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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091832
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/12 20060101AFI20240628BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240628BHJP
   B05B 12/04 20060101ALI20240628BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20240628BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B05B12/12
B05B12/00 A
B05B12/04
B05B13/04
G01B21/20 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067914
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2020078287の分割
【原出願日】2020-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 達哉
(72)【発明者】
【氏名】柳田 建三
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で被測定物の三次元形状を良好に計測することができる塗装装置を提供する。
【解決手段】塗装装置10は、被塗物40を水平に搬送するコンベア12と、被塗物40に対して相対移動しながら被塗物40に塗料を噴出する塗装ガン13と、被塗物40の被塗面41までの距離を計測して被塗物40の三次元形状を特定する三次元形状特定手段21と、三次元形状特定手段21によって計測された距離に基づいて、被塗面41に塗料を塗着させる際の塗装条件を設定又は変更し、塗装ガン13の被塗物40に対する移動を制御する制御装置34とを備え、複数の三次元形状特定手段21が、被塗物40の高さ寸法に応じて直列に配置された三次元形状認識部20を構成している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を水平に搬送するコンベアと、
前記被測定物に対して相対移動しながら前記被測定物に塗料を噴出する塗装ガンと、
前記被測定物の被塗面までの距離を計測して前記被測定物の三次元形状を特定する三次元形状特定手段と、
前記三次元形状特定手段によって計測された前記距離に基づいて、前記被塗面に塗料を塗着させる際の塗装条件を設定又は変更し、前記塗装ガンの前記被測定物に対する移動を制御する制御装置と、
を備え、
複数の前記三次元形状特定手段が、前記被測定物の高さ寸法に応じて直列に配置された三次元形状認識部を構成しており、
前記制御装置は、複数の前記三次元形状特定手段が特定した前記被測定物に関する複数の形状データを合成し、前記被測定物の高さ方向全体の三次元形状データを生成し、
前記三次元形状認識部は、複数の前記三次元形状特定手段による前記被測定物の三次元形状データが重複して特定された区間において、前記被測定物との距離が小さい値を採用して三次元形状データを合成する塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ToFセンサと、複数のカメラとを用いた距離計測装置が開示されている。この距離計測装置は、ToFセンサによって得られた距離画像と、複数のカメラによって得られた距離画像とに基づいてToFセンサから被写体までの距離の出力値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この距離計測装置は、コンベアによって搬送される被塗物を移動可能な塗装ガンを用いて塗装する塗装装置に適用することが可能である。このようにすると、塗装ガンの動きを予め設定(ティーチング)せずに、搬送される被塗物の三次元形状に応じて塗装ガンを移動させる構成を実現することができる。しかし、特許文献1のものは、ToFセンサに加えて、複数のカメラが用いられており、構成が複雑である。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡単な構成で被測定物の三次元形状を良好に計測することができる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗装装置は、
被測定物を水平に搬送するコンベアと、
前記被測定物に対して相対移動しながら前記被測定物に塗料を噴出する塗装ガンと、
前記被測定物の被塗面までの距離を計測して前記被測定物の三次元形状を特定する三次元形状特定手段と、
前記三次元形状特定手段によって計測された前記距離に基づいて、前記被塗面に塗料を塗着させる際の塗装条件を設定又は変更し、前記塗装ガンの前記被測定物に対する移動を制御する制御装置と、
を備え、
複数の前記三次元形状特定手段が、前記被測定物の高さ寸法に応じて直列に配置された三次元形状認識部を構成している。
【発明の効果】
【0007】
この塗装装置は、複数の三次元形状特定手段が、被測定物の高さ寸法に応じて配置されているため、被測定物の高さ方向の三次元形状を良好に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本願発明の塗装装置及び三次元形状認識部を左方から見た側面図である。
図2図2は、塗装装置を下流側から見た側面図である。
図3図3は、三次元形状認識部を下流側から見た概略側面図であって、各三次元形状特定手段によって被測定物の被塗面を計測している状態を示す。
図4図4は、中央の三次元形状特定手段を下流側から見た概略側面図であって、中央の三次元形状特定手段が測定した距離のデータが数1の式を満たす領域を示す。
図5図5は、三次元形状特定手段から放射する検知光がなす対象範囲を示す概略平面図である。
図6図6は、三次元形状認識部、及び制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の制御装置は、複数の三次元形状特定手段が特定した被測定物に関する複数の形状データを合成し、被測定物の高さ方向全体の三次元形状データを生成しても良い。この構成によれば、被測定物の大きさに関わらず、被測定物の高さ方向全体の三次元形状を特定することができる。
【0010】
本発明の三次元形状特定手段は、レーザ光を利用した測長センサでも良い。この構成によれば、精度よく被測定物の三次元形状を計測することができる。
【0011】
本発明の三次元形状認識部は、複数の三次元形状特定手段による被測定物の三次元形状データが重複して特定された区間において、被測定物との距離が小さい値を採用して三次元形状データを合成しても良い。この構成によれば、重複して特定した区間において、より小さい値を採用して被測定物の最大の三次元形状データを合成することによって、移動する塗装ガンが被測定物にぶつかる機会を減らすことができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1から図6を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1における左方を前方、右方を後方と定義し、上下の方向については、図1にあらわれる向きをそのまま上方、下方と定義し、左右の方向については、図2から4にあらわれる向きをそのまま左方、右方と定義する。なお、塗装ガン13における移動方向については、レシプロケータ14のアーム14Aが上下方向に移動する方向に平行であり、且つコンベア12の左右方向の中心を通る基準線CCを基準にして、被塗物40に向けて塗装ガン13が接近する方向を前進方向Fと定義し、被塗物40から遠ざかる方向を後進方向Rと定義する(図4参照。)。
【0013】
本実施例1の塗装装置10は、図1、2、6に示すように、塗装ブース11と、コンベア12と、塗装ガン13と、レシプロケータ14と、三次元形状認識部20と、制御装置34とを備えている。塗装ブース11は、箱状をなしている。塗装ブース11は、左側部11Aと右側部11Bとが離隔して左右に並んでいる(図2参照。)。左側部11A、及び右側部11Bの各々は、コンベア12の左方と右方とに配置されている(図2参照。)。コンベア12は、塗装ブース11内において、被測定物である被塗物40を所定間隔を空けて吊り下げた状態で後方向(以下、搬送方向Trともいう)へ水平に搬送する。コンベア12が被塗物40を搬送する搬送速度は、例えば、0.1m/minから6m/minである。コンベア12に吊り下げられた被塗物40は、左側部11Aと右側部11Bとの間を搬送方向Trに通過する。
【0014】
塗装ガン13は、塗装ブース11外に設置されたレシプロケータ14のアーム14Aの先端部に取り付けられ、被塗物40の被塗面41に向けて塗料を噴出する。塗装ブース11の左側部11Aの左面には、上下方向に延びてスリット11Cが開口して形成されている(図2参照。)。レシプロケータ14のアーム14Aは、スリット11Cに挿通されている(図2参照。)。塗装ガン13は、塗装ブース11内に配置されている(図2参照。)。レシプロケータ14は、塗装ガン13を被塗物40の搬送方向Tr(図1参照)と交差する二次元方向(上下方向、及び前進方向F・後進方向R(図4参照))に移動させる。つまり、塗装ガン13は、被塗物40に対して相対移動しながら被塗物40に塗料を噴出するのである。
【0015】
三次元形状認識部20は、塗装ブース11におけるレシプロケータ14及び塗装ガン13よりも被塗物40の搬送方向Trにおける上流側に配されている(図1参照。)。三次元形状認識部20は、搬送される被塗物40の被塗面41の三次元形状を計測するものである。三次元形状認識部20は、複数の三次元形状特定手段21を備えている。
【0016】
各三次元形状特定手段21は、図6に示すように、モータ22と、モータ22によって回転駆動される投受光用ミラー23と、回転位置検出器24と、投光器25と、受光器26と、受光器26に接続された距離演算部27と、を備えている。各三次元形状特定手段21は、所謂、ToF(Time Of Flight)センサである。ToFセンサは、自身から発したレーザ光が対象物に照射され、対象物から反射した反射光が自身に戻るまでに要した時間に基づいて、自身と対象物との距離を計測することができる。つまり、三次元形状特定手段21は、レーザ光を利用した測長センサである。各三次元形状特定手段21の仕様は互いに同じである。各三次元形状特定手段21は、こうして被塗物40の被塗面41上の任意の点と自身との距離(すなわち、被塗面41までの距離)を計測することによって、被塗物40の三次元形状を特定する。
【0017】
モータ22の回転中心軸28は被塗物40の搬送方向Trと平行な方向を向いている(図1参照。)。尚、本実施例では、モータ22の回転中心軸28と三次元形状特定手段21の回転中心軸28を同義で用いる。モータ22の回転数は、例えば、2400rpmである。投受光用ミラー23は、モータ22の回転中心軸28に対して45°の角度で傾いている。回転位置検出器24は、投受光用ミラー23の回転中心軸28周りにおける周方向の位置を検出する。例えば、投受光用ミラー23は、モータ22によって回転中心軸28周りに0.025秒で一回回転する。これにより、各三次元形状特定手段21は、0.025秒毎に被塗物40の被塗面41の三次元形状を計測することができる。ここで、コンベア12の搬送速度が6m/minである場合、コンベア12によって被塗物40が0.025秒で搬送される距離は2.5mmである。したがって、この場合、各三次元形状特定手段21は、横方向に2.5mm毎に被塗面41の三次元形状を計測することができる。ここでいう、横方向とは、コンベア12の搬送方向Trである。
【0018】
投光器25は、検知光DLとして赤外線レーザ光を水平に照射する。投光器25から発せられた検知光DLは、モータ22によって回転する投受光用ミラー23で反射され、三次元形状特定手段21の外部へ向けて回転中心軸28と直交する径方向外方へ放射される。回転中心軸28から10m離れたところでは、投受光用ミラー23で反射した赤外線レーザは、回転中心軸28に直交する方向におよそ160mmに拡がり、回転中心軸28に平行な方向におよそ25mmに拡がる。つまり、投受光用ミラー23で反射した赤外線レーザの放射軌跡は、回転中心軸28から離れるにしたがって回転中心軸28に平行な方向に寸法が拡がる対象範囲29(図5参照)をなす。
【0019】
このように構成された三次元形状特定手段21は、上下方向に直列に複数が配置されて三次元形状認識部20を構成している。具体的には、各三次元形状特定手段21の回転中心軸28は、互いに平行にされている。上下方向に隣合う三次元形状特定手段21の回転中心軸28の間の寸法は同じにされている。複数の三次元形状特定手段21は、被塗物40の高さ寸法に応じて上下方向に直列に配置されて、三次元形状認識部20を構成している。
【0020】
各三次元形状特定手段21から発せられた検知光DLの一部は、直接、被塗物40の被塗面41に照射される。そして、被塗面41から反射した検知光DLは、検知光DLを発した三次元形状特定手段21に入射して、受光器26によって受光される。各三次元形状特定手段21の受光器26は、対象範囲29の内の、所定の範囲R内における検知光DLを受光し得る構成とされている。例えば、この所定の範囲Rは、投受光用ミラー23で反射した赤外線レーザが被塗物40に向けて水平方向に発せられた状態を中央として、赤外線レーザが水平方向に対して上側に35°傾いた角度から下側に35°傾いた角度までの間の範囲である。つまり、所定の範囲Rは、投受光用ミラー23で反射した赤外線レーザが被塗物40に向けて水平方向に発せられた状態を中央として±35°の範囲である。
【0021】
受光器26は、対象範囲29を通り三次元形状特定手段21に入射し、投受光用ミラー23で反射した検知光DLのみを受光する。距離演算部27には、受光器26にて受光した検知光DLの位相情報と、回転位置検出器24からの投受光用ミラー23の回転位置情報とが入力される。投受光用ミラー23の回転位置情報は、対象範囲29における赤外線レーザ(検知光DL)の放射角度の情報として処理される。
【0022】
距離演算部27では、入力された情報に基づいて演算が行われ、検知光DLの対象範囲29における被塗面41(被塗物40)の三次元形状のデータが得られる。距離演算部27には、速度センサ30から、コンベア12の搬送速度(三次元形状特定手段21に対する被塗物40の相対変位速度)に応じて所定の周期毎にハイレベルとローレベルの信号が交互に入力される。例えば、速度センサ30は、コンベア12が10mm移動する毎にハイレベルと、ローレベルの2つの信号を1回ずつ交互に出力する構成とされている。
【0023】
距離演算部27は、こうして得られた三次元形状のデータと、速度センサ30から入力される信号とを対応付けることによって、被塗物40の被塗面41の横方向における所定の間隔毎の三次元形状のデータを順に生成する。投光器25から検知光DLを発しているにもかかわらず、受光器26が検知光DLを受光しない場合、距離演算部27は、受光していないことを示す値(例えば、65533)を出力する。
【0024】
制御装置34は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリ、A/D変換器等を有した構成とされている。制御装置34は、距離演算部27において生成された三次元形状のデータ(すなわち、三次元形状特定手段21によって計測された被塗物40の被塗面41までの距離の情報)に基づいて、コンベア12、レシプロケータ14、及び塗装ガン13等の動作を制御して、被塗面41に塗料を塗着させる際の塗装条件を設定又は変更し、塗装ガン13の被塗物40に対する移動を制御し得る構成とされている。
【0025】
次に、塗装装置10が被塗物40の外面のうち三次元形状特定手段21と対向する表面側の被塗面41の形状を計測する手順について説明する。
【0026】
図1~3に示すように、被塗物40は、全体として板面を上下方向に向けた板状をなす。被塗物40の被塗面41の上端縁部には、左方へリブ状に突出する上部突起42が形成され、被塗面41の高さ方向中央部には、左方へリブ状に突出する中央部突起43が形成され、被塗面41の下端縁部には、左方へリブ状に突出する下部突起44が形成されている。
【0027】
上に位置する三次元形状特定手段21(以下、上の三次元形状特定手段21ともいう)は、上部突起42よりも僅かに上方の位置に配置されている。上下中央に位置する三次元形状特定手段21(以下、中央の三次元形状特定手段21ともいう)は、中央部突起43よりも僅かに下方の位置に配置されている。下に位置する三次元形状特定手段21(以下、下の三次元形状特定手段21ともいう)は、下部突起44よりも僅かに下方の位置に配置されている。
【0028】
例えば、図3に示す点Aは、中央の三次元形状特定手段21が測定し得る範囲に位置している。点Aと回転中心軸28との間における上下方向の距離H、及び塗装ガン13が前進及び後進する方向の距離Lは、H=a×sinθ、L=a×cosθとして求めることができる。つまり、被塗面41上の上下方向における任意の点と、回転中心軸28との間における上下方向の距離H、及び塗装ガン13が前進及び後進する方向の距離Lは三次元形状特定手段21によって計測された距離aに基づいて求めることができる。各三次元形状特定手段21は、被塗面41を上下方向に所定の距離毎(例えば、1cm毎)に自身からの距離aを測定する。三次元形状認識部20は、例えば、被塗面41の上下方向に1cm毎に、自身からの距離aを測定することができる。
【0029】
領域B1は、中央の三次元形状特定手段21からの検知光DLが中央部突起43によって妨げられる。このため中央の三次元形状特定手段21は、領域B1における自身からの距離を計測することができない。一方、上の三次元形状特定手段21は、領域B1に対して、検知光DLを照射することができる。このため、上の三次元形状特定手段21は、領域B1における自身からの距離を計測することができる。
【0030】
領域B2は、下の三次元形状特定手段21からの検知光DLが下部突起44によって妨げられる。このため下の三次元形状特定手段21は、領域B2における自身からの距離を計測することができない。一方、中央の三次元形状特定手段21は、領域B2に対して、検知光DLを照射することができる。このため、中央の三次元形状特定手段21は、領域B2における自身からの距離を計測することができる。制御装置34は、各三次元形状特定手段21の距離演算部27において演算した被塗面41における自身からの距離のデータを取得して、いずれかの三次元形状特定手段21から取得した距離のデータを用いて領域B1,B2における距離のデータを補うのである。
【0031】
領域D1は、中央の三次元形状特定手段21、及び上の三次元形状特定手段21の各々から距離を計測することができる。領域D2は、中央の三次元形状特定手段21、及び下の三次元形状特定手段21の両方から距離を計測することができる。つまり、領域D1,D2は、三次元形状認識部20によって重複して距離のデータが計測されたものであり、複数の三次元形状特定手段21による被塗物40の三次元形状データが重複して特定された区間である。制御装置34は、各三次元形状特定手段21の距離演算部27において演算した距離のデータを取得して、各三次元形状特定手段21から取得した領域D1,D2における距離のデータの内の一つを選択する。具体的には、制御装置34は、上下方向における領域D1,D2の所定の点Dxにおいて重複して測定された2つの距離のデータの内、小さい値を採用するのである。こうして、制御装置34は、複数の三次元形状特定手段21が特定した被塗物40に関する複数の三次元形状データを合成し、被塗物40における被塗面41の上端から下端にかけての高さ方向全体の三次元形状データを生成する。
【0032】
制御装置34は、こうして合成した被塗物40における被塗面41の距離のデータが、所定の領域内に有るか否かを判定する。具体的には、図4に示すように、三次元形状特定手段21の回転中心軸28を基準として、回転中心軸28を通り、レシプロケータ14のアーム14Aが上下方向に移動する方向に平行であり、且つコンベア12の基準線CCに平行な基準線SCから、コンベア12の基準線CCまでの塗装ガン13が前進及び後進する方向(図4における左右方向)の寸法をLC、塗装ガン13が最も後退した位置における塗装ガン13の先端からコンベア12の基準線CCまでの塗装ガン13が前進及び後進する方向の寸法をLF、塗装ガン13が最も前進した位置におけるコンベア12の基準線CCから塗装ガン13の先端までの塗装ガン13が前進及び後進する方向の寸法をLBと定義する。この場合、被塗面41の距離データDtが以下の式を満たすか否かを判定する。Dtは、回転中心軸28から被塗面41上の任意の位置までの直線距離(すなわち、三次元形状特定手段21が測定した距離のデータ)である。θは、回転中心軸28から塗装ガン13が前進及び後進する方向に延びる基準線を挟んで-35°から+35°の間の角度である。この式を満たすDtは、図4における扇型の領域Fである。この扇形の領域Fは、所定の範囲Rの一部である。ここで、寸法LCは、1500mmから2000mmが好ましい。
【0033】
【数1】
【0034】
三次元形状認識部20は、被塗物40における横方向(コンベア12の搬送方向Tr)においても、所定の距離毎(例えば、1cm毎)に三次元形状を測定する。被塗物40はコンベア12によって所定の搬送速度で搬送されている。このため、被塗物40における横方向の三次元形状の測定は、被塗物40が所定の距離搬送された毎に上記した上下方向における三次元形状の測定を三次元形状認識部20によって行うのである。
【0035】
例えば、コンベア12の搬送速度が6m/minである場合、コンベア12によって被塗物40が1cm移動するために要する時間は0.1秒である。これに対して、三次元形状認識部20は、0.1秒間に4回三次元形状を計測することができる。制御装置34は、三次元形状認識部20によって連続して繰り返し計測した三次元形状のデータの4回分の平均値を演算し、このデータを被塗物40における横方向の所定の位置における三次元形状のデータとして記憶する。こうして、制御装置34は、被塗物40が搬送方向Trに1cm搬送される毎に、上下方向における三次元形状の測定を三次元形状認識部20によって実行して得られたデータを連続して記憶することによって、被塗物40における被塗面41の上下方向及び横方向の三次元形状のデータを生成するのである。
【0036】
また、コンベア12の搬送速度が3m/minである場合、コンベア12によって被塗物40が1cm移動するために要する時間は0.2秒である。三次元形状認識部20は、0.2秒間に8回三次元形状を計測することができる。この場合、三次元形状特定手段21は、1cm÷8=0.125cm毎に被塗面41の三次元形状を計測することができる。
【0037】
また、コンベア12の搬送速度が1.5m/minである場合、コンベア12によって被塗物40が1cm移動するために要する時間は0.4秒である。三次元形状認識部20は、0.4秒間に16回三次元形状を計測することができる。この場合、三次元形状特定手段21は、1cm÷16=0.0625cm毎に被塗面41の三次元形状を計測することができる。
【0038】
塗装を行う際には、コンベア12を作動させ、コンベア12に被塗物40を適宜配置して吊り下げて被塗物40を塗装ブース11へ搬送する。この搬送の過程において、三次元形状認識部20は、被塗物40が2.5mm搬送される毎に、三次元形状を計測して制御装置34に三次元形状のデータを出力する。制御装置34は、三次元形状認識部20によって連続して計測した三次元形状のデータの4回分の平均値を演算し、このデータを被塗物40における横方向における所定の位置の三次元形状のデータとして記憶する。
【0039】
ここで、三次元形状認識部20と、レシプロケータ14の塗装ガン13との間の搬送方向Trにおける距離は、所定の値に設定されている。コンベア12の搬送速度も所定の値に設定されている。したがって、被塗物40における任意の点が、三次元形状認識部20に対向する位置から塗装ガン13に対向する位置に到達するまでの時間Tは、三次元形状認識部20と塗装ガン13との間の搬送方向Trにおける距離を、コンベア12の搬送速度によって除することによって求めることができる。つまり、制御装置34は、現在測定した被塗物40の三次元形状のデータを記憶しておき、時間Tが経過した後、記憶したデータに基づいて、制御装置34から塗装用制御信号を出力する。
【0040】
そして、この塗装用制御信号によって、図2に実線及び想像線で示すように、レシプロケータ14が被塗面41の三次元形状に合わせて塗装ガン13を適正に移動させるとともに、塗装ガン13が適正な塗料噴出を行う。制御装置34は、搬送される被塗物40に合わせて、現在塗装ガン13に対向する位置に対応した三次元形状のデータに基づいて塗装用制御信号の出力を行う。これによって、塗装装置10は、被塗物40の被塗面41に満遍なく塗料を塗着させることができる。
【0041】
上記のように構成された実施例1によれば、以下の効果を奏する。
【0042】
この塗装装置10は、被塗物40を水平に搬送するコンベア12と、被塗物40に対して相対移動しながら被塗物40に塗料を噴出する塗装ガン13と、被塗物40の被塗面41までの距離を計測して被塗物40の三次元形状を特定する三次元形状特定手段21と、三次元形状特定手段21によって計測された距離に基づいて、被塗面41に塗料を塗着させる際の塗装条件を設定又は変更し、塗装ガン13の被塗物40に対する移動を制御する制御装置34とを備えている。複数の三次元形状特定手段21が、被塗物40の高さ寸法に応じて直列に配置された三次元形状認識部20を構成している。この構成によれば、塗装装置10は、複数の三次元形状特定手段21が、被塗物40の高さ寸法に応じて配置されているため、被塗物40の高さ方向の三次元形状を良好に計測することができる。
【0043】
制御装置34は、複数の三次元形状特定手段21が特定した被塗物40に関する複数の形状データを合成し、被塗物40の高さ方向全体の三次元形状データを生成する。この構成によれば、被塗物40の大きさに関わらず、被塗物40の高さ方向全体の三次元形状を特定することができる。
【0044】
三次元形状特定手段21は、レーザ光を利用した測長センサである。この構成によれば、精度よく被塗物40の三次元形状を計測することができる。
【0045】
三次元形状認識部20は、複数の三次元形状特定手段21による被塗物40の三次元形状データが重複して特定された区間において、被塗物40との距離が小さい値を採用して三次元形状データを合成する。この構成によれば、重複して特定した区間において、より小さい値を採用して被塗物40の最大の三次元形状データを合成することによって、移動する塗装ガン13が被塗物40にぶつかる機会を減らすことができる。
【0046】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、3つの三次元形状特定手段を用いているが、三次元形状特定手段の数はこれに限定されない。また、各三次元形状特定手段を搬送方向に傾斜させるように直列に配置してもよい。また、被塗物の高さ寸法に応じて、上下方向に隣り合う三次元形状特定手段の回転中心軸間の寸法を離したり近づけたりして三次元形状特定手段の位置を調整してもよい。つまり、被塗物の高さ寸法に応じて三次元形状特定手段を直列に配してもよい。
(2)上記実施例では、コンベアに吊り下げられる被塗物の外形が同じであるが、異なる外形の被塗物を並べてコンベアに吊り下げてもよい。
(3)上記実施例では、制御装置は、三次元形状認識部によって計測した三次元形状のデータの4回分の平均値を演算し、このデータを被塗物における横方向の所定の位置における三次元形状のデータとして記憶しているが、これに限らず、0.025秒毎に三次元形状認識部によって計測した三次元形状のデータの内、4回毎に計測されたデータを被塗物における横方向の所定の位置における三次元形状のデータとして扱ってもよい。
(4)上記実施例では、制御装置は、各三次元形状特定手段の距離演算部において演算した距離のデータを取得して、各三次元形状特定手段から取得した重複して測定された領域における距離のデータの内の一つを選択しているが、これに限らず、2つのデータの平均値を距離データとして採用してもよい。
(5)上記実施例では、被塗物の外面のうち三次元形状特定手段と対向する表面側の形状のみを計測したが、被塗物の表面側の形状に加え、裏面側の形状も併せて計測してもよい。この場合、三次元形状特定手段の設置位置と設置数は適宜に設定すればよい。
(6)上記実施例では、三次元形状特定手段は、回転中心軸周りに検知光を回転させる方式であるが、三次元形状特定手段として、一方向に検知光を照射する方式のものを所定の間隔(例えば1cm)を設けて上下方向に多数並べてもよい。
(7)上記実施例では、測定媒体として赤外線レーザ光を利用しているが、超音波等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…塗装装置
12…コンベア
13…塗装ガン
20…三次元形状認識部
21…三次元形状特定手段
34…制御装置
40…被塗物(被測定物)
41…被塗面
図1
図2
図3
図4
図5
図6