(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091888
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アシスト制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240628BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240628BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240628BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240628BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
B60L50/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070388
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2020003954の分割
【原出願日】2020-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津島 亮
(57)【要約】
【課題】クラッチの発熱を抑えつつ、急勾配での発進性及び加速性を高めることができるアシスト制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジンと、エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達するトランスミッションと、トランスミッションとエンジンとの間の動力伝達経路を遮断又は接続するクラッチと、駆動輪に動力を伝達可能なモータジェネレータとを備えたハイブリッド車両のアシスト制御装置であって、所定勾配以上の登坂路であり、かつクラッチが半係合状態を含む非締結状態であり、かつ変速要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、駆動輪に対してモータジェネレータから登坂アシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行するHCUを備え、HCUは、車速が所定車速以上になったことを条件に登坂アシスト制御を停止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達する変速機と、
前記変速機と前記エンジンとの間の動力伝達経路を遮断又は接続するクラッチと、
前記駆動輪に動力を伝達可能なモータと、を備えた車両のアシスト制御装置であって、
所定勾配以上の登坂路であり、かつ前記クラッチが半係合状態を含む非締結状態であり、かつ変速の要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、前記駆動輪に対して前記モータからアシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記車両の速度である車速が所定車速以上になったことを条件に前記登坂アシスト制御を停止することを特徴とするアシスト制御装置。
【請求項2】
前記所定車速は、前記車両の目標車速よりも低い速度に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアシスト制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記登坂アシスト制御の実行開始から所定時間が経過したことを条件に前記登坂アシスト制御を停止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアシスト制御装置。
【請求項4】
前記車両に対する加速要求の度合いを示す加速要求値が所定値以上であることを前記実行条件にさらに含み、
前記制御部は、前記登坂アシスト制御の停止後、前記加速要求値が前記所定値未満の状態から前記所定値以上になったことを条件に前記登坂アシスト制御を実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアシスト制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両に対する加速要求に応じて、前記駆動輪に対して前記モータから加速アシストトルクを出力する加速アシスト制御を実行可能であり、
前記登坂アシスト制御は、前記モータに電力を供給するバッテリの残容量が第1の閾値以上であることを条件に実行され、
前記加速アシスト制御は、前記バッテリの残容量が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であることを条件に実行されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアシスト制御装置。
【請求項6】
目的地までの走行経路上の登坂路情報を取得する登坂路情報取得部を備え、
前記制御部は、前記登坂路情報取得部によって取得した前記登坂路情報に基づき目的地までの走行経路上に登坂路が存在することが判明した場合、前記車両の現在位置から前記登坂路に到達するまでに前記第1の閾値以上の前記バッテリの残容量を確保することを特徴とする請求項5に記載のアシスト制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシスト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クラッチが半クラッチ状態にある場合、運転者から要求された運転者要求トルクとエンジンがアイドリングで発生するアイドリングトルクとの差に等しい発進時アシストトルクを発生させるように電動機を制御するハイブリッド車両が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されたハイブリッド車両において、補正部は、所定の勾配以上の登坂路である場合、勾配に応じて、電動機の駆動力によってエンジンをアシストするか否かを判定する閾値であるアシスト開始トルクを、平坦路におけるアシスト開始トルクに比べて大きくするようにアシスト開始トルクを補正する。さらに、補正部は、所定の勾配以上の登坂路である場合、勾配に応じて、電動機の駆動力によってエンジンをアシストするときの電動機のトルクの上限値であるアシストフルトルクを、平坦路におけるアシストフルトルクに比べて小さくするようにアシストフルトルクを補正する。
【0004】
これにより、特許文献1に開示されたハイブリッド車両では、登坂路の勾配が大きい場合、アシスト開始トルクを敢えて大きくして、エンジンのトルクの不足する分のトルクのみを電動機によって補い、基本的な動力(トルク)を、エンジンに発生させるので、バッテリの過度な放電を防止して、半クラッチ状態にある期間を短くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/053596号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド車両にあっては、登坂路の勾配が大きい場合にはクラッチ出力軸側に作用するアシストトルクが小さいため、クラッチ出力軸側の負荷が高い状態でクラッチを接続することとなり、クラッチの発熱量が大きくなってしまう。こうした発熱量を抑えるには、クラッチ入力軸側からクラッチ出力軸側に伝達するトルクの変化量を小さくして半クラッチ状態の期間を長くする必要がある。この場合、クラッチを半クラッチ状態から接続状態に遷移させる遷移時間が長くなり、急勾配の登坂路での車両の発進性及び加速性が損なわれてしまう。
【0007】
また、特許文献1に記載のハイブリッド車両では、平坦路において頻繁に電動機によるエンジンのアシストが行われることによってSOCが減少してしまうおそれがある。SOCが減少すると、電動機の出力可能トルクが制限されてしまい、急勾配の登坂路でエンジンのアシストを行おうとしても所望のアシストトルクを出力できず、結果として車両の発進性及び加速性が損なわれてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、クラッチの発熱を抑えつつ、急勾配での発進性及び加速性を高めることができるアシスト制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、エンジンと、前記エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達する変速機と、前記変速機と前記エンジンとの間の動力伝達経路を遮断又は接続するクラッチと、前記駆動輪に動力を伝達可能なモータと、を備えた車両のアシスト制御装置であって、所定勾配以上の登坂路であり、かつ前記クラッチが半係合状態を含む非締結状態であり、かつ変速の要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、前記駆動輪に対して前記モータからアシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記車両の速度である車速が所定車速以上になったことを条件に前記登坂アシスト制御を停止する構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラッチの発熱を抑えつつ、急勾配での発進性及び加速性を高めることができるアシスト制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のHCUの機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のHCUによって実行される登坂アシスト判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のHCUによって実行される加速アシスト判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両において登坂アシスト制御を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のHCUによって実行される変速アシスト判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るアシスト制御装置は、エンジンと、エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達する変速機と、変速機とエンジンとの間の動力伝達経路を遮断又は接続するクラッチと、駆動輪に動力を伝達可能なモータと、を備えた車両のアシスト制御装置であって、所定勾配以上の登坂路であり、かつクラッチが半係合状態を含む非締結状態であり、かつ変速の要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、駆動輪に対してモータからアシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行する制御部を備え、制御部は、車両の速度である車速が所定車速以上になったことを条件に登坂アシスト制御を停止することを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るアシスト制御装置は、クラッチの発熱を抑えつつ、急勾配での発進性及び加速性を高めることができる。
【実施例0014】
以下、本発明の一実施例に係るアシスト制御装置について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、車両としてのハイブリッド車両1は、エンジン2と、変速機としてのトランスミッション3と、モータとしてのモータジェネレータ4と、駆動輪5と、ハイブリッド車両1を総合的に制御するHCU(Hybrid Control Unit)10と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)11と、トランスミッション3を制御するTCM(Transmission Control Module)12と、ISGCM(Integrated Starter Generator Control Module)13と、INVCM(Invertor Control Module)14と、低電圧BMS(Battery Management System)15と、高電圧BMS16とを含んで構成される。エンジン2及びモータジェネレータ4は、駆動軸としてのドライブシャフト23に動力を伝達する駆動源を構成する。本実施例に係るHCU10は、制御部を構成する。
【0016】
本実施例において、エンジン2は、内燃機関によって構成されている。エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0017】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20と、スタータ21とが連結されている。ISG20は、ベルトやチェーンなどの動力伝達部材を介してエンジン2のクランクシャフト18に連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフト18から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0018】
本実施例では、ISG20は、ISGCM13の制御により、電動機として機能することで、エンジン2をアイドリングストップ機能による停止状態から再始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、ハイブリッド車両1の走行をアシストすることもできる。
【0019】
スタータ21は、図示しないモータとピニオンギヤとを含んで構成されている。スタータ21は、モータを回転させることにより、クランクシャフト18を回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与えるようになっている。このように、エンジン2は、スタータ21によって始動され、アイドリングストップ機能による停止状態からISG20によって再始動される。
【0020】
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速してドライブシャフト23を介して駆動輪5に伝達し、当該駆動輪5を駆動するようになっている。トランスミッション3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の変速機構25と、ノーマルクローズタイプの乾式クラッチによって構成されるクラッチ26と、減速機としてのディファレンシャル機構27と、アクチュエータ51、52とを備えている。
【0021】
クラッチ26は、変速機構25とエンジン2との間に設けられ、締結または非締結が切り換えられることにより、駆動輪5とエンジン2との間の動力伝達経路を遮断または接続するものである。
【0022】
トランスミッション3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、前進用の複数の変速段及び後進用の変速段を含む複数の変速段を成立可能に構成されている。トランスミッション3は、TCM12により制御されたアクチュエータ52により変速機構25における変速段の切換えが行われ、アクチュエータ51によりクラッチ26の締結及び非締結が行われるようになっている。ディファレンシャル機構27は、変速機構25によって出力された動力をドライブシャフト23に伝達するようになっている。ドライブシャフト23に伝達された動力は、駆動輪5に伝達される。
【0023】
モータジェネレータ4は、ディファレンシャル機構27に対して、チェーン等の動力伝達部材28を介して連結されている。モータジェネレータ4は、ディファレンシャル機構27を介してドライブシャフト23に接続されている。モータジェネレータ4は、電動機として機能する。
【0024】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータジェネレータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータジェネレータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0025】
ハイブリッド車両1の走行モードとしては、少なくとも、エンジン2とモータジェネレータ4の駆動力をドライブシャフト23に伝達してハイブリッド車両1を走行させるHEV走行モードと、エンジン2への燃料噴射を停止させてエンジン2を駆動停止としモータジェネレータ4のみの駆動力をドライブシャフト23に伝達してハイブリッド車両1をEV走行させるEV走行モードとがある。
【0026】
モータジェネレータ4は、駆動輪5の回転を利用して発電を行う発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行うようになっている。なお、モータジェネレータ4は、エンジン2から駆動輪5までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構27に連結される必要はない。
【0027】
ハイブリッド車両1は、第1蓄電装置30と、第2蓄電装置31を含む低電圧パワーパック32と、バッテリとしての第3蓄電装置33を含む高電圧パワーパック34と、高電圧ケーブル35と、低電圧ケーブル36とを備えている。
【0028】
第1蓄電装置30、第2蓄電装置31及び第3蓄電装置33は、充電可能な二次電池から構成されている。第1蓄電装置30は鉛電池からなる。第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30よりも高出力かつ高エネルギー密度な蓄電装置である。
【0029】
第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30と比較して短い時間で充電が可能である。本実施例では、第2蓄電装置31はリチウムイオン電池からなる。なお、第2蓄電装置31はニッケル水素蓄電池であってもよい。
【0030】
第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定された低電圧バッテリである。第3蓄電装置33は、例えば、リチウムイオン電池からなる。
【0031】
第3蓄電装置33は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31より高電圧を発生するようにセルの個数等が設定された高電圧バッテリであり、例えば、100Vの出力電圧を発生させる。第3蓄電装置33の残容量(以下、「バッテリ残容量」という)などの状態は、高電圧BMS16によって管理される。
【0032】
ハイブリッド車両1には、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38が設けられている。一般負荷37及び被保護負荷38は、スタータ21及びISG20以外の電気負荷である。
【0033】
被保護負荷38は、常に安定した電力供給が要求される電気負荷である。この被保護負荷38は、例えば、図示しないインストルメントパネルのランプ類を含んでいる。
【0034】
一般負荷37は、被保護負荷38と比較して安定した電力供給が要求されず、一時的に使用される電気負荷である。一般負荷37には、例えば、図示しないワイパーが含まれる。
【0035】
低電圧パワーパック32は、第2蓄電装置31に加えて、スイッチ40、41と、低電圧BMS15とを有している。第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、低電圧ケーブル36を介して、スタータ21と、ISG20と、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38とに電力を供給可能に接続されている。被保護負荷38に対しては、第1蓄電装置30と第2蓄電装置31とが並列に電気的に接続されている。
【0036】
スイッチ40は、第2蓄電装置31と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。スイッチ41は、第1蓄電装置30と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。
【0037】
低電圧BMS15は、スイッチ40、41の開閉を制御することで、第2蓄電装置31の充放電及び被保護負荷38への電力供給を制御している。低電圧BMS15は、アイドリングストップによりエンジン2が停止しているときは、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、高出力かつ高エネルギー密度な第2蓄電装置31から被保護負荷38に電力を供給するようになっている。
【0038】
低電圧BMS15は、エンジン2をスタータ21によって始動するとき、及び、アイドリングストップ制御によって停止しているエンジン2をISG20によって再始動するときに、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、第1蓄電装置30からスタータ21又はISG20に電力を供給するようになっている。スイッチ40を閉じてスイッチ41を開いた状態では、第1蓄電装置30から一般負荷37にも電力が供給される。
【0039】
このように、第1蓄電装置30は、少なくともエンジン2を始動する始動装置としてのスタータ21及びISG20に電力を供給するようになっている。第2蓄電装置31は、少なくとも一般負荷37及び被保護負荷38に電力を供給するようになっている。
【0040】
第2蓄電装置31は、一般負荷37と被保護負荷38の両方に電力を供給可能に接続されているが、常に安定した電力供給が要求される被保護負荷38に優先的に電力を供給するようにスイッチ40、41が低電圧BMS15により制御される。
【0041】
低電圧BMS15は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31の充電状態(充電残量)、並びに、一般負荷37及び被保護負荷38への作動要求を考慮し、被保護負荷38が安定して作動することを優先して、スイッチ40、41を上述した例と異なるように制御することがある。
【0042】
高電圧パワーパック34は、第3蓄電装置33に加えて、インバータ45と、INVCM14と、高電圧BMS16とを有している。高電圧パワーパック34は、高電圧ケーブル35を介して、モータジェネレータ4に電力を供給可能に接続されている。
【0043】
インバータ45は、INVCM14の制御により、高電圧ケーブル35にかかる交流電力と、第3蓄電装置33にかかる直流電力とを相互に変換するようになっている。例えば、INVCM14は、モータジェネレータ4を力行させるときには、第3蓄電装置33が放電した直流電力をインバータ45により交流電力に変換させてモータジェネレータ4に供給する。
【0044】
INVCM14は、モータジェネレータ4を回生させるときには、モータジェネレータ4が発電した交流電力をインバータ45により直流電力に変換させて第3蓄電装置33に充電する。
【0045】
HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0046】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0047】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能する。
【0048】
本実施例において、ECM11は、アイドリングストップ制御を実行するようになっている。このアイドリングストップ制御において、ECM11は、所定の停止条件の成立時にエンジン2を停止させ、所定の再始動条件の成立時にISGCM13を介してISG20を駆動してエンジン2を再始動させるようになっている。このため、エンジン2の不要なアイドリングが行われなくなり、ハイブリッド車両1の燃費を向上させることができる。
【0049】
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線48、49が設けられている。
【0050】
HCU10は、INVCM14及び高電圧BMS16にCAN通信線48によって接続されている。HCU10、INVCM14及び高電圧BMS16は、CAN通信線48を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
【0051】
HCU10は、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15にCAN通信線49によって接続されている。HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15は、CAN通信線49を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
【0052】
HCU10には、駆動輪5を含む各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ10a、アクセルペダル8の操作量をアクセル開度として検出するアクセル開度センサ10b、クラッチ26の係合度を検出するクラッチストロークセンサ10c、クランク角センサ10d、加速度センサ10eが接続されている。HCU10は、クランク角センサ10dからの検出情報に基づきエンジン2の回転速度であるエンジン回転速度を算出する。
【0053】
車輪速センサ10aは、車輪が所定角分回転するごとにパルスを発生させるパルス信号を車速パルスとして出力する。HCU10は、この車速パルスに基づいてハイブリッド車両1の車速を算出する。
【0054】
加速度センサ10eは、ハイブリッド車両1の加速度を検出し、その検出結果をHCU10に出力する。本実施例では、加速度センサ10eによってハイブリッド車両1の加速度を検出する構成としたが、上述した車速やモータジェネレータ4の回転数の時間的変化に基づき、HCU10がハイブリッド車両1の加速度を演算する構成であってもよい。
【0055】
また、加速度センサ10eは、ハイブリッド車両1の前後方向の傾きに基づき、ハイブリッド車両1が走行又は停車している路面の勾配を検出し、その検出結果をHCU10に出力する。本実施例では、加速度センサ10eによって路面の勾配を検出する構成としたが、後述する地図情報取得部10f及び位置情報取得部10gから得られる情報に基づき、HCU10が路面の勾配を検出する構成であってもよい。
【0056】
また、
図2に示すように、HCU10には、上記センサ類に加えて、地図情報取得部10f及び位置情報取得部10gが接続されている。
【0057】
地図情報取得部10fは、カーナビゲーション装置からなり、登坂路情報を含む地図情報を取得してHCU10に送信するようになっている。地図情報は、カーナビゲーション装置の記憶媒体に記憶されている。地図情報取得部10fとしては、カーナビゲーション装置に限らず、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末にインストールされた地図アプリなどのアプリケーションソフトを利用してもよい。
【0058】
位置情報取得部10gは、GPS受信機からなり、GPS(Global Positioning System)を利用してハイブリッド車両1の現在位置を測定し、測定された現在位置をHCU10に送信するようになっている。
【0059】
HCU10は、加速度センサ10eから入力された検出結果に基づき、ハイブリッド車両1が走行又は停車している路面が所定勾配(例えば、20%)以上の登坂路であるか否かを判定する路面勾配判定部101としての機能を有する。
【0060】
HCU10は、クラッチストロークセンサ10cから入力された検出結果に基づき、クラッチ26が半係合状態を含む非締結状態であるか、完全係合状態である締結状態であるか、を判定するクラッチ状態判定部102としての機能を有する。クラッチ26の非締結状態には、クラッチ26のエンジン側の摩擦係合要素26aとトランスミッション側の摩擦係合要素26bとの間で動力の伝達が行われない非係合状態が含まれる。
【0061】
半係合状態とは、クラッチ26のエンジン側の摩擦係合要素26aとトランスミッション側の摩擦係合要素26bとの間に滑りを生じさせた状態で互いに相対回転しながら係合している状態をいう。完全係合状態とは、クラッチ26のエンジン側の摩擦係合要素26aとトランスミッション側の摩擦係合要素26bとが滑りを生じさせることなく一体回転する係合状態をいう。
【0062】
HCU10は、アクセル開度と車速とに基づき変速マップを参照することによりトランスミッション3において変速を実施するか否かを判定し、この判定結果に基づき変速の要求(以下、「変速要求」という)があるか否かを判定する変速要求判定部103としての機能を有する。変速マップは、アクセル開度と車速と変速のタイミングとの関係を予め実験的に求めたもので、HCU10のROMに記憶されている。
【0063】
HCU10は、ハイブリッド車両1に対する加速要求の度合いを示す加速要求値が所定値以上であるか否かを判定する加速要求判定部104としての機能を有する。前述の所定値には、後述する登坂アシスト制御の実行条件の判定に用いられる「第1所定値」と、後述する加速アシスト制御の実行条件の判定に用いられる「第2所定値」とが含まれる。本実施例において、第1所定値は第2所定値よりも大きい値に設定されている。
【0064】
加速要求値としては、アクセル開度を用いることができ、この場合の第1所定値としては例えば「75%」のアクセル開度が設定される。また、アクセルペダル8の踏み込み速度、すなわち単位時間当たりのアクセル開度の変化量を加速要求値として用いてもよい。
【0065】
上述したハイブリッド車両1に対する加速要求には、運転者がアクセルペダル8を踏み込むことによる加速要求のほか、例えばクルーズコントロールや自動運転などのように運転者のアクセル操作に関わらず走行している場合に設定車速と実車速との差に応じて要求される加速要求を含んでもよい。
【0066】
HCU10は、高電圧BMS16から第3蓄電装置33のバッテリ残容量を取得し、この第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であるか否かを判定したり、当該バッテリ残容量が第2の閾値以上であるか否かを判定したりするバッテリ状態判定部105としての機能を有する。
【0067】
第1の閾値は、後述する登坂アシスト制御を実行可能なバッテリ残容量の下限値であり、予め実験的に求めてHCU10のROMに記憶されている。第2の閾値は、第1の閾値よりも大きい値であって、後述する加速アシスト制御を実行可能なバッテリ残容量の下限値であり、予め実験的に求めてHCU10のROMに記憶されている。
【0068】
HCU10は、地図情報取得部10f及び位置情報取得部10gからの入力情報に基づき、現在位置から目的地までの走行経路上の登坂路情報を取得する登坂路情報取得部106としての機能を有する。目的地は、カーナビゲーション装置において設定された目的地である。地図情報取得部10fとして地図アプリを用いる場合には、当該地図アプリにおいて設定された目的地である。登坂路情報には、少なくとも、目的地までの走行経路上における登坂路の有無、登坂路の勾配、登坂路までの距離や登坂路の長さ等の情報が含まれる。
【0069】
HCU10は、上述の通り取得した登坂路情報に基づき、現在位置から目的地までの走行経路上に所定勾配以上の登坂路が存在することが判明した場合、現在地から当該登坂路に到達するまでに、第3蓄電装置33において第1の閾値以上のバッテリ残容量を確保する。
【0070】
例えば、HCU10は、モータジェネレータ4やISG20によって発電を行いバッテリ残容量を増加させたり、加速アシスト制御などの登坂アシスト制御以外のアシスト制御を制限したりすることによって、第1の閾値以上のバッテリ残容量を確保又は維持することができる。その他、HCU10は、登坂アシスト制御以外のアシスト制御と同時にISG20による発電を行ってもよいし、エンジン2を駆動することによってISG20による発電を行ってもよい。
【0071】
HCU10は、登坂路情報に基づき、現在位置から目的地までの走行経路上に所定勾配以上の登坂路が存在しないことが判明した場合には、第1の閾値以上のバッテリ残容量を確保するための上記各処理を禁止してもよい。
【0072】
HCU10は、タイマ107を有している。タイマ107は、各種時間を計測する。例えば、タイマ107は、後述する登坂アシスト制御の実行開始からの経過時間を計測する。
【0073】
HCU10は、ハイブリッド車両1が走行又は停車している路面が所定勾配以上の登坂路であり、かつクラッチ26が非締結状態であり、かつ変速要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、駆動輪5に対してモータジェネレータ4からアシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行する。以下、登坂アシスト制御におけるアシストトルクを「登坂アシストトルク」という。
【0074】
登坂アシスト制御の実行条件には、ハイブリッド車両1に対する加速要求値が第1所定値以上であることが含まれる。なお、ハイブリッド車両1に対する加速要求値が第1所定値以上であることを登坂アシスト制御の実行条件の1つとしなくてもよい。
【0075】
また、登坂アシスト制御の実行条件には、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であることが含まれる。なお、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であることを登坂アシスト制御の実行条件の1つとしなくてもよい。
【0076】
また、登坂アシスト制御の実行条件の1つとして、変速段又は変速比が所定値未満の場合であることを実行条件に含めてもよい。これにより、変速段や変速比が大きい場合は、変速段や変速比を下げて出力トルクを増加させてから登坂アシスト制御の実行が開始されるので、登坂アシストトルクのアシスト量やアシスト頻度を抑制して、第3蓄電装置33の電力消費を抑制できる。
【0077】
HCU10は、次の第1停止条件から第4停止条件のうち、いずかの停止条件が成立すると、登坂アシスト制御を停止する。
【0078】
第1停止条件は、クラッチ26が非締結状態から締結状態に遷移したことである。第2停止条件は、車速が所定車速以上であることである。第3停止条件は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値未満であることである。第4停止条件は、登坂アシスト制御が実行開始されてから所定時間が経過したことである。
【0079】
HCU10は、ハイブリッド車両1に対する加速要求に応じて、駆動輪5に対してモータジェネレータ4からアシストトルクを出力する加速アシスト制御を実行可能である。すなわち、HCU10は、ハイブリッド車両1に対する加速要求値が第2所定値以上であることを条件に加速アシスト制御を実行する。以下、加速アシスト制御におけるアシストトルクを「加速アシストトルク」という。
【0080】
加速アシスト制御は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であることを条件に実行される。なお、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第2の閾値以上であることを加速アシスト制御の実行条件の1つとしなくてもよい。
【0081】
次に、
図3を参照して、HCU10によって実行される登坂アシスト判定処理の流れについて説明する。
図3に示す登坂アシスト判定処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0082】
図3に示すように、HCU10は、変速要求があるか否かを判定する(ステップS1)。HCU10は、ステップS1において変速要求があると判定した場合には、本登坂アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS1において変速要求がないと判定した場合には、ハイブリッド車両1が走行又は停車している路面が所定勾配以上の登坂路であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0083】
HCU10は、ステップS2において路面が所定勾配以上の登坂路でないと判定した場合には、本登坂アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS2において路面が所定勾配以上の登坂路であると判定した場合には、ハイブリッド車両1に対する加速要求値が第1所定値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0084】
ステップS3において、HCU10は、加速要求値が第1所定値未満の状態から第1所定値以上となったか否かを判定するのが好ましい。これにより、登坂アシスト制御を停止した後は、加速要求値が第1所定値未満になった後に再度、加速要求値が第1所定値以上にならないと登坂アシスト制御が実行されないこととなる。このため、例えば、加速要求値が第1所定値以上である状態で登坂アシスト制御が停止しても、その直後に登坂アシスト制御が再開されることが抑制される。
【0085】
HCU10は、ステップS3において加速要求値が第1所定値以上でないと判定した場合には、本登坂アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS3において加速要求値が第1所定値以上であると判定した場合には、クラッチ26が半係合状態を含む非締結状態であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0086】
HCU10は、ステップS4においてクラッチ26が非締結状態でないと判定した場合には、本登坂アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS4においてクラッチ26が非締結状態であると判定した場合には、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0087】
HCU10は、ステップS5において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上でないと判定した場合には、本登坂アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS5において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であると判定した場合には、登坂アシスト制御を実行する(ステップS6)。
【0088】
ステップS6において登坂アシスト制御が実行されると、駆動輪5に対してモータジェネレータ4から登坂アシストトルクが出力される。したがって、登坂アシスト制御の実行中は、ハイブリッド車両1に要求される要求トルクとして、エンジン2から出力されクラッチ26及びトランスミッション3を介してドライブシャフト23に伝達されるエンジントルクと登坂アシストトルクとを合計したトルク(以下、「合計トルク」という)が駆動輪5に伝達される。登坂アシストトルクは、ハイブリッド車両1に要求される要求トルクから前述のエンジントルクを差し引いたトルクに設定される。
【0089】
合計トルクは、少なくとも、ハイブリッド車両1が所定勾配の登坂路において所定の加速度で発進又は走行可能な駆動力(以下、「必要駆動力」という)を確保できるトルク以上のトルクに設定される。
【0090】
次いで、HCU10は、登坂アシスト制御の実行中、クラッチ26の非締結状態が継続しているか否かを判定する(ステップS7)。HCU10は、ステップS7においてクラッチ26の非締結状態が継続していないと判定した場合には、クラッチ26が完全係合状態である締結状態に遷移したことにより登坂アシストトルクを出力する必要がないと判断してステップS6で実行開始された登坂アシスト制御を停止して(ステップS11)、本登坂アシスト判定処理を終了する。
【0091】
HCU10は、ステップS7においてクラッチ26の非締結状態が継続していると判定した場合には、車速が所定車速未満であるか否かを判定する(ステップS8)。HCU10は、ステップS8において車速が所定車速未満でない、すなわち車速が所定車速以上であると判定した場合には、ステップS6で実行開始された登坂アシスト制御を停止して(ステップS11)、本登坂アシスト判定処理を終了する。
【0092】
所定車速は、ハイブリッド車両1の目標車速よりも低い速度に設定されている。前述の目標車速は、例えば、アクセル開度や変速段から推定される推定車速、又はクルーズコントロールや自動運転走行時における設定車速のことである。推定車速及び設定車速は、いずれも変動する値である。このため、所定車速も推定車速及び設定車速に連動して変動することが好ましい。例えば、所定車速としては、推定車速及び設定車速に対して所定の速度だけ低い車速や、推定車速及び設定車速に対して所定比率(所定比率<100%)を乗じた車速を用いることができる。
【0093】
なお、所定車速は、ハイブリッド車両1の目標車速に設定してもよい。また所定車速は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量に応じて変化させてもよい。例えば、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値よりも大きい所定閾値以上である場合は所定車速をハイブリッド車両1の目標車速に設定し、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上かつ当該所定閾値未満の場合は所定車速をハイブリッド車両1の目標車速よりも低い速度に設定してもよい。さらに、所定車速は、実験や試験等で予め決められた固定値に設定してもよい。
【0094】
HCU10は、ステップS8において車速が所定車速未満であると判定した場合には、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。HCU10は、ステップS9において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上でない、すなわち第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値未満であると判定した場合には、ステップS6で実行開始された登坂アシスト制御を停止して(ステップS11)、本登坂アシスト判定処理を終了する。
【0095】
HCU10は、ステップS9において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であると判定した場合には、ステップS6で登坂アシスト制御が実行開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS10)。
【0096】
HCU10は、ステップS10において、ステップS6で登坂アシスト制御が実行開始されてから所定時間が経過していないと判定した場合には、処理をステップS7に移行し、再度ステップS7からステップS10の処理を繰り返す。
【0097】
HCU10は、ステップS10において、ステップS6で登坂アシスト制御が実行開始されてから所定時間が経過したと判定した場合には、ステップS6で実行開始された登坂アシスト制御を停止して(ステップS11)、本登坂アシスト判定処理を終了する。
【0098】
次に、
図4を参照して、HCU10によって実行される加速アシスト判定処理の流れについて説明する。
図4に示す加速アシスト判定処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0099】
図4に示すように、HCU10は、ハイブリッド車両1に対する加速要求値が第2所定値以上であるか否かを判定する(ステップS21)。第2所定値は、第1所定値よりも小さい。
【0100】
HCU10は、ステップS21において加速要求値が第2所定値以上でないと判定した場合には、加速アシスト制御を実行することなく、本加速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS21において加速要求値が第2所定値以上であると判定した場合には、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0101】
HCU10は、ステップS22において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第2の閾値以上でないと判定した場合には、加速アシスト制御を実行することなく、本加速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS22において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第2の閾値以上であると判定した場合には、登坂アシスト制御又は加速アシスト制御の実行中でないか否かを判定する(ステップS23)。
【0102】
HCU10は、ステップS23において登坂アシスト制御又は加速アシスト制御の実行中であると判定した場合には、加速アシスト制御を実行することなく、本加速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS23において登坂アシスト制御又は加速アシスト制御の実行中でないと判定した場合には、加速アシスト制御を実行して(ステップS24)、本加速アシスト判定処理を終了する。
【0103】
次に、
図5のタイムチャートを参照して、登坂アシスト制御を実行する場合の一例について説明する。
図5のタイムチャートは、所定勾配以上の登坂路に停車したハイブリッド車両1が発進する場合の例であり、時刻t1において登坂アシスト制御の実行条件が成立するものとする。
【0104】
図5に示すように、アイドリング状態でハイブリッド車両1が停車中、時刻t1において、運転者によりアクセルペダル8が踏み込まれる等して発進要求がなされると、アクセル開度に応じてエンジン回転数及び合計トルクが上昇する。このとき、クラッチ26は、非係合状態が解除され、半係合状態に向けて係合状態が変化する。
【0105】
その後、時刻t2において、クラッチ26が半係合状態に遷移すると、エンジン側の摩擦係合要素26aからトランスミッション側の摩擦係合要素26bへのトルクの伝達が開始される。これにより、時刻t2以降は、クラッチ回転数が上昇し始め、徐々にエンジン回転数との差が小さくなる。クラッチ回転数は、トランスミッション側の摩擦係合要素26bの回転数である。
【0106】
また、時刻t2以降は、登坂アシストトルクとエンジントルクの合計トルクが必要駆動力を超えた状態が維持される。
【0107】
その後、時刻t3において、エンジン回転数とクラッチ回転数との回転数差が設定値未満になると、クラッチ26の半係合状態から完全係合状態への移行が開始される。この設定値は、クラッチ26が半係合状態から完全係合状態に移行したときのショックが少なくなるような値に設定されている。これにより、設定値を0にする場合と比べて、クラッチ26が半係合状態から完全係合状態に移行するまでの時間を短縮して、クラッチ温度の上昇や、第3蓄電装置33の放電力を抑制することができる。なお、この設定値を0に設定して、クラッチ26が半係合状態から完全係合状態に移行したときのショックをなくすこともできる。
【0108】
時刻t2から時刻t3の間のクラッチ係合度は、所定の係合度に維持されている。このクラッチ係合度は、クラッチ26の係合度合いを示す指標であり、クラッチ26が半係合状態である場合において、クラッチ係合度が高いほどクラッチ26の動力伝達率が高くなり、クラッチ係合度が低いほどクラッチ26の動力伝達率が低くなる。
【0109】
クラッチ26の係合度合いを示す指標としては、摩擦係合要素26aと摩擦係合要素26bとの間の距離や、クラッチ26を駆動する駆動量(電磁クラッチの場合は電流量または電圧量、油圧クラッチの場合は圧油の圧力量)やクラッチ容量を用いればよい。
【0110】
所定の係合度は、摩擦係合要素26a及び摩擦係合要素26bの摩擦によるクラッチ26の温度上昇率が上限値を下回る値に設定している。これにより、時刻t2から時刻t3の間、つまりエンジン回転数とクラッチ回転数との回転数差が設定値以上となってクラッチ温度の上昇率が高くなる間は、所定の係合度を一定値に維持することで、クラッチ温度の急激な上昇を抑制している。
【0111】
なお、所定の係合度は、実験や試験等で予め決められた固定値であってもよいし、車両状態や外部環境に応じて変化する可変値に設定してもよい。所定の係合度を可変値とする場合、例えば、エンジン回転数とクラッチ回転数との回転数差が大きいほど所定の係合度を小さくしたり、不図示のクラッチ温度センサの出力値又は不図示のクラッチ温度推定部により推定されたクラッチ温度(又は温度上昇率)が大きいほど所定の係合度を小さくすればよい。
【0112】
その後、時刻t4において、クラッチ26が半係合状態から完全係合状態に移行すると、エンジン回転数とクラッチ回転数とが同期し、クラッチ26が締結状態になることから登坂アシスト制御が停止する。
【0113】
時刻t4において、登坂アシスト制御を停止させる際、登坂アシストトルクを直ちに0にしてもよいが、登坂アシストトルクを直ちに0にすると、時刻t4直前における登坂アシストトルク量が大きい場合は、合計トルクが急激に低下して、運転者に対してトルク低下に伴うショックや違和感を与えてしまうおそれがある。
【0114】
そこで、登坂アシスト制御が停止しても、時刻t5に至るまでは登坂アシストトルクが徐々に低下するようにモータジェネレータ4の駆動が制御される。これにより、合計トルクも徐々に低下することとなる。この結果、登坂アシスト制御の停止に伴い、合計トルクが急激に低下することがなく、トルク低下に伴うショックや違和感を抑制することができる。
【0115】
なお、登坂アシスト制御の停止時に登坂アシストトルクを徐々に低下させる制御は、登坂アシスト制御の停止直前のアシストトルク量が設定値よりも大きい場合や登坂アシスト制御の停止直前の合計トルクに占めるアシストトルク量の割合が設定値より大きい場合にのみ実行して、トルク低下に伴うショックや違和感が僅かな場合は実行を停止してもよい。
また、登坂アシスト制御の停止時に登坂アシストトルクを徐々に低下させる制御は、登坂アシスト制御の停止直前のアシストトルク量が設定値より小さい場合や登坂アシスト制御の停止直前の合計トルクに占めるアシストトルク量の割合が設定値より小さい場合は、それらと比べて、アシストトルクの減少率や減少度合を大きくしてもよい。
【0116】
なお、登坂アシスト制御が停止されると、登坂アシストトルクが0となるが、例えば次のような場合には、登坂アシストトルクを0とすることなく他のアシスト制御におけるアシストトルクまで低下又は増加させるのが好ましい。登坂アシストトルクと他のアシスト制御におけるアシストトルクとが一致している場合には、登坂アシストトルクを維持する。
【0117】
つまり、時刻t4から時刻t5の間は、登坂アシスト制御から他のアシスト制御へ徐々に切り替わる遷移期間として捉えることができる。これにより登坂アシスト制御と他のアシスト制御が切り替わる際にアシストトルクが急変することを抑制して、アシストトルクの急変に伴うショックや違和感を抑制するとともに、目標トルクに対する合計トルクの追従性を向上させることができる。本実施例では、この遷移期間を一定時間に設定しているが、登坂アシストトルクと他のアシスト制御におけるアシストトルクとのトルク差が大きいほど遷移期間を長く設定すれば、アシストトルクの急変に伴うショックや違和感を一層抑制することができる。
【0118】
また、他のアシスト制御に遷移させずに登坂アシストトルクを0とする場合も、登坂アシストトルクが大きいほど遷移期間を長く設定して、アシストトルクの急変に伴うショックや違和感を抑制してもよい。
【0119】
例えば、登坂アシスト制御の実行中に加速アシスト制御の実行条件が成立し、登坂アシスト制御の停止直後に加速アシスト制御が実行されることが予測されるような場合には、登坂アシストトルクを加速アシストトルクまで徐々に低下又は増加させて登坂アシストトルクが加速アシストトルクに一致したタイミングで登坂アシスト制御を停止する。また、加速アシスト制御の実行条件が成立した際に、加速アシストトルクと登坂アシストトルクとが一致している場合には、登坂アシストトルクを維持する。
【0120】
なお、加速アシスト制御の実行が予測されるような場合とは、例えば登坂アシスト制御中に加速アシスト制御の実行条件が成立している場合や、登坂アシスト制御が停止して登坂アシストトルクが0に遷移するまでの間に加速アシスト制御の実行条件が成立している場合を含む。
【0121】
以上のように、本実施例に係るアシスト制御装置は、所定勾配以上の登坂路であり、かつクラッチ26が半係合状態を含む非締結状態であり、かつ変速要求がないことを実行条件として、該実行条件が成立すると、駆動輪5に対してモータジェネレータ4からアシストトルクを出力する登坂アシスト制御を実行する構成を有する。
【0122】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂路の勾配が小さい場合には登坂アシスト制御が実行されないので、モータジェネレータ4に電力を供給する第3蓄電装置33の電力消費を抑制することができる。これにより、登坂路の勾配が大きい場合に登坂アシストトルクを出力するための電力を確保しやすくすることができ、登坂アシストトルク制御を実行する機会を増やすことができる。
【0123】
この結果、本実施例に係るアシスト制御装置は、急勾配の登坂路において登坂アシストトルク制御によって必要な登坂アシストトルクを出力できるため、クラッチ26のトランスミッション側の摩擦係合要素26bに作用する負荷を軽減することができる。これにより、クラッチ26の発熱量を抑えることができる。したがって、クラッチ26の発熱量を抑えるためにクラッチ26の半係合状態の期間を長くする必要がないので、クラッチ26を半係合状態から完全係合状態に遷移させる遷移時間を短くできる。
【0124】
よって、本実施例に係るアシスト制御装置は、クラッチ26の発熱を抑えつつ、急勾配でのハイブリッド車両1の発進性及び加速性を高めることができる。
【0125】
本実施例に係るアシスト制御装置は、クラッチ26が非締結状態から締結状態に遷移すると登坂アシスト制御を停止するので、不要な登坂アシストトルクの出力を抑えることができ、第3蓄電装置33の電力消費を抑制することができる。
【0126】
また、上記構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂アシスト制御を実行する期間を必要最低限にしたので、モータジェネレータ4に接続されたインバータ45や高電圧ケーブル35等の高電圧部品の加熱が抑制される。これにより、高電圧部品の加熱によってアシストトルクが制限されてしまうことを防止することができる。
【0127】
本実施例に係るアシスト制御装置は、車速がハイブリッド車両の目標車速よりも低い所定車速以上になったことを条件に登坂アシスト制御を停止する構成を有する。
【0128】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、クラッチ26が半係合状態であっても実際の車速が所定車速になるまでは登坂アシスト制御を実行するので、発進時のもたつき感を抑制することができる。また、実際の車速が所定車速に至った後は、登坂アシスト制御を停止するので、不要な電力消費を抑えることができる。この結果、登坂アシスト制御の実行機会を増やすことができる。
【0129】
本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂アシスト制御の実行開始から所定時間が経過したことを条件に登坂アシスト制御を停止する構成を有する。
【0130】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂アシストトルクの出力時間が制限されるので、必要以上に、又は長時間に亘って登坂アシストトルクが出力されることがなく、第3蓄電装置33の電力消費を抑制することができる。
【0131】
本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂アシスト制御の停止後、加速要求値が第1所定値未満の状態から第1所定値以上になったことを条件に登坂アシスト制御を実行する構成を有する。
【0132】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、登坂アシスト制御の停止後は加速要求値が第1所定値未満になった後に再度、第1所定値以上にならないと登坂アシスト制御が実行されないため、登坂アシスト制御の停止直後に登坂アシスト制御が再開されることを抑制することができる。この結果、必要以上に、又は長時間に亘って登坂アシストトルクが出力されたり、連続して登坂アシスト制御が実行されたりすることがなく、第3蓄電装置33の電力消費を抑制することができる。
【0133】
本実施例に係るアシスト制御装置において、登坂アシスト制御は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値以上であることを条件に実行され、加速アシスト制御は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であることを条件に実行される構成を有する。
【0134】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第2の閾値未満の場合には加速アシスト制御を実行しないので、第3蓄電装置33の電力消費を抑制することができる。また、例えば、登坂アシスト制御が実行されない平坦路を走行している場合には、上記のように加速アシスト制御の実行を制限することによってモータジェネレータ4による発電機会を増やすことができる。この結果、第3蓄電装置33のバッテリ残容量を増加させることができ、登坂アシスト制御の実行機会を増やすことができる。
【0135】
本実施例に係るアシスト制御装置は、現在地から目的地までの走行経路上に所定勾配以上の登坂路が存在することが判明した場合、現在位置から当該登坂路に到達するまでに第3蓄電装置33において第1の閾値以上のバッテリ残容量を確保する構成を有する。
【0136】
この構成により、本実施例に係るアシスト制御装置は、目的地までの走行経路上に所定勾配以上の登坂路が存在することが判明している場合には、予め必要なバッテリ残容量を確保しておくので、当該登坂路に到達した際にバッテリ残容量不足によって登坂アシスト制御が実行できないといった事態を防止することができる。この結果、登坂アシスト制御の実行機会を増やすことができる。
【0137】
なお、本実施例においては、登坂アシスト制御以外の他のアシスト制御として加速アシスト制御を実行する例について説明したが、これに限らず、他のアシスト制御として変速アシスト制御を実行してもよい。変速アシスト制御は、アップシフト要求やダウンシフト要求のようにトランスミッション3の変速比を変更する変速要求に基づき、トランスミッション3が変速中かつクラッチ26が非締結状態の間、モータジェネレータ4から変速アシストトルクを出力することにより、変速中のエンジントルク抜けを抑制して、変速中に乗員が感じる違和感や変速ショックを和らげつつ、ドライバビリティを向上させる制御である。
【0138】
変速アシスト制御を実行する例の場合、HCU10は、本実施例の登坂アシスト判定処理及び加速アシスト判定処理に加えて
図6に示す変速アシスト判定処理を行う。この変速アシスト判定処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0139】
図6に示すように、HCU10は、変速要求があるか否かを判定する(ステップS31)。HCU10は、ステップS31において変速要求がないと判定した場合には、本変速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS31において変速要求があると判定した場合には、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第3の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。
【0140】
第3の閾値は、本実施例における第1の閾値よりも大きく第2の閾値よりも小さい値に設定されている。ここで、第1の閾値は、登坂アシスト制御の実行有無に関わる値であるため、ハイブリッド車両1の動力性能確保の観点から第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値のなかで最も小さい値とされている。これにより、他のアシスト制御が実行されないようなバッテリ残容量であっても登坂アシスト制御を実行することができる。
【0141】
これに対して、第2の閾値及び第3の閾値は、加速アシスト制御及び変速アシスト制御がいずれもドライバビリティ向上の観点から実行される制御であることから、登坂アシスト制御に比べて優先度が低い。このため、第2の閾値及び第3の閾値は、第1の閾値よりも大きい値に設定されている。
【0142】
HCU10は、ステップS32において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第3の閾値以上でないと判定した場合には、本変速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS32において第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第3の閾値以上であると判定した場合には、クラッチ26が締結状態から非締結状態になったか否かを判定する(ステップS33)。
【0143】
HCU10は、ステップS33においてクラッチ26が締結状態から非締結状態になっていないと判定した場合には、本変速アシスト判定処理を終了する。HCU10は、ステップS33においてクラッチ26が締結状態から非締結状態になったと判定した場合には、変速アシスト制御を実行して(ステップS34)、本変速アシスト判定処理を終了する。
【0144】
変速アシスト制御が実行されると、変速時のトルク抜けを防止するようにモータジェネレータ4から変速アシストトルクが出力される。これにより、変速時のトルク抜けが防止され、トルク抜けにより乗員が感じる違和感や変速ショックを和らげつつ、ドライバビリティが向上する。
【0145】
なお、登坂アシスト制御の実行中に変速アシスト制御の実行条件が成立し、登坂アシスト制御の停止直後に変速アシスト制御が実行されることが予測されるような場合には、登坂アシストトルクを変速アシストトルクまで徐々に低下又は増加させて登坂アシストトルクが変速アシストトルクに一致したタイミングで登坂アシスト制御を停止する。また、変速アシスト制御の実行条件が成立した際に、変速アシストトルクと登坂アシストトルクとが一致している場合には、登坂アシストトルクを維持する。
【0146】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【0147】
例えば、上述した登坂アシスト制御以外の他のアシスト制御として、加速アシスト制御の代わりに、又は加速アシスト制御に加えて、急加速アシスト制御を実行してもよい。急加速アシスト制御は、ドライバによるアクセルペダル8の踏込速度や要求加速度などの加速要求値の変化量が閾値を越えた場合、急加速が要求されていると判断して、モータジェネレータ4からアシストトルクを発生させてハイブリッド車両1の加速性を高めるといった、ドライバビリティの向上を図る制御である。急加速アシスト制御は、第3蓄電装置33のバッテリ残容量が第4の閾値以上であることを実行条件とする。
【0148】
このように、登坂アシスト制御に加えて複数のアシスト制御を実行可能な場合、これらアシスト制御の実行条件となる第3蓄電装置33のバッテリ残容量の各閾値のうち、登坂アシスト制御における第1の閾値が最も小さく設定されるのが好ましい。
【0149】
これにより、第1の閾値が小さいほど、登坂アシスト制御が他のアシスト制御に優先して実行される一方で、登坂アシスト制御以外の他のアシスト制御の実行が制限される。このため、第3蓄電装置33のバッテリ残容量の低下を抑制しつつ、モータジェネレータ3を発電機として機能させて第3蓄電装置33を充電する機会を増やすことができる。
【0150】
この結果、アシストトルクがなければ発進性又は加速性が著しく損なわれる急勾配な登坂路においても、ハイブリッド車両1の発進性、加速性を高めることができ、発進又は加速に著しく時間を要することにより運転者又は乗員が感じる不安を抑制することができる。
【0151】
さらに、アシスト制御の実行条件となる第3蓄電装置33のバッテリ残容量の各閾値のうち、変速アシスト制御の第3の閾値は、加速アシスト制御の第2の閾値及び急加速アシスト制御の第4の閾値よりも小さく設定しておくのが好ましい。
【0152】
これにより、第3の閾値が小さいほど、登坂アシスト制御や変速アシスト制御がドライバビリティを向上させる他のアシスト制御に優先して実行される一方で、当該他のアシスト制御の実行が制限される。このため、登坂アシスト制御や変速アシスト制御の実行機会を増やすことができ、急勾配登坂路の走行時や変速時の運転者が感じる不安や違和感を抑制しやすくなる。
【0153】
本実施例では、登坂アシスト制御を実行する状況として、所定勾配以上の登坂路に停車したハイブリッド車両1が発進する場合を説明したが、この状況に限定されない。例えば、ハイブリッド車両1が登坂路を低車速(極低車速)で走行中に登坂路の走行負荷によりエンジン2が停止することを防止すべくクラッチ26を完全係合状態から半係合状態に遷移させる際に、登坂アシスト制御を実行してもよい。
【0154】
本実施例では、エンジンとして内燃機関を用いたハイブリッド車両について説明したが、エンジンとして、内燃機関の代わりにバッテリの電力により動力を発生させる第2のモータジェネレータを用いた車両であってもよい。この場合、第2のモータジェネレータに電力を供給する第4蓄電装置や第2のモータジェネレータに供給される電力を制御する第2のインバータを当該車両に搭載しておくとよい。