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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091731
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】中空構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20240628BHJP
   B29C 53/04 20060101ALI20240628BHJP
   B32B 3/20 20060101ALI20240628BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20240628BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B29C65/20
B29C53/04
B32B3/20
B32B3/10
B32B37/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063999
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2022074597の分割
【原出願日】2018-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 晋吾
(57)【要約】
【課題】曲げ強度に優れた中空構造体を提供する。
【解決手段】合成樹脂製の1枚のシートから所定の凹凸形状を有するように成形されたシート材が折り畳み成形されてなり、内部に複数のセルSが並設された中空構造体10であって、厚み方向に立設されて前記セルSを区画する側壁部23の一部は、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを備えた2層構造をなし、前記第1側壁部23a及び前記第2側壁部23bは、厚み方向の中間部に形成された接合部23cを介して互いに接合されており、前記接合部23cは、接着又は溶着によって形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に立設され、第1側壁部と第2側壁部を備える2層構造の側壁部により、内部に複数のセルが区画された中空構造体の製造方法であって、
所定の凹凸形状を有するシート材を、合成樹脂製の1枚のシートから成形する成形工程と、
前記シート材を折り畳むことにより、前記第1側壁部及び前記第2側壁部が当接された2層構造の側壁部を形成する折り畳み工程と、
前記2層構造の側壁部において、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を接合する接合工程を備え、
前記成形工程、前記折り畳み工程、及び前記接合工程は、一つの装置で一連の流れで行い、
前記接合工程は、先端に複数の平板状の加熱板が並設された加熱治具を使用して、前記加熱板で前記2層構造の前記側壁部を挟んだ状態で加熱して行う中空構造体の製造方法。
【請求項2】
厚み方向に立設され、第1側壁部と第2側壁部を備える2層構造の側壁部により、内部に複数のセルが区画された中空構造体の製造方法であって、
所定の凹凸形状を有するシート材を、合成樹脂製の1枚のシートから成形する成形工程と、
前記シート材に接合部を形成する接合部形成工程と、
前記シート材を折り畳むことにより、前記第1側壁部及び前記第2側壁部が当接された2層構造の側壁部を形成する折り畳み工程と、
前記2層構造の側壁部において、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を接合する接合工程を備え、
前記接合部形成工程は、前記シート材に低融点フィルムを供給して前記接合部を形成し、
前記折り畳み工程では、前記低融点フィルムを熱溶融させて前記シート材を折り畳み、
前記接合工程では、前記低融点フィルムの熱溶着により、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を前記接合部を介して互いに接合する中空構造体の製造方法。
【請求項3】
内部に複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の両面に接合された一対のスキン層を備えた熱可塑性樹脂製の中空構造体であって、
前記コア層は、前記セルを区画するハニカム構造の側壁部を備え、
前記側壁部は、上面及び下面を有する合成樹脂製の1枚のシート材により形成されている1層構造の前記側壁部と、前記シート材の上面同士又は下面同士が接合されている2層構造の前記側壁部とを備え、
前記2層構造の前記側壁部は、接合部を介して互いに接合されている面同士の一方である第1側壁部と、他方である第2側壁部とを備え、
前記接合部は、前記2層構造の前記側壁部における幅方向の中間部で前記コア層の厚み方向に延びるように形成されているとともに、前記側壁部の周辺部に形成されており、
前記接合部は、前記コア層とは別体に形成されるとともに、ホモポリマーポリプロピレン樹脂層及びランダムポリマーポリプロピレン樹脂層を含む多層構造である低融点フィルムからなる溶着層であり、
前記2層構造の前記側壁部の上端縁及び下端縁では、前記第1側壁部及び前記第2側壁部が熱溶着した部分と前記低融点フィルムからなる前記溶着層とが共存している中空構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空構造体は軽量でありながら適度な強度を備えているため、各種車両の構成部材や建材等に使用する場合がある。特許文献1には、中空構造体のハニカム構造に係る発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4408331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるハニカム構造は、合成樹脂製のシートを塑性変形させて凹凸形状を有するシート材を成形し、シート材を折り畳むことによって形成されている。折り畳まれて形成されたハニカム構造では、複数のセルを区画する側壁の一部が2層構造をなすとともに、複数のセルの上部及び下部を閉塞する閉塞壁も2層構造をなしている。特許文献1では、折り畳まれたシート材の形状を保持してハニカム構造の強度を高めるために、折り畳み工程を行う際の平面工具を加熱して、2層構造をなす閉塞壁を互いに熱溶着させている。
【0005】
ところで、板状に形成されたハニカム構造体では、中空の複数のセルが厚み方向と直交する方向に並設されているため、厚み方向に加わる曲げに対して十分な強度を保てない場合がある。特に、特許文献1に記載されるような2層構造の側壁部を有するハニカム構造では、2層構造の側壁部を起点とする折れが発生する場合があり、曲げ強度の面でなお改良の余地があるものである。
【0006】
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、その目的は、曲げ強度に優れた中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、合成樹脂製の1枚のシートから所定の凹凸形状を有するように成形されたシート材が折り畳み成形されてなり、内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、内部に複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の両面に接合された一対のスキン層を備え、前記コア層において厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部の一部は、第1側壁部及び第2側壁部を備えた2層構造をなし、前記第1側壁部及び前記第2側壁部は、幅方向の中間部で厚み方向に延びるように形成された接合部を介して互いに接合されており、前記接合部は、接着又は溶着によって形成されている。
【0008】
上記の構成によれば、セルを区画する2層構造の側壁部は、中空構造体の幅方向の中間部で厚み方向に延びるよう接合されている。そのため、厚み方向に曲げる力が加わった場合であっても、2層構造の側壁部を起点とする折れが生じにくい。曲げ強度に優れた中空構造体が得られる。なお、厚み方向の中間部とは、厚み方向の両端縁を除いた部分のことを言うものとする。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、厚み方向に立設され、第1側壁部と第2側壁部を備える2層構造の側壁部により、内部に複数のセルが区画された中空構造体の製造方法であって、所定の凹凸形状を有するシート材を、合成樹脂製の1枚のシートから成形する成形工程と、前記シート材に接合部を形成する接合部形成工程と、前記シート材を折り畳むことにより、前記第1側壁部及び前記第2側壁部が当接された2層構造の側壁部を形成する折り畳み工程と、前記2層構造の側壁部において、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を接合する接合工程を備え、前記接合部形成工程は、前記シート材に低融点フィルムを供給して前記接合部を形成し、前記折り畳み工程では、前記低融点フィルムを熱溶融させて前記シート材を折り畳み、前記接合工程では、前記低融点フィルムの熱溶着により、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を前記接合部を介して互いに接合する。
【0010】
上記の構成によれば、折り畳み工程でシート材を折り畳む際に、シート材に形成された接合部を介して第1側壁部及び前記第2側壁部の中間部が接合される。そのため、2層構造の側壁部における強度が向上し、曲げ強度に優れた中空構造体を製造することができる。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、厚み方向に立設され、第1側壁部と第2側壁部を備える2層構造の側壁部により、内部に複数のセルが区画された中空構造体の製造方法であって、所定の凹凸形状を有するシート材を、合成樹脂製の1枚のシートから成形する成形工程と、前記シート材を折り畳むことにより、前記第1側壁部及び前記第2側壁部が当接された2層構造の側壁部を形成する折り畳み工程と、前記2層構造の側壁部において、前記第1側壁部及び前記第2側壁部を接合する接合工程を備え、前記成形工程、前記折り畳み工程、及び前記接合工程は、一つの装置で一連の流れで行い、前記接合工程は、先端に複数の平板状の加熱板が並設された加熱治具を使用して、前記加熱板で前記2層構造の前記側壁部を挟んだ状態で加熱して行う。
【0012】
上記の構成によれば、折り畳み工程でシート材を折り畳む際に、2層構造の第1側壁部及び第2側壁部が当接される。また、折り畳み工程に続く接合工程では、加熱治具により2層構造の側壁部を加熱することにより、第1側壁部及び第2側壁部の中間部が互いに接合される。そのため、2層構造の側壁部における強度が向上し、曲げ強度に優れた中空構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、曲げ強度に優れた中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本実施形態の中空構造体の斜視図、(b)は(a)のβ‐β線断面図、(c)は(a)のγ‐γ線断面図。
図2】(a)はシート材の斜視図、(b)はシート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)はシート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
図3】製造装置の一例を示す模式図。
図4】接合部について説明する図。
図5】製造装置の一例を示す模式図。
図6】(a)は変更例のコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
図7】(a)~(f)は接合部の変更例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。まず、本実施形態の中空構造体10の構造について、図1に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の中空構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上面20aに接合されたスキン層30と、コア層20の下面20bに接合されたスキン層40を備えている。
【0016】
コア層20及びスキン層30、40は、従来周知の熱可塑性樹脂で構成されている。コア層20及びスキン層30、40を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。コア層20及びスキン層30、40は同じ材質の熱可塑性樹脂であることが好ましく、本実施形態ではポリプロピレン樹脂製とされている。
【0017】
図1(b)及び図1(c)に示すように、コア層20は、ポリプロピレン樹脂製のシートを所定形状に成形した1枚のシート材を折り畳んで形成されている。コア層20は、上壁部21と下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されて六角筒状の壁部を構成する側壁部23とから構成されている。上壁部21、下壁部22、及び側壁部23によって、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されている。
【0018】
コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1と第2セルS2とが存在する。図1(b)に示すように、第1セルS1は、その上端が上壁部21によって閉塞されるとともに、その下端は閉塞されることなく下方に開口している。つまり、第1セルS1では、コア層20の上面20aは、上壁部21で構成され、下面20bは側壁部23の下端縁で構成されている。
【0019】
一方、図1(c)に示すように、第2セルS2は、その下端が下壁部22によって閉塞されるとともに、その上端は閉塞されることなく上方に開口している。つまり、第2セルS2では、コア層20の下面20bは、下壁部22で構成され、上面20aは側壁部23の上端縁で構成されている。
【0020】
図1(a)に示すように、第1セルS1及び第2セルS2は、X方向において第1セルS1同士又は第2セルS2同士が隣接して列を形成するように配置されている。また、X方向に直交するY方向において、第1セルS1の列と第2セルS2の列とが交互に配置されている。
【0021】
図1(b)及び図1(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、上壁部21及び下壁部22に対して垂直に形成され、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを備える2層構造の側壁部23によって区画されている。一方、隣接する第1セルS1と第2セルS2の間は、上壁部21及び下壁部22に対して垂直に形成される1層構造の側壁部23によって区画されている。
【0022】
図1(b)及び図1(c)に示すように、第1側壁部23aと第2側壁部23bは、その上端縁及び下端縁で互いに熱溶着されている。また、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、上下方向の中間部において接合部23cを介して互いに接合されている。
【0023】
本実施形態の接合部23cは、接着層で構成されており、第1側壁部23aの全面及び第2側壁部23bの全面が接合部23c(接着層)を介して接合(接着)されている。そのため、第1側壁部23aと第2側壁部23bの上端縁及び下端縁は、接合部23cを介して接合されているとともに、熱可塑性樹脂が熱溶融して熱溶着された部分が共存している。
【0024】
接着層を構成する接着剤の材質は、従来周知のものであって特に限定されない。コア層20及びスキン層30、40がポリプロピレン樹脂で構成された本実施形態の中空構造体10では、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂で構成されたホットメルト系接着剤とされている。他のホットメルト系接着剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等で構成されたものが挙げられる。なお、接着剤とは、溶融状態のものが、熱、光、化学反応、湿気等によって硬化し、硬化することによって被着材同士を固定された状態とするものを言うものとする。
【0025】
スキン層30、40は、コア層20の上壁部21の上面及び下壁部22の下面にそれぞれ接合されている。具体的には、スキン層30は、コア層20の上面20aでは、第1セルS1の上壁部21及び第2セルS2の側壁部23の上端に接合されている。また、スキン層40は、コア層20の下面20bでは、第1セルS1の側壁部23の下端及び第2セルS2の下壁部22に接合されている。そのため、中空構造体10の上面は、第1セルS1では、コア層20の上壁部21とスキン層30からなる2層構造とされ、第2セルS2では、スキン層30のみの1層構造とされている。また、中空構造体10の下面は、第1セルS1では、スキン層40のみの1層構造とされ、第2セルS2では、コア層20の下壁部22とスキン層40からなる2層構造とされている。
【0026】
次に、本実施形態の中空構造体10の製造方法について、図2及び図3に基づいて説明する。
中空構造体10の製造方法は、成形工程、接合部形成工程、折り畳み工程、接合工程、及びスキン層接合工程を含む。成形工程は、熱可塑性樹脂製のシートからシート材100を成形する工程である。接合部形成工程は、シート材100に接着剤を塗布して接合部23c(接着層)を形成する工程である。折り畳み工程は、シート材100を折り畳むことによりコア層20を形成する工程である。接合工程は、2層構造の第1側壁部23a及び第2側壁部23bを、接合部23cを介して接合する工程である。スキン層接合工程は、コア層20の上下両面にスキン層30、40を接合して中空構造体10を形成する工程である。これら中空構造体10を製造するための各工程は、図3に示す装置Tによって一連の流れで行う。
【0027】
まず、図3に示す装置について説明する。図3は装置Tを模式図として示しており、左側が上流側、右側が下流側である。装置Tには、上流側から順に、熱可塑性樹脂製のシートが巻回されたシートロール61、成形工程のための真空成形用ドラム62、接合部形成工程のための搬送ロール63、折り畳み工程のための第1のコンベヤ64、接合工程のための第2のコンベヤ65、スキン層30、40の原材料となるシートが巻回されたシートロール66、67、及びスキン層接合工程のための第3のコンベヤ68が配置されている。
【0028】
図3に示すように、成形工程では、シートロール61に巻回された熱可塑性樹脂製のシートが真空成形用ドラム62に供給されて、シートに所定の凹凸形状が形成されたシート材100が成形される。真空成形用ドラム62は、回転駆動可能に軸支されるとともに所定温度に加熱可能に構成されている。真空成形用ドラム62の回転速度は、シートロール61の回転速度と等しくなるように設定されている。さらに、真空成形用ドラム62の外周部には、円筒状をなす成形金型が取り付けられており、成形金型に形成されている貫通孔を通じた真空引きが可能に構成されている(図示略)。成形金型の外周面には、その周方向に対してシート材100のX方向が沿うように、シート材100に成形される凹凸形状(以下で説明する第1膨出部110及び第2膨出部120)と同様の凹凸形状が形成されている。
【0029】
図2(a)に示すように、成形金型により成形されたシート材100には、帯状をなす第1膨出部110及び第2膨出部120がその幅方向(Y方向)に交互に配置されている。第1膨出部110は、上方へ突出する形状に形成され、第2膨出部120は、下方へ突出する形状に形成されている。第1膨出部110と第2膨出部120はX方向に延びるように交互に配置されている。シート材100を上面視した場合の第1膨出部110と、シート材100を下面視した場合の第2膨出部120は、同形状であってX方向に1/2ピッチずつずれた位置に形成されている。
【0030】
第1膨出部110は、上面110aと、一対の側面110bと、一対の端面110cからなり、Y方向断面形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなしている。一対の端面110cは、図2(a)に示す折り畳み線Pの位置に形成されている。端面110cと上面110aとのなす角度は約90゜である。
【0031】
一方、第2膨出部120は、下面120aと一対の側面120bと、一対の端面120cからなり、Y方向断面形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなしている。一対の端面120cは、図2(a)に示す折り畳み線Qの位置に形成されている。端面120cと下面120aとのなす角度は約90゜である。第2膨出部120のX方向の長さ、つまり、一対の端面120c間の長さは、第1膨出部110のX方向の長さ、つまり、一対の端面110c間の長さと同じである。第2膨出部120の端面120cは、第1膨出部110のX方向の中央に位置している。なお、第1膨出部110の側面110bと第2膨出部120の側面120bは説明の便宜上分けているが、同じ構成である。
【0032】
このように、成形工程では、シートの塑性を利用した真空成形法により、シートを部分的に上方に膨出させ、或いは下方へ膨出させて形成された第1膨出部110及び第2膨出部120を有するシート材100が得られる。
【0033】
図3に示すように、接合部形成工程では、シート材100が一対の搬送ロール63の間に搬送される。搬送ロール63の回転速度は、真空成形用ドラム62の回転速度と等しくなるように設定されている。また、搬送ロール63の表面には図示しないホットメルト系接着剤が溶融状態で順次供給されるように構成されている。これにより、一対の搬送ロール63の間を通過したシート材100の表面には、溶融状態の接着剤が塗布される。接着剤は、シート材100の上面においては、第1膨出部110の上面110a全体に薄膜状に塗布され、シート材100の下面においては、第2膨出部120の下面120a全体に薄膜状に塗布される。
【0034】
図3に示すように、折り畳み工程では、接着剤が塗布されて接着層が形成されたシート材100は、第1のコンベヤ64によって、その上下方向の移動を規制された状態で下流側へと搬送される。このとき、第1のコンベヤ64による搬送速度は、第1のコンベヤ64の上流側に配置されたシートロール61、真空成形用ドラム62、及び搬送ロール63の回転速度よりも遅くなるように設定されている。つまり、第1のコンベヤ64による搬送速度は、搬送ロール63を通過したシート材100の供給速度より遅くなるように設定されている。また、第1のコンベヤ64には、第1のコンベヤ64間の温度を所定温度に加熱するための加熱装置64aが設けられている。そのため、シート材100は、第1のコンベヤ64間を搬送されるに際して、加熱されつつ下流方向へ圧縮されながら折り畳まれ、コア層20が形成される。
【0035】
図2(b)及び図2(c)に示すように、第1のコンベヤ64の搬送速度が、その上流側の搬送ロール63の回転速度よりも遅くなるように設定されていることにより、シート材100は、折り畳み線P、Qに沿って順次折り畳まれることによりコア層20が形成される。具体的には、図2(b)に示すように、シート材100は、折り畳み線Pに沿って山折りされ、折り畳み線Qに沿って谷折りされる。図2(c)に示すように、一つの第1膨出部110では、X方向の中央部分に設けられた折り畳み線Qで谷折りされて、X方向右側の上面110aとX方向左側の上面110aが立設状態で当接する。折り畳まれた第1膨出部110では、立設状態で当接したX方向右側の上面110aとX方向左側の上面110aにより、コア層20の2層構造の側壁部23が形成され、側面110bにより、コア層20の1層構造の側壁部23が形成される。側壁部23の上端には、隣り合う第1膨出部110の端面110cからなる上壁部21が形成される。
【0036】
また、一つの第2膨出部120では、隣り合う折り畳み線QのX方向中央に設けられた折り畳み線Pで山折りされ、X方向右側の下面120aとX方向左側の下面120aが立設状態で当接する。折り畳まれた第2膨出部120では、立設状態で当接したX方向右側の下面120aとX方向左側の下面120aにより、コア層20の2層構造の側壁部23が形成され、側面120bにより、コア層の20の1層構造の側壁部23が形成される。側壁部23の下端には、隣り合う第2膨出部120の端面120cからなる下壁部22が形成される。
【0037】
接合部形成工程では、搬送ロール63により溶融状態の接着剤が塗布され、折り畳み工程では、第1のコンベヤ64は加熱装置64aにより加熱されている。そのため、折り畳まれて形成されたコア層20は、第1のコンベヤ64を通過する時点では、接着層の接着剤は溶融された状態となっている。また、第1のコンベヤ64の加熱装置64aによって加熱されるコア層20は、第1のコンベヤ64によって押圧される。そのため、2層構造の側壁部23の上端縁及び下端縁は熱溶着された状態となる。
【0038】
図3に示すように、折り畳み工程により得られたコア層20は、第2のコンベヤ65に向かって移動する。第2のコンベヤ65による搬送速度は第1のコンベヤ64による搬送速度と等しくなるように設定されている。そのため、折り畳まれたコア層20は、その形状を保持しながら第2のコンベヤ65を通過する。
【0039】
第2のコンベヤ65には、加熱装置が設けられていない。そのため、コア層20における2層構造の側壁部23に塗布された溶融状態の接着剤は冷却されて固化される。これにより、2層構造をなす第1側壁部23aと第2側壁部23bは、接着剤が冷却固化して形成された接合部23cを介して接合される(接合工程)。
【0040】
続いて、接合工程により得られたコア層20は、第3のコンベヤ68に向かって移動する。第3のコンベヤ68による搬送速度は第2のコンベヤ65による搬送速度と等しくなるように設定されている。また、第3のコンベヤ68にも加熱装置は設けられていない。第3のコンベヤ68の搬入口近傍には、スキン層30、40の原材料となる熱可塑性樹脂製のシートが巻回されたシートロール66、67がそれぞれ配置されている。シートロール66、67に巻回されたシートには図示しない接着剤が塗布されている。ここでの接着剤も、接合部23cを構成する接着層と同様、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂で構成されたホットメルト系接着剤であることが好ましい。
【0041】
第3のコンベヤ68の間を通過することにより、コア層20の上面20a及び下面20bには、シートロール66、67に巻回されたシートが順次供給される。この状態では、シートロール66、67からのシートに塗布された接着剤は溶融状態とされている。一方、第3のコンベヤ68には加熱装置が設けられていないため、コア層20の上面20a及び下面20bに供給されたシートは、塗布された接着剤が冷却固化されて接合される。これにより、コア層20の上面20a及び下面20bに、接着層を介してスキン層30、40が接合された中空構造体10が得られる。
【0042】
中空構造体10の作用について、図4に基づいて説明する。
本実施形態の中空構造体10の製造方法は、シート材100を折り畳む折り畳み工程の前に、シート材100に接着剤を塗布する接合部形成工程を備えている。接合部形成工程では、折り畳み工程で折り畳まれて形成されたコア層20における2層構造の側壁部23(第1側壁部23a及び第2側壁部23b)の当接部分全体にホットメルト系接着剤を塗布している。そのため、図4に示すように、シート材100を折り畳んで形成されたコア層20では、2層構造を構成する第1側壁部23a及び第2側壁部23bが接合部23cを介して強固に接合されている。中空構造体10の厚み方向に曲げる力が加わった場合に、2層構造の側壁部23を起点とする中空構造体10の折れの発生が抑制される。
【0043】
一方、第1側壁部23aと第2側壁部23bとが互いに接するのみで接合されていないと、中空構造体10の厚み方向に曲げる力が加わった場合に、2層構造の側壁部23を起点とする折れが発生しやすい。また、図4に点線で示すように、例えば、何らかの原因によりセルS内の内圧が高められたような場合には、第1側壁部23aと第2側壁部23bとがその内圧によって層間が押し広げられるように変形する場合がある。その状態で厚み方向に曲げる力が加わると、曲げに対する強度がさらに低下する。
【0044】
本実施形態の中空構造体10及びその製造方法によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の中空構造体10は、合成樹脂製の1枚のシートから形成されたシート材を折り畳み成形されてなり、内部には複数のセルSが並設されている。セルSを区画する側壁部23の一部は、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを備えた2層構造をなし、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、中空構造体10の厚み方向の中間部で、接着剤が冷却固化されてなる接合部23cにより接合されている。そのため、中空構造体10に対して厚み方向に曲げる力が加わった場合であっても、2層構造の側壁部23(第1側壁部23a及び第2側壁部23b)を起点とする中空構造体10の折れが生じにくい。曲げ強度に優れた中空構造体10が得られる。
【0045】
(2)本実施形態の中空構造体10では、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、その全面に接合部23cが形成されて接合されている。そのため、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの強度が向上するとともに、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを起点とする折れが生じにくい。曲げ強度に優れた中空構造体10が得られる。
【0046】
(3)本実施形態の中空構造体10では、コア層20に並設されたセルSが構成の異なる第1セルS1と第2セルS2からなる。第1セルS1は、その上端が上壁部21によって閉塞されているとともに、その下端は閉塞されることなく下方に開口しており、第2セルS2は、その下端が下壁部22によって閉塞されているとともに、その上端は閉塞されることなく上方に開口している。そのため、すべてのセルSの上端及び下端が閉塞されているコア層に比べて軽量である。曲げ強度に優れるだけでなく、軽量化された中空構造体10が得られる。また、中空構造体10を構成する熱可塑性樹脂量が少なく、コスト的にも有利である。
【0047】
(4)本実施形態の中空構造体10は、第1膨出部110及び第2膨出部120が形成されたシート材100に対して、第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aにホットメルト系接着剤を塗布する接合部形成工程を経て、シート材100を折り畳むことにより製造される。そのため、シート材100を折り畳んで冷却することにより、第1膨出部110及び第2膨出部120を接合部23cで接合することができる。第1膨出部110及び第2膨出部120を接合する作業を簡単に行うことができる。
【0048】
(5)第1膨出部110及び第2膨出部120の接合部23c、つまり、第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aの接着層の形成は、所定温度に加熱された搬送ロール63によりホットメルト系接着剤を塗布することで行っている。そのため、ホットメルト系接着剤を薄膜状に容易に塗布することができる。接合部23cの形成を容易に行える。
【0049】
(6)本実施形態の中空構造体10は、成形工程、接合部形成工程、折り畳み工程、接合工程、及びスキン層接合工程を経て製造され、各工程は、装置Tによる一連の流れで行っている。そのため、生産性、量産性に優れ、コスト的に有利に中空構造体10を製造することができる。
【0050】
(7)折り畳み工程を構成する第1のコンベヤ64による搬送速度は、第1のコンベヤ64の上流側に配置されたシートロール61、真空成形用ドラム62、及び搬送ロール63の回転速度よりも遅くなるように設定されている。つまり、第1のコンベヤ64による搬送速度は、搬送ロール63を通過したシート材100の供給速度より遅い。そのため、シート材100は、折り畳み線P、Qに沿って順次折り畳まれる。シート材100を移動させることによって折り畳み工程を容易に行うことができる。
【0051】
(8)折り畳み工程を構成する第1のコンベヤ64には、加熱装置64aが設けられている。そのため、ホットメルト系接着剤を溶融状態に保持しながらコア層20を折り畳むことができる。
【0052】
(9)折り畳まれたコア層20は、第2のコンベヤ65を通過しながら冷却されることにより接着層が冷却固化されて接合部23cが形成される。第2のコンベヤ65の間でコア層20の形状が保持されながら、2層構造の側壁部23が接合部23cを介して接合されることになる。2層構造の第1側壁部23a及び第2側壁部23bが位置ずれすることなく、強固に接合される。
【0053】
上記実施形態は、次のように変更できる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・ 上記実施形態では、接合部23cは接着層で構成されているが、これに限定されない。例えば、接着層に代えて低融点フィルムが溶着されてなる溶着層で構成されていてもよい。この場合、図3に示す装置Tにおいて、接着剤を塗布する搬送ロール63に代えて、低融点フィルムを供給するローラを配置すればよい。供給された低融点フィルムが熱溶融することにより、第1側壁部23a及び第2側壁部23bが熱溶着される。
【0054】
低融点フィルムは単層構造であっても多層構造であってもよく、その材質は特に限定されない。例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂からなる異素材樹脂の多層構造、ホモポリマーポリプロピレン樹脂やランダムポリマーポリプロピレン樹脂等の同素材の多層構造等が挙げられる。
【0055】
・ 第1側壁部23a及び第2側壁部23bが溶着により接合されている場合、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを構成する熱可塑性樹脂が熱溶着することにより接合されていてもよい。この場合、例えば、装置Tにおける搬送ロール63が所定温度に加熱されており、搬送ロール63を通過したシート材100における第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aでは、シート材100を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融された状態とされる。シート材100は、第1のコンベヤ64を通過する際、加熱装置64aにより加熱されて、熱可塑性樹脂が熱溶融した状態で折り畳まれてコア層20となる。コア層20は、第2のコンベヤ65を通過する際、熱溶融した熱可塑性樹脂が冷却固化されて接合部23cが形成される。つまり、接合部23cは、第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aにおいて熱溶融した熱可塑性樹脂が冷却固化されてなる部分(熱溶着部)で構成されることになる。
【0056】
接合部23cを熱溶着部で構成する場合、装置Tの搬送ロール63をなくし、第1のコンベヤ64における加熱装置64aの加熱温度を調整すればよい。例えば、加熱装置64aの加熱温度は、シート材100を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融する温度に近い温度に調整する。これにより、シート材100における第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aを構成する熱可塑性樹脂が部分的に熱溶融し、第2のコンベヤ65を通過する際には、第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aの熱溶融した熱可塑性樹脂が冷却固化されて接合部23cが形成される。
【0057】
・ 本実施形態では、2層構造の第1側壁部23a及び第2側壁部23bはその全面に対応するように形成された接合部23cによって接合されているが、接合部23cの範囲はこれに限定されない。例えば、図7(a)に示すように、接合部23cは、2層構造の側壁部23において上端縁及び下端縁を除いた側壁部23の一部に横方向に延びるように設けられていてもよい。その場合、接合部23cは、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの上下方向の中間部における中央寄りの位置であって、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの高さの少なくとも約1/2程度の位置に設けられていることが好ましく、少なくとも約2/3程度の位置に設けられていることがより好ましい。ここで、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの上下方向の中間部における中央寄りの位置のことを中央部と言うものとすると、接合部23cが中央部に設けられていることにより、中央部以外の中間部に設けられている場合に比べて、中空構造体10の曲げ強度が向上する。また、中央部のみに接合部23cが設けられていても中空構造体10に十分な曲げ強度を付与することができる。なお、図7に示す各図は、側壁部23を正面視した状態を示す。
【0058】
図7(b)に示すように、接合部23cは、2層構造の側壁部23において上端部及び下端部に横方向に延びるように設けられていてもよい。
また、図7(c)に示すように、2層構造の側壁部23の側端部に上下方向に延びるように設けられていてもよく、図7(d)に示すように、側壁部23の横方向中央部に上下方向に延びるように設けられていてもよい。図7(e)に示すように、2層構造の側壁部23の周辺部に設けられていてもよい。
【0059】
さらに、図7(f)に示すように、複数のドット状に設けられていてもよい。
これら図7(a)~図7(f)に示す変更例は、複数の変更例を適宜組み合わせることもできる。例えば、図7(e)に示す変更例と図7(f)に示す変更例を組み合わせてもよい。こうすると、接合部23cの面積が増えて、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの接合強度が向上し、中空構造体10の曲げ強後が向上する。
【0060】
こうした各変更例の接合部23cを形成するためには、接合部形成工程において接着剤を塗布する部分を適宜調整すればよい。例えば、ホットメルト系接着剤を供給する搬送ロール63に溝を形成する等すれば、第1膨出部110の上面110a及び第2膨出部120の下面120aに、ホットメルト系接着剤が塗布されない部分を形成することができる。また、搬送ロール63からホットメルト系接着剤を供給する態様ではなく、例えば、シート材100に直接接着剤を塗布したり、吹き付けたりすることもできる。
【0061】
・ コア層20では、折り畳み工程、スキン層接合工程での加熱により、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、その上端縁及び下端縁において熱溶着されて接合された状態となっている。接合部23cは、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの上端縁及び下端縁の熱溶着により接合された部分と重複した位置にまで設けられていてもよく、或いは、厚み方向の中間部で、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの上端縁及び下端縁の熱溶着により接合された部分とは離間した位置に設けられていてもよい。2層構造の側壁部23が、中空構造体10の厚み方向の中間部で少なくとも接合されて接合部23cが形成されていればよい。
【0062】
・ 上記実施形態の2層構造の側壁部23の上端縁及び下端縁では、折り畳み工程、スキン層接合工程での加熱により、接合部23cを介して接合(接着)された部分と、熱可塑性樹脂が熱溶融して熱溶着された部分が共存している。しかし、これに限定されず、上端縁及び下端縁は接合(接着)及び熱溶着されていなくてもよい。つまり、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの接合箇所は、接合部23cの部分のみであって、その上端縁及び下端縁では互いに接合されていなくてもよい。
【0063】
・ 上記実施形態では、折り畳み工程で第1のコンベヤ64が加熱装置64aによって折り畳まれたコア層20が加熱されることにより、2層構造の側壁部23の上端縁及び下端縁が熱溶着されている。しかし、加熱装置64aは省略してもよい。この場合、2層構造の側壁部23の上端縁及び下端縁は熱溶着されず、2層構造の側壁部23の中間部に接合部23cが形成されたコア層20が得られる。
【0064】
・ コア層20を形成するシート材100では、第1膨出部110の上面110aと端面110cのなす角度が約90゜であり、図2(a)では、上面110aは平坦面として形成されている。また、第2膨出部120の下面120aと端面120cのなす角度は約90゜であり、図2(a)では、下面120aは平坦面として形成されている。しかし、上面110a及び下面120aの形状はこうした平坦面に限定されない。例えば、上面110aが上方に湾曲する形状に膨出していてもよく、また、下面120aが下方に湾曲する形状に膨出していてもよい。例えば、上面110aがこうした形状であると、折り畳み工程の際に、接着剤が塗布された上面110aが、2層構造を形成した状態で互いに押され、上面110a全体が良好に当接しやすくなる。そのため、その後の接着剤の冷却硬化により、2層構造の第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、その全面で強固に接合されることになる。これは下面120a同士の接合についても同様である。
【0065】
・ 上記実施形態では、接合部23cは、接合部形成工程により搬送ロール63から接着剤を供給し、折り畳み工程後に第1側壁部23a及び第2側壁部23b間の接着剤を冷却固化させることにより形成した。接合部23cの形成はこの形態に限定されない。例えば、図5に示すように、2層構造の側壁部23を加熱治具71、72によって加熱し、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを構成する熱可塑性樹脂を熱溶融させることによって行ってもよい。図5に示す装置T1では、図3に示す装置Tにおける第2のコンベヤ65に代えて、加熱治具71、72が配置されている。また、搬送ロール63は、所定温度に加熱されてシート材100を加熱可能に構成されているものの、ホットメルト系接着剤を供給する構成とはされていない。そのため、第1のコンベヤ64を通過したコア層20には、2層構造の側壁部23の接合部23cは形成されていない。
【0066】
こうした装置T1での中空構造体10の製造方法は、合成樹脂製の1枚のシートからシート材100を成形する成形工程と、シート材100を折り畳むことにより、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを当接させて2層構造の側壁部23を有する中間体90を形成する折り畳み工程と、中間体90の2層構造の側壁部23において、第1側壁部23a及び第2側壁部23bの厚み方向の中間部を接合する接合工程を備える。接合工程では、加熱治具71、72によって2層構造の側壁部23を挟んだ状態で加熱し、接合部23cを形成して接合する。なお、ここで言う中間体90は、上記実施形態のコア層20と比較して、第1側壁部23aと第2側壁部23bとの間に接着層が介在していない点が相違しているものの、他の点においてはコア層20を同様の構成である。
【0067】
図5に示すように、加熱治具71、72は、装置T1上を移動してくるコア層20(中間体90)の上面20a側に配置された加熱治具71と、下面20b側に配置された加熱治具72を備えている。加熱治具71の先端には、複数の小さな加熱板71aが形成されており、それぞれの加熱板71aは、一対の平板状の加熱板が複数並設された形状とされている。一対の平板状の加熱板は、2層構造の側壁部23の厚み分離間して配置されている。加熱治具71は、装置T1上を移動してくるコア層20(中間体90)において、第2セルS2が並設された部分に対応する位置に、複数の小さな加熱板71aが配置されるように設けられている。図5に示すように、こうした構成の加熱治具71を下方移動させて、第1のコンベヤ64を通過したコア層20(中間体90)の上面20a側から第2セルS2内方へ移動させると、第2セルS2に形成された2層構造の側壁部23が、一対の加熱板71aで挟まれる。これにより、加熱治具71の加熱板71aからの熱により側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融する。このとき、加熱治具71は、装置T1上を所定速度で移動するコア層20に合わせて移動可能に設定されている。つまり、加熱治具71は、第1のコンベヤ64と等しい搬送速度となるように設定されている。加熱治具71により側壁部23を熱溶融された後、加熱治具71は上方移動する。
【0068】
同様に、加熱治具72の先端には、複数の小さな加熱板72aが形成されており、それぞれの加熱板72aは、一対の平板状の加熱板を備えている。一対の平板状の加熱板は、2層構造の側壁部23の厚み分離間して配置されている。加熱治具72は、装置T1上を移動してくるコア層20(中間体90)において、第1セルS1が並設された部分に対応する位置に、複数の小さな加熱板72aが配置されるように設けられている。図5に示すように、こうした構成の加熱治具72を上方移動させて、第1のコンベヤ64を通過したコア層20(中間体90)の下面20b側から第1セルS1内方へ移動させると、第1セルS1に形成された2層構造の側壁部23が、一対の加熱板72aで挟まれる。これにより、加熱治具72の加熱板72aからの熱により側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融する。このとき、加熱治具72は、装置T1上を所定速度で移動するコア層20(中間体90)に合わせて移動可能に設定されている。加熱治具72により側壁部23を熱溶融された後、加熱治具72は下方移動する。
【0069】
加熱治具71、72により側壁部23が熱溶融された状態のコア層20(中間体90)は、第4のコンベヤ69に向かって搬送される。第4のコンベヤ69には加熱装置が設けられていないため、熱溶融された側壁部23は冷却固化されて、第1側壁部23a及び第2側壁部23bには接合部23cが形成される。このように、接合工程として加熱治具71、72を用いた側壁部23の熱溶着によっても、接合部23cを形成して、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを接合させることができる。なお、図5では、わかりやすくするために、コア層20(中間体90)に比べて加熱治具71を大きく示している。
【0070】
・ 第1側壁部23a及び第2側壁部23bの接合方法としては、他にも超音波接合、振動接合、高周波接合等が挙げられる。この場合、中間体90の2層構造の側壁部23に対して、超音波処理、振動処理、高周波処理、レーザー処理の少なくともいずれかをすることにより、接合部23cを形成することができる。
【0071】
高周波処理の具体的方法としては、例えば、高周波誘導加熱処理(高周波ウェルダー処理)が挙げられる。高周波ウェルダー処理により、第1側壁部23a及び第2側壁部23bに含まれる高周波発熱性樹脂の分子を振動させ、その分子運動による発熱を利用して互いに溶着させることができる。また、高周波発熱性樹脂を含んだシート材から中間体90を形成したり、高周波発熱性樹脂を含んだフィルムをシート材に貼り付けて中間体90を形成したりして、高周波ウェルダー処理を施してもよい。或いは、金属片又は高周波発熱体を含んだシート材から中間体90を形成したり、金属片又は高周波発熱体を含んだフィルムをシート材に貼り付けて中間体90を形成したりして高周波ウェルダー処理を施すこともできる。
【0072】
レーザー処理の具体的方法としては、例えば、レーザー吸収率が高い吸収剤(黒色等)を含んだシート材から中間体90を形成したり、レーザー吸収率が高い吸収剤を含んだフィルムをシート材に貼り付けて中間体90を形成したりしてレーザー処理を施すことができる。
【0073】
・ コア層20は、シート材100を折り畳む折り畳み工程を経て形成されたものでなくてもよい。例えば、図6(a)に示すようなシート材200からコア層80を形成してもよい。
【0074】
図6(a)に示すように、シート材200は、帯状をなす平面領域210及び膨出領域220が、シート材200の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域220には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部221が膨出領域220の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部221の上面と側面とのなす角は90゜であることが好ましく、その結果として、第1膨出部221の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部221の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域210の幅と等しく、かつ第1膨出部221の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0075】
また、膨出領域220には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部222が、第1膨出部221に直交するように形成されている。第2膨出部222の膨出高さは第1膨出部221の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部222間の間隔は、第2膨出部222の上面の幅と等しくなっている。
【0076】
図6(a)及び図6(b)に示すように、上述のように構成されたシート材200を、折り畳み線P、Qに沿って折り畳むことでコア層80が形成される。具体的には、シート材200を、平面領域210と膨出領域220との折り畳み線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部221の上面と側面との折り畳み線Qにて山折りしてX方向に収縮する。そして、図6(b)及び図6(c)に示すように、第1膨出部221の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部222の端面と平面領域210とが折り重なることによって、一つの膨出領域220に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体230が形成される。こうした区画体230がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層80が形成される。
【0077】
上記のようにシート材200を折り畳み形成するとき、第1膨出部221の上面と側面とによってコア層80の上壁部81が形成されるとともに、第2膨出部222の端面と平面領域210とによってコア層80の下壁部82が形成される。
【0078】
また、第2膨出部222が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域がコア層80における第2セルS2´となるとともに、隣り合う一対の区画体230間に区画形成される六角柱形状の領域がコア層80における第1セルS1´となる。本実施形態では、第2膨出部222の上面及び側面が第2セルS2´の側壁部83を構成するとともに、第2膨出部222の側面と、膨出領域220における第2膨出部222間に位置する平面部分とが第1セルS1´の側壁部83を構成する。そして、第2膨出部222の上面同士の当接部位、及び膨出領域220における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部83となる。
【0079】
こうしたシート材200を用いて装置Tにより接着層を塗布する場合、シート材200における第2膨出部222の上面及び膨出領域220における平面部分の下面に接着層が塗布されるように装置Tを設定すればよい。
【0080】
・ 本実施形態の中空構造体10の製造方法では、成形工程、接合部形成工程、折り畳み工程、接合工程、及びスキン層接合工程を、装置Tによる一連の流れで行った。これに限定されず、一つの装置ではなく、複数の装置で行ってもよい。例えば、シート材100を成形する成形工程と折り畳み工程を別の装置で行ってもよく、折り畳み工程とスキン層接合工程を別の装置で行ってもよい。
【0081】
・ 本実施形態の中空構造体10の製造方法では、接合部形成工程において、搬送ロール63を用いてホットメルト系接着剤を塗布したが、これに限定されない。ホットメルト系接着剤以外の接着剤を、刷毛等でシート材100に塗布したり、スプレー装置等でシート材100に吹き付けたりしてもよい。
【0082】
・ 本実施形態の中空構造体10の製造方法における接合工程では、スキン層30、40は接着剤によってコア層20に接合されているが、コア層20に熱溶着されることによって接合されていてもよい。
【0083】
・ 本実施形態の中空構造体10では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状はこれに限定されない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角柱状や円柱状としてもよい。
【0084】
・ 中空構造体10に接合されているスキン層30、40は1層構造ではなく、少なくともいずれかが多層構造であってもよい。
・ スキン層30、40の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0085】
・ コア層20、及びスキン層30、40を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20、及びスキン層30、40のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20、及びスキン層30、40の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0086】
本実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)合成樹脂製の1枚のシートから所定の凹凸形状を有するように成形されたシート材が折り畳み成形されてなり、内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部の一部は、厚み方向の両端縁で接合された第1側壁部及び第2側壁部を備えた2層構造をなし、前記第1側壁部及び前記第2側壁部は、厚み方向の少なくとも中間部で接着又は溶着によって接合されている。
【符号の説明】
【0087】
10…中空構造体、20、80…コア層、23、83…側壁部、23a…第1側壁部、23b…第2側壁部、23c…接合部、30…スキン層、40…スキン層、90…中間体、100、200…シート材、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7