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特開2024-91881被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091881
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240628BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240628BHJP
   E04G 23/02 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
E04B1/76 400G
E04G23/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070250
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2021503476の分割
【原出願日】2020-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2019039920
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】兼久 定樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一真
(57)【要約】
【課題】建築物の壁等に設けられる被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システムおよび被覆材の施工方法を提供する。
【解決手段】基準マーカーを設置する工程(工程1)と、被覆材の表面の三次元座標および3点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程(工程2)と、仮想平面を施工形状内に算出する工程(工程3)と、被覆材の厚さを算出する工程(工程4)と、被覆材画像を表示する工程(工程5)とを有する被覆材の厚さ計測方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法であって、
前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、
前記被覆材の表面の三次元座標、前記等距離点の三次元座標及び前記基準三次元座標に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程とを有する、
被覆材の厚さ計測方法。
【請求項2】
前記等距離点の前記対象面からの距離が既知であって、前記等距離点が前記基準点でもある、
請求項1に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項3】
取得した前記等距離点の三次元座標に基づいて仮想平面を算出する工程をさらに有し、
前記被覆材の表面の三次元座標と前記仮想平面に基づいて前記被覆材の厚さを算出する、
請求項2に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項4】
前記等距離点の前記対象面からの距離が未知であって、前記基準点が前記等距離点と異なる点である、
請求項1に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項5】
取得した前記等距離点の三次元座標と前記基準三次元座標に基づいて仮想平面を算出する工程をさらに有し、
前記被覆材の表面の三次元座標と前記仮想平面に基づいて前記被覆材の厚さを算出する、
請求項4に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項6】
前記施工形状を取得する工程の前に、前記被覆材上または前記被覆材の近傍に基準マーカーを設置する工程を有し、
前記基準三次元座標は、前記基準マーカー上の三次元座標である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項7】
前記基準マーカーが一方向に延びるピンを有しており、
前記基準マーカーを設置する工程が、前記ピンの先端が前記対象面に当接するように前記ピンを前記被覆材に挿通する工程である、
請求項6に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項8】
前記等距離点は、前記被覆材及び前記対象面に隣接もしくは近傍の構造物の表面上の点である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項9】
前記被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を表示する工程を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項10】
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程を有する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項11】
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程と、
前記施工不良箇所を、前記被覆材画像に表示する工程とを有する、
請求項9に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項12】
前記被覆材の厚さを前記対象面と関連付けて記憶させる工程を有する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項13】
前記被覆材を施工する前に、前記対象面の水分率を計測する工程と、
前記水分率を前記被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有する、
請求項12に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項14】
前記被覆材を施工する前に、前記対象面の温度分布を測定する工程と、
前記温度分布を前記被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有する、
請求項12または13に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項15】
前記被覆材は吹き付けウレタンフォーム断熱材である、
請求項1から14のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項16】
前記被覆材の吹き付け条件を取得する工程と、
前記吹き付け条件を前記被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有する、
請求項15に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項17】
対象面に施工した被覆材の厚さを計測するシステムであって、
三次元計測装置と、
データ処理部とを備え、
前記三次元計測装置は、前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得し、
前記データ処理部は、前記施工形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出する、
被覆材の厚さ計測システム。
【請求項18】
前記被覆材上または前記被覆材の近傍に設置され、前記基準三次元座標を与える基準マーカーをさらに備えており、
前記データ処理部は、前記施工形状から色又は形状の特徴に基づいて前記基準マーカーを認識する、
請求項17に記載の被覆材の厚さ計測システム。
【請求項19】
対象面に被覆材を施工する方法であって、
前記対象面に前記被覆材を施工する工程と、
前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を取得する工程と、
前記被覆材の表面の三次元座標、前記等距離点の三次元座標及び前記基準三次元座標に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程と、
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程とを有する、
被覆材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付け工法等によって建築物の壁や床等の対象面に施工される被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁等に断熱材を設ける方法として、現場で作業者が発泡機を用いて、建築物の壁部、床部、屋根部や天井部等の対象面に、主原料に発泡材を加えた発泡原液を直接吹き付けて、発泡固化させる方法が知られている。しかし、断熱材は、その厚さによって断熱効果が大きく左右されるため、均等な厚さにすることが求められている。特に、ビルや集合住宅等では、均一な品質の提供が求められており、厚さの誤差が0~20mm、厳しいもので0~5mmでの施工が求められている。つまり、対象面に発泡材を吹き付けて発泡固化させた後、その厚さを確認し、厚すぎる部位については余剰分を切削し、薄すぎる部位については追加する仕上げ処理を必要とする。詳しくは、施工現場において、吹き付け作業をしながら、発泡固化した断熱材の各所に針状の測定ゲージを刺し、その厚さを計測し、各所に仕上げ処理が必要かを確認しながら行っている。そのため、断熱材の施工作業は、作業者にとって非常に煩雑な作業の一つとなっている。また、作業者の熟練度によって、作業スピードが大きく異なり、その品質にもばらつきが見られる。
さらに、断熱材の品質を保証するための施主等への報告は、施工部位の各所に測定ゲージを差し込むことで施工厚さをチェックし、その結果に関するマーク(例えば、厚さの計測値)を断熱材(壁)の表面に記し、その表面の一部の写真を提示することにより行ってきた。このように測定ゲージを何回も差し込むことは断熱材に物理的なダメージを与えるおそれもあり、かつ、飛び飛びの計測値しか得ることが出来ず、十分な品質管理ができなかった。
【0003】
特許文献1には、発泡材の供給源に連結された吹き付けノズル、および、その被覆の厚さをモニターするように構成されたセンシング機器を備えた方法およびロボットが開示されている。この特許文献1の方法では、レーザー距離計で吹き付け厚をモニターしながら、発泡材の吹きつけ量を制御することにより、仕上げ処理を減少させることができる。
特許文献2には、先端にスプレーノズルとレンジファインダとを備えた遠隔操作可能なロボットアームが開示されている。このロボットアームにおいて、レンジファインダで塗布する前後の材料(対象物)の測定を行い、補填する厚さを計算することができるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-526121号公報
【特許文献2】特開2017-536976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、ロボットを用いることを前提としているが、乱雑な現場において必ずしもロボットの使用が有利であるとは限らない。一方、特許文献1の方法を作業者によって行うことも考えられるが、測定ゲージの代わりにレーザー距離計で厚さを随時モニターしながら発泡材の吹き付け作業による厚さを制御するものであるため、吹き付け作業と厚さの確認(モニターの確認)とを交互に行うことには変わりなく、作業は煩雑である。例えば、モニターを見間違えるなどの人為的なミスが起こりやすい。また特許文献2も塗布する材料(対象面)の全体を測定するものではなく、随時、塗布する材料(対象面)の一部を測定するものであり、特許文献1と同様の問題がある。
本発明は、建築物の壁等の対象面に施工される被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システムおよび被覆材の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法であって、前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標、前記等距離点の三次元座標及び前記基準三次元座標に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程とを有することを特徴としている。
本発明において「被覆材の厚さ」とは、対象面に対して垂直な方向の長さをいう。また「被覆材の表面の三次元座標」とは、対象面と反対の空間側に露出した被覆材表面上の三次元座標をいう。例えば、被覆材表面上の複数の点の三次元座標の集合が挙げられる。さらに「対象面からの距離」とは、その点から対象面におろした垂線の長さをいう。
三次元座標の表現方法については、計算機上で処理可能なものであれば特に限定しない。例えば、(X,Y,Z)の三次元直交座標系の座標値の集合(いわゆる点群データ)で表現したものであってもよいし、ポリゴンメッシュや平面/曲面の数式やパラメータ表現、またはボリュームデータ表現(ボクセル等)、およびそれらの組み合わせであってもよい。
【0007】
本発明の被覆材の厚さ計測方法は、前記被覆材の表面の三次元座標及び前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得しているため、被覆材の所定の点と同じ平面座標(対象面と平行な平面座標)であって、対象面との距離が基準三次元座標と同じ仮想点を求め、被覆材の所定の点と、その対象面との距離が既知である仮想点とを比較することにより、被覆材の所定の点の厚さを算出することができる。
【0008】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記等距離点の前記対象面からの距離が既知であって、前記等距離点が前記基準点でもあるものが好ましい。また、取得した前記等距離点の三次元座標に基づいて仮想平面を算出する工程をさらに有し、前記被覆材の表面の三次元座標と前記仮想平面に基づいて前記被覆材の厚さを算出するのがさらに好ましい。
あるいは、本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記等距離点の前記対象面からの距離が未知であって、前記基準点が前記等距離点と異なる点であるものが好ましい。また、取得した前記等距離点の三次元座標と前記基準三次元座標に基づいて仮想平面を算出する工程をさらに有し、前記被覆材の表面の三次元座標と前記仮想平面に基づいて前記被覆材の厚さを算出するのがさらに好ましい。
なお、「仮想平面」とは、対象面との距離が既知で対象面と平行な平面をいい、基準三次元座標を含むものが好ましいが、含んでいなくてもよい。
このように仮想平面に基づいて被覆材の厚さを算出する場合、仮想平面と、被覆材の表面との距離を計算することにより、被覆材の厚さを算出することができる。特に、仮想平面が少なくとも対象面を対象面に対して垂直方向に平行移動させた平面を含んでいる場合、一度の計算により被覆材全体の厚さを算出することができる。このように被覆材を施工した後、一回の計測で、被覆材全体の厚さを算出することができるため、好ましい。
【0009】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記施工形状を取得する工程の前に、前記被覆材上または前記被覆材の近傍に基準マーカーを設置する工程を有し、前記基準三次元座標は前記基準マーカー上の三次元座標であるのが好ましい。この場合、基準マーカーを3以上設置し、各基準マーカーに少なくとも一つの基準三次元座標を設定すれば、対象面からの距離が等しい3以上の基準三次元座標が得られるので好ましい。また前記基準マーカーが一方向に延びるピンを有しており、前記基準マーカーを設置する工程が、前記ピンの先端が前記対象面に当接するように前記ピンを前記被覆材に挿通する工程であるのが好ましい。
【0010】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記等距離点は、前記被覆材及び前記対象面に隣接もしくは近傍の構造物の表面上の点であることが好ましい。
ここで「構造物」とは、対象面と平行な面を含む構造物であり、「構造物の表面」とは、その対象面との距離が既知で対象面と平行な面を含んだものをいう。例えば、対象面である壁面と面一の壁面や、対象面である壁面と平行に建てられた柱や梁等の表面である。
この場合も被覆材の厚さの算出が簡単にできる。特に、構造物の対象面と平行な面と、対象面との距離が、設計図により正確に把握できる場合は、構造物の表面上の等距離点は対象面からの距離が既知であり、等距離点であると同時に基準点とすることが可能である。そのため、基準マーカーを設置する必要がなく、基準マーカーを設置する際の人為的なミスを軽減できる。構造物の対象面と平行な面と対象面との距離が不明な場合は、被覆材上または被覆材近傍に1以上の基準マーカーを設け、構造物の表面上の3点以上の等距離点と、基準マーカー上の基準三次元座標に基づいて、被覆材の厚さを算出できる。
【0011】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を表示する工程を有することが好ましい。
このように厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像は、施工不良の部位を一目で確認することができ、作業の高速化が可能になる。また、品質管理上の被覆材のデータとしても見やすく好ましい。
【0012】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程を有することが好ましい。特に、前記施工不良箇所を、前記被覆材画像に表示する工程を有することが好ましい。
このように施工不良箇所がわかれば、被覆材の仕上げ処理の特定が簡単である。特に、施工不良判定画像は、作業性も高くなる。
【0013】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、被覆材の厚さを前記対象面と関連付けて記憶させる工程を有することが好ましい。特に被覆材画像を前記対象面と関連付けて記憶させる工程を有することが好ましい。なお、前記被覆材を施工する前に、前記対象面の水分率を計測する工程と、前記水分率を被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有することが好ましい。あるいは、前記被覆材を施工する前に、対象面の温度分布を測定する工程と、前記温度分布を被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有することが好ましい。さらに、前記被覆材は吹き付け硬質ウレタンフォーム断熱材であり、前記被覆材の吹き付け条件を取得する工程と、前記吹き付け条件を被覆材の厚さと関連付けて記憶させる工程とを有することが好ましい。
このように被覆材の厚さと種々のデータとを関連付けて記憶させることにより、被覆材のデータとして管理しやすい。例えば、ビルや集合住宅のように対象面が多数ある場合、管理しやすい。特に、被覆材の厚さと、対象面の水分率、温度分布および/または吹き付け条件とを、関連付けて記憶させることにより、被覆材のデータとして品質管理上一層好ましい。
【0014】
本発明の被覆材の厚さ計測システムは、対象面に施工した被覆材の厚さを計測するシステムであって、三次元計測装置と、データ処理部とを備え、前記三次元計測装置は、前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得し、前記データ処理部は、前記施工形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出することを特徴としている。
この計測システムを用いることにより、被覆材の厚さを一回の計測で正確に測ることができる。
【0015】
本発明の被覆材の厚さ計測システムであって、前記等距離点の前記対象面からの距離が既知であって、前記等距離点が前記基準点でもあることが好ましい。あるいは、本発明の被覆材の厚さ計測システムであって、前記等距離点の前記対象面からの距離が未知であって、前記基準点が前記等距離点と異なる点であることが好ましい。
【0016】
本発明の被覆材の厚さ計測システムであって、前記被覆材上または前記被覆材の近傍に設置される基準マーカーをさらに備えており、前記データ処理部は、前記施工形状から色又は形状の特徴に基づいて前記基準マーカーを認識するものが好ましい。
このように施工形状から基準マーカーを自動認識させると同時に、前記基準マーカー上の三次元座標を前記基準三次元座標と認識させることにより、基準マーカーの認識を正確かつ迅速にできる。
【0017】
本発明の被覆材の厚さ計測システムの第2の態様は、対象面に施工した被覆材の厚さを計測するシステムであって、三次元計測装置と、データ処理部と、使用者が身に付け、使用者の眼前に設けられる表示部とを備え、前記データ処理部は、前記三次元計測装置で取得した前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標に基づいて前記被覆材の厚さを算出し、前記被覆材の厚さの分布を示した被覆材画像を算出し、前記表示部において、使用者の視界における被覆材上に、前記被覆材画像をオーバーラップさせて表示することを特徴としている。
本発明の被覆材の厚さ計測システムの第2の態様において、前記等距離点の前記対象面からの距離が既知であって、前記等距離点が前記基準点でもあることが好ましい。あるいは、本発明の被覆材の厚さ計測システムの第2の態様において、前記等距離点の前記対象面からの距離が未知であって、前記基準点が前記等距離点と異なる点であることが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測システムの第2の態様は、使用者が表示部を備えたデバイスを装着することにより、使用者は現場で被覆材の厚さを確認できる。そのため、仕上げ作業時間を短縮させることができる。
【0018】
このような被覆材の三次元形状の計測システムにおいて、前記使用者の眼の視界方向を撮影する画像取得部を備え、前記画像取得部が撮影した画像上の前記被覆材の表面に前記被覆材画像をオーバーラップさせるものが好ましい。
さらに、前記の三次元計測装置、表示部、データ処理部を一体的に構成し、なおかつ使用者が装着可能なウェアラブルコンピュータシステムとすることがより好ましい。例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスマートグラスのような頭部装着型デバイスを用いてもよい。これにより、施工後の仕上げ作業をリアルタイムで確認しながら行うことができる。これにより、作業者の熟練度が低い場合でも、施工の失敗・やり直しがなく、被覆材を均一の厚さに施工できる。また、従来仕上げ作業の度に繰り返し必要だった施工後の厚さチェック作業も不要となる。
【0019】
本発明の被覆材の施工方法は、対象面に被覆材を施工する方法であって、前記対象面に前記被覆材を施工する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標、前記対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を取得する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標、前記等距離点の三次元座標および前記基準三次元座標に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程と、前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程とを有することを特徴としている。
本発明の被覆材の施工方法であって、前記等距離点の前記対象面からの距離が既知であって、前記等距離点が前記基準点でもあるものが好ましい。あるいは、本発明の被覆材の施工方法であって、前記等距離点の前記対象面からの距離が未知であって、前記基準点が前記等距離点と異なる点であることが好ましい。
本発明の被覆材の施工方法は、本発明の厚さ計測方法を用いているため、施工不良個所を一目で確認することができ、作業者の熟練度に限らず、均一な品質の被覆材を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、現場の作業者が、施工した被覆材の厚さを一度の計測で把握することができる。そのため、施工不良の部位への仕上げ処理も簡単にできる。さらに、被覆材の品質の客観的なデータとして残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の被覆材の厚さ計測方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
図2図2aは施工形状を示す正面図であり、図2bはX-X線断面図であり、図2cは仮想平面を算出した施工形状を示す斜視図である。
図3】本発明の被覆材の厚さ計測方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
図4】本発明の被覆材の厚さ計測方法の第2の実施形態で用いられる仮想平面を算出した施工形状を示す斜視図である。
図5】本発明の被覆材の厚さ計測システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の被覆材の厚さ計測システムの第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
図7】断熱材の表面の三次元形状を含む施工形状を示す画像である。
図8図8a、図8bは、それぞれ断熱材の厚さの分布を示す被覆材画像である。
図9】本発明の被覆材の厚さ計測方法の第3の実施形態を示すフローチャートである。
図10】本発明の被覆材の厚さ計測方法の第3の実施形態で用いられる仮想平面を算出した施工形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図1のフローチャートを参照して、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法(以下、厚さ計測方法とする)の第1の実施形態について説明する。
本実施形態では、対象面からの距離が既知で等しい3点以上の三次元座標に基づいて被覆材の厚さを算出する。この3点以上の点は、対象面からの距離が等しい等距離点であると同時に、対象面からの距離が既知である基準点でもある。
【0023】
初めに、実施形態の厚さ計測方法が計測する被覆材は、作業者等が、現場において対象面に施工することによって被覆するものである。
対象面(施工面)としては、建築物の壁、床、屋根、天井、屋上などが挙げられ、特に屋根・天井のような厚さ測定の難しい部位に有用である。
【0024】
被覆材としては、断熱材、耐火材、防水材、一般建材(FRP、FRC、FRG)等が挙げられる。断熱材としては、軟質または硬質ウレタンフォーム、ロックウール、セルロースファイバー等が挙げられる。特に、吹き付け工法によって施工される現場発泡型の硬質ウレタンフォーム(例えばJISA9526に規定される硬質ウレタンフォーム)が好ましい。オクチル酸カリウムやオクチル酸鉛を用いた反応速度の速い吹付ウレタンフォームは、対象面に吹き付けた発泡原液が、発泡倍率20倍~120倍程度に不規則に膨張するため、熟練者であっても均一な厚さ(10~200mm程度)に施工するのが難しいうえ、施工厚さが断熱性能に直接影響するからである。一方、防水材としては、ウレタン系、FRP系、アクリルゴム系、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0025】
施工方法については、吹き付け(スプレー)または塗布が挙げられる。特に、吹き付けで施工する被覆材は、施工後の厚さが塗布に比べて均一な厚さにすることが難しいため、本発明の厚さ計測方法に適している。
【0026】
次に工程について説明する。厚さ計測方法は、図1のフローチャートに示すように、基準マーカーを設置する工程(第1工程)と、被覆材の表面の三次元座標及び3点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と(第2工程)と、仮想平面を算出する工程(第3工程)と、被覆材の厚さを算出する工程(第4工程)と、被覆材画像を表示する工程(第5工程)と、被覆材画像に基づいて仕上げ処理が必要かを判断する工程(第6工程)と、仕上げ処理が必要であると判断した場合、仕上げ処理を行う工程(第7工程)と、仕上げ処理が必要でないと判断した場合、被覆材の三次元データを対象面と関連付けて記憶させる工程(第8工程)とを有する。
【0027】
第1工程は、被覆材上に基準マーカーを設置する。詳しくは、被覆材上であって、対象面から所定の距離だけ離れた位置に基準マーカーを設置する。例えば、図2a、bにおいて、符号11は壁(対象面)であり、符号12は被覆材であり、符号13は円板状の基準マーカーである。この基準マーカーは、第3工程における仮想平面を算出するときの基準となる基準点及びその基準三次元座標を与える。なお、以下において、対象面と基準点との距離を「基準距離」ということがある。
【0028】
基準マーカー13は、例えば、図2bに示すように、ピン13aの頭に設ける。そして、ピン13aが対象面に対して垂直となるように(ピン13aの頭の平面が対象面と平行になるように)ピン13aを被覆材12に刺して、ピン13aの先端を対象面に当接させることにより、基準マーカー13を被覆材12上に設けることができる。このときの基準マーカー13から壁11までの距離をL(ピンの長さ+基準マーカー13の厚さ)とする。つまり、基準マーカー13から対象面におろした垂線の長さが距離Lとなり、基準マーカー上の任意の点を基準三次元座標とすることができる。なお、ピン13aの長さは、予定している被覆材12の厚さに対して、実質的に同じか、若干大きくする。これにより、基準マーカー13が予定された厚さに施工されている被覆材12内に埋もれることがない。
【0029】
図2では基準マーカー13を4つ設け、各基準マーカーに少なくとも1つの基準三次元座標を設定しており、仮想平面を推定するためには基準マーカーを3つ以上設けるのが好ましい。しかし、複数の基準三次元座標を一つの基準マーカーに設定することにより、基準マーカーを1つまたは2つとしても構わない。求められる精度に応じて適宜決定することができる。複数の基準マーカーを設ける場合、全ての基準マーカーが対象面からの距離が同じとなるように設置する。
基準マーカー13としては、円板状のものを挙げたが、球体やキューブ、三角や四角等の多角形の平板などが挙げられる。基準マーカー13の形状は、特に限定されるものではないが、上記列挙したような幾何的特徴を有していれば画像処理で自動認識しやすいため好ましい。また、所定の色の基準マーカーを用いるのが好ましい。例えば、基準マーカーの頭部を赤、青、緑等の被覆材を背景として識別しやすい所定の色にしておけば、色の特徴を手掛かりに基準マーカーを自動認識することが容易となる。なお、平板を用いる場合、設置したとき、その平板が対象面と平行であるようにすることが重要となる。
また基準マーカー13を支持するピン13aも、特に限定されない。例えば、3本以上のピンで基準マーカーを支持してもよい。この場合、3本のピンの先端を対象面(壁11)と当接させるように被覆材12に刺すことにより、3本のピン13aを対象面に対して垂直とすることができ、作業者は、簡単に基準マーカーを対象面から所定の距離に設置することができる。
【0030】
第2工程は、被覆材の表面の三次元座標及び対象面から距離が既知で実質的に同じである3点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する。詳しくは、被覆材12の表面の三次元座標および基準マーカー13の表面の三次元座標を含む施工形状を取得する。例えば、図2a、図2bの施工形状10は、被覆材12の三次元座標および4つの基準マーカー13の表面の三次元座標(基準三次元座標)を含む。
「施工形状の取得」とは、例えば、対象面の三次元形状を三次元座標の集合によって取得することをいう。例えば、三次元計測装置等で対象面をスキャンした点群データが挙げられる。
【0031】
三次元計測装置としては、三次元スキャナーやステレオカメラ等の三次元計測装置で取得する。三次元スキャナーは、対象面にレーザー光を当てて、その反射光によって対象面の三次元形状を算出するもの(いわゆるLIDAR方式)や照射した光が反射して返ってくるまでの時間で距離を計測するもの(TOF方式)等がある。一方、ステレオカメラは、2台のカメラによって撮像した対象面の画像から三角測量の原理で三次元形状を算出するものであり、2台のカメラ画像のマッチング精度を高めるために別途プロジェクターで計測用パターンを投影する手法や2台のカメラのうち片方をパターン光を投影するプロジェクターに置き換えた手法も存在する(いわゆるアクティブステレオ法)。計測精度、計測速度およびコストを考慮し適切な装置を選択すればよいが、対象面がある屋内の間取りは、建築物によって様々であるため、精度が比較的安定しているLIDAR方式の三次元スキャナーが好ましい。一方で、現場でスキャナーを設置する煩雑さを考慮すると、広い対象面を一度に撮像できるアクティブステレオ方式のハンディスキャナーが好ましい。
また、施工形状には対象の色情報が含むことが好ましい。例えば、三次元計測にカラーカメラを用いる場合は、三次元座標と同時にカラー画像も取得することができ、色情報を付加した点群データを生成できる。施工形状の色情報に基づいて基準マーカーや被覆材領域を認識することができる。
【0032】
第3工程は、仮想平面を算出する。詳しくは、基準マーカー13(基準三次元座標)に基づいて、対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面Sを施工形状内に算出する。なお、基準三次元座標に基づいて対象面を算出してもよい。
【0033】
図2cは、仮想平面Sを算出した施工形状10aである。仮想平面Sの算出方法は、対象面(壁11)から所定の距離に離れた4つの基準マーカー13を用いる。
具体的には、まず施工形状の中から色や形状の特徴に基づいて4つの基準マーカーを認識する。例えば、赤色の基準マーカーを用いた場合は、施工形状から赤色の領域を基準マーカーとして認識することができる。このような認識は、作業者が手動で画面上の基準マーカーの位置を指示してもよく、コンピューターの処理部に自動的に認識させてもよい。
次に認識した4つの基準マーカーから3点以上の基準三次元座標を抽出する。例えば、各基準マーカーの重心座標をそれぞれ基準三次元座標としてもよい。必ずしも4つの基準マーカー全てを用いる必要はなく、1つの基準マーカー上から複数の基準三次元座標を抽出してもよい。次に、抽出した3点以上の基準三次元座標に基づいて平面S1を推定する。このとき、三次元計測装置の計測誤差や、基準マーカーの対象面に対する傾き等の影響で、各基準三次元座標は厳密には同一平面上には乗らないことが予想される。そこで、複数の基準三次元座標に対して平面をフィッティングすればよい。これには既知の手法を用いることができる。例えば、最小二乗法で複数の基準三次元座標に対して最小二乗平面を求めればよい。この平面S1は、壁11と平行であり、かつ、所定の距離Lだけ離れている。この平面S1を、対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた位置および大きさまで拡大させることによって仮想平面Sを算出する。仮想平面Sは、対象面から所定の基準厚さだけ離れた位置に算出してもよい。このとき被覆材が基準厚さ通りに施工されていれば、被覆材表面は仮想平面Sと一致する。
【0034】
第4工程は、被覆材の厚さを算出する。詳しくは、仮想平面を算出した施工形状において、被覆材の表面の三次元座標と基準三次元座標に基づいて算出された仮想平面に基づいて被覆材の厚さを算出する。
具体的には、対象面に対する垂直線と交差する被覆材の表面の点および仮想平面の点の距離を算出し、対象面に対する仮想平面の距離Lを考慮して当該被覆材の表面の点の厚さを算出する。つまり、図2cに示すように、対象面に対する垂直線V1と交差する被覆材の表面の点C1と、それに対応する仮想平面の点T1の距離がZ1であり、点C1が仮想平面Sに覆われている場合、被覆材の点C1の厚さは、L-Z1となる。一方、対象面に対する垂直線と交差する被覆材の表面の点C2と、それに対応する仮想平面の点T2の距離がZ2であり、点C2が仮想平面Sから突出している場合、被覆材の点C2の厚さは、L+Z2となる(図示せず)。この方式で被覆材の全領域における厚さを算出することができる。このような計算は、被覆材の表面の点群座標および仮想表面の点群座標を減算して求めてもよく、点群からメッシュに変換して面同士の計算によって差分を計算してもよい。
【0035】
第5工程は、被覆材画像を表示する。詳しくは、被覆材の表面を表示した画像であって、被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を算出し、表示する。
被覆材の表面を表示した画像としては、三次元的に表現したパースペクティブ画像や、施工形状を所定の平面(例えば、対象面と平行な平面)に投影した二次元画像が挙げられる。
【0036】
第6工程は、被覆材画像に基づいて仕上げ処理が必要かを判断する。詳しくは、被覆材画像に基づいて、被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を確認し、施工不良箇所がある場合、仕上げ処理が必要と判断し、施工不良箇所が無い場合は、仕上げ処理が不必要と判断する。またその被覆材の部位が所定の基準厚さからどれだけ厚いか、または、薄いかを算出し、厚さが所定の範囲内かどうかで判定する。被覆材を断熱材とする場合、その施工基準の一例としては、基準厚さ30mmに対して-0mm~+20mmの範囲である(基準より薄い部分は不良、厚い部分は20mmまで許容する)。より厳しく-0mm~+5mmの範囲と設定することもできる。例えば、第5工程の被覆材画像において、施工不良箇所を色または濃淡で示して表示してもよい(施工不良判定画像)。また例えば、被覆材画像において、引き出し線でその部位を特定し、その部位が所定値からどれだけずれているかの数値を示してもよい。このように施工不良箇所を特定し、かつ、その不良度合を明確にすることにより、第7工程の仕上げ処理を行いやすい。
そして、仕上げ処理が必要であると判定した場合、第7工程に行き、仕上げ処理が不必要であると判定した場合、第8工程に行く。
【0037】
第7工程は、仕上げ処理が必要であると判断した場合、仕上げ処理を行う。つまり、第6工程において、仕上げ処理が必要であると判断された場合、仕上げ処理が必要である部位に、被覆材の厚さが所定の範囲となるように仕上げ処理を行う。詳しくは、所定の範囲より厚い部分についてはその余剰分を切削し、所定の範囲より薄い部分については追加で吹き付けたり、塗布したりする。なお、仕上げ処理を行った後は、第2工程に戻り、その施工形状を取得する。
その後、第6工程において、仕上げ処理が不必要となるまで第2工程から第7工程を繰り返す。
【0038】
第8工程は、仕上げ処理が必要でないと判断した場合、被覆材の表面の三次元形状および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と、対象面と関連付けてデータベースとして記憶させる。つまり、第6工程において、仕上げ処理が必要でないと判断された場合、被覆材の施工を完了し、そのデータを保存する。例えば、102号室の東側の壁等のように対象面の位置情報や識別情報と、被覆材画像とを関連付けて記憶させておくことにより、対象面(壁)毎に管理するデータベースのデータとすることができる。また、建築物の3DCADデータが存在する場合は、当該3DCADデータに関連付けて記憶することが好ましい。特に、近年提唱されているBIM(Building Information Modeling)と関連付けて記憶することでより効率的な工程管理・品質管理が可能である。特に、ビルや集合住宅のように対象面が多数ある場合、管理しやすい。なお、仕上げ前の三次元形状も一緒に保存してもよい。これにより、作業の過程を追跡することができる。
なお、これらのデータは、例えば、パスワードでセキュリティを設定し編集不可の電子ファイルとして保存するのが好ましい。特に、タイムスタンプを付与して非改ざん証明および時刻証明を行った電子ファイルとするのが好ましい。このように編集不可の電子ファイルとすることにより、データの客観性を保つことができる。
【0039】
このように本実施形態の被覆材の厚さ計測方法は、基準三次元座標に基づいて対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面を施工形状内に算出し、被覆材の表面と仮想平面とから被覆材の厚さを算出しているため、ピン等を刺しながら被覆材の厚さを計測することなく、被覆材の施工後、1回の計測で、被覆材全体の厚さがわかる。また被覆材の仕上げ処理も簡単である。特に、被覆材画像とすることにより、仕上げ処理の場所の特定が簡単になる。
この厚さ計測方法を用いた被覆材の施工方法は、作業者の熟練度に限らず、均一な品質の被覆材を提供することができる。
【0040】
基準マーカーを用いた第1の実施形態の被覆材の厚さ計測方法は、上記に限定されるものではない。
例えば、基準マーカーを設置する工程(第1工程)において、被覆材上に基準マーカーを設置しているが、被覆材の近傍に基準マーカーを設置してもよい。例えば、被覆材の周辺の柱に基準マーカーを設置してもよい。どこに基準マーカーを設置するかは、対象面に応じて適宜決めることができる。
また被覆材画像を作成する工程(第5工程)において、厚さを色または濃淡で示した被覆材画像を挙げているが、厚さによる色または濃淡を設けない被覆材の投影画像あるいは三次元画像(パースペクティブ画像)としてもよい。また第5工程において、画像だけを表示するのではなく、対象面における位置データと、被覆材の厚さデータとを関連付けた表を表示してもよい。
【0041】
他に、被覆材を施工する前において、対象面の水分率を計測し、その水分率を被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と関連付けて記憶させてもよい。硬質ウレタンフォームは、その発泡剤に水が含まれているため、対象面(壁面)に多く水分が含まれていると、反応のバランスが崩れて断熱材としての品質が低下することがある。そのため、断熱材のデータと共に施工前の壁面の水分率を記憶させておくことにより、より詳細なデータベースを構築することができる。水分率の計測には、既存の高周波式水分計「株式会社ケツト科学研究所社製HI-520-2」等を用いることができる。
また、被覆材を施工する前において、対象面の温度分布を、サーモカメラ等を用いて計測し、その温度分布を被覆材の表面の三次元形状および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と関連付けて記憶させてもよい。硬質ウレタンフォームは、吹付け面の温度が品質に影響することがあるため、品質管理の観点から温度分布と厚さの関係を記憶しておくことが好ましい。この際、サーモカメラで取得した2次元の温度画像を、基準マーカーあるいは構造物に基づいて被覆材の表面の三次元形状にマッピングしてもよい。
さらに、被覆材の施工の際、吹き付け条件(2液式の硬質ウレタンフォームの場合、2液の混合圧力、混合温度)を連続して取得し、その吹き付け条件を被覆材の表面の三次元形状および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と関連付けて記憶させてもよい。硬質ウレタンフォームは、スプレー条件によって品質が大きく変化するため、断熱材の三次元データと共に施工前のスプレー条件を記憶させておくことにより、品質管理上好ましく、詳細なデータベースを構築することができる。
その他にも施工時の室内の環境情報(温度、湿度等)を取得し、その環境情報を被覆材の表面の三次元形状および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と関連付けて記憶させてもよい。
【0042】
次に、図3のフローチャートを参照して、厚さ計測方法の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、基準マーカーを設置することなく行うものである。
図3のフローチャートに示すように、施工形状を取得する工程(第1A工程)と、仮想平面を算出する工程(第2A工程)と、被覆材の厚さを算出する工程(第3A工程)と、被覆材画像を表示する工程(第4A工程)と、被覆材画像に基づいて仕上げ処理が必要かを判断する工程(第5A工程)と、仕上げ処理が必要であると判断した場合、仕上げ処理を行う工程(第6A工程)と、仕上げ処理が必要でないと判断した場合、被覆材の三次元データを対象面と関連付けて記憶させる工程(第7A工程)とを有する。
なお、第3A工程から第7A工程は、図1の実施形態の第4工程から第8工程と実質的に同じである。
【0043】
第1A工程は、施工形状を取得する。この実施形態において、施工形状は、被覆材および対象面に隣接もしくは近傍に位置した構造物の表面の三次元座標を含むものである。ここで構造物とは、対象面と平行な面を含む構造物である。そして、構造物の表面とは、その対象面と平行な面を含んだものをいう。
構造物としては、例えば、対象面の壁面と同室に位置した柱、サッシ、敷居、回り縁、幅木、梁材等の構造物、または、床、天井、壁の境界部、配管、ドア、窓、換気口等の開口部、配電ボックスの特徴的な形状を有する構造物が挙げられる。また、駐車場床面の防水施工の場合は、パラペット等の立ち上がり部や、柱等の構造物を基準点として用いることができる。
例えば、図4の施工形状10は、被覆材12と、対象面と平行な面S2を有する柱Pとを含んでいる。
【0044】
第2A工程は、仮想平面を算出する。詳しくは、構造物の対象面と平行な面上の任意の3点の三次元座標を取得し、基準三次元座標とする。ここでは柱Pの平面S2上から図示しない3点を選択し、基準三次元座標とする。平面S2は、既知である柱Pの寸法から、対象面からの距離Lが既知であるものとする。S2上の基準三次元座標に基づいて、対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面Sを施工形状内に算出する。図4の点線は、仮想平面Sである。つまり、構造物(柱P)において、対象面と平行な面S2を、対象面を対象面と同じ大きさまで拡大させるとともに、平面方向に平行移動させることによって仮想平面Sを施工形状内に算出する。なお、施工形状が点群データではなく、ポリゴンメッシュで表現されている場合、3点の基準三次元座標を取得する代わりに対象面と平行な面を1つ選択すればよいが、結局、これは選択した面を規定する3点の基準三次元座標を選択していることと同じである。
【0045】
この第2の実施形態の厚さ計測方法でも、第1の実施形態と同様に、対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面を施工形状内に算出することができるため、被覆材の施工後、1回の計測で、被覆材全体の厚さを確認することができる。この厚さ計測方法を用いた被覆材の施工方法も、第1の実施形態と同様に、作業者の熟練度に限らず、均一な品質の被覆材を提供することができる。
【0046】
次に、被覆材の厚さ計測方法の第3の実施形態について説明する。
第1および第2の実施形態が厚さ計測方法では、対象面からの距離が既知で等しい3点以上の三次元基準座標に基づいて仮想平面を算出した。これらの点は、対象面からの距離が等しい等距離点であると同時に、対象面からの距離が既知である基準点でもあった。
本実施形態では、対象面からの距離が等しいが未知である3点以上の等距離点の三次元座標と、対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標に基づいて仮想平面を算出する。
本実施形態のフローチャートを図9に示す。第4B工程から第8B工程は、図1の第4工程から第8工程と実質的に同じである。
【0047】
第1B工程において、被覆材上に基準マーカーを設置する。基準マーカーは第1実施形態と同じものを用いることができる。ただし、設置する基準マーカーは1つでよく、当該基準マーカー上に1つの基準三次元座標が設定されていればよい。
【0048】
第2B工程において、施工形状を取得する。この実施形態において、施工形状は、被覆材および対象面に隣接もしくは近傍に位置した構造物の表面の三次元座標や、上記基準マーカーに設定された基準三次元座標を含むものである。第2実施形態と同様に、ここで構造物とは対象面と平行な面を含む構造物であり、構造物の表面とは対象面と平行なその面をいう。構造物の例も第2実施形態と同じである。
例えば、図10の施工形状10bは、被覆材12と、1つの基準マーカー13と、対象面と平行な面S2を有する柱Pとを含んでいる。
【0049】
第3B工程において、仮想平面を算出する。具体的には、構造物の対象面と平行な面上の任意の3点を等距離点として、その三次元座標を取得する。図10では、柱Pの平面S2上から図示しない3点を等距離点として選択する。S2上の等距離点の三次元座標に基づいて対象面に平行な平面を算出し、当該平面上に基準マーカー13上の基準点が乗る位置まで当該平面を平行移動させて、仮想平面Sを施工形状内に算出する。図10に点線で示したのが仮想平面Sである。
【0050】
この第3の実施形態の厚さ計測方法でも、第1の実施形態と同様に、対象面を垂直な方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面を施工形状内に算出することができるため、被覆材の施工後、1回の計測で、被覆材全体の厚さを確認することができる。この厚さ計測方法を用いた被覆材の施工方法も、第1の実施形態と同様に、作業者の熟練度に限らず、均一な品質の被覆材を提供することができる。
【0051】
次に、本発明の被覆材の厚さを計測するシステム(以下、厚さ計測システムとする。)の第1の実施形態について説明する。図5の計測システム20は、三次元計測装置21と、制御部22と、基準マーカー23と、表示部24とを備えている。三次元計測装置21は、対象面に施工した被覆材12の表面の三次元形状を含む施工形状を計測する。この厚さ計測システム20は、図1の厚さ計測方法に用いることができる。そして、基準マーカー23は、図1の厚さ計測方法に用いられた基準マーカー13と実質的に同じものである。
【0052】
三次元計測装置21は、レーザー光を発光する発光部21aと、被覆材で反射したレーザー光を受光する受光部21bと、演算部(図示せず)とを備えた三次元スキャナーである。三次元計測装置21は、図1の計測方法に用いられた三次元計測装置と実質的に同じものであり、被覆材の表面の三次元形状を計測できる装置であれば特に限定されない。
【0053】
制御部22は、記憶部26と、被覆材の厚さを算出するデータ処理部27とを備えている。
記憶部26は、三次元計測装置21が計測した被覆材の表面の三次元形状を含む施工形状データを記憶する。また後述するようにデータ処理部27によって算出される仮想平面データおよび被覆材の厚さデータを記憶する。そして、被覆材の表面の三次元データおよび被覆材の厚さデータ、特に、被覆材画像と対象面とを関連付けて記憶する。
なお、施工時の気温、湿度等の環境情報や、スプレーのスプレー条件(2液式の硬質ウレタンフォームの混合圧力、温度)や、対象面の水分率を計測したデータを被覆材画像を関連付けて記憶させてもよい。
なお、これらのデータは、例えば、パスワードでセキュリティを設定し編集不可の電子ファイルとして保存するのが好ましい。特に、タイムスタンプを付与して非改ざん証明および時刻証明を行った電子ファイルとするのが好ましい。また記憶部26自体をパスワード等でロックし、特別な権限以外のものは書換えができないようにしてもよい。
記憶部26に記憶させたデータは、パスワード等によって設定された特別な権限を有する者によって、CD、DVD等のディスク状の記憶媒体や、USBやメモリーカード等の記憶媒体に記憶させてもよい。特に、記憶媒体としては、CD-RやDVD-Rなどのデータを一回だけ書き込みが可能なディスク状の記憶媒体や、改ざん防止機能付きのUSBやメモリーカード等の記憶媒体が好ましい。
【0054】
データ処理部27は、施工形状データから色又は形状の特徴に基づいて基準マーカー23を自動的に抽出し、または、作業者が指定して抽出し、その基準マーカー23に基づいて対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面データを算出し、かつ、被覆材の表面の三次元形状データと仮想平面データとに基づいて被覆材の厚さを算出する。仮想平面データの算出は、図1の厚さ計測方法の第3工程と同じ方法で算出する。また被覆材の厚さも、図1の厚さ計測方法の第4工程と同じ方法で算出する。
またデータ処理部27は、その施工形状データから被覆材の表面を表示した画像であって、被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像へと変換する。被覆材画像は、図1の厚さ計測方法と実質的に同じものである。
さらにデータ処理部27は、被覆材の厚さに基づいて、被覆材の厚さが所定の範囲から外れている被覆材の部位を特定する。つまり、被覆材の厚すぎる部位、または、薄すぎる部位の施工不良の部位を自動的に示す。例えば、そのような施工不良の部位を、被覆材画像において、特別な色で表示したり、不良部位だけを抽出して表示したり、点滅させたりすることが挙げられる。また、施工不良の部位が、所定の範囲からどれ位ずれているかを示すのが好ましい。
【0055】
表示部24は、データ処理部27によって作成された被覆材画像を表示する二次元液晶モニターである。
【0056】
この計測システム20は、被覆材を施工後、基準マーカー23を被覆材に設置し、被覆材および基準マーカー23の三次元形状を含む施工形状を取得することにより、被覆材の全体の厚さを算出することができるため、施工不良な部位を簡単に突き止めることができる。また確認作業を一度で行うことができるため、作業者の手間を大幅に減少させることができる。さらに、表示部に被覆材画像として表示できるため、現場において、作業者は、施工不良の位置を簡単に、かつ、正確に確認することができる。
また対象面と、被覆材の表面の三次元形状および被覆材の厚さを関連付けて記憶させることができるため、つまり、対象面と紐付けて被覆材のデータをまとめて保管できるため、被覆材の品質管理が簡単にできる。
なお、この計測システム20では、制御部22の記憶部26に、被覆材の厚さ等のデータを記憶させたが、CD、DVD、USBやメモリーカード等の記憶媒体に直接記憶させるようにしてもよい。特に、CD-RやDVD-Rなどのデータを一回だけ書き込みが可能なディスク状の記憶媒体や、改ざん防止機能付きのUSBやメモリーカード等の記憶媒体に直接記憶させるようにすることにより、データの客観性を保持することができる。もちろん、直接記憶させるだけでなく一旦記憶部26に記憶させたデータを改変不可の状態で記憶媒体にコピーしたのち、記憶部26のデータを削除するようにしてもよい。
【0057】
厚さ計測システム20では、基準マーカー23を認識し、その基準マーカー23に基づいて仮想平面データを算出させた。しかし、基準マーカー23を用いずに対象面に隣接もしくは近傍に位置した構造物の表面であって、その構造物の対象面と平行な面に基づいて仮想平面データを算出させてもよい。
この厚さ計測システムの第2の実施形態では、データ処理部27は、施工形状データから対象面と平行な構造物の面を自動的に抽出し、または、作業者が指定して抽出し、その面に基づいて対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面データを算出することになる。その仮想平面の算出方法は、図3の厚さ計測方法の工程2Aと同じである。
他の処理は、厚さ計測システム20と実質的に同じである。
【0058】
厚さ計測システムの第3の実施形態として、計測システム20の表示部24としてプロジェクターを用いてもよい。その場合、データ処理部27において、被覆材に設置されている基準マーカーと、投影する画像の基準マーカー(あるいは構造物の平面)との位置合わせを行い、被覆材にその厚さが表示されるようにプロジェクションマッピングを行うのが好ましい。
このように構成することにより、作業者は、対象面に投影された画像から被覆材の施工不良の位置が特定できるため、仕上げ処理を簡単にできる。
【0059】
第4の実施形態である厚さ計測システム20aは、図6に示すように、三次元計測装置21と、制御部22と、基準マーカー23と、メガネ型ディスプレイ30とを備えている。そして、このメガネ型ディスプレイ30において、被覆材の表面形状が、使用者の視界における対象面とオーバーラップするように表示される。なお、三次元計測装置21、及び、記憶部26及びデータ処理部27を備えた制御部22は、図5の厚さ計測システム20と実質的に同じである。
【0060】
メガネ型ディスプレイ30は、レンズ状の表示部31、画像取得部32と、ディスプレイ用制御部33とを備えている。
レンズ状の表示部31は、メガネ型ディスプレイ30を使用者の頭部に取り付けたとき、使用者の眼前に位置するようにメガネ型ディスプレイ30のフレームに固定される透明なものである。
画像取得部32は、レンズ状の表示部31を介した使用者の眼の視界方向の情報を画像データとして取得する。例えば、表示部31近辺において、メガネ型ディスプレイ30のフレームに固定されたカメラ等が挙げられる。
【0061】
ディスプレイ用制御部33は、図示しないディスプレイ用記憶部33a及びディスプレイ用データ処理部33bとを有する。
ディスプレイ用記憶部33aは、画像取得部32によって取得した画像データおよびデータ処理部27によって作成された被覆材画像を記憶する。また表示部31と画像データとの幾何的な関係を記憶する。例えば、画像を投影する表示部31と、画像取得部32が取得する画像データとの位置関係やサイズ比率等の関係を記憶する。
ディスプレイ用データ処理部33bは、画像取得部32によって取得した画像データと、被覆材画像とを比較し、画像データの基準マーカーと被覆材画像の基準マーカーとがオーバーラップするように画像の変形処理や位置合わせ処理を行う。その上で、表示部31と画像データの関係に基づいて、使用者の視界における被覆材に、被覆材画像がオーバーラップするように、被覆材画像を表示部31に投影する。ディスプレイ用データ処理部33bと、データ処理部27との間のデータの通信は、有線あるいは無線でもよい。また、データ処理部27の計算をディスプレイ用データ処理部33bで行ってもよく、反対にディスプレイ用データ処理部33bの計算をデータ処理部27で行ってもよい。
【0062】
このように構成されているため、作業者はメガネ型ディスプレイ30を装着するだけで、被覆材の施工不良の位置をレンズを通して確認することができ、仕上げ処理を一層簡単にできる。
【0063】
なお、第4の実施形態である厚さ計測システム20aにおいて、第2の実施形態の厚さ計測システムのように、基準マーカーを用いずに、データ処理部27によって、施工形状から構造物の対象面と平行な平面を自動的に抽出させ、または、作業者が指定して抽出し、その平面に基づいて対象面を対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面データを算出させてもよい。
さらに、第4の実施形態である厚さ計測システム20aにおいて、表示部31を不透明のものにしてもよい。この場合、表示部には、画像取得部が撮影した画像及び被覆材画像を表示部に表示する。この場合も同様の効果が得られる。
【0064】
さらに、本発明の計測システムの他の実施形態として、例えば、メガネ型ディスプレイに変えてヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のウェラブルディスプレイを用いても良い。この場合、三次元計測装置21及び制御部22も、HMDに内蔵される。
そのようなHMDとしては、例えば、Microsoft社製のホログラフィックコンピュータである「HoloLens(登録商標)」等が挙げられる。HoloLens(登録商標)は現実の風景にコンピュータグラフィックスを重ねて投影することができる、いわゆる複合現実型のウェアラブルデバイスである。つまり、この三次元計測システムは、2Dカメラ(画像取得部)、3Dセンサ(三次元計測装置)、加速度センサ(IMU)等の各種センサ及びCPU(データ処理部及びディスプレイ用データ処理部)や記憶装置(記憶部及びディスプレイ用記憶部)等がHMDに内蔵されている。
この操作方法は、基準マーカーを被覆材に設置し、HoloLens(登録商標)を装着し、施工後の被覆材の表面の三次元形状を含む施工形状を三次元計測装置で取得し、施工した被覆材画像をリアルタイムに計算し、作業者の視界に対して、現実の被覆材上の基準マーカーに被覆材画像の基準マーカーをオーバーラップさせるように投影する。
このように作業者は被覆材を施工中に施工部位全体の施工結果をリアルタイムに確認することができ、被覆材の厚さが不足している施工不良箇所に対して即座に処置を行うことができる。
【実施例0065】
図7の画像は、三次元計測装置(MantisVision社製ハンディ3Dスキャナ「F6 SMART」)を用いた施工形状の画像である。この壁面において、斜線部が施工された断熱材である。図7において、「リファレンス設置面1」の範囲に図8aの基準マーカーM1を設け、「リファレンス設置面2」の範囲に図8bの基準マーカーM2を設けている。なお、断熱材は、表1の硬質ウレタンフォームを吹き付けたものである。
【0066】
【表1】
【0067】
図8aは、断熱材上に設けられた基準マーカーM1に基づいた仮想平面に対して、断熱材の表面の三次元形状がどれだけ離れているかを示すコンター図である。図8bは、対象面に隣接された柱P上に設けられた基準マーカーM2に基づいた仮想平面に対して、断熱材の表面の三次元形状がどれだけ離れているかを示すコンター図である。
このようにそれぞれの仮想平面に対する断熱材の厚さや凹凸が一目でわかる。そして、作業者は、この画像を足がかりに仕上げ処理を行うことができる。
またこのように断熱材の状態を客観的なデータとして保管することができるため、施工した断熱材の品質保証としてのデータとしても最適である。
【符号の説明】
【0068】
10、10a、10b 施工形状; 11 壁; 12 被覆材; 13 基準マーカー; 13a ピン; 20、20a 計測システム; 21 三次元計測装置; 21a 発光部; 21b 受光部; 22 制御部; 23 基準マーカー; 24 表示部; 26 記憶部; 27 データ処理部; 30 メガネ型ディスプレイ; 31 表示部; 32 画像取得部; 33 ディスプレイ用制御部; 33a ディスプレイ用記憶部; 33b ディスプレイ用データ処理部; M1 基準マーカー; M2 基準マーカー; P 柱; S 仮想平面; S1 面; S2 面; V1 垂直線
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