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特開2024-919金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000919
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20231226BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 33/00 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J23/02 M
B01J21/06 M
B01J33/00 C
B01J23/78 M
B01J23/58 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099908
(22)【出願日】2022-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】504383531
【氏名又は名称】株式会社宇宙環境保全センター
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】立石 一郎
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA02C
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BA29C
4G169BA36A
4G169BA36C
4G169BA48A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB06C
4G169BC02C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC09C
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC10C
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC31C
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC32C
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC66C
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA15
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EC22Y
4G169EE01
4G169EE02
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC08
4G169HA02
4G169HB02
4G169HB03
4G169HC14
4G169HC22
4G169HD03
4G169HE05
4G169HE06
4G169HE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、既存の高度な技術や高価な材料を用いず、より簡易な方法、かつ安価な材料を活用して光触媒効果を高め、食品、飼料、肥料、化粧品または医薬部外品の成分あるいはコーティング剤の成分として配合可能である金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法に関する。
【解決手段】光触媒機能を有する基材に、ケイ酸イオンを含まず、カルシウムイオンを含むカルシウム溶液(以下、単に「カルシウム溶液」という。)と、カルシウムイオンを含まずケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液を交互に接触させることにより、光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウムで被覆することを特徴とする金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を有する基材に、ケイ酸イオンを含まず、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含む陽イオン溶液(以下、単に「陽イオン溶液」という。)と、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含まずケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、単に「ケイ酸溶液」という。)を交互に接触させることにより、光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウム、またはケイ酸マグネシウム、またはケイ酸カルシウムマグネシウムで被覆することを特徴とする金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、さらに繊維状物質を含有することを特徴とする請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項3】
前記繊維状物質は、絹由来のセリシン、またはフィブロインの繊維状タンパク質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項4】
前記繊維状物質は、細胞壁由来のセルロース、またはセルロースに似た化学構造を有するキチン、およびキトサンをナノファイバー化した繊維状物質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項5】
前記金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物は、光触媒機能を有する基材とケイ酸塩を混合し、ケイ酸塩に光触媒機能を有する基材を共存させた組成物であることをも特徴とする、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項6】
前記陽イオン溶液は、Fe、Ag、Cuから選ばれる1つ以上の金属イオンを、光触媒機能を有する基材に対して0.001~20重量部含む、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ケイ酸溶液はケイ酸イオンを含む他に、Fe、Ag、Cuから選ばれる1つ以上の金属イオンを、光触媒機能を有する基材に対して0.001~20重量部含む、請求項1または5に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物の製造方法。
【請求項8】
前記光触媒機能を有する基材の表面を多孔性ケイ酸塩で被覆した後、焼成を行うことを特徴とする、請求項1または5に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物の製造方法
【請求項9】
前記光触媒機能を有する基材は酸化チタンであることを特徴とする、請求項1または5に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の高度な技術や高価な材料を用いず、より簡易な方法、かつ安価な材料を活用して光触媒効果を高め、食品、飼料、肥料、化粧品または医薬部外品の成分あるいはコーティング剤の成分として配合可能である金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒は種々の用途に使用されてきており、特にアパタイトで被覆した光触媒機能を有する素材を環境浄化化粧料素材として用いることが特開2007-169164号公報(特許文献1参照)において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-169164号公報
【特許文献2】特開平10-146531号公報
【特許文献3】特開平09-262482号公報
【特許文献4】特開平11-255514号公報
【特許文献5】特開平11-179211号公報
【特許文献6】特開2001-302220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケイ酸塩は反応溶液の濃度、温度、pH(ペーハー)、共存イオンの種類などにより様々な構造を形成し、特性も様々である。そのような特性を利用して形成されたセラミック材料は様々な機器に利用されている。ケイ酸は塩基性水溶液の中で解離してSi-Oが生じ、その負電荷と同数の陽イオンが共存する。さらに、分岐や架橋が生じて網目構造が生じる。特に、ケイ酸塩の最大の特徴はケイ素-酸素の無定形網目構造である。この無定形網目構造を光触媒に利用することによって、生体適合性が高く、反応効率の高い材料となることが期待される。
本発明では、ケイ酸塩の形成条件をコントロールすることによって、生体適合性が高く、効率よく機能する光触媒材料を提供する。シリカは炭酸カルシウムやリン酸カルシウム(特にアパタイト)と並んで、生物の骨格や硬組織を構成する物質である。溶存ケイ素は植物に取り込まれて稲の葉や茎に、また、ケイソウなどの骨格を形成し、地球規模の物質循環の一部を担っている。シリカが欠乏すると、骨形成が阻害されるので、核生成に重要な役割を果たすと考えられている。
そこで、生物に不可欠なケイ素を含むケイ酸塩を利用して、生体適合性の高い光触媒を生成することは有益である。特に、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの役割を勘案して、ケイ酸カルシウムは有益であると考えられる。
本発明は、以上のような背景を鑑みて考案されたものである。
ケイ酸カルシウム、およびケイ酸マグネシウムはケイ酸塩の一種で、ケイ素はほとんどの動植物に含まれている。これらの品目は粉末状や顆粒状の食品添加物として用いられる安全な品目である。
ケイ酸カルシウムは酸化カルシウムと二酸化ケイ素と水がいろいろな割合で結合した組成の総称である。メタケイ酸カルシウム(CaSiO)、オルトケイ酸カルシウム(CaSiO)、ケイ酸三カルシウム(CaSiO)などの化学形態が知られている。ケイ酸マグネシウムは三ケイ酸マグネシウム(2MgO・3SiO・5HO)の形態が知られている。
【0005】
二酸化チタンは光半導体であり、エネルギーギャップに相当するエネルギーを紫外線から吸収して価電子帯の電子が励起される。それらが表面で外部物質と反応を起こすことが光触媒のメカニズムとされている。しかし、二酸化チタン内に励起された電子と正孔は、外部物質と反応する前に再結合して消滅する場合があるため、これが光触媒効率を制限している。
【0006】
その再結合を比較的起こりにくくし、二酸化チタンが光触媒として効率よく働くようにするために、各種の工夫が考案され、文献等に紹介され、また特許出願されている。
例えば、特開平10-146531号公報(特許文献2参照)には、白金、パラジウム、銀等の金属を二酸化チタン上に担持し、二酸化チタン表面に正孔を、金属表面に電子をそれぞれ分離させる方法が開示されている。しかし、効果を発現できるようにするためには、担持金属の粒径を量子サイズまで小さくすることが要求されている。そのために、有機金属錯体を用いて、金属を単離し、そのコロイド溶液を二酸化チタン微粒子に付着させ、乾燥、焼成し、ナノスケールにまで極小化した金属微粒子を二酸化チタン微粒子に高密度に担持する等の技術が用いられている。
【0007】
Ni(ニッケル),Pt(白金),Ru(ルテニウム)等のドーパントを光触媒中に添加したり、金属イオンのドーピングを行なって光触媒を付加する技術として、例えば、特開平09-262482号公報(特許文献3参照)には金属イオンを高エネルギーに加速し、二酸化チタンに照射して、この金属イオンを二酸化チタンに導入する方法が開示されている。また、特開平11-255514号公報(特許文献4参照)には、フルオロチタン化合物と金属化合物を含有する水溶液を用いて金属イオンがドープされた二酸化チタンを析出させる製造方法が開示されている。
【0008】
さらに、二酸化チタンに異種材料を複合させる方法も提案されている。異種材料としてはチタン以外の金属酸化物や窒化物、パラジウムや銀の化合物等が用いられている。例えば、特開平11-179211号公報(特許文献5参照)には二酸化チタンとジルコニウム化合物を大気雰囲気中で焼成した光触媒材料が開示されている。また、特開2001-302220号公報(特許文献6参照)には、アパタイトの優れた吸着特性を利用して、アパタイト結晶中にイオン交換によって金属修飾アパタイトを形成する方法が開示されている。
【0009】
しかし、こうした高度の技術や高価な材料を用いないで、高効率の光触媒が製造できれば、かつ、アパタイト被覆に代わる被覆加工技術があれば光触媒の利用はさらに拡大する。また、希少価値のあるレアメタルの供給は世界情勢に左右され、レアメタルを原料とした光触媒工業製品の安定生産には大きなリスクが伴う。本発明者はアパタイトによる光触媒の効果的な被覆加工技術を探求してきたが、こうした背景を鑑み、ケイ酸カルシウムやケイ酸マグネシウムといったケイ酸塩による被覆加工法を新たに発明するに至った。
【0010】
そこで、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)への加工時にその材料を調整し、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含む陽イオン溶液(以下、単に「陽イオン溶液」という。)と、ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、単に「ケイ酸溶液」という。)を簡易な方法で光触媒性金属酸化物と融合させ、触媒反応を促進させ得る光触媒材料の製造方法の提供を目的として開発したのがこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と陽イオン溶液を配合し、かつ金属イオンの存在下において該混合物をケイ酸溶液で処理することによって、光触媒機能を有する基材を、金属イオン配合多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とするものである。
【0012】
すなわちこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)とケイ酸溶液を配合し、かつ金属イオンの存在下において該混合物を、陽イオン溶液で処理することによって、光触媒機能を有する基材を金属イオン配合多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とするものである。
【0013】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、繊維状物質としてシルク等の繊維状タンパク質を含有することをも特徴とするものである。シルク等の繊維状タンパク質の存在下で生成する多孔性ケイ酸塩がより微細化する結果、吸着性や生体適合性が向上し、汚れや臭いの原因物質をより効果的に吸着することができる。
【0014】
また、前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、さらに繊維状物質として、細胞壁由来のセルロース、またはセルロースに似た化学構造を有するキチン、およびキトサンをナノファイバー化した繊維状物質を含有する事をも特徴とするものである。
【0015】
キチンはエビ、カニをはじめとして、きわめて多くの生物に含まれている天然の素材であり、その構造はセルロースに似ているが、N-アセチル-D-グルコサミンが鎖状に長くつながったアミノ多糖である。また、キチンをアルカリ処理するとアセチル基が除かれ、主としてD-グルコサミン単位からなるキトサンに変換される。アルカリ処理により、D-グルコサミン単位の割合は70-95%程度まであがり、酸の水溶液に溶けるようになる。キチン、キトサンはその生体吸収性,抗菌・抗カビ性,多孔性ゲル形成性が注目され、高度な機能や環境との調和に期待される高分子材料である。
【0016】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオンは、Fe、Cu、Ag、から選ばれる少なくとも1つ以上の金属イオンを含有することを特徴とするものである。
【0017】
また、前記陽イオン溶液は、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの任意の混合割合で調整することができることを特徴とするものである。例えば、陽イオン溶液に対してカルシウムイオン90重量%、マグネシウムイオン10重量%を混合したり、あるいはCaイオン10重量%、Mgイオン90重量%を混合したり、Caイオン単独(100重量%)、あるいはMgイオン単独(100重量%)の陽イオン溶液とすることができる。
【0018】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオンは、前記陽イオン溶液、またはケイ酸溶液に添加することにより、金属イオンの存在下において光触媒機能を有する基材を、ケイ酸溶液、および陽イオン溶液を含む処理液で処理したことをも特徴とするものである。
【0019】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物は、食品・飼料・肥料・化粧品・医薬部外品の成分あるいはコーティング剤・農林漁業資材・水質/環境浄化剤・塗料・切削油・ペットフード等の成分として配合可能であることをも特徴とするものである。
【0020】
前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)としては、二酸化チタンを主成分とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明では、アナタース型結晶構造をもつ二酸化チタンのみならず、化粧品や食品添加物の原料としても良く使われる光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの活性度を向上させることが可能であることが判明した。
【0022】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物は、光が照射された際の酸化還元作用により、上記の多孔性ケイ酸塩が吸着した汚れや臭い、細菌等を分解除去する作用を有する。ケイ酸塩は汚れや臭い、細菌等を吸着保持する機能を有する。例えば窒素酸化物や過酸化脂質、アンモニアやアルデヒド類、大腸菌等の細菌やウィルスを吸着できる(セラミック)素材である。また、吸着機能のある多孔質材であるゼオライトや珪藻土、炭をさらに配合した複合物でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例1におけるアナターゼ型二酸化チタンのケイ酸塩被覆物とリン酸塩被覆物のメチレンブルー分解効果を示すグラフである。アナターゼ型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、また陽イオン溶液をカルシウム単独からマグネシウム単独にすることにより光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度0.854になる濃度)を10ml混合して紫外線(4mW/cm)を照射した。以降の各図における測定条件もこれに同じである。
図2】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例2におけるルチル型二酸化チタンのケイ酸塩被覆物とリン酸塩被覆物のメチレンブルー分解効果を示すグラフである。ルチル型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
図3】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例3におけるアナターゼ型二酸化チタンへの繊維状シルクタンパク質の添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。繊維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上する。
図4】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例4におけるルチル型二酸化チタンへの繊維状シルクタンパク質の添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができる。また、繊維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。
図5】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例5における繊維状セルロース様物質であるキチンの添加効果を示すグラフである。アナターゼ型結晶構造の二酸化チタンに繊維状セルロース様物質を添加することにより活性度を向上させることができる。
図6】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例6における繊維状セルロース様物質であるキチンの添加効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの活性度を向上させることができる。繊維状セルロース様物質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。
図7】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例7におけるルチル型二酸化チタンのメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光触媒機能を有する基材にケイ酸塩を単に混合共存させることでも光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができることを示している。
図8】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例8におけるルチル型二酸化チタンへの金属イオン添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができることを示している。金属イオンとしてFe、Ag、Cuを添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。二酸化チタンは光が当たることにより光触媒効果を発揮する。金属イオン添加により生じる正孔と電子の再結合が起こりにくくなることが原因であると考えられる。つまり、金属イオン添加により再結合が起きる確率を減らすことが可能であることを示している。銀やパラジウムを担持する方法が開示されているが、本発明では、そのような高価な金属を担持しなくても、Fe、Cu等のより安価な材料で同様な効果が発揮できることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法の実施の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0025】
本発明は光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンを、陽イオン溶液、およびケイ酸溶液で処理することによって、二酸化チタンを多孔性ケイ酸塩で被覆するものである。
【0026】
本実施例における配合例は、アナターゼ型二酸化チタンに対して、ケイ酸カルシウムを14.5重量部配合した。前記多孔性ケイ酸塩が14.5重量部からなり、残部が前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)からなる。
【0027】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液と、ケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを二酸化チタンに対し14.5重量部生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体をカルシウム溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0028】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0029】
前記陽イオン溶液をカルシウム単独からマグネシウム単独代えて、同様にケイ酸マグネシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0030】
ここで用いられる陽イオン溶液およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMの MgCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0031】
比較対象原料として用いたリン酸塩被覆酸化チタンは、ケイ酸溶液をリン酸溶液に代え、ケイ酸塩被覆二酸化チタン製造の場合と同様の配合量と製造方法により、二酸化チタンの粉体の表面にリン酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させて作製している。ここで用いられるリン酸溶液、および陽イオン溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
および、100~300mMの MgCl/Tris-HCl
リン酸溶液=10~1000mMのNaHPO溶液
【0032】
図1により、アナターゼ型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、また陽イオン溶液をカルシウムイオン単独からマグネシウムイオン単独にすることにより光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
【0033】
本例では、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には、多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、光触媒効果を有する基材である金属酸化物の汚れ物質等の吸着効果は、ケイ酸イオンや陽イオンの配合量を変えることによって制御することができる。ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が高い場合には、光触媒効果を有する基材である金属酸化物の汚れ等の吸着効果が増大する傾向にある。
【実施例0034】
実施例1の光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンの結晶形をアナターゼ型からルチル型に代え、図2のように、ケイ酸溶液、およびカルシウムイオン単独の陽イオン溶液で処理することによって多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0035】
<本発明の組成物の製造法>
結晶形がルチル型の二酸化チタンの粉体を用いて、実施例1と同様にして多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0036】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0037】
比較対象原料として用いたリン酸カルシウム被覆二酸化チタンは、ケイ酸溶液をリン酸溶液に代え、ケイ酸カルシウム被覆二酸化チタン製造の場合と同様の配合量と製造方法により、二酸化チタンの粉体の表面にリン酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させて作製している。ここで用いられるリン酸溶液、および陽イオン溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
リン酸溶液 =10~1000mMのNaHPO溶液
【0038】
図2により、ルチル型二酸化チタンをリン酸カルシウム被覆からケイ酸カルシウム被覆にすることにより、光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
【実施例0039】
本実施例は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)を、ケイ酸溶液、および陽イオン溶液で処理する際、さらに繊維状シルクタンパク質を配合して、光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0040】
本実施例における配合例は、図3のように、光触媒機能を有する基材であるアナターゼ型二酸化チタンに対して、ケイ酸カルシウムを14.5重量部配合し、さらに繊維状シルクタンパク質を0.001~数重量部配合したものである。
【0041】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液と、ケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間、焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、例えばケイ酸溶液には、繊維状シルクタンパク質を二酸化チタンに対して0.001~数重量部添加しておく。
前記繊維状シルクタンパク質は、シルク粉末として、絹糸もしくは天然の繭を使用し、シルク繊維に含まれている絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものであり、これを二酸化チタンに対し0.001~数重量部の割合でケイ酸溶液、または陽イオン溶液に配合する。
【0042】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0043】
図3により、繊維状シルクタンパク質を配合することによりその効果は飛躍的に向上する。
【実施例0044】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図4のように、実施例3における光触媒性金属をアナターゼ型二酸化チタンからルチル型に代え、実施例3と同様に処理液に繊維状シルクタンパク質を配合して多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0045】
本実施例により、光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができる。また、維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すことがわかる。
【0046】
本例でも、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。繊維状シルクタンパク質の濃度が高い場合や、ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、繊維状シルクタンパク質の濃度が高い場合には多孔性ケイ酸塩の結晶化度が低下する傾向にある。
【実施例0047】
本発明において、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔質ケイ酸塩、及び繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質の配合量は、光触媒機能を有する基材に対し繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質を0.001~数重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0048】
本実施例は、実施例3における繊維状シルクタンパク質を繊維状セルロースに代え、実施例3と同様に、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)をケイ酸溶液、およびカルシウム溶液で処理する際、さらにナノファイバー化した繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質を配合して光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0049】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図5のように、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、陽イオン溶液とケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、例えば陽イオン溶液、またはケイ酸溶液にはナノファイバー化した繊維状セルロースを、二酸化チタンに対し0.001~数重量部添加しておく。実施例5は、セルロース様物質であるキチンをナノファイバー化した繊維状キチンをケイ酸溶液に添加している。
【0050】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0051】
本例でも、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。ナノファイバー化した繊維状物質の濃度が高い場合や、ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、ナノファイバー化した繊維状物質の濃度が高い場合には多孔性ケイ酸塩の結晶化度が低下する傾向にある。
【実施例0052】
本発明において、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔質ケイ酸塩、及び繊維状セルロースの配合量は、光触媒機能を有する基材に対し繊維状セルロースを0.001~数重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0053】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図6のように、実施例5における二酸化チタンの結晶形をアナターゼ型からルチル型に代え、実施例5と同様にしてケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、陽イオン溶液、またはケイ酸溶液には、光触媒機能を有する基材に対しナノファイバー化した繊維状セルロース様物質であるキチンを0.001~数重量部添加しておく。
【実施例0054】
本実施例は、ケイ酸溶液と陽イオン溶液の反応物である多孔性ケイ酸塩と、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンとを混合共存させたものである。
【0055】
すなわち、ケイ酸溶液と陽イオン溶液を配合し、その反応物である多孔性ケイ酸塩と二酸化チタン粉末を混合してケイ酸塩含有光触媒性複合組成物を得た。
【0056】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液とケイ酸溶液を液相で混合し、ルチル型二酸化チタンに対し10重量部、および100重量部の多孔性ケイ酸カルシウムを生成させた後、ルチル型二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を混合して、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。
【0057】
本実施例におけるケイ酸塩と光触媒機能を有する基材であるルチル型二酸化チタンとの混合は以下の割合を有する。
ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/0.1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム10重量部を混合)した。
ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム100重量部を混合)した。
【0058】
本実施例では、図7のように、ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/0.1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム10重量部を混合)して得た組成物と、ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウムを10%被覆(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウムを10モル%被覆)して得た組成物でほとんど同様の挙動を示し、両方の組成物ともメチレンブルーが効率良く分解されていることが分かる。また、ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/1で混合(ルチル型二酸化チタン対し、ケイ酸カルシウム100重量部を混合)して得た組成物の方が、ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウムを10%被覆(ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウム10モル%被覆)して得た組成物よりメチレンブルーを効率良く分解されていることが分かる。これはケイ酸カルシウムと二酸化チタンが単に混合共存してもメチレンブルー分解に効果があることを示すものである。
【実施例0059】
本実施例において、光触媒機能を有する基材と金属イオン配合ケイ酸塩の配合量は、光触媒機能を有する基材に対し金属イオンを0.001~20重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0060】
<本発明の組成物の製造法>
図8のように、金属イオンとしてFe、Cu、Agイオンを用いて、実施例2と同様にして多孔性ケイ酸カルシウムで被覆した金属イオン配合ケイ酸カルシウム被覆光触媒を得た。その際、Fe、Cu、Agから選ばれる1つ以上の金属イオン溶液をケイ酸溶液、または陽イオン溶液に、光触媒機能を有する基材に対し0.001~20重量部配合した金属イオン配合処理液を調整しておく。
【0061】
結晶形がルチル型の食品添加用二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)に対し、0.01重量部のFe、またはCu、またはAgイオンを配合したケイ酸溶液に浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成する。図8は本発明の金属イオン配合ケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物の製造方法の実施例8における金属イオンの添加効果を示すグラフである。より短時間に光触媒反応を促進させ得る光触媒材料が得られていることがわかる。
【0062】
なお、前記実施例1~7の製造方法において、実施例8と同様にFe、Cu、Agから選ばれる1つ以上の金属イオンを、ケイ酸溶液、または陽イオン溶液に、光触媒機能を有する基材に対し0.001~20重量部配合して金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物を製造することができる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を有する基材に、ケイ酸イオンを含まず、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含む陽イオン溶液(以下、単に「陽イオン溶液」という。)と、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含まずケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、単に「ケイ酸溶液」という。)を交互に接触させることにより、光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウム、またはケイ酸マグネシウム、またはケイ酸カルシウムマグネシウムで被覆する金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法であって、
前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、さらに繊維状物質を含有することを特徴とする金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項2】
前記繊維状物質は、絹由来のセリシン、またはフィブロインの繊維状タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項3】
前記繊維状物質は、細胞壁由来のセルロース、またはセルロースに似た化学構造を有するキチン、およびキトサンをナノファイバー化した繊維状物質であることを特徴とする、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項4】
前記陽イオン溶液は、Fe、Ag、Cuから選ばれる1つ以上の金属イオンを、光触媒機能を有する基材に対して0.001~20重量部含む、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ケイ酸溶液はケイ酸イオンを含む他に、Fe、Ag、Cuから選ばれる1つ以上の金属イオンを、光触媒機能を有する基材に対して0.001~20重量部含む、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記光触媒機能を有する基材の表面を多孔性ケイ酸塩で被覆した後、焼成を行うことを特徴とする、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記光触媒機能を有する基材は酸化チタンであることを特徴とする、請求項1に記載の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の高度な技術や高価な材料を用いず、より簡易な方法、かつ安価な材料を活用して光触媒効果を高め、食品、飼料、肥料、化粧品または医薬部外品の成分あるいはコーティング剤の成分として配合可能である金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒は種々の用途に使用されてきており、特にアパタイトで被覆した光触媒機能を有する素材を環境浄化化粧料素材として用いることが特開2007-169164号公報(特許文献1参照)において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-169164号公報
【特許文献2】特開平10-146531号公報
【特許文献3】特開平09-262482号公報
【特許文献4】特開平11-255514号公報
【特許文献5】特開平11-179211号公報
【特許文献6】特開2001-302220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケイ酸塩は反応溶液の濃度、温度、pH(ペーハー)、共存イオンの種類などにより様々な構造を形成し、特性も様々である。そのような特性を利用して形成されたセラミック材料は様々な機器に利用されている。ケイ酸は塩基性水溶液の中で解離してSi-Oが生じ、その負電荷と同数の陽イオンが共存する。さらに、分岐や架橋が生じて網目構造が生じる。特に、ケイ酸塩の最大の特徴はケイ素-酸素の無定形網目構造である。この無定形網目構造を光触媒に利用することによって、生体適合性が高く、反応効率の高い材料となることが期待される。
本発明では、ケイ酸塩の形成条件をコントロールすることによって、生体適合性が高く、効率よく機能する光触媒材料を提供する。シリカは炭酸カルシウムやリン酸カルシウム(特にアパタイト)と並んで、生物の骨格や硬組織を構成する物質である。溶存ケイ素は植物に取り込まれて稲の葉や茎に、また、ケイソウなどの骨格を形成し、地球規模の物質循環の一部を担っている。シリカが欠乏すると、骨形成が阻害されるので、核生成に重要な役割を果たすと考えられている。
そこで、生物に不可欠なケイ素を含むケイ酸塩を利用して、生体適合性の高い光触媒を生成することは有益である。特に、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの役割を勘案して、ケイ酸カルシウムは有益であると考えられる。
本発明は、以上のような背景を鑑みて考案されたものである。
ケイ酸カルシウム、およびケイ酸マグネシウムはケイ酸塩の一種で、ケイ素はほとんどの動植物に含まれている。これらの品目は粉末状や顆粒状の食品添加物として用いられる安全な品目である。
ケイ酸カルシウムは酸化カルシウムと二酸化ケイ素と水がいろいろな割合で結合した組成の総称である。メタケイ酸カルシウム(CaSiO)、オルトケイ酸カルシウム(CaSiO)、ケイ酸三カルシウム(CaSiO)などの化学形態が知られている。ケイ酸マグネシウムは三ケイ酸マグネシウム(2MgO・3SiO・5HO)の形態が知られている。
【0005】
二酸化チタンは光半導体であり、エネルギーギャップに相当するエネルギーを紫外線から吸収して価電子帯の電子が励起される。それらが表面で外部物質と反応を起こすことが光触媒のメカニズムとされている。しかし、二酸化チタン内に励起された電子と正孔は、外部物質と反応する前に再結合して消滅する場合があるため、これが光触媒効率を制限している。
【0006】
その再結合を比較的起こりにくくし、二酸化チタンが光触媒として効率よく働くようにするために、各種の工夫が考案され、文献等に紹介され、また特許出願されている。
例えば、特開平10-146531号公報(特許文献2参照)には、白金、パラジウム、銀等の金属を二酸化チタン上に担持し、二酸化チタン表面に正孔を、金属表面に電子をそれぞれ分離させる方法が開示されている。しかし、効果を発現できるようにするためには、担持金属の粒径を量子サイズまで小さくすることが要求されている。そのために、有機金属錯体を用いて、金属を単離し、そのコロイド溶液を二酸化チタン微粒子に付着させ、乾燥、焼成し、ナノスケールにまで極小化した金属微粒子を二酸化チタン微粒子に高密度に担持する等の技術が用いられている。
【0007】
Ni(ニッケル),Pt(白金),Ru(ルテニウム)等のドーパントを光触媒中に添加したり、金属イオンのドーピングを行なって光触媒を付加する技術として、例えば、特開平09-262482号公報(特許文献3参照)には金属イオンを高エネルギーに加速し、二酸化チタンに照射して、この金属イオンを二酸化チタンに導入する方法が開示されている。また、特開平11-255514号公報(特許文献4参照)には、フルオロチタン化合物と金属化合物を含有する水溶液を用いて金属イオンがドープされた二酸化チタンを析出させる製造方法が開示されている。
【0008】
さらに、二酸化チタンに異種材料を複合させる方法も提案されている。異種材料としてはチタン以外の金属酸化物や窒化物、パラジウムや銀の化合物等が用いられている。例えば、特開平11-179211号公報(特許文献5参照)には二酸化チタンとジルコニウム化合物を大気雰囲気中で焼成した光触媒材料が開示されている。また、特開2001-302220号公報(特許文献6参照)には、アパタイトの優れた吸着特性を利用して、アパタイト結晶中にイオン交換によって金属修飾アパタイトを形成する方法が開示されている。
【0009】
しかし、こうした高度の技術や高価な材料を用いないで、高効率の光触媒が製造できれば、かつ、アパタイト被覆に代わる被覆加工技術があれば光触媒の利用はさらに拡大する。また、希少価値のあるレアメタルの供給は世界情勢に左右され、レアメタルを原料とした光触媒工業製品の安定生産には大きなリスクが伴う。本発明者はアパタイトによる光触媒の効果的な被覆加工技術を探求してきたが、こうした背景を鑑み、ケイ酸カルシウムやケイ酸マグネシウムといったケイ酸塩による被覆加工法を新たに発明するに至った。
【0010】
そこで、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)への加工時にその材料を調整し、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンを含む陽イオン溶液(以下、単に「陽イオン溶液」という。)と、ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、単に「ケイ酸溶液」という。)を簡易な方法で光触媒性金属酸化物と融合させ、触媒反応を促進させ得る光触媒材料の製造方法の提供を目的として開発したのがこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と陽イオン溶液を配合し、かつ金属イオンの存在下において該混合物をケイ酸溶液で処理することによって、光触媒機能を有する基材を、金属イオン配合多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とするものである。
【0012】
すなわちこの発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)とケイ酸溶液を配合し、かつ金属イオンの存在下において該混合物を、陽イオン溶液で処理することによって、光触媒機能を有する基材を金属イオン配合多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とするものである。
【0013】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、繊維状物質としてシルク等の繊維状タンパク質を含有することをも特徴とするものである。シルク等の繊維状タンパク質の存在下で生成する多孔性ケイ酸塩がより微細化する結果、吸着性や生体適合性が向上し、汚れや臭いの原因物質をより効果的に吸着することができる。
【0014】
また、前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、さらに繊維状物質として、細胞壁由来のセルロース、またはセルロースに似た化学構造を有するキチン、およびキトサンをナノファイバー化した繊維状物質を含有する事をも特徴とするものである。
【0015】
キチンはエビ、カニをはじめとして、きわめて多くの生物に含まれている天然の素材であり、その構造はセルロースに似ているが、N-アセチル-D-グルコサミンが鎖状に長くつながったアミノ多糖である。また、キチンをアルカリ処理するとアセチル基が除かれ、主としてD-グルコサミン単位からなるキトサンに変換される。アルカリ処理により、D-グルコサミン単位の割合は70-95%程度まであがり、酸の水溶液に溶けるようになる。キチン、キトサンはその生体吸収性,抗菌・抗カビ性,多孔性ゲル形成性が注目され、高度な機能や環境との調和に期待される高分子材料である。
【0016】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオンは、Fe、Cu、Ag、から選ばれる少なくとも1つ以上の金属イオンを含有することを特徴とするものである。
【0017】
また、前記陽イオン溶液は、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの任意の混合割合で調整することができることを特徴とするものである。例えば、陽イオン溶液に対してカルシウムイオン90重量%、マグネシウムイオン10重量%を混合したり、あるいはCaイオン10重量%、Mgイオン90重量%を混合したり、Caイオン単独(100重量%)、あるいはMgイオン単独(100重量%)の陽イオン溶液とすることができる。
【0018】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオンは、前記陽イオン溶液、またはケイ酸溶液に添加することにより、金属イオンの存在下において光触媒機能を有する基材を、ケイ酸溶液、および陽イオン溶液を含む処理液で処理したことをも特徴とするものである。
【0019】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物は、食品・飼料・肥料・化粧品・医薬部外品の成分あるいはコーティング剤・農林漁業資材・水質/環境浄化剤・塗料・切削油・ペットフード等の成分として配合可能であることをも特徴とするものである。
【0020】
前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)としては、二酸化チタンを主成分とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明では、アナタース型結晶構造をもつ二酸化チタンのみならず、化粧品や食品添加物の原料としても良く使われる光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの活性度を向上させることが可能であることが判明した。
【0022】
この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法において、前記金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物は、光が照射された際の酸化還元作用により、上記の多孔性ケイ酸塩が吸着した汚れや臭い、細菌等を分解除去する作用を有する。ケイ酸塩は汚れや臭い、細菌等を吸着保持する機能を有する。例えば窒素酸化物や過酸化脂質、アンモニアやアルデヒド類、大腸菌等の細菌やウィルスを吸着できる(セラミック)素材である。また、吸着機能のある多孔質材であるゼオライトや珪藻土、炭をさらに配合した複合物でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例1におけるアナターゼ型二酸化チタンのケイ酸塩被覆物とリン酸塩被覆物のメチレンブルー分解効果を示すグラフである。アナターゼ型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、また陽イオン溶液をカルシウム単独からマグネシウム単独にすることにより光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度0.854になる濃度)を10ml混合して紫外線(4mW/cm)を照射した。以降の各図における測定条件もこれに同じである。
図2】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例2におけるルチル型二酸化チタンのケイ酸塩被覆物とリン酸塩被覆物のメチレンブルー分解効果を示すグラフである。ルチル型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
図3】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例3におけるアナターゼ型二酸化チタンへの繊維状シルクタンパク質の添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。繊維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上する。
図4】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例4におけるルチル型二酸化チタンへの繊維状シルクタンパク質の添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができる。また、繊維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。
図5】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例5における繊維状セルロース様物質であるキチンの添加効果を示すグラフである。アナターゼ型結晶構造の二酸化チタンに繊維状セルロース様物質を添加することにより活性度を向上させることができる。
図6】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例6における繊維状セルロース様物質であるキチンの添加効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの活性度を向上させることができる。繊維状セルロース様物質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。
図7】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、参考例7におけるルチル型二酸化チタンのメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光触媒機能を有する基材にケイ酸塩を単に混合共存させることでも光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができることを示している。
図8】本発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の、実施例におけるルチル型二酸化チタンへの金属イオン添加によるメチレンブルー分解効果を示すグラフである。光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができることを示している。金属イオンとしてFe、Ag、Cuを添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すようになる。二酸化チタンは光が当たることにより光触媒効果を発揮する。金属イオン添加により生じる正孔と電子の再結合が起こりにくくなることが原因であると考えられる。つまり、金属イオン添加により再結合が起きる確率を減らすことが可能であることを示している。銀やパラジウムを担持する方法が開示されているが、本発明では、そのような高価な金属を担持しなくても、Fe、Cu等のより安価な材料で同様な効果が発揮できることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性複合組成物の製造方法の実施の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0025】
本発明は光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンを、陽イオン溶液、およびケイ酸溶液で処理することによって、二酸化チタンを多孔性ケイ酸塩で被覆するものである。
【0026】
本実施例における配合例は、アナターゼ型二酸化チタンに対して、ケイ酸カルシウムを14.5重量部配合した。前記多孔性ケイ酸塩が14.5重量部からなり、残部が前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)からなる。
【0027】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液と、ケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを二酸化チタンに対し14.5重量部生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体をカルシウム溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0028】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0029】
前記陽イオン溶液をカルシウム単独からマグネシウム単独代えて、同様にケイ酸マグネシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0030】
ここで用いられる陽イオン溶液およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMの MgCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0031】
比較対象原料として用いたリン酸塩被覆酸化チタンは、ケイ酸溶液をリン酸溶液に代え、ケイ酸塩被覆二酸化チタン製造の場合と同様の配合量と製造方法により、二酸化チタンの粉体の表面にリン酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させて作製している。ここで用いられるリン酸溶液、および陽イオン溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
および、100~300mMの MgCl/Tris-HCl
リン酸溶液=10~1000mMのNaHPO溶液
【0032】
図1により、アナターゼ型二酸化チタンをリン酸塩被覆からケイ酸塩被覆にすることにより、また陽イオン溶液をカルシウムイオン単独からマグネシウムイオン単独にすることにより光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
【0033】
本例では、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には、多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、光触媒効果を有する基材である金属酸化物の汚れ物質等の吸着効果は、ケイ酸イオンや陽イオンの配合量を変えることによって制御することができる。ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が高い場合には、光触媒効果を有する基材である金属酸化物の汚れ等の吸着効果が増大する傾向にある。
【実施例0034】
実施例1の光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンの結晶形をアナターゼ型からルチル型に代え、図2のように、ケイ酸溶液、およびカルシウムイオン単独の陽イオン溶液で処理することによって多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0035】
<本発明の組成物の製造法>
結晶形がルチル型の二酸化チタンの粉体を用いて、実施例1と同様にして多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0036】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0037】
比較対象原料として用いたリン酸カルシウム被覆二酸化チタンは、ケイ酸溶液をリン酸溶液に代え、ケイ酸カルシウム被覆二酸化チタン製造の場合と同様の配合量と製造方法により、二酸化チタンの粉体の表面にリン酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させて作製している。ここで用いられるリン酸溶液、および陽イオン溶液は、例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
リン酸溶液 =10~1000mMのNaHPO溶液
【0038】
図2により、ルチル型二酸化チタンをリン酸カルシウム被覆からケイ酸カルシウム被覆にすることにより、光触媒効果であるメチレンブルー分解力は向上する。
【実施例0039】
本実施例は、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)を、ケイ酸溶液、および陽イオン溶液で処理する際、さらに繊維状シルクタンパク質を配合して、光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0040】
本実施例における配合例は、図3のように、光触媒機能を有する基材であるアナターゼ型二酸化チタンに対して、ケイ酸カルシウムを14.5重量部配合し、さらに繊維状シルクタンパク質を0.001~数重量部配合したものである。
【0041】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液と、ケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを、二酸化チタンに対し14.5重量部生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間、焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、例えばケイ酸溶液には、繊維状シルクタンパク質を二酸化チタンに対して0.001~数重量部添加しておく。
前記繊維状シルクタンパク質は、シルク粉末として、絹糸もしくは天然の繭を使用し、シルク繊維に含まれている絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものであり、これを二酸化チタンに対し0.001~数重量部の割合でケイ酸溶液、または陽イオン溶液に配合する。
【0042】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0043】
図3により、繊維状シルクタンパク質を配合することによりその効果は飛躍的に向上する。
【実施例0044】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図4のように、実施例3における光触媒性金属をアナターゼ型二酸化チタンからルチル型に代え、実施例3と同様に処理液に繊維状シルクタンパク質を配合して多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。
【0045】
本実施例により、光活性の比較的弱いルチル型結晶構造の二酸化チタンの光触媒活性度を向上させることができる。また、維状シルクタンパク質を添加することによりその効果は飛躍的に向上し、アナターゼ型二酸化チタンと同程度の効果を示すことがわかる。
【0046】
本例でも、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。繊維状シルクタンパク質の濃度が高い場合や、ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、繊維状シルクタンパク質の濃度が高い場合には多孔性ケイ酸塩の結晶化度が低下する傾向にある。
【実施例0047】
本発明において、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔質ケイ酸塩、及び繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質の配合量は、光触媒機能を有する基材に対し繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質を0.001~数重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0048】
本実施例は、実施例3における繊維状シルクタンパク質を繊維状セルロースに代え、実施例3と同様に、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)をケイ酸溶液、およびカルシウム溶液で処理する際、さらにナノファイバー化した繊維状セルロース、または繊維状セルロース様物質を配合して光触媒機能を有する基材を多孔性ケイ酸カルシウムで被覆したものである。
【0049】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図5のように、結晶形がアナターゼ型の二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を、陽イオン溶液とケイ酸溶液とに交互に接触させて、二酸化チタンの粉体の表面に多孔性ケイ酸カルシウムを生成させた後、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。例えば、ケイ酸溶液に二酸化チタンの粉体を浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成してケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、例えば陽イオン溶液、またはケイ酸溶液にはナノファイバー化した繊維状セルロースを、二酸化チタンに対し0.001~数重量部添加しておく。実施例5は、セルロース様物質であるキチンをナノファイバー化した繊維状キチンをケイ酸溶液に添加している。
【0050】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は、例えば、以下の組成を有する。
陽イオン溶液=100~300mMのCaCl/Tris-HCl
ケイ酸溶液 =10~1000mMのNaSiO溶液
【0051】
本例でも、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、処理液の組成や濃度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。ナノファイバー化した繊維状物質の濃度が高い場合や、ケイ酸イオンや陽イオンの濃度が低い場合には多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、ナノファイバー化した繊維状物質の濃度が高い場合には多孔性ケイ酸塩の結晶化度が低下する傾向にある。
【実施例0052】
本発明において、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔質ケイ酸塩、及び繊維状セルロースの配合量は、光触媒機能を有する基材に対し繊維状セルロースを0.001~数重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0053】
<本発明の組成物の製造法>
本実施例では、図6のように、実施例5における二酸化チタンの結晶形をアナターゼ型からルチル型に代え、実施例5と同様にしてケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物を得た。その際、陽イオン溶液、またはケイ酸溶液には、光触媒機能を有する基材に対しナノファイバー化した繊維状セルロース様物質であるキチンを0.001~数重量部添加しておく。
【参考例7】
【0054】
参考例は、ケイ酸溶液と陽イオン溶液の反応物である多孔性ケイ酸塩と、光触媒機能を有する基材(金属酸化物)である二酸化チタンとを混合共存させたものである。
【0055】
すなわち、ケイ酸溶液と陽イオン溶液を配合し、その反応物である多孔性ケイ酸塩と二酸化チタン粉末を混合してケイ酸塩含有光触媒性複合組成物を得た。
【0056】
<本発明の組成物の製造法>
参考例では、カルシウムイオン単独の陽イオン溶液とケイ酸溶液を液相で混合し、ルチル型二酸化チタンに対し10重量部、および100重量部の多孔性ケイ酸カルシウムを生成させた後、ルチル型二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)を混合して、100℃~700℃で10分から240分間焼成する。
【0057】
参考例におけるケイ酸塩と光触媒機能を有する基材であるルチル型二酸化チタンとの混合は以下の割合を有する。
ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/0.1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム10重量部を混合)した。
ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム100重量部を混合)した。
【0058】
参考例では、図7のように、ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/0.1で混合(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウム10重量部を混合)して得た組成物と、ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウムを10%被覆(ルチル型二酸化チタンに対し、ケイ酸カルシウムを10モル%被覆)して得た組成物でほとんど同様の挙動を示し、両方の組成物ともメチレンブルーが効率良く分解されていることが分かる。また、ルチル型二酸化チタンとケイ酸カルシウムを1/1で混合(ルチル型二酸化チタン対し、ケイ酸カルシウム100重量部を混合)して得た組成物の方が、ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウムを10%被覆(ルチル型二酸化チタンにケイ酸カルシウム10モル%被覆)して得た組成物よりメチレンブルーを効率良く分解されていることが分かる。これはケイ酸カルシウムと二酸化チタンが単に混合共存してもメチレンブルー分解に効果があることを示すものである。
【実施例0059】
本実施例において、光触媒機能を有する基材と金属イオン配合ケイ酸塩の配合量は、光触媒機能を有する基材に対し金属イオンを0.001~20重量部配合し、残部が前記光触媒機能を有する基材(金属酸化物)と多孔性ケイ酸塩からなる。
【0060】
<本発明の組成物の製造法>
図8のように、金属イオンとしてFe、Cu、Agイオンを用いて、実施例2と同様にして多孔性ケイ酸カルシウムで被覆した金属イオン配合ケイ酸カルシウム被覆光触媒を得た。その際、Fe、Cu、Agから選ばれる1つ以上の金属イオン溶液をケイ酸溶液、または陽イオン溶液に、光触媒機能を有する基材に対し0.001~20重量部配合した金属イオン配合処理液を調整しておく。
【0061】
結晶形がルチル型の食品添加用二酸化チタンの粉体(光触媒機能を有する基材)に対し、0.01重量部のFe、またはCu、またはAgイオンを配合したケイ酸溶液に浸漬、乾燥を行う工程と、その二酸化チタンの粉体を陽イオン溶液に浸漬、乾燥する工程をそれぞれ一回、もしくは複数回交互に繰り返し、しかる後に焼成する。図8は本発明の金属イオン配合ケイ酸カルシウム被覆光触媒性複合組成物の製造方法の実施例における金属イオンの添加効果を示すグラフである。より短時間に光触媒反応を促進させ得る光触媒材料が得られていることがわかる。
【0062】
なお、前記実施例1~の製造方法において、実施例と同様にFe、Cu、Agから選ばれる1つ以上の金属イオンを、ケイ酸溶液、または陽イオン溶液に、光触媒機能を有する基材に対し0.001~20重量部配合して金属イオン配合ケイ酸塩被覆光触媒性組成物を製造することができる。