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特開2024-91718薬液容器アセンブリのクランパ、該クランパを有する薬液注入装置および薬液注入システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091718
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】薬液容器アセンブリのクランパ、該クランパを有する薬液注入装置および薬液注入システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61M5/145 510
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063193
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2020553973の分割
【原出願日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2018205067
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】植木 潤
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(57)【要約】
【課題】薬液容器アセンブリの所定の位置への装着およびクランパの閉止動作を効果的に行う。
【解決手段】クランパ140は、第1の保持構造141と、第1の保持構造141と協働してシリンジアセンブリを保持する第2の保持構造142とを有する。第1の保持構造141および第2の保持構造142は、それぞれシリンジアセンブリのカバーフランジの一部を受け入れるフランジ受け部141a、142aを有する。第2の保持構造142は、第1の保持構造141に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に、かつ、開放位置で第2の保持構造がシリンジアセンブリのカバーフランジの一部を受け入れることができるように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液容器アセンブリを着脱自在に保持するクランパであって、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第1受け部を有する第1の保持構造と、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第2受け部を有し、前記第1の保持構造と協働して前記薬液容器アセンブリを保持する第2の保持構造と、
を有し、
前記第2の保持構造は、前記第1の保持構造に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に、かつ、前記開放位置で前記第2受け部が前記薬液容器アセンブリの一部を受けることができるように支持されているクランパ。
【請求項2】
前記第1受け部および前記第2受け部は、前記開放位置では前記第1受け部および前記第2受け部のそれぞれが前記薬液容器アセンブリをその軸方向には移動不能であるが半径方向には移動可能に受け、前記閉止位置では、前記第1受け部と前記第2受け部とが協働して前記薬液容器アセンブリを前記軸方向にも前記半径方向にも移動不能に保持するように構成されている請求項1に記載のクランパ。
【請求項3】
前記第1受け部および前記第2受け部は、前記薬液容器アセンブリの外周面に形成されたフランジを受ける凹部として形成されている請求項2に記載のクランパ。
【請求項4】
前記第2の保持構造が前記閉止位置から前記開放位置へ向かって移動することによって、前記薬液容器アセンブリが前記第1受け部から解放されるように構成されている請求項1から3のいずれかに記載のクランパ。
【請求項5】
前記第2の保持構造は、前記薬液容器アセンブリの外周に沿った長さを有しており、前記閉止位置で前記第2受け部の一部が第1受け部の中に位置するように、前記長さの中間部で回動支持されている請求項4に記載のクランパ。
【請求項6】
前記第2の保持構造は、前記開放位置にあるとき、前記第1受け部への前記薬液容器アセンブリの受け入れを遮る位置に存在する請求項1から5のいずれかに記載のクランパ。
【請求項7】
前記第2の保持構造が前記閉止位置から前記開放位置へ向かって移動することによって前記薬液容器アセンブリを前記第1受け部から解放させる開放機構を有する請求項4に記載のクランパ。
【請求項8】
前記開放機構は、前記第1受け部に配置された少なくとも1つのスプリングプランジャである請求項7に記載のクランパ。
【請求項9】
前記第2の保持構造は、前記薬液容器アセンブリを磁気的に吸着する吸着構造を有する請求項1から8のいずれかに記載のクランパ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のクランパと、
前記クランパに保持された薬液容器アセンブリに収容された薬液を前記薬液容器アセンブリから排出するための駆動機構と、
を有する薬液注入装置。
【請求項11】
データを記録したデータキャリアを有する前記薬液容器アセンブリから前記データを読み出す読み出しシステムをさらに有する請求項10に記載の薬液注入装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の薬液注入装置と、
薬液を収容する薬液容器アセンブリと、
を有するシステム。
【請求項13】
前記薬液容器アセンブリは薬液シリンジを含む請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記薬液シリンジは、プレフィルドタイプの薬液シリンジである請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入装置を用いて薬液を注入するに際し、薬液容器アセンブリを保持するためのクランパ、および該クランパを有する各種機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の画像診断装置としては、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、アンギオ装置、およびMRA(MR Angio)装置などがある。これらの装置を使用して被験者の透視画像を撮像する際は、被験者に造影剤や生理食塩水などの薬液を注入することが多い。
【0003】
被験者への薬液の注入は、薬液注入装置を用いて自動的に行うのが一般的である。薬液注入装置は、薬液を充填したシリンジや薬液バッグなどの薬液容器が着脱自在に装着される注入ヘッドと、注入ヘッドの動作を制御する注入制御ユニットとを有している。注入ヘッドは、薬液容器を注入ヘッドに固定するためのクランパと、薬液容器が注入ヘッドに固定された状態で、薬液を薬液容器から外部へ排出させるための駆動機構とを備えている。
【0004】
薬液容器に充填された薬液を注入する薬液注入装置では、正確な注入量で、かつ、安全に薬液を注入するためには、薬液の注入中に薬液容器が位置ずれしたり薬液注入装置から外れたりしないように、薬液容器が薬液注入装置に保持されることが重要である。
【0005】
特許文献1(国際公開第2011/099551号)には、シリンジアセンブリが装着されるシリンジ載置部と、シリンジ載置部に搭載されたシリンジアセンブリを保持するクランパとを有する薬液注入装置が開示されている。クランパは、シリンジアセンブリのフランジが載せられるベース部材と、フランジ押え部材と、係合構造と、を有する。フランジ押え部材は、開放位置と閉止位置との間で回動自在にベース部材に支持されている。係合構造は、閉止位置においてフランジ押え部材をベース部材にロックする。
【0006】
特許文献1に記載の薬液注入装置では、フランジ押え部材を開放位置とした状態で、シリンジアセンブリのフランジをベース部材上に載せる。次いで、フランジ押え部材を閉止位置まで回動させ、係合構造によりフランジ押え部材をベース部材にロックする。これによりシリンジアセンブリが保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:国際公開第2011/099551号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の薬液注入装置では、シリンジアセンブリがシリンジ載置部に装着された後でクランパが閉止されることによってシリンジアセンブリが保持される構成となっている。そのため、シリンジアセンブリがシリンジ載置部に装着されていれば、ユーザがクランパを閉止し忘れても薬液注入装置の動作が可能となる場合がある。クランパが閉止されていない状態で、薬液注入装置の動作の一つである薬液注入動作が実行されると、薬液注入動作中にシリンジアセンブリが脱落してしまう可能性がある。
【0009】
この問題点については、クランパが閉止されているかどうかを検出するセンサを用いることによって解決することができる。しかし、この種のセンサは、通常、電気的な出力値の変化に基づくセンサであり、センサ自体に故障等の不具合が生じた場合はクランパが閉止されたことを検出することができない。
【0010】
本発明の目的の1つは、薬液容器アセンブリの所定の位置への装着およびクランパの閉止動作を効果的に行い得るクランパ等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、薬液容器アセンブリを着脱自在に保持するクランパであって、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第1受け部を有する第1の保持構造と、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第2受け部を有し、前記第1の保持構造と協働して前記薬液容器アセンブリを保持する第2の保持構造と、
を有し、
前記第2の保持構造は、前記第1の保持構造に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に、かつ、前記開放位置で前記第2受け部が前記薬液容器アセンブリの一部を受けることができるように支持されているクランパが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、
本発明のクランパと、
前記クランパに保持された薬液容器アセンブリに収容された薬液を前記薬液容器アセンブリから排出するための駆動機構と、
を有する薬液注入装置が提供される。
【0013】
本発明の更なる他の態様によれば、
本発明の薬液注入装置と、
薬液を収容する薬液容器アセンブリと、
を有するシステムが提供される。
【0014】
(本明細書で用いる用語の定義)
薬液容器アセンブリまたはシリンジアセンブリの「軸方向」とは、薬液容器アセンブリまたはシリンジアセンブリの長手方向をいう。通常の薬液容器アセンブリまたはシリンジアセンブリは、その軸方向の一端に薬液放出用の開口部を有する。薬液容器アセンブリまたはシリンジアセンブリの「半径方向」とは、「軸方向」に垂直な方向をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クランパの閉止動作に伴う薬液容器アセンブリの移動を利用して薬液容器アセンブリを所定の位置へ装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による医用画像撮像システムの概略ブロック図である。
図2図1に示す薬液注入装置が備えることができる注入ヘッドの外観の一例を示す斜視図である。
図3図2に示す注入ヘッドのシリンジ載置部の斜視図である。
図4A】第1の保持構造および第2の保持構造の配置の一形態を説明する図である。
図4B】第1の保持構造および第2の保持構造の配置の他の形態を説明する図である。
図5A図3に示すシリンジ載置部の斜視図であり、第2の保持構造が開放位置でシリンジアセンブリを受け入れた状態を示す。
図5B図5Aに示す状態においてシリンジ載置部を正面側から見た斜視図である。
図6A図3に示すシリンジ載置部の斜視図であり、クランパがシリンジアセンブリを保持している状態を示す。
図6B図6Aに示す状態においてシリンジ載置部を正面側から見た斜視図である。
図7A】クランパおよびシリンジアセンブリが有することができる磁気吸着部材の配置の一例を示す図である。
図7B図7Aにおいて、シリンジアセンブリが第2の保持構造に受け入れられた状態を示す図である。
図7C】磁気吸着部材を有するシリンジアセンブリの他の形態の斜視図である。
図8A】他の形態によるクランパを有する注入ヘッドの斜視図である。
図8B図7Aに示す注入ヘッドにおいて、開放位置にある第2の保持構造にシリンジアセンブリが受け入れられた状態を示す図である。
図9】本発明のクランパに適用可能なシリンジ解放機構の一形態を示す斜視図である。
図10】閉止検出センサおよび薬液容器検出センサの配置例を示す、クランパの要部斜視図である。
図11】薬液注入装置を有するシステムの他の形態の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、薬液注入装置100と、医用画像撮像装置500と、を有する本発明の一実施形態による医用画像撮像システムのブロック図が示されている。また、薬液注入装置100と医用画像撮像装置500とは、相互間でデータの送受信を行うことができるように互いに接続されることができる。両者の接続は、有線接続とすることもできるし、無線接続とすることもできる。
【0018】
医用画像撮像装置500は、撮像動作を実行する撮像動作ユニット520と、撮像動作ユニット520の動作を制御する撮像制御ユニット510と、を有しており、薬液注入装置100によって薬液が注入された被験者の断層画像および/または三次元画像を含む医用画像を取得することができる。撮像動作ユニット520は、通常、被験者用の寝台、寝台上の所定の空間に電磁波を照射する電磁波照射ユニット等を有する。撮像制御ユニット510は、撮像条件を決定したり、決定した撮像条件に従って撮像動作ユニット520の動作を制御したりする等、医用画像撮像装置全体の動作を制御する。撮像制御ユニット510は、いわゆるマイクロコンピュータを含んで構成することができ、CPU、ROM、RAMおよび他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには、医用画像撮像装置500の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、医用画像撮像装置500の各部の動作を制御する。
【0019】
医用画像撮像装置500は、撮像条件や取得した医用画像などを表示できる液晶ディスプレイなどの表示ユニット504、および撮像条件などの入力を受け付ける、キーボードおよび/またはマウスなどの入力ユニット503をさらに含むことができる。撮像条件を決定するのに用いられるデータの少なくとも一部は入力ユニット503から入力され、撮像制御ユニット510に送信される。表示ユニット504に表示されるデータは撮像制御ユニット510から送信される。また、表示ユニットのディスプレイ上に入力ユニットとしてタッチスクリーンを配置したタッチパネルを入力ユニット503および表示ユニット504として用いることもできる。入力ユニット503の一部、表示ユニット504および撮像制御ユニット510は、医用画像撮像装置用のコンソールとして一つの筐体に組み込むことができる。
【0020】
薬液注入装置100は、薬液容器アセンブリであるシリンジアセンブリ200に充填された薬液を、注入回路300を介して被験者の血管内に注入するのに使用される装置であり、少なくとも1つのピストン駆動機構130と、少なくとも1つの入力ユニット103と、少なくとも1つの表示ユニット104と、注入制御ユニット101と、を有する。ピストン駆動機構130は、シリンジのピストンを操作する機構であり、本形態では、2種類の薬液(例えば、造影剤および生理食塩水)を別々にまたは同時に注入できるように、薬液注入装置100は2つのシリンジアセンブリ200を装着できるように構成されており、これら2つのシリンジアセンブリ200のそれぞれのピストンを独立して操作する2つのピストン駆動機構130を有している。しかし、ピストン駆動機構130の数は、薬液注入装置100に装着されるシリンジアセンブリ200の数に応じて、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0021】
注入制御ユニット101は、入力ユニット103から入力されたデータの少なくとも一部を用いて薬液の注入量および注入速度等の注入条件を決定したり、決定した注入条件に従ってシリンジから薬液が注入されるようにピストン駆動機構130の動作を制御したり、表示ユニット104の表示の制御をしたりする等、この薬液注入装置全体の動作を制御する。注入制御ユニット101は、いわゆるマイクロコンピュータを含んで構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには、薬液注入装置100の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、薬液注入装置100の各部の動作を制御することができる。
【0022】
入力ユニット103は、注入制御ユニット101で薬液の注入条件を決定するのに用いられるデータなどの入力を受け付けるユニットである。入力ユニット103としては、例えば、キーボードおよび/またはマウスなどの公知の入力デバイスであってよい。入力ユニット103から入力されたデータは注入制御ユニット101に送信され、表示ユニット104に表示されるデータは注入制御ユニット101から送信される。表示ユニット104は、注入制御ユニット101によって制御されて、薬液の注入条件の決定に必要なデータ等の表示、注入プロトコルの表示、注入動作の表示、各種警告の表示等を行う。
【0023】
注入プロトコルとは、どのような薬液を、どれだけの量、どれくらいの速度で注入するかを示すものである。注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに変化するものであってもよい。また、複数種の薬液、例えば造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの薬液をどのような順序で注入するかといった情報も注入プロトコルに含まれる。注入プロトコルは、公知の任意の注入プロトコルを用いることができる。また、注入プロトコルの作成手順についても、公知の手順を用いることができる。また、注入プロトコルは、注入圧力の許容最大値(圧力リミット)を含むこともある。圧力リミットが設定された場合は、注入動作中、注入圧力が監視され、注入圧力が、設定された圧力リミットを超えないようにピストン駆動機構130の動作が制御される。
【0024】
表示ユニット104としては、例えば液晶ディスプレイ装置等、公知の表示装置であってよい。また、表示ユニットのディスプレイ上に入力ユニットとしてタッチスクリーンを配置したタッチパネルを入力ユニット103および表示ユニット104として用いることもできる。
【0025】
上述した薬液注入装置100の各構成要素は、1つの筐体にまとめて、または複数の筐体に分けて配置することができる。例えば、薬液注入装置100は、筐体として注入ヘッド100aおよびコンソール100bを有することができる。注入ヘッド100aは、ピストン駆動機構130を有することができ、シリンジアセンブリ200が取り外し可能に装着される。また、コンソール100bは、注入制御ユニット101、入力ユニット103および表示ユニット104を有することができる。また、注入制御ユニット101が有する入力ユニット103おおび表示ユニット104とは別の入力ユニット103および/または表示ユニット104が、注入ヘッド100aに備えられていてもよいし、注入ヘッド100aおよびコンソール100bとは別に備えられていてもよい。
【0026】
注入ヘッド100aは、図2に示すように、薬液容器アセンブリとして2つのシリンジアセンブリ200を互いに並列に、かつ取り外し可能に装着できるように構成されている(図2では簡略化のために1つのシリンジアセンブリ200のみを示している。)。
【0027】
図示した形態では、シリンジアセンブリ200は、シリンジ220と、シリンジ220が挿入される保護カバー270とを有する。シリンジ220は、一般にロッドレスシリンジと呼ばれるシリンジ220であり、シリンダ221と、シリンダ221内に進退移動可能に挿入されたピストン222と、を有している。シリンダ221の末端および先端には、それぞれシリンダフランジ221aおよびノズル部221bが形成されている。ピストン222の末端には、ピストン駆動機構130によって保持される凸部(不図示)が一体に形成されている。シリンジ220は、薬液が充填された状態で薬剤メーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。
【0028】
ピストン222がシリンダ221の先端へ向けて移動することで、シリンジ220内に充填されている薬液が、ノズル部221bを介してシリンジ220から押し出される。先端に注入針またはカテーテルが接続された延長チューブ(不図示)をノズル部221bに接続し、注入針またはカテーテルを被験者の血管に穿刺または挿入して、シリンジ220内の薬液を被験者に注入することができる。シリンジ220に充填される薬液としては、造影剤および生理食塩水などが挙げられる。例えば、一方は造影剤を充填したシリンジ220、他方は生理食塩水を充填したシリンジ220であってよい。医用画像の撮像を目的としない薬液の注入においては、造影剤ではなく抗がん剤など治療用の薬液がシリンジ220に充填され、被験者に投与されてもよい。
【0029】
薬液注入装置100を用いて注入される薬液は、造影剤のように粘度が高いことが多い。また特に、アンギオ装置を用いて被験者の血管画像を撮像する場合、細いカテーテルを通して造影剤を注入する。その結果、造影剤の注入中はシリンダ221の内圧が非常に高くなる傾向がある。この高い内圧は、シリンダ221を膨張させ、これによって薬液の注入に種々の不具合が生じることがある。
【0030】
保護カバー270は、薬液注入中のシリンダ221の内圧上昇による膨張を抑制するために、シリンダ221の外周面と保護カバー270の内周面との間に隙間なくシリンダ221が挿入されるように円筒状に構成された部品である。保護カバー270がこの役割を果たすために、保護カバー270は、薬液注入中にシリンダ221に作用する内圧に十分に耐え得る機械的強度を有する肉厚で形成されている。
【0031】
保護カバー270の先端には開口部が形成されており、シリンダ221は、この開口部からノズル部221bを突出させた状態で保護カバー270に挿入される。保護カバー270の末端には、シリンダ221のシリンダフランジ221aを受け入れるリング状の凹部が形成されたカバーフランジ271が形成されている。
【0032】
注入ヘッド100aには、装着された2つのシリンジアセンブリ200のピストン222を前進および後退させるために互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構130(図1参照)が、各シリンジアセンブリ200が装着される位置に対応して配置されている。各ピストン駆動機構130はそれぞれ、ピストン222の末端の前述した凸部を保持するプレッサ131と、プレッサ131を前進および後退させるモータ等の駆動源(不図示)と、これらを連結する動力伝達機構(不図示)と、を有する。
【0033】
注入ヘッド100aに装着されたシリンジアセンブリ200は、ピストン駆動機構130によってピストン222が前進させられることによって、シリンジ220内に充填されている薬液を被験者に注入することができる。2つのシリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに装着されていれば、各ピストン駆動機構130の動作を適宜制御することで、2つのシリンジ200内に充填されている薬液を別々に、順番にまたは同時に被験者に注入することができる。ピストン駆動機構130については、この種の注入装置で一般に用いられている公知の機構を採用することができる。
【0034】
前述したとおり、各ピストン駆動機構130は、薬液を注入する際に注入プロトコルに従って注入制御ユニット101によって動作が制御されるが、それ以外にも任意に動作させることができるようにすることが好ましい。そのため、入力ユニット103は、プレッサ131を任意に前進させるためのボタンおよびプレッサ131を任意に後退させるためのボタンを含むボタン群103aおよび/またはマニュアルノブ103bを注入ヘッド100aにさらに有することができる。注入制御ユニット101は、操作者によるボタン群103aの各ボタンの押下操作およびマニュアルノブ103bの回転操作に応じて各ピストン駆動機構の動作を制御する。
【0035】
注入ヘッド100aの先端部には、シリンジアセンブリ200が載せられるシリンジ載置部を構成するシリンジアセンブリ受け120およびクランパ140が備えられている。シリンジアセンブリ受け120は、クランパ140よりも先端側に位置しており、保護カバー270の外周面を個々に受け入れることができる2つの凹部121を有している。シリンジアセンブリ200は、ノズル部221bを先端側に向けた姿勢でシリンジアセンブリ受け120に受け入れられてシリンジ載置部上に載置された状態で、カバーフランジ271がクランパ140によって保持されることで注入ヘッド100aに固定される。
【0036】
次に、クランパ140について、図3等を参照してより詳しく説明する。
【0037】
[クランパの基本構造]
クランパ140は、協働してシリンジアセンブリ200を保持する第1の保持構造141と、少なくとも1つの第2の保持構造142と、を有する。第1の保持構造141および第2の保持構造は、シリンジアセンブリ200がシリンジ載置部に載せられた状態でシリンジアセンブリ200を保持するように構成される。本形態では、注入ヘッド100a(図2参照)が2本のシリンジアセンブリ200を装着できるように、クランパ140は2つの第2の保持構造142を有している。しかし、第2の保持構造142の数は、注入ヘッド100aに装着されるシリンジアセンブリ200の数に対応して、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。そして、装着できるシリンジアセンブリ200の数に応じて、第1の保持構造142の構成およびシリンジアセンブリ受け120の構成が変更される。例えば、装着できるシリンジアセンブリ200の数が1であれば、第1の保持構造141は、1つのフランジ受け部141a(後述する)を有し、シリンジアセンブリ受け120は、1つの凹部121を有する。
【0038】
クランパ140は、第1の保持構造141および第2の保持構造142を注入ヘッド100aに対して支持する少なくとも1つの支持部材をさらに有することができる。本形態では、クランパ140は、支持部材として、センターシャフト150aと、センターシャフト150aと並列にセンターシャフト150aの両側に配置された2本のクランパシャフト150bと、を有している。第1の保持構造141は、センターシャフト150aおよび2本のクランパシャフト150bによって、注入ヘッド100aに対して固定的に支持される。一方、2つの第2の保持構造142は、左右のクランパシャフト150bのそれぞれによって、クランパシャフト150b周りに回動自在に支持される。
【0039】
センターシャフト150aとクランパシャフト150bとの間隔は、クランパ140が保持するシリンジアセンブリ200のカバーフランジ271(図1参照)の直径よりも大きい。そして、第1の保持構造141は、シリンジアセンブリ200の外周方向の一部を受ける構造として、センターシャフト150aとクランパシャフト150bとの間に位置する2つのフランジ受け部141a(第1受け部)を有している。本形態では、各フランジ受け部141aは、カバーフランジ271の外周方向に沿った一部分を、シリンジアセンブリ200の軸方向へは実質的に移動不能であるが、半径方向へは移動可能に受け入れることができる凹部として構成されている。第1の保持構造141は、1つの部材で構成することもできるし、複数の部材を組わせて構成することもできる。
【0040】
第2の保持構造142は、第1の保持構造141に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に支持され、開放位置ではフランジアセンブリ200の外周方向の一部を受けることができ、かつ、閉止位置では第1の保持構造141と協働してシリンジアセンブリ200を保持するように構成されている。シリンジアセンブリ200の受けおよび保持のため、第2の保持構造142も第1の保持構造141と同様、シリンジアセンブリ200の周方向の一部を受ける構造として、フランジ受け部142a(第2受け部)を有している。本形態では、フランジ受け部142aは、カバーフランジ271の外周方向に沿った一部分を、シリンジアセンブリ200の軸方向へは実質的に移動不能であるが、半径方向へは移動可能に受け入れることができる凹部として構成されている。フランジ受け部142aには、シリンジアセンブリ200を回りにくくするための滑り止め部材142bが設けられることが好ましい。滑り止め部材142bを構成する材料は任意であってよく、例えば、シリコーンゴムなどのゴム材料で構成することができる。滑り止め部材142bをゴム材料で構成することで、滑り止め部材142bはクッションの役目を果たすこともできる。第2の保持構造142は、1つの部材で構成することもできるし、複数の部材を組み合わせて構成することもできる。
【0041】
第1の保持構造141のフランジ受け部141aおよび第2のフランジ保持構造142のフランジ受け部142aは、第2の保持構造142が閉止位置にあるときに、両方のフランジ受け部141a、142aが協働してカバーフランジ271をシリンジアセンブリ200の軸方向および半径方向の両方に移動不能に受けるように構成される。これによって、シリンジアセンブリ200が保持される。
【0042】
なお、本明細書でいう「移動不能」とは、対象となる構造体が全く動かないことのみならず、設計上の寸法公差等により生じるクリアランスの範囲内で移動可能であることも含む。
【0043】
フランジ受け部141a、142aが協働してシリンジアセンブリ200を半径方向に移動不能に受けるようにするためには、第2の保持構造142が閉止位置にあるとき、例えば図4Aに示すように、長さL1と長さL2との合計の長さが、シリンジアセンブリ200の周方向全周の長さの半分を超える長さであればよい。長さL1は、第1の保持構造141のフランジ受け部によって受け入れられているシリンジアセンブリ200の部分の周方向の長さである。長さL2は、第2の保持構造142のフランジ受け部によって受け入れられているシリンジアセンブリ200の部分の周方向の長さである。あるいは、図4Bに示すように、長さL3および長さL4のそれぞれが、シリンジアセンブリ200の周方向全周の長さの半分未満の長さであればよい。長さL3、L4は、第1の保持構造141のフランジ受け部および第2の保持構造142のフランジ受け部の何れにも受け入れられていないシリンジアセンブリ200の部分の周方向の長さである。本形態では前者の構成を採用している。なお、第1保持構造141および第2保持構造142は、シリンジアセンブリ200の周方向に連続して配置されていてもよいし、離れて配置されてもよい。
【0044】
第1の保持構造141および第2の保持構造の形状は、特に限定されず任意であってよい。ただし、少なくともそれぞれの内面(シリンジアセンブリを保持したときにシリンジアセンブリと向かい合う面)が、シリンジアセンブリ200の外周方向の一部を受け入れることができるように、シリンジアセンブリ200の外周方向に沿った長さを持った形状であることが好ましい。本形態では、シリンジアセンブリ200が全体として円筒状の外形を有しているので、第1の保持構造141のフランジ受け部141aおよび第2の保持構造142のフランジ受け部142aは、略半円弧状に形成されている。
【0045】
第2の保持構造142は、開放位置と閉止位置との間で移動可能であれば、その移動経路は任意であってよい。例えば、第2の保持構造142の開放位置と閉止位置との間の移動は、本形態のように回動であってもよいし、直線移動であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。
【0046】
また、第2の保持構造142は、開放位置と閉止位置との間で移動可能に支持されていれば、第2の保持構造142のどの部位が支持されてもよく、一端部が支持されてもよいし、他の部位が支持されてもよい。本形態では、第2の保持構造142は、シリンジアセンブリ200の外形に対応して全体として半円弧状に構成されており、その半円弧状の長手方向中間部でクランパシャフト150bに、クランパシャフト150b周りに回動自在に支持されている、これによって、第2の保持構造142は、閉止位置にあるときフランジ受け部141aの一部が第1の保持構造141のフランジ受け部141aの中に位置し、開放位置へ向かう第2の保持構造142の移動に伴って、フランジ受け部141aの中に位置しているフランジ受け部142aの一部がフランジ受け部141aから脱するように構成される。
【0047】
本形態のクランパを有する注入ヘッド100aへのシリンジアセンブリ200の装着手順および取り外し手順の一例を以下に説明する。
【0048】
注入ヘッド100aにシリンジアセンブリ200を装着する場合、ユーザは、まず、第2の保持構造142を開放位置へ移動させる。この状態で、ユーザは、シリンジアセンブリ200のカバーフランジ271が第2の保持構造142のフランジ受け部142aに受け入れられるように、シリンジアセンブリ200を第2の保持構造142に載せる(図5A、5B参照)。
【0049】
前述したように、本形態では、第1の保持構造141および第2の保持構造142のフランジ受け部141a、142aが共に半円弧状に形成され、かつ、第2の保持構造142が、その長手方向(円弧に沿った方向)中間部で支持されている。この場合、図3に示すように、開放位置は、第2の保持構造142のフランジ受け部142aの開放端の向きが、第1の保持構造141のフランジ受け部141aの開放端の向きと等しくなる位置とすることができる。これにより、開放位置では第2の保持構造142はシリンジアセンブリ200を受け入れやすい姿勢となる。また、開放位置から閉止位置までの間の、第1の保持構造141と第2の保持構造142との間にシリンジアセンブリ200を半径方向から差し入れることができる空間を生じさせる任意の位置でシリンジアセンブリ200を受け入れることができる。言い換えれば、開放位置は、第1の保持構造141と第2の保持構造142との間にシリンジアセンブリ200を半径方向から差し入れることができる空間を生じさせる任意の位置とすることができる。
【0050】
また、この構成により、第2の保持構造142が開放位置にあるとき、第2の保持構造142の一部が、第1の保持構造141のフランジ受け部141aへのシリンジアセンブリ200の受け入れを遮る位置に存在する。そのため、開放位置においてシリンジアセンブリ200を装着する際、第1の保持構造141でシリンジアセンブリ200を受けることができず、ユーザは必然的に、第1の保持構造141ではなく第2の保持構造142にシリンジアセンブリ200を載せることになる。
【0051】
次に、ユーザは、シリンジアセンブリ200が受け入れられた第2の保持構造142を閉止位置へ移動させる(図6A図6B)。第2の保持構造142を閉止位置へ移動させることで、シリンジアセンブリ200は第2の保持構造142と一緒に移動(回動)し、シリンジアセンブリ受け120に受け入れられ、これによってシリンジアセンブリ200は、シリンジ載置部に載せられたた定位置に装着される。それと同時に、シリンジアセンブリ200は、そのカバーフランジ271が第1の保持構造141および第2の保持構造142によって保持される。
【0052】
このようにしてシリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに装着されたら、それ以降は、シリンジアセンブリ200に延長チューブを介して注入針またはカテーテルを接続し、薬液の注入条件を設定し、薬液注入装置100を動作させるといった従来と同様の手順を経て、薬液を被験者に注入することができる。
【0053】
注入ヘッド100aに装着されたシリンジアセンブリ200は、上述した装着手順と逆の手順で注入ヘッド100aから取り外すことができる。
【0054】
以上説明したように本形態では、第2の保持構造142が開放位置にあるときに第2の保持構造142にシリンジアセンブリ200を載せ、その状態で第2の保持構造142を閉止位置へ移動させることによってシリンジアセンブリ200が定位置に装着される。これにより、シリンジアセンブリ200が載せられた第2の保持構造142を開放位置から閉止位置へ移動させるという極めて直感的な動作で、シリンジアセンブリ200の定位置への装着およびクランパ140による保持を同時に行うことができる。しかも、シリンジアセンブリ200のシリンジ載置部への載置とクランパ140の閉止が同時に行われるので、シリンジ載置部に載置されたシリンジアセンブリ200をクランパ140で保持し忘れるといったことを防止できる。
【0055】
[他の好ましい要素]
(第2の保持構造のストッパ)
クランパ140は、第2の保持構造142の開放位置でのストッパおよび/または閉止位置でのストッパを有することができる。クランパ140が開放位置でのストッパを有することによって、第2の保持構造142の位置を開放位置で安定させ、第2の保持構造142へのシリンジアセンブリ200の受け入れを容易にすることができる。クランパ140が閉止位置でのストッパ機構を有することによって、第2の保持構造142が閉止位置にあるクランパ140の閉止状態を保つことができる。これらのストッパ機構としては、第2の保持構造142を開放位置および/閉止位置に係脱自在に保持できる任意の機構を用いることができる。
【0056】
ストッパの一例として、第2の保持構造142に取り付けられたスプリングプランジャと、開放位置および/または閉止位置で第2の保持構造142と接する部材に形成された係合凹部との組み合わせを挙げることができる。スプリングプランジャと係合凹部との関係は逆でもよい。スプリングプランジャは、本体と、本体に対して進退自在に本体内に保持されたボールまたはピンなどの可動体と、本体の内部から可動体を付勢するスプリングと、を有する。スプリングプランジャは、無荷重の状態ではスプリングの付勢力により可動体の一部が本体から突出しているが、荷重がかかることによって可動体が本体内部に沈み込むように構成される。係合凹部は、第2の保持構造142が開放位置にあるときおよび/または閉止位置にあるときに、スプリングプランジャと対向する位置に形成される。これにより、開放位置/および閉止位置において、スプリングプランジャの可動体がスプリングの付勢力で突出して係合凹部に係合し、ストッパとして機能する。
【0057】
(薬液容器ロック機構)
クランパ140は、第1の保持構造141に受け入れられたシリンジアセンブリ200を係脱自在にロックするシリンジロック構造を有することができる。シリンジロック機構としては、第1の保持構造141に設けられた保持フック143(図3等参照)を挙げることができる。保持フック143は、第1の保持構造141のフランジ受け部141aにおいて、フランジ受け部141aに受け入れられたシリンジアセンブリ200のカバーフランジ271の外周面と係合する位置に設けられている。シリンジロック機構を有することにより、クランパ140による保持が不十分であってもシリンジアセンブリ200を良好に定位置に固定できる。クランパ140は、シリンジロック機構および第2の保持構造142の閉止位置でのロック機構の両方を備えることもでき、これにより、シリンジアセンブリ200をより強固に保持することができる。
【0058】
(操作レバー)
第2の保持構造142は、ユーザが第2の保持構造142を開放位置と閉止位置との間で移動させる際の操作レバー144を有することができる。第2の保持構造142上での操作レバー144の位置は任意であってよいが、第2の保持構造142の回動中心から離れた端部に操作レバー144を設けることで、より小さい力で第2の保持構造142を移動(回動)させることができる。また、操作レバー144は、第2の保持構造142が閉止位置にあるとき、シリンジアセンブリ200を軸方向から見てシリンジ載置部(シリンジアセンブリ受け120)から最も離れた第2の保持構造142の部分(例えば、図6B参照)に配置されることが好ましい。このような位置に操作レバー144が配置されることによって、第2の保持構造142を閉止位置から開放位置へ移動させる際にユーザが操作しやすくなる。
【0059】
(薬液容器の吸着)
クランパ140は、第2の保持構造142に受け入れられたシリンジアセンブリ200が第2の保持構造142に吸着されるように構成することができる。シリンジアセンブリ200の吸着には磁気を利用することができる。磁気を利用した吸着構造の一例を図7Aに示す。図7Aに示すように、第2の保持構造142およびシリンジアセンブリ200は、それぞれ磁気吸着部材145a、145bを有する。これら磁気吸着部材145a、145bは、図6Bに示すように、シリンジアセンブリ200が第2の保持構造142に受け入れられたときに互いに対向し、一方の磁気吸着部材145aと他方の磁気吸着部材145bとが対となる位置に配置される。図示した形態では、シリンジアセンブリ200側の磁気吸着部材145bは、カバーフランジ271の外周面近傍または内部に配置され、第2の保持構造142側の磁気吸着部材145aはフランジ受け部142aに配置されている。
【0060】
第2の保持構造142に受け入れられたシリンジアセンブリ200を磁気吸着部材145a、145bによって磁気的に吸着させることで、注入ヘッド100aの姿勢が、例えば注入ヘッド100aの先端側(シリンジアセンブリ受け120側)を上に向けた姿勢であるときなど、注入ヘッド100aがどのような姿勢であっても、シリンジアセンブリ200を第2の保持構造142から落下させることなく確実に第2の保持構造142に受け入れさせることができる。また、シリンジアセンブリ200を受け入れた第2の保持構造142を開放位置から閉止位置へ回動させるとき、シリンジアセンブリ200が第2の保持構造142から脱落してしまうことを防止できる。さらに、第2の保持構造142を閉止位置から開放位置へ回動させるとシリンジアセンブリ200も一緒に開放位置まで回動するので、シリンジアセンブリ200を容易に取り外すことができる。
【0061】
対となる磁気吸着部材145a、145bの組み合わせとしては、磁石同士の組み合わせ、および鉄などの強磁性体と磁石との組み合わせが挙げられる。対となる磁気吸着部材145a、145bの両方に磁石を用いることで、より強力な吸着力が得られる。また、磁気吸着部材145a、145bの対の数は、1対であってもよいし、複数対であってもよい。複数対の磁気吸着部材145a、145bを有することで、シリンジアセンブリ200をより強力に吸着できるだけでなく、シリンジアセンブリ200をその周方向において特定の向きで第2の保持構造142に吸着させることができる。このことは、クランパ140に保持させるシリンジアセンブリ200の周方向の向きが定まっている場合に有効である。
【0062】
第2の保持構造142に設けられる磁気吸着部材145aが磁石である場合、シリンジアセンブリ200に設けられる磁気吸着部材として、図7Cに示すように、シリンジアセンブリ200の周方向に延びる磁気吸着帯145cを用いることができる。図7Cに示す例では、保護カバー270のカバーフランジ271の外周面に磁気吸着帯145cが固定されている。これにより、シリンジアセンブリ200を第2の保持構造142に保持させる際の、シリンジアセンブリ200の周方向の向きの制限を緩和することができる。
【0063】
磁気吸着帯145cとしては、可撓性を有するシート状に形成した強磁性体、およびカバーフランジ271の外周面に沿って湾曲した形状に加工した強磁性体を用いることができる。さらに、磁気吸着帯145cとして、カバーフランジ271の外周面に沿って湾曲させることのできるゴム磁石、およびカバーフランジ271の外周面に沿って湾曲した形状に形成された磁石を用いることもできる。
【0064】
シリンジアセンブリ200の周方向における磁気吸着帯145cの長さは任意であってよいが、上記の効果をより発揮できるようにするためにはできるだけ長い方が好ましい。図7に示す例では、磁気吸着帯145cは、保護カバー270のカバーフラに271に備えられたリリースボタン280が存在する部分を除いた、カバーフランジ271の外周面のほぼ全周にわたる長さを有している。このようなシリンジアセンブリ200を図6Aに示したような複数の磁気吸着部材145aである複数の磁石を備えた第2の保持構造142に保持させる場合、シリンジアセンブリ200が周方向にどのような向きであっても、少なくとも1つの磁気吸着部材145aはシリンジアセンブリ200を吸着することができる。
【0065】
図7Cに示すシリンジアセンブリ200はリリースボタン280を有しているが、リリースボタン280は必須の構成ではない。よって、シリンジアセンブリ200がリリースボタン280を有していない場合は、カバーフランジ271の外周面の全周にわたる長さを有する磁気吸着帯145cを用いることができる。
【0066】
ここで、リリースボタン280について簡単に説明する。リリースボタン280は、保護カバー270へのシリンジ220の保持およびその解除のための機構である。リリースボタン280は、カバーフランジ271の直径方向と平行なシャフトによってカバーフランジ271に回動可能に支持される。リリースボタン280は、シリンジ220のシリンダの後端面に係合する第1の位置と、その係合が解除される第2の位置との間を回動可能である。また、リリースボタン280は、操作されることによって、第1の位置から第2の位置へ回動するように弾性的に支持される。シリンジアセンブリ200がリリースボタン280を有することにより、シリンジ220を保護カバー270から抜き取るためにはリリースボタン280の操作が必要となるので、シリンジ220が不用意に保護カバー270からが落下してしまうことを防止できる。
【0067】
(薬液容器全周の保持)
上述した形態では、第2の保持構造142は、シリンジアセンブリ200の外周方向に沿った長手方向の中間部で支持されており、第2の保持構造142が閉止位置にあるとき、クランパ140はシリンジアセンブリ200の周方向の一部が開放された状態でシリンジアセンブリ200を保持するように構成されている。しかし、クランパ140は、シリンジアセンブリ200を全周にわたって保持するように構成されていてもよい。
【0068】
そのようなクランパ140の一例を図8Aに示す。図8Aに示すクランパ140は、第2の保持構造142の一端部がクランパシャフト(不図示)に支持されている点を除いて、図3等に示したクランパ140と同様に構成することができる。第2の保持構造142はその一端部が支持されることにより、第2の保持構造142が開放位置にあるとき、第2の保持構造142は第1の保持構造141に対して大きく開く。これにより、第2の保持構造142は、図8Bに示すように、注入ヘッド100aのプレッサ131といった各種構造から比較的離れた位置でシリンジアセンブリ200を受け入れることができる。よって、シリンジアセンブリ200を注入ヘッド100aに装着する際にシリンジアセンブリ200を誤って注入ヘッド100aの主要な構造にぶつけてしまいうことによる、注入ヘッド100aおよび/またはシリンジアセンブリ200の損傷の可能性を低くすることができる。
【0069】
図8A、8Bに示したように、第2の保持構造142がその端部で回動自在に支持されている構成では、第2の保持構造142を閉止位置から開放位置へ移動させても、シリンジアセンブリ200はシリンジアセンブリ受け120および第1の保持構造141に受け入れられたままとなる可能性がある。この状態では、プレッサ131がピストン222に係合していることもあり、シリンジアセンブリ200が取り外しにくくなることがある。
【0070】
そこで、クランパ140は、第2の保持構造142が閉止位置から開放位置へ向かう動作に伴って、シリンジアセンブリ200を第1の保持構造141のフランジ受け部141aから解放するシリンジ解放機構を有することが好ましい。シリンジ解放機構の一例について図9を参照して説明する。図8は、シリンジ解放機構を有するクランパ140をシリンジアセンブリ受け120とともに示すが、クランパ140の第2の保持構造は省略している。
【0071】
図9に示すように、第1の保持構造141にスプリングプランジャ145がシリンジ解放機構として設けられている。スプリングプランジャ145は、本体と、本体に対して進退自在に本体内に保持されたボールまたはピンなどの可動体と、本体の内部から可動体を付勢するスプリングと、を有する。図8に示す形態では、スプリングプランジャ145は、第1の保持構造141が有する2つのフランジ受け部141aのそれぞれに対して2つずつ、可動体をフランジ受け部141aから突出させて配置されている。
【0072】
このような構成によれば、シリンジアセンブリ200を受け入れた状態で第2の保持構造142を開放位置から閉止位置へ移動させると、シリンジアセンブリ200のカバーフランジ271は、スプリングプランジャ145の可動体を本体内に押し込みながら第1の保持構造141のフランジ受け部141aに受け入れられ、これによって、シリンジアセンブリ200がクランパ140に保持される。一方、第2の保持構造142を閉止位置から開放位置へ向けて移動され、第1の保持構造141および第2の保持構造142によるシリンジアセンブリ200の保持が解除されると、スプリングプランジャ145は、シリンジアセンブリ200による荷重から解放される。その結果、スプリングプランジャ145の可動体がスプリングの付勢力によって突出する。これによって、シリンジアセンブリ200のカバーフランジ271がスプリングプランジャ145によってフランジ受け部141aから持ち上げられ、結果的に、シリンジアセンブリ200は第1の保持構造141から解放される。
【0073】
スプリングプランジャ145をシリンジ解放機構として用いる場合、スプリングプランジャ145の可動体はピンであることが好ましい。これにより、可動体のストロークを大きくすることができる。1つのフランジ受け部141a当たりのスプリングプランジャ145の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、スプリングプランジャ145の位置についても任意であってよい。
【0074】
スプリングプランジャ145の可動体は、磁石を内蔵したり、または可動体自身を磁石で構成したりすることによって、磁石を含むことができる。この場合、シリンジアセンブリ200は、シリンジアセンブリ200がクランパ140によって保持されている状態でスプリングプランジャ145と対向する位置に、鉄などの強磁性体または磁石が配置され、シリンジアセンブリ200がスプリングプランジャ145に磁気的に吸着されるように構成される。これによって、スプリングプランジャ145によってシリンジアセンブリ200が第1の保持構造141から解放されるとき、スプリングプランジャ145のスプリングの勢いでシリンジアセンブリ200が跳ね上がることが抑制される。
【0075】
磁石は、スプリングプランジャ145とは別に配置することもできる。例えば、図9においてスプリングプランジャ145が配置されている位置には磁石を配置し、それら2つの磁石の間の中間位置にスプリングプランジャを配置することができる。このような構成によれば、シリンジアセンブリ200の取り外しを容易にすることができる。
【0076】
(閉止検出センサ)
注入ヘッド100aは、第2の保持構造142が閉止位置にあることを検出し、検出および非検出の状態変化に応じて出力がONとOFFの間で切り替わる閉止検出センサ111(図1参照)を有していることが好ましい。閉止検出センサ111としては、第2の保持構造142が閉止位置へ移動して検出対象物との距離が所定の距離以下(接触も含む)になることによって検出対象物を検出できる任意のセンサを用いることができる。閉止検出センサ111の例としては、検出領域内での検出対象物の有無を光学的に検出する光学センサ、磁気を検出媒体として検出対象物の有無や位置を検出するホールセンサなどの近接センサ、および検出対象物の接触/非接触に応じてONとOFFが切り替わる機械的スイッチなどが挙げられる。
【0077】
閉止検出センサ111および検出対象物のいずれか一方は、第2の保持構造142に配置することができ、閉止検出センサ105および検出対象物の他方は、第2の保持構造142が開放位置と閉止位置との間を移動することによって第2の保持構造142と相対的に移動する部材に配置することができる。例えば、閉止検出センサ105を第1の保持構造141に配置し、検出対象物を第2の保持構造142に配置することができる。なお、閉止検出センサ111が光学式センサである場合、第2の保持構造142自身を検出対象物とすることもできる。
【0078】
(薬液容器検出センサ)
注入ヘッド100aは、シリンジ載置部にシリンジアセンブリ200が載せられたことを検出し、検出および非検出の状態変化に応じて出力がONとOFFの間で切り替わる薬液容器検出センサであるシリンジ検出センサ112(図1参照)を有することができる。シリンジ検出センサ112としては、閉止検出センサと同様のものを用いることができる。シリンジ検出センサは、シリンジアセンブリ200がシリンジ載置部に載せられることによって、シリンジアセンブリ200との距離が所定の距離以下(接触も含む)となる部位、例えば、シリンジアセンブリ受け120およびクランパ140の第1の保持構造141に配置することができる。一方、シリンジ検出センサ106によって検出される検出対象物は、シリンジアセンブリ200がシリンジ載置部に載せられたときにシリンジ検出センサによって検出され得るシリンジアセンブリ200の部位、例えば、保護カバー270に配置することができる。なお、シリンジ検出センサ112が光学センサである場合、保護カバー270自身を検出対象物とすることもできる。
【0079】
(閉止検出センサおよび薬液容器検出センサの配置例)
図10に、上述した閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の配置例を示す。なお、図10ではシリンジアセンブリ受けを省略している。
【0080】
図10に示す例では、第1の保持構造141の、第2の保持構造142が閉止位置にあるときに第2の保持構造142の回動中心から離れた端部と対向する位置に、閉止検出センサ111としてホールセンサが配置されている。第2の保持構造142の、第2の保持構造142が閉止位置にあるときに閉止検出センサ111と対向する位置には、閉止検出センサ111が検出する検出対象物である磁石111aが配置されている。このように閉止検出センサ111であるホールセンサおよび磁石111aを配置することで、第2の保持構造142が開放位置から閉止位置まで移動する間の、検出対象物である磁石111aの移動距離を長くとることができる。その結果、第2の保持構造142が閉止位置にあることをより高い精度で検出することができる。
【0081】
また、図10に示すように、シリンジ検出センサ112は、第1の保持構造141のフランジ受け部141aに配置することができる。特に、図10に示す例では、シリンジ検出センサ112は、フランジ受け部141aのうち、もう一方のフランジ受け部141aと隣り合い、かつ、第2の保持構造142と向かい合う位置に配置される。また、シリンジ検出センサ112としては、光学式センサを用いている。シリンジ検出センサ112をもう一方のフランジ受け部141aと隣り合う位置に配置することで、2つのシリンジ検出センサ112の配線をまとめて引き回すことができる。また、シリンジ検出センサ112を第2の保持構造142と向かい合う位置に配置することで、シリンジアセンブリ200の検出に際して外光の影響を受けにくくすることができる。
【0082】
(センサの検出結果を利用した薬液注入装置の動作)
注入制御ユニット101は、上述した閉止検出センサ111および薬液容器検出センサ112の検出結果を利用して薬液注入装置100の動作を制御することができる。以下に、これらのセンサの検出結果を利用した薬液注入装置100の動作を説明する。
【0083】
(1)起動時のセルフチェック動作
薬液注入装置100を起動する(電源をONする)と、注入制御ユニット101は、ピストン駆動機構130の動作の確認のためにプレッサ131を前後に移動させるなどのセルフチェックを行なう。この際、薬液注入装置100の様々な動作においては、クランパ140の第2の保持構造142が閉止位置にあることが重要であり、第2の保持構造142が閉止位置にあることが確実に検出できること、言い換えれば閉止検出センサ111が正常に動作しているかが優先的にチェックされることが好ましい。
【0084】
そこで、薬液注入装置100が起動されると、注入制御ユニット101は、第2の保持構造142が閉止位置にあるかどうか、すなわち閉止検出センサ111がONであるかをチェックし、閉止検出センサ111がOFFである場合、および/またはセルフチェック動作中に閉止検出センサ111がONからOFFに変化した場合は、操作者に対して第2の保持構造142が閉止位置に位置していないことを報知することが好ましい。報知は、表示ユニット104への表示による報知とすることができる。操作者は、第2の保持構造142が閉止位置にないことの報知に応じて、第2の保持構造142を閉止位置とすることができる。注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111がONであることが確認できたら、セルフチェック動作を行なう。あるいは、注入制御ユニット101は、第2の保持構造142が閉止位置にないことを報知するとともに、操作者に対して薬液注入装置100の再起動を促すようにしてもよい。
【0085】
なお、例えば図8Aに示したクランパ140のように、プレッサ131が前進したとき、第2の保持構造142がどの位置にあってもプレッサ131と第2の保持構造142とが緩衝しない構造である場合は、薬液注入装置100が起動された後の、上述した閉止検出センサ111のチェックは不要である。
【0086】
(2)清掃モードでの動作
薬液注入装置100は、プレッサ131を支持するシャフトを清掃するための清掃モードを有することが多い。シャフトを清掃するためには、注入ヘッド100aにシリンジアセンブリ200が装着されていない状態でプレッサ131を前進させる必要がある。シャフトを清掃する際は、第2の保持構造142が自由に動くことができる状態にあるのではなく、定まった位置に固定されている方が、清掃がやりやすい。
【0087】
そこで、注入制御ユニット101は、清掃モードの起動時に閉止検出センサ111をチェックし、閉止検出センサ111がOFFである場合、すなわち第2の保持構造142が閉止位置にない場合は、クランパを閉じることを促す旨のメッセージを表示ユニット104に表示させることが好ましい。注入制御ユニット101は、薬液注入装置100の再起動を促すメッセージを表示ユニット104にさらに表示させてもよい。さらに、清掃モード中、閉止検出センサ111がOFFである場合はピストン駆動機構130の動作は禁止される。
【0088】
なお、清掃モードでの動作においても、例えば図8Aに示したクランパ140のように、プレッサ131が前進したとき、第2の保持構造142がどの位置にあってもプレッサ131と第2の保持構造142とが干渉しない構造である場合は、薬液注入装置100が起動された後の、上述した閉止検出センサ111のチェックは不要である。
【0089】
(3)プレッサの前進動作
注入制御ユニット101の制御による、プレッサ131を前進させるためのピストン駆動機構130の動作は、閉止検出センサ111によって第2の保持構造142が閉止位置にあることが検出され、かつ、シリンジ検出センサ112によってシリンジアセンブリ200の装着が検出されていること、すなわち、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の両方がONであるが条件とされる。言い換えれば、注入制御ユニット101は、プレッサ131を前進させるためのピストン駆動機構130の動作時および動作中に閉止検出センサ111およびピストン検出センサ112の少なくとも一方がOFFである場合は、プレッサ131を前進させるピストン駆動機構130の動作を禁止する(動作中の場合は、ピストン駆動機構130の動作を停止する)。このことは、注入プロトコルに従ったプレッサ131の前進動作だけでなく、操作ボタン群103aのボタン操作による前進動作およびマニュアルノブ103bの操作による前進動作の何れの場合も同様である。また、注入制御ユニット101は、ピストン駆動機構130の動作の禁止または停止とともに、動作が禁止または停止されたことを、例えば表示ユニット104へメッセージおよび/またはピクトグラムを表示させることによって操作者へ報知してもよい。
【0090】
ただし、シリンジ検出センサ112として第1の保持構造141に配置した光学センサを用いた場合、薬液(例えば造影剤)がシリンジ検出センサ112によって検出可能な領域の周辺に付着すると、第2の保持構造142が閉止位置のまま(閉止検出センサがONのまま)であってもシリンジ検出センサ112がONからOFFに変化することがある。しかし、実際には、第2の保持構造142が閉止位置にある状態でシリンジアセンブリ200がクランパ140から外れること、すなわちシリンジ検出センサ112がONからOFFに変化することは考えにくい。そこで、プレッサ131の前進動作中、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111がONである場合、シリンジ検出センサ112がONからOFFに変化しても、プレッサ131の前進のためのピストン駆動機構130の動作を許可することが好ましい。このことは、薬液の注入動作中においても同様であり、その場合はピストン駆動機構130の動作を続行させることが好ましい。また、注入制御ユニット101は、ピストン駆動機構130の動作の許可または続行とともに、動作が許可または続行されたことを、例えば表示ユニット104へメッセージおよび/またはピクトグラムを表示させることによって操作者へ報知してもよい。
【0091】
(4)プレッサの後退動作
注入制御ユニット101は、注入ヘッド100aのボタン群103aの操作およびマニュアルノブ103bの操作に応じて、プレッサ131が後退するようにピストン駆動機構130を制御することができる。プレッサ131の後退動作は、薬液の注入動作とは無関係であり、また、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに装着された状態で行なわれることが多いことから、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111の検出結果およびシリンジ検出センサ112の検出結果によらず、プレッサ131を後退させるピストン駆動機構130の動作を許可することができる。
【0092】
ただし、例えば図3に示した構造のクランパ140の場合、第2の保持構造142の位置によってはプレッサ131が後退したときに第2保持構造142と衝突してしまうことが考えられる。クランパ140がこのような構成を有している場合、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111がOFFのときにはプレッサ131を後退させるピストン駆動機構130の動作を許可せず、操作者に対して第2の保持構造142が閉止位置にないことを報知することが好ましい。第2の保持構造142が閉止位置にないことの操作者への報知は、例えば、表示ユニット104へのメッセージおよび/またはピクトグラムの表示であってよい。
【0093】
また、シリンジ検出センサ112として第1の保持構造141に配置した光学センサを用いた場合は、プレッサ131の前進動作と同様、プレッサ131の後退動作中にシリンジ検出センサ112がONからOFFに変化しても、閉止検出センサ111がONである限り、プレッサ131の前進のためのピストン駆動機構130の動作を許可することが好ましい。
【0094】
(5)プレッサの自動前進動作
薬液注入装置100は、薬液が充填されていない空のシリンジアセンブリ200に対して薬液を充填する機能を有することができる。シリンジアセンブリ200への薬液の充填は、シリンジアセンブリ200よりも大容量の薬液バッグおよび薬液ボトルなどの大容量容器から行なうことができる。この場合、空のシリンジアセンブリ200を注入ヘッド101aに装着した後、シリンジアセンブリ200と大容量容器とをチューブで接続し、この状態で、プレッサ131を後退させることによってシリンジアセンブリ200内に薬液を充填することができる。ただし、シリンジアセンブリ200がロッドレスタイプのシリンジ220を有する場合、ピストン222が最後端位置にないと、シリンジアセンブリ200を注入ヘッド100aに装着したときにプレッサ131をピストン222に係合させることができない。
【0095】
よって、シリンジアセンブリ200に薬液を充填する際は、まず、ピストン222が最後端に位置する状態でシリンジアセンブリ200を注入ヘッド100aに装着する。次いで、プレッサ131によって、ピストン222がシリンジアセンブリ200の先端に向かって押し込まれてシリンダ221の内部の最前端まで移動させ、シリンジ220内のエアを押し出す。この段階では、注入針またはカテーテルまでの経路は遮断されており、シリンジ220と被験者との血管とは流体連結されていない。その後、シリンジアセンブリ200と大容量容器とを接続し、プレッサ131によってピストン222を後退させる。
【0096】
以上の一連の動作のうち、ピストン222を最後端から最前端まで移動させるためのプレッサ131の前進動作は自動で行うことができる。この場合は、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに正しく装着されている必要がある。そこで、閉止検出センサ11およびシリンジ検出センサ112の検出結果に基づいて、シリンジアセンブリ200が正しく装着されたと判断されたときにプレッサ131の自動前進を行なうことが好ましい。シリンジアセンブリ200が正しく装着されたかどうかの判断およびプレッサ131の前進動作の制御は、注入制御ユニット101によって行うことができる。注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112がONになるとシリンジアセンブリ200が正しく装着されたと判断し、プレッサ131がピストン222を最前端まで移動させるようピストン駆動機構130の動作を制御する。
【0097】
閉止検出センサ111の検出結果およびシリンジ検出センサ112の検出結果に基づいた、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに正しく装着されたかどうかの判断には、シリンジアセンブリ200を注入ヘッド100aに装着するときに閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112がどの順番でOFFからONに変化するかを考慮することができる。
【0098】
閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の配置、およびこれらのセンサの検出精度等に応じて、各センサがOFFからONに変化する順番のパターンとしては、以下のパターンが考えられる。
【0099】
(i)シリンジ検出センサON→閉止検出センサON
例えば、シリンジアセンブリ200を載せた第2の保持構造142を閉止位置に移動させることで、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112がOFFからONに変化する構造において、シリンジ検出センサ112の検出可能範囲が閉止検出センサ111の検出可能範囲より大きい場合は、シリンジアセンブリ200を装着すると、シリンジ検出センサ112がOFFからONに変化した後、閉止検出センサ111がOFFからONに変化する。また、開放位置にある第2の保持構造142にシリンジアセンブリ200を載置することによってシリンジ検出センサ112がシリンジアセンブリ200を検出するようにシリンジ検出センサ112が配置されている場合も同様である。
【0100】
(ii)閉止検出センサON→シリンジ検出センサON
閉止検出センサ111の検出可能範囲とシリンジ検出センサ112の検出可能範囲がパターン(i)と逆の場合は、シリンジアセンブリ200を装着すると、閉止検出センサ111がOFFからONに変化した後、シリンジ検出センサ112がOFFからONに変化する。
【0101】
(iii)センサがONになる順番は問わない
パターン(i)およびパターン(ii)以外の場合は、閉止検出センサ111がOFFからONに変化した後にシリンジ検出センサ112がOFFからONに変化することもあるし、シリンジ検出センサ112がOFFからONに変化した後に閉止検出センサ111がOFFからONに変化することもある。このような場合は、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112がOFFからONになる順番にかかわらず、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112がOFFからONに変化することが、プレッサ131の自動前進の条件とされる。
【0102】
注入ヘッド100aは、プレッサ131が最後端に位置することを検出するリミットセンサ113(図1参照)をさらに有することができる。注入ヘッド100aが後端リミットセンサ113を有する場合、注入制御ユニット101は、リミットセンサ113がONであることを確認した後、前述した、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに正しく装着されたかどうかの判断を行なうことが好ましい。
【0103】
シリンジアセンブリ200を装着した後、何らかの理由でシリンジアセンブリ200を取り外す必要が生じることがある。このような場合のために、シリンジアセンブリ200の装着が検出される(閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の両方がONになる)と直ちに自動前進が開始されるのではなく、シリンジアセンブリ200の装着が検出されて予め決められた時間(例えば2秒)が経過した後、自動前進が開始されるようにすることが好ましい。この場合、シリンジアセンブリ200の装着が検出された後、予め決められた時間が経過する前に第2の保持機構142を開く(閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の少なくとも一方がOFFになる)と、自動前進はキャンセルされる。上記の予め決められた時間の間、注入制御ユニット101は、自動前進がキャンセル可能であることを、例えば表示ユニット104へメッセージおよび/またはピクトグラムを表示させること、発音器によって音を発生させること、またはこれらの組み合わせによって操作者に報知してもよい。この場合、上記のキャンセル操作が受け付けられると、表示ユニット104への表示および/または発音器による音は停止される。自動前進の開始は、注入ヘッド101aの操作ボタン群103aを含む入力ユニット103への入力操作がなされていないことを条件としてさらに含んでいてもよい。
【0104】
シリンジアセンブリ200への薬液の充填は、注入ヘッド100aの先端側を上に向けて行われる。シリンジアセンブリ200への薬液の充填後、薬液の充填によってシリンジアセンブリ200内に導入された気泡を除去するいわゆるエア抜きをするために、操作者がシリンジアセンブリ200の後端部を軽く叩くことが多い。このとき、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112が誤動作し、注入制御ユニット101が、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに装着されたと判断することがある。この判断によって、シリンジアセンブリ200内に薬液が充填されているのにもかかわらず、プレッサ131が自動前進してしまう。
【0105】
このことを防止するためには、注入制御ユニット101は、プレッサ131が自動前進した後は、薬液の注入が実施されるまで再度の自動前進を行なわないようにすることが好ましい。薬液が注入されたことは、プレッサ131を自動前進した後に、プレッサ131が(後退動作を経て)前進したことによって判断することができる。ただし、上述したエア抜きはプレッサ131の前進を伴うので、エア抜きと薬液の注入とを区別する必要がある。そこで、注入制御ユニット101は、プレッサ131の前進動作時間が、エア抜きのためのプレッサ131の動作時間を超えた場合に、そのプレッサ131の動作は、薬液の注入のための動作であると判断する。通常、エア抜きのためのプレッサの動作時間は0.5秒未満であるので、例えば、プレッサ131が0.5秒以上前進した場合は、薬液の注入動作が行なわれたと判断することができる。その後、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112が前述した所定の順番でOFFからONに変化すると、注入制御ユニット101はプレッサ131の自動前進を開始することができる。
【0106】
また、プレッサ131の自動前進の動作中にシリンジ検出センサ112がONからOFFに変化することがある。この場合は、シリンジアセンブリ200に薬液がかかるなどの不具合によってシリンジ検出センサ112がシリンジアセンブリ200を検出できなくなったことなどが考えられる。よって、プレッサ131の自動前進の動作中にシリンジ検出センサ112がONからOFFに変化した場合、注入制御ユニット101は、プレッサ131の自動前進動作を停止させるようピストン駆動機構130の動作を制御することが好ましい。また、自動前進の動作中に上記以外の閉止検出センサ111および閉止検出センサ112のON/OFFの変化があった場合、および注入ヘッド100aの操作ボタン群103aを含む入力ユニット103にプレッサ131の前進動作の「加速」または「減速」のための操作を除く操作が行われた場合に、注入制御ユニット101は、自動前進動作を停止させるようピストン駆動機構130の動作を制御してもよい。さらに、注入制御ユニット101は、ピストン駆動機構130の動作の停止とともに、動作が停止されたことを、例えば表示ユニット104へメッセージおよび/またはピクトグラムを表示させることによって操作者へ報知してもよい。
【0107】
(6)積算量のリセット
注入制御ユニット101は、プレッサ131の前進距離に基づいて、注入した薬液の積算量をシリンジアセンブリ200ごとにカウントし、カウントした積算量を注入制御ユニット101内のメモリに記憶することができる。積算量は、シリンジアセンブリ200が交換されると自動的にリセットされることが好ましい。そこで、注入制御ユニット101は、シリンジ検出センサ112がOFFからONに変化する(すなわち、シリンジアセンブリ200が装着される)とメモリ内の積算量をリセットするようにすることができる。または、注入ヘッド100aが後端リミットセンサ113を有する場合、注入制御ユニット101は、リミットセンサ113がONであり(すなわちプレッサ131が最後端に位置する)、かつ、閉止検出センサ11がOFFからONに変化すると、メモリ内の積算量をリセットするようにすることもできる。
【0108】
(7)各センサによる検出の順番の考慮
シリンジアセンブリ200を第2の保持構造142に載せた後、第2の保持構造142を移動させるという、シリンジアセンブリ100を注入ヘッド100aに装着する一連の動作において、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112の配置や種類などによっては、決められた手順でシリンジアセンブリ200を装着したとき、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112による検出の順番が定まることが多い。このようにセンサによる検出の順番が定まっている場合、決められた手順でシリンジアセンブリ200が装着される限り、先に検出すべきセンサがONになる前に、後に検出すべきセンサがONになることは起こり得ない。
【0109】
そこで、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111およびシリンジ検出センサ112のうち先に検出すべきセンサがONにならなければ、後に検出すべきセンサの検出結果は無視する、あるいは、先に検出すべきセンサがONに変化したことをトリガとして、後に検出すべきセンサの検出結果を見るようにすることが好ましい。例えば、シリンジアセンブリ200を装着すると、閉止検出センサが先にONになり、次にシリンジ検出センサ112がONになる場合、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111がONにならなければ(第2の保持構造142が閉止位置へ移動しなければ)、シリンジ検出センサ112の検出結果は無視するようにすることができる。あるいは、注入制御ユニット101は、閉止検出センサ111がONになったことをトリガとして、シリンジ検出センサ112の検出結果を見るようにすることができる。
【0110】
(RFIDシステム)
図11に、薬液注入装置を備えたシステムの他の形態のブロック図を示す。図11に示すシステムは、RFIDシステムを有する点が図1に示したシステムと異なっており、図1に示した薬液注入装置100およびシリンジアセンブリ200と置き換えて用いられることができる。また、薬液注入装置100の機械的な構成、例えば、注入ヘッド100aのクランパ等についてはこれまで説明した構成と同様であってよい。したがって、以下では、機械的な説明は省略し、主としてRFIDシステムについて説明する。
【0111】
図11に示すように、RFIDシステムは、RFIDタグ223を有するシリンジアセンブリ200と、RFIDタグ223に記録されたデータを読み出すRFIDモジュール166を有する。
【0112】
RFIDタグ223は、マイクロチップで構成することができるデータキャリアの一種である。したがって、RFIDタグ223は、シリンジアセンブリ200の任意の位置に取り付けることができる。RFIDタグ223のシリンジアセンブリ200への取り付けには、例えば、シリンジアセンブリ200を構成する部材の表面への粘着シートによる貼付、あるいはシリンジアセンブリ200を構成する部材への埋め込みなど、任意の手段を用いることができる。
【0113】
また、例えば、図2に示したように、シリンジアセンブリ200がシリンジ220と保護カバー270とを有する場合、RFIDタグ223は、シリンジ220および保護カバー270のいずれに取り付けられてもよい。ただし、RFIDタグ223が保護カバー270に取り付けられる場合は、保護カバー270とシリンジ220とを一括して管理する必要があるので、管理のし易さの観点からは、RFIDタグ223はシリンジ220に取り付けられることが好ましい。一方、データの読み出しのための良好な通信距離の確保し易さの観点からは、RFIDタグ223は保護カバー270に取り付けられることが好ましい。シリンジ220は、薬液が充填された状態で製剤メーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。
【0114】
RFIDモジュール166は、RFID制御回路164およびアンテナ165を有しており、RFIDタグ223に記録されたデータを、アンテナ165を介して読み出し、読み出したデータを注入制御ユニット101に伝送する機能(リーダ機能)を有するように構成される。また、RFIDモジュール166は、注入制御ユニット101から伝送されたデータを、アンテナ165を介してRFIDタグ223に記録する機能(ライタ機能)をさらに有することもできる。RFID制御回路164は、RFIDモジュール166におけるデータの送受信動作を制御する。
【0115】
RFIDタグ223に記録されるデータとしては、シリンジ220に充填されている薬液に関する各種データ、例えば、製造メーカー、薬液の種類、品番、含有成分(特に、薬液が造影剤の場合はヨード含有濃度など)、充填量、ロット番号、消費期限などの他に、シリンジ220に関する各種データ、例えば、製造メーカー、品番、固有識別番号、許容圧力値、容量、ピストンストローク、必要な各部の寸法、ロット番号などが挙げられる。これらのデータの少なくとも一部は、医用画像撮像装置500(図1参照)へ伝送することができる。
【0116】
RFIDモジュール166は、薬液注入装置100に組み込まれてもよいし、薬液注入装置100とは別個に構成されて薬液注入装置100とデータ送受信可能に接続されたハンディタイプのモジュールであってもよい。
【0117】
RFIDモジュール166が薬液注入装置100に組み込まれる場合、RFID制御回路164は、薬液注入装置100の任意の位置に設置することができる。図10では、RFID制御回路164は注入ヘッド100aに設置されているように示されているが、RFID制御回路164はコンソール100bに設置されてもよい。アンテナ165も薬液注入装置100の任意の位置に配置することができるが、アンテナ165は、注入ヘッド100aの、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド100aに装着された状態でRFIDタグ223と対向する位置に設置されることが好ましい。これにより、注入ヘッド100aへのシリンジアセンブリ200の装着が完了した時点で、RFIDタグ223に記録されたデータを読み出せる状態となる。
【0118】
なお、図11に示した形態では、2本のシリンジアセンブリ200のうち一方のみがRFIDタグ223を有しているが、注入ヘッド100aに装着される全てのシリンジアセンブリ200がRFIDタグ223を有していてもよい。この場合、RFIDモジュール166は、必要に応じて、注入ヘッド100aに装着されるシリンジアセンブリ200の数と同じ数のアンテナ165を有することができる。
【0119】
また、ここではデータキャリアがRFIDタグ223である場合について説明したが、上記の説明は、RFID技術を用いたデータ読み出しシステムに限らず、シリンジアセンブリ200についての各種データをシリンジアセンブリ200から読み出し得る他のデータ読み出しシステムを適用することも可能である。
【0120】
(薬液容器アセンブリの他の形態)
上述した実施形態では、薬液容器アセンブリとして、シリンジ220と保護カバー270とを有するシリンジアセンブリ200を例示した。しかし、保護カバー270が不要な場合は、シリンジアセンブリ200はシリンジ220のみで構成されてもよい。また、薬液容器アセンブリは、シリンジ以外の形態、例えば薬液バッグの形態であってもよい。薬液バッグは、柔軟な袋と、袋内に充填されている薬液を袋の外部へ排出するために袋に取り付けられた導出具とを有することができる。
【0121】
薬液注入装置の、薬液容器アセンブリから薬液を排出させるための駆動機構としては、薬液容器アセンブリの形態に応じた適宜駆動機構を用いることができる。例えば、薬液容器アセンブリが薬液バッグである場合、薬液バッグから薬液を排出させる駆動機構としてチューブ式ポンプなどを用いることができる。
【0122】
[付記]
以上、本発明について詳細に説明したが、本明細書は、以下の付記に記載された発明を開示する。ただし、本明細書の開示事項は以下の付記に限定されない。
【0123】
(付記1)
薬液容器アセンブリを着脱自在に保持するクランパであって、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第1受け部を有する第1の保持構造と、
前記薬液容器アセンブリの外周方向の一部を受ける第2受け部を有し、前記第1の保持構造と協働して前記薬液容器アセンブリを保持する第2の保持構造と、
を有し、
前記第2の保持構造は、前記第1の保持構造に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に、かつ、前記開放位置で前記第2受け部が前記薬液容器アセンブリの一部を受けることができるように支持されているクランパ。
【0124】
(付記2)
前記第1受け部および前記第2受け部は、前記開放位置では前記第1受け部および前記第2受け部のそれぞれが前記薬液容器アセンブリをその軸方向には移動不能であるが半径方向には移動可能に受け、前記閉止位置では、前記第1受け部と前記第2受け部とが協働して前記薬液容器アセンブリを前記軸方向にも前記半径方向にも移動不能に保持するように構成されている付記1に記載のクランパ。
【0125】
(付記3)
前記第1受け部および前記第2受け部は、前記薬液容器アセンブリの外周面に形成されたフランジを受ける凹部として形成されている付記2に記載のクランパ。
【0126】
(付記4)
前記第2の保持構造が前記閉止位置から前記開放位置へ向かって移動することによって、前記薬液容器アセンブリが前記第1受け部から解放されるように構成されている付記1から3のいずれかに記載のクランパ。
【0127】
(付記5)
前記第2の保持構造は、前記薬液容器アセンブリの外周に沿った長さを有しており、前記閉止位置で前記第2受け部の一部が第1受け部の中に位置するように、前記長さの中間部で回動支持されている付記4に記載のクランパ。
【0128】
(付記6)
前記第2の保持構造は、前記開放位置にあるとき、前記第1受け部への前記薬液容器アセンブリの受け入れを遮る位置に存在する付記1から5のいずれかに記載のクランパ。
【0129】
(付記7)
前記第2の保持構造が前記閉止位置から前記開放位置へ向かって移動することによって前記薬液容器アセンブリを前記第1受け部から解放させる開放機構を有する付記4に記載のクランパ。
【0130】
(付記8)
前記開放機構は、前記第1受け部に配置された少なくとも1つのスプリングプランジャである付記7に記載のクランパ。
【0131】
(付記9)
前記第2の保持構造は、前記薬液容器アセンブリを磁気的に吸着する吸着構造を有する付記1から8のいずれかに記載のクランパ。
【0132】
(付記10)
付記1から9のいずれかに記載のクランパと、
前記クランパに保持された薬液容器アセンブリに収容された薬液を前記薬液容器アセンブリから排出するための駆動機構と、
を有する薬液注入装置。
【0133】
(付記11)
データを記録したデータキャリアを有する前記薬液容器アセンブリから前記データを読み出す読み出しシステムをさらに有する付記10に記載の薬液注入装置。
【0134】
(付記12)
付記10または11に記載の薬液注入装置と、
薬液を収容する薬液容器アセンブリと、
を有するシステム。
【0135】
(付記13)
前記薬液容器アセンブリは薬液シリンジを含む付記12に記載のシステム。
【0136】
(付記14)
前記薬液シリンジは、プレフィルドタイプの薬液シリンジである付記13に記載のシステム。
【符号の説明】
【0137】
100 薬液注入装置
100a 注入ヘッド
101 注入制御ユニット
111 閉止検出センサ
112 シリンジ検出センサ
113 後端リミットセンサ
120 シリンジアセンブリ受け
130 ピストン駆動機構
131 プレッサ
140 クランパ
141 第1の保持構造
141a フランジ受け部
142 第2の保持構造
142a フランジ受け部
143 保持フック
144 操作レバー
145 スプリングプランジャ
150aセンターシャフト
150b クランパシャフト
164 RFID制御回路
165 アンテナ
166 RFIDモジュール
200 シリンジアセンブリ
220 シリンジ
223 RFIDタグ
270 保護カバー
271 カバーフランジ
500 医用画像撮像装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保持構造と、前記第1の保持構造に対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に前記第1の保持構造に支持される第2の保持構造と、を有するクランパに保持される薬液容器アセンブリであって、
前記開放位置で前記第2の保持構造に受け入れられ、この状態で前記第2の保持構造が前記閉止位置へ移動すると前記第2の保持構造と一緒に移動し、これによって前記クランパに保持されるように構成されている薬液容器アセンブリ。
【請求項2】
前記第2の保持構造に受け入れられるフランジを有する、請求項1に記載の薬液容器アセンブリ。
【請求項3】
シリンジを有する、請求項1または2に記載の薬液容器アセンブリ。
【請求項4】
シリンジが挿入される保護カバーを有する、請求項1または2に記載の薬液容器アセンブリ。
【請求項5】
前記第2の保持構造は第1の磁気吸着部材を有し、
前記保護カバーは、前記第2の保持構造に受け入れられたときに前記第1の磁気吸着部材に磁気的に吸着される第2の磁気吸着部材を有する、請求項4に記載の薬液容器アセンブリ。
【請求項6】
前記保護カバーは、前記保護カバーへの前記シリンジの保持および解除のためのリリースボタンを有する、請求項4または5に記載の薬液容器アセンブリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
次に、ユーザは、シリンジアセンブリ200が受け入れられた第2の保持構造142を閉止位置へ移動させる(図6A図6B)。第2の保持構造142を閉止位置へ移動させることで、シリンジアセンブリ200は第2の保持構造142と一緒に移動(回動)し、シリンジアセンブリ受け120に受け入れられ、これによってシリンジアセンブリ200は、シリンジ載置部に載せられた定位置に装着される。それと同時に、シリンジアセンブリ200は、そのカバーフランジ271が第1の保持構造141および第2の保持構造142によって保持される。