(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091845
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】美容器、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068743
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2019056054の分割
【原出願日】2019-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 岩男
(57)【要約】
【課題】体感の程度を調整するために電圧等を一定に保ちつつ周波数を変化させることで実現する美容器とその制御方法を提供する。
【解決手段】使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部と、前記2以上の電極の間に前記交流電流を出力する交流電流発生部と、を備え、前記2以上の電極間の距離が2nmないし10nmであって、前記2以上の電極の間に110kHzないし200kHzの範囲の周波数を出力することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する美容器を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、
2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部と、
前記2以上の電極の間に前記交流電流を出力する交流電流発生部と、を備え、
前記2以上の電極間の距離が2nmないし10nmであって、前記2以上の電極の間に110kHzないし200kHzの範囲の周波数を出力することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する、
ことを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記美容器において、
使用者の体感の程度を調整する感度調整部と、
前記交流電流発生部から出力する前記交流電流の周波数を3段階以上の多段階又は無段階で設定する周波数設定部と、
該感度調整部の調整に基づいて該周波数設定部が周波数を設定することにより感度の調整を行うようにした
請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記感度調整部が、使用者が任意に調整可能な調整手段を備えた
請求項2に記載の美容器。
【請求項4】
前記美容器において、
使用者の肌面の抵抗値を測定する抵抗値測定部を備え、
前記周波数設定部が、前記感度調整部の調整と該抵抗値に応じて所定の規則に従って前記交流電流発生部から出力する前記交流電流の周波数を調整する
請求項2に記載の美容器。
【請求項5】
前記美容器において、
前記交流電流の周波数を3段階以上の多段階又は無段階で設定する周波数設定部と、
使用者の肌面の抵抗値を測定する抵抗値測定部を備え、
該周波数設定部が、該抵抗値に応じて所定の規則に従って該交流電流発生部から出力する該交流電流の周波数を調整する
請求項1に記載の美容器。
【請求項6】
前記美容器において、電極の抵抗値が10Ω以下である、
請求項1ないし5のいずれかに記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流を印加して使用者の肌面に対して刺激と同時に温熱効果を与える美容器に関し、特にその制御方法に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から所定の周波数の電流を印加する美容器が知られている。EMS(Electrical Muscle Stimulation)と呼ばれる電気的筋肉刺激を与える美容器や、さらに高い周波数帯を用いて温熱効果を与え、肌のハリ、弾力を高めるRF美容器が提供されている。
【0003】
EMSでは数Hzから数kHzの周波数で電気刺激を肌に与えることで筋収縮を起こして筋肉運動をさせ、たるみを改善させることができる。
また、RFでは例えば1Mhz程度の高周波を用いて肌の内部を温め、コラーゲン・エラスチンの生成を促し、シワ・ハリ・たるみの改善を図ることができる。
たるみの改善として、何れの方法も効率よくケアすることが良いとされている。
【0004】
特許文献1には、高周波美容処理装置において、肌が局所的に熱を持ってしまうことを防止することができる技術が提案されている。本文献では、高周波美容処理装置が、携帯可能な筐体と、前記筐体の先端部に互いに所定の間隔を開けて配置された、被施術者の肌に当接する施術面を有する並行電極と、前記筐体に内蔵され、前記一対の並行電極に高周波電流を供給する第1の電源部とを具備する構成が開示されている。
【0005】
特許文献2には、利用者に過度の痛みを感じさせること無く大きな電流を利用者の体内に搬送することができる筋肉トレーニング装置が提案されている。本装置では、制御部は操作部経由で利用者からの電気刺激信号、すなわち電流値の大きさを入力されて電気刺激信号の増大の指示を受け、記憶部をアクセスして電流周波数相関データを参照し、利用者の指定した電気刺激信号の大きさに対応する周波数を得て、当該電気刺激信号の大きさと周波数とを電気刺激出力部へ出力する。電気刺激出力部は制御部からデータを入力し、電気刺激信号を生成して各導子に出力する構成が開示されている。
【0006】
特許文献3には、人体患部での干渉波の発生位置の深さを調節して満足のいく通電治療ができる干渉低周波治療器が提案されている。この干渉低周波治療器において、制御部は周波数設定機能を備え、二つの中周波電流の周波数の任意な変更により人体局部における干渉波発生位置の深さを変えることができる、としている。
【0007】
従来技術においても周波数を可変することは知られているが、その目的は電気刺激を与える相対的に低い周波数帯と、温熱効果を与える相対的に高い周波数帯とを切り換えることで、異なる美容効果を実現するためであった。
【0008】
また、特許文献2は電気刺激信号と周波数を正比例させることなどが開示されているが、使用する周波数として数Hzから数kHzの範囲であり、技術的にも高い周波数に対応することはできない。電気刺激信号の大きさは電流値であり、周波数だけで調整するものではなく、また電流値を調整する必要もある。
【0009】
特許文献3は2つの中周波電流を任意に設定して干渉波発生位置の深さを変えるために、周波数の設定ツマミと共に強さ設定ツマミを備えており、強さは干渉波搬送波電流の大きさで調整する構成である。従って、周波数により強さを調整するものではなく、複雑な構成を必要としている。
【0010】
その他の従来技術においても、EMSによる電気的筋肉刺激を与える美容器と、高い周波数帯を用いて温熱効果を与え、肌のハリ、弾力を高めるRF美容器とは別体で提供されるか、あるいは切り換え式としていずれか一方の美容効果を与える機器として提供されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6212608号
【特許文献2】特許第4057558号
【特許文献3】特開平8-112362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の有する問題に鑑みて創出されたものであって、高周波による温熱効果と、EMSによる電気刺激を合わせて与えることにより、肌のたるみの改善等の美容効果を実現する美容器とその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容器を提供する。
すなわち、本発明の第1の実施形態によれば、使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、2以上の電極を備えて該電極間に交流電流を印加する電極部と、100kHzないし200kHzの範囲の周波数の交流電流を出力する交流電流発生部とを備え、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与することを特徴とする美容器を提供する。
【0014】
本発明の第2の実施形態によれば、上記の美容器において、使用者の体感の程度を調整する感度調整部と、交流電流の周波数を3段階以上の多段階又は無段階で設定する周波数設定部と、感度調整部の調整に基づいて該周波数設定部が周波数を設定することにより感度の調整を行うようにすることもできる。
【0015】
本発明の第3の実施形態によれば、上記感度調整部が、使用者が任意に調整可能な調整手段を備えることもできる。
【0016】
本発明の第4の実施形態によれば、上記の美容器において、使用者の肌面の抵抗値を測定する抵抗値測定部を備え、周波数設定部が、前記感度調整部の調整と該抵抗値に応じて所定の規則に従って調整するか、又は、感度調整部を備えずに、前記周波数設定部が、該抵抗値に応じて所定の規則に従って調整するか、の少なくともいずれかの構成とすることもできる。
【0017】
本発明の第5の実施形態によれば、上記の美容器において、交流電流が印加される1組の電極間の距離が1mmないし30mmであって、電極の抵抗値が10Ω以下である時に、特に好適である。
【0018】
また、本発明によれば、美容器の制御方法を提供することができる。
すなわち、使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器の制御方法であって、電圧又は電流を略一定に保ちながら、100kHzないし200kHzの範囲の周波数の交流電流を電極部から印加することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与することを特徴とする美容器の制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、1MHz程度のRFと同等の温感を感じつつ、EMSの筋肉運動を可能とする周波数を見出した。これによって、高周波及びEMSによる美容効果を同時に与えることができる美容器を提供することができ、有効な筋肉運動をさせながら温感を感じさせ、たるみの改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1及び
図2は本発明に係る美容器(1)の斜視図及び正面図である。美容器(1)は使用者が手で把持する本体部(10)と電極を備えたヘッド部(11)とから構成される。本体部(10)には体感の程度を調整するためのレベルスイッチ(12)、電源の入り切りやモードを切り換えるための電源スイッチ(13)、本体の状態を示すインジケータ(14)などを備えている。
【0022】
本体部(10)には、充電池を備えて底面に備えた給電端子からの給電により充電したり、給電して使用することができるが、充電機能の有無や給電の方法は問わない。
【0023】
ヘッド部(11)には、環状の2つの電極部(20)(21)を備えており、使用者がヘッド部(11)を肌面に当接させ、中央の電極部(20)と外郭の電極部(21)との間に交流電流を印加することによって電気刺激などの美容効果を奏することができる。
また、本発明では必須ではないが、相対的に高い周波数帯の交流電流を印加することにより肌面に対する温熱効果を奏することもできる。
【0024】
EMSと呼ばれる電気的筋肉刺激や、RF(ラジオ周波数)を用いた温感効果については周知であるから原理の説明は省略する。
また、上記の美容器の構成については自由に変更することができる。本体の形状はもちろん、電極部の態様、形状等も全く限定されるものではない。電極の構成については後述する。
【0025】
本発明では、体感の程度の調整は必ずしも行わなくてもよいのでレベルスイッチ(12)は備えなくてもよい。
【0026】
従来の美容器では、EMSの刺激の程度を調整する際に、交流電流の周波数は一定のままで電圧を変化させることで実現していた。
図3(a)は従来の交流電流の波形のイメージを示したものであり、振幅(電圧)を大きくすることで刺激が強くなる。
一方、
図3(b)に示すように、本実施例によれば、電圧は一定に保ったままで周波数を変化させることで刺激の強弱を調整することができる。
【0027】
従来技術に関して述べたように、従来から周波数を変化させる技術は知られているが、その目的はEMSとRFの切り換えのためである。すなわち、EMSでは数Hzから数kHzの周波数帯の交流電流を印加し、RFに切り換えるときには数百kHz以上の周波数帯に変化させる。従って、美容効果のモードを切り換えるために低い周波数と高い周波数を2段階で変化させればよい。
【0028】
モードの切り換えとは別に、強弱を調整するために例えば40Vの電圧から80Vまで電圧を可変する。肌の特性や感覚によって刺激の感じやすさが異なるため、使用者は肌面に当接させて電気刺激を試し、筋肉運動が不十分なときは電圧を上げる操作を行う。これによって体感レベルを変化させることができるが、電圧を上げると筋肉運動が活発になるだけでなく、ピリピリとした不快感を感じる問題があった。
【0029】
そこで、本発明者は、強弱の調整に周波数の変化を用いることができることを見出し、さらに研究を重ねて調整に必要な周波数の領域を提供するものである。
まず周波数を低くすると筋肉運動は活発となり、体感の程度が強くなる。逆に周波数を高くすると徐々に筋肉運動が収まり、温感効果が高くなる特性がある。特に、複数の試験者による実験の結果、100kHzないし200kHzの間において電気刺激と温感を同時に与えられることを見出した。
表1は、本発明において実験した温感と電気刺激の実験結果である。
【0030】
【0031】
表1において△は電気刺激を感じ取れる上限の周波数、◎は心地良く使える周波数を示している。また、網掛けされている領域は被験者が温感ありと回答した。
上記の結果によれば、100kHz以上で温感を感じる者が多く、110kHz以上で全員が体感したことが分かった。
なお、本実験では表れていないが、さまざまな実験において周波数が300kHzの場合にも試験者や肌の状態により電気刺激を感じることがあったが、本発明における好適な範囲とは言えないことから当該範囲については除外している。
【0032】
発明者の研究により見出された上記の特性によると、100kHzないし200kHの領域において、電気刺激及び温感を感じることができ、従来では提供できなかった2つの美容効果を同時に提供することが示されている。
特に、多くの者が心地良く使えると回答した100ないし150kHzが最も好適な範囲であると考えられる
【0033】
従って、本発明では、電極間に交流電流を印加する構成において、100kHzないし200kHzの範囲の周波数の交流電流を出力する交流電流発生部を備えて、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する構成を提供する。
【0034】
さらに、本発明では周波数を変動させて電気刺激の程度を調整出来るようにしてもよい。
すなわち、体感を感じにくい人は周波数を下げ電気刺激を増やすと好ましく、体感を感じやすい人は周波数を上げて電気刺激を減らし、電圧を変更することなく体感を変えることでピリピリ感がなく、かつ強い体感を得ることができるようになる。
【0035】
本発明において、電圧は40Vないし80Vの範囲が好ましい。発明者らの実験によると、80V以上とした場合、使用者によって不快感が高まることが確認された。快適に適切な電気刺激を与える電圧は、40Vないし80Vの範囲、特に約60Vが好ましい。
上記周波数の範囲は、この電圧範囲において特に効果を有する。
【0036】
本発明にかかる美容器(1)の構成図を
図4に示す。
美容器(1)には、電気回路やコンピュータで構成される制御基板(30)、制御基板(30)と接続された電極部(31)、感度調整部(32)、電池(33)などが配設される。制御基板には交流電流の周波数を3段階以上の多段階又は無段階で設定する周波数設定部(34)と、設定された周波数を出力する交流電流発生部(35)とを備える。
【0037】
電極部(31)は、2以上の電極を備えて電極間に交流電流を印加する。感度調整部(32)は
図1に示したレベルスイッチ(12)のようなボタン式のほか、ダイヤル式のスイッチなどによって使用者の体感の程度を調整する。電池(33)は充電池、乾電池の他、ソーラーパネルや外部電源に置き換えてもよい。
【0038】
従来、制御基板を構成していたコンピュータのCPUの能力の問題で、周波数を変化させることが技術的に難しかった。例えばクロック数が4MHz程度のCPUではソフトウェアによる交流電流は1kHz程度が限界であり、周波数の切り換えのためには定数固定の発振回路を備えていた。
【0039】
ところが近年、クロック数が32MHzなどのCPUであっても安価に使用することができるため、ソフトウェアだけで100kHz、1MHzといった高周波の交流電流を生成することができるようになった。
このような技術的な背景もあって、美容器のような小型機器において周波数を可変することは従来想起されることがなかったが、CPUの進歩に伴って、本発明も容易に実現できるようになっている。
【0040】
従って、本発明では、CPUの周波数設定部(34)が設定した交流周波数を、ソフトウェアで実現される交流電流発生部(35)から交流電流として出力することができる。デジタル出力するため、
図3(b)に示すように本実施例では矩形波で出力している。
なお、本発明では交流電流の発生方法は限定されないので、周波数可変の発振回路を備えてもよい。波形も正弦波、疑似正弦波でもよい。
【0041】
具体的な制御方法を説明する。
使用者は調整手段である感度調整部(32)の操作によって所望の電気刺激の強さを設定する。例えば電源のオンの時点では最も低いレベルに設定される。このとき、周波数設定部(34)は周波数を200kHzと設定し、交流電流発生部(35)で200kHzの交流電流を生成する。
【0042】
体感が弱いときには感度調整部(32)を操作して強くすると、周波数設定部が周波数を順次低く設定する。例えば、3段階の場合は100kHz、150kHz、200kHzの3つの周波数、8段階の場合は100kHz、110kHz、120kHz、130kHz、140kHz、160kHz、180kHz、200kHzの各周波数などのように段階的に設定することもできる。
【0043】
さらに体感を強くするために数Hzから数kHzの周波数帯にも変化できるようにしてもよい。
また、本実施例の美容器(1)ではRFの温熱効果だけを提供するため、さらに高い周波数帯に変化させてもよい。
【0044】
本発明では、使用者が感度調整部(32)で操作する他に、周波数の設定を自動化することもできる。使用者の体感に影響する原因として肌面の抵抗値があり、
図4に示すように制御基板(30)に抵抗値測定部(36)を備え、電極部(31)の間で通電することにより肌の抵抗値を測定する。なお、抵抗測定用の別の電極を備えてもよい。
【0045】
抵抗測定値に応じて、周波数設定部(34)は肌の特性に応じた周波数を設定する。例えば次の表2のように設定する。
【0046】
【0047】
上記の表において抵抗値が比較的低い場合には電流が流れやすいため体感の程度が強くなるので周波数を高く設定する。また、抵抗値が比較的高い場合は、電流が流れにくく体感の程度が弱くなるので周波数を低く設定する。
肌の抵抗値は同じ人でも湿度や肌の湿り具合によって変化するため、レベルスイッチで同じように調整しても、その時により体感の程度が変化する。そこで、抵抗値測定部(34)が測定した結果に基づいて自動的に調整することで、毎回同じような感覚で使用することができる。
【0048】
また、
図5の構成では感度調整部(32)を省略しているが、感度調整部(32)は備えて、弱、中、強などの切り換えも行ってもよい。この場合、感度調整部(32)次の表3のように、抵抗値と使用者の設定を組み合わせて周波数を設定することもできる。
【0049】
【0050】
このように抵抗値測定部(36)の測定値に応じて周波数設定部(34)が最適な周波数を設定することで、使用者は簡便に使用することができる。
上記の表の数値は一例であり、周波数の値や、切り換えの段階などは任意に変更できる。また、周波数を設定する規則は表に基づくものではなく、所定の計算式によって計算した結果でもよい。
【0051】
本発明の美容器(1)にはさらにヒーター(図示せず)を備えることもできる。
ヒーターの例としては遠赤外線を発生するセラミックペルチェヒーターなどが挙げられ、肌の深部を加温することができる。
【0052】
本発明の周波数帯域である70kHzないし200kHzのうち、使用者が温感を感じやすい200kHz近傍の周波数では肌表面の表皮付近が加温される。これに加えてヒーターを用いると深部である真皮が加温することによって、低刺激でかつ効果的に肌に作用させることができる。
【0053】
また、低周波数側の領域では、電気刺激を感じやすい反面で温感を感じにくい場合があり、ヒーターを併用することによって使用者の好みの温感を調整することができ、本発明に係る周波数の調整技術と合わせて特に有効である。
【0054】
本発明の美容器(1)において、電極間の距離についても重要であることが見出された。
図6には、2つの電極の実施例を示す。
図6(a)は上述した環状の2つの電極部(20)(21)であり、この電極間の距離L1は3mmである。
電極に用いた材料は、真鍮にニッケルクロムメッキ加工を行ったものであり、抵抗値は10Ω以下の通電性素地を用いた。
【0055】
一般的な低周波治療器においては、カーボンフィルムを電極に用いたゲルパッドが使用されているが、このゲルの1kHzにおける電気抵抗率は10kΩcm以下であり、本発明と大きく異なっている。言うまでもなく、このような低周波治療器において温感を生じさせることはない。
【0056】
本発明において電極を同一平面の基体から同一方向に凸状に形成し、10Ω以下の電極を構成することによって、電気刺激及び温感を合わせて提供する美容器(1)を提供することができる。
【0057】
電極の形状としては、
図6(b)に示すような、中心に環状の電極と、その周囲に三日月状の3つの電極部から構成されてもよく、電極間の電位差によって電気刺激及び温感を生じさせる。本実施例において、電極間の距離L2は3mmであり、本形状が電気刺激及び温感を好適に与えることができることがわかった。
【0058】
発明者らの実験によれば、交流電流の周波数が100kHzないし200kHzの範囲内では、電極間の距離は1mmないし30mm、特に2mmないし10mmの範囲が特に好適である。30mmを超えた場合、温感が感じられないことが確認されている。
【0059】
本発明は、上記美容器のほか、使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器の制御方法を提供することもできる。
すなわち、電圧又は電流を略一定に保ちながら交流電流の周波数を3段階以上の多段階又は無段階で設定し、設定された周波数の交流電流を電極部から印加することにより使用者の体感の程度を調整する。
【0060】
具体的な方法としては上記した美容器(1)に例示されており、特に制御基板(30)、電極部(31)、感度調整部(32)の組み合わせによって実施されることが明らかであるが、これに限定されない。本制御方法を実装する機器は携帯型の美容器に限らず、据え置き型の装置でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 美容器
10 本体部
11 ヘッド部
12 レベルスイッチ
13 電源スイッチ
14 インジケータ
20 電極部
21 電極部
30 制御基板
31 電極部
32 感度調整部
33 電池
34 周波数設定部
35 交流電流発生部
36 抵抗値測定部