(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091860
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/00 20060101AFI20240628BHJP
F24F 11/875 20180101ALI20240628BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240628BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F24F3/00 B
F24F11/875
F24F13/02 C
F24F13/068 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069364
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2020069059の分割
【原出願日】2020-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 宏次
(72)【発明者】
【氏名】菊本 悦司
(72)【発明者】
【氏名】天田 靖佳
(57)【要約】
【課題】空調時の操作性や快適性が高く、エネルギーの消費量が少ない空調システムを提供する。
【解決手段】居室100の床部材112に形成されたパーソナル吹出口に配置され、ファンを有する給排気部材150と、床部材の下方のスラブ上に形成されて床部材との間に床下空間を形成するコンクリート214と、外気の導入が可能な通気口179と、を備え、ファンは、正回転状態および該正回転状態の回転方向とは逆の方向に回転する逆回転状態の何れかの状態で作動可能であり、ファンが正回転状態で作動している際に、床下空間からパーソナル吹出口を通して居室に空気が供給され、ファンが逆回転状態で作動している際に、通気口から導入した外気を居室に送り、該居室からパーソナル吹出口を通して床下空間に空気が供給される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室の床部材に形成されたパーソナル吹出口に配置され、ファンを有する給排気部材と、
前記床部材の下方のスラブ上に形成されて前記床部材との間に床下空間を形成するコンクリートと、
外気の導入が可能な通気口と、
を備え、
前記ファンは、正回転状態および該正回転状態の回転方向とは逆の方向に回転する逆回転状態の何れかの状態で作動可能であり、
前記ファンが前記正回転状態で作動している際に、前記床下空間から前記パーソナル吹出口を通して前記居室に空気が供給され、
前記ファンが前記逆回転状態で作動している際に、前記通気口から導入した外気を前記居室に送り、該居室から前記パーソナル吹出口を通して前記床下空間に空気が供給される、
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等のフリーアクセスフロア内の空調システムとして、床吹出空調方式を適用した空調システム(以下、床吹出空調システムという場合がある)が導入されている。床吹出空調システムでは、例えば電源ケーブルの配線空間として用いられる二重床の空間(床下空間)に空調用の空気が給気され、その空気が床面に設置された吹出口から室内に吹き出す。室内に吹き出されて室内を空調した空気は、フロアの床以外の壁面等に設置された還気口から天井裏空間等のようにフロア外で空調機が設けられている空間に還気される。
【0003】
例えば、特許文献1には、床吹出空調方式を適用し、空調機から吐出されて床スラブ上の二重床下給気チャンバ内で循環された蓄熱用空気を空調機へ直接還気させるように構成された躯体蓄熱空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フリーアクセスフロア内の空調システムでは、個人の活動エリアごとに所望の温熱環境を作れるパーソナル空調が導入されている。パーソナル空調では、個人毎の活動エリアに対応したパーソナル吹出口が天井面又は床面に設置される。天井面に設置されるパーソナル吹出口には、例えばダクトに接続される形式のものとファンが設けられる形式のものがある。床面に設置されるパーソナル吹出口には、例えばファンが設けられるものと設けられないものがある。
【0006】
上述のように種々のパーソナル吹出口が提案されているが、例えば躯体蓄熱空調システムをはじめとする従来の床吹出空調システムの床面にパーソナル吹出口を設置してパーソナル空調を実施すると、風量や風向き、稼働時間のスケジューリング等に関する操作性や空調の快適性の確保が難しいという問題があった。また、床面に設置する従来のパーソナル吹出口においては、パーソナル吹出口のファンが空調対象である個人に対して一定の方向に気流を吹出すものが多い。そのため、床吹出空調システムでパーソナル空調を行う際に、空調時の操作性や快適性の向上が求められていた。また、床吹出空調システムでパーソナル空調を行う際に、消費されるエネルギーの削減が求められていた。
【0007】
本発明は、空調時の操作性や快適性が高く、エネルギーの消費量が少ない空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調システムは、居室の床部材に形成されたパーソナル吹出口に配置され、ファンを有する給排気部材と、前記床部材の下方のスラブ上に形成されて前記床部材との間に床下空間を形成するコンクリートと、外気の導入が可能な通気口と、を備え、前記ファンは、正回転状態および該正回転状態の回転方向とは逆の方向に回転する逆回転状態の何れかの状態で作動可能であり、前記ファンが前記正回転状態で作動している際に、前記床下空間から前記パーソナル吹出口を通して前記居室に空気が供給され、前記ファンが前記逆回転状態で作動している際に、前記通気口から導入した外気を前記居室に送り、該居室から前記パーソナル吹出口を通して前記床下空間に空気が供給される。
【0009】
上述の空調システムによれば、使用者がファンの運転モードの強弱や停止のスケジュール等を自在に携帯端末器によって操作及び制御することができる。そのため、上述の空調システムによれば、空調時の操作性や快適性が高くすることができる。また、パーソナル空調方式を採用することによって、エネルギーの消費量を抑えることができる。また、上述の空調システムによれば、蓄熱運転時に床下空間で空気を循環させることによる空調式と、配管に冷温水を供給して配管の周囲のコンクリート及びスラブに蓄熱する配管埋め込み式とを併用できるので、空調式のみを用いる場合に比べて蓄熱性を確保できる。
【0010】
また、例えばナイトパージ時にファンを逆回転させることによって、冷気を居室に効率的に取り入れ、且つ給排気部材の表面熱伝導率を高め、全体的にエネルギーの消費量をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空調時の操作性や快適性が高く、エネルギーの消費量が少ない空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る空調システムの模式図である。
【
図2】
図1に示す空調システムのファン付き給排気部材の平面図である。
【
図3】
図1に示す空調システムのファン付き給排気部材の側面図である。
【
図4】
図1に示す空調システムのファン付き給排気部材の別の側面図である。
【
図5】
図1に示す空調システムのファンを制御及び操作する様子を示す図である。
【
図6】
図1に示す空調システムのファン周囲の渡り配線の模式図である。
【
図7】
図6に示す渡り配線の構成を示す模式図である。
【
図8】
図1に示す空調システムのナイトパージについて説明するための模式図である。
【
図9】
図4に示すファン付き給排気部材の正回転状態を説明するための断面図であり、ファン付き給排気部材は側面図で示されている。
【
図10】
図4に示すファン付き給排気部材の正回転状態を説明するための断面図であり、ファン付き給排気部材は側面図で示されている。
【
図11】
図1に示す空調システムの変形例におけるファン周囲の渡り配線の模式図である。
【
図13】
図11に示す渡り配線の構成が設置された建物を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る空調システムについて、図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、空調システム50は、室105においてフリーアクセスフロアになっている居室100内の空調を行うために設けられている。室105は、建物の上下方向のスラブ211、212の間に形成されている。スラブ211、212の各上には、コンクリートが増し打ちされている。
図1では、スラブ212上に増し打ちされたスラブ上コンクリート(コンクリート)214のみを示す。以下、スラブ上コンクリート214及びスラブ211上に増し打ちされた不図示のスラブ上コンクリートをまとめてスラブ上コンクリート214と記載する。スラブ上コンクリート214と床部材112との間には、床下空間130が設けられている。即ち、室105の下方には、二重床が設けられている。居室100に面する床部材112には、互いに間隔を空けてパーソナル吹出口140が設けられている。パーソナル吹出口140は、居室100内における使用者の活動エリアに対応する位置に設けられている。
【0015】
スラブ上コンクリート214には、配管220が埋設されている。なお、
図1では、紙面に対して交差する方向に延在する複数の配管220を例示している。複数の配管220は、不図示の給水装置に接続されている。複数の配管220には、不図示の給水装置から所定の温度の冷温水が供給される。複数の配管220に供給された冷温水及びその周囲のスラブ上コンクリート214と床下空間130の空気との熱交換がなされる。熱交換後の冷温水は、複数の配管220から不図示の処理装置に排出される。
【0016】
例えば、複数の配管220のうち、
図1で隣り合う2本の配管220-1、220-2の紙面の手前側/奥側の両端部が互いに接続され、2本の配管220-2、220-3の紙面の奥側/手前側の両端部が互いに接続され、他の配管220同士が配管220-1~220-3と同様に接続されてもよい。配管220-1の奥側/手前側の端部は、例えば前述の給水装置に接続されている。N本の配管220のうち、配管220-Nにおいて配管220-(N-1)と接続されていない方の奥側/手前側の端部は、例えば前述の排水装置に接続されている。複数の配管220は、
図1に示すように紙面に沿う方向において互いに略等間隔に配されるようにスラブ上コンクリート214に埋設されていてもよく、居室100において使用者の活動エリアの下方の間隔が前記スペース以外の居室100の下方での間隔よりも短く配されるようにスラブ上コンクリート214に埋設されてもよい。複数の配管220の形状及び配置は、居室100の温度管理状況等に応じて適宜設計及び変更されてよい。
【0017】
室105の居室100と側部空間120とは、側壁部材115で仕切られている。室105の下部には、床部材112が設けられている。側部空間120には、例えば、空調機122が設けられている。空調機122は、例えばドライファンコイルユニット(FCU)であるが、特に限定されない。居室100と側部空間120とは、側壁部材115に形成された通気口125によって連通している。床下空間130と側部空間120とは、床部材112に形成された通気口123によって連通している。空調システム50は、空調式と配管埋め込み式とを併用した躯体蓄熱空調システムであり、室105を有する建物のスラブ211、212への蓄熱で熱負荷を夜間に移行し、エネルギーの消費量を抑える。
【0018】
空調システム50の蓄熱運転時における夜間では、空調機122から供給された空気が通気口123を通り、床下空間130に到達する。床下空間130に到達した空気は、床下空間130内を循環し、通気口123を通り、空調機122で処理される。空調システム50の空調運転時における昼間では、夜間と同様に空調機122から供給された空気が通気口123を通って床下空間130に到達する。但し、空調システム50の空調運転時における昼間では、床下空間130に到達した空気は、パーソナル吹出口140から居室100に供給される。居室100内に供給された空気は、通気口125を通って側部空間120に到達し、空調機122によって適宜処理される。なお、不図示の天井部材及び天井部材とスラブ211との間に天井裏空間が設けられ、天井部材に通気口(例えば、後述する通気口178)が形成され、且つ天井裏空間と側部空間120とが通気口によって連通していてもよい。その場合は、居室100内に供給された空気は、天井裏空間を通じて側部空間120に到達してもよい。また、床下空間130には、不図示の換気系統の外調機から、外気あるいは換気用の空気が適宜供給される。
【0019】
空調システム50では、上述の蓄熱運転時及び空調運転時の空調によって、夏期の居室100の温度を27~28℃とし、冬期の居室100の温度を20~22℃とするベース空調を行う。上述の蓄熱運転時及び空調運転時の空調によって、安価な夜間電力を利用して夜間にスラブ211、212等の躯体(スラブ)に蓄熱し、昼間の空調運転時に躯体からの放熱分だけ熱負荷及び電力にかかるコストを削減できる。また、昼間の熱負荷の低減によって、空調機122の熱源容量を削減し、電気使用に関するコストを削減できる。さらに、床部材112からの放射効果により、空調運転時における快適性が向上する。
【0020】
パーソナル吹出口140には、ファン付き給排気部材(給排気部材)150が設けられている。
図2及び
図3に示すように、ファン付き給排気部材150は、ケーシング152と、ファン160と、ファン用シャッター162と、を備える。ケーシング152は、床部材112に形成されたパーソナル吹出口140に嵌められ、ビス153等で床部材112に固定されている。
【0021】
ケーシング152の上部には、蓋部材154が設けられている。蓋部材154は、開閉機能を有さないが、下方から吹き出す空気の向きを変更できるように構成されている。蓋部材154の少なくとも上下方向でケーシング152と重なる部分には、上下方向に蓋部材154を貫通する通風孔156が形成されている。居室100内にいる使用者或いは居室100の管理者は、蓋部材154を床部材112に対して平面視で回転させることによって、
図3の実線と破線とで示すように上下方向に対する通風孔156の傾斜角度を調節できる。
【0022】
ケーシング152の下部は、ファン160の平面視での直径等に合わせて、上部よりも縮径している。ケーシング152の下部は、ビス159等でケーシング152の上部に固定されている。ファン160の中心軸部は、ケーシング152の底面に固定されている。ファン160の羽根部は、中心軸部から径方向に拡がっている。即ち、ファン160は、ケーシング152の底面の下方に配置されている。ケーシング152の下部の側壁及び底壁には、貫通孔163が形成されている。ファン160は、例えば平面視での直径9cm程の小口径ファンであってもよいが、特に限定されない。ファン160は、不図示の電気ケーブル等によって居室100内のコンセントに接続されている。
【0023】
ファン用シャッター162は、ケーシング152の下部においてファン160の上方で鉛直方向においてファン160と略重なる領域に設けられている。ファン160が停止している際には、ファン用シャッター162は閉じている。ファン160の停止時にファン用シャッター162が閉じていることによって、床下空間130から居室100への空気漏れが生じない。そのため、空調システム50における蓄熱性が高まる。
【0024】
ファン付き給排気部材150の具体的な構成例として、
図4に示すように、ファン160の上方に、例えば床部材112に沿って互いに間隔をあけて配置された複数のフィン168が設けられている。複数のフィン168は、ファン160が設けられているケーシング152の下部に対して開閉可能である。複数のフィン168は開閉時に回動するので、フィン168が上下方向に対してなす角度によってファン160から上方に吹き出す空気のうちケーシング152の上部及びケーシング152の上部から通風孔156を通って居室100に供給される空気の量が調節される。複数のフィン168の開閉によって、ケーシング152の下部内の空間とファン用シャッター162よりも上方の空間とが連通するか、遮断されるかが変わる。即ち、複数のフィン168は、
図3に示すように通風孔156の傾斜によって風向を変更可能な蓋部材154の風向調節機能と、ファン用シャッター162が有するシャッター機能とを両方持ち合わせている。
図4に示すようにファン付き給排気部材150が複数のフィン168を備える構成では、上述のように複数のフィン168が風向調整機能を有するので、通風孔156がフィン168の鉛直方向に沿って形成されていることが好ましい。このことによって、ファン160から吹き出す空気の指向性が高められる。
【0025】
図5に示すように、ファン付き給排気部材150における通風孔156の向き及びファン160は、使用者が携帯可能な携帯端末器300によって操作可能に構成されている。携帯端末器300は、例えばスマートフォンやリモートコントローラであるが、通風孔156の向き及びファン160を後述のように操作可能に構成されているものであれば特に限定されない。例えば、携帯端末器300によって、活動エリアの空調を弱モードと強モードの何れかに切り替えることができる。また、例えば、携帯端末器300によって、週間スケジュールとして各曜日の時間ごとに弱モード、強モード、停止の何れにするかを設定できる。さらに、例えば、携帯端末器300によって、月間スケジュールとして、ファン160の停止日を使用者が所属する会社のスケジュール等とリンクさせて設定できる。なお、携帯端末器300によって操作及び設定できる内容は、前述の空調モード、週間スケジュール、月間スケジュールに限定されず、自在に変更可能である。
【0026】
図6に示すように、ファン付き給排気部材150は、各種信号線によって、渡り配線で通信ネットワークに接続されている。ファン160のモーター部分は、モーターケーブル402によって、制御部450に接続されている。制御部450は、風向・風量制御基板452と、ローカル通信基板454と、を備える。制御部450は、モジュラーケーブル等の通信ケーブル403によって、通信ハブ460に接続されている。通信ハブ460には、
図5に示す制御部450以外の不図示の制御部450が通信ケーブルを介して接続されている。さらに、通信ハブ460は、通信ケーブル404とは異なる通信ケーブル406によって、通信用親機470に接続されている。通信用親機470は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等で構成されている。制御部450、通信ハブ460、通信用親機470の各々は、電源線409を介して各種電源に接続されている。
【0027】
通信用親機470は、例えばBACnetの通信ネットワーク500に接続されている。BACnetは、ビル自動管理制御システム(BACS)のサブシステムの通信仕様を統一する標準化オープンプロトコルである。
図7に示すように、通信用親機470の各々に対して複数の制御部450が通信ケーブル403、406等による渡り配線で接続されているので、ファン付き給排気部材150の配線数を削減できる。
【0028】
空調システム50では、上述のように操作性及び快適性の高いパーソナル空調に加えてナイトパージを行う。
図1に示す室105が設けられた建物60では、
図8に示すように、側部空間120において居室100とは反対側の側方に、通気空間170が設けられている。通気空間170を構成する通気部175は、建物60の上下方向に設けられた複数の居室100、101に連通するように設けられている。
図8には、2つ以上の居室のうち、居室100、101のみが図示されている。また、図示していないが、居室100の床部材112と同様に、居室101の床部材112にもファン付き給排気部材150が設けられている。通気部175の最上部には、建物60外に連通する通気口178が設けられている。居室100において建物60の外部に面する側壁部材116にも、建物60外に連通する通気口179が設けられている。通気口178、179には、開閉操作可能なシャッター177が設けられている。なお、
図9では、配管220は省略されているが、上述説明したようにスラブ上コンクリート214には、配管220が埋設されている。
【0029】
ファン付き給排気部材150のファン160は、正回転状態(
図9)と逆回転状態(
図10)の何れの回転状態であっても作動可能に構成されている。なお、
図9及び
図10では、ファン付き給排気部材150の蓋部材154及びファン用シャッター162は省略されているが、いずれの図においてもファン用シャッター162は開いた状態になっている。
図10に示すように、ファン160の正回転時には、床下空間130内の空気がファン160に吸引され、パーソナル吹出口140から居室100内に供給される。
図11に示すように、ファン160の逆回転時には、居室100内の空気がパーソナル吹出口140を通ってファン160に吸引され、床下空間130内に供給される。逆回転状態のファン160は、正回転状態のファン160の回転方向とは平面視で逆の方向に回転する。
【0030】
空調システム50によるナイトパージ実施時には、建物60の通気口178のシャッター177が開閉され、夜間の冷涼な外気が通気空間170、側部空間120等を介して居室100内に取り込まれる。その際に、ファン付き給排気部材150のファン160を逆回転させ、通気空間170、側部空間120等を介して居室100内に取り込まれた冷涼な外気が床下空間130内に取り入れられる。正回転状態でのファン160による表面熱伝導率αが例えば10W/m2hkであれば、逆回転状態でのファン160による、即ちナイトパージの実施による表面熱伝導率αは35Wm2hk程度になることが見込まれ、3倍以上の熱効率の向上がみられる。これらのことによって、建物60内の電気配線等で発生する熱を効果的に除去し、ナイトパージを行うことができる。また、建物60のスラブ211、212の冷却効果が得られ、空調システム50における負荷を低減できる。
【0031】
空調システム50において、ファン160の正回転時には、配管220に所定の温度の冷温水が供給される。ヒートポンプ等の不図示の熱源機が例えば建物60の屋上空間や側部空間120に設けられている。電力需要の少ない夜間の電力を使用し、夏期には冷水(冷温水、氷を含む)が作られ、冬期には温水(冷温水)が作られる。作られた冷温水は、例えば建物60の不図示の地下空間等に設けられた蓄熱槽に蓄えられる。前述の蓄熱槽で夜間に蓄えられた冷温水が前述の給水装置に供給され、給水装置から配管220に供給される。配管220に供給される冷温水の冷熱は、夏期には冷房として、冬期には暖房として用いられる。配管220に供給される冷温水の温度は、夏期で約18~21℃であり、冬期で約34~36℃である。
【0032】
夜間等の空調システム50の蓄熱運転時には、給水装置から配管220に夏期で約13~21℃、冬期で約34~45℃の温度(所定の温度)の冷温水が供給される。配管220に供給される冷温水の温度は、空調対象の居室100の温度環境に応じて適宜変更される。
【0033】
以上説明した本実施形態に係る空調システム50は、ファン付き給排気部材150と、スラブ上コンクリート214と、配管220と、を備える。ファン付き給排気部材150は、居室100の床部材112に形成されたパーソナル吹出口140に配置され、ファン160を有する。スラブ上コンクリート214は、床部材112の下方のスラブ212上に形成され、例えばスラブ212に増し打ちされ、床部材112との間に床下空間130を形成する。配管220は、スラブ上コンクリート214に埋設されている。空調システム50では、空調運転時に、ファン160が作動して回転し、床下空間130からパーソナル吹出口140を通して居室100に空気が供給され、居室100に供給された空気が居室100の外方に送られて処理される。空調システム50では、蓄熱運転時に、ファン160が停止し、床下空間130において空気を循環させると共に、配管220に所定の温度の冷温水を供給することによって、躯体蓄熱空調を行う。また、パーソナル吹出口140には、ファン付き給排気部材150のファン160が設けられ、ファン160の動作条件は携帯端末器300によって操作可能に構成されている。
【0034】
空調システム50では、使用者がファン160の運転モードの強弱や停止のスケジュール等を自在に携帯端末器300によって操作及び制御することができる。そのため、空調システム50によれば、空調時の操作性や快適性が高くすることができる。また、パーソナル空調方式を採用することによって、エネルギーの消費量を抑えることができる。さらに、空調システム50では、蓄熱運転時に床下空間130で空気を循環させることによる空調式と、配管220に冷温水を供給してスラブ上コンクリート214及びスラブ212に蓄熱する配管埋め込み式とを併用できる。したがって、空調システム50によれば、空調式のみを用いる場合に比べて蓄熱性を確保できる。
【0035】
また、上述の空調システム50では、ファン160は、正回転状態及び逆回転状態の何れかの状態で作動可能である。ファン160が正回転状態で作動している際には、
図9に示すように、床下空間130からパーソナル吹出口140を通して居室100に空気が供給される。一方で、ファン160が逆回転状態で作動している際には、
図10に示すように、居室100からパーソナル吹出口140を通して床下空間130に空気が供給される。このことによって、例えば建物60におけるナイトパージ時にファン160を正回転させることによって、冷気を居室100に効率的に取り入れ、且つファン付き給排気部材150の表面熱伝導率を高め、全体的にエネルギーの消費量を抑えることができる。
【0036】
また、上述の空調システム50では、パーソナル吹出口140において、ファン160の上方に開閉可能なファン用シャッター162が設けられている。ファン用シャッター162は、ファン160の作動時に開き、ファン160の停止時に閉じる。即ち、空調システム50では、ファン160の作動時にファン用シャッター162が開くと、ファン用シャッター162よりも下方のケーシング152の下部の空間とファン用シャッター162よりも上方のケーシング152の上部の空間とが連通する。空調システム50によれば、前述の空間同士を空気が円滑に流通し、ファン160による給排気を円滑に実行できる。また、空調システム50によれば、ファン160の停止時にファン用シャッター162を閉じ、床下空間130の空気を居室100に漏らさないので、暖房時のドラフト発生を防止できる。
【0037】
また、上述の空調システム50では、ファン160は複数の制御部、通信用親機470等を介して通信ケーブル406による渡り配線で通信ネットワークに接続されているので、ファン付き給排気部材150の配線数を削減できる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0039】
例えば、ファン付き給排気部材150の具体的な構成例として、上記実施形態では、回動する複数のフィン168を備えた構成について説明した。ファン付き給排気部材150の構成は、蓋部材154の上方と下方との間、即ちパーソナル吹出口140の上方と下方との間で開閉及び風向・風量を調節可能であれば、特に限定されない。
【0040】
また、ファン付き給排気部材150は、
図11に示すように渡り配線で通信ネットワークに接続されてもよい。以下、
図11から
図13に示す構成において
図6から
図8を参照して説明した内容と重なる内容については、その説明を省略する。
図11に示す構成では、制御部450は、LAN(Local Area Network)ケーブル等の通信ケーブル404によって、通信ハブ460に接続されている。
【0041】
図11及び
図12に示す構成では、通信ハブ460に対して複数の制御部450が通信ケーブル404等による渡り配線で接続されているので、ファン付き給排気部材150の配線数を削減できる。電源線409には、例えば市販のワンタッチコネクター等を適用できる。通信ケーブル404には、例えばCAT5e対応のモジュラーケーブル等を適用できる。
【0042】
図11及び
図12に示す構成では、複数の制御部450のうち、少なくとも一部の制御部450には、ファン付き給排気部材150に替えて、ルーター480が接続されている。ルーター480は、携帯端末器300からの無線信号を受信可能である。携帯端末器300で
図5に例示した操作画面に表示される操作画面の操作内容は、ルーター480で受信される。ルーター480で受信された操作内容に関する信号は、制御部450及び通信ケーブル406を介して、ファン付き給排気部材150が接続されている制御部450に入力される。そのため、使用者は、携帯端末器300からルーター480、制御部450及び通信ケーブル406を介して、ファン付き給排気部材150の弱モードと強モードとの切り替え、及び風向・風量の調節を行うことができる。
【0043】
一方で、
図11及び
図12に示す構成では、例えば遠隔にある管理室や監視室のPCから通信ネットワークを通してファン付き給排気部材150の状況を取得でき、ファン付き給排気部材150の風向及び風量の設定値等を遠隔制御できる。空調システム50では、風向・風量の制御の他に、ファン160の故障時に該当のファン160が接続されている制御部450からアラーム信号を出力させることができる。例えば、前述のアラーム信号は、ファン160の回転数が500rpm以下の状態が10秒以上続いた場合に出力される。遠隔にある管理室や監視室では、アラーム信号が出力されているか否かを監視できる。
【0044】
図13に示すように、複数のファン付き給排気部材150、制御部450、ルーター480(
図13では図示略)は、床下空間130内に配置されている。通信ハブ460は、例えば通気空間170内に配置されている。複数(
図13では3つ)の制御部450のうち隣り合う制御部450同士は、個別の通信ケーブル404によって接続されている。複数の制御部450のうち、側部空間120に最も近く配置されている制御部450は、通信ケーブル404を介して通信ハブ460に直接接続されている。通信仕様は、例えばTCP/IPである。
図11から
図13に示す構成では、複数の制御部450が通信ケーブル404、406等による渡り配線で接続されているので、ファン付き給排気部材150の配線数を削減できる。また、
図11から
図13に示す構成では、ファン付き給排気部材150の動作等を制御する制御部450と通信ネットワーク500との間にパーソナルコンピュータ(PC)等の通信用親機を介さずに、通信ハブ460のみが設けられている。そのため、ファン付き給排気部材150と通信ネットワーク500との接続システムを簡易に構成できる。
【符号の説明】
【0045】
50…空調システム
130…床下空間
140…パーソナル吹出口
150…ファン付き給排気部材(給排気部材)
160…ファン
214…スラブ上コンクリート(コンクリート)
220、220-1、220-2、220-N…配管
300…携帯端末器