(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091875
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】雌コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61M39/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070091
(22)【出願日】2024-04-23
(62)【分割の表示】P 2020553277の分割
【原出願日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018195905
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰也
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃伸
(57)【要約】
【課題】不具合が生じにくい雌コネクタを実現できるようにする。
【解決手段】雌コネクタ100は、プラグ部201及びカラー部202を有するISO80369-6に準拠した雄コネクタ200のプラグ部201が挿入される内筒部101と、内筒部101の周りにカラー部202の少なくとも一部が挿入されるカラー部挿入凹部103を形成する外筒部102とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグ部及びカラー部を有するISO80369-6に準拠した雄コネクタの前記プラグ部が挿入される内筒部と、
前記内筒部の周りに前記カラー部の少なくとも一部が挿入されるカラー部挿入凹部を形成する外筒部とを備えている、雌コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌コネクタに関し、特に神経麻酔用途に用いられる雌コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、チューブ等を接続するためのコネクタが多用されている。従来、ルアーコネクタと呼ばれる標準規格のコネクタが使用されてきたが、全てが同じ規格のコネクタであると、血液の体外循環回路に経腸栄養用の回路を誤って接続するような事故が生じるおそれがある。このため、誤接続の防止を図るために分野毎にコネクタを異なる形状とする新たな国際規格が定められた(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0003】
例えば、経腸栄養の分野においては国際標準化機構による規格ISO80369-3に準拠したコネクタを用いることが求められている。また、神経麻酔の分野においては、ISO80369-6に準拠したコネクタを用いることが求められている。
【0004】
このような新たな規格に準拠したコネクタを用いた機器の開発も進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新しい規格のコネクタは、従来のコネクタと形状が異なるため、従来と同じ操作方法では、不具合が生じる場合がある。例えば、ISO80369-6に準拠したオスコネクタは、5%のテーパ角を有するプラグ部と、プラグ部を囲むカラー部とを備えている。カラー部は、プラグ部と同心に配置されプラグ部を囲む筒状である。カラー部の雌コネクタ側の端部の位置は、±0.4mmの範囲でプラグ部の端部の位置と揃えることがISO規格において定められており、プラグ部はカラー部から実質的に突出していない。このため、ISO80369-6に準拠した雌コネクタの場合、カラー部が干渉しないようにするため、プラグ部がカラー部から突出した従来の規格のコネクタの場合よりも、内筒部の長さが長くなる。また、プラグ部とカラー部との間隔も規格により定められているため、内筒部の肉厚を厚くすることは困難である。ISO80369-6に準拠したコネクタは、曲げ弾性率又は引っ張り弾性率が950MPaを超える強度が強い材料でつくるよう要求されてはいるが、従来の規格のコネクタよりも内筒部が脆弱になり、構造的に破損し易い。
【0007】
本開示の課題は、新たな規格に対応し、且つ従来の操作方法を用いる場合にも不具合が生じにくい雌コネクタを実現し、使用者の負担を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の雌コネクタの第1の態様は、プラグ部及びカラー部を有するISO80369-6に準拠した雄コネクタのプラグ部が挿入される内筒部と、内筒部の周りにカラー部の少なくとも一部が挿入されるカラー部挿入凹部を形成する外筒部とを備えている。
【0009】
雌コネクタの第1態様は、外筒部が雄コネクタのカラー部をガイドし、雄コネクタの軸をずれにくくすることができるので、内筒部の破損を生じにくくして、信頼性を向上させることができる。
【0010】
雌コネクタの第1の態様において、雄コネクタのプラグ部が内筒部に挿入されて係合した状態において、雄コネクタのカラー部は1.7mm以上の部分がカラー部挿入凹部に挿入されているようにすることができる。このような構成とすることにより、内筒部の破損をさらに生じにくくすることができる。
【0011】
雌コネクタの第1の態様において、内筒部と外筒部は、一体に成形されている構成とすることができる。このような構成とすることにより成形が容易となる。
【0012】
雌コネクタの第1の態様において、内筒部は、内筒部係合部を有し、外筒部は、内筒部係合部と係合する外筒部係合部を有し、外筒部は、内筒部係合部に外筒部係合部が係合して、内筒部に取り付けられている構成とすることもできる。このような構成とすれば、必要に応じて外筒部を容易に設けることが可能となる。
【0013】
この場合において、外筒部は、中心角が90°以上、120°未満の扇形状の部分が切りかかれた側面開口部を有し、外筒部は、側面開口部側から内筒部に取り付ける構成とすることができる。また、外筒部係合部は、内筒部係合部を乗り越えて、内筒部の内筒部係合部よりも基部側の部分と当接する構成とすることができる。このような構成とすることにより、外筒部を容易に取り付けることができる。
【0014】
雌コネクタの第1の態様において、外筒部は、側壁の一部が切り欠かれた側面開口部を有する主筒部と、側面開口部を補完するように主筒部と連結された連結部とを有し、外筒部係合部は、主筒部に設けられた第1の部分と、連結部に設けられた第2の部分とを有し、第1の部分を内筒部係合部と係合させた状態で、連結部を主筒部に連結することにより、第1の部分と第2の部分とが内筒部係合部と係合するようにできる。このような構成とすることにより、外筒部を容易に取り付けることが可能になると共に、外筒部をぐらつきにくくすることができ、内筒部の破損をより生じにくくすることができる。
【0015】
この場合において、内筒部は、可撓性チューブに隣接して配置され、連結部は、側壁の外表面が可撓性チューブと緩衝しないように窪んでいてもよい。このような構成とすることにより、内筒部と隣接して配置されるチューブに損傷やキンクが発生する事態を生じにくくすることができる。
【0016】
雌コネクタの第1の態様において、外筒部は、前記内筒部を覆うキャップを有していてもよい。このような構成とすることにより、内筒部の汚染等を生じにくくすることができる。
【0017】
本開示の雌コネクタの第2の態様は、神経麻酔分野における誤接続防止コネクタに関するISO規格に準拠した、プラグ部及びカラー部を有し、プラグ部がカラー部から突出していない雄コネクタのプラグ部が挿入される内筒部と、内筒部の周りにカラー部の少なくとも一部が挿入されるカラー部挿入凹部を形成する外筒部とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本開示の雌コネクタによれば、新たな規格の下での不具合を防止し、使用者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る雌コネクタを示す断面図である。
【
図2】第1変形例に係る雌コネクタを示す断面図である。
【
図3】第2変形例に係る雌コネクタを示す断面図である。
【
図4】第2変形例に係る雌コネクタの外筒部を示す斜視図である。
【
図5】第3変形例に係る雌コネクタの外筒部を示す斜視図である。
【
図6】第4変形例に係る雌コネクタを示す断面図である。
【
図7】メスコネクタを備えたバルーンポンプを示す模式図である。
【
図8】第5変形例に係る雌コネクタを示す断面図である。
【
図9】第5変形例に係る雌コネクタを示す斜視図である。
【
図10】第5変形例に係る雌コネクタの保護部を示す平面図である。
【
図11】第6変形例に係る雌コネクタの主筒部を示す斜視図である。
【
図12】第6変形例に係る雌コネクタの連結部を示す斜視図である。
【
図13】第6変形例に係る雌コネクタの保護部を示す斜視図である。
【
図14】第6変形例に係る雌コネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本実施形態の雌コネクタ100は、基部104から突出して設けられた内筒部101と、内筒部101の周りに設けられた外筒部102とを備えている。内筒部101は、雄コネクタ200のプラグ部201が挿入され液密に嵌合する。外筒部102は、内筒部101との間に雄コネクタ200のカラー部202が挿入されるカラー部挿入凹部103を形成する。
【0021】
雄コネクタ200は、神経麻酔分野における相互接続防止コネクタに関する国際規格であるISO80369-6に準拠しており、5%のテーパ角を有するプラグ部201と、プラグ部201を囲むカラー部とを備えている。カラー部202は、プラグ部201と同心に配置されプラグ部201を囲む筒状である。カラー部202の雌コネクタ100側の端部の位置は、±0.4mmの範囲でプラグ部201の端部の位置と揃えることがISO規格において定められており、プラグ部201はカラー部202から実質的に突出していない。このため、ISO80369-6に準拠した雌コネクタの場合、カラー部が干渉しないようにするため、プラグ部がカラー部から突出した従来の規格のコネクタの場合よりも、内筒部の長さが長くなる。また、プラグ部とカラー部との間隔も規格により定められているため、内筒部の肉厚を厚くすることは困難であり、内筒部はカラー部よりも肉薄となる。このため、ISO80369-6に準拠したコネクタは、従来の規格のコネクタよりも内筒部が脆弱になり、構造的に破損し易くなる。
【0022】
本実施形態の雌コネクタ100は、カラー部挿入凹部103を形成する外筒部102を有している。外筒部102を設けることにより、外筒部102は、内筒部とプラグが係合状態において、内側にカラー部202の一部を近接状態又は当接状態で収容する。このような外筒部102を設けることによりカラー部202をガイドして、雄コネクタ200の軸が、雌コネクタ100の軸に対して傾く角度を小さく抑えることが可能となる。また、軸が傾いた際にカラー部202が外筒部102と接するため、内筒部101に加わる力を分散させることができる。このため、内筒部101が破損するおそれを大幅に低減することができる。なお、ここでいう近接状態とは、カラー部201の外表面と外筒部102の内表面との間にわずかな隙間があることを意味するが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは0.65mm以下の隙間があることを意味する。
【0023】
雌コネクタ100に雄コネクタ200が接続されると、カラー部挿入凹部103内にISO80369-6に準拠したカラー部202の少なくとも一部が位置する。内筒部101とプラグ部201とが当接しシールした状態におけるカラー部挿入凹部103内へのカラー部202の挿入深さDは、折れ防止性を向上させる観点から好ましくは1.5mm以上、より好ましくは1.7mm以上である。折れ防止性を向上させる観点からは、挿入深さDは長い方が好ましく、挿入深さDは内筒部101と外筒部102の間の距離より長い方が好ましく、外筒部102は内筒部101の二分の一以上長い方が好ましい。このためカラー部202の全体又はほぼ全体が挿入されるようにすることもできる。一方、カラー部202の挿入を容易にする観点からカラー部202の一部のみが挿入凹部103に挿入される構成とすることもできる。外筒部102の基部104からの長さL2は、内筒部101の長さL1よりも小さくすることができるが、外筒部102がカラー部202のほぼ全体を覆うようにすることも可能であり、外筒部102の基部104からの長さL2を内筒部101の長さL1と同等以上としてもよい。
【0024】
また、ISO80369-6に準拠する場合、カラー部202を挿入可能にすると共に、カラー部202をガイドして、雌コネクタ100の軸に対して傾く角度を小さく抑える観点から、外筒部102の内径は、好ましくは8.85mm以上、より好ましくは11.5mm以上、好ましくは13.5mm以下、より好ましくは12.8mm以下である。
【0025】
図1においては、外筒部102が、雌コネクタ100の基部104から突出する構成を示したが、
図2に示す第1変形例のように、雌コネクタ100の側面全体が外筒部102Aとなる構成とすることもできる。
【0026】
内筒部と外筒部とは樹脂による一体成形品とすることができる。また、内筒部と外筒部とを別個に成形した後、接着又は融着等により一体とすることができる。また、内筒部とは別体となった外筒部を内筒部に取り付ける構成とすることもできる。このような構成とすることにより、外筒部を有していない雌コネクタと、外筒部を有している雌コネクタとを同一の設計とすることができる。
【0027】
図3及び
図4に示す第2変形例においては、側面開口部122を有する外筒部102Bが内筒部101に取り付けられている。内筒部101の基部側には、鍔状の凸部である内筒部係合部111が設けられており、外筒部102Bの基部側には内筒部係合部111と係合する外筒部係合部121が設けられている。外筒部係合部121は、基部側から平面視した場合にC字状である、内側に突出した鍔状であり、外筒部係合部121のカラー部202が挿入される開口部側の面には段差部123が設けられている。外筒部係合部121の内径は、内筒部101における内筒部係合部111よりも基部側の部分の外径と略一致しており、段差部123の内径は、内筒部係合部111の外径と略一致している。
【0028】
外筒部102Bを内筒部101に取り付ける際は、まず、外筒部係合部121が内筒部係合部111よりも内筒部101の基部側に位置するようにして、側面開口部122側から外筒部112Bを内筒部101に押し当てる。内筒部101が側面開口部122を押し拡げて、外筒部102は、外筒部係合部121の内周面が内筒部101の外周面と当接し、段差部123が内筒部係合部111と当接する位置まで移動した後、側面開口部122が復元する。これにより、外筒部102Bは、内筒部101の周りに安定して固定される。なお、内筒部と外筒部を固定するための手段として、別の固定手段を採用してもよい。また、内筒部係合部111と外筒部係合部121との摩擦を大きくし、外筒部102Bが内筒部101の周りを回転しない又は大きな力を加えないと回転しないようにすることが好ましい。また、廻り止めの機構を設けることもできる。但し、外筒部102Bが抜け落ちなければ、自由に回転する状態であってもよい。
【0029】
外筒部102Bの一部が扇形状に切りかかれた側面開口部122は、切り欠かれた部分の中心角が120°未満であれば、好適に外筒部係合部121と内筒部係合部111とを係合させることができるが、外筒部102Bを外れにくくする観点及びカラー部202をガイドする観点からは、好ましくは中心角が90°以上である。
【0030】
図5に示す第3変形例のように、半筒状の2つの半筒状部材125と半筒状部材126とが組み立てられた外筒部102Cとすることもできる。このようにすれば、力により押し込むことなく、外筒部係合部121を内筒部係合部111に係合させることができ、外筒部102の取り付けが容易となる。
図5においては、半筒状部材125と半筒状部材126とに互いに係合する凹凸を設けた例を示したが、このような方法に限らず、2つの半筒状部材同士を組み立てられればどのようにしてもよい。例えば、接着剤等により2つの半筒状部材同士を接続してもよい。また、2つの半筒状部材がヒンジ部により接続された構成とすることもできる。また、3つ以上の部材を組み立てて外筒部102を形成してもよい。
【0031】
図5には、半筒状部材125と半筒状部材126とを組み立てた際に、内筒部101の全周を囲む鍔状となる外筒部係合部121が形成される構成を示した。しかし、外筒部係合部121を全周に亘る鍔状ではなく、2箇所以上、好ましくは3箇所以上に設けられた凸部とすることもできる。
【0032】
図6に示す第4変形例のように、外筒部係合部121が内筒部係合部111を軸方向に基部側へ乗り越える構成の外筒部102Dとすることもできる。
図6において、内筒部係合部111は、内筒部101の基部側に向かって次第に外径が大きくなるような傾斜面を有しており、外筒部係合部121は、基部側に向かって次第に内径が大きくなるような傾斜面を有している。また、外筒部係合部121は、弾性変形して拡径するような厚さに成形されている。外筒部係合部121を内筒部係合部111に押し当てることにより斜面同士が当接するので、外筒部係合部121は容易に弾性変形して拡径し、内筒部係合部111を乗り越えることができるので、内筒部係合部111と外筒部係合部121とが係合し、外筒部102Dを内筒部101に容易に取り付けることができる。一方、反対方向には外筒部係合部121が内筒部係合部111を乗り越えにくいので、外筒部102を外れにくくすることができる。
【0033】
内筒部係合部111及び外筒部係合部121の双方に互いに対向する斜面を設けることにより、外筒部102Dの内筒部101への取り付けを容易にすると共に、外筒部102Dを外れにくくすることができる。但し、外筒部係合部121が内筒部係合部111を乗り越えることができればよく、内筒部係合部111及び外筒部係合部121の一方にのみ斜面を設けたり、両方に斜面が設けられていない構成としたりすることもできる。また、内筒部係合部111及び外筒部係合部121の一方が全周に亘る鍔状に設けられていれば、他方は2箇所以上、好ましくは3箇所以上に設けられた凸部とすることもできる。なお、凸部は、周上に等間隔に設けられていることが好ましい。なお、外筒部を内筒部側に軸方向に押し込むことで係合するのではなく、外筒部を内筒部に対して回転させることにより外筒部と内筒部が固定されるようにすることもできる。
【0034】
本実施形態及び各変形例において、内筒部101がカラー部202の内面に設けられたねじ山203と係合しない例を示したが、内筒部101にカラー部202の内面に設けられたねじ山203と係合するねじ山を設けることもできる。また、雄コネクタ200をカラー部202の内面にねじ山が形成されていない、スリップタイプの雄コネクタとすることもできる。雄コネクタのカラーには雌コネクタとの係合を目的としたものではなく、外筒部と係合することを目的とした壁も含まれる。例えば、202の外側に外筒部と係合することを目的とした別部材を設けてもよく、また、カラーの形状は環状でなくてもよい。
【0035】
本実施形態及び各変形例の外筒部を有する雌コネクタは、神経麻酔用途に用いられる種々の医療機器のコネクタとして用いることができる。例えば、本実施形態及び各変形例の外筒部を有する雌コネクタは、
図7に示すような、バルーン312がハウジング311内に収容されたバルーンポンプ301の薬剤注入ポート313として用いることができる。バルーンポンプ301は、薬剤が充填されたバルーン312の収縮圧により薬剤を徐々に放出することができる。薬剤は、薬剤注入ポート313に注射器を接続し、バルーン312内に充填する。バルーンを用いたポンプに限らず、硬膜外麻酔に用いられる薬剤注入装置は、薬剤を自動的に排出するための機構を有しており、薬剤が充填される前の状態に自動的に復帰するような力が作用している。このような薬剤注入装置の中に薬剤を充填する際には、注射器のプランジャーに大きな力を加える必要があり、注射器を下にして上から押さえつける等して、内部に薬剤を充填する。このため、薬剤注入装置の中に薬剤を充填する際に、薬剤注入ポート313に接続された注射器が大きくぶれるおそれがある。特に懸念される具体例として、硬膜外麻酔に用いられる薬剤注入装置への薬剤を充填する際の不具合を記載したが、コネクタである以上、その他の接続にも用いられ、その形状故に、接続時にコネクタが折れ曲がりやすく、使用者はその点を注意して使用しなければならない。このため、薬剤注入ポートとして外筒部を有していないISO80369-6に準拠した雌コネクタが設けられている場合、薬剤注入装置への接続時に限らず、コネクタが破損するおそれがある。一方、本実施形態及び各変形例の外筒部を有する雌コネクタであれば、雄コネクタ200の軸が、雌コネクタ100の軸に対して傾く方向に力が加わった場合に、雄コネクタのカラー部が外筒部に当接するため、内筒部が破損しにくく、従来と同等の操作性を確保することができる。
【0036】
図7に示すように、内筒部を有するポートと隣接して別のポートが配置されている構成の場合、
図8~
図10に示す第5変形例のような着脱式の保護部330を有する雌コネクタとすることができる。
図8~
図10に示すポート構造は、ポートベース325に雄コネクタのプラグ部を受け入れる内筒部321を有する第1ポート部とポートベース325から突出していない第2ポート部322とが間隔をおいて配置されている。保護部330は、内筒部321を囲む第1枠部331と、第2ポート部322を囲む第2枠部332とを有している。第1枠部331と第2枠部332とを合わせた外形は、平面視において長円形状となっている。第1枠部331と第2枠部332との境界部には、内側に突出した突起部333が設けられており、第1枠部331及び第2枠部332の内側の部分は、通路353により接続された第1部分351と第2部分352とに分割されている。第1枠部331と突起部333とは、内筒部321を囲む外筒部となる。
【0037】
内筒部321の基部には、鍔部327が設けられており、鍔部327とポートベース325との間は、内筒部係合部326となっている。第1枠部331の基部には、平面視においてC字状の外筒部係合部336が設けられている。外筒部係合部336は、内筒部係合部326と嵌合できるように、その内径は、内筒部係合部326の外径とほぼ一致しており、その高さは、ポートベース325から鍔部327までの高さとほぼ一致している。
【0038】
保護部330を取り付ける場合、まず内筒部321を第2部分352に合わせて、保護部330の底面をポートベース325に当接させる。次に、保護部330をスライドさせると、内筒部321が側面開口部に相当する通路353を通過して、第1部分351側に移動する。また、C字状に形成された外筒部係合部336が内筒部係合部326と係合する。
【0039】
外筒部係合部336と内筒部係合部326とが係合した状態において、第1枠部331と内筒部321との間には、雄コネクタのカラー部が挿入されるカラー部挿入凹部334が形成される。第2枠部332を第1枠部331よりも低くすることにより、第2ポート部322へのアクセスが容易となるが、第2枠部332と第1枠部331とが同じ高さであってもよい。
【0040】
第1部分351と第2部分352との間に設けられた通路353の幅W1を、内筒部321の外径よりも大きくすれば、容易にスライドさせることができる。但し、幅W1が内筒部321の外径よりも僅かに小さく、突起部333が弾性変形して内筒部321が第1部分351側へ通り抜けられるようにすることもできる。通路353を形成するために切り欠かれている部分が、第1部分351の外縁全周の1/2未満であれば、雄コネクタのカラー部が第2部分352側に倒れないようにガイドすることができるが、カラー部をより確実にガイドする観点からは、好ましくは外縁全周の1/3以下であり、保護部330の取り付けを容易にする観点から、好ましくは外縁全周の1/8以上である。なお、突起部333は、保護部330をスライドさせることができるように鍔部327と干渉しない位置に設ける。
【0041】
本変形例の保護部330は、外周下端部にポートベース325を両側から挟むガイド部335が設けられており、保護部330をポートベース325に沿って容易に平行にスライドさせることができる。但し、ガイド部335は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。なお、第2ポート部322は、第2枠部332に切り欠き等を設ければ、ポートベース325から突出している構成とすることもできる。
【0042】
図11~
図14に示す第6変形例のようにすることもできる。雌コネクタの第6変形例において、保護部430は、側壁441の一部が切り欠かれた側面開口部441aを有する主筒部431と、側面開口部441aを補完するように主筒部431と連結された連結部432とを有している。
【0043】
主筒部431の側壁441は、側面開口部441aが形成された平面略C字状である。側壁441の基部には、外筒部係合部436となる第1係合部436Aが設けられている。側壁441は、側面開口部441a側において他の部分より肉厚に成形されている。また、肉厚に成形された部分には、連結部432を連結するための一対の連結ピラー443が設けられている。
【0044】
連結部432は、壁部451と、壁部451の基部に設けられ、第1係合部436Aと共に外筒部係合部436を形成する第2係合部436Bと、壁部451の両側方に設けられ、主筒部431の連結ピラー443が挿入される連結凹部451aを形成するロックアーム453とを有している。連結ピラー443にはロック突起443aが設けられ、ロックアーム453にはロック突起443aを受け入れるロック孔453aが設けられている。
【0045】
図14は、保護部430を内筒部421に取り付けた状態を示している。保護部430を内筒部421に取り付ける場合、まず、主筒部431の側面開口部441aを内筒部421に合わせて、主筒部431を側方からスライドさせ、略C字状の第1係合部436Aを内筒部係合部426と係合させる。次に、連結凹部451aを連結ピラー443に合わせて、連結部432を上方からスライドさせ、連結部432を主筒部431に連結させる。主筒部431に連結部432が連結されることにより、主筒部431の側面開口部441aが塞がれ、主筒部431の側壁441と連結部432の壁部451とにより、内筒部421を囲む外筒部433が形成される。外筒部433の内側は、平面円形状のカラー部挿入凹部434となる。また、第2係合部436Bが第1係合部436Aと共に内筒部係合部426を囲んで係合するため、保護部430は内筒部421にしっかりと取り付けられる。本変形例においては、主筒部431の第1係合部436Aが段差部を有しており、この段差部が鍔部427と係合している。このため、保護部430が上方に抜けないようにすることができる。
【0046】
本変形例の保護部430は、主筒部431の下端部にポートベース425を両側から挟むガイド部435が設けられており、主筒部431をポートベース425に沿って容易に平行にスライドさせることができる。また、ガイド部435は、保護部430の相対回転を防ぐ機能も有する。但し、ガイド部435は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0047】
主筒部431の側面開口部441aは、内筒部421が通過できるだけの幅があればよい。主筒部431の取り付けやすさの観点からは、外周の1/4以上が切り欠かれていることが好ましい。また、連結部432を連結させて組み立てる観点からは、切り欠かれている範囲は外周の1/2以下であることが好ましい。
【0048】
本変形例において、カラー部挿入凹部434の内径は、内筒部421を保護する観点から、雄コネクタのカラー部の外径とできるだけ一致していることが好ましい。ISO80369-6に準拠する場合においても、カラー部の外径には幅があり、8.85mm~11.5mm程度の範囲に分布しているため、種々の雄コネクタに対応できるように、カラー部挿入凹部434の内径を8.85mm~13.5mmとすることが好ましく、11.5mm~12.8mmとすることがより好ましい。
【0049】
本変形例において、連結部432の壁部451は、主筒部431に連結された際に外筒部433の内側面となる面451Aが、円筒状の内腔を形成する曲面となっているだけでなく、外側面となる面451Bも中央部が窪んだ曲面となっている。このような構成とすることにより、内筒部421に隣接して可撓性のチューブ414が配置されている場合に、チューブ414が保護部430によって圧迫されたり、損傷したり、キンクしたりする事態を生じにくくすることができる。
【0050】
本変形例において、主筒部431には、内筒部421を覆うキャップ460が設けられている。キャップ460は、カラー部挿入凹部434を塞ぐキャップ本体461と、キャップ本体461と側壁441とを接続するヒンジ部462とを有している。
【0051】
キャップ本体461は外縁部に、主筒部431の側壁441の上端部に設けられた薄肉部441bと係合するリム466を有している。また、中央部に内筒部421に内嵌する凸部467を有している。このため、指等が内筒部421に触れて汚染されたり、内筒部421内へほこり等が入ったりしないように保護することができる。キャップ本体461にはタブ468が設けられているため、キャップ本体461が内筒部421を覆った状態から、内筒部421が露出した状態への移行が容易にできる。
【0052】
本変形例の保護部430は、キャップ本体461がヒンジ部462により主張部の側壁441と接続されているため、取り外したキャップ本体461を紛失するおそれがない。また、ヒンジ部462が板バネ部462Aを有しているため、凸部467を内筒部421に内嵌させていない状態にすると、板バネ部462Aによりキャップ本体461が自動的に大きく開いた状態になる。このため、雌コネクタに雄コネクタを接続する際に、キャップ460が邪魔にならないようにできる。
【0053】
なお、本変形例において、キャップ460は、主筒部431と一体に形成されているが、連結部432と一体に形成することもできる。また、独立したキャップ460を形成して、これを主筒部431又は連結部432と接続したり、キャップ460が独立した状態のまま使用したりすることもできる。
【0054】
本変形例においては、保護部430を内筒部421に取り付けた際に、外筒部433の上端が、内筒部421の上端よりも若干高い位置となるようにしている。これにより、キャップ本体461により、内筒部421を容易に覆うことができる。
【0055】
内筒部421の保護の観点からは、外筒部433の上端ができるだけ高い位置にある方が好ましい。キャップ460の操作性の観点からは、外筒部433の上端と、内筒部421の上端との差をある程度小さくする方が好ましく、外筒部433の上端は、内筒部421の上端よりも、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下の位置とすればよい。但し、キャップ本体461のリムの高さを高くすれば、外筒部433の上端を、内筒部421の上端よりも低い位置にすることもできる。また、キャップ460を設けない場合には、外筒部433の高さL2と内筒部421の高さL1とを
図1に示すような関係を満たすようにすることができる。
【0056】
他の実施形態及び変形例において示した外筒部にキャップを設けることもできる。この場合には、外筒部の上端が内筒部の上端よりも高い位置となるようにすることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態及び各変形例の外筒部を有する雌コネクタは、このような装置に限らず、三方活栓やチューブ等に使用したりすることができる。さらに、本実施形態及び各変形例の外筒部を有する雌コネクタに接続する雄コネクタは、注射器に設けられた雄コネクタに限らず、その他の医療機器及びチューブ等に設けられた雄コネクタとすることができる。
【0058】
なお、本開示において、神経麻酔分野における相互接続防止コネクタに関する国際規格がISO80369-6であるとして説明したが、規格の改定等により当該規格に新たな番号が付与されたり、当該規格を包含する新たな規格が制定されたりした場合には、国際規格の番号は、新たな番号に読み替えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の雌コネクタは、新たな規格に対応し、且つ従来の操作方法を用いることができ、特に神経麻酔用途におけるコネクタ等として有用である。
【符号の説明】
【0060】
100 雌コネクタ
101 内筒部
102 外筒部
102A 外筒部
102B 外筒部
102C 外筒部
102D 外筒部
103 カラー部挿入凹部
104 基部
111 内筒部係合部
112 外筒部
121 外筒部係合部
122 側面開口部
123 段差部
125 半筒状部材
126 半筒状部材
200 雄コネクタ
201 プラグ部
202 カラー部
203 ねじ山
301 バルーンポンプ
311 ハウジング
312 バルーン
313 薬剤注入ポート
321 内筒部
322 第2ポート部
325 ポートベース
326 内筒部係合部
327 鍔部
330 保護部
331 第1枠部
332 第2枠部
333 突起部
334 カラー部挿入凹部
335 ガイド部
336 外筒部係合部
351 第1部分
352 第2部分
353 通路
414 チューブ
421 内筒部
425 ポートベース
426 内筒部係合部
427 鍔部
430 保護部
431 主筒部
432 連結部
433 外筒部
434 カラー部挿入凹部
435 ガイド部
436 外筒部係合部
436A 第1係合部
436B 第2係合部
436C 突起
441 側壁
441a 側面開口部
441b 薄肉部
443 連結ピラー
443a ロック突起
451 壁部
451A 内側面
451B 外側面
451a 連結凹部
453 ロックアーム
453a ロック孔
460 キャップ
461 キャップ本体
462 ヒンジ部
462A 板バネ部
466 リム
467 凸部
468 タブ