様とすることができる。
【0162】
6.積層シート
本発明の積層シートは、連続又は断続的に、外面に水性液体が接触する用途に用いられる積層シートであって、外面側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備えている。例えば
図11の模式図に示されるように、本発明の積層シート13は、その周縁部13aの少なくとも一部において、バリア層2の端面2aが、樹脂層1の端面1aよりも内側に位置していることを特徴としている。本発明の積層シートは、このような構成を備えているため、前述した本発明の包装物10の包装体11の形成に好適に用いることができる。
【0163】
具体的には、例えば、
図3に示されるような第1の態様の包装物10に用いられている包装体11は、少なくとも、外面11a側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備える積層シート13を成形して、熱可塑性樹脂層3側から樹脂層1側に向かうように凹形状を形成し、さらに積層シート13の周縁部13aの熱可塑性樹脂層3同士を融着させることによって得られている。この際、例えば
図11の模式図に示されるような本発明の積層シート13を用い、熱可塑性樹脂層3側から樹脂層1側に向かうように凹形状を形成し、さらに積層シート13の周縁部13aの熱可塑性樹脂層3同士を融着させて融着周縁部30を形成することにより、
図3に示されるような包装体11の形状を形作ることができる。
【0164】
図11の模式図において、本発明の積層シート13は、その周縁部13aの少なくとも一部において、バリア層2の端面2aが、樹脂層1の端面1a及び熱可塑性樹脂層3の端面3aの両方よりも、内側に位置している。なお、前述の第3の態様や第5の態様の包装物10のように、封止部材4を使用する場合は、バリア層2の端面2aが、樹脂層1の端面1a及び熱可塑性樹脂層3の端面3aの内側に位置していない積層シートを使用して包装物10を製造することができる。
【0165】
また、
図4に示されるような第2の態様の包装物10に用いられている包装体11についても、例えば
図11の模式図に示されるような本発明の積層シート13を用い、熱可塑性樹脂層3側から樹脂層1側に向かうように凹形状を形成し、さらに積層シート13の周縁部13aの熱可塑性樹脂層3同士を融着させると共に、積層シート13の周縁部13aの少なくとも一部を封止部材4で覆うことにより、
図4に示されるような包装体11の形状を形作ることができる。また、
図6に示されるような第4の態様の包装物10に用いられている包装体11についても、例えば
図11の模式図に示されるような本発明の積層シート13を用い、熱可塑性樹脂層3側から樹脂層1側に向かうように凹形状を形成し、さらに積層シート13の外側の全体を封止部材4で覆うことによって、
図6に示されるような包装体11の形状を形作ることができる。さらに、
図9に示されるような第7の態様の包装物10に用いられている包装体11についても、例えば
図11の模式図に示されるような本発明の積層シート13を用い、熱可塑性樹脂層3側から樹脂層1側に向かうように凹形状を形成し、さらに積層シート13の周縁部13aの熱可塑性樹脂層3同士を融着させると共に、積層シート13の周縁部13aにおいて、熱可塑性樹脂層3がバリア層2の端面2aを覆うように、熱可塑性樹脂層3同士を融着させることにより、
図9に示されるような包装体11の形状を形作ることができる。
【0166】
積層シート13の厚さは、前述の通りである。
【0167】
本発明の積層シート13において、樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3、さらに、必要に応じて設けられる接着剤層、接着層、及び表面被覆層の組成や厚みなどは、前述の包装体11について説明したとおりである。
【0168】
本発明の積層シートの製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、樹脂層1、必要に応じて接着剤層、バリア層2が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、樹脂層1又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層2に接着剤層の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層2又は樹脂層1を積層させて接着剤層を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0169】
次いで、積層体Aのバリア層2上に、接着層及び熱可塑性樹脂層3をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層2上に、接着層及び熱可塑性樹脂層3を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層と熱可塑性樹脂層3が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層2上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層2上に、接着層を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層上に予めシート状に製膜した熱可塑性樹脂層3をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層2と、予めシート状に製膜した熱可塑性樹脂層3との間に、溶融させた接着層を流し込みながら、接着層を介して積層体Aと熱可塑性樹脂層3を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
【0170】
バリア層2の端面2aが、樹脂層1の端面1a及び熱可塑性樹脂層3の端面3aの両方よりも内側に位置するように、本発明の積層シート13を製造する方法としては、例えば、上記の積層工程において、バリア層2が、樹脂層1の端面1a及び熱可塑性樹脂層3の端面3aの両方よりも内側に位置するように積層する方法が挙げられる。また、樹脂層1、バリア層2、熱可塑性樹脂層3を積層した積層体を得た後、バリア層2の端面2aをエッチングする方法も挙げられる。さらに、例えば
図12の模式図に示すように、バリア層2がパターン状に形成された、樹脂層1、バリア層2、及び熱可塑性樹脂層3の原反シート50を用意し、1点破線の位置で原反シート50を厚み方向に切断することで、積層シート13を製造することもできる。なお、
図12において、斜線が付された領域は、原反シート50にバリア層2が積層されていることを意味している。
【0171】
表面被覆層を設ける場合には、樹脂層1のバリア層2とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を樹脂層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、樹脂層1の表面にバリア層2を積層する工程と、樹脂層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、樹脂層1の表面に表面被覆層を形成した後、樹脂層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層2を形成してもよい。
【0172】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/樹脂層1/必要に応じて設けられる接着剤層/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層2/必要に応じて設けられる接着層/熱可塑性樹脂層3からなる積層体が形成されるが、接着剤層又は接着層の接着性を強固にするために、さらに、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃~250℃で1分間~5分間が挙げられる。
【0173】
本発明の積層シートにおいて、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
【0174】
7.原反シート
本発明の原反シート50は、本発明の積層シート13を得るためのシートであり、少なくとも、外面側に位置する樹脂層1と、バリア層2と、熱可塑性樹脂層3とをこの順に備えており、バリア層2は、部分的に設けられている。すなわち、本発明の原反シート50は、樹脂層1と熱可塑性樹脂層3がバリア層2を介在させていない部分を有する。本発明の原反シート50のバリア層2を備えない部分の少なくとも一部が厚み方向に切断されることで、本発明の積層シート13が得られる。
【0175】
本発明の原反シート50において、例えば
図12に示すようなパターン状にバリア層2が形成されている場合であれば、バリア層2を備えない1点破線の位置で原反シート50を厚み方向に切断することで、積層シート13の周縁部において、バリア層2の端面が外部に露出していない積層シート13を好適に製造することができる。
【0176】
本発明の積層シート13の形状を平面視矩形状とする場合には、本発明の原反シート50のバリア層2のパターンは平面視矩形状であることが好ましい。
図12の模式図は、1枚の原反シート50から、矩形状の6枚の積層シート13が得られる様子を示している。原反シート50から得られる積層シート13の数は、原反シート50のサイズと、バリア層2のパターンによって調整することができる。
【0177】
原反シート50は、ロール状に巻かれた巻取体の形態で製造、保管、流通されて、本発明の積層シート13の製造時に、巻取体から原反シート50を巻き出して、前記の切断を行ってもよい。また、
図12には、原反シート50の周縁部にもバリア層2が積層された図を示しているが、周縁部にはバリア層2が積層されていなくてもよい。また、
図12に示すように、原反シート50の全周に亘って周縁部にバリア層2が積層されていてもよいし、一部の周縁部にバリア層2が積層されていてもよい。
【実施例0178】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0179】
なお、以下の実施例で作製した包装物においては、積層シートの周縁部の全周において、バリア層の端面が外部に露出していない。
【0180】
[実施例1]
<積層シートの製造>
樹脂層としてポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、厚さ12μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム合金箔の一方面に、2液型のポリウレタン接着剤(水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム合金箔の積層体を作製した。アルミニウム合金箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム合金箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム合金箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
【0181】
次に、上記で得られた積層体のバリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層シートをエージングすることにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された実施例1の積層シートを得た。
【0182】
<包装物の製造>
図5に示されるような断面構造を備える実施例1の包装物を以下の手順により作製した。まず、上記で得られた積層シートを10cm×20cmのサイズで切り出した。次に、熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両側2辺(
図2ではx1側とx2側)に、
図5に示される封止部材4として、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(PPa、厚さ20μm)を設置した。次に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムとともに5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。折り曲げ辺に対向する位置にある開口部(
図2ではy1側)から内容物として温度センサ(株式会社アドバンテスト製のAirLogger(登録商標) WM2000シリーズ)を投入し、開口部を真空シール後、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムとともに5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで、
図5に示されるような断面構造を備える実施例1の包装物を得た。なお、真空シールには、ヒートシールテスター(テスター産業株式会社製のTP-701-B)とチャンバー式真空脱気シーラー(富士インパルス株式会社のFCB-200)を用いた。
【0183】
[実施例2]
<包装物の製造>
図5に示されるような断面構造を備える実施例1の積層シートを10cm×20cmのサイズで切り出した。次に、熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両側2辺(
図2ではx1側とx2側)を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。折り曲げ辺に対向する位置にある開口部(
図2ではy1側)から内容物として温度センサ(株式会社アドバンテスト製のAirLogger(登録商標) WM2000シリーズ)を投入し、真空シール後、開口部を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)した。次に、
図5に示されるようにして、封止部材4としてのコーキング材(セメダイン8000シリコーンシーラント)を、ヒートシールした3辺を覆うようにして塗布(厚さ(
図5の断面ではz方向)1mm、幅(
図5の断面ではy方向)3mm)して、
図5に示されるような断面構造を備える実施例2の包装物を得た。なお、真空シールは、実施例1と同様にして行った。
【0184】
[比較例1]
実施例1の積層シートを用い、封止部材を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、包装物を得た。
【0185】
[実施例3]
<積層シートの製造>
アルミニウム合金箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法
によりアルミニウム合金箔の両面に塗布し、焼付けすることにより化成処理を実施して、バリア層を得た。次に、バリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体のバリア層の表面に、接着剤層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された実施例3の積層シートを得た。
【0186】
<包装物の製造>
図3に示されるような断面構造を備える実施例3の包装物を以下の手順により作製した。実施例3の積層シートを10cm×20cmのサイズで切り出し、熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両サイド2辺(
図2ではx1側とx2側)を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。このとき、ヒートシールバーは6mm幅のものを用い、ヒートシール部の端部より1mmは熱により溶融した樹脂が押し出される空間をつくった。折り曲げ辺(
図2ではy2側)に対向する位置にある開口部(
図2ではy1側)から内容物として温度センサを投入し、開口部を真空シール後、上記と同様のヒートシールバーを用いて5mm幅で膜厚方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで、
図3に示されるような断面構造を備える実施例3の包装物を得た。
【0187】
[実施例4]
<積層シートの製造>
樹脂層としてポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、厚さ12μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム合金箔の一方面に、2液型のポリウレタン接着剤(水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム合金箔の積層体を作製した。アルミニウム合金箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム合金箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム合金箔の
両面に塗布し、焼付けすることにより行った。次に、アルミニウム合金箔が9cm×19cmの大きさとなる(縦方向と横方向の長さが1cmずつ短くなる)ようにして、アルミニウム合金箔の周縁部を、フッ酸を用いてエッチングした。フッ酸でアルミニウム合金箔がエッチングされた部分には、接着剤層の表面が露出している。次に、得られた積層体のバリア層の化成処理表面と、露出した接着剤層を覆うようにして、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、接着層/熱可塑性樹脂層を積層させることにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された実施例4の積層シートを得た。
【0188】
<包装物の製造>
図9に示されるような断面構造を備える実施例4の包装物を以下の手順により作製した。実施例4の積層シートを10cm×20cmのサイズで切り出した。このとき、包装体(10cm×20cm)の中心と、バリア層(9cm×19cm)の中心が一致するようにし、バリア層の周囲には、接着剤層と接着層とが接面している領域が幅1cmで形成されるようにした。次に、包装体の熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両サイド2辺(
図2ではx1側とx2側)を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。折り曲げ辺に対向する位置にある開口部(
図2ではy2側)から内容物として温度センサを投入し、開口部を真空シール後、開口部を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで、
図9に示されるような断面構造を備える実施例4の包装物を得た。
【0189】
[実施例5]
<積層シートの製造>
樹脂層として未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ30μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム合金箔の一方面に、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ系樹脂とを含む樹脂組成物を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム合金箔の積層体を作製した。アルミニウム合金箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム合金箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるよ
うに、ロールコート法によりアルミニウム合金箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。次に、アルミニウム合金箔が9cm×19cmの大きさとなる(縦方向と横方向の長さが1cmずつ短くなる)ようにして、アルミニウム合金箔の周縁部を、フッ酸を用いてエッチングした。フッ酸でアルミニウム合金箔がエッチングされた部分には、接着剤層の表面が露出している。次に、得られた積層体のバリア層の化成処理表面と、露出した接着剤層を覆うようにして、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ系樹脂とを含む樹脂組成物(エポキシ系接着剤)を塗布し、接着層(厚さ3μm)を形成した。次いで、接着層と未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ30μm)をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された実施例5の包装体を得た。
【0190】
<包装物の製造>
図6に示されるような断面構造を備える実施例5の包装物を以下の手順により作製した。実施例5の積層シートを10cm×20cmのサイズで切り出した。このとき、包装体(10cm×20cm)の中心と、バリア層(9cm×19cm)の中心が一致するようにし、バリア層の周囲には、接着剤層と接着層とが接面している領域が幅1cmで形成されるようにした。次に、包装体の熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両サイド2辺(
図2ではx1側とx2側)を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。折り曲げ辺に対向する位置にある開口部(
図2ではy2側)から内容物として温度センサを投入し、開口部を真空シール後、開口部を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)して袋を得た。次に、袋の外面全体を、封止部材4としての熱収縮フィルム(ポリエチレンフィルム)で覆い、袋の端部にかからない位置で封止部材4同士が熱融着させた。その後、全面に熱風を当てて、
図6に示されるような断面構造を備える実施例5の包装物を得た。
【0191】
[実施例6]
<積層シートの製造>
アルミニウム合金箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法
によりアルミニウム合金箔の両面に塗布し、焼付けすることにより化成処理を実施して、バリア層を得た。次に、バリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体が9cm×19cmの大きさとなるようにカットしてから、本積層体のバリア層の表面に、接着剤層として酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ系樹脂とを含む樹脂組成物を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、樹脂層として10cm×20cmの大きさとなる(縦方向と横方向の長さが1cmずつ長くなる)未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ30μm)を用意し、樹脂層(10cm×20cm)の中心と、バリア層(9cm×19cm)の中心が一致するようにアルミニウム合金箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された実施例6の積層シートを得た。
【0192】
<包装物の製造>
図8に示されるような断面構造を備える実施例6の包装物を以下の手順により作製した。実施例6の積層シートを包装体の熱可塑性樹脂層が内側となるように半分に折り曲げ、折り曲げ辺(
図2ではy2側)の両サイド2辺(
図2ではx1側とx2側)を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)することで10cm×10cmの袋を作製した。折り曲げ辺に対向する位置にある開口部(
図2ではy2側)から内容物として温度センサを投入し、開口部を真空シール後、開口部を5mm幅で厚み方向にヒートシール(温度190℃、圧力1.0MPa、3秒間)して実施例6の包装物を得た。
【0193】
[実施例7]
<包装物の製造>
比較例1の包装物に、袋の外面全体を、封止部材4としての熱収縮フィルム(ポリエチレンフィルム)で覆い、袋の端部にかからない位置で封止部材4同士を熱融着させた。その後、全面に熱風を当てて、
図7に示されるような断面構造を備える実施例7の包装物を得た。
【0194】
[実施例8]
<包装物の製造>
実施例4の包装物に、
図10に示されるようにして、封止部材4としてのコーキング材(セメダイン8000シリコーンシーラント)を、ヒートシールした3辺を覆うようにして塗布(厚さ(
図10の断面ではz方向)1mm、幅(
図10の断面ではy方向)3mm)して、
図10に示されるような断面構造を備える実施例8の包装物を得た。
【0195】
<高温環境での耐水性の評価>
実施例1~8及び比較例1で得られた各包装物を、80℃の水中に3週間静置した。その結果、実施例1~8の包装物は、何れもバリア層の端面の腐食が発生していなかった。一方、比較例1の包装物は、露出したバリア層の端面が腐食していた。
【0196】
<高温環境かつ塩水中での耐水性の評価>
実施例1~8及び比較例1で得られた各包装物を、80℃、5質量%の塩水中に3週間静置した。その結果、実施例1~8の包装物は、何れもバリア層の端面の腐食が発生していなかった。一方、比較例1の包装物は、露出したバリア層の端面が腐食していた。
【0197】
これらの耐水性の評価から、実施例1~8の包装物は、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適していることが分かる。