(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091691
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】圃場作業車
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240628BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062223
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2020205186の分割
【原出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(57)【要約】
【課題】圃場作業車で作業走行しながら作物高さを取得可能な圃場作業車の提供。
【解決手段】本発明の圃場作業車に、作業走行を行いつつ、進行方向前方の前方領域に存在する物体の位置及び高さを検出する第1検出装置と、作業走行を行いつつ圃場を撮像する第2検出装置と、第1検出装置及び前記第2検出装置の検出結果に基づいて検出される作物高さの分布、及び、作物が倒伏する領域における倒伏状態の倒伏度合いに基づいて圃場における作業状態の条件を変更する制御ユニットと、が備えられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業走行を行いつつ、進行方向前方の前方領域に存在する物体の位置及び高さを検出する第1検出装置と、
前記作業走行を行いつつ圃場を撮像する第2検出装置と、
前記第1検出装置及び前記第2検出装置の検出結果に基づいて検出される作物高さの分布、及び、前記作物が倒伏する領域における倒伏状態の倒伏度合いに基づいて前記圃場における作業状態の条件を変更する制御ユニットと、が備えられている圃場作業車。
【請求項2】
前記作業状態の条件の変更に、前記作物を収穫する際の収穫部の収穫高さの変更が含まれる請求項1に記載の圃場作業車。
【請求項3】
前記作業状態の条件の変更に、前記作業走行を行う際の車速の変更が含まれる請求項1に記載の圃場作業車。
【請求項4】
前記作業状態の条件の変更に、自動操舵用に設定された目標走行経路の変更が含まれる請求項1に記載の圃場作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物高さを示す高さマップを生成する圃場マップ生成システム、及び、圃場者業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、圃場作業車(文献では「コンバイン」)に設けられた検出装置(文献では「撮像部」)と、検出装置の検出結果に基づいて圃場の作物の状態を示すマップ(文献では「収量マップ」、「食味マップ」)を生成するマップ生成部(文献では「収穫情報生成部」)と、が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1の検出装置は、例えば作物の倒伏状態を検出可能に構成されているが、検出装置の検出結果から圃場における作物高さを算出する構成は開示されていない。近年の精密農業において、作物の生育状況を把握するために、作物高さをデータとして管理する構成が望ましいが、従来技術では、圃場作業車による作業走行中に作物高さを取得する技術が存在しなかった。
【0005】
本発明は、圃場作業車で作業走行しながら作物高さを取得可能な圃場マップ生成システム、及び、圃場者業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圃場マップ生成システムでは、圃場作業車に設けられ、前記圃場作業車による作業走行を行いつつ、前記圃場作業車の進行方向前方の前方領域に存在する物体の位置及び高さを検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、圃場における作物高さの分布を示す高さマップを生成するマップ生成部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、圃場作業車に設けられた検出装置は、圃場作業車による作業走行が行われる間、作物の位置及び高さを検出可能なように構成されている。このことから、圃場作業車が圃場を網羅する状態で作業走行を行うことによって、検出装置は圃場全体の作物の位置及び高さを検出できる。そして、圃場における作物高さが取得され、例えば圃場の作業者や管理者は作物高さを次期の農業計画に活用できる。これにより、圃場作業車で作業走行しながら作物高さを取得可能な圃場マップ生成システムが実現される。
【0008】
本発明において、前記マップ生成部は、圃場を複数の微小区画に区分けして、前記微小区画単位で前記作物高さを示すように、前記高さマップを生成すると好適である。
【0009】
本構成によって、圃場における作物高さの分布図が微小区画単位で取得可能となり、例えば圃場の作業者や管理者は当該分布図を次期の農業計画に活用できる。
【0010】
本発明において、前記マップ生成部は、前記微小区画の範囲内に存在する作物の前記作物高さの平均値を算出し、前記平均値を前記微小区画における前記作物高さとすると好適である。
【0011】
微小区画の範囲内に存在する作物の一つ一つの作物高さが高さマップに示されると、例えば圃場の作業者や管理者は、圃場における作物高さのバラツキを直感的に把握し難くなる。本構成であれば、例えば圃場の作業者や管理者は、微小区画単位における作物高さを平均値で管理可能となり、作物の状態や傾向を容易に分析できる。
【0012】
本発明において、前記マップ生成部は、前記微小区画の大きさを任意に変更可能に構成されていると好適である。
【0013】
本構成によって、高さマップにおける微小区画の大きさが、例えば圃場の作業者や管理者の要望に合わせて臨機応変に変更される。これにより、高さマップが、例えば圃場の作業者や管理者にとって使い易いものとなる。
【0014】
本発明において、前記マップ生成部は、前記作物高さを複数の段階にレベル分けして前記高さマップを生成すると好適である。
【0015】
本構成であれば、高さマップに含まれる作物高さが複数の段階でレベル分けされるため、例えば圃場の作業者や管理者は、圃場における作物高さのバラツキを一目で把握できる。
【0016】
本発明において、前記検出装置は、圃場を撮像する撮像装置を有し、前記マップ生成部は、前記撮像装置で撮像した撮像情報に基づいて作物の倒伏状態を検出し、前記倒伏状態を前記高さマップに反映させると好適である。
【0017】
本構成であれば、圃場を撮像する撮像装置によって、色情報を含む撮像情報の取得が可能となって、高さマップに作物の倒伏状態を付加することが可能となる。これにより、例えば圃場の作業者や管理者は、倒伏作物の位置及び高さを、倒伏度合いとして把握でき、倒伏作物の倒伏度合いを次期の農業計画に活用できる。
【0018】
本発明において、前記マップ生成部は、圃場における作物の前記作物高さの平均値を算出し、前記作物高さと前記平均値との比率に基づいて作物の倒伏状態を検出し、前記倒伏状態を前記高さマップに反映させると好適である。
【0019】
本構成であれば、例えば上述の撮像装置で倒伏作物を検出できなかった場合であっても、圃場のうち当該平均値よりも低い領域において、当該平均値に対する作物高さの乖離度合いに基づいて作物の倒伏状態の検出が可能となる。
【0020】
本発明において、前記検出装置は、圃場を撮像する撮像装置を有し、前記マップ生成部は、前記撮像装置で撮像した撮像情報に基づいて圃場における雑草を検出し、前記平均値の算出において前記雑草に関するデータを除外してから前記平均値を算出すると好適である。
【0021】
本構成によって、作物高さの平均値の算出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】圃場マップ生成システムの制御ブロック図である。
【
図4】第1検出装置及び第2検出装置の検出結果に関するデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本実施形態に係るコンバイン1の全体左側面図である。
図2は本実施形態に係るコンバイン1の全体平面図である。
図3はコンバイン1に設けられる制御系の構成を示すブロック図である。なお、以下では、圃場作業車の一例として、収穫された作物の全稈を脱穀装置に投入するコンバイン、いわゆる普通型コンバインを例に挙げて説明する。もちろん、コンバイン1は自脱型コンバインであっても良い。また、本実施形態では、クローラ式のコンバインを例に挙げて説明するが、ホイール式のコンバインであっても良い。コンバイン1に、機体2と、左右一対のクローラ式の走行装置11と、が備えられている。機体2に、搭乗部12と、脱穀装置13と、穀粒タンク14と、収穫部15と、搬送装置16と、穀粒排出装置18と、が備えられている。
【0024】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、『前』(
図1及び
図2に示す矢印『F』の方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、『後』(
図1及び
図2に示す矢印『B』の方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味する。更に、『上』(
図1に示す矢印『U』の方向)及び『下』(
図1に示す矢印『D』の方向)は、機体2の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。また、『左』(
図2における矢印『L』の方向)は機体左側、『右』(
図2における矢印『R』の方向)は機体右側である。機体左右方向と機体横方向との夫々は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。機体2の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。
【0025】
走行装置11は、コンバイン1の下部に備えられている。走行装置11は左右一対のクローラ走行機構を有し、コンバイン1は、走行装置11によって圃場を走行可能である。圃場とは、コンバイン1が作業走行を行う作業地である。本実施形態では、作業走行はコンバイン1の収穫作業を意味する。搭乗部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11よりも上側に備えられ、これらは機体2の上部として構成されている。コンバイン1の搭乗者やコンバイン1の作業を監視する監視者が、搭乗部12に搭乗可能である。搭乗部12の下方に駆動用のエンジン(不図示)が備えられている。穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の後下部に連結されている。
【0026】
収穫部15は圃場の植立作物を収穫する。植立作物は、例えば稲や麦等の植立穀稈である。そして、コンバイン1は、収穫部15によって圃場の植立作物を収穫しながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。搬送装置16は収穫部15よりも後側に隣接して設けられている。収穫部15及び搬送装置16は、シリンダ15Hの伸縮動作によって上下昇降可能なように、機体2の前部に支持されている。
【0027】
収穫部15に、収穫フレーム15Aと、掻込リール15Bと、横送りオーガ15Cと、バリカン状の切断刃15Dと、が備えられている。掻込リール15Bは、機体横向き軸芯まわりに回転可能に構成されている。掻込リール15Bは、圃場から植立作物を収穫する際に、植立作物のうちの先端寄りの箇所を後方に向けて掻込む。切断刃15Dは、掻込リール15Bによって後方に掻き込まれた植立作物の株元側部分を切断する。横送りオーガ15Cは、機体横向き軸芯に回転駆動し、切断刃15Dによる切断後の収穫作物を左右方向の中間側に横送りして寄せ集めて後方の搬送装置16に向けて送り出す。
【0028】
収穫部15によって収穫された作物(例えば刈取穀稈)の全稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。収穫された作物の全稈は脱穀装置13に投入されて脱穀処理される。脱穀処理によって得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0029】
搭乗部12の前上部に第1検出装置21と第2検出装置22とが備えられている。第1検出装置21及び第2検出装置22は、本発明の『検出装置』である。第1検出装置21は物体の空間位置を測定する物体位置計測器である。第1検出装置21の測定方式には、超音波測定方式、ステレオマッチング測定方式、ToF(Time of Flight)測定方式などが用いられる。本実施形態では、第1検出装置21は、進行方向前方に向かって、少なくとも電波よりも波長が短い電磁波を送出し、当該電磁波が物体で反射した反射波に基づいて物体の位置及び高さを検出する。少なくとも電波よりも波長が短い電磁波は、例えば300万メガHz以下の周波数の電磁波である。第1検出装置21は、このような電磁波を送出した方向と、当該電磁波を送出してから物体で反射した電磁波の反射波を受信するまでの時間と、に基づいて、物体の位置及び高さを検出する。このような第1検出装置21は、ToF測定方式である二次元スキャンLiDARが用いられる。もちろん、二次元スキャンLiDARに代えて三次元スキャンLiDARが用いられてもよい。第1検出装置21の検出結果に応じた点群データを演算することで機体前方の植立作物の作物高さ(空間位置)が得られる。
【0030】
第2検出装置22は、いわゆるカメラであって、本発明の『撮像装置』である。第2検出装置22は、圃場のうち、少なくとも第1検出装置21の検出対象範囲を含む機体2の進行方向前方の領域を撮影してRGBの色情報を含む撮像画像を取得する。
【0031】
図1及び
図2に示される前方領域FRは、圃場における機体2の進行方向前方の未作業領域(未収穫植立作物の領域)である。前方領域FRは、第1検出装置21の検出対象であって、第2検出装置22の撮像対象である。第1検出装置21は前方領域FRに存在する物体の位置及び高さを検出する。第2検出装置22は前方領域FRを撮像する。機体2の進行方向前方の前方領域FRとは、本実施形態では収穫部15の進行方向前方の領域が相当し、
図1及び
図2において、一点鎖線で示される領域が相当する。
【0032】
図1及び
図2には、第1検出装置21によって検出される植立作物の例が示されている。
図1及び
図2の例では、その圃場において基準となる高さを有する標準植立作物群Z0と、標準植立作物群Z0よりも高さが低い短尺作物群Z1と、倒伏植立作物群Z2と、が示されている。
【0033】
搭乗部12の天井部には、衛星測位モジュール80が設けられる。衛星測位モジュール80は、人工衛星GSからのGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)の信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を取得する。なお、衛星測位モジュール80による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール80に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは、コンバイン1において衛星測位モジュール80と別の箇所に配置されても良い。
【0034】
〔圃場マップ生成システムの構成〕
図3に、本発明の圃場マップ生成システムのブロック系統図が示される。本発明の圃場マップ生成システムに、上述の第1検出装置21と、上述の第2検出装置22と、特徴データ生成部30と、マップデータ生成部31と、マップ管理部32と、自車位置算出部33と、表示装置34と、上述の衛星測位モジュール80と、が備えられている。マップデータ生成部31及びマップ管理部32は、本発明の『マップ生成部』である。
【0035】
コンバイン1に、不図示の制御ユニットが備えられ、当該制御ユニットは、例えば複数のECUの集合体によって構成されている。本発明の圃場マップ生成システムに、コンバイン1の制御ユニットが含まれる。
【0036】
本発明の圃場マップ生成システムの一部として、例えば、管理コンピュータが備えられている。管理コンピュータは、例えばデータベースを管理するサーバ(クラウドサーバ等)であっても良いし、作業者や圃場監理者が携帯する携帯型コンピュータや多機能携帯電話であっても良い。そして、コンバイン1の制御ユニットと、管理コンピュータと、の夫々がインターネット通信ネットワークを介して接続され、互いにデータの通信が行われている。
【0037】
本発明の圃場マップ生成システムに、コンバイン1の制御ユニットと、管理コンピュータと、が含まれる。なお、圃場マップ生成システムに、コンバイン1の制御ユニットと、管理コンピュータと、に加えて、管理コンピュータに接続するクライアント端末が含まれても良い。本実施形態では、特徴データ生成部30と、マップデータ生成部31と、自車位置算出部33と、はコンバイン1の制御ユニットの一部として組み込まれる。また、本実施形態では、マップ管理部32が管理コンピュータ一部として組み込まれる。なお、特徴データ生成部30とマップデータ生成部31と自車位置算出部33とが管理コンピュータ一部として組み込まれても良いし、マップ管理部32がコンバイン1の制御ユニットの一部として組み込まれても良い。
【0038】
衛星測位モジュール80から出力された測位データは、自車位置算出部33に入力される。自車位置算出部33は、衛星測位モジュール80からの測位データに基づいて自車位置を算出する。なお、コンバイン1は自動操舵も可能である。自動操舵の場合、例えばコンバイン1の制御ユニットによって設定された目標走行経路と、自車位置算出部33によって算出された自車位置とに基づいて、コンバイン1の制御ユニットは、操舵や車速に関する制御を走行装置11に対して行う。
【0039】
第2検出装置22から出力された画像データは、特徴データ生成部30へ送られる。撮像画像には色情報が含まれているため、特徴データ生成部30は、ニューラルネットワークを含む画像認識等の技術を用いて植立作物を認識し、植立作物の色情報や姿勢を含む特徴データを生成可能である。第2検出装置22から送られる画像データに色情報が含まれる。特徴データ生成部30は、この画像データから、圃場における未収穫植立作物の領域、倒伏作物領域、倒伏作物の倒伏方向(倒伏の向き)、収穫済領域、畦領域、雑草領域(作物領域に雑草が混在する場合も含まれる)等を区分けする。そして特徴データ生成部30は、上述の区分けした領域や倒伏方向等が含まれる特徴データを生成する。特徴データ生成部30によって生成された特徴データは、マップデータ生成部31へ送られる。
【0040】
第1検出装置21から出力された点群データは、マップデータ生成部31へ送られる。マップデータ生成部31は、第1検出装置21の検出結果と第2検出装置22の検出結果とに基づいて、
図1及び
図2に示される前方領域FRの作物の状態を検出し、高さマップを生成する。本実施形態では、第1検出装置21の検出結果は点群データであって、第2検出装置22の検出結果は、特徴データ生成部30によって作成された特徴データである。
【0041】
マップデータ生成部31は、第1検出装置21からの点群データを用いて機体2の進行方向前方に植立する収穫前の植立作物の実高さを求める。また、詳細に関しては
図4に基づいて後述するが、マップデータ生成部31は、特徴データ生成部30によって生成された特徴データを点群データに付与する。特徴データに色情報が含まれる。マップデータ生成部31は、色情報を付与された点群データを分析して植立作物の先端部(穂先など)の高さをより正確に求める。そしてマップデータ生成部31は、作物高さ、倒伏情報、雑草等に関する検出情報を含む高さマップを生成する。生成された高さマップは、マップデータ生成部31からマップ管理部32へ送られる。
【0042】
マップ管理部32は、圃場を複数の微小区画に区分けして、微小区画単位で作物高さを示すように、高さマップを生成する。微小区画は、コンバイン1の作業幅に応じた単位走行量当たりの区画である。微小区画単位の作物高さ、倒伏情報、雑草等に関する検出情報が、マップ管理部32によって算出される。そして、そして、微小区画単位の作物高さ、倒伏情報、雑草等に関する検出情報が表示装置34に表示される。表示装置34は、上述の管理コンピュータのディスプレイであっても良いし、作業者や圃場監理者が携帯する携帯型コンピュータや多機能携帯電話であっても良い。表示装置34が携帯型コンピュータや多機能携帯電話である場合、マップ管理部32と、表示装置34と、の夫々が無線インターネット通信ネットワークを介して接続され、互いにデータの通信が行われる。
【0043】
〔高さマップの詳細について〕
本実施形態では、マップデータ生成部31は、第1検出装置21の検出結果と第2検出装置22の検出結果とに基づいて、作物高さ及び倒伏状態を検出し、高さマップを生成する。
【0044】
図4の(A)には第2検出装置22の検出結果、すなわち撮像画像の一例が示される。
図4の(A)における撮像画像の右側部分には植立作物(直立した穀稈)が生えている植立作物領域61が含まれ、撮像画像におけるそれ以外の部分には倒伏作物が生えている倒伏作物領域62が含まれる。
図4の(A)に示される植立作物領域61は、
図1及び
図2に示される標準植立作物群Z0または短尺作物群Z1に相当する。また、
図4の(A)に示される倒伏作物領域62は、
図1及び
図2に示される倒伏植立作物群Z2に相当する。また、植立作物領域61と倒伏作物領域62との境界部分(境界領域63)には、倒伏作物領域62において作物が倒伏することにより現れた植立作物領域61の植立作物の側部や、植立作物と倒伏作物との間の高さを有する作物が写っている。
【0045】
上述したように、特徴データ生成部30は、ニューラルネットワークを含む画像認識等の技術を用いて、画像データから圃場における未収穫植立作物の領域、倒伏作物領域、収穫済領域、畦領域、雑草領域等を識別可能に構成されている。
図4の(A)に示される例では、特徴データ生成部30は、植立作物領域61と、倒伏作物領域62と、境界領域63と、に区分け処理して特徴データを生成する。換言すると、
図4の(A)に示される撮像画像に基づいて生成された特徴データに、植立作物領域61と、倒伏作物領域62と、境界領域63と、が含まれる。また、この生成された特徴データに、倒伏作物領域62における倒伏作物の倒伏方向も含まれる。
【0046】
図4の(B)には、
図4の(A)の撮像画像の撮像範囲を検出対象とした第1検出装置21の検出結果が示される。
図4の(B)は、二次元スキャンLiDARにより検出された物体(作物の頭頂部や側部)を示す点群データである。二次元スキャンLiDARによる点群データは、検出対象において露出している部分が検出されたものである。このため、圃場における植立作物領域61に相当する圃場面から得られた点群データ71と、圃場における倒伏作物領域62に相当する圃場面から得られた点群データ72とで夫々の点群データに基づく物体の高さを示す高さ情報が互いに異なる。同様に、圃場における境界領域63に相当する圃場面から得られた点群データ73に基づく物体の高さを示す高さ情報も、点群データ71及び点群データ72に基づく物体の高さを示す高さ情報と互いに異なる。
【0047】
マップデータ生成部31は、
図4の(B)に示される点群データ71,72,73に、
図4の(A)に示される撮像画像に基づいて生成された特徴データを付与する。そしてマップデータ生成部31は、
図4の(C)に示されるように、特徴データ(色情報)が付与された点群データ81,82,83を生成する。つまり、
図4の(A)に示される撮像画像と、
図4の(B)に示される点群データ71,72,73とに基づいて、色情報が付与された点群データ81,82,83が
図4の(C)に示される。
【0048】
図4の(C)の点群データ81は、点群データ71と同じ高さ情報を有し、かつ、植立作物領域61と同じ色情報を有する。また、
図4の(C)の点群データ82は、点群データ72と同じ高さ情報を有し、かつ、倒伏作物領域62と同じ色情報を有する。更に、
図4の(C)の点群データ83は、点群データ73と同じ高さ情報を有し、かつ、境界領域63と同じ色情報を有する。点群データ81,82,83の夫々が有する高さ情報は、絶対値であっても良いし、相対値であっても良い。
【0049】
図4の(C)の例では、植立作物が生えている領域(高さが高い領域)が、点群データ81に基づいて黄色基調(黄基調)の色で着色される。また、
図4の(C)の例では、倒伏作物が生えている領域(高さが低い領域)が、点群データ82に基づいて青色基調(青基調)の色で着色される。加えて、
図4の(C)の例では、植立作物の高さと倒伏作物の高さとの間の高さを有する作物が生えている領域や、植立作物の側部が見えている領域(中間帯の領域)は、点群データ83に基づいて緑色基調(緑基調)の色で着色される。このような着色は、検出結果に畦が含まれている場合や、作物を刈り取った後の領域が含まれている場合においても、夫々に対応した色で行うと良い。更には、倒伏作物が生えている領域(高さが低い領域)が、「直立状態」及び「倒伏状態」に加え、後述する「やや倒伏」や「べたごけ(穂先が圃場面に接する程度に倒伏した状態)」を示す状態毎に着色されても良い。マップデータ生成部31は、このような色情報が付与された点群データ81,82,83に基づいて、圃場において作物の生えている状態を適切に判定できる。
【0050】
第1検出装置21の検出結果は経時的にマップデータ生成部31へ送られ、第2検出装置22の検出結果は経時的に特徴データ生成部30へ送られる。同時に、コンバイン1の自車位置が自車位置算出部33によって経時的に取得される。マップデータ生成部31は、特徴データ(色情報)が付与された点群データ81,82,83を生成し、これら点群データ81,82,83にコンバイン1の自車位置を紐付ける。そして、点群データ81,82,83の集合体に基づいて高さマップが生成される。コンバイン1の自車位置ごとの点群データ81,82,83の集合体が、上述した管理コンピュータの記憶装置(不図示)に記憶される。点群データ81,82,83に、作物高さ、倒伏情報、雑草に関する検出情報、等の圃場の作物状態が含まれる。
【0051】
点群データ81,82,83の集合体を記憶する管理コンピュータに、マップ管理部32が備えられている。上述したように、マップ管理部32は、圃場を複数の微小区画に区分けして、微小区画単位で作物高さを示すように、高さマップを生成する。
図5に、微小区画に区分けされた高さマップが示される。微小区画は、コンバイン1の作業幅に応じた単位走行量当たりの区画である。
【0052】
図5に示される高さマップとして、作物高さマップと、倒伏マップと、が示される。作物高さマップは、微小区画単位で作物高さを5段階のレベルで示すものである。倒伏マップは、微小区画単位の倒伏度合いを3段階(「直立」を含めると4段階)のレベルで示すものである。
【0053】
マップ管理部32は、微小区画の範囲内に存在する作物の作物高さの平均値を算出し、当該平均値を微小区画における前記作物高さとする。一つの微小区画に、例えば
図4の(C)に示されるような点群データ81,82,83が複数存在する。マップ管理部32は、各微小区画における複数の点群データ81,82,83の高さ情報の平均値を算出することによって、微小区画単位で作物高さの平均値を算出する。
【0054】
なお、複数の点群データ81,82,83のうち、雑草の検出情報が含まれる点群データ81,82,83が存在すると、その点群データ81,82,83の高さ情報は雑草の高さである。この場合、各微小区画における複数の点群データ81,82,83の高さ情報の平均値の算出から、雑草の検出情報が含まれる点群データ81,82,83が除外される。つまり、マップデータ生成部31は、第2検出装置22で撮像した撮像情報に基づいて圃場の雑草を検出する。また、マップ管理部32は、各微小区画における複数の点群データ81,82,83の高さ情報の平均値の算出において、雑草に関するデータを除外してから当該平均値を算出する。
【0055】
図5の作物高さマップでは、微小区画単位における作物高さの平均値の分布が5段階のレベルで示されている。この5段階のレベルは、作物の品種の一般的な作物高さと、微小区画単位における作物高さの平均値と、の比率に応じて設定されても良いし、圃場全体の作物高さの平均値と、微小区画単位における作物高さの平均値と、の比率に応じて設定されても良い。
【0056】
また、
図4の(C)に示される点群データ82に、作物の倒伏情報が含まれる。微小区画の範囲内における複数の点群データ81,82,83のうち、倒伏情報を有する点群データ82の割合が予め設定された割合以上であると、マップ管理部32は、その微小区画を倒伏作物の存在する微小区画と判定する。倒伏作物の存在する微小区画を、以下「倒伏微小区画」と称する。
【0057】
マップ管理部32は、点群データ82の倒伏情報に基づいて、倒伏微小区画における倒伏作物の倒伏度合いを、「やや倒伏」、「倒伏」、「べたごけ」の何れかに振り分ける。微小区画単位における作物高さの平均値は、上述の作物高さマップで算出済みである。マップ管理部32は、高さマップにおいて倒伏微小区画を除いた全ての微小区画から作物高さの平均値(植立作物の作物高さの全体平均値)を算出する。次にマップ管理部32は、倒伏微小区画における作物高さの平均値と、植立作物の作物高さの全体平均値と、の乖離度合いを算出する。そしてマップ管理部32は、当該乖離度合いに基づいて、倒伏微小区画単位での倒伏度合いを高さマップに反映させる。これにより、倒伏微小区画単位での倒伏度合いの分布が、「直立」、「やや倒伏」、「倒伏」、「べたごけ」の4段階のレベルで示される。
【0058】
このように、コンバイン1による収穫走行が行われる際に、『マップ生成部』としてのマップデータ生成部31及びマップ管理部32は、第1検出装置21及び第2検出装置22の夫々の検出結果に基づいて高さマップを生成する。また、マップデータ生成部31は、第2検出装置22で撮像した撮像映像(撮像情報)に基づいて作物の倒伏状態を検出し、マップ管理部32は、当該倒伏状態を高さマップに反映する。加えてマップデータ生成部31及びマップ管理部32は、点群データ81,82,83の高さ情報及び色情報に基づいて、作物高さの平均値、倒伏度合い等を複数の段階にレベル分けして高さマップを生成する。これにより、作業者や圃場監理者等は、圃場における作物高さ及び倒伏状態に関する詳細な情報を直感的に把握できる。
【0059】
本実施形態では、マップ管理部32は、前記微小区画の大きさを任意に変更可能に構成されている。例えば、作業者や圃場監理者等が、管理コンピュータ、管理コンピュータと接続するクライアント端末(例えばパーソナルコンピュータや多機能携帯電話等)を操作して、微小区画の一辺の大きさを変更可能である。微小区画の大きさが変更されると、マップ管理部32は、
図5に示されるような作物高さの平均値、倒伏度合い等を更新後の微小区画単位で算出する。これにより、作業者や圃場監理者等は、例えば田植機や施肥機、耕耘装置等の作業幅に応じた微小区画で高さマップを分析できる。
【0060】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0061】
(1)上述の実施形態では、特徴データ生成部30によって圃場における倒伏作物領域が検出され、マップ管理部32は倒伏状態を高さマップに反映させているが、この実施形態に限定されない。例えば、マップ管理部32が、点群データ81,82,83の集合体に基づいて圃場全体の作物高さの平均値を算出して、点群データ81,82,83の高さ情報と、圃場全体の作物高さの平均値と、の比率に基づいて作物の倒伏状態を検出する構成であっても良い。この構成であれば、例えば特徴データ生成部30が倒伏作物領域を検出し損ねた場合であっても、「圃場全体の作物高さの平均値」に対する「微小区画単位における作物高さの平均値」の乖離度合いに基づいて作物の倒伏状態の検出が可能となる。
【0062】
(2)
図5に基づいて上述した高さマップでは、作物高さマップと、倒伏マップと、が示されるが、この実施形態に限定されない。例えば、マップ管理部32は、点群データ81,82,83の集合体に基づいて作成された高さマップに、例えば次期の施肥計画等や農薬散布計画等を自動的に付加する構成であっても良い。具体的には、マップ管理部32は、作物高さマップの微小区画単位における作物高さの平均値と、倒伏マップの微小区画単位における倒伏度合いと、に基づいて、次期における計画施肥量を微小区画単位で算出する構成であっても良い。これにより、各微小区画の計画施肥量の分布が、例えば施肥計画マップとして生成され、圃場の監理者は施肥計画マップを次期の施肥計画に活用できる。また、例えば高さマップに、コンバイン1の刈高さや車速等の作業状態情報等が含まれ、刈高さ情報や車速情報が微小区画単位で算出されても良い。加えて、収穫物の食味がコンバイン1の食味測定装置(不図示)によって測定され、収穫物の食味情報が高さマップに反映されても良い。加えて、圃場のうち雑草の存在する度合いが微小区画単位で算出されても良い。更に、当該雑草の存在する度合いに基づいて、次期の薬剤の計画散布量が微小区画単位で算出されても良い。
【0063】
(3)上述の実施形態では、二次元スキャンLiDARである第1検出装置21と、カメラである第2検出装置22と、によって本発明の『検出装置』が構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、本発明の『検出装置』は、左右一対のステレオカメラで構成されても良い。左右一対のステレオカメラによって撮像された作物の撮像角度の差分に基づいて、作物とステレオカメラとの距離が算出され、作物高さが算出される構成であっても良い。
【0064】
(4)上述の実施形態では、第2検出装置22によって撮像された撮像画像に基づいて、雑草が検出されるが、この実施形態に限定されない。一般的に、雑草の高さは作物高さと異なる場合が多い。作物の品種が予め入力されると、その品種の一般的な作物高さが分かるため、マップ管理部32が、その品種の一般的な作物高さと、点群データ81,82,83の高さ情報と、の比率に基づいて雑草判定を行う構成であっても良い。
【0065】
(5)上述の実施形態では、圃場作業車としてコンバイン1を例示したが、圃場作業車は、例えば、圃場を走行しながら生育中の作物を管理する圃場作業車(圃場管理機)であっても良い。そして、圃場作業車に設けられた検出装置が、作物の位置及び高さを検出する構成であっても良い。また、上述の実施形態では、作物として稲や麦等の植立穀稈が例示されているが、作物は大豆やトウモロコシ等であっても良い。
【0066】
(6)上述の実施形態では、高さマップは単位走行量当たりの微小区画に分割可能に構成されているが、高さマップは数個程度だけの区画に分割される構成であっても良いし、区画分割されない構成であっても良い。
【0067】
(7)本発明の『進行方向前方の前方領域』は、機体左右斜前方を含むものであっても良い。例えば、第1検出装置21は機体左右斜前方の未作業領域に存在する物体の位置及び高さを検出し、第2検出装置22は機体左右斜前方の未作業領域を撮像する構成であっても良い。
【0068】
(8)
図5に基づいて上述した作物高さマップでは、微小区画単位で作物高さの平均値が示されているが、この実施形態に限定されない。例えば、作物高さマップは、等高線で示されても良い。
【0069】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、圃場作業車に作物の位置及び高さを検出する検出装置が設けられた圃場マップ生成システムに利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 :コンバイン(圃場作業車)
21 :第1検出装置(検出装置)
22 :第2検出装置(検出装置、撮像装置)
31 :マップデータ生成部(マップ生成部)
32 :マップ管理部(マップ生成部)
34 :表示装置
FR :前方領域