IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

<>
  • 特開-蓄電装置 図1
  • 特開-蓄電装置 図2
  • 特開-蓄電装置 図3
  • 特開-蓄電装置 図4
  • 特開-蓄電装置 図5
  • 特開-蓄電装置 図6
  • 特開-蓄電装置 図7
  • 特開-蓄電装置 図8
  • 特開-蓄電装置 図9
  • 特開-蓄電装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091876
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240628BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240628BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/6555
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070184
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2022163647の分割
【原出願日】2017-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 寛
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
(57)【要約】
【課題】蓄電素子間の過熱状態の連鎖を良好に防止できる良蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置100は、複数の蓄電素子1と、蓄電素子1を冷却する冷却部30とを備える。冷却部30は、液体を内蔵し、少なくとも蓄電素子1間に配置され、蓄電素子1に接触して、前記液体の気化熱により蓄電素子1を冷却する伝熱部31を有する。発熱が生じた蓄電素子1に接触する伝熱部31において、内蔵する液体が気化するときの気化熱により蓄電素子1が良好に冷却される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子と、
前記蓄電素子を冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、液体を内蔵し、少なくとも前記蓄電素子間に配置され、前記蓄電素子に接触して、前記液体の気化熱により前記蓄電素子を冷却する伝熱部を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
内部空間が連通するように複数の前記伝熱部を連結する連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子それぞれが直方体状に形成され、
前記冷却部は、前記蓄電素子それぞれの前記伝熱部が当接する長側面とは異なる面に接触して、前記複数の蓄電素子を冷却する冷却プレートを備え、
前記冷却部は、前記冷却プレートと前記伝熱部との間で熱が伝導可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記冷却プレートと前記伝熱部とは、前記液体、又は該液体が気化した気体が循環できるように一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記冷却部は、該冷却部の内圧が所定の圧力を超えた場合に、前記内圧を開放する内圧開放弁を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、自動車等の様々な機器に、充放電可能な蓄電素子が使用されている。中でも電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の電気エネルギーを動力源とする車両は、大きなエネルギーを必要とするため、複数の蓄電素子を備える大容量の蓄電装置を搭載している。
【0003】
このような蓄電装置では、通常の使用状態ではないが何らかの原因によりいずれか1つの蓄電素子の温度が過度に上昇した場合、この蓄電素子の熱が隣接する蓄電素子に伝導することにより隣接する蓄電素子が加熱される。これにより、隣接する蓄電素子の電極の活物質が自己発熱温度以上に加熱されると、この隣接する蓄電素子も自己発熱により過熱状態となってさらにその隣の蓄電素子を加熱し、連鎖的に多数の蓄電素子が過熱状態となるおそれがある。
【0004】
金属製のケースを樹脂フィルムで被覆した蓄電素子を用いる場合、蓄電素子が過熱状態となった場合、樹脂フィルムが溶融して金属製のケース同士が接触して熱伝導を助長する結果、過熱状態の連鎖が生じやすい。特に、金属製のケースを電極として用いる場合や、何らかの異常によって金属製のケースが異常な電位を有する場合、隣接する蓄電素子のケースと電気的に接触して隣接する蓄電素子に異常な電流を生じさせて、過熱状態を招くおそれがある。
【0005】
特開2015-195149号公報には、蓄電素子の熱が隣り合う蓄電素子に伝導することを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-195149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の蓄電装置においては、マイカ集積材から形成される仕切部材によって蓄電素子間の熱の伝導を抑制している。
近年、蓄電素子及び蓄電装置のさらなる容量の増大が求められている。蓄電素子の容量を増大すると、一つの蓄電素子が過熱状態となったときにその蓄電素子から放出されるエネルギー及び熱も非常に大きい。蓄電素子間の空気層や仕切部材の厚みを増せば、断熱性を高めることができるが、それらの手法では、蓄電装置としてのエネルギー密度が低下する。そのため、エネルギー密度を低下させることなく蓄電素子間の過熱状態の連鎖を防止できる新しい対策が求められている。
【0008】
本発明は、蓄電素子間の過熱状態の連鎖を良好に防止できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄電装置は、複数の蓄電素子と、前記蓄電素子を冷却する冷却部とを備え、前記冷却部は、液体を内蔵し、少なくとも前記蓄電素子間に配置され、前記蓄電素子に接触して、前記液体の気化熱により前記蓄電素子を冷却する伝熱部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱した蓄電素子に接触する伝熱部において、内蔵する液体が蓄電素子から吸熱して蒸発し、蓄電素子が良好に冷却される。伝熱部は少なくとも前記蓄電素子間に配置されるので、発熱した蓄電素子に隣接する蓄電素子への熱の伝導が抑制され、3以上の蓄電素子を有する場合はさらに隣接する蓄電素子に連鎖的に伝熱するのが抑制される。即ち、蓄電素子間の過熱状態の連鎖が良好に防止される。
また、液体は伝熱部に内蔵されているので、気化した後、伝熱部内で液化し、蓄電素子の冷却に再利用され、蓄電素子は効率良く冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】蓄電素子の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図3】冷却部の斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】蓄電素子が発熱した場合における冷却部による冷却を説明するための説明図である。
図6】第2実施形態に係る冷却部の斜視図である。
図7】第2実施形態において内部空間が連通されている場合の説明図である。
図8】第3実施形態に係る冷却部の斜視図である。
図9】第4実施形態に係る冷却部の斜視図である。
図10】中央の蓄電素子の破裂弁が開放した場合の冷却を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る蓄電素子1の斜視図である。以下、蓄電素子1がリチウムイオン二次電池である場合を説明するが、蓄電素子1はリチウムイオン二次電池には限定されない。
蓄電素子1は、蓋板2及びケース本体3を有するケース11、正極端子4、負極端子8、ガスケット6,10、破裂弁20、集電体及び電極体(不図示)を備える。
【0013】
ケース11は例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属、又は合成樹脂からなり、直方体状をなし、電極体及び電解液(不図示)を収容する。
【0014】
正極端子4は、蓋板2を貫通する軸部、及び軸部の一端に設けられた板部を有する。
ガスケット6は例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリプロピレン(PP)等の合成樹脂製である。正極端子4は、ガスケット6により板部の内面、及び軸部を覆われ、絶縁された状態で、蓋板2を貫通するように設けられている。
【0015】
負極端子8は、蓋板2を貫通する軸部、及び軸部の一端に設けられた板部を有する。負極端子8は、ガスケット10により板部の内面、及び軸部を覆われ、絶縁された状態で、蓋板2を貫通するように設けられている。
【0016】
電極体は、複数の正極板及び負極板がセパレータを介して交互に積層されて直方体状に形成された本体と、本体から蓋板2に向けて延びる正極タブ及び負極タブを有する積層タイプであってもよい。正極タブは、集電体を介し正極端子4に接続されている。負極タブは、集電体を介し負極端子8に接続されている。
電極体は、正極板と負極板とをセパレータを介して扁平状に巻回して得られる巻回タイプであってもよい。
電極体は、充放電に伴う膨れ(ケース11のような金属ケース、ラミネート構造のパウチケース等の外装体の膨れ)が少ない、積層タイプがより好ましい。外装体の膨れが少ないので、通常使用時に外装体が伝熱部31を圧迫することを抑制できる。
【0017】
正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である正極基材箔上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅及び銅合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である負極基材箔上に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、合成樹脂からなる微多孔性のシートである。
正極活物質層に用いられる正極活物質、又は負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質又は負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0018】
正極活物質としては、例えば、LiMPO4 、LiM2 SiO4 、LiMBO3 (MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0019】
負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム-アルミニウム、リチウム-シリコン、リチウム-鉛、リチウム-錫、リチウム-アルミニウム-錫、リチウム-ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4 Ti5 12等)、ポリリン酸化合物等が挙げられる。
【0020】
破裂弁20は、板厚を部分的に減じて形成される破断部200を有する。蓄電素子1の内圧上昇時に破断部200に沿って破断して、舌片状の部分が形成され、該部分が外側に跳ね上がることで蓋板2に開口が形成される。
【0021】
図2は本実施形態に係る蓄電装置100の斜視図、図3は冷却部30の斜視図である。
蓄電装置100は、複数の蓄電素子1と、蓄電素子1を冷却する冷却部30と、蓄電素子1及び冷却部30を収納するケース40とを備える。図2においては、蓄電素子1が3個収納されているが、蓄電素子1の数は3個に限定されない。
ケース40は箱状をなし、例えば合成樹脂等の絶縁性の材料からなる。ケース40は蓄電素子1及び冷却部30を所定の位置に配置し、これらを衝撃から保護する。ケース40には、外部からの電気を充電し、外部へ電気を放電するための外部電極端子(不図示)が設けられている。
【0022】
冷却部30は、良好な熱伝導性及び耐熱性を有する例えばアルミニウム等の金属からなってもよく、表面に絶縁膜を形成する等して絶縁処理が施されていてもよい。
図3に示すように、冷却部30は、板状の伝熱部31と、伝熱部31を連結する連結部32,33と、内圧開放弁34とを備える。2個の伝熱部31は、隣接する蓄電素子1の長側面間に介在し、2個の伝熱部31は両端の蓄電素子1の外側の長側面に当接する。ここで、長側面とは、図1における蓄電素子1の底面の長辺から上に延びるように設けられており、側面のうちで最も大きな面積を有する側面をいう。一方の外側の伝熱部31の上面には内圧開放弁34が設けられている。伝熱部31の数は蓄電素子1の数に対応して設けられてもよい。伝熱部31は蓄電素子1間に介在し、さらに両端の蓄電素子1の外側の長側面に当接するように設けられる。
外側の伝熱部31は省略することができる。例えば蓄電素子1の数が5個である場合、蓄電素子1間に4個の伝熱部31を配置し、4個の伝熱部31を連結部32,33により連結する。外側の蓄電素子1の長側面はケース40の側面に当接させる。外側の伝熱部31を設ける方が冷却効率はより良好である。
【0023】
図4は、図3のIV-IV線断面図である。
内圧開放弁34は円状の溝であり、図4に示すように、溝の底部の厚みが他の部分の厚みより薄い。内圧開放弁34は切削加工、プレス加工等により形成される。内圧開放弁34を切削加工により形成する場合、3次元NC等の曲面を切削できる装置が用いられる。内圧開放弁34をプレス加工により形成する場合、突起を有する金型により刻印を押すように形成される。
【0024】
伝熱部31は中空であり、内部空間に液体が収容されている。液体は不燃性で、気化熱が大きく、耐食性を有し、有毒ガスを発生しないものが好ましい。液体は水を含むのが好ましい。水は無害で腐食性が少なく、発火性がなく、安全性が高い。液体は流動性を有するもの、またはゲル状であればよく、HFC系冷媒及び不活性ガスの溶液等の冷媒を含んでもよい。水と水以外の成分とを混合することにより、沸点を調整してもよい。
液体の収容量は、伝熱部31、及び連結部32,33の内容積、蓄電素子1の想定される発熱温度、液体が気化したときの体積等に基づいて、伝熱部31が破損しないように設定する。
【0025】
隣接する伝熱部31の長側面の一端の上部は、連結部32により連結されている。連結部32は中空であり、連結する伝熱部31内の気体が連結部32内を通流するように構成されている。
隣接する伝熱部31の長側面の一端の下部は、連結部33により連結されている。連結部33は中空であり、連結する伝熱部31内の液体が連結部33内を通流するように構成されている。
即ち、隣接する伝熱部31、連結部32、及び連結部33は、内部空間が連通している。
【0026】
図5は、蓄電素子1が発熱した場合における冷却部30による冷却を説明するための説明図である。
冷却部30には、液体として水Wが収容されており、中央の蓄電素子1が発熱したとする。
発熱した蓄電素子1から両側の伝熱部31,31に熱が伝導され、伝熱部31内の水Wが蒸発する(図5A)。水Wが蒸発するときの気化熱は大きく、吸熱反応により蓄電素子1は急速に冷却される。発熱した蓄電素子1の両側の伝熱部31内の水Wの量は、蒸発によって減る。
【0027】
前記伝熱部31内の水蒸気は熱対流により上部へ流れ、それぞれ連結部32,32を通って、温度が低い外側の伝熱部31へ移動する(図5B)。水蒸気は外側の伝熱部31内で凝縮し、外側の伝熱部31内の水Wの量は増加する。
【0028】
外側の伝熱部31内で増加した分、水Wが内側の伝熱部31へ連結部33を介して流れ、4つの伝熱部31の水量は等しくなる(図5C)。循環した水Wは、また蓄電素子1の発熱を吸収し、気化して、上記と同様に循環する。
【0029】
液体として、水を用いた場合、水は100℃で蒸発し、気化熱が大きいため、蓄電素子1の熱を、不具合事象を引き起こすおそれのある百数十度より低く抑えることができる。即ち、蓄電装置100は、安全性が高い状態で、蓄電素子1を急速に冷却することができる。
【0030】
以上の蓄電装置100は、複数の蓄電素子1と、前記蓄電素子1を冷却する冷却部30とを備え、前記冷却部30は、液体を内蔵し、少なくとも前記蓄電素子1間に配置され、前記蓄電素子1の長側面に接触して、前記液体の気化熱により前記蓄電素子1を冷却する伝熱部31を有する。
【0031】
上記構成によれば、発熱が生じた蓄電素子1に接触する伝熱部31において、内蔵する液体が気化する際の気化熱が奪われることにより蓄電素子1が良好に冷却される。伝熱部31は少なくとも前記蓄電素子1間に配置されるので、発熱した蓄電素子1に隣接する蓄電素子1への熱の伝導が抑制され、さらに隣接する蓄電素子1に連鎖的に伝熱するのが抑制される。即ち、蓄電素子1間の過熱状態の連鎖が良好に防止される。
蓄電素子1の冷却の構造は簡単であり、程度が低い発熱が生じたときにも蓄電素子1を冷却できる。
また、液体は伝熱部31に内蔵されているので、気化した後、伝熱部31内で液化し、蓄電素子1の冷却に再利用され、蓄電素子1を効率良く冷却する。
【0032】
上述の蓄電装置100において、前記冷却部30は、内部空間が連通するように複数の前記伝熱部31を連結する連結部32,33を有する。
【0033】
上記構成によれば、発熱した蓄電素子1に接触する一の伝熱部31内で、液体が気化して生じた気体が熱対流により連結部32,33内を通流し、他の伝熱部31へ流れる。気体は他の伝熱部31内で液化し、前記一の伝熱部31へ流れて、液体が循環する。
従って、液体は蓄電素子1の冷却に再利用され、蓄電素子1は効率良く冷却される。
また、一つの蓄電素子1における、一方の伝熱部31に接触する長側面と、他方の伝熱部31に接触する長側面との間の温度差が低減し、蓄電素子1間の温度差が低減する。そして、気体及び液体の循環により、複数の蓄電素子1間の温度差を減じて効率良く冷却することができる。異常ではない、程度が低い発熱が生じた場合においても、伝熱部31により、蓄電素子1からの熱が良好に放熱され、蓄電素子1間の温度差が低減される。
【0034】
上述の蓄電装置100において、前記冷却部30は、該冷却部30の内圧が所定の圧力を超えた場合に、前記内圧を開放する内圧開放弁34を有する。
【0035】
上記構成によれば、液体の蒸発量が多く、冷却部30の内圧が所定の圧力を超えた場合、内圧開放弁34が開放し、気体が外部へ放出される。気体により冷却部30が膨れて蓄電素子1が押圧されるのが防止される。燃焼性のガスが存在する場合、気体と混合されることにより、発火が防止される。
【0036】
中央ではなく、端部の蓄電素子1が発熱した場合も、上記と同様に伝熱部31により吸熱され、蓄電素子1は急速に冷却される。隣接する蓄電素子1の発熱した蓄電素子1と対向する長側面も急速に冷却され、発熱した蓄電素子1からの伝熱が抑制され、蓄電素子間の過熱状態の連鎖が防止される。
なお、冷却部30の構造は、図3の構造に限定されない。4つの伝熱部31の長手方向の各一端の上部及び下部を、それぞれ角筒が貫通するようにして、連結部を設けてもよい。
【0037】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る冷却部35の斜視図である。図中、図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。 冷却部35は、4つの伝熱部31と、冷却プレート36とを備える。
冷却部35は、4つの伝熱部31が連結部32,33により連結されている第1実施形態と異なり、4つの伝熱部31の端面31aが冷却プレート36に当接している。伝熱部31には、第1実施形態と同様に、液体として例えば水が収容されている。
伝熱部31と冷却プレート36とは、内部空間が連通されていてもよいし、内部空間が連通されていなくてもよい。
【0038】
図7は、本実施形態において内部空間が連通されている場合の説明図である。伝熱部31間に蓄電素子1が挿入され、伝熱部31及び冷却プレート36には水Wが収容されている。
中央の蓄電素子1が発熱した場合、第1実施形態と同様に、蓄電素子1に当接する伝熱部31内の水が蓄電素子1から気化熱を奪って蒸発し、蓄電素子1が急冷される。この伝熱部31内の水量は減る。生じた水蒸気は冷却プレート36を介して他の伝熱部31へ流れ、凝縮により生じた水が、水量が減じた伝熱部31へ流れる。水はまた吸熱して蓄電素子1を冷却し、生じた水蒸気が上述のように循環する。冷却プレート36は、当接している蓄電素子1の側面も冷却する。
【0039】
内部空間が連通されていない場合、蓄電素子1が発熱したとき、蓄電素子1に当接する伝熱部31内の水が蓄電素子1から気化熱を奪って蒸発し、蓄電素子1が急冷される。生じた水蒸気は冷却プレート36により冷却され、水に凝縮される。水は蓄電素子1から吸熱して気化し、蓄電素子1は冷却される。
【0040】
本実施形態においても、簡単な構造の冷却部35により、発熱した蓄電素子1に隣接する蓄電素子1への熱の伝導が抑制され、さらに隣接する蓄電素子1に連鎖的に伝熱するのが抑制される。
【0041】
加えて、上述の蓄電装置において、前記蓄電素子1それぞれが直方体状に形成され、前記冷却部35は、前記蓄電素子1それぞれの前記伝熱部31が当接する長側面とは異なる面に接触して、前記複数の蓄電素子1を冷却する冷却プレート36を備え、前記冷却部35は、前記冷却プレート36と前記伝熱部31との間で熱が伝導可能に構成される。
【0042】
上記構成によれば、冷却プレート36と前記伝熱部31との間で熱が伝導されるので、良好に放熱される。液体が気化して生じた気体が冷却されて液化し、再度、液体が蓄電素子から吸熱して蓄電素子1を冷却できる。
【0043】
上述の蓄電装置において、前記冷却プレート36と前記伝熱部31とは、前記液体、又は該液体が気化した気体が循環できるように一体化されている。
【0044】
上記構成によれば、発熱した蓄電素子1に接触する一の伝熱部31内で、液体が気化して生じた気体が熱対流により冷却プレート36内を通流し、他の伝熱部31へ流れる。気体は他の伝熱部31内で液化し、前記一の伝熱部31へ流れて、液体が循環する。
従って、液体は蓄電素子1の冷却に再利用され、蓄電素子1を効率良く冷却する。
また、一つの蓄電素子1の一方の長側面と他方の長側面との間の温度差が低減し、蓄電素子1間の温度差が低減する。そして、気体及び液体の循環により、複数の蓄電素子1間の温度差を減じて効率良く冷却することができる。異常ではない、程度が低い発熱が生じた場合においても、伝熱部31により、蓄電素子1からの熱が良好に放熱され、蓄電素子1間の温度差が低減される。
【0045】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る冷却部37の斜視図である。図中、図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第3実施形態の冷却部37は、第1実施形態の冷却部30の4つの伝熱部31の底面31bが冷却プレート38に当接した構成を有する。伝熱部31には、第1実施形態と同様に、液体として、例えば水が収容されている。
伝熱部31と冷却プレート38とは、内部空間が連通されていない。冷却プレート38は冷却装置(不図示)により冷却するように構成してもよい。
【0046】
中央の蓄電素子1が発熱した場合、第1実施形態と同様に、蓄電素子1に当接する伝熱部31内の水が蒸発し、蒸発する際の気化熱により蓄電素子1が冷却される。生じた水蒸気は他の伝熱部31を通流し、凝縮により生じた水が、水量の少ない伝熱部31へ流れる。冷却プレート38は蓄電素子1の底面を冷却するとともに伝熱部31を冷却する。蓄電素子1に当接する伝熱部31内の水はまた蓄電素子1から吸熱して蒸発し、蓄電素子1が冷却される。
【0047】
本実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、簡単な構造の冷却部37により、発熱した蓄電素子1に隣接する蓄電素子1への熱の伝導が抑制され、さらに隣接する蓄電素子1に連鎖的に伝熱するのが抑制される。
【0048】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る冷却部39の斜視図である。図中、図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、各伝熱部31の上面の中央部に内圧開放弁34が設けられている。
【0049】
図10は、中央の蓄電素子1の破裂弁20が開放した場合の冷却を説明する説明図である。蓄電素子1の内圧が所定値以上に達した場合、破裂弁20が開放し、揮発した電解液の成分が外部へ放出される。
この蓄電素子1の熱により、隣接する伝熱部31の内圧開放弁34が開放する。図10においては、隣接する2つの伝熱部31の内圧開放弁34が開放した場合を示す。
内圧開放弁34から蒸気が噴出し、このときの気化熱により蓄電素子1が冷却される。
伝熱部31は連結部32,33により連結されているので、内圧開放弁34が開放していない伝熱部31内の液体が常に供給され、蓄電素子1の冷却が継続される。
この液体の量が、合計で一つの蓄電素子1を冷却できる量であれば、エネルギー密度の減少を最小限に抑えて、過熱状態の連鎖を効率よく抑制できる。
【0050】
本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
第1実施形態乃至第3実施形態において、蓄電素子1がリチウムイオン二次電池である場合につき説明しているが、蓄電素子1はリチウムイオン二次電池には限定されない。蓄電素子1は、有機溶剤を有する他の二次電池であってもよいし、一次電池であってもよいし、キャパシタ等の電気化学セルであってもよい。
本発明に係る蓄電装置は、車両用の動力源として特に好適に利用することができる。また、本発明に係る蓄電装置は、蓄電システム(大規模蓄電システム、家庭用小規模蓄電システム)、太陽光や風力等の自然エネルギーと組わせた分散電源システム、鉄道向け電源システム、無人搬送車(AGV)向け電源システムといった産業用途にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 蓄電素子 2 蓋板
3 ケース本体
4 正極端子
8 負極端子
6、10 ガスケット
11 ケース
20 破裂弁
30、35、37、39 冷却部
31 伝熱部
32、33 連結部
34 内圧開放弁
36、38 冷却プレート
40 ケース
100 蓄電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一蓄電素子と、
前記第一蓄電素子の第一方向に配置される第二蓄電素子と、
前記第一蓄電素子及び前記第二蓄電素子を冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、液体を内蔵し、
前記第一方向において、前記第一蓄電素子と前記第二蓄電素子との間に配置され、かつ、前記第一蓄電素子と前記第二蓄電素子とに接触する伝熱部と、
前記第一蓄電素子及び前記第二蓄電素子の、前記第一方向と交差する第二方向を向く面に接触する連結部と、を備え、
前記伝熱部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の端部は、前記連結部と連結されており、
前記伝熱部の、前記第三方向の中央部は、前記連結部と連結されていない、
蓄電装置。
【請求項2】
前記第一蓄電素子は、前記第三方向を向く面に破裂弁を備え、
前記第三方向の前記端部は、前記破裂弁が配置される面と反対側の端部を含む、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第三方向の前記端部は、前記破裂弁が配置される面側の端部をさらに含む、
請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記伝熱部は、前記液体の気化熱により前記第一蓄電素子及び前記第二蓄電素子を冷却する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記伝熱部と前記連結部とは、前記液体、又は前記液体が気化した気体が循環できるように形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。