(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091836
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多重使用の使い捨て注入ペン
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240628BHJP
A61M 5/175 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/175
A61M5/315 550C
A61M5/315 550X
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068272
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022146067の分割
【原出願日】2012-03-15
(31)【優先権主張番号】61/457,391
(32)【優先日】2011-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クイン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード クローネンバーグ
(57)【要約】
【課題】薬剤注入ペンにおけるダイヤルバックおよび最後の投与量制御機構合わせての改善された機能性を提供すること。
【解決手段】投与量設定中および投与量修正中に薬剤注入ペンのハウジングに対して回転する薬剤注入ペンの投与量設定摘みと、投与量設定摘みと選択的に係合するドライバーであって、投与量設定中および投与量修正中においてハウジングに対して回転可能に固定されるドライバーとを備え、ドライバーは、投与量設定中、投与量修正中、および投与量注入中において投与量設定摘みとともに軸方向に移動し、投与量注入中において、投与量設定摘みに対して回転可能に固定され、投与量設定摘みとドライバーは、投与量注入中において、ハウジングに対して回転することを特徴とする薬剤注入ペン。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
投与量設定中および投与量修正中において、前記ハウジングに対して回転する投与量設定摘みと、
前記投与量設定摘みと選択的に係合するドライバーであって、前記投与量設定中および前記投与量修正中において、前記ハウジングに対して回転可能に固定される前記ドライバーとを備え、
前記ドライバーは、前記投与量設定中、前記投与量修正中、および投与量注入中において、前記投与量設定摘みとともに軸方向に移動し、前記投与量注入中において、前記投与量設定摘みに対して回転可能に固定され、
前記投与量設定摘みと前記ドライバーは、前記投与量注入中において、前記ハウジングに対して回転することを特徴とする薬剤注入ペン。
【請求項2】
前記投与量設定摘みと前記ドライバーの間に作動可能に係合するクリッカーをさらに備え、
前記投与量設定摘みは、前記投与量設定中において、前記クリッカーに対して回転し、第1の耳で聞き取ることのできるしるしを発生し、
前記クリッカーは、前記投与量修正中において、前記ドライバーに対して回転し、第2の耳で聞き取ることのできるしるしを発生することを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入ペン。
【請求項3】
前記投与量注入中において、前記ドライバーが前記投与量設定摘みと回転し、前記クリッカーは前記ドライバーと前記投与量設定摘みに対して回転可能に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の薬剤注入ペン。
【請求項4】
前記投与量設定中、前記投与量修正中、および前記投与量注入中において、前記ハウジングに対して回転可能に固定されるピストン・ロッドをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薬剤注入ペン。
【請求項5】
前記投与量設定摘みが回転して、前記投与量注入中において、前記ピストン・ロッドを前記ハウジングに対して軸方向に移動させることを特徴とする請求項4に記載の薬剤注入ペン。
【請求項6】
前記ハウジングに回転可能にかつ軸方向に固定された制動タワーをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薬剤注入ペン。
【請求項7】
前記投与量修正中において、前記制動タワーは、前記ドライバーが回転することを妨げるように前記ドライバーと係合することを特徴とする請求項6に記載の薬剤注入ペン。
【請求項8】
前記制動タワーと前記ドライバーとの前記係合は、前記投与量注入中において、前記ドライバーが回転することを可能とするために打ち消されることを特徴とする請求項7に記載の薬剤注入ペン。
【請求項9】
前記投与量注入を開始し、前記投与量設定摘みを前記ドライバーと係合させるために押下可能な押釦をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薬剤注入ペン。
【請求項10】
前記ドライバーに回転可能に固定された送りねじをさらに備え、
前記投与量設定中、および前記投与量修正中において、前記ドライバーが前記送りねじに対して軸方向に移動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薬剤注入ペン。
【請求項11】
前記投与量注入中において、前記ハウジングに対して回転可能に固定されるピストン・ロッドをさらに備え、
前記投与量注入中において、前記送りねじの回転が前記ピストン・ロッドを軸方向に移動させるように、前記送りねじが前記ピストン・ロッドにねじ込み可能に係合されることを特徴とする請求項10に記載の薬剤注入ペン。
【請求項12】
前記ピストン・ロッドは実質的に中空の円筒であり、
前記ピストン・ロッド内に配置された制動芯部材が前記投与量注入中において、前記ピストン・ロッドの前記回転を実質的に妨げることを特徴とする請求項11に記載の薬剤注入ペン。
【請求項13】
前記制動芯部材は、前記送りねじを収容する開口部分を備えることを特徴とする請求項12に記載の薬剤注入ペン。
【請求項14】
前記ピストン・ロッドは、その内面に突起を備え、
前記制動芯部材の前記開口部分が前記突起と係合し、前記ピストン・ロッドの回転を妨げることを特徴とする請求項13に記載の薬剤注入ペン。
【請求項15】
前記ピストン・ロッドは、その内面に溝を備え、
前記送りねじは、その外面にねじ山を備え、
前記注入中において、前記送りねじの回転が前記ピストン・ロッドを軸方向に移動させるように、前記送りねじのねじ山が前記ピストン・ロッドの前記溝と係合されることを特徴とする請求項11に記載の薬剤注入ペン。
【請求項16】
前記クリッカーは、前記投与量設定中において、前記ドライバーに対して回転可能に固定されることを特徴とする請求項2に記載の薬剤注入ペン。
【請求項17】
前記クリッカーは、前記投与量修正中において、前記投与量設定摘みに対して回転可能に固定されることを特徴とする請求項2に記載の薬剤注入ペン。
【請求項18】
波状留め金をさらに備え、
前記制動タワーの末端部が前記ハウジングの末端部に向かって配置されており、前記波状留め金は、前記制動タワーの前記末端部に設けられ、前記ハウジングの前記末端部に対して形成されたカートリッジを付勢し、前記投与量注入中において前記ハウジングに対する前記カートリッジの移動を妨げることを特徴とする請求項6に記載の薬剤注入ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された設定投与量のダイヤルバック(dial back)および薬剤カートリッジに残っている薬の量より大きい投与量が設定されることを防止する改善された最後の投与量制御を含む、改善された機能性を有する多重使用のペン型注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の薬剤注入ペン装置が従来から知られている。これらの従来装置は、時々、使用者が過度に大量に設定されすぎた投与量を修正することができる機構であって、「ダイヤルバック」と称される機構を含んでいる。いくつかの従来装置により提供されるその他の機構は、カートリッジに残っている薬剤の量より大きい投与量を使用者が設定することができないというように、薬剤カートリッジの最後の投与量を制御できることにある。このような機構は、最後の投与量制御または最後の投与量管理と称される。これらの2つの機構は、そのようなペン装置の使用者により切望されている。しかしながら、従来の装置は、これらの要求を納得のいくように満たしていない。多くの従来技術は、これらの機構のうちの一方を提供するが両方を提供するものは無い。さらに、多くの従来装置は、使用者にとって扱い難く、直感的には認識できない、ダイヤルバックを実行する追加のステップを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、薬剤注入ペンにおけるダイヤルバックおよび最後の投与量制御機構合わせての改善された機能性を提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の典型的実施形態は、少なくとも、上記問題点および/または不都合な点に取り組み、少なくとも、以下に説明される利点を提供する。
【0005】
本発明の典型的実施形態によれば、薬剤注入ペンは、ハウジングおよび少なくとも1つの内部歯を有する投与量設定摘みを含んでいる。制動部材は、複数の軸方向に延在するキー溝(splines)を有する。ドライバー(a driver)は、投与量設定摘みの少なくとも1つの内部歯に係合する少なくとも1つの外部歯および複数の軸方向に延在するキー溝に係合する少なくとも1つのラチェット・アームを含んでいる。投与量設定および投与量修正中においては、ドライバーは、投与量設定摘みに対して回転することが妨げられる一方、投与量設定摘みとともに軸方向に移動し、注入中においては、ドライバーは、投与量設定摘みとともに回転する。
【0006】
本発明の別の典型的な実施形態によれば、薬剤注入ペンは、ハウジングおよび投与量を設定し、修正する投与量設定摘みを含んでいる。制動部材は、ハウジングに軸方向に且つ回転的に固定される。ドライバーは、投与量を設定および修正するとき、投与量設定摘みとともに軸方向に移動し、設定投与量を注入するとき、投与量設定摘みとともに回転的に移動する。中空のピストン・ロッドは、設定投与量を注入するとき、軸方向に移動する。制動芯部材は、中空のピストン・ロッド内に配置され、中空のピストン・ロッドの回転運動を実質的に妨げている。
【0007】
本発明の典型的な実施形態のさらなる目的、利点および顕著な特徴は、添付された図面と合わせて、本発明の典型的な実施形態を開示する以下の詳細な説明から当業者に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る注入ペンの第1の典型的実施形態の斜視図である。
【
図2A】ペン下部本体が取り除かれた
図1の注入ペンの斜視図である。
【
図7】制動タワーとセットバック部材との間の係合の斜視図である。
【
図9】
図5のセットバック部材の正面斜視図である。
【
図10】
図3のセットバック部材、制動タワーおよび送りねじの間の係合の斜視図である。
【
図11】投与量設定摘み、送りねじ、セットバック部材および制動タワーの間の係合の正面断面図である。
【
図12】投与量を設定した後における送りねじおよび制動タワーに対する投与量設定摘みとセットバック部材の正面断面図である。
【
図13】
図3のセットバック部材に係合する投与量停止部材の斜視図である。
【
図15】当初位置にある投与量停止部材の正面断面図である。
【
図16】最終位置にある投与量停止部材の部分正面断面図である。
【
図17】
図1の注入ペンの上部本体部分に配置される指示窓の正面図である。
【
図18】設定投与量が完全に注入されていないことを示す
図17の指示窓の正面図である。
【
図19】指示器を含む投与量設定摘みの斜視図である。
【
図20】本発明の第2の典型的実施形態に係る注入ペンの分解組立図である。
【
図22】本発明の第3の典型的実施形態に係る注入ペンの分解組立図である。
【
図24】
図22の制動タワー芯部および制動タワーの斜視図である。
【
図25】
図22の制動タワー芯部とピストン・ロッドとの間の係合の斜視図である。
【
図27】
図22の制動タワー芯部とピストン・ロッドとの間の係合の斜視図である。
【
図28】
図22の制動タワー芯部と送りねじとの間の係合の正面断面図である。
【
図29】本発明の第4の典型的実施形態に係る注入ペンの斜視図である。
【
図36】
図30の制動タワー、制動タワー芯部、送りねじおよびピストン・ロッドの間の係合の正面断面図である。
【
図38】本発明の第5の典型的実施形態に係るピストン・ロッドの斜視図である。
【
図39】本発明の第5の典型的実施形態に係る制動タワー芯部の斜視図である。
【
図41】本発明の第5の典型的実施形態に係る注入ペンの正面断面図である。
【
図42】本発明の第6の典型的実施形態に係る注入ペンの正面断面図である。
【
図45】
図42の制動タワー芯部と送りねじとの間の係合の正面断面図である。
【
図46】
図42の制動タワー内に挿入される制動タワー芯部と送りねじの組立体の正面断面図である。
【
図47】制動タワーとのスナップ結合を形成する前の送りねじの正面断面図である。
【
図48】制動タワーとのスナップ結合を形成する前の送りねじの拡大正面断面図である。
【
図49】送りねじと制動タワーとの間のスナップ結合の正面断面図である。
【
図50】
図49の制動タワー組立体内に挿入されるピストン・ロッドの正面断面図である。
【
図52】本発明の第7の典型的実施形態に係る注入ペンの分解組立図である。
【
図56】
図52の注入ペンのセットバック部材の斜視図である。
【
図63】
図52の注入ペンのピストン・ロッドの斜視図である。
【
図71】
図52の注入ペンの制動タワーの基端側斜視図である。
【
図72】
図52の注入ペンの制動タワーとの係合の前の送りねじおよび制動タワー芯部の斜視図である。
【
図73】
図72の制動タワーに結合される前に制動タワー芯部に結合される送りねじの斜視図である。
【
図74】
図72の制動タワーに結合された送りねじおよび制動タワー芯部の正面図である。
【
図75】
図52の注入ペンのピストン・ロッドと制動タワー芯部との間の係合の正面図である。
【
図76】本発明の第8の典型的実施形態に係る注入ペンの投与量設定摘みとセットバック部材との間に配置されるクリッカー本体の正面断面図である。
【
図78】
図76の注入ペンのセットバック部材の部分斜視図である。
【
図79】
図76の注入ペンの投与量設定摘みの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の任意の典型的実施形態の上記特徴およびその他の典型的特徴は、添付された図面と合わせて、典型的実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0010】
図面全体にわたって、同じ参照数字は、同じ構成要素、機能および構造に言及していることが理解される。
【0011】
本明細書において例示されている事項は、添付されている図面を参照して本発明の典型的実施形態を包括的に理解するのに役立つように提供されている。したがって、当業者は、クレームされた発明の範囲や精神から逸脱することなく、本明細書に記載されている典型的実施形態の種々の変更や修正がなされ得ることを認めるだろう。また、明確に且つ簡潔にするために、周知の機能や構成の説明が省略される。
【0012】
図1は、本発明の第1の典型的な実施形態に係る注入ペン51の図を示す。示されるように、注入ペン51は、複数の投与量設定用構成要素および注入用構成要素を収容するペン上部本体すなわちハウジング1を含んでいる。ペン上部本体1は、
図2Aおよび2Bに示されるように、薬剤カートリッジ15を収容するカートリッジ・ハウジング14に結合されている。注入ペン51は、また、注入ペンが使用中でないとき、カートリッジ15およびカートリッジ・ハウジング14を覆うペン下部キャップ12を含み得る。示されるように、注入ペン51は、所望の投与量を設定するために使用者が回転させる摘み状部分を含む投与量設定摘み2を含んでいる。投与量設定摘み2は、また、
図2Bに示されるように、ペン上部本体1上に設けられている窓13を通して見ることができる多くの計量ユニットに対応する複数の数字を含んでいる。使用者は、所望の投与量が窓13内に見えるまで投与量設定摘み2を回転させる。ペン上部本体1は、設定投与量を正確に指し示す矢印またはその他の標識53を含んでいる。一旦、所望の投与量が設定されると、使用者は、設定された投与量が完全に注入されるまで釦3を押す。外側遮蔽体69(
図2B)は、針56を覆い、ペン下部キャップ12を取り外すときの不慮の針刺しを防止することができる。
【0013】
ペン上部本体1は、また、
図1、2Aおよび2Bに示されるように、設定投与量が完了したときを知らせるための第2の窓55を含むことは随意である。
図17に示されるように、標識またはマーカー27は、投与量設定摘み2の外面に設けられ得る。標識またはマーカー27は、投与量設定摘み2がその当初の位置に戻り、したがって、注入プロセスが完了したことを示すときにのみ第2の窓55を通して見ることができる。
図18は、投与量設定摘み2がその当初位置にほとんど戻ったときのシナリオを示す。示されるように、標識27は、窓55を通して見ることができない。したがって、使用者は、注入が完了していないことを知らされる。
図17に示されるように、一旦、マーカー27が窓55に見えると、使用者は、設定投与量が完全に注入されたことを確信する。
【0014】
図3は、本発明の第1の典型的実施形態に係る注入ペンの断面を示している。個々の構成要素への言及は、
図2Bに示される分解組立図を勘案してよりよく理解され得る。示されるように、押し釦3は、使用者に近く、針56から最も離れている、ペン上部本体1の基端部に設けられる。押し釦3は、投与量設定摘み2の内面に設けられている、対応する環状溝58と係合する環状ビードすなわち環状縁57を備えていることが好ましい。環状縁と環状溝の結合は、釦用ばね10の力を受けて押し釦3を投与量設定摘み2上で付勢された位置に保持するが、設定投与量を注入するために、押し釦が投与量設定摘み2内に押し込まれることを可能にする摩擦嵌合であることが好ましい。押し釦3の内部には、セットバック部材(a setback member)すなわちドライバー(a driver)9の基端部において内面に支えられているセットバック支持挿入体8が収容される。押し釦3は、セットバック支持挿入体8上で自由に回転するように設計される。
【0015】
セットバック部材すなわちドライバー9は、
図5に示されるように、投与量設定摘み2と同軸であって、さらに該投与量設定摘み2により取り囲まれている円筒状の部材である。セットバック部材9は、
図6に示されるように、ペン上部本体1に対して軸方向に且つ回転可能に固定されている制動タワー5を同軸的に取り囲んで設けられている。制動タワー5は、
図3に示されるように、ピストン・ロッド6を同軸的に取り囲んでいる。ピストン・ロッド6は、制動タワー5に対して内部にあるスロットに係合し、ピストン・ロッド6を制動タワー5に対して回転可能にロックする一組のキー62を含んでいる。ピストン・ロッド6は、
図3に示されるように、その内面に設けられる複数のねじ山64を含むことが好ましい。ピストン・ロッド6は、
図2Bに示されるように、少なくともその末端部に一連のねじ山42を含んでいる送りねじ4を同軸的に取り囲んでいる。送りねじのねじ山42は、ピストン・ロッド6上に設けられた内部ねじ山64にねじ係合する。さらに以下に説明されるように、送りねじ4とのねじ係合により、ピストン・ロッド6は、注入中カートリッジ15内を移動し、カートリッジ15の内側に設けられているストッパ16を押し、薬剤の一回分の投与量を吐出する。
図2Bおよび3に示されるように、波状留め金または波状ばね11が、制動タワー5の末端部とカートリッジ15との間に設けられ、カートリッジ15を末端方向に付勢し、注入中のカートリッジ15のいかなる移動も防止し、したがって、正確な投与量が注入されることを保証する。
【0016】
第1の典型的実施形態の注入ペン51を用いて投与量を設定するために、使用者は、ペン上部本体1に対して投与量設定摘み2の摘み部分を回転させる。投与量設定摘み2の外面59は、
図3に示されるようにペン上部本体1の内面上に設けられた複数のねじ山17(
図2C)とねじ係合する、
図19に最もよく示されるようにねじ山23を含んでいる。したがって、投与量設定摘み2がペン上部本体1に対して回転するにつれて、投与量設定摘み2は、
図3に示されるように、ペン上部本体1からある距離引き出されるかまたは前進する。投与量設定摘み2は、
図3および4に示されるように、その基端部の近くの内面上に環状の肩部すなわち環状縁部21を含んでいる。この環状肩部21は、
図3および5に示されるように、セットバック部材9の拡大部分すなわち拡大ヘッド91と係合する。
投与量設定摘み2の環状肩部21は、セットバック部材9の拡大ヘッド91上に設けられた同じ形状をした歯または隆起部92と係合する一連の歯または隆起部22を備えることが好ましい。投与量設定摘みの歯22およびセットバック部材の歯92は、軸方向の逆向きに突出することが好ましい。投与量設定中、投与量設定摘み2は、セットバック部材9に対して、時計回りおよび反時計回りの両方向に自由に回転できる。これが起きると、投与量設定摘み2の複数の歯または隆起部22は、セットバック部材9のヘッド部分91に設けられた歯92を通り過ぎ、したがって、触覚信号またはカチッという音をもたらし、投与量の設定を知らせる。さらに以下に説明するように、投与量設定摘み2は、セットバック部材9が投与量設定摘み2とともに設定方向に回転することを防止する一方向ラチェットにより、設定中、セットバック部材9に対して回転することができる。
【0017】
あまりに大きく設定しすぎた設定投与量を修正するためには、使用者は、投与量設定摘み2を単に反対方向に回転させて戻すだけでよい。投与量設定摘み2のこの方向への回転は、
図7に示されるように、セットバック部材9と制動タワー5との間の一方向ラチェットによりセットバック部材9に伝達されない。セットバック部材9は、
図5および7に示されるように、その末端部の近くに、一対のラチェット・アーム96を含んでいる。一対のラチェット・アーム96は、
図6および7に示されるように、制動タワー5の外面に設けられている複数のキー溝または歯52に係合する。ラチェット・アーム96およびキー溝または歯52は、唯一の方向、すなわち、設定投与量を注入することが可能になる方向に相対的回転を許すように構成される。ラチェット・アーム96と制動タワー5の歯52との間にもたらされる摩擦は、セットバック部材9および投与量設定摘み2それぞれの対応する歯92および22の間の摩擦より大きい。したがって、投与量設定摘み2は、この方向へのセットバック部材9の回転を引き起こすことなく、設定投与量を修正するために回転して戻されることができる。したがって、セットバック部材9および投与量設定摘み2それぞれに設けられた歯92および22は、通常の投与量設定中と全く同じように、互いに通過し、投与量のダイヤルバック中において、カチッという音をもたらし、それによって、設定投与量の修正を知らせる。
【0018】
投与量設定摘み2が投与量の設定中に上部本体1から軸方向に引き出されるかまたは前進すると、セットバック部材9もまた、対応する距離だけ軸方向に本体から移動させられる。この軸方向の移動は、本体からのセットバック部材9の移動中、該セットバック部材9の拡大ヘッド部分91を押している投与量設定摘み2の環状肩部21との間の係合により引き起こされる。一旦、所望の投与量が設定されると、使用者は、セットバック部材9に軸方向に結合されているセットバック支持挿入体8に連結されている押し釦3を押す。使用者が押し釦3を押すことにより加えられる力を受けて、セットバック部材9は、投与量設定摘み2およびセットバック部材9それぞれに設けられた各歯または隆起部92および22のかみ合いを介して、投与量設定摘み2とのロック係合またはこれとかみ合い係合状態に移動する。使用者が押し釦3を押し続けると、投与量設定摘み2は、投与量設定摘み2のねじ山23とペン上部本体1のねじ山17との間のねじ係合を通して、回転し、ペン上部本体1内にねじ込まれ、その中へ後退する。投与量設定摘み2の回転は、このとき、それらのロック係合またはかみ合い係合によりセットバック部材9に伝達される。使用者が釦3を押す力は、セットバック部材9のラチェット・アーム96と制動タワー5の歯またはキー溝52との間の摩擦に打ち勝つのに十分である。結果として、セットバック部材9は、この方向に回転することが可能となる。注入中、制動タワー5に対してセットバック部材9が回転するので、ラチェット・アーム96は、該ラチェット・アーム96が制動タワー5の歯52を通り過ぎると、触覚信号またはカチッという音を作り出す。このことは、設定投与量の注入が行われていることを使用者に知らせる。
【0019】
注入中に許容されるように、セットバック部材9の回転は、このとき、送りねじ4とセットバック部材9との間に設けられているキー溝結合を介してセットバック部材9に回転可能に固定されている送りねじ4に伝達される。
図9に示されるように、セットバック部材9の内面60は、
図10に示されるように、送りねじ4の基端部に設けられているキー48と係合する溝またはスロット98を含んでいる。セットバック部材9は、送りねじ4に設けられる対向して配置される2つのキー48に係合する対向して配置される2つのスロット98を含むことが好ましい。セットバック部材9は、
図11および12に示されるように、キー48とスロット98の相互結合を通して、投与量設定中および投与量修正中、送りねじ4に対して軸方向に移動する。1つの実施形態においては、セットバック部材9のスロット98の長さは、一度だけの注入で注入される最大投与量に対応するように構成され得る。送りねじ4は、さらに以下に説明されるように、ペン上部本体1に軸方向に且つ回転可能に固定される制動タワー5とのスナップ係合(a snap engagement)を介してペン上部本体1に対して軸方向に固定される。
図8および11に示されるように、送りねじ4は、示されるように、制動タワー5の内部に設けられている1つの縁部または1組の突出部54の背後に送りねじ4をスナップ式に嵌め込み、したがって、ペン上部本端1に対して送りねじ4を軸方向にロックすることを可能にする傾斜面(an angled surface)45を有する円盤状部分44を含んでいる。
【0020】
上で説明したように、送りねじ4は、その末端部において、
図3に示されるように、好ましくは中空のピストン・ロッド6の全長に沿って設けられている複数のねじ山64とねじ係合する複数のねじ山42を含んでいる。ピストン・ロッド6は、ペン上部本体1に対して軸方向に保持され、回転可能に固定されている制動タワー5との回転不能な連結により、ペン上部本体1に対して回転不能に保持される。ピストン・ロッド6は、その末端部において、制動タワー5の内面に設けられたスロット(
図12)61と係合し、それらの間の相対的回転を防止する一方、ピストン・ロッド6が制動タワー5に対して軸方向に移動することを可能にする1つのまたは1組のキー62を含んでいる。送りねじ4のねじ山42は、投与量設定中または投与量修正中における送りねじ4の軸方向の移動が、ピストン・ロッド6の軸方向の移動をもたらさないように、ピストン・ロッド6の平坦な部分65(
図2B)に対応する平坦な部分43を有する。したがって、1回分の投与量の注入中における送りねじ4の回転は、送りねじ4のねじ山42をピストン・ロッド6のねじ山64に係合させ、それにより、ピストン・ロッド6を軸方向に移動させる。
【0021】
組み立て中において、制動タワー5は、末端部からペン上部本体1内に挿入される。
図3に示されるように、ペン上部本体1は、示されるように、制動タワー5の拡大末端部66を妨げることにより制動タワー5の本体1内への移動を制限する横断壁18を含んでいる。さらにまた、
図15に示されるように、ペン上部本体1の内面上であって横断壁18から末端方向に、内側に向って突出するキー19が設けられる。キー19は、
図6に示されるように、制動タワー5の拡大末端部66に設けられたスロット55と係合し、制動タワー5をペン上部本体1に対して回転的に固定している。複数の軸方向に延在するキー19は、
図15に示されるように、ペン上部本体1の内面に配置され、制動タワー5の拡大末端部66の複数のスロット55に係合することが好ましい。
【0022】
ピストン・ロッド6は、上述したように、セットバック部材9との回転連結に起因して、送りねじ4が注入中に回転するとき、本体1に対して回転不能であるので、ピストン・ロッド6は、送りねじ4とのねじ係合を通して、末端方向に移動し、薬剤カートリッジ15内に設けられているストッパ16に押し付けられ、したがって、カートリッジ15から液体薬剤を吐出させる。投与量設定摘み2は、注入中、ピストン・ロッド6よりも軸方向に移動し、使用者により加えられなければならない注入力を減少させるように、機械的な利点がもたらされることが好ましい。これは、投与量設定摘み2とペン上部本体1との間のねじ結合および送りねじ4とピストン・ロッド6との間のねじ結合に関し、異なるピッチを設けることにより成し遂げられることが好ましい。ねじピッチ間の比率は、液体薬剤の容積と予測される投与量の容積により変化し得る。ピッチ比は、これに限定されるものではないが、例えば、4.35:1または3.25;1である。送りねじ4は、セットバック部材9と制動タワー5との間の一方向ラチェットにより単一方向(ピストン・ロッド6の末端方向への移動をもたらす方向)にのみ回転可能であるので、ピストン・ロッド6は、基端方向に移動することを妨げられている。したがって、ピストン・ロッド6は、注入の間、ストッパ16との係合を維持するので、正確な投与が保証され得る。
【0023】
図2Bおよび13に示されるように、投与量停止部材7が最後の投与量管理のために設けられ、カートリッジ15内に残っている薬剤の量より大きい投与量の設定を防止している。投与量停止部材7は、セットバック部材9の外面に設けられた一対のキー溝94の間に配置されることにより、セットバック部材9に対して軸方向に摺動可能であるが、回転的には固定されている。投与量停止部材7は、示されるように、複数のねじ山72を有する外面にねじ切りされた半ナット状要素である。これらのねじ山72は、
図14に示されるように、投与量設定摘み2の内部に設けられた対応するねじ山24と係合するように構成される。
図15は、当初位置にある投与量停止部材7を示している。示されるように、投与量停止部材7は、投与量設定摘み2に設けられたねじ山24のうちの最も基端側にある1つたは2つねじ山とねじ係合している。投与量設定中、投与量設定摘み2がセットバック部材9に対して、したがって、投与量停止部材7に対して回転すると、投与量停止部材7は、投与量設定摘み2のねじ山24との係合により設定投与量に対応する距離分だけ末端方向に摺動する。
【0024】
注入中、セットバック部材9および投与量設定摘み2は、上述したように回転的に連結されているので、投与量停止部材7は、投与量設定摘み2のねじ山24に対してその位置を維持するだろう。投与量設定中に、投与量停止部材7は、
図14および16に示されるように、投与量停止部材7の末端73が投与量設定摘み2の内面に設けられている内側に向いたキー26に当接するまで、末端方向に移動するだろう。この位置において、投与量停止部材7は、さらなる投与量を設定するための投与量設定摘み2のさらなる回転を妨げる末端方向へのさらなる移動が妨げられる。
図16に示されるように、その最終位置において、投与量停止部材7は、投与量設定摘み2に設けられているねじ山24の最も末端側にある約2つのねじ山とねじ的に係合する。
図15および16に対して示されるように、投与量停止部材7が投与量設定摘み2に設けられたキー26に当接するときの、その当初位置から最終位置までの投与量停止部材7による総移動距離は、投与量停止部材7および投与量設定摘み2それぞれに設けられたねじ部分72および24のどちらの長さよりも大きい。
【0025】
図20および21は、通常100番台の参照番号が種々の構成要素に割り当てられていることで明らかなように、上述した実施形態と同様の機能を有する別の実施形態を例示している。
図20および21は、示されるように、投与量停止部材7’の別の実施形態を示している。投与量停止部材107は、やはり、半ナット状要素であるが多数のねじ山172を有して伸びている。投与量停止部材107は、また、投与量設定摘み102の内部に設けられた単一の3/4の長さのねじ山129のみにねじ係合する。投与量停止部材107は、やはり、上述したように、該投与量停止部材107が投与量設定摘み102の内部のキー126に当接するまで、セットバック部材109に対して末端方向に摺動する。あるいは、投与量停止部材7および107は、投与量設定中、投与量停止部材7および107がセットバック部材9および109それぞれの基端部に近くの拡大部分91および191に当接するまで、基端方向に同様に摺動し、したがって、カートリッジ15および115内に残っている薬剤の量を超える投与量のさらなる設定を防止するように構成され得る。
【0026】
図22~28は、上記典型的実施形態と同様の機能を有する注入ペン200の第3の典型的な実施形態を例示している。200番台の同じ参照番号は、示された構成要素が実質的に同じである。
図22~28に示される注入ペン200の構成要素それぞれ及びそれぞれの機能は、特に断りのない限り、実質的に上記典型的実施形態と実質的に同じである。
【0027】
図22~28に示される典型的実施形態は、制動タワー芯部220と称されるさらなる要素を含んでいる。制動タワー芯部220は、制動タワー205により取り囲まれており、制動タワー205に対し軸方向に設けられ、回転的に固定されている。
図24に示されるように、制動タワー芯部220は、その基端部近くの拡大表面223に設けられている複数の歯222を含んでいる。複数の歯222は、末端部に向って軸方向に突出している。複数の歯222は、制動タワー205の基端部に設けられている対応する歯215に係合するように構成されている。対応する歯の係合は、制動タワー芯部220と制動タワー205との間の相対的回転を阻止する。制動タワー205は、上述されたと同じ方法で、ペン上部本体201に軸方向に且つ回転的に固定されている。示されるように、制動タワー芯部220は、
図24に示されるように、制動タワー芯部220の軸方向の長さに沿って延在する側部開口224を有する実質的に円筒状の要素である。側部開口224は、制動タワー芯部220の断面の外周の長さの約1/5~1/4の長さを含んでいる。側部開口224は、該側部開口224の両端部に2つの長手方向に延在する縁部225および226を形成している。
【0028】
制動タワー芯部220は、制動タワー205したがって、ペン上部本体201に対するピストン・ロッド206の回転を妨げるように機能する。
図25~27に示されるように、制動タワー芯部220は、中空のピストン・ロッド206により取り囲まれている。中空のピストン・ロッド206は、中空のピストン・ロッド206の略全長にわたって設けられている複数のねじ山部分262を含んでいる。ねじ山部分262それぞれは、制動タワー芯部220の側部開口224の外周の部分と略同じ長さを有している。ねじ山部分262は、中空のピストン・ロッド206の内部空洞内に内側に向って突出している。ピストン・ロッド206の外面は、ピストン・ロッド206の表面を突き抜け、その内部に突出する複数の窓部分260を含んでいる。窓部分260は、中空のピストン・ロッド206の製造に役立ち、内部ねじ山部分262を形成するのに役立つように設けられている。ピストン・ロッド206は、
図25および27に示されるように、ねじ山262が制動タワー芯部の開口表面224に合致し、該開口表面224内に突出するように、制動タワー芯部220に対して配置される。この位置において、一対の長手方向に延在する縁部225および226は、ピストン・ロッド206が制動タワー芯部220に対して回転することができないように、突出するねじ山部分262の各縁部に当接する。
【0029】
上記典型的実施形態と同様に、送りねじ204は、中空のピストン・ロッド206の内部に設けられる。ねじ切りされた部分242が送りねじ204の末端部に設けられる。ねじ切りされた部分242は、ピストン・ロッド206の内部に設けられているねじ山部分262に係合するように構成される。上記典型的実施形態と同様に、送りねじ204は、注入中におけるセットバック部材209の回転が送りねじ204に伝達されるように、セットバック部材209に回転的に固定されている。送りねじ204の制動タワー芯部220に対する軸方向の移動は、
図23および28に示されるように、送りねじ204のねじ山が制動タワー芯部220の末端部230における開口の直径より大きいことにより、基端方向に妨げられる。送りねじ204の制動タワー芯部220に対する軸方向の移動は、送りねじ204のフランジ229が制動タワー芯部220の拡大部分223に係合することにより、末端方向に妨げられる。そのようにして、送りねじ204のねじ切りされた部分242と中空のピストン・ロッド206のねじ山部分262との間のねじ山の係合に起因して、(制動タワー205に回転的に固定されている)ピストン・ロッド206に対する送りねじ204の相対的回転は、カートリッジ215の中でピストン・ロッド206を軸方向、末端方向に駆動し、その中に入っている薬剤を吐出させる。
【0030】
図29~37は、上記典型的実施形態と同様に機能を有する注入ペン300の第4の典型的実施形態を例示する。300番台の同じ参照番号は、示された構成要素が実質的に同じである。
図29~37に示される注入ペン300の各構成要素およびそれぞれの機能は、特に断りのない限り、実質的に上記典型的実施形態と実質的に同じである。
【0031】
図29~37に示される典型的実施形態は、変更された制動タワー芯部320を含んでいる。制動タワー芯部320は、制動タワー305に取り囲まれており、制動タワー305に対し軸方向に設けられ、回転的に固定されている。
図32に示されるように、制動タワー芯部320は、その基端部326から突出し、一対の逆向きに突出するアーム321および322を有する。タブ324および325が、アーム321および322それぞれの端部から上方に突出している。アーム321および322は、制動タワー305の基端部354におけるV字形切欠き353により受け止められる。アーム321および322は、タブ324および325が円盤形状部分344に当接するように、送りねじ304の円盤形状部分344(
図33)を受け止める。したがって、送りねじ304は、注入中、制動タワー芯部320に対して回転することができる。制動タワー305は、実質的に上述したと同じようにペン上部本体301に軸方向に且つ回転的に固定される。
【0032】
示されるように、制動タワー芯部320は、
図32に示されるように、制動タワー芯部320の軸方向の長さに沿って延在する側部開口327を有する実質的に円筒状の要素である。側部開口327は、制動タワー芯部320の断面の外周の長さの約1/5~1/4の長さを含んでいる。側部開口327は、側部開口327の両端部に2つの長手方向に延在する縁部328および329を形成している。
【0033】
制動タワー芯部320は、制動タワー305したがってペン上部本体301に対するピストン・ロッド306の回転を妨げるように機能する。
図35に示されるように、制動タワー芯部320は、中空のピストン・ロッド306により取り囲まれている。中空のピストン・ロッド306は、
図35および37に示されるように、好ましくは、ピストン・ロッド306の内面367の全体に沿って略連続的に延在するねじ山342を有する。タブまたはキー361が、
図34に示されるように、ピストン・ロッド306の基端部362において、半径方向内側に向かって突出する。ストッパ316に係合するフランジ366が、ピストン・ロッド306の末端部から外側に向って突出している。ピストン・ロッド306は、
図35に示されるように、タブ361が制動タワー芯部320の開口表面327に受け止められるように、制動タワー芯部320に対して配置される。この位置において、一対の長手方向に延在する縁部328および329は、ピストン・ロッド306が制動タワー芯部320に対して回転することができず、それにより、ピストン・ロッド306の角度方向を制御するように、タブ361の縁部363および364それぞれに当接する。タブまたはキー361は、ピストン・ロッド306が末端方向に移動するとき、制動タワー芯部320のスロット状開口327内にとどまるように、ピストン・ロッド306の基端部にある。
【0034】
上述した典型的実施形態と同様に、送りねじ304は、
図35に示されるように、中空のピストン・ロッド306の内部に設けられる。ねじ切りされた部分342は、
図33に示されるように、送りねじ304の末端部に設けられている。ねじ切りされた部分342は、ピストン・ロッド306の内部に設けられているねじ山部分362に係合するように構成されている。上述した典型的実施形態と同様に、送りねじ304は、注入中におけるセットバック部材309の回転が送りねじ4に伝達されるように、セットバック部材309に回転的に固定されている。制動タワー芯部320に対する送りねじ304の軸方向の移動は、
図35に示されるように、送りねじ204のねじ山が制動タワー芯部320の末端部330における開口の直径よりも大きいことにより、基端方向に妨げられる。制動タワー芯部320に対する送りねじ304の軸方向の移動は、制動タワー305の内側に向って突出するタブ365が拡大部分323と円盤形状部分344との間に配置される送りねじ304の溝345に係合することにより、末端方向に妨げられる。このように、送りねじ304のねじ切りされた部分342と中空のピストン・ロッド306のねじ山362との間のねじ係合に起因して、(制動タワー305に回転的に固定されている)ピストン・ロッド306に対する送りねじ304の相対的回転が、カートリッジ315の内側でピストン・ロッド305を軸方向末端方向に駆動し、その中に入っている薬剤を吐出させる。
【0035】
図38~41は、上記典型的実施形態と同様の機能を有する注入ペン400の第5の典型的実施形態を例示している。400番台の同じ参照番号は、示された構成要素が実質的に同じである。
図38~41に示される注入ペン400の各構成要素およびそれぞれの機能は、特に断りのない限り、実質的に上記典型的実施形態と実質的に同じである。
【0036】
図38~41に示される典型的実施形態は、さらに変更された制動タワー芯部420を含んでいる。制動タワー芯部420は、制動タワー405により取り囲まれており、該制動タワー405に対し軸方向に設けられ、制動タワー405に回転的に固定されている。
図39および40に示されるように、制動タワー芯部420は、その基端部の近くの拡大表面423上に設けられた複数の歯422を有する。複数の歯422は、軸方向末端方向に向って突出していることが好ましい。制動タワー405は、
図34に示される制動タワー205と実質的に同じであり、制動タワー205(
図24)の基端部216に設けられている複数の対応する歯215を有する。制動タワーの歯215と制動タワー芯部の歯422との間の係合は、制動タワー芯部420と制動タワー405との間の相対的回転を妨げる。制動タワー405は、上述した同様の方法で、ペン上部本体401に軸方向に且つ回転的に固定される。
【0037】
図39に示されるように、制動タワー芯部420は、拡大部分423から延在する、略平坦な対向する壁491および493を有する。側部開口424は、制動タワー芯部420の軸方向の長さに沿って延在する対向する壁491および493の間に形成される。側部開口424は、制動タワー芯部420の断面の外周の長さの約1/5から1/4までの長さを含んでいる。側部開口424は、側部開口424の両端部に2つの長手方向に延在する縁部425および426を形成している。
【0038】
制動タワー芯部420は、制動タワー405、したがって、ペン上部本体401に対するピストン・ロッド406の回転を妨げるように機能する。
図38および40に示されるように、制動タワー芯部420は、中空のピストン・ロッド406により取り囲まれる。中空のピストン・ロッド406は、その内面全体にわたって延在するねじ山462を有する。内腔381が、ピストン・ロッド406の基端部382から末端部383まで延在している。内腔381に近づくための開口386の両側部384および385は、
図38に示されるように、略平坦である。
【0039】
ピストン・ロッド406は、制動タワー芯部420の平坦な壁491および493がピストン・ロッド406の内腔開口486の平坦部分484および485により受け止められるように、制動タワー芯部420に対して配置される。送りねじ404は、送りねじのねじ山442が、制動タワー芯部420の末端部494を過ぎてピストン・ロッドのねじ山462に係合するように、制動タワー芯部420を貫通して挿入される。注入中における送りねじ404の回転は、これらのねじ山の間の係合に起因して、結果的に、ピストン・ロッド406の軸方向の移動をもたらす。制動タワー芯部420の平坦な壁491および493とピストン・ロッド406の平坦な部分484および485との間の係合は、注入中における制動タワー芯部420に対するピストン・ロッド406の回転を妨げる。
【0040】
上述した典型的実施形態と同様に、送りねじ404は、注入中におけるセットバック部材409の回転が送りねじ404に伝達されるように、セットバック部材409に回転的に固定される。制動タワー芯部420に対する送りねじ404の軸方向の移動は、
図41に示されるように、送りねじ404のねじ山が制動タワー芯部420の末端部494における開口の直径より大きいことにより、基端方向において妨げられる。制動タワー芯部420に対する送りねじ404の軸方向の移動は、送りねじ404のフランジ429が制動タワー芯部420の拡大部分423に係合することにより、末端方向において妨げられる。このように、送りねじ404のねじ切りされた部分443と中空のピストン・ロッド406のねじ山462との間のねじ係合に起因して、(制動タワー405に回転的に固定されている)ピストン・ロッド406に対する送りねじ404の相対的回転は、カートリッジ415の内側でピストン・ロッド405を軸方向末端方向に駆動し、その中に入っている薬剤を吐出させる。
【0041】
図42~51は、上記典型的実施形態と同様の機能を有する注入ペン500の第5の典型的実施形態を例示している。500番台の同じ参照番号は、示された構成要素が実質的に同じである。
図42~51に示される注入ペン400の各構成要素およびそれぞれの機能は、特に断りのない限り、実質的に上記典型的実施形態と実質的に同じである。
【0042】
図11に示されるように、送りねじ4は、制動タワー5の内面上の複数の突起54を形成する断続リングに嵌め込まれる。第6の典型的実施形態において、
図42に示されるように、送りねじ504は、制動タワー505が嵌め込まれる連続リング591を有する。連続リング591は、組み立てを容易にするばかりでなく、リング591の連続性に起因して分解力に耐える可撓性の部材である。
【0043】
送りねじ504は、
図43および44に示されるように、末端部543に形成された外部ねじ山542を有し、ピストン・ロッド506のねじ山に係合する。連続リング591は、送りねじ504の基端部544に配置されている。連続リング591は、内面592および外面593を有する。外周縁部594は、リング591の内面592から突出している。外周縁部594は、
図44に示されるように、傾斜面595を有し、制動タワー505の挿入を容易にする。
【0044】
タワー芯部520は、
図45に示されるように、送りねじ504上に配置される。タワー芯部520は、送りねじ504を受け入れる開口面を有する。送りねじ504および制動タワー芯部520は、この場合、
図46に示されるように、制動タワー505の基端部583における開口581を通って挿入される。制動タワー505の基端部583における開口581は、このとき、
図47および48に示されるように、制動タワー芯部520の拡大部分523を受け入れるように、外側に向って変形する(flex)。送りねじ504は、まだ、制動タワー505に結合されてはおらず、該制動タワー505の基端部にある開口581が変形し、それにより、ストレスが減少することを可能にする。制動タワー芯部520の拡大部分523は、制動タワー505の内部空洞内に収容される。
【0045】
図49に示されるように、送りねじ504は、制動タワー505にスナップ結合される(is snap-connected)。送りねじ504を末端方向に押すことは、リング591の縁部594の傾斜面595を制動タワー505の基端部583にある傾斜面584に沿って外側に向って変形させる。外周縁部594は、その基端部583に隣接する制動タワー505の外面に形成されている凹部585に嵌め込まれる。制動タワー芯部520は、まだ、制動タワー芯部520が自由に回転できるように、制動タワー505に回転的にロックされていない。
【0046】
図50に示されるように、ピストン・ロッド506は、制動タワー505の内部空洞内にその末端部から挿入される。ピストン・ロッド506の内部ねじ山562は、ピストン・ロッド506が制動タワー505内へ基端方向に螺合する(is threaded)ように、送りねじ504のねじ山542(
図45)上に螺合する。ピストン・ロッド506は、ピストン・ロッド506の基端部563が制動タワー芯部520の拡大部分523に当接するまで螺合する。このとき、制動タワー芯部520は、制動タワー505内へ末端方向に押され、それにより、制動タワー芯部520を制動タワー505にロックする。ピン(不図示)が、送りねじのねじ山542のブレイク(the break)543を通って挿入され、制動タワー芯部520を制動タワー505にロックすることを容易にする。
【0047】
図52~75は、上記典型的実施形態と同様の機能を有する注入ペン600の第7の典型的実施形態を例示している。600番台の同じ参照番号は、示された構成要素が実質的に同じである。
図52~75に示される注入ペン600の各構成要素およびそれぞれの機能は、特に断りのない限り、実質的に上記典型的実施形態と実質的に同じである。
【0048】
図52~75に示される典型的実施形態は、
図67~70に示されるように、クリッカー本体(a clicker body)680と称される追加要素を含んでいる。クリッカー本体680は、
図53に示されるように、投与量設定摘み602により取り囲まれえいる。上部リング682の上面681には、押し釦603が係合している。上部リング682の下面689には、セットバック部材609の末端部690が係合している。一対の可撓性アーム683が、
図67および70に示されるように、上部リング682に結合されている。下部リング684が、
図69に示されるように、上部リング682に結合されている。下部リング684は、
図67および68に示されるように、下部リング684に結合されている一対の可撓性アーム685を有する。フック(hooks)686が、上部リングの可撓性アーム683の自由端に配置され、フック687が、下部リングの可撓性アーム687の自由端に配置される。上部リングのフック686および下部リングのフック687の傾斜面は、約15度の角度を形成していることが好ましい。開口688は、クリッカー本体680に形成され、押し釦603を収容する。上部リングの可撓性アームのフック686は、
図53に示されるように、投与量設定摘み602の歯691に係合する。下部リングの可撓性アームのフック687は、セットバック部材609の歯692に係合する。
【0049】
制動タワー芯部620は、制動タワー605により取り囲まれており、該制動タワー605に対し軸方向に設けられ、該制動タワー605に回転的に固定されている。
図60および72~74に示されるように、制動タワー芯部620は、基端部において軸方向に延在するキー623を有する。該キー623は、制動タワー605の基端部に配置されるV字形切欠きにより受け止められる。キー623は、
図72~74に示されるように、内側に向ってしだいに細くなる側面を有し、制動タワー605のV字形切欠き653との係合を容易にし、それにより、制動タワー芯部620を制動タワー605に回転的にロックする。制動タワー605は、上述したような方法で軸方向に且つ回転的にペン上部本体601に固定される。
図60に示されるように、制動タワー芯部620は、制動タワー芯部620の軸方向の長さに沿って延在する側部開口624を有する実質的に円筒状の要素である。側部開口624は、制動タワー芯部620の断面の外周の長さの約1/5~1/4の長さを含んでいる。側部開口624は、側部開口624の両端部において2つの長手方向に延在する縁部625および626を形成する。
【0050】
制動タワー芯部620は、制動タワー605、したがって、ペン上部本体601に対するピストン・ロッド606の回転を妨げるように機能する。
図53に示されるように、制動タワー芯部620は、中空のピストン・ロッド606により取り囲まれている。中空のピストン・ロッド606は、
図63および64に示されるように、中空のピストン・ロッド606の略全長にわたって延在する内部ねじ山662を含んでいる。ピストン・ロッド606は、
図75に示されるように、ピストン・ロッド606が制動タワー芯部620に対して回転することが妨げられるように、内側に突出するキー661が長手方向に延在する縁部625および626に係合するように、制動タワー芯部620に対して配置されている。
【0051】
上記典型的実施形態と同様に、送りねじ604(
図59)が、中空のピストン・ロッド606の内部に設けられる。ねじ切りされた部分642は、送りねじ604の末端部に設けられる。ねじ切りされた部分642は、ピストン・ロッド606の内部ねじ山662に係合するように構成される。上記典型的実施形態と同様に、送りねじ604は、注入中におけるセットバック部材609の回転が送りねじ604に伝達されるように、セットバック部材609に回転的に固定される。送りねじ604は、
図53および72~74に示されるように、制動タワー605内に嵌め込まれている制動タワー芯部620内に嵌め込まれる。送りねじ604のフランジ633は、制動タワー芯部620の基端部が基端フランジ646と該フランジ646から間隔をおいて配置されるフランジ633との間に配置される送りねじ604の環状溝645に受け止められるように、制動タワー芯部620の溝632(
図60)により受け止められる。制動タワー芯部620のフランジ644は、制動タワー605の内側に向って突出するリップ(a lip)665により受け止められる。制動タワー605に対する送りねじ604の軸方向の移動は、制動タワー芯部620のフランジ644が制動タワー605の内側に向って突出するリップ665に当接することにより、基端方向に妨げられる。制動タワー芯部620の軸方向基端方向への移動を妨げることは、制動タワー芯部620にスナップ嵌合で結合されている送りねじ604の軸方向基端方向への移動を妨げる。制動タワー605に対する送りねじ604の軸方向の移動は、送りねじ604のフランジ646が制動タワー605の末端部に当接することにより、末端方向に妨げられる。このように、送りねじ604のねじ切りされた部分642と中空のピストン・ロッド606の内部ねじ山662との間のねじ係合に起因して、ピストン・ロッド606に対する(制動タワー芯部620に回転的に固定されている)送りねじ604の相対的回転は、カートリッジ615の内側でピストン・ロッド606を軸方向末端方向に駆動し、ストッパ616を移動させ、その中に入っている薬剤を吐出させる。
【0052】
第7の典型的実施形態の注入ペン600を用いて投与量を設定するために、使用者は、ペン上部本体601に対して投与量設定摘み602の摘み部分を回転させる。投与量設定摘み602の外面659は、
図65および66に示されるように、ペン上部本体601の内面に設けられている複数のねじ山617とねじ係合する、
図54および55に示されるようなねじ山619を含んでいる。したがって、投与量設定摘み602がペン上部本体601に対して回転すると、投与量設定摘み602は、ペン上部本体601からある距離引き出されるかまたは前進する(
図3)。投与量設定摘み602は、
図5に示されるように、基端部の近くの内面に、環状の肩部または縁部621を含んでいる。環状の肩部621は、
図53に示されるように、セットバック部材609の拡大部分または拡大ヘッド699(
図56~58)と係合する。投与量設定摘み602の環状の肩部621は、セットバック部材609の拡大ヘッド699に設けられている複数の同様の形状をした歯または隆起部698と係合する一連の歯または隆起部622を備えることが好ましい。投与量設定摘みの歯622およびセットバック部材の歯698は、軸方向逆方向に突出していることが好ましい。投与量設定中、投与量設定摘み602は、セットバック部材609に対して、時計回りおよび反時計回りの両方向に回転することができる。このことが起こると、投与量設定摘み602の複数の歯または隆起部622は、セットバック部材609のヘッド部分699に設けられている歯698を通過し、したがって、触覚信号またはカチッという音をもたらし、投与量の設定を知らせる。以下にさらに説明されるように、投与量設定摘み602は、セットバック部材609が設定方向に投与量設定摘み602と一緒に回転することを妨げる一方向ラチェットにより、設定中、セットバック部材609に対して回転することができる。
【0053】
クリッカー本体680は、投与量設定中において、触覚信号またはカチッという音を発生させることを容易にする。クリッカー本体680の上部リングのフック686は、投与量設定摘み602がペン上部本体601から前進するとき、クリッカー本体が投与量設定摘み602とともに回転するように、投与量設定摘み602の歯691(
図54および55)にロックされる。下部リングのフック687は、セットバック部材609の歯692(
図56および57)を越えて摺動する。したがって、接触信号またはカチッという音が発生し、投与量が設定されていることを使用者に知らせる。
【0054】
多すぎた設定投与量を修正するために、使用者は、投与量設定摘み602を単に逆方向に回転させて戻す。この方向への投与量設定摘み602の回転は、セットバック部材609と制動タワー605との間の一方向ラチェットにより、セットバック部材609には伝達されない。セットバック部材609は、
図56~58に示されるように、一対のラチェット・アーム696を有する。一対のラチェット・アーム696は、
図61および62に示されるように、制動タワー605の外面に設けられている複数のキー溝または歯652に係合する。ラチェット・アーム696およびキー溝または歯652は、一方向のみへの、すなわち、設定投与量の注入を可能とする方向への相対的回転を許容するように構成される。ラチェット・アーム696と制動タワー605の歯652との間にもたらされる摩擦は、セットバック部材609および投与量設定摘み602それぞれの対応する歯698と622との間の摩擦より大きい。したがって、投与量設定摘み602は、設定投与量を修正するために、セットバック部材609の回転を引き起こすことなく、この方向に回転させて戻すことができる。したがって、セットバック部材609および投与量設定摘み602それぞれに設けられている歯692および622は、投与量の戻し中において、互いに通過し、カチッという音を提供し、それにより、設定投与量の修正を知らせる。
【0055】
クリッカー本体680は、また、投与量設定中、触覚信号またはカチッという音を発生させるのに役立つ。クリッカー本体680の下部リングのフック687は、クリッカー本体680がセットバック部材609に回転的にロックされるように、セットバック部材609の歯692(
図56および57)にロックされる。投与量設定摘み602が修正するためにペン上部本体601内に戻るときの投与量設定摘み602の回転は、投与量設定摘み602の歯691(
図54および55)がクリッカー本体680の下部リングのフック687を越えて摺動することを引き起こし、それにより、触覚信号またはカチッという音を発生させ、投与量が修正されていることを使用者に知らせる。したがって、クリッカー本体は、投与量設定および投与量修正中において触覚信号またはカチッという音を発生させるのに役立つ。
【0056】
投与量設定摘み602が、投与量設定中に、軸方向に上部本体601から引き出され、または前進すると、セットバック部材609は、また、対応する距離分本体から外に軸方向に移動する。この軸方向の移動は、本体からのその移動中において、投与量設定摘み602の環状肩部621がセットバック部材609の拡大ヘッド部分699を押している間の係合により引き起こされる。一旦、所望の投与量が設定されると、使用者は、セットバック部材609に軸方向に結合されているクリッカー・リング680に連結されている押し釦603を押す。押し釦603を押圧する使用者により加えられる力の下で、セットバック部材609は、投与量設定摘み602およびセットバック部材609それぞれに設けられている歯または隆起部698および622のかみ合いを介して投与量設定つまみ602にロックするかまたはかみ合うように移動する。使用者が、押し釦603を押し続けると、投与量設定摘み602は、投与量設定摘み602のねじ山619とペン上部本体601のねじ山617との間のねじ係合を介して、ペン上部本体601内に引き戻される。このとき、投与量設定摘み602の回転は、それらのロック係合またはかみ合い係合により、セットバック部材609に伝達される。使用者が釦603を押す力は、セットバック部材609のラチェット・アーム696と制動タワー605の歯またはキー溝652との間の摩擦に打ち勝つのに十分である。結果として、セットバック部材609は、この方向に回転可能である。注入中、セットバック部材609が制動タワー605に対して回転すると、ラチェット・アーム696は、該アーム696が制動タワー605の歯652を通り過ぎるとき、触覚信号またはカチッという音を作り出す。このことは、設定投与量の注入が行われていることを使用者に知らせる。投与量設定摘み602およびセットバック部材609は、注入中、一緒に回転するので、クリッカー本体680は、投与量設定摘み602またはセットバック部材609のどちらかに対して回転することはない。したがって、クリッカー本体680は、設定投与量を注入するとき、クリッカー本体680が、触覚信号またはカチッという音を発生しないように、投与量設定摘み602およびセットバック部材609の両方と一緒に回転する。
【0057】
次に、注入中に許容されるように、セットバック部材609の回転は、送りねじ604とセットバック部材609との間にもたらされるキー溝結合を介してセットバック部材609に回転的に固定されている送りねじ604に伝達される。
図56および57に示されるように、セットバック部材609の内面668は、
図59に示されるように、送りねじ604の基端部に設けられているキー648と係合する溝またはスロット697を含んでいる。セットバック部材609は、送りねじ604に設けられている対向して配置される2つのキー648に係合する、対向して配置される2つのスロット697を含んでいることが好ましい。セットバック部材609は、投与量設定中および投与量修正中、(実質的に
図10と同様に)キー648とスロット697とも相互結合を介して、送りねじ604に対して軸方向に移動する。セットバック部材609のスロット697の長さは、一回の注入において注入される最大投与量に相当するように構成される。送りねじ604は、以下にさらに説明されるように、ペン上部本体601に軸方向に且つ回転的に固定されている制動タワー605との上述したスナップ式係合を介して、ペン上部本体601に対して軸方向に固定されている。
図72~74に示されるように、送りねじ604は、制動タワー芯部620の凹部632により収容される、内側に配置されるフランジ633を含んでいる。制動タワー芯部620のフランジ644は、制動タワー605の内側に延在するリップ665により収容され、それにより、制動タワー605およびペン上部本体601に送りねじ604をロックする。
【0058】
上述したように、送りねじ604は、その末端部において、
図53および64に示されるように、好ましくは中空のピストン・ロッド606の全長にわたって設けられている内部ねじ山662とねじ係合する複数のねじ山642を含んでいる。ピストン・ロッド606は、
図75に示されるように、ピストン・ロッドのキー661と制動タワー芯部620の外縁部625および626との間の係合により、ペン上部本体601に対して回転不能に保持される。ピストン・ロッドのキー661は、制動タワー芯部620の軸方向に延在する外縁部625および626によりその軸方向の移動を案内され、それにより、それらの間の相対的回転が妨げられ、他方、ピストン・ロッド606がそれに対して軸方向に移動することを可能にする。セットバック部材609が投与量設定中および修正中に回転しないので、送りねじ604は、投与量設定中および修正中に回転しない。このことは、投与量設定中および修正中におけるピストン・ロッド606の移動を妨げる。したがって、投与量の注入中における送りねじ604の回転は、送りねじ604のねじ山642をピストン・ロッド606のねじ山662に係合させ、それにより、ピストン・ロッド606を軸方向に移動させる。
【0059】
組み立て中、制動タワー605は、末端部からペン上部本体601内に挿入される。
図53および66に示されるように、ペン上部本体601は、制動タワー605の拡大末端部666を遮断することにより制動タワー605の本体601内への移動を制限する横断壁660を含んでいる。さらに、
図66に示されるように、内側に向って突出するキー663が、ペン上部本体601の内面664上であって横断壁663から末端方向に設けられる。キー663は、
図61および62に示されるように、制動タワー605の拡大末端部分666に設けられているスロット655と係合し、ペン上部本体601に対して制動タワー605を回転的に嵌めこむ。複数の軸方向に延在するキー663がペン上部本体601の内面に配置され、制動タワー605の拡大末端部分666の複数のスロット655に係合することが好ましい。
【0060】
ピストン・ロッド606は、本体601に対して回転不能であるので、送りねじ604が、上述したように、セットバック部材609との回転連結に起因して注入中に回転すると、ピストン・ロッド606は、ピストン・ロッドのフランジ618が薬剤カートリッジ615に設けられているストッパ616を押し、したがって、そこから液剤を吐出するように、送りねじ604とのねじ係合を介して、末端方向に移動する。送りねじ604は、セットバック部材609と制動タワー605との間の一方向ラチェットにより、(ピストン・ロッド606の末端方向への移動をもたらす)一方向にのみ回転可能であるので、ピストン・ロッド606は、基端方向に移動することを妨げられている。投与量設定摘み602が、注入中のピストン・ロッド606より以上に軸方向に移動し、使用者により加えられなければならない注入力を減少させるように、機械的利点がもたらされることが好ましい。このことは、投与量設定摘み602とペン上部本体601とのあだのねじ結合および送りねじ604とピストン・ロッド606との間のねじ結合に対し異なるピッチを提供することにより成し遂げられることが好ましい。ねじ山ピッチ間の比率は、液剤および予想投与量の容積に依存して変化し得る。例えば、ピッチ比は、それに限定されるものではないが、4.35:1または3.25:1であり得る。したがって、ピストン・ロッド606が注入の間のストッパ616との係合を維持するので、正確な投与が保証され得る。
【0061】
投与量停止部材607は、
図53に示されるように、最後の投与量管理のために提供され、カートリッジ615内に残っている薬剤の量より大きい投与量の設定を防止する。投与量停止部材607は、軸方向に摺動可能であるが、セットバック部材609の外面に設けられている一対のキー溝694の間に配置されることにより、セットバック部材609に対して回転的に固定されている。投与量停止部材607は、複数のねじ山672を有するその外面にねじ切りされている半ナット状要素(
図2B)である。これらのねじ山672は、
図55に示されるように、投与量設定摘み602の内部に設けられている対応するねじ山674と係合するように構成される。投与量設定中に、投与量設定摘み602がセットバック部材609に対して、したがって、投与量停止部材607に対しても回転すると、投与量停止部材607は、投与量設定摘み602のねじ山674との係合に起因して設定投与量に対応する距離だけ、末端方向に摺動する。
【0062】
注入中、セットバック部材609および投与量設定摘み602は、上述したように、回転的に連結されているので、投与量停止部材607は、投与量設定摘み602のねじ山674に対するその位置を維持するだろう。投与量停止部材607は、投与量設定中、
図55に示されるように、投与量停止部材607の末端縁部673が、投与量設定摘み602の内面に設けられている内側に向かうキー675に当接するまで、末端方向に移動するだろう。この位置において、投与量停止部材607は、追加の投与量を設定するために投与量設定摘み602のさらなる回転を妨げる末端方向へのさらなる移動が妨げられる。
【0063】
図76~80は、
図52~66および71~75に示される第7の典型的実施形態の注入ペンと同様の機能を有する注入ペンの第8の典型的実施形態を例示している。
図76~80に示される典型的実施形態は、
図52~66および71~75のクリッカー本体780に取って代わる変更されたクリッカー本体751を含んでいる。注入ペンの残りの構成要素および機能は、注入ペン600に実質的に同じである。
【0064】
クリッカー本体751は、
図76および77に示されるように、上部歯752の組み及び下部歯753の組みを有して、実質的にリング状に形成されている。上部歯752は、下部歯753の傾斜面に対向する傾斜面を有することが好ましい。上部歯752および下部歯753の傾斜面は、約15度の角度を形成することが好ましい。
図76および80に示されるように、クリッカー本体751は、投与量設定摘み702の環状肩部725とセットバック部材709の拡大部分731との間に配置される。複数の歯721は、投与量設定摘み702の肩部725から軸方向基端方向に突出する。複数の歯723は、セットバック部材709の拡大部分731から軸方向末端方向に突出する。支持挿入体708は、
図80に示されるように、セットバック部材709の環状溝726内に収容される。押し釦703は、支持挿入体708の開口部734により収容される突起733を有している。押し釦703の末端スカート部735は、投与量設定摘み702の基端部737に隣接する凹部736により摺動的に収容される。
【0065】
クリッカー本体751は、投与量設定中に、触覚信号またはカチッという音を発生させるのに役立つ。クリッカー本体751の上部歯752は、投与量設定摘み702がペン上部本体から前進するとき、クリッカー本体751が投与量設定摘み702とともに回転するように、投与量設定摘み702の歯721(
図79)にロックされる。下部歯753は、セットバック部材709の歯723(
図78)を越えて摺動する。したがって、触覚信号またはカチッという音が発生し、投与量が設定されていることを使用者に知らせる。
【0066】
クリッカー本体751は、また、投与量修正中においても、触覚信号またはカチッという音を発生させるのに役立つ。クリッカー本体751の下部歯753が、クリッカー本体751がセットバック部材709に対して回転可能にロックされるように、セットバック部材709の歯723(
図78)にロックされる。投与量設定摘み702が、投与量を修正するためにペン上部本体701内に戻されるときの投与量設定摘み702の回転は、投与量設定摘み702の歯721(
図79)にクリッカー本体751の上部歯752を越えて摺動させ、それにより、触覚信号またはカチッという音を発生させ、投与量が修正されていることを使用者に知らせる。したがって、クリッカー本体751は、投与量設定中および投与量修正中に起きて、触覚信号またはカチッという音を発生させるのに役立つ。
【0067】
投与量設定摘み702およびセットバック部材709は、注入中、一緒に回転するので、クリッカー本体751は、投与量設定摘み702またはセットバック部材709のどちらか一方に対して回転しない。したがって、クリッカー本体751は、設定投与量を注入しているとき、クリッカー本体751が触覚信号またはカチッという音を発生しないように、投与量設定摘み702およびセットバック部材709の両方と一緒に回転する。
【0068】
本発明が特定の例示的実施形態を参照して示され且つ説明されてきたが、本発明は、そのような典型的実施形態により制限されるものではなく、添付されたクレームおよびその等価物によってのみ制限される。当業者は、添付されたクレームおよびその等価物により規定されるように、本発明の範囲および精神から逸脱することなく典型的実施形態を変更し、または修正することができることは明白である。