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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091855
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ハラル対応除菌液
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/08 20060101AFI20240628BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240628BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P3/00
A01N25/02
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069246
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2021537544の分割
【原出願日】2019-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】394014423
【氏名又は名称】三慶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】合田 学剛
(57)【要約】
【課題】ハラル対応除菌液を提供すること。
【解決手段】本開示は、動物を除菌する除菌液を提供する。本開示は、亜塩素酸水を含む、除菌液であって、該除菌液を直接動物に接触することにより該動物を除菌するものである除菌液を提供する。前記接触がラビング法、スクラブ法またはベースン法により達成される。前記動物が生きた動物である。前記動物が、動物の表面を含む。前記動物の表面が、皮膚である。前記動物の表面が、手指である。前記動物が、人体を含む。前記除菌が、食品の準備においてなされる。前記除菌液は、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸水を含む除菌液であって、該除菌液を直接動物に接触することにより該動物を除菌するものである除菌液。
【請求項2】
前記接触がラビング法、スクラブ法またはベースン法により達成される、請求項1に記載の除菌液。
【請求項3】
前記除菌液が、リン酸緩衝液を含み、該リン酸緩衝液が、2種類以上のリン酸塩を含む、請求項2に記載の除菌液。
【請求項4】
前記リン酸緩衝液が、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、またはリン酸二水素ナトリウムのうちの2種類以上を含む、請求項2または3に記載の除菌液。
【請求項5】
リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸二水素ナトリウムが0.60%~12.00%である、請求項4に記載の除菌液。
【請求項6】
リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸二水素ナトリウムが1%である、請求項4に記載の除菌液。
【請求項7】
リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸水素二カリウムが0.87%~17.42%である、請求項4に記載の除菌液。
【請求項8】
リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸水素二カリウムが1%である、請求4に記載の除菌液。
【請求項9】
前記動物が生きた動物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項10】
前記動物が、動物の表面を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項11】
前記動物の表面が、皮膚である、請求項10に記載の除菌液。
【請求項12】
前記動物の表面が、手指である、請求項11に記載の除菌液。
【請求項13】
前記動物が、人体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項14】
前記除菌が、食品の準備においてなされる、請求項1~13のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項15】
亜塩素酸が10ppm~60,000ppmで使用される、請求項1~14のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項16】
亜塩素酸が200ppm~8,000ppmで使用される、請求項1~15のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項17】
亜塩素酸水の遊離塩素濃度が、0.25mg/L~1,500mg/Lである、請求項1~16のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項18】
前記除菌が、ウイルス、細菌、および真核生物から選択される少なくとも1つを対象とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項19】
前記除菌液が、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まない、請求項1~18のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項20】
ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水1.00%、リン酸二水素ナトリウム1.00%、リン酸二水素カリウム1.00%およびイオン交換水97.00%を含み、亜塩素酸が400ppmであり、遊離塩素濃度が10mg/Lである、除菌液。
【請求項21】
ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水20.00%、リン酸二水素カリウム1.00%、リン酸水素二カリウム1.00%およびイオン交換水78.00%を含み、亜塩素酸が8,000ppmであり、遊離塩素濃度が200mg/Lである、除菌液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、亜塩素酸水を含む、除菌液であって、該除菌液を直接動物に接触することにより該動物を除菌するものである除菌液に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工業者および加工食品等の食品取扱業者に従事する人、調理・料理を行う人、食堂を含む喫飲食施設及び厨房を含む調理施設を利用する人、これらの場所に出入りする全ての人、原材料納入業者や配給、配膳する人、食品に直接的に触れる人、食品に間接的に触れる人などすべて、身体、特に手指の消毒が求められている。ノロウイルスなどのウイルスを含む食中毒原因微生物並びに病原性微生物などによる食中毒事故や感染症の予防のため、日常的な手洗いにより洗浄する必要がある。
【0003】
ハラル対応のものは、現在確認されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、亜塩素酸水を含む除菌液が直接動物に接触しつつ、安全に除菌できることを見出し、本開示を完成した。
【0005】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
亜塩素酸水を含む除菌液であって、該除菌液を直接動物に接触することにより該動物を除菌するものである除菌液。
(項目2)
前記接触がラビング法、スクラブ法またはベースン法により達成される、項目1に記載の除菌液。
(項目3)
前記リン酸緩衝液が、2種類以上のリン酸塩を含む、項目2に記載の除菌液。
(項目4)
前記リン酸緩衝液が、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、またはリン酸二水素ナトリウムのうちの2種類以上を含む、項目2または3に記載の除菌液。
(項目5)
リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸二水素ナトリウムが0.60%~12.00%である、項目4に記載の除菌液。
(項目6)
リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸二水素ナトリウムが1%である、項目4に記載の除菌液。
(項目7)
リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸水素二カリウムが0.87%~17.42%である、項目4に記載の除菌液。
(項目8)
リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸水素二カリウムが1%である、項目4に記載の除菌液。
(項目9)
前記動物が生きた動物である、項目1~8のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目10)
前記動物が、動物の表面を含む、項目1~9のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目11)
前記動物の表面が、皮膚である、項目10に記載の除菌液。
(項目12)
前記動物の表面が、手指である、項目11に記載の除菌液。
(項目13)
前記動物が、人体を含む、項目1~12のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目14)
前記除菌が、食品の準備においてなされる、項目1~13のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目15)
亜塩素酸が10ppm~60,000ppmで使用される、項目1~14のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目16)
亜塩素酸が200ppm~8,000ppmで使用される、項目1~15のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目17)
亜塩素酸水の遊離塩素濃度が、0.25mg/L~1,500mg/Lである、項目1~16のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目18)
前記除菌が、ウイルス、細菌、および真核生物から選択される少なくとも1つを対象とする、項目1~17のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目19)
前記除菌液が、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まない、項目1~18のいずれか1項に記載の除菌液。
(項目20)
ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水1.00%、リン酸二水素ナトリウム1.00%、リン酸二水素カリウム1.00%およびイオン交換水97.00%を含み、亜塩素酸が400ppmであり、遊離塩素濃度が10mg/Lである、除菌液。
(項目21)
ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水20.00%、リン酸二水素カリウム1.00%、リン酸水素二カリウム1.00%およびイオン交換水78.00%を含み、亜塩素酸が8,000ppmであり、遊離塩素濃度が200mg/Lである、除菌液。
【0006】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
消毒薬の分野で使用されている次亜塩素酸ナトリウムは、消毒部位に直接噴霧または浸漬すると、手荒れ等の皮膚への刺激が強く、直接的な使用は好ましくない。次亜塩素酸ナトリウムは、医薬品承認において有効塩素濃度0.01~0.05%(100ppm~500ppm)で使用することが用法用量で定められているが、この濃度は、細胞毒性の出る最小濃度0.001%(10ppm;Japanese Journal of Infectious Diseases Vol.71(2018),No.5 pp.333-337)よりも高く、医薬品としての使用はごく限られた場合に限定されるが、本開示の亜塩素酸水はそのような制約がないことが見出された。消毒薬の分野で使用されているポビドンヨード製剤は、ヨウ素過敏症である場合や、甲状腺機能に問題がある場合には使用は好ましくなく、皮膚の刺激性や、着色(褐変)があり、手術切開前の皮膚の消毒(スワブ法:脱脂綿に含浸させ、清拭)で使用されるのみであるが、本開示の亜塩素酸水はそのような制約がないことが見出された。消毒薬の分野で使用されているアルコール類も皮膚に対して刺激性を有するものであるが、本開示の亜塩素酸水は刺激性が極めて低いことが判明した。また、アルコール類に関しては、皮膚刺激性の他、危険物(第四類アルコール)である為、保管・設置箇所や、場合によっては数量に制限があり、本開示の亜塩素酸水は、ノロウイルスや、アルコール耐性菌に対する消毒効果があるという効果がある。また、アルコールの使用は、ハラームとされるおそれがあり、アルコールを使わないことが求められているが、本開示の亜塩素酸水はそのような制約はない。消毒薬の分野で使用されているベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)は、低水準消毒薬であり、一般細菌や酵母様真菌などに有効で、抗菌スペクトルの狭い消毒薬であるが、本開示の亜塩素酸水は、広い抗菌スペクトルに対する消毒効果があることが判明した。
【0008】
本出願は、直接動物に接触することにより該動物を除菌することができる除菌液を提供する。
【0009】
亜塩素酸水を含む除菌液は、直接動物に接触し得るので、ラビング法(擦式法)、スクラブ法(洗浄法)、ベースン法(浸漬法)などのように除菌効果の高い消毒法を使用して、しっかり除菌することできる。本開示の亜塩素酸水並び亜塩素酸水製剤は4つの消毒方法(ラビング法、スクラブ法、スワブ法、ベースン法)の全ての方法を使用することができる。また、亜塩素酸水並びに亜塩素酸水製剤は、芽胞の殺菌・消毒も可能である高水準の消毒薬に該当し、各消毒方法に使用できる為、1つの薬剤で一括管理が出来るというメリットもある。なお、「直接手指に噴霧または直接手指を浸漬する」場合、直接、消毒対象物に使用する為、より低濃度での使用が可能になり、ウェットシートでの清拭消毒(スワブ法)よりも「直接手指に噴霧または直接手指を浸漬する」方が、消毒効果が最も高く、簡便な方法であり、「直接手指に噴霧または直接手指を浸漬する」方法は、スワブ法よりも優れた点を有する。
【0010】
亜塩素酸水を含む除菌液は、アルコールフリー、アニマルフリーの無香料除菌剤であり得るので、ハラル食品の製造においても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例2の被験物質処置群の皮膚を示す。
図2図2は、実施例2の比較対照物質処置群の皮膚を示す。
図3図3は、実施例3の眼反応を示す。
図4図4は、実施例4の被験物質を処置した処置部位を示す。
図5図5は、実施例4の陰性対照群を処置した処置部位を示す。
図6図6は、実施例4の陰性対照群を処置した処置部位を示す。
図7図7は、実施例4の陽性対照群を処置した処置部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示につき、さらに詳しく説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0013】
本明細書で使用している略語は、特に明記しない限り、当該分野の範囲内でこれらの従来の意味を有する。
【0014】
本明細書の値またはパラメーターについての「約」の言及は、値またはパラメーター自体を対象とするばらつきを含む。他に特に言及しない限り、例えば、「約X」とは、「X」自体の他、その±10%の誤差を許容する値を含む。
【0015】
本明細書において、「亜塩素酸水」とは、殺菌剤として使用される亜塩素酸(HClO)を含む水溶液であって、安定な化学平衡状態を作り出し、亜塩素酸の二酸化塩素への分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができるものである。亜塩素酸水の検体を分光光度計により測定すると、UVスペクトルにおいて波長240~420nmの間に260nm付近でピークを表す酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )を含む吸収部と350nm付近にピークを表す二酸化塩素(ClO)を含む吸収部を2つ同時に確認できる場合、すなわち、双瘤を示す場合、亜塩素酸水の存在を認めることができる。この際に亜塩素酸(HClO)を主体として、二酸化塩素(ClO)、および酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )のサイクル反応が同時進行していると考える。
【0016】
【化1】
【0017】
亜塩素酸水は、国際公開WO2008/026607号、WO2014/188310号、WO2014/188311号、WO2014/188312号、WO2015/093062号、WO2017/170904号に開示される方法により作製することができる。
【0018】
「亜塩素酸水」は、平成25年2月1日に食品添加物として指定され、亜塩素酸(HClO2)を主たる有効成分に持つ殺菌料であり、この「亜塩素酸水」の主たる有効成分である亜塩素酸(HClO2)は、準安定な化学物質であり、米国USDAやFDAでも特に安全な物質として食品添加物:加工助剤に認められている。
【0019】
また、この亜塩素酸(HClO2)の化学平衡関係を維持するサイクル反応を利用することによって、非乖離状態のまま長期間液中に安定させることができる。
【0020】
しかも、「亜塩素酸水」は、有機物存在下であっても強い殺菌効果を発揮することが出来、国立医薬品食品衛生研究所(通称:国衛研)において、『平成27年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査』の中で、「全ての負荷条件で検出限界以下まで不活化できたものは亜塩素酸水のみであった。」という高い評価を受けており、「大量調理施設調理マニュアル」「漬物の衛生規範」など、大規模な食中毒事故が発生した順から、食品衛生法施行規則の改正とともに亜塩素酸水の掲載が進んでいる。
【0021】
他にも2020年の発売を目処に、第2類殺菌消毒薬としての医薬品申請も進んでおり、そのことを前提として、「ノロウイルスに関するQ&A」をはじめ厚生労働省が所管する「保育所における感染症対策ガイドライン」などといった各ガイドラインや、「高齢者介護支援施設における感染対策マニュアル」などといった関係マニュアルや「弁当・惣菜の衛生規範」などの各衛生規範等への追記や、改定作業も随時進められており、日本国の食品衛生や環境衛生市場において、広範囲な市場に供給されている物質である。
【0022】
亜塩素酸が主たる有効成分である「亜塩素酸水」は、「次亜塩素酸水」や「次亜塩素酸ナトリウム」と同等、若しくは、それ以上の強い殺菌力を保有しているが、その反応性は緩やかであり、瞬時に発揮される殺菌効果(即効性)はないものの、的確な殺菌力を持ちつつ緩やかな反応性を保有しており、その上、安定した殺菌力を持続するという特長を持つ「亜塩素酸水」は、これまでの塩素酸化物系の薬剤が最も苦手であると言われてきた、有機物が多く存在する汚れた環境下で、ゆっくりではあるものの、確実に且つ的確に殺菌効果を発揮することができる。(汚れの中に潜んでいる微生物に対する殺菌力)。
【0023】
そのため、これまで殺菌しにくく困難であった耐性菌(芽胞を形成することで抵抗力が高まる耐熱性菌や、抗生物質が効かなくなった薬剤耐性菌等)や、カビや酵母などの真菌類、さらにはウイルス類(ノンエンベローブウイルス含む)に対する不活化効果を、発揮できる。「亜塩素酸水」は使用時に調整する必要がなく、そのための専用の発生装置などは必要とせず、誰もがどこにでも使用したい時に使用することができ、しかも安全である。
【0024】
その上、有機物存在下における「亜塩素酸水」の効果に関しては、厚生労働省HPにも「平成27年度 ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書(国立衛生研究所食品衛生管理部)」に掲載されている。
【0025】
亜塩素酸水は、遊離塩素濃度を基準に、各種微生物並びにウイルスに対する殺菌効果を要約すると以下の通りである。
【化2】
【0026】
本明細書において「除菌(作用)」とは病原性や有害性や感染性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を除去することをいうが、「除菌(作用)」は、本明細書では特に限定しない限り、除菌(作用)だけでなく、抗菌(作用)、殺菌(作用)、消毒(作用)をも含む広い概念で用いる。したがって、抗菌作用や、殺菌作用や、除菌作用や、消毒作用を有するものを総称して本明細書における「除菌剤」といい、本明細書において通常使用する場合は、抗菌作用や、殺菌作用や、除菌作用や、消毒作用に該当する内容をも有する薬剤と理解される。
【0027】
本明細書において除菌される微生物としては、食中毒の由来原因となる微生物、病原性微生物、感染症を引き起こす可能性がある微生物、薬剤耐性菌(細菌)などが挙げられる。糞便系大腸菌、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ウェルシュ菌、およびセレウス菌などが挙げられる。食中毒の由来原因となる微生物、病原性微生物、感染症を引き起こす可能性がある微生物、薬剤耐性菌(細菌)の関係は以下のとおりである。
【化3】
【0028】
本明細書において「感染症」とは、ヒト、動物、環境などから感染し、体内で病原体の量が一定量になり、宿主に発熱、下痢、咳などの症状が現れることを意味する。少量の微生物でも発症し得る。ウイルスの場合、感染を受けた宿主が長期にわたってウイルスと共存し続けて保菌者となる(持続性感染)場合や、発病に至らない感染(不顕性感染)になる場合がある。「感染」とは、病原体が宿主(ヒトや動物)の体内に侵入し、体内で発育、増殖することをいう。「病原体」とは、感染して病気を引き起こす微生物(細菌、ウイルス、真菌、リケッチア、原虫、寄生虫)を指し、寄生虫を除く病原体を「病原性微生物」と呼ぶ。一類感染症(エボラ出血熱、クラミジア・コンゴ熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルック病、ラッサ熱など)、二類感染症(急性灰白隨炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、SARSなど)、三類感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスなど)、四類感染症(A・E型肝炎、マラリア、黄熱、Q熱、狂犬病、ボツリヌス症、マラリアなど)、五類感染症(インフルエンザ、ウイルス性肝炎、クロスポリジウム症、エイズ、正規クラミジア感染症、梅毒、麻しん、MRSA、ノロウイルスなど)が挙げられる。
【0029】
本明細書において「食中毒」とは、食品を飲食(経口摂取)することで経口感染し、症状を引き起こすこと(症例)をいう。食中毒は、食品媒介性感染症であり、感染症の一部である。動物(家畜)や自然界に存在する微生物から引き起こされ、食肉など摂取することで、毎年多くの食中毒事件が発生している。細菌性食中毒としては、感染侵入型(サルモネラ菌など)、感染毒素型(腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など)の感染型、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などの毒素型がある。ウイルス性食中毒には、ノロウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスなどによるものが挙げられる。化学性食中毒には、有害食品添加物(ヒ素、残留農薬など)、汚染物質などによるものが挙げられる。自然食中毒には、自然毒のフグ毒、貝毒などの動物性のもの、自然毒の毒キノコ、毒草などの植物性のものが挙げられる。アレルギー性食中毒も挙げられる。
【0030】
本明細書において「病原性微生物」とは、食中毒(経口感染)を除く、ヒト、環境を介して感染する微生物類のことをいう。感染者が微生物を下痢、嘔吐、咳などで拡散させ、二次感染によって感染し得る。
【0031】
本明細書において「薬剤耐性」とは、抗生物質等の自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性をもち、これらの薬剤が効かないまたは効きにくくなる現象を言う。動物(ヒト)が感染症になったときに、抗生物質を投与して治療した際、体内で薬剤(抗生物質)に対して抵抗力を得ることによって生じる。全ての細菌類は何らかの抗生物質に対して、耐性を獲得している可能性がある。抗生物質としては、静菌剤(菌の増殖を鎮める)および殺菌剤(菌を殺す)がある。
【0032】
本明細書において「薬剤耐性菌」とは、薬剤耐性を獲得した菌をいう。そのような薬剤耐性菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、クロストリジウム・ディフィシル(CD:芽胞形成、毒素産生)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌、多剤耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、多剤耐性アシネトバクター、カルバペネム系抗菌剤耐性菌、多剤耐性セラチアなどを挙げることができるがそれらに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、薬剤耐性遺伝子は概して薬剤耐性を付与する遺伝子が獲得されている。本発明は、このような遺伝子または遺伝子産物をも破壊することで細菌殺傷効果を有するものと考えられる。したがって、本発明は、特定の多剤耐性菌という複数の薬剤に耐えうるものについて効果が実証されており、より単純な薬剤耐性菌について一般的に効果があるものと外挿されることが当業者に理解される。
【0033】
本明細書において「多剤耐性菌」とは、複数の薬剤(特に、抗生物質)に対して薬剤耐性を獲得した菌をいう。
【0034】
本明細書において「除菌液」とは、液体状の除菌剤をいう。
【0035】
本明細書において「除菌液を直接動物に接触する」とは、除菌液を噴霧することにより動物に接触させることや、動物の除菌部分を除菌液中に浸漬させることをいう。本明細書においては、脱脂綿、ガーゼ、処理用シート等に含浸させたもので拭くこと(スワブ法(清拭法))は含まれない。
【0036】
本明細書において「ラビング法(擦式法)」(ウォーターレス法とも呼ばれる)とは、除菌液を用い、乾燥するまで除菌部位(例えば、手指)に擦り込む方法である。ポンプ噴霧による場合、除菌液を手のひらに噴霧し、両手によく擦り込んだ後、不織布やハンドドライヤー等でしっかりと水気を取り、乾かすことにより行われ得る。最も効果が高く簡便である。
【0037】
本明細書において「スクラブ法(洗浄法)」とは、洗浄剤を配合した除菌液により、よく泡立てて流水で流す方法であり、手洗い後はペーパータオル等を使用し完全に水分を拭うものである。ブラシを用いることもある。汚れ落としと消毒が同時にできる。
【0038】
本明細書において「ベースン法(浸漬法)」とは、一定濃度の除菌液をベースン(洗面器等)に入れて除菌部位を浸して洗う方法である。除菌液に清潔な不織布またはふきんを浸し、除菌部位をしっかりと浸し、浸しておいた不織布または布巾を使い、液中で清拭し、不織布やハンドドライヤー等でしっかりと水気を取り、乾かすことにより行われ得る。
【0039】
本明細書において「スワブ法(清拭法)」とは、脱脂綿、ガーゼ、不織布等に除菌液を十分に浸み込ませ、除菌部位を拭き取る方法である。スワブ法(清拭法)は、上記他の方法と比較して最も効果が弱い。本明細書において、スワブ法(清拭法)は、除菌液を直接動物に接触することには該当しない。
【0040】
本明細書において「動物の表面」とは、動物の皮膚、毛、爪、羽、鱗、角、歯牙などの動物の身体の表面をいう。口内のように、外部から容易に接触できる部位も含む。
【0041】
本明細書において、「遊離塩素」、「遊離塩素濃度」または「遊離残留塩素濃度」は、『水道法施行規則第十七条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める遊離残留塩素及び結合塩素の検査方法』の別表第3(以下、比色法(DPD指示薬))により測定される値であり、DPD指示薬が酸化されることで得られる値である。
【0042】
本明細書において、「亜塩素酸水の濃度」は、以下の(亜塩素酸水の定量法)により測定される値を示す。
【0043】
本明細書において、「高水準消毒薬(除菌液)」とは、Spauldingによる分類(Rutala WA:APIC Guideline for selection and use of disinfectants.1996.Am J Infect Control 1996; 24:313-342)による化学的消毒法の分類の1つである。芽胞が多数存在する場合を除き、全ての微生物を死滅させる消毒薬をいう。グルタラール製剤、フタラール製剤、過酢酸製剤などが挙げられる。
【0044】
本明細書において、「中水準消毒薬(除菌液)」とは、Spauldingによる分類(Rutala WA:APIC Guideline for selection and use of disinfectants.1996.Am J Infect Control 1996; 24:313-342)による化学的消毒法の分類の1つである。結核菌、栄養型細菌、ほとんどの真菌、ほとんどのウイルスを殺滅するが芽胞を殺滅するとは限らない消毒薬をいう。次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード製剤、アルコール類が挙げられる。
【0045】
本明細書において、「低水準消毒薬(除菌液)」とは、Spauldingによる分類(Rutala WA:APIC Guideline for selection and use of disinfectants.1996.Am J Infect Control 1996; 24:313-342)による化学的消毒法の分類の1つである。ほとんどの栄養型細菌、ある種の真菌、ある種のウイルスを殺滅する消毒薬をいう。クロルヘキシジン製剤、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
本明細書において、「ハラル対応」とは、イスラムの教えにおいて「ハラーム(禁じられている)」とされるものを含んでいないことをいう。「ハラーム」としては、アルコール、動物成分などが挙げられ、Halal food guideline(Department of Halal Certification EU)に示されている。本明細書においては、生産ライン上において、原料からアルコール、動物成分、香料などの「ハラーム」を含まないで製造されていることをいう。
【0047】
(好ましい実施形態)
本開示の1つの局面において、亜塩素酸水を含む、除菌液であって、該除菌液を直接動物に接触することにより該動物を除菌するものである除菌液が提供される。本開示の除菌液は、直接動物に接触するので、糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物をしっかりと除去することができ、除去されずに残る可能性は低い。本開示の除菌液は、直接動物に接触しても、刺激性が低いので、障害を起こさない。
【0048】
本開示において、前記接触がラビング法(擦式法)、スクラブ法(洗浄法)またはベースン法(浸漬法)により達成される。スワブ法(清拭法)に比べて、高い除菌効果が得られる。他方で、スワブ法に比べて、直接皮膚に触れるレベルが高いため、安全性に懸念があるところ、本開示の亜塩素酸水は、驚くべきことに、ラビング法、スクラブ法およびベースン法などの液を直接動物に接触させても手指等の皮膚に障害を起こさないことが予想外にも見出された。
【0049】
亜塩素酸水原液40,000ppm品を0.5%~20%配合したリン酸緩衝液を含む除菌液は、亜塩素酸は200ppm~8000ppmとなる。亜塩素酸水原液40,000ppm品を1%配合すれば、亜塩素酸は400ppmとなる。亜塩素酸水原液4%~6%(40,000ppm~60,000ppm)品を0.5%~20%配合した場合、亜塩素酸は、200ppm~12000ppmとなる。
【0050】
本開示において、前記リン酸緩衝液が、2種類以上のリン酸塩を含む。
【0051】
本開示において、前記リン酸緩衝液が、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、またはリン酸二水素ナトリウムのうちの2種類以上を含む。
【0052】
本開示において、リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸二水素ナトリウムが0.60%~12.00%である。リン酸二水素カリウムは、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、11%、12%、13%であり得、これらの値の間の任意の数値であり得る。リン酸二水素ナトリウムは、0.60%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、11%、12%であり得、これらの値の間の任意の数値であり得る。
【0053】
本開示において、リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸二水素ナトリウムが1%である。
【0054】
本開示において、リン酸二水素カリウムが0.68%~13.61%であり、リン酸水素二カリウムが0.87%~17.42%である。リン酸二水素カリウムは、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、11%、12%、13%であり得、これらの値の間の任意の数値であり得る。リン酸水素二カリウムは、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%であり得、これらの値の間の任意の数値であり得る。
【0055】
本開示において、リン酸二水素カリウムが1%であり、リン酸水素二カリウムが1%である。
【0056】
本開示において、前記動物が生きた動物である。
【0057】
本開示において、前記動物が、動物の表面を含む。
【0058】
本開示において、前記動物の表面が、皮膚である。
【0059】
本開示において、前記動物の表面が、手指である。
【0060】
本開示において、前記動物が、人体を含む。
【0061】
本開示において、前記除菌が、食品の準備においてなされる。食品の準備は、食品加工場および調理施設(厨房)の両方における準備を含む。食品の準備は、食品加工業者および加工食品等の食品取扱業者に従事する人、調理・料理を行う人、食堂を含む喫飲食施設及び厨房を含む調理施設を利用する人、これらの場所に出入りする全ての人、原材料納入業者や配給、配膳する人、食品に直接的に触れる人、食品に間接的に触れる人などすべてが対象である。
【0062】
本開示において、亜塩素酸(HClO=68.46として)が10ppm~60,000ppm(0.001%~6%)で使用され得る。亜塩素酸は、200ppm~8,000ppmで使用され得る。亜塩素酸は、400ppm~8,000ppmで使用され得る。亜塩素酸は、200ppm~12,000ppmで使用され得る。亜塩素酸は、約10ppm、約15ppm、約20ppm、約25ppm、約30ppm、約40ppm、約50ppm、約60ppm、約70ppm、約80ppm、約90ppm、約100ppm、約150ppm、約200ppm、約250ppm、約300ppm、約350ppm、約400ppm、約450ppm、約500ppm、約550ppm、約600ppm、約650ppm、約700ppm、約750ppm、約800ppm、約850ppm、約900ppm、約950ppm、約1,000ppm、約1,500ppm、約2,000ppm、約2,500ppm、約3,000ppm、約3,500ppm、約4,000ppm、約4,500ppm、約5,000ppm、約5,500ppm、約6,000ppm、約6,500ppm、約7,000ppm、約7,500ppm、約8,000ppm、約8,500ppm、約9,000ppm、約9,500ppm、約10,000ppm、約11,000ppm、約12,000ppm、約13,000ppm、約14,000ppm、約15,000ppm、約20,000ppm、約25,000ppm、約30,000ppm、約35,000ppm、約40,000ppm、約45,000ppm、約50,000ppm、約55,000ppm、約60,000ppmなどで使用され得、亜塩素酸の濃度は、これらの範囲内の任意の数値であり得る。
【0063】
本開示において、亜塩素酸水の遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が、0.25mg/L~1,500mg/Lであり得る。亜塩素酸水の遊離塩素濃度は、約0.25mg/L、約0.3mg/L、約0.35mg/L、約0.4mg/L、約0.45mg/L、約0.5mg/L、約0.55mg/L、約0.6mg/L、約0.65mg/L、約0.75mg/L、約0.8mg/L、約0.85mg/L、約0.95mg/L、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、約10mg/L、約11mg/L、約12mg/L、約13mg/L、約14mg/L、約15mg/L、約16mg/L、約17mg/L、約18mg/L、約19mg/L、約20mg/L、約21mg/L、約22mg/L、約23mg/L、約24mg/L、約25mg/L、約26mg/L、約27mg/L、約28mg/L、約29mg/L、約30mg/L、約35mg/L、約40mg/L、約45mg/L、約50mg/L、約55mg/L、約60mg/L、約65mg/L、約70mg/L、約75mg/L、約80mg/L、約85mg/L、約90mg/L、約95mg/L、約100mg/L、約150mg/L、約200mg/L、約250mg/L、約300mg/L、約350mg/L、約400mg/L、約450mg/L、約500mg/L、約550mg/L、約600mg/L、約650mg/L、約700mg/L、約750mg/L、約800mg/L、約850mg/L、約900mg/L、約950mg/L、約1,000mg/L、約1,100mg/L、約1,200mg/L、約1,300mg/L、約1,400mg/L、約1,500mg/Lなどで使用され得、亜塩素酸水の遊離塩素濃度は、これらの範囲内の任意の数値であり得る。
【0064】
本開示において、前記除菌が、ウイルス、細菌、および真核生物から選択される少なくとも1つを対象とする。除菌は、食中毒の由来原因となる微生物、病原性微生物、感染症を引き起こす可能性がある微生物、薬剤耐性菌(細菌)などが対象とされる。
【0065】
本開示において、前記除菌液が、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まない。
【0066】
本開示において、ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水1.00%、リン酸二水素ナトリウム1.00%、リン酸二水素カリウム1.00%およびイオン交換水97.00%を含み、亜塩素酸(HClO=68.46として)が400ppmであり、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が10mg/Lである、除菌液が提供される。亜塩素酸水の除菌力はしっかりと維持しつつ、従来品よりも使用時の塩素臭を低減しており、使用者の操作性がよい。臭いの元の菌を除菌するので、消臭効果もある。本除菌液は、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まず、ハラル対応である。希釈する必要なしに、手軽に、直接手指に噴霧することにより手指を除菌することができる。このように、高い除菌力を有しながら、直接手指に接触させて除菌するものは、これまでに存在しておらず、世界で初めてのものである。このような濃度のリン酸緩衝液、亜塩素酸、遊離塩素を含む除菌液が、高い除菌力を有しながら、皮膚刺激性、眼刺激性および皮膚感作性について安全であるとの発見は予想できないものである。
【0067】
本開示において、ハラル対応手指用除菌液であって、亜塩素酸水20.00%、リン酸二水素カリウム1.00%、リン酸水素二カリウム1.00%およびイオン交換水78.00%を含み、亜塩素酸(HClO=68.46として)が8,000ppmであり、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が200mg/Lである、除菌液が提供される。本除菌液は、動物由来成分も、アルコール成分も、香料も含まず、ハラル対応である。加工食品工場や大量調理施設などで、希釈(例えば、4倍希釈、8倍希釈、20倍希釈)して使用することができ、低コストで済ますことができる。このように、高い除菌力を有しながら、直接手指に接触させて除菌するものは、これまでに存在しておらず、世界で初めてのものである。このような濃度のリン酸緩衝液、亜塩素酸、遊離塩素を含む除菌液が、高い除菌力を有しながら、皮膚刺激性、眼刺激性および皮膚感作性について安全であるとの発見は予想できないものである。
【0068】
(亜塩素酸水およびその製造例)
本開示で使用される亜塩素酸水は、本発明者らが見出した特徴を有するものである。上述した文献に記載されるような既知の製法等の任意の方法により製造された亜塩素酸水を用いることができる。代表的な組成として、たとえば、亜塩素酸水61.40%、リン酸二水素カリウム1.00%、水酸化カリウム0.10%および精製水37.50%のものを配合し、使用することができる(出願人より販売される。亜塩素酸水72%は亜塩素酸30000ppmに該当する。)が、これに限定されず、亜塩素酸水は0.25%~75%、リン酸二水素カリウムは、0.70%~17.42%、水酸化カリウムは、0.10%~5.60%であっても良い。リン酸二水素カリウムの代わりにリン酸二水素ナトリウムを、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用しても良い。代表的な組成としてはまた、亜塩素酸水1.00%、リン酸二水素カリウム1.00%、リン酸二水素ナトリウム1.00%および精製水97.00%のものを配合し、使用することができるが、亜塩素酸水0.1%~5%、リン酸二水素カリウム0.68%~13.6%、リン酸二水素ナトリウム0.60%~12.0%であって良い。代表的な組成としてはまた、亜塩素酸水20.00%、リン酸二水素カリウム1.00%、リン酸水素二カリウム1.00%および精製水78.00%のものを配合し、使用することができるが、亜塩素酸水15%~25%、リン酸二水素カリウム0.68%~13.6%、リン酸水素二カリウムは、0.87%~17.4%であって良い。この薬剤は、酸性条件下で、有機物との接触による亜塩素酸の減衰を低減させているが、殺菌効果は維持している。かつ、塩素ガスの発生が軽微であり、塩素と有機物が混合した臭いの増幅をおさえるという特徴をも有する。
【0069】
1つの実施形態では、本開示の亜塩素酸水は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を3.4以下に維持させることができる量および濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより、生成することができる。
【0070】
また、別の実施形態では、本開示の亜塩素酸水は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を3.4以下に維持させることができる量および濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸または無機酸塩のうちのいずれか単体、または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から8.5までの範囲内に調整することにより、生成することができる。
【0071】
さらに、別の実施形態では、本開示の亜塩素酸水は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を3.4以下に維持させることができる量および濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸または無機酸塩もしくは有機酸または有機酸塩のうちのいずれか単体または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から8.5の範囲内に調整することにより、生成することができる。
【0072】
さらにまた、別の実施形態では、本開示の亜塩素酸水は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を3.4以下に維持させることができる量および濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸または無機酸塩のうちのいずれか単体または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加えた後、無機酸または無機酸塩もしくは有機酸または有機酸塩のうちのいずれか単体または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から8.5の範囲内に調整することにより、生成することができる。
【0073】
また、別の実施形態では、上記方法において無機酸は、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸を用いることができる。
【0074】
さらにまた、別の実施形態では、無機酸塩が、炭酸塩、無機水酸化物、リン酸塩またはホウ酸塩を用いることができる。
【0075】
また、別の実施形態では、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを用いることができる。
【0076】
さらに、別の実施形態では、無機水酸化物としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムを用いることができる。
【0077】
さらにまた、別の実施形態では、リン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムまたはリン酸二水素カリウムを用いることができる。
【0078】
また、別の実施形態では、ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムを用いることができる。
【0079】
さらに、別の実施形態では、有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸を用いることができる。
【0080】
さらにまた、別の実施形態では、有機酸塩としては、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウムを用いることができる。
【0081】
細菌殺傷剤として使用されうる亜塩素酸(HClO)を含む水溶液(亜塩素酸水)の製造方法では、塩素酸ナトリウム(NaClO)の水溶液に、硫酸(HSO)またはその水溶液を加えて酸性条件にすることで得られた塩素酸(HClO)を、還元反応により亜塩素酸とするために必要な量の過酸化水素(H)を加えることにより、亜塩素酸(HClO)を生成する。この製造方法の基本的な化学反応は、下記のA式、B式で表わされる。
【化4】
A式では塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液のpH値が酸性内に維持できる量および濃度の硫酸(HSO)またはその水溶液を加えることで塩素酸を得ることを示している。次いで、B式では、塩素酸(HClO)は、過酸化水素(H)で還元され、亜塩素酸(HClO)が生成されることを示している。
【0082】
【化5】
【0083】
その際に、二酸化塩素ガス(ClO)が発生するが(C式)、過酸化水素(H)と共存させることにより、D~F式の反応を経て、亜塩素酸(HClO)を生成する。
【0084】
ところで、生成された亜塩素酸(HClO)は、複数の亜塩素酸分子同士が互いに分解反応を起したり、塩化物イオン(Cl)や次亜塩素酸(HClO)およびその他の還元物の存在により、早期に二酸化塩素ガスや塩素ガスへと分解してしまうという性質を有している。そのため、細菌殺傷剤として有用なものにするためには、亜塩素酸(HClO)の状態を長く維持できるように調製する必要がある。
【0085】
そこで、上記方法により得られた亜塩素酸(HClO)もしくは二酸化塩素ガス(ClO)またはこれらを含む水溶液に無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩をいずれか単体、または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加えることによって、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができる。
【0086】
1つの実施形態では、上記方法により得られた亜塩素酸(HClO)もしくは二酸化塩素ガス(ClO)またはこれらを含む水溶液に無機酸または無機酸塩、具体的には炭酸塩や無機水酸化物を単体もしくは、2種類以上の単体もしくはこれらを併用して加えたものを利用することができる。
【0087】
別の実施形態では、無機酸または無機酸塩、具体的には炭酸塩もしくは無機水酸化物を単体もしくは2種類以上の単体またはこれらを併用して加えた水溶液に、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩を単体もしくは2種類以上の単体で、またはそれらを併用して加えるものを利用することができる。
【0088】
加えて、さらに別の実施形態では、上記方法によって製造された水溶液に、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩を単体もしくは2種類以上の単体で、またはそれらを併用して加えたものを利用することができる。
【0089】
上記無機酸としては、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸が挙げられる。また、無機酸塩としては、炭酸塩、無機水酸化物のほか、リン酸塩またはホウ酸塩が挙げられ、更に具体的にいえば、炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、無機水酸化物は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムを用いるとよい。さらに、上記有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸が挙げられる。また、有機酸塩では、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウムが適している。
【0090】
酸および/またはその塩を加えた場合においては、一時的にNa+ClO ⇔ Na-ClOやK+ClO ⇔ K-ClOやH+ClO ⇔ H-ClOといった遷移の状態が作り出され、亜塩素酸(HClO)の二酸化塩素(ClO)への進行を遅らせることができる。これにより、亜塩素酸(HClO)を長時間維持し、二酸化塩素(ClO)の発生が少ない亜塩素酸(HClO)を含む水溶液を製造することが可能となる。
【0091】
以下に、亜塩素酸塩の酸性溶液中の分解を表わす。
【0092】
【化6】
【0093】
この式で表されるように、亜塩素酸塩水溶液のpHにおける分解率は、そのpHが低くなるほど、すなわち酸が強くなるほど、亜塩素酸塩水溶液の分解率が大きくなる。すなわち、上記式中の反応(a)(b)(c)の絶対速度が増大することになる。例えば、反応(a)の占める割合はpHが低くなるほど小さくなるが、全分解率は大きく変動し、すなわち大となるため、二酸化塩素(ClO)の発生量もpHの低下とともに増大する。このため、pH値が低ければ低いほど殺菌や漂白は早まるが、刺激性の有害な二酸化塩素ガス(ClO)によって作業が困難になったり、人の健康に対しても悪い影響を与えることになる。また、亜塩素酸の二酸化塩素への反応が早く進行し、亜塩素酸は不安定な状態になり、殺菌力を維持できる時間も極めて短い。
【0094】
そこで、亜塩素酸(HClO)を含む水溶液に上記無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩を加える場合には、二酸化塩素の発生の抑制や殺菌力とのバランスの観点から、pH値を3.2~8.5の範囲内で調整する。
【0095】
(除菌液の使用法)
本開示の除菌液は、直接動物に接触させることにより、動物を除菌することができる。除菌方法としては、ラビング法(擦式法)、スクラブ法(洗浄法)またはベースン法(浸漬法)により行なわれ得る。スワブ法(清拭法)を使用していもよい。食品加工場、食堂を含む喫飲食施設、厨房を含む調理施設などにおいては、入場時に除菌することができ、また都度都度で除菌することができる。
【0096】
なお、本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0097】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0098】
必要な場合、以下の実施例で用いるヒトの取り扱いは、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。動物については動物愛護精神にのっとって必要な3Rの原則を遵守して行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma,和光純薬、ナカライ、等)の同等品でも代用可能である。
【0099】
(亜塩素酸水の定量法)
本品約5gを精密に量り,水を加えて正確に100mlとする。この試料液20mlを正確に量り、ヨウ素ビンに入れ、硫酸(1→10)10mlを加えた後、ヨウ化カリウム1gを加え、直ちに密栓をしてよくふり混ぜる。ヨウ素瓶の上部にヨウ化カリウム試液を流し込み、暗所に15分間放置する。次に栓を緩めてヨウ化カリウム試液を流し込み、直ちに密栓してよくふり混ぜた後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウムで滴定する(指示薬デンプン試液)。指示薬は液の色が淡黄色に変化した後に加える。別に空試験を行い補正する。0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1ml=1.711mg HClO2)。
【0100】
(製造例)
以下の実施例で使用される亜塩素酸水製剤は、以下のように製造した。本明細書では、亜塩素酸水は「亜水」と略称することがあるが、同義である。
亜塩素酸水の成分分析表
【0101】
【表1】
【0102】
この亜塩素酸水を用いて、以下の配合に基づき、亜塩素酸水製剤を製造した。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
上記調製方法に基づき調製した「亜塩素酸水で製造した亜塩素酸水製剤」を、上記の「亜塩素酸水の定量法」に基づき「亜塩素酸水」の濃度を測定し、各実施例において記載される遊離塩素濃度になるように調製した緩衝液(リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムを含むリン酸緩衝液)を用いて、各実施例の亜塩素酸水を調製した。
【0106】
(実施例1-1)
(除菌効果)
以下を使用した:
菌株: Escherichia coli NBRC3972 (自社保有菌株使用)
培地 :デソキシコレート寒天培地
希釈(回収):滅菌水、Saline(生理食塩水)、滅菌ビニール手袋
薬液濃度 :α)遊離塩素濃度(Cl=35.45 として):25 mg/L 以上;3mL×2(ディスペンサー)、消毒(除菌)時間2分間
β)遊離塩素濃度(Cl=35.45として):10mg/L以上;3mL×2(ディスペンサー)、消毒(除菌)時間5 分間
γ)遊離塩素濃度(Cl=35.45として):10mg/L以上:3mL×2(ディスペンサー)、消毒(除菌)時間2 分間
(試験手順)
【化7】

(1)指標菌液3mLを手指(片手)に汚染させ、2分間乾燥させる。
(2)ビニール手袋をはめ、50mLの滅菌水を流しいれ、全体にいきわたるように手を揉む(口を塞いで、滅菌水がこぼれないようにする)。
(3)滅菌水を回収し、適時生理食塩水で希釈した液0.1 mL を培地に塗抹し、35℃で培養する。(ベースライン)。
(4)(1)の操作を行った後、手指(片手)の消毒を揉みこみながら2分間(試験区βは5分間)行う。
(5)(4)の操作を10回繰り返し、(2)の操作は1回目と、3回目と、7回目と、10回目に行う。
【0107】
<判断基準>
1回目の消毒後、5分以内に≧2Log10 reducation(低減)し、10回目の消毒後、5分以内に≧3Log10reducation(低減)すること。
(結果)
薬液濃度:
【0108】
【化8】

遊離塩素濃度(Cl=35.45として)25mg/L 、6mL (3mL / 手×2 回)の結果
【0109】
【化9】

遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/L 、6mL (3mL / 手×2 回)の結果
【0110】
【化10】
【0111】
遊離塩素濃度(Cl=35.45として)25mg/lの亜塩素酸水の希釈液を用いて、3ml/手×2回、接触時間は5 分間から2 分間に短くして確認してみたところ、接触時間が5分間の時と同様に、1回目から3Log以上の減菌効果が認められ、10 回目まで3Log 以上の減菌効果を維持することができていた。
【0112】
また、遊離塩素濃度(Cl=35.45 として)が10mg/l の亜塩素酸水の希釈液を使って3ml/手×2 回消毒(除菌)処置してみたところ、接触時間が5 分間であれば、1回目から3Log以上の減菌効果が認められ、10回目までこの3Log 以上の減菌効果が維持されていた。しかし、接触時間が2 分間では、1 回目に基準値である2Log以上の減菌効果は認められなかった。そのため、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が10mg/Lの亜塩素酸水の希釈液を用いて3ml/手×2 回消毒(除菌)処置した場合、接触時間が2分間では十分な減菌効果は得られないことが判った。しかし、繰り返し接触させることで徐々に菌数は減少するということが判り、また、接触時間が5分間であれば、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が10mg/L の亜塩素酸水の希釈液でも1 回目から3log 以上の減菌効果が認められた。
【0113】
亜塩素酸水製剤は、2つの設定値(遊離塩素濃度25mg/L、HClOとしての含量1,000ppm;および遊離塩素濃度10mg/L、HClOとしての含量400ppm)において、ASTEM Standard E1174の評価基準に基づく判定基準を満たしており、十分な除菌効果を有することが示されている。
【0114】
なお、本試験条件は病院における手術時の手指消毒(除菌)方法の1つであるラビング法(ウォーターレス法)で減菌効果を確認してみた。しかし、一般には玄関や施設の出入口などに設置されている手指用消毒(除菌)剤の使用方法は薬液量が少ない下記のような方法(ディスペンサーの1回の吐出量は3ml/1 回)で使用されている。
【化11】

(「手指消毒(除菌)薬の使い方」(https://www.yoshida-homecare.com/jitsurei/01.html参照)
【0115】
従って、遊離塩素濃度(Cl=35.45 として)10mg/lで、薬液量をディスペンサーの1 回の吐出量(3.5ml)でも、3Log 以上の減菌効果が認められるのかを確認した。
【0116】
(実施例1-2)
以下を使用した:
菌株: Escherichia coli NBRC3972 (自社保有菌株使用)
培地 :デソキシコレート寒天培地
希釈(回収):滅菌水,Saline(生理食塩水)、滅菌ビニール手袋
薬液濃度 :α)遊離塩素濃度(Cl=35.45 として):10mg/L以上;3mL×1(ディスペンサー)、消毒(除菌)時間5 分間
(試験手順)
【化12】

(1)指標菌液3mL を手指(片手)に汚染させ、2 分間乾燥させる。
(2)ビニール手袋をはめ、50mLの滅菌水を流しいれ、全体にいきわたるように手を揉む(口を塞いで、滅菌水がこぼれないようにする。
(3)滅菌水を回収し、適時生理食塩水で希釈した液0.1mL を培地に塗抹し、35℃で培養する。(ベースライン)
(4)(1)の操作を行った後、上記「手指消毒(除菌)薬の使い方」に従って手指(両手)の消毒(除菌)を揉みこみながら5分間行う。
(5)(4)の操作を10回繰り返し、(2)の操作は1 回目と、3 回目と、7 回目と、10 回目に行う。
<判断基準>
1 回目の消毒(除菌)後、5 分以内に≧2Log10reducation(低減)し、10 回目の消毒(除菌)後、5 分以内に≧3Log10reducation(低減)すること。
【0117】
薬剤濃度:
【化13】
【0118】
遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/L 、3mL (3mL / 手×1 回)の結果
【化14】

遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/l の亜塩素酸水の希釈液を、手指(両手)に3ml/手×1 回使用し、上記「手指消毒(除菌)薬の使い方」に従い、接触時間を5分間で確認してみた。その結果、1回目から2Log 以上の減菌効果が認められ、10 回目まで3Log 以上の減菌効果が維持していた。そのため、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)が10mg/Lの亜塩素酸水の希釈液を使用し、接触時間を5分間にした場合、薬液量が3ml/手×1 回でも「※1手指消毒(除菌)薬の使い方」に従えば1 回目から3Log以上の減菌効果が得られることが判った。
【0119】
遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/L 、6mL (3mL / 手×2 回)の結果
【化15】
【0120】
遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/L 、3mL (3mL / 手×1 回)の結果
【化16】
【0121】
以上の結果から、遊離塩素濃度(Cl=35.45 として)10mg/l の亜塩素酸水の希釈液をディスペンサーを用いて3ml/手×1 回手のひらに吐出し、「※1手指消毒(除菌)薬の使い方」に従って使用すれば接触時間5分間で十分な減菌効果が得られることが判った。また、遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/l の亜塩素酸水3ml/手×2 回 接触時間2 分間では、十分な減菌効果が得られかったことから、薬液量を増やしても即効性が上がらないことが判っている。
【0122】
そこで、この結果を用いてSerratia marcescens ATCC14756 (NBRC 12648 に相当) を購入し、ASTE M1174Method(案)に従って、(1)遊離塩素濃度(Cl=35.45として)25mg/l の亜塩素酸水の希釈液3ml/手×1 回 接触時間2 分間で「※1手指消毒(除菌)薬の使い方」に従って処置した場合と(2)遊離塩素濃度(Cl=35.45として)10mg/lの亜塩素酸水の希釈液3ml/手×1 回 接触時間5 分間で上記「手指消毒(除菌)薬の使い方」に従って処置した場合の減菌効果確認試験を実施することにした。
【0123】
(実施例2)
(ウサギを用いる亜塩素酸水製剤の皮膚刺激性試験)
亜塩素酸水製剤の皮膚刺激性および腐食性を調べるため,Kbl:NZW ウサギ雌3 匹を用いて皮膚刺激性試験を実施した。また,比較対照群として次亜塩素酸ナトリウム製剤処置群3匹を設定し、その刺激性反応を比較した。被験物質0.5mL をリント布製パッチへ均一に塗布し、これをウサギの背部皮膚に4 時間暴露した。パッチ除去後1,24,48および72 時間さらに14 日までの毎日、皮膚反応を観察するとともに一般状態を観察した。加えて投与前および観察終了時に体重測定を行った。
【0124】
その結果は次のとおりである。
【0125】
亜塩素酸水製剤では、観察期間中、いずれの動物の投与部位にも皮膚反応は観察されなかった。GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に皮膚反応を示さず、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
【0126】
一方、次亜塩素酸ナトリウム製剤では、パッチ除去後1 時間の観察から、評点1 の紅斑および評点1 または2 の浮腫が3 例全例の投与部位に認められた。その後、これらの反応は増強し、パッチ除去後72時間では紅斑および浮腫ともに評点3を示した。パッチ除去後5 日から浮腫は回復傾向を示したものの、紅斑はパッチ除去後5 または7 日で評点4 への増強が2 例に認められた。パッチ除去後14日(最終観察日)においても、評点2または3 の紅斑が全例に観察された。また、落屑がパッチ除去後5 または6 日から観察され、うち1 例では瘢痕が9 日から認められた。パッチ除去後14日においても、1例では瘢痕、2 例では落屑が認められた。GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に全例の皮膚(刺激性)反応が回復せず、1例では腐食性の反応と判断されるパッチ除去後14日までに回復しない瘢痕が観察されたことから、区分1(腐食性)に分類された。区分1 における細区分は、4 時間以下の暴露を実施していないため、1Bないし1C に該当すると予想される。
【0127】
観察期間中、6 匹ともに一般状態の異常は認められず、体重推移も正常の範囲内であった。
【0128】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤はウサギの皮膚に対して、腐食性および刺激性作用は持たない(GHS 分類:区分外)と判断された。一方、次亜塩素酸ナトリウム製剤は、ウサギの皮膚に対して、腐食性作用を持つ(GHS分類:区分1)と判断された。
【0129】
1. 表題
ウサギを用いる亜塩素酸水製剤の皮膚刺激性試験
【0130】
2. 試験目的
亜塩素酸水製剤の皮膚刺激性および腐食性を調べるため、ウサギを用いて皮膚刺激性試験を実施する。また、比較対照物質として次亜塩素酸ナトリウム製剤を投与し、その刺激性反応を比較する。
【0131】
3. 遵守したGLP
- 「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26 日厚生省令第21 号)
【0132】
4. 参照したガイドライン
- OECDGuideline for Testing of Chemicals 404 (28 July 2015: Acute Dermal
Irritation/Corrosion)
【0133】
5. 遵守した動物実験関連規則
当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号,最終改正:平成26 年5 月30 日法律第46 号)および「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28 日環境省告示第88 号,最終改正:平成25 年8 月30 日環境省告示第84 号)を遵守して実施された。当該試験は安評センターの動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており(承認番号17-0030A),安評センター「動物実験に関する指針」(2014年6月2 日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
【0134】
13.1. 被験物質
13.1.1. 名称
和名:亜塩素酸水製剤
英名:Chlorous acid water(formulation)
13.1.5. 成分含量
13.1.5.1. 有効成分
亜塩素酸 0.8%
13.1.5.1.1. 有効成分(実測値)
亜塩素酸水(総塩素量:HClO2 = 68.46)[%]0.84
遊離塩素(HClO2 = 68.46)[mg/L] 448
13.1.5.2. その他成分
リン酸水素二カリウム
リン酸二水素カリウム
13.1.6. 安定性
有効期限内指定条件下で安定
13.1.7. 物質の状態
13.1.7.1. 外観
鮮やかな黄~薄い緑みの黄の透明な液体
13.1.7.2. 臭い
塩素臭
13.1.8. 有効期限
2018 年2 月7 日(製造後1年)
13.1.9. 保管条件
冷蔵,遮光,気密
13.1.9.1. 保管温度実測値および保管期間
- 3.1~7.5°C
- 2017 年5 月2 日~2017年6 月13 日(被験物質受領日~使用日)
13.1.10. 取り扱い上の注意
マスク・手袋の着用
13.1.11. 残余被験物質の処理
すべて廃棄した。
13.2. 比較対照物質
13.2.1. 名称
和名:次亜塩素酸ナトリウム製剤
英名:Sodiumhypochlorite solution (formulation)
13.2.2. 商品名
和名:ピューラックス-10
英名:Purelox-10
13.2.3. 用途
医薬品
13.2.4. ロット番号
6511
13.2.5. 成分含量
13.2.5.1. 有効成分
次亜塩素酸ナトリウム 10%
13.2.5.2. その他成分
不明
13.2.6. 安定性
有効期限内指定条件下で安定
13.2.7. 物質の状態
13.2.7.1. 外観
淡黄色の透明な液体
13.2.7.2. 臭い
塩素臭
13.2.8. 有効期限
2018 年2 月
13.2.9. 保管条件
冷蔵,遮光,気密
13.2.9.1. 保管温度実測値および保管期間
- 3.1~7.5°C
- 2017 年5 月2 日~2017年6 月13 日(比較対照物質受領日~使用日)
13.2.10. 取り扱い上の注意
マスク・手袋の着用
13.2.11. 残余比較対照物質の処理
当該試験用に被験物質等管理責任者から配布された比較対照物質の残余は廃棄した。
【0135】
14. 試験材料および方法
14.1. 供試動物
14.1.1. 種
ウサギ
14.1.2. 系統[グレード]
ニュージーランドホワイト種(Kbl:NZW)[SPF]
14.1.3. 生産者
北山ラベス株式会社
14.1.4. 購入先
オリエンタル酵母工業株式会社
14.1.5. 試験系の選択理由
動物については、ガイドラインで推奨されている白色ウサギを選択した。系統については、この種の試験に汎用されているニュージーランドホワイト種を選択した。
14.1.6. 週齢
16 週齢の動物を購入し,17週齢時(体重範囲:2.89~3.20 kg)に被験物質を投与した。
14.1.7. 購入動物数
雌7 匹
14.1.8. 使用動物数
雌6 匹
【0136】
14.2. 飼育管理
14.2.1. 飼育環境
7-207 号飼育室[陽圧](W4.8 × D 10.3 × H 2.6 m)で動物を飼育し,その環境調節の基準値を次のとおりとした。
温度: 17~23°C(実測値:20.8~21.4°C)
湿度: 35~70%RH(実測値:50~67%RH)
換気回数: 8 回以上/h
照明: 12 時間(7時点灯,19 時消灯)
飼育ケージ(W62.2 × D 75.6 × H 46.2 cm)に動物を1 匹ずつ収容した。飼育ケージは隔週1 回,給餌器は週1 回の頻度で交換した。
14.2.2. 飼料
固型飼料(RC4,LotNo. 161111,オリエンタル酵母工業)を給餌器から自由に摂取させた。
使用した飼料中の汚染物質に関する検査結果(AR-16-JP-114796-01-JA)を製造元から入手し、その値が日本実験動物飼料協会案の許容基準値内であることを確認した。
14.2.3. 給水
水道水を自動給水ノズルから自由に摂取させた。
水道法に基づく水質検査を2017 年4 月に外部機関で行い,検査結果が上水道水質基準の基準値内であることを確認した(成績書No. K17-0031)。上述の水質検査とは別に,細菌検査(一般細菌および大腸菌検査)を2017年5,6および7 月に安評センターで実施し、細菌が検出されていないことを確認した(第GT17-05号,第GT17-06号,第GT17-07号)。
【0137】
14.3. 検疫・馴化
動物搬入から投与前日の体重測定までを検疫期間とし、投与前までを馴化期間とした。
この間、一般状態を1 日1 回(土、日曜日を除く)観察し、体重を搬入時および投与前日(毛刈り前)に測定した。
【0138】
14.4. 個体識別
北山ラベス株式会社が動物の耳介に記入した連続番号を動物番号(Animal ID No.)として使用し、動物番号を明記した動物識別カード(Animal ID カード)をケージに付けて動物を識別した。
【0139】
14.5. 動物の選択
投与の約24 時間前に、すべての動物の躯幹背部の被毛を電気バリカン(替刃0.1mm)で刈毛した。投与当日、いずれの動物にも検疫・馴化期間中の一般状態および体重推移に異常がないことを確認した。1匹(動物番号5)の刈毛皮膚の投与を想定した部位に、傷または瘢痕が認められたため、当該動物を試験から除外(余剰動物)し、残りの6匹を試験動物として選択した。
【0140】
14.6. 余剰動物および観察終了後の供試動物の取り扱い
余剰動物は、動物管理部門に移管した。
供試動物は、ペントバルビタールナトリウム過麻酔により安楽死させた。
【0141】
14.7. 試験群の構成および試験法の選択理由
14.7.1. 試験群の構成
【化17】

14.7.2. 試験法の選択理由
亜塩素酸水の皮膚に対する刺激性はないとの情報から、試験ガイドラインに従い、合計3 匹のウサギに被験物質を4 時間暴露する方法を選択した。次亜塩素酸ナトリウム製剤においても、製品添付文書から腐食性を窺わせる記載はなかった。
【0142】
14.8. 被験物質の調製
提供された被験物質を、そのまま投与に用いた。
【0143】
14.9. 投与方法
投与は、MICROMAN(モデルM1000,Gilson)を用いて被験物質0.5mL を、2.45 × 2.45cmのパッチ(リント布、長谷川綿行)のリント布面に均一に広げた後、紙絆創膏(KENZ)を用いて、動物の背部皮膚に貼付した。さらに、処置部位全体を大型リント布(長谷川綿行)で被覆し、粘着性包帯(ニューハレックス、長谷川綿行)で固定した。暴露時間は4時間とした。暴露終了後にパッチを除去し、投与部位を油性ペンで印すとともに、注射用水およびティッシュペーパーを用いて清拭した。
【0144】
15. 観察、測定および検査
15.1. 皮膚反応の観察
パッチ除去後1、24、48および72 時間に投与部位の紅斑および痂皮形成ならびに浮腫について観察し、皮膚反応の判定基準(Draize[1]、1959)に従って採点した。パッチ除去後72時間に皮膚反応が認められない動物は、その時点で観察を終了した。パッチ除去後72時間においても皮膚反応が認められる動物は、パッチ除去後14日を最長とし、翌日以降も回復するまで毎日1回観察した。
また、参考データとして全例の投与部位を、パッチ除去後24 時間の観察時にデジタルカメラを用いて写真撮影を行った。
皮膚反応の判定基準
【化18】
【0145】
15.2. 一般状態の観察
皮膚反応以外の局所毒性および全身毒性症状について、皮膚反応観察と同じ頻度で観察した。
【0146】
15.3. 体重測定
全供試動物について、投与日(投与前)および観察終了日に体重を測定した。
【0147】
15.4. 皮膚反応の評価
判定基準に従った採点結果を基に、被験物質および比較対照物質をGHS[2]有害性区分に分類した。
【化19】

区分1~3 に分類されない場合は、区分外とする。
【0148】
16. 統計解析
統計学的手法を用いた検定は、実施しなかった。
【0149】
17. 試験結果
17.1. 皮膚反応の観察
17.1.1. 被験物質処置群(Appendix1-1、Photograph 1(図1))
観察期間中、いずれの動物の投与部位にも皮膚反応は観察されなかった。
17.1.2. 比較対照物質処置群(Appendix1-2、Photograph 2(図2))
パッチ除去後1 時間の観察から、評点1の紅斑および評点1 または2 の浮腫が3 例全例の投与部位に認められた。その後、これらの反応は増強し、パッチ除去後72時間では紅斑および浮腫ともに評点3 を示した。パッチ除去後5日から浮腫は回復傾向を示したものの、パッチ除去後5 または7 日で2 例の紅斑は評点4 に増強した。パッチ除去後14日においても、評点2 または3 の紅斑が全例に観察された。また、落屑がパッチ除去後5または6 日から観察され、うち1 例では瘢痕が9 日から認められた。パッチ除去後14日においても、1 例では瘢痕、2 例では落屑が認められた。
【0150】
17.2. 一般状態の観察(Appendix2)
観察期間中、いずれの動物にも異常は認められなかった。
【0151】
17.3. 体重測定(Appendix3)
すべての動物における体重推移は正常の範囲内であった。
【0152】
17.4. 皮膚反応の評価
17.4.1. 被験物質処置群(Table1-1)
パッチ除去後24、48および72 時間における各動物の紅斑/痂皮および浮腫の平均スコア値を算出した結果、いずれの例においても、両項目とも0.0 であった。
GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に皮膚反応を示さず、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
17.4.2. 比較対照物質処置群(Table1-2)
皮膚反応の評点合計が最大となるパッチ除去後48、72 時間および4 日における各動物の紅斑/痂皮および浮腫の平均スコア値を算出した結果、紅斑/痂皮は3 例ともに3.0、浮腫は2.7ないし3.0であった。
GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に全例の皮膚(刺激性)反応が回復せず、1例では腐食性の反応と判断されるパッチ除去後14 日までに回復しない瘢痕が観察されたことから、区分1(腐食性)に分類された。
【0153】
18. 考察および結論
ウサギの皮膚に0.5mL の亜塩素酸水製剤または次亜塩素酸ナトリウム製剤を4 時間暴露し、皮膚に対する刺激性および腐食性を調べた。
【0154】
その結果、亜塩素酸水製剤では、観察期間中、いずれの動物の投与部位にも皮膚反応は観察されなかった。GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に皮膚反応を示さず、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
【0155】
一方、次亜塩素酸ナトリウム製剤では、パッチ除去後1 時間の観察から、評点1 の紅斑および評点1 または2 の浮腫が3 例全例の投与部位に認められた。その後、これらの反応は増強し、パッチ除去後72時間では紅斑および浮腫ともに評点3を示した。パッチ除去後5 日から浮腫は回復傾向を示したものの、紅斑はパッチ除去後5 または7 日に評点4 への増強が2 例に認められた。最終観察日のパッチ除去後14日においても、評点2または3 の紅斑が全例に観察された。また、落屑がパッチ除去後5 または6 日から観察され、うち1 例では瘢痕が9 日から認められた。パッチ除去後14日においても、1例では瘢痕、2例では落屑が認められた。GHS 有害性区分(皮膚腐食性および皮膚刺激性)は、観察期間中に全例の皮膚(刺激性)反応が回復せず、1例では腐食性の反応と判断されるパッチ除去後14日までに回復しない瘢痕が観察されたことから、区分1(腐食性)に分類された。区分1 における細区分は、4 時間以下の暴露を実施していないため、1Bないし1C に該当すると予想される。
【0156】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤はウサギの皮膚に対して、腐食性および刺激性作用は持たない(GHS 分類:区分外)と判断された。一方、次亜塩素酸ナトリウム製剤は、ウサギの皮膚に対して、腐食性作用を持つ(GHS分類:区分1)と判断された。
【0157】
19. 参考文献
[1] Draize JH. Dermaltoxicity. In: Appraisal of the safety of chemicals infoods, drugs and cosmetics,Association of food and drug officials of the UnitedStates; 1959: p.p. 46-53.
[2] UnitedNations. Globally harmonized system of classification and labellingof chemicals (GHS).Sixth revised edition, 2015.
【表4】


【表5】


【表6】

【0158】
(実施例3)
(ウサギを用いる亜塩素酸水製剤の眼刺激性試験)
亜塩素酸水製剤の眼刺激性および重篤な損傷性を調べるため、Kbl:NZW ウサギ雌3匹を用いて眼刺激性試験を実施した。被験物質 0.1 mL を動物の右眼結膜嚢内に投与した。投与した眼における眼反応を、投与後1、24、48および72時間に観察するとともに一般状態を観察し、加えて投与前および観察終了時に体重測定を行った。また、投与後24 時間の眼反応の観察と同時点に、角膜上皮の状態(損傷部位の有無)をフルオレセインナトリウム水溶液で染色して確認した。
【0159】
その結果は次のとおりである。
【0160】
投与後1 時間の観察から、評点1の結膜発赤が3 例中2 例に認められた。観察された結膜発赤はパッチ除去後24 時間に回復を示した。以降、いずれの動物にも投与した眼に眼反応(刺激性反応)は観察されなかった。フルオレセインナトリウム水溶液を用いた角膜上皮における損傷(染色)部位の確認では、いずれの動物にも染色範囲は認められなかった。
【0161】
観察期間中、3 匹ともに一般状態の異常は認められず、体重推移も正常の範囲内であった。
【0162】
GHS 有害性区分(眼に対する不可逆的および可逆的影響)は、観察期間中に重篤な損傷性を示す反応が認められず、観察された眼(刺激性)反応が投与後72時間までに回復し、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
【0163】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤はウサギの眼に対して、重篤な損傷性および刺激性作用は持たない(GHS 分類:区分外)と判断された。
【0164】
1. 表題
ウサギを用いる亜塩素酸水製剤の眼刺激性試験
2. 試験目的
亜塩素酸水製剤の眼刺激性および重篤な損傷性を調べるため、ウサギを用いて眼刺激性試験を実施する。
3. 遵守したGLP
- 「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26 日厚生省令第21 号)
4. 参照したガイドライン
- OECDGuideline for Testing of Chemicals 405 (2 October 2012:AcuteEyeIrritation/Corrosion)
5. 遵守した動物実験関連規則
当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号、最終改正:平成26 年5 月30 日法律第46 号)および「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28 日環境省告示第88 号、最終改正:平成25 年8 月30 日環境省告示第84 号)を遵守して実施された。当該試験は安評センターの動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており(承認番号17-0031A)、安評センター「動物実験に関する指針」(2014年6月2 日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
【0165】
13. 被験物質
13.1. 名称
和名:亜塩素酸水製剤
英名:Chlorousacid water (formulation)
【0166】
13.5. 成分含量
13.5.1. 有効成分
亜塩素酸 0.8%
13.5.1.1. 有効成分(実測値)
亜塩素酸水(総塩素量:HClO2 = 68.46)[%] 0.84
遊離塩素(HClO2 = 68.46)[mg/L] 448
13.5.2. その他成分
リン酸水素二カリウム
リン酸二水素カリウム
【0167】
13.6. 安定性
有効期限内指定条件下で安定
【0168】
13.7. 物質の状態
13.7.1. 外観
鮮やかな黄~薄い緑みの黄の透明な液体
13.7.2. 臭い
塩素臭
【0169】
13.8. 有効期限
2018 年2 月7 日(製造後1 年)
【0170】
13.9. 保管条件
冷蔵、遮光、気密
13.9.1. 保管温度実測値および保管期間
- 3.1~7.5°C
- 2017 年5 月2 日~2017年6 月13 日(被験物質受領日~使用日)
【0171】
13.10. 取り扱い上の注意
マスク・手袋の着用
【0172】
13.11. 残余被験物質の処理
すべて廃棄した.
【0173】
14. 試験材料および方法
14.1. 供試動物
14.1.1. 種
ウサギ
14.1.2. 系統[グレード]
ニュージーランドホワイト種(Kbl:NZW)[SPF]
14.1.3. 生産者
北山ラベス株式会社
14.1.4. 購入先
オリエンタル酵母工業株式会社
14.1.5. 試験系の選択理由
動物については、ガイドラインで推奨されている白色ウサギを選択した。系統については、この種の試験に汎用されているニュージーランドホワイト種を選択した。
14.1.6. 週齢
10 週齢の動物を購入し、被験物質を11週齢時(体重範囲:2.10~2.30 kg)に投与した。
14.1.7. 購入動物数
雌4 匹
14.1.8. 使用動物数
雌3 匹
【0174】
14.2. 飼育管理
14.2.1. 飼育環境
7-207 号飼育室[陽圧](W4.8 × D 10.3 × H 2.6 m)で動物を飼育し、その環境調節の基準値を次のとおりとした。
温度: 17~23°C(実測値:20.9~21.4°C)
湿度: 35~70%RH(実測値:50~67%RH)
換気回数: 8 回以上/h
照明: 12 時間(7時点灯、19 時消灯)
飼育ケージ(W62.2 × D 75.6 × H 46.2 cm)に動物を1 匹ずつ収容した。給餌器は週1回の頻度で交換した。
14.2.2. 飼料
固型飼料(RC4、LotNo. 161111、オリエンタル酵母工業)を給餌器から自由に摂取させた。
使用した飼料中の汚染物質に関する検査結果(AR-16-JP-114796-01-JA)を製造元から入手し、その値が日本実験動物飼料協会案の許容基準値内であることを確認した。
14.2.3. 給水
水道水を自動給水ノズルから自由に摂取させた。
水道法に基づく水質検査を2017 年4 月に外部機関で行い、検査結果が上水道水質基準の基準値内であることを確認した(成績書No. K17-0031)。上述の水質検査とは別に、細菌検査(一般細菌および大腸菌検査)を2017年5、6および7 月に安評センターで実施し、細菌が検出されていないことを確認した(第GT17-05号、第GT17-06号、第GT17-07号)。
【0175】
14.3. 検疫・馴化
動物搬入から投与前日の体重測定までを検疫期間とし、投与前までを馴化期間とした。
この間一般状態を1日1 回(土、日曜日を除く)観察し、体重を搬入時および投与前日(角膜上皮の確認前)に測定した。
【0176】
14.4. 個体識別
北山ラベス株式会社が動物の耳介に記入した連続番号を動物番号(Animal ID No.)として使用し、動物番号を明記した動物識別カード(Animal ID カード)をケージに付けて動物を識別した。
【0177】
14.5. 動物の選択
投与の約24 時間前に、すべての動物の両眼をフルオレセインナトリウム(LotNo.PDK5648、和光純薬工業)の2%水溶液(媒体:注射用水、Lot No.K6D73、大塚製薬工場)を用いて角膜における傷がないことを確認した。投与当日、いずれの動物にも検疫・馴化期間中の一般状態および体重推移に異常がないことを確認した。1匹(動物番号3)の投与を想定した眼に、結膜の発赤が確認されたため、当該動物を試験から除外(余剰動物)し、残りの3匹を試験動物として選択した。
【0178】
14.6. 余剰動物および観察終了後の供試動物の取り扱い
余剰動物は、動物管理部門に移管した。
供試動物は、ペントバルビタールナトリウム過麻酔により安楽死させた。
【0179】
14.7. 試験群の構成および試験法の選択理由
14.7.1. 試験群の構成
【化20】

14.7.2. 試験法の選択理由
亜塩素酸水の眼に対する刺激性はないとの情報から、試験ガイドラインに従い、合計3 匹のウサギに被験物質を投与する方法を選択した。
【0180】
14.8. 被験物質の調製
提供された被験物質を、そのまま投与に用いた。
【0181】
14.9. 投与方法
投与は、MICROMAN(モデルM100、Gilson)を用いて被験物質原液0.1mL を、動物の片側の眼の結膜嚢内に落とし込んだ。被験物質の損失を防ぐため、上下眼瞼を緩やかに合わせて約1秒間保持した。被験物質を投与しない眼は、無処置対照眼とした。
【0182】
15. 観察、測定および検査
15.1. 眼反応の観察
投与後1、24、48および72 時間に投与した眼の角膜、虹彩および結膜における反応を観察し、眼反応の判定基準(Draize[1]、1959)に従って採点した。角膜上皮の状態について、投与後24時間に、2%フルオレセインナトリウム水溶液を点眼し、生理食塩液で洗浄後、角膜の染色(損傷)範囲を観察した。また、参考データとして全例の投与した眼を、投与後24時間の観察時にデジタルカメラを用いて写真撮影を行った。
【0183】
眼反応の判定基準
角膜 A 混濁の程度(最も濃い領域を評価する)
透明、混濁なし──────────────────────────0
散在性及び瀰漫性の混濁、虹彩ははっきり認められる─────────1
半透明で容易に識別可能、虹彩はやや不明瞭─────────────2
乳濁、虹彩の細部認めず、瞳孔の大きさがやっと認められる──────3
白濁、虹彩は認めない───────────────────────4
【0184】
B 該当する角膜混濁部の面積
0<~1/4─────────────────────────────1
1/4~1/2─────────────────────────────2
1/2~3/4─────────────────────────────3
3/4~4/4─────────────────────────────4
【0185】
虹彩 A
正常───────────────────────────────0
正常以上のひだ、充血、腫脹、角膜周囲充血(いずれか一つ、または組合せ)、
多少とも対光反応あり───────────────────────1
対光反応なし、出血、著しい組織崩壊(いずれか一つ)────────2
【0186】
結膜 A 結膜の発赤(角膜と虹彩を除く眼瞼結膜および眼球結膜)
血管は正常────────────────────────────0
正常より明らかに血管は充血────────────────────1
瀰漫性、深紅色で個々の血管は識別しにくい─────────────2
瀰漫性の牛肉様の赤色───────────────────────3
【0187】
B 結膜の浮腫
腫脹なし─────────────────────────────0
正常を超える腫脹(瞬膜を含む)──────────────────1
明らかな腫脹、眼瞼が少し外反───────────────────2
眼瞼が半分閉じる腫脹───────────────────────3
眼瞼が半分以上閉じる腫脹─────────────────────4
【0188】
C 分泌物
分泌物は認められない─────────────────────────0
正常より少し多い(正常動物の内眼角に観察される少量のものは含まない)─1
眼瞼とそのすぐ近くの被毛を濡らす程度の分泌物─────────────2
眼瞼と被毛、その周囲のかなりの部分を濡らす程度の分泌物────────3
【0189】
15.2. 一般状態の観察
眼反応以外の局所毒性および全身毒性症状について、眼反応観察と同じ頻度で観察した。
【0190】
15.3. 体重測定
全供試動物について、投与日(投与前)および観察終了日に体重を測定した。
【0191】
15.4. 眼反応の評価
判定基準に従った採点結果を基に、GHS[2]有害性区分に分類した。
【化21】

区分1 または2 に分類されない場合は、区分外とする。
【0192】
16. 統計解析
統計学的手法を用いた検定は、実施しなかった。
【0193】
17. 試験結果
17.1. 眼反応の観察(Appendix1、2、Photograph 1(図3))
投与後1 時間の観察から、評点1の結膜発赤が3 例中2 例に認められた。観察された結膜発赤はパッチ除去後24 時間に回復を示した。以降、いずれの動物にも投与した眼に眼反応(刺激性反応)は観察されなかった。フルオレセインナトリウム水溶液を用いた角膜上皮における損傷(染色)部位の確認では、いずれの動物にも染色範囲は認められなかった。
【0194】
17.2. 一般状態の観察(Appendix3)
観察期間中、いずれの動物にも異常は認められなかった。
【0195】
17.3. 体重測定(Appendix4)
すべての動物における体重推移は正常の範囲内であった。
【0196】
17.4. 眼反応の評価(Table1)
投与後24、48および72 時間における各動物の角膜、虹彩、結膜発赤および浮腫の平均スコア値を算出した結果、角膜混濁、虹彩、結膜発赤および浮腫は3 例ともにいずれも0.0であった。
【0197】
GHS 有害性区分(眼に対する不可逆的および可逆的影響)は、観察期間中に重篤な損傷性を示す反応が認められず、観察された眼(刺激性)反応が投与後72時間までに回復し、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
【0198】
18. 考察および結論
ウサギの眼に0.1mL の亜塩素酸水製剤を投与し、眼に対する刺激性および重篤な損傷性を調べた。
【0199】
その結果、投与後1時間の観察から、評点1 の結膜発赤が3 例中2 例に認められた。観察された結膜発赤はパッチ除去後24 時間に回復を示した。以降、いずれの動物にも投与した眼に眼反応(刺激性反応)は観察されなかった。フルオレセインナトリウム水溶液を用いた角膜上皮における損傷(染色)部位の確認では、いずれの動物にも染色範囲は認められなかった。
【0200】
GHS 有害性区分(眼に対する不可逆的および可逆的影響)は、観察期間中に重篤な損傷性を示す反応が認められず、観察された眼(刺激性)反応が投与後72時間までに回復し、算出された平均スコア値が、いずれの区分の下限値にも達しないことから、区分外に分類された。
【0201】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤はウサギの眼に対して、重篤な損傷性および刺激性作用は持たない(GHS 分類:区分外)と判断された。
【0202】
19. 参考文献
[1] Draize JH.Dermal toxicity. In: Appraisal of the safety of chemicals infoods, drugs and cosmetics,Association of food and drug officials of the UnitedStates; 1959: p.p. 46-53.
[2] UnitedNations. Globally harmonized system of classification and labellingofchemicals (GHS). Sixth revised edition, 2015.
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】
【0203】
(実施例4)
(モルモットを用いる亜塩素酸水製剤の皮膚感作性試験(Maximization Test)
【0204】
亜塩素酸水製剤の皮膚感作性に関する情報を得るため、20 匹のSlc:Hartley 系雌モルモット(SPF)を用いてMaximization Test を実施した。あらかじめ実施した予備試験の結果を基に皮膚感作性試験における媒体および処置濃度を設定した。被験物質処置群では、10匹の動物を用いて感作処置1回目に0.2 w/v%被験物質液(媒体:蒸留水)を皮内注射し、感作処置2 回目に100%被験物質液(原液)を48 時間閉塞貼付した。惹起処置では20w/v%被験物質液を24時間閉塞貼付した。また、対照群として皮内感作処置時に媒体を用いる陰性対照群5 匹および陽性対照物質のα-Hexylcinnamaldehyde(HCA)を用いる陽性対照群5匹を設けた。各群すべての惹起処置部位について皮膚反応を観察した。
【0205】
その結果は次のとおりである。
【0206】
被験物質を処置した惹起処置部位の観察では、いずれの動物も皮膚反応は示さなかった。被験物質の皮膚感作率は0%と算出され、GHS 有害性区分(皮膚感作性)のいずれの区分の下限値に達しないことから、区分外と判定された。一方、陽性対照物質の惹起処置部位の観察で、陽性対照群の5例全例に評点3の皮膚反応が認められ、陰性対照群ではいずれの動物も皮膚反応は示さなかった。陽性対照物質の皮膚感作率は100%と算出され、陽性対照物質であるHCAの皮膚感作性が確認されたことから、当該試験において亜塩素酸水製剤の皮膚感作性が適切に評価されていると判断された。
【0207】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤は皮膚感作性物質ではないと判定(GHS 分類:区分外)された。
【0208】
1. 表題
モルモットを用いる亜塩素酸水製剤の皮膚感作性試験(Maximization Test)
2. 試験目的
モルモットを用いてMaximization 法による皮膚感作性試験を実施し、亜塩素酸水製剤の皮膚感作性に関する情報を得ることを目的とする。
3. 遵守したGLP
- 「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26 日厚生省令第21 号)
4. 参照したガイドライン
- 医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な毒性試験ガイドラインについて(平成元年9月11 日薬審1 第24 号)
- OECDGuideline for Testing of Chemicals 406 (17th July 1992: SkinSensitization)
5. 遵守した動物実験関連規則
当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号、最終改正:平成26 年5 月30 日法律第46 号)および「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28 日環境省告示第88 号、最終改正:平成25 年8 月30 日環境省告示第84 号)を遵守して実施された。当該試験は安評センターの動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており(承認番号17-0038A)、安評センター「動物実験に関する指針」(2014年6月2 日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
[Dayの定義]
感作処置開始日をDay0と定め、その前日をDay-1とした。
【0209】
13. 被験物質および対照物質
13.1. 被験物質
13.1.1. 名称
和名:亜塩素酸水製剤
英名:Chlorousacid water (formulation)
13.1.5. 成分含量
13.1.5.1. 有効成分
亜塩素酸 0.8%
13.1.5.1.1. 有効成分(実測値)
亜塩素酸水(総塩素量:HClO2 = 68.46)[%] 0.84
遊離塩素(HClO2 = 68.46)[mg/L] 448
13.1.5.2. その他成分
リン酸水素二カリウム
リン酸二水素カリウム
13.1.6. 安定性
有効期限内指定条件下で安定
13.1.7. 物質の状態
13.1.7.1. 外観
鮮やかな黄~薄い緑みの黄の透明な液体
13.1.7.2. 臭い
塩素臭
13.1.8. 有効期限
2018 年2 月7 日(製造後1年)
13.1.9. 保管条件
冷蔵、遮光、気密
13.1.9.1. 保管温度実測値および保管期間
- 3.1~7.5°C
- 2017 年5 月2 日~2017年7 月11 日(被験物質受領日~最終使用日)
13.1.10. 取り扱い上の注意
マスク・手袋の着用
13.1.11. 残余被験物質の処理
被験物質等管理責任者に返却後、廃棄した。
【0210】
13.2. 陽性対照物質
感作性試験において広く使用されており、ガイドラインに例示されているα-Hexylcinnamaldehyde(HCA)を陽性対照物質に選択した。
13.2.1. 名称
α-Hexylcinnamaldehyde
13.2.2. 略称
HCA
13.2.3. 製造元
和光純薬工業株式会社
13.2.4. ロット番号
SAF6701
13.2.5. CAS No.
101-86-0
13.2.6. 物質の状態
液体
13.2.7. 保管条件
室温(許容温度:1~30°C)
13.2.8. 取り扱い上の注意
マスク・手袋の着用
【0211】
14. 試験材料および方法
14.1. 供試動物
14.1.1. 種
モルモット
14.1.2. 系統[グレード]
Slc:Hartley[SPF]
14.1.3. 生産者
日本エスエルシー株式会社
14.1.4. 試験系の選択理由
試験ガイドラインで推奨されているモルモットを選択した。系統は、既知化学物質に対する感受性、遺伝的安定性等を考慮して、Slc:Hartley 系を選択した。
14.1.5. 週齢
6 週齢の動物を購入し、7 週齢時(体重範囲:384~452g)に投与を開始した。
14.1.6. 購入動物数
雌22 匹
14.1.7. 使用動物数
雌20 匹
【0212】
14.2. 飼育管理
14.2.1. 飼育環境
7-201 号飼育室[陽圧](W6.4 × D 10.3 × H 2.6 m)で動物を飼育し、その環境調節の基準値を次のとおりとした。
温度: 20~26°C(実測値:22.8~23.3°C)
湿度: 35~70%RH(実測値:48~61%RH)
換気回数: 12 回以上/h
照明: 12 時間(7時点灯、19 時消灯)
水洗式飼育機(東洋理工)を使用し、アルミ製前面・床ステンレス製網目飼育ケージ(W 29.1 × D 26.3 × H 18.0 cm)に動物を1 匹ずつ収容した。飼育ケージは隔週1回、給餌器は週1 回の頻度で取り換えた。
14.2.2. 飼料
動物には、固型飼料(RC4、Lot No. 161111、170404、オリエンタル酵母工業)を給餌器から自由に摂取させた。
飼料中の汚染物質に関する分析成績書( 第AR-16-JP-114796-01-JA 号、 第AR-17-JP-004057-01-JA 号)を製造元から入手し、その値が日本実験動物飼料協会案の許容基準値内であることを確認した。
14.2.3. 給水
動物には、水道水を自動給水ノズルから自由に摂取させた。
水道法に基づく水質検査を2017 年4 月に外部機関で行い、検査結果が上水道水質基準の基準値内であることを確認した(成績書No. K17-0031)。上述の水質検査とは別に、細菌検査(一般細菌および大腸菌検査)を2017年6、7および8 月に安評センターで実施し、細菌が検出されていないことを確認した(第GT17-06号、第GT17-07号、第GT17-08号)。
【0213】
14.3. 検疫・馴化
動物搬入から感作処置開始前までを検疫および馴化期間とした。
検疫・馴化期間中は、動物の一般状態を毎日1 回(土、日曜日を除く)観察するとともに試験環境に馴化させた。また、搬入時および感作処置開始前(検疫・馴化期間終了時)に体重を測定した。これらの観察・測定において、いずれの動物にも異常は認められなかった。
【0214】
14.4. 群分け
群分けは、Day0(感作処置開始日)に行った。
【0215】
検疫・馴化期間中に異常を示す動物はなかったことから、番号順に各群に割り付け、残りの動物(動物番号21、22)は余剰動物として取り扱った。
【0216】
14.5. 個体識別
動物の識別は、動物入荷時に油性ペンを用いて耳介に連続番号(動物番号)を記入し、動物番号を明記した動物識別カード(ID カード)をケージに付した。また、群分け後には、動物番号および試験群を明記したラベルをケージに付けて動物を識別した。
【0217】
14.6. 余剰動物および観察終了後の供試終了動物の取り扱い
余剰動物は、動物管理部門に移管した。
供試動物は、炭酸ガス吸入法で安楽死させた。
【0218】
14.7. 試験群の構成および濃度設定理由
14.7.1. 試験群の構成
【化22】

FCA:Freund'scomplete adjuvant
―:パッチのみを処置した。
14.7.2. 濃度設定理由
被験物質の処置濃度は、予備試験[試験番号H520( 697-003 )](GLP 非適用)の結果に基づき設定した。予備試験において、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20および50w/v%(媒体:蒸留水)の計9濃度の被験物質液を1 匹の動物にそれぞれ0.1 mL ずつ2 ヵ所に皮内注射した結果、投与後24 時間において、0.5w/v%以上の濃度では投与部位に腐食性の反応(投与部位の白斑または痂皮形成)が認められた。0.2w/v%の投与部位では評点2、0.1 w/v%の投与部位では評点1または2 の皮膚反応が観察された。また、被験物質の4、20 w/v%(媒体:蒸留水)および100%(原液)の計3濃度を2 匹の動物に24 時間閉塞貼付した結果、パッチ除去後24時間において、100%の貼付部位に中等度の皮膚反応が認められ、20 w/v%以下の貼付部位に皮膚反応は観察されなかった。皮内注射および閉塞貼付した動物に、一般状態の異常は観察されなかった。
【0219】
以上の結果から、本試験における感作処置の皮内注射には、中等度(評点2)の皮膚反応が得られ、腐食性の反応を示さない最高濃度である0.2 w/v%を、感作の閉塞貼付には中等度の皮膚反応が認められた最高濃度である100%を、惹起処置には皮膚反応が認められなかった最高濃度である20w/v%をそれぞれ設定した。
【0220】
14.8. 試験法の選択理由
既知の皮膚感作性試験法の中で、試験ガイドラインで推奨されているMaximizationTest[1]を選択した。
【0221】
14.9. 投与液の調製
投与液は用時調製とし、各投与当日に調製した.なお、投与液の分析は実施しなかった。
14.9.1. 感作処置1 回目(皮内注射)
14.9.1.1. 被験物質処置群
【0222】
(1)蒸留水・FCA乳化物
ルアーロック式ガラス注射筒を2 本準備し、1 本にFCA(Lot No. 6231897、DIFCO)5 mL を、もう1 本に同容量の蒸留水(注射用水、LotNo.K6D73、大塚製薬工場)をそれぞれ吸引し、金属製ジョイントで2 本の注射筒を接続した。2 本の注射筒のシリンダーを交互に押すことにより2 液を混和し、乳化物を作製した。
(2)0.2w/v%被験物質液
被験物質0.04g を秤量した。これに蒸留水(注射用水、Lot No. K6D73)を加えて撹拌し、20 mL に定容した。
(3)0.2w/v%被験物質・FCA 乳化物
被験物質0.04g を秤量した。これに蒸留水を加えて撹拌し、10 mL に定容した(0.4w/v%被験物質液)。ルアーロック式ガラス注射筒を2 本準備し、1本に0.4w/v%被験物質液2 mL を、もう1 本に同容量のFCA をそれぞれ吸引後、金属製ジョイントで2 本の注射筒を接続した。2 本の注射筒のシリンダーを交互に押すことにより2液を混和し、乳化物を作製した。
【0223】
14.9.1.2. 陰性対照群
(1)蒸留水・FCA乳化物
14.9.1.1.項の調製物を用いた。
(2)蒸留水
蒸留水を用いた。
(3)蒸留水・FCA乳化物
14.9.1.1.項の調製物を用いた。
【0224】
14.9.1.3. 陽性対照群
(1)蒸留水・FCA乳化物
14.9.1.1.項の調製物を用いた。
(2)10w/v% HCA 液
HCA 0.3 g を秤量した。これにコーン油(LotNo. SAG4916、和光純薬工業)を加えて撹拌し、3 mL に定容した。
(3)10w/v% HCA・FCA 乳化物
HCA 0.2g を秤量した。これにFCA を加えて撹拌し、1 mL に定容した(20 w/v% HCA・FCA 混合液)。ルアーロック式ガラス注射筒を2 本準備し、1本に20w/v% HCA・FCA混合液を、もう1 本に同容量の蒸留水をそれぞれ吸引し、金属製ジョイントで2 本の注射筒を接続した。2 本の注射筒のシリンダーを交互に押して2液を混和し、乳化物を作製した。
【0225】
14.9.2. 10%ドデシル硫酸ナトリウム混和物
ドデシル硫酸ナトリウム(Lot No. SAG9168、和光純薬工業)1.0 g を秤取した。ワセリン(サンホワイトP-1、Lot No. 16F3、日興リカ)9.0gを添加後、スパーテルを用いて2 物質を均一なペースト状になるまで混合した。
【0226】
14.9.3. 感作処置2 回目(閉塞貼付)
14.9.3.1. 被験物質処置群(100%被験物質液)
被験物質の原液を用いた。
14.9.3.2. 陰性対照群
投与液は用いなかった。
14.9.3.3. 陽性対照群(100% HCA 液)
HCA 原液を用いた。
【0227】
14.9.4. 惹起処置(閉塞貼付)
14.9.4.1. 被験物質処置群および陰性対照群(20w/v%被験物質液)
被験物質2 g を秤量した。これに蒸留水(注射用水、LotNo. K6D73)を加えて撹拌し、10 mL に定容した。
14.9.4.2. 陽性対照群および陰性対照群(10w/v% HCA 液)
HCA 0.3g を秤量した。これに流動パラフィン(Lot No. 816186、吉田製薬)を加えて撹拌し、3 mL に定容した。
【0228】
14.10. 投与方法
投与方法はMaximizationTest に従った。
【化23】
【0229】
14.10.1. 感作処置1 回目(Day0)
電気バリカンおよびシェーバーを用いて動物の胸背部を除毛した。除毛部に2 × 4 cmの投与区画(イメージ1、(1)~(3)で囲まれた部位)を油性ペンで印すことにより設けた。
調製した各試験群の投与液(1)~(3)(14.9.1.項)がイメージ1 の投与部位(1)~(3)に対応するよう、0.1 mL ずつ皮内注射した。
14.10.2. 10%ドデシル硫酸ナトリウム混和物の開放塗布(Day7)
Day 7 に、電気バリカンおよびシェーバーを用いて動物の胸背部(イメージ1、(4)の部位)を除毛した。被験物質処置群および陰性対照群の同部位に10%ドデシル硫酸ナトリウム混和物(14.9.2.項)を薄く均一に開放塗布した。
14.10.3. 感作処置2 回目(Day8~10)
片面をサージカルテープ(幅2 インチ、BlendermTM、3M)で被覆した2 × 4 cm のろ紙に、ピペット(MICROMAN(登録商標)、モデルM1000、Gilson)を用いて、各試験群の投与液(14.9.3.項)0.2mLを均一に塗布した。このパッチを、各試験群の投与部位に対応するよう、投与区画(イメージ1、(4)の部位)に貼付した後、サージカルテープ(幅2 インチ、TransporeTM、3M)で固定した。陰性対照群についてはろ紙のみを貼付し、同様にサージカルテープで固定した。48時間閉塞貼付後、このパッチを除去した。
14.10.4. 惹起処置(Day22~23)
電気バリカンおよびシェーバーを用いて、動物の腹背部(イメージ1、(5)(6)の部位)を除毛した。片面をサージカルテープ(幅2 インチ、BlendermTM、3M)で被覆した2× 2 cmのろ紙に、ピペット(MICROMAN(登録商標)、モデルM100、Gilson)を用いて、各試験群の投与液(14.9.4.項)0.1mL を均一に塗布した。このパッチを各試験群の投与部位に対応するよう、投与区画(イメージ1、(5)(6)の部位)に貼付した後、サージカルテープ(幅2インチ、TransporeTM、3M)で固定した。24時間閉塞貼付後、パッチを除去し、惹起処置部位を油性ペンで印した。惹起処置部位に残存した被験物質は、蒸留水およびティッシュペーパーを用いて取り除いた。
【0230】
15. 観察、測定および検査
15.1. 皮膚反応の観察
惹起処置のパッチ除去後24 および48 時間に惹起処置部位を観察し、次の皮膚反応判定基準に従って皮膚反応の程度を点数化した。また、参考データとして各群の代表例における惹起処置部位を、パッチ除去後24時間の観察時にデジタルカメラを用いて写真撮影を行った。
【化24】
【0231】
15.2. 一般状態の観察
観察期間中(Day0~25)、感作処置部位の皮膚反応を含む一般状態について、毎日1回(土、日曜日を除く)観察した。
【0232】
15.3. 体重の測定
感作処置開始前(Day0)および惹起処置部位の観察終了日(Day 25)に体重を測定した。
【0233】
15.4. 皮膚感作性の評価
惹起処置部位について、皮膚反応の発現率をそれぞれ算出した。
【0234】
15.1.項で採点した点数のうち、各動物の最高点をその動物の評点とした。被験物質処置群において、陰性対照群で認められた最高評点より高い評点を示した動物を感作陽性動物と判定し、皮膚感作率を基にGHS[2]有害性区分に分類した。
【0235】
皮膚感作率は[(感作陽性動物数 / 使用動物数)× 100]として算出した。
【0236】
なお、陽性対照群については、惹起処置部位における皮膚反応の発現を確認し(皮膚感作率30%以上)、実験手法が適切であることを確認した。
【0237】
皮膚感作性物質の有害性区分および細区分(GHS)
【化25】
【0238】
上記のいずれの区分にも分類されない場合は、区分外とした。
【0239】
16. 統計解析
統計学的手法を用いた検定は実施しなかった。
【0240】
17. 試験結果
17.1. 皮膚反応の観察(Appendix1、Photograph 1~4(図4図7))
被験物質を処置した惹起処置部位の観察では、いずれの動物も皮膚反応は示さなかった。一方、陽性対照物質の惹起処置部位の観察で、陽性対照群の5 例全例に評点3 の皮膚反応が認められ、陰性対照群ではいずれの動物も皮膚反応は示さなかった。
【0241】
17.2. 一般状態の観察(Table2)
すべての動物で、FCAおよび被験物質または陽性対照物質の刺激性によると考えられる皮内注射部位の紅斑/浮腫がDay 1 以降、痂皮形成がDay 4 またはDay7 以降に認められた。また、ドデシル硫酸ナトリウム処置または陽性対照物質処置によると考えられる閉塞貼付(感作処置2回目)部位の紅斑/浮腫がDay 8 またはDay10 以降に認められ、その後、痂皮形成または落屑が散見された。
【0242】
17.3. 体重の測定(Appendix2)
すべての動物の観察終了時の体重が、感作開始時(Day 0)より増加した。
【0243】
17.4. 皮膚感作性の評価(Table1)
皮膚反応の観察の結果から、被験物質処置群および陽性対照群の皮膚感作率は、それぞれ0%および100%と算出された。被験物質のGHS 有害性区分(皮膚感作性)は、算出された皮膚感作率がいずれの区分の下限値に達しなかったため、区分外とした。また、陽性対照群では皮膚感作率が30%以上であったことから、皮膚感作性が確認された。
【0244】
18. 考察および結論
亜塩素酸水製剤の皮膚感作性に関する情報を得るため、モルモットを用いてMaximization Test を実施した。
【0245】
その結果、被験物質を処置した惹起処置部位の観察では、いずれの動物も皮膚反応は示さなかった。皮膚感作率は0%と算出され、GHS 有害性区分(皮膚感作性)のいずれの区分の下限値に達しないことから、区分外と判定された。一方、陽性対照物質の惹起処置部位の観察で、陽性対照群の5例全例に評点3の皮膚反応が認められ、陰性対照群ではいずれの動物も皮膚反応は示さなかった。皮膚感作率は100%と算出され、陽性対照物質であるHCA の皮膚感作性が確認されたことから、当該試験において亜塩素酸水製剤の皮膚感作性が適切に評価されていると判断された。
【0246】
その他、一般状態観察および体重の測定結果において、感作性評価に影響を与える事象はなかった。
【0247】
以上の結果から、当該試験条件下において、亜塩素酸水製剤は皮膚感作性物質ではないと判定(GHS 分類:区分外)された。
【0248】
19. 参考文献
[1] MagnussonB, Kligman AM. The identification of contact allergens by animalassay. The guineapig maximization test. J Invest Dermatol 1969; 52: 268.
[2] UnitedNations. Globally harmonized system of classification and labellingofchemicals (GHS). Sixth revised edition, 2015.
【表12】

【表13】

【表14】

【表15】
【0249】
(亜塩素酸水の安全性)
上記結果をふまえ、亜塩素酸水の安全性を他の除菌剤と比較して示す。
【化26】
【0250】
亜塩素酸水を含む除菌液は、皮膚腐食性および刺激性、眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性、ならびに皮膚感作性について、「区分外」である。すなわち、亜塩素酸水を含む除菌液を皮膚に適用した場合、皮膚の腐食反応がなく、紅斑、浮腫がないこと、眼に適用した場合に、角膜、光彩、結膜が正常であること、皮膚感作性を示さないことが示されている。それに対して、次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚腐食性および刺激性、ならびに眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性において、「区分1」であり、皮膚に適用した場合、非常に軽度ではあるものの紅斑および浮腫が生じ、角膜、光彩、または結膜に可逆であると予測されない作用が認められ、そして/または角膜混濁、虹彩炎で一定スコアの陽性反応が得られることを意味する。エタノールについては、眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性において、「区分2B」または「区分2」であり、角膜混濁、虹彩炎、結膜発赤、および/または結膜浮腫において一定スコア以上の陽性反応が得られることを意味する。従来の除菌液とは異なり、亜塩素酸水を含む除菌液は、直接動物に接触しても有害な事象を引き起こさず、直接動物を除菌し得ることが理解される。
【0251】
亜塩素酸水を含む除菌液は、高い除菌性能を有しつつも、直接動物に接触し得るので、ラビング法(擦式法)、スクラブ法(洗浄法)、ベースン法(浸漬法)などのように、除菌効果の高い消毒法を使用して、しっかり除菌することができることが示されている。
【0252】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本開示の除菌液は、動物の除菌において使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7