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特開2024-91920低複屈折ベースレンズ上にホログラフィックミラーを有する眼用レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091920
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】低複屈折ベースレンズ上にホログラフィックミラーを有する眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20240628BHJP
   G02C 7/14 20060101ALI20240628BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20240628BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240628BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/14
G02C7/08
G02C7/06
G02B5/32
G02B5/30
G02B1/14
G02C7/10
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071506
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021572641の分割
【原出願日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】19305815.3
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オードゥ・ブシエ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・アルシャンボー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ポール・カノ
(57)【要約】
【課題】レンズの光学特性が何であれ、例えば、屈折率、透過、複屈折、吸収濾波、屈折力(累進屈折力を含む)等に関して何であれ、ホログラフィック構成要素を含むレンズをより安価でより高速に製造する方法を提供する。
【解決手段】本開示は、眼用レンズであって、少なくとも1つの低複屈折材料層(11)と、低複屈折材料層の表面に記録された少なくとも1つのホログラフィック構成要素(20)とを含むベースレンズ(10)と、ベースレンズ(10)に組み付けられた補助レンズ(30)と、を備えた眼用レンズに関する。本開示はそのような光学レンズの製造方法にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- フレーム(50);
- 前記フレームに嵌合される眼用レンズ(1)であって、前記眼用レンズ(1)は、
少なくとも1つの低複屈折材料層(11)と、前記低複屈折材料層の表面に記録された少なくとも1つのホログラフィックミラー(20)と、を含むベースレンズ(10)と、
前記ベースレンズ(10)に組み付けられた補助レンズ(30)と、
を備え、前記ベースレンズ(10)及び/又は前記補助レンズ(30)は、前記ホログラフィックミラー(20)の正面に、以下の群:振幅濾波機能、スペクトル濾波機能、偏光機能から選ばれる光学機能を提供するように設計される、眼用レンズ(1);並びに、
- 前記フレーム内(50)内に配置され、前記ホログラフィックミラー(20)を照明するように構成された画像源(51);
を備えるヘッドマウントディスプレイデバイスであって、
低複屈折材料が、ホログラフィック構成要素のホログラフィック機能を記録するための、前記低複屈折材料の層の表面にわたる照明ビームと参照ビームとの間に生じる干渉縞の可視性が、縞の最大可視性の少なくとも80%である材料である、ヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記補助レンズ(30)は高複屈折材料で作られる、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記眼用レンズ(1)は屈折力を有し、前記低複屈折材料層(11)は屈折力を有さず、前記眼用レンズの屈折力の少なくとも部分は、前記補助レンズ(30)により提供される、請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記ベースレンズ(10)は、偏光機能、フォトクロミック若しくはエレクトロクロミックセル、又は着色層の1つを含む、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記ベースレンズ(10)は、間に偏光薄膜が存在する2つの低複屈折材料層により形成される偏光セル(15)を備え、前記ホログラフィック構成要素(20)が記録された前記低複屈折材料層(11)は、前記偏光セル(15)の2つの前記低複屈折材料層の一方である、請求項1~4の何れか一項に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記ベースレンズ(10)は正面(21)及び背面(22)を有し、前記背面は、前記低複屈折材料層(11)の背面(13)により形成され、
前記ベースレンズの前記正面(21)は、ハード多層コーティング(16)で覆われる、請求項1~5の何れか一項に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記ホログラフィック構成要素(20)は、
ホログラフィックミラー、
ホログラフィックフィルタ、
ホログラフィックレンズ、
ホログラフィックデフレクタ、
フーリエホログラム、及び、
エッジライトホログラム
からなる群から選ばれる、請求項1~6の何れか一項に記載のヘッドマウントディスプレイデバイス。
【請求項8】
眼用レンズを製造する方法であって、
- 未記録のホログラフィック媒体の薄膜を低複屈折材料層(11)の背面に堆積させるステップ(111)であって、低複屈折材料が、ホログラフィック構成要素のホログラフィック機能を記録するための、前記低複屈折材料の層の表面にわたる照明ビームと参照ビームとの間に生じる干渉縞の可視性が、縞の最大可視性の少なくとも80%である材料である、堆積させるステップ(111)と、
- 基準ビームと照明ビームとの間に干渉を生成して、前記低複屈折材料層(10)にホログラフィックミラーを形成することにより、前記ホログラフィック媒体のホログラフィック記録を実行するステップ(112)と、
- 前記低複屈折材料層(11)を補助レンズ(30)に組み付けるステップ(120)であって、前記組み付けるステップは、前記ホログラフィック記録を実行するステップの後又は前に実行される、組み付けるステップ(120)と、
を含み、
前記低複屈折材料層(11)及び/または前記補助レンズ(30)は、前記ホログラフィックミラー(20)の正面に、以下の群:振幅濾波機能、スペクトル濾波機能、偏光機能から選ばれる光学機能を提供するように設計される、方法。
【請求項9】
前記ホログラフィック記録(112)中、前記基準ビーム及び前記照明ビームの少なくとも一方は、前記ホログラフィック媒体に達する前、前記低複屈折材料層を通って伝播する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ホログラフィック記録を実行する前、前記低複屈折材料層を熱成形するステップを更に含み、前記熱成形するステップは、所望の曲率を達成するように実施される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記組み付けるステップ(120)は、積層造形、接着、鋳造、クリッピング、又は射出により実行される、請求項8~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホログラフィック記録を実行するステップの前又は後、少なくとも1つの追加の層(14)を前記低複屈折材料層(11)に組み付けるステップ(113)を更に含み、前記追加の層(14)は光学機能を提供する、請求項8~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
ハード多層コーティング及び/又は耐摩耗コーティングを含む少なくとも1つのコーティング(130)を、前記低複屈折材料層(11)を前記補助レンズ(30)に組み付けることにより得られたレンズの正面及び/又は背面、又は前記補助レンズ(30)に組み付ける前の前記低複屈折材料層(11)を含むベースレンズ(10)に堆積させることを更に含む、請求項8~12の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのホログラフィック構成要素が記録された低複屈折材料層を含むベースレンズを備えた眼用レンズに関する。本発明は、そのような眼用レンズの製造プロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ特徴を有するヘッドマウントデバイスは既に周知である。そのようなデバイスは、装用者が拡張現実用の画像又はテキストを可視化できるようにする。
【0003】
このために、文献(特許文献1)から、フレームに嵌め込まれ、装用者により装用されることが意図される眼用レンズを提供する方法が知られており、この方法では、レンズは、フレームに統合された画像源によって生成された光を反射するように構成されたホログラフィックミラーを備える。
【0004】
ミラーは、ホログラフィプロセスを使用して記録されるという点でホログラフィックである。より具体的には、ホログラフィックミラーは、未記録媒体の薄膜を眼用レンズ上に提供し、少なくとも1つの基準ビームと照明/物体ビームとの間の干渉をホログラフィック媒体において生成することによってホログラフィックミラーを記録することにより得られる。
【0005】
記録ステップ中のビームの構成に応じて、ミラーに、ミラーでの反射時、画像源から来た光ビームの波長を変更することが可能な光学機能を付与することができる。したがって、記録は、レンズ及びフレームの構成に従って、且つ任意選択的には装用者の幾つかの特徴に従って実行することができる。
【0006】
ホログラムの品質、特にホログラフィックミラーによって実行される光学機能の正確性は、光学機能を記録するように作製される干渉縞の品質に依存する。この品質は、照明/物体ビームの偏光と基準ビームの偏光との間の角度ψに直接リンクする干渉縞の可視性Vに関連する。
V(ψ)Vmax cos(ψ)
ここで、Vmaxは最大可視性であり、理想的には1である。
【0007】
基板媒体が均質であり、特に、低複屈折を有する場合、角度は記録セットアップのみにリンクし、容易に最適化することができる。しかしながら、基板媒体が複屈折である場合、角度は材料自体に起因して局所的に変化し得、縞の可視性の局所的低減を生じさせ、ひいてはホログラフィックミラーの品質不良及び均質性不良に繋がる。
【0008】
レンズへのホログラフィックミラーの記録の別の問題は、そのようなレンズを大量に製造することの複雑さである。実際に、ホログラフィック記録は、レンズ特性、例えば、レンズ屈折力、レンズが統合されるヘッドマウントデバイスのタイプ等に依存し得、これは、各ホログラフィック構成要素の構成、ひいては各記録光学セットアップの構成をレンズ特性に適合させることを暗示する。これは、製造プロセスに複雑さ及び高コストをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/156614号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の目的は、従来技術の短所の解決策を提供することである。
【0011】
特に、本開示の一目的は、レンズの光学特性が何であれ、例えば、屈折率、透過、複屈折、吸収濾波、屈折力(累進屈折力を含む)等に関して何であれ、ホログラフィック構成要素を含むレンズをより安価でより高速に製造する方法を提供することである。
【0012】
上述の目的は、独立請求項に記述されている特徴の組み合わせにより実現され、従属請求項は本発明の特定の有利な例を提供する。
【0013】
眼用レンズ及びその製造方法が開示される。
【0014】
本開示の実施形態による眼用レンズは、ホログラフィック構成要素が記録された低複屈折材料層を含むベースレンズと、ベースレンズに組み付けられる補助レンズとを備える。低複屈折材料層により、高品質且つ効率的なホログラフィック構成要素を得ることが可能である。次に、補助レンズは、単に補助レンズをベースレンズに組み付けるだけで、機械的及び/又は光学的に関係なく、任意の所望の機能を提供し得る。特に、補助レンズは、ホログラフィックミラーの製造コスト又は複雑性を損なうことなく、高複屈折材料で作ることができる。
【0015】
例えば、ベースレンズは、平面レンズであり得、すなわち、いかなる屈折力もなくてよく、補助レンズは、最終レンズの屈折力に対応する屈折を有し得る。実施形態では、ベースレンズ及び/又は補助レンズは光学機能を組み込み得る。特に、ホログラフィック構成要素がベースレンズの背面にありながら、偏光/フォトクロミック/着色機能をベースレンズの正面に組み込むことは、仮想画像コントラストを増大させることができ、なぜならば、ディスプレイから来てミラーによって反射された光は低減させずに、環境からの光が低減し、これは特に拡張現実用途に適するためである。
【0016】
本明細書の説明及び利点に対する理解を深めるべく、ここで同一参照符号が同一要素を表す添付の図面及び詳細な説明に関する以下の簡単な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】眼用レンズの第1の例を示す図である。
図2】眼用レンズの第2の例を示す図である。
図3】眼用レンズの第3の例を示す図である。
図4】眼用レンズが挿入される光学デバイスを概略的に表す図である。
図5a】ホログラフィックミラーを記録する種々の光学設備を概略的に示す図である。
図5b】ホログラフィックミラーを記録する種々の光学設備を概略的に示す図である。
図5c】ホログラフィックミラーを記録する種々の光学設備を概略的に示す図である。
図5d】ホログラフィックミラーを記録する種々の光学設備を概略的に示す図である。
図6】眼用レンズを製造する方法の例示的な実施形態の主なステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
以下の定義は、本開示を説明するために提供される。
【0019】
「ホログラフィックミラー」(HM)は当技術分野で既知である。ミラーは、ホログラフィプロセスを使用して記録された場合、ホログラフィックミラーとして定義される。このミラーは、例えば、ディスプレイ画面、ピコプロジェクタ等の画像源により生成された光ビームを装用者の目に向けて反射して、装用者による画像の視覚化を生じさせるのに使用される。ホログラフィックミラーは、従来のホログラムビューイングの場合でのように記録されたホログラフィック画像の再構築に使用されない。
【0020】
記録構成により、ミラーに、ホログラフィックミラーを支持する層のジオメトリから独立した光学機能を付与することができる。例えば、ホログラフィックミラーは、焦点距離を有し得、又は有さない場合、1つ若しくは幾つかのゾーンの異なる機能を含み得、若しくは異なる波長を反射し得、決定された屈折力を有する等であり得る。
【0021】
「ホログラフィックフィルタ」は、ホログラフィプロセスを用いて支持体に記録される光学フィルタである。そのようなフィルタは、1つの波長又はある範囲の波長を特定の方向に透過させることができる。
【0022】
「ホログラフィックレンズ」は、ホログラフィプロセスを用いて支持体に記録されるレンズである。所与の方向又は所与の位置に光を集束させるために、所与の波長又はある範囲の波長に対して動作することができる。同じ支持体上で、ホログラフィックレンズは、スペクトル及び/又は角度選択性を示し、異なるゾーンの異なる焦点距離を有し、異なるスペクトル又は角度選択性を有するように構成し得る。
【0023】
「ホログラフィックデフレクタ」は、入射光を入射光が辿る方向とは異なる方向に向けるホログラフィック構成要素である。
【0024】
「フーリエホログラム」は、透過又は反射のいずれかで外部ソースによって読み取ることができる画像を含み、それにより、拡張現実、検眼、又は視力矯正の用途に向けてコンパクトなディスプレイを製造できるようにするホログラムである。
【0025】
「エッジライトホログラム」は、例えば適切なセンサ、ディスプレイ、又はフィルタ統合に向けて、薄い層内で光を導けるようにするホログラムである。
【0026】
以下、ホログラフィック構成要素は、ホログラフィックミラー、ホログラフィックフィルタ、ホログラフィックレンズ、ホログラフィックデフレクタ、フーリエホログラム、又はエッジライトホログラムの何れか1つを指すことができる。
【0027】
支持体へのホログラフィック構成要素の記録は、光ビームを発する光源、例えばレーザを備えた光学設備を用いて実行される。通常、偏光ビームスプリッタは、ビームを2つのビーム:1つの基準ビーム及び1つの照明ビームに分割できるようにし、両ビームは、ホログラフィック構成要素のタイプに応じて同じ側又は逆側からホログラフィック媒体を照明する。基準ビーム及び照明ビームによりホログラフィック記録媒体上に生じる干渉は、ホログラフィック構成要素を記録できるようにする。基準ビーム及び照明ビームの構成は、ホログラフィック構成要素の機能及び構成を適合できるようにする。例えば、ホログラフィックミラーの場合、光学設備が設定されると(例えば、ジオメトリ、ビームのサイズ等)、ホログラフィックミラーの特徴は、2つのビーム間の屈折率比(縞コントラスト及び回折効率に影響する)、露出時間(階すること得得及び拡散効率に影響する)、並びに基準ビーム及び照明ビームが透過する偏光維持ファイバが位置決めされる回転可能な支持体の可能な使用(ファイバを出るとき、ビームの偏光に影響する)を含め、1つ又は複数のパラメータを変更することによって変更することができる。ホログラフィック構成要素の記録に複数の基準ビーム及び/又は照明ビームが使用されてもよいことに留意し得る。当業者ならば、所望のホログラフィック構成要素構成を達成するのに使用される記録セットアップについての更なる詳細について文献国際公開第2016/156614号パンフレットを参照し得る。
【0028】
「ヘッドマウントディスプレイデバイス」(HMD)は当技術分野で既知である。そのようなデバイスは、ヘルメット搭載ディスプレイ、光学ヘッドマウントディスプレイ、ヘッド装用ディスプレイ等を含め、装用者の頭部に又は装用者の頭部の周囲に装用される。そのようなデバイスは、装用者による可視化のために画像を表示する光学手段を含む。HMDは、コンピュータ生成画像及び「リアルライフ」視野の重畳視覚化を提供し得る。HMDは、単眼(片目)又は両眼(両目)であり得る。本開示によるレンズを組み込んだHMDは、眼鏡、スキーマスク又はダイビングマスク等のマスク、ゴーグル等を含め、種々の形態をとることができる。HMDは1つ又は複数の眼用レンズを備える。好ましい実施形態では、HMDは眼用レンズが提供された眼鏡であり、眼用レンズは太陽レンズであることができる。
【0029】
「画像源」(IS)は、当技術分野で既知である。画像源は、装用者による視覚化に向けて画像を表示するのに適した光ビームを発することができる任意の光源である。視覚化は、画像源からの照明ビームがホログラフィックミラーで反射された後、生じる。本開示の実施形態では、ISは通常、例えば、眼鏡のテンプル構成要素等のHMDのテンプル構成要素上で装用者のこめかみの隣に配置することができるという点でオフアクシスである。本開示の実施形態では、ISは、仮想画像(コンピュータ生成画像)を表示するように構成された任意の画像源であり得る。ISは、画面(例えば、OLED、LCD、LCOS等)、位相及び/又は振幅SLM(空間光変調器)、その光源(例えば、レーザ、レーザダイオード等)と併せたピコプロジェクタ(LED、ダイオード、レーザ等を使用し得るMEMS又はDLP)等のプロジェクタ、又は任意の他のソースであり得る。ISは、任意の他の画像源(コンピュータ生成画像源)、及び/又は制御電子機器、及び/又は電源、及び/又は任意選択的な光学要素等を含むこともできる。
【0030】
眼用レンズ
図1図3を参照して、本開示の実施形態による眼用レンズ1についてこれより説明する。
【0031】
眼用レンズ1は、ホログラフィック構成要素20が記録される層11を含むベースレンズ10と、ベースレンズ10に組み付けられる補助レンズ30とを備える。
【0032】
図4に概略的に示されるように、実施形態によれば、この眼用レンズ1は、内蔵画像源51が位置決めされるフレーム50を備えたヘッドマウントディスプレイデバイスHMD5に嵌め込まれるように構成される。この実施形態では、ホログラフィック構成要素20はホログラフィックミラーを含むことができる。画像源51は、その場合、上記ホログラフィックミラーを照明し、上記ホログラフィックミラー20での反射時、装用者の環境の実際のビジョンに重ねられる、装用者による仮想画像の視覚化を生じさせるように構成される。屈折異常症の装用者の場合、眼用レンズ1は、装用者の仮想ビジョン(画像源により生成された画像のビジョン)及び実際のビジョン(装用者の環境のビジョン)の両方を矯正するように構成される。
【0033】
特定の用途は、光学共役が目の瞳孔と画像源との間で実施される拡張現実機器である。この構成では、HMD5は、画像源とレンズとの間に介在し、目の瞳孔の動きを辿るように目の瞳孔の位置に従って移動する可動微小ミラーを備え得る。さらに、この構成では、レンズに記録されたホログラフィックミラーは、画像源と瞳孔との間に光学共役を実施するように構成される。ホログラフィックミラーと瞳孔との間の距離が非常に短いことを所与として、これは、ミラーが、例えば+40D~+60Dの範囲の重要な屈折力を有することを暗示する。
【0034】
別の可能な用途は、目の瞳孔との共役はないが、代わりに画像源がホログラフィックミラーの焦点近傍に配置され、ホログラフィックミラーが仮想画像を無限遠に送るように構成される撮像システムである。
【0035】
眼用レンズ1のベースレンズ10は、少なくとも部分的に透明である。
ベースレンズ10は、平坦、湾曲、球形、円柱形、又は完全に自由な形態であることができる。ベースレンズの外形は、自由形態、円形、正方形等であることができる。補助レンズは平坦、湾曲、球形、円柱形、又は完全に自由な形態であることができる。補助レンズの外形は、自由形態、円形、正方形等であることができる。
【0036】
ベースレンズ10の層11は、低複屈折材料で作られて、高品質ホログラフィック構成要素20の記録を可能にする。上述したように、光学機能を記録するように作製された干渉縞の可視性Vは、照明ビームの偏光と基準ビームの偏光との間の角度Ψに依存する。複屈折材料は、記録された層の表面に沿って干渉縞の可視性を低減する偏光の本質的な変化を含む。
【0037】
ここでは、低複屈折を有する材料は、材料層の表面にわたる縞の可視性が最大可視性Vmaxの少なくとも80%である材料であると考えられ、これは約0°~38°の角度Ψの変動に対応し、そしてこれは、1つの縞の幅未満に対応し、明縞は平行偏光状態に対応し、暗縞は垂直偏光状態に対応する。
【0038】
以下の材料は低複屈折を有し、ホログラフィック構成要素が記録されるベースレンズの層11の形成に適する。
MR-7(商標)及びMR-8(商標)という商品名のMitsui Toatsu Chemicals社市販の熱硬化性ポリチオウレタン系樹脂、
CR-39としても知られており、又はOrma(登録商標)という商品名でEssilorにより市販のアリルジグリコールカーボネート(ADC)、
三酢酸セルロース(TAC)、
1.74屈折率材料、
鉱物ガラス
【0039】
他方、補助レンズ30は、ホログラフィックミラーを記録する必要がないため、少なくとも1つの高複屈折材料層を備えることができる。例えば、補助レンズはポリカーボネートで形成し得る。しかしながら、補助レンズ30は低複屈折材料又は幾つかが高複屈折であり、幾つかが低複屈折である種々の層で形成されてもよい。
【0040】
実施形態によれば、低複屈折材料層11は屈折力を有さず、したがって、矯正を装用者に提供しない。眼用レンズ1は、決定された屈折力を有し得る。その場合、屈折力は補助レンズ30によって提供し得る。眼用レンズ1は屈折力を提供しなくてもよい。その場合、補助レンズ30は平面レンズ、すなわち、屈折力がないレンズであり得るが、ベースレンズ10の機械的特性の増大(ベースレンズ10が非常に薄い、例えば、1mm厚未満である場合)及び/又は眼用レンズへの少なくとも1つの光学機能の提供に使用される。
【0041】
しかしながら、層11、及び場合によってはベースレンズ10全体、及び場合によっては補助レンズ30が屈折力を有さない場合であっても、これらは曲面を有して良好な美観を提供し得る。非限定的な例では、低複屈折材料層11は正面12及び背面13を含み、両面は球形であり得、したがって、屈折力を有さない。
【0042】
別の実施形態によれば、低複屈折材料層11は屈折力を含み得る。補助レンズ30は、低複屈折材料層11の屈折力と相補的な屈折力を提供して、レンズ1の所望の屈折力を得るように構成することができる。
【0043】
図1に示す例では、ベースレンズ10は、低複屈折材料層11のみを備え、ホログラフィック構成要素20は低複屈折材料層11上に記録される。ホログラフィック構成要素20は、ベースレンズ10が上記層11のみを含む場合、ベースレンズ10の正面又は背面をそれぞれ形成する層11の正面12又は背面13の何れかに記録し得る。補助レンズ30は、ベースレンズ10の正面、又はより好ましくは背面に組み付け得る。
【0044】
幾つかの例が図2及び図3に示される実施形態では、ベースレンズ10及び/又は補助レンズ30は、振幅濾波機能、スペクトル濾波機能(ショートパス若しくはロングパス等のエッジパス又はバンドパス濾波、又は例えば、着色若しくはフォトクロミック若しくはエレクトロクロミック機能の組み込みによる特定の色の濾波等)、又は偏光機構ように少なくとも1つの光学機能を提供するように構成される。
【0045】
上記光学機能を提供するために、ベースレンズ10及び/又は補助レンズ30は2つ以上の層を備え得る。例えば、ベースレンズが光学機能を提供する場合、光学機能は、低複屈折材料層11(例えば、層11は、太陽/UV保護を提供するために着色し得る)、又は低複屈折材料層11に組み付けられた少なくとも1つの追加の層14、又は層11と追加の層14との組み合わせによって実施することができる。
【0046】
その場合、ホログラフィック構成要素20とベースレンズ10の追加の層14との相対位置及び補助レンズ30(すなわち、ベースレンズ10の正面又は背面に組み付けられる)の位置は、追加の層及び/又は補助レンズ30によって提供される光学機能に従って決定し得る。
【0047】
非限定的な例によれば、光学機能が偏光機能、フォトクロミック機能、又は着色層による濾波の1つである場合、ホログラフィック構成要素20は好ましくは、層11の背面13に記録し得、一方、光学機能は、層11自体又は追加の層14の何れかによってホログラフィック構成要素20の正面で実施され、その正面12上の低複屈折材料層11に組み付けられる。これは、眼用レンズ1が、画像源を有するフレームに組み込まれる場合、追加の層又は層11自体によって実施される光学機能が、画像源からの光にではなく「リアルライフ」視野からの光のみに適用し、次にミラーで反射した光に適用できるようにする。したがって、光学機能の影響を考慮するようにホログラフィックミラーの構成を適合させる必要がない。さらに、この場合、偏光/フォトクロミック/着色機能の存在は、環境からの光が低減し、一方、仮想源からの光は低減されないため、仮想画像のコントラストを強化する。
【0048】
その場合ではまた、補助レンズ30はベースレンズ10の背面(追加の層14が層11の正面に組み付けられる場合、層11の背面である)に組み付け得る。
【0049】
ベースレンズ10又は補助レンズ30により提供することができる光学機能の第1の例は、少なくとも部分的に着色されることである。ベースレンズ10の層11若しくは追加の層14の何れか又は補助レンズ30の層は、例えば、文献国際公開第2018/054984号パンフレットに開示されるように、ブルーカット機能を含む材料等の着色材料で形成することができる。層11、又は追加の層14、又は補助レンズ30の層は、UV吸収染料(TINUVIN(登録商標)477又は479という商品名のBASFにより市販の染料等)を含むこともできる。ホログラフィック構成要素20が低複屈折材料層11の背面に記録される場合、UV吸収染料の提供は、ホログラフィック構成要素に達するUV量を低減し、そのような構成要素が有し得る黄色がかった態様を低減する。
【0050】
図2を参照すると、別の例によれば、ベースレンズ10は、フォトクロミックポリウレタン層14等の追加のフォトクロミック層14を備える。別の実施形態では、補助レンズ30はそのようなフォトクロミック層を備え得る。
【0051】
図3に示される別の例によれば、ベースレンズ10は偏光セル15を備えることができる。偏光セル15は通常、間に偏光薄膜が位置決めされた2つの低複屈折材料層を備える。この場合、ホログラフィック構成要素20が記録された低複屈折材料層11は、セルの2つの低複屈折材料層の一方であることができる。
【0052】
例えば、偏光セルは、TAC-PVA-TAC(PVAはポリビニルアルコールを指す)の3層の積層で形成することができ、その場合、TAC層の1つは、ホログラフィック構成要素20が記録された低複屈折材料層11を形成することもできる。偏光セル15は、PC-PVA-PC(PCはポリカーボネートを指す)の3層の積層で形成することもできる。PCは高複屈折材料であり、その場合、ベースレンズ10は、セル15の一部を形成せず、セル15に組み付けられた低複屈折材料層11を備える。示されていない別の例によれば、補助レンズ30はそのような偏光セル15を備え得る。
【0053】
更に別の例によれば、ベースレンズ10又は補助レンズ30はエレクトロクロミックセル(図示せず)を備えることができる。
【0054】
最後に、ベースレンズ10及び補助レンズ30の少なくとも一方は、耐摩耗コーティング(ハード多層コーティングとしても知られる)及び/又は反射防止コーティング等のコーティング16をその外面に備え得る。ホログラフィック構成要素20が低複屈折材料層11の背面に記録される場合、上記表面は好ましくは、ベースレンズ10の背面22を形成し、コーティング16は好ましくは、ベースレンズの正面21に堆積する。追加のコーティング16は、ホログラフィック構成要素20を覆い、ベースレンズ10の背面22に提供されてもよい。中間追加層をホログラフィック構成要素とコーティング16との間に提供することができる。
【0055】
コーティングが反射防止コーティングである場合、コーティングは、記録の品質を強化し、ホログラフィック構成要素を保護するために、ホログラフィック構成要素20の記録前に堆積し得る。
【0056】
別の実施形態によれば、ホログラフィック構成要素20は、低複屈折材料層11の正面に記録し得、上記ホログラフィック構成要素20は、ベースレンズ10の正面を形成し、又は追加の層によって覆われ、ベースレンズ10は、その正面及び場合によってはその背面にもコーティングを備えることができる。
【0057】
図2及び図3に示される例等の実施形態では、ベースレンズ10は、所望の機能又は2つ以上の機能を提供するために、2つ以上の追加の層14を備え得る。少なくとも1つの追加の層は、例えば、フォトクロミック層14又は偏光セル15であり得、少なくとも1つの他の層16は1つ又は複数のコーティング(耐摩耗、反射防止コーティング等)を含み得る。補助レンズ30は、幾つかの所望の光学機能を達成する1つ又は複数の層を備えることもできる。
【0058】
低複屈折材料層11の表面に記録されたホログラフィック構成要素20は、ミラー機能、濾波機能等の少なくとも1つの光学機能を提供するように構成される。一例によれば、ホログラフィック構成要素20はホログラフィックフィルタであり得る。別の例によれば、ホログラフィック構成要素20は、濾波機能を更に含むホログラフィックミラーであり得る。
例えば、ホログラフィックミラー20は、青色光、赤色光、又は緑色光等の特定の範囲の波長の光のみを反射するように構成し得る。ホログラフィック構成要素がミラーである場合、湾曲又はオフアクシスであり得、HMDの画像源から発せられた特定の範囲の波長を反射し得る。その場合、反射される波長のタイプは画像源に依存し得る。ミラーは、装用者の実際の視野からの波長を反射するように構成された平面鏡であってもよい。ホログラフィックミラー20は、ホログラフィックミラーがHMDの画像源と装用者の瞳孔との間に光共役を提供する先に与えられた例でのように、所望の屈折力を提供することもできる。
【0059】
ホログラフィック構成要素20は、光導波路等の機能を組み込むこともできる。
【0060】
先に示したように、ホログラフィック構成要素20は、少なくとも1つの基準ビームと照明ビームとの間でホログラフィック記録材料の薄膜上に干渉を生じさせることにより記録される。実施形態では、最終レンズが何であれ、所与のベースレンズジオメトリにホログラフィック構成要素を記録する同じセットアップを維持することが可能である。これは、例えば、ホログラフィック構成要素がホログラフィックフィルタである場合である。この場合、記録は、補助レンズがベースレンズに組み付けられる前又は後、実行し得る。
【0061】
他の実施形態では、最終レンズ1の構成に従ってホログラフィック構成要素20を記録するセットアップを適合させることが可能である。例えば、ホログラフィック構成要素がミラーである拡張現実用途では、ホログラフィックミラーを記録するセットアップは、最終レンズ屈折力に従って適合し得る。この場合、補助レンズ30は、屈折力を提供し、低複屈折材料で作られる場合、好ましくは、ホログラフィックミラーの記録中、ベースレンズ10に組み付けられる。逆に、補助レンズ30が高複屈折材料で作られる場合、補助レンズは、低複屈折材料で作られた均等なレンズで置換し得る。セットアップは、最終レンズ内のホログラフィック構成要素の位置にも依存し、すなわち、ホログラフィック構成要素がベースレンズの背面、又は正面に組み付けられるか及び補助レンズ30がベースレンズの背面、又は正面に組み付けられるかにも依存し得る。
【0062】
実施形態では、層11は、記録された複数のホログラフィック構成要素20を備えることができる。第1の例として、異なる範囲の波長を濾波又は反射するように構成された異なるフィルタ又はミラーを低複屈折材料層11に提供し得る。この場合、構成要素20は好ましくは、層11の同じ面に記録される。別の例では、低複屈折材料層11は、その第1の面(背面)に、ディスプレイ又は画像源により発せられた波長範囲内の光を反射するように構成され第1のオフアクシスホログラフィックミラーを備え、層11は、第2の面(正面)に、例えば、第1のミラーによって反射されなかった光が装用者の会話の相手に見られ得るのを回避する平面鏡等の第2のホログラフィックミラーを更に備える。
【0063】
眼用レンズの製造方法
図6を参照するに、上記による眼用レンズ1の製造方法100の主なステップについてこれより説明する。
【0064】
この方法は、ホログラフィック構成要素20を低複屈折材料層11上に形成するステップ110を含み、これは、ホログラフィック材料を低複屈折材料層11の主面上にホログラフィック材料の薄膜Fを堆積させるサブステップ111を含む。低複屈折材料層11は、所望の曲率を提供するために、熱成形ステップを先に受けていることがある。
【0065】
ホログラフィック材料は、当技術分野で既知である。そのような材料は、重クロム酸ゼラチン及びフォトポリマーを含む。適したフォトポリマーの非限定的な例は、SM-TR(商標)という商標名でPolygramaにより市販されている。ホログラフィック材料は、ポリマー噴射、スプレーコーティング、浸漬コーティング、又はスピンコーティングにより堆積することができる。ホログラフィック材料は、例えばパッドプリントにより、低複屈折材料層11の正面又は背面に全面にわたり又は特定のエリアのみに堆積することができる。浸漬コーティングの場合、ホログラフィック材料は層11の両主面の堆積し、薄膜の一方は後に除去することができる。
【0066】
次に、ステップ110は、ホログラフィック構成要素を効率的に記録するためにホログラフィックセットアップに露出しながら、ホログラフィック材料の薄膜を日光に露出させること112を含む。図5a~図5dを参照すると、ホログラフィック構成要素の記録は、ホログラフィック材料の薄膜F上で基準ビームRBと照明ビームIBとの間に干渉を生成することによって実行される。2つのビームは、同じ光源Sからのものであり、ビーム間の干渉を可能にする。アパーチャ、ビームの向き、ビーム間の距離、ソースの波長、及びビームの数(少なくとも2つであるが、3つ以上であってもよい)により、記録される光学機能を定義することができる。特に、基準ビームの空間構成は、レンズがフレームに嵌め込まれた後、ホログラフィック構成要素を照明するのに実施される空間構成(向き、距離、幅、すなわち、レンズに投影されるゾーンの形状及びサイズ等)を反映する。
【0067】
記録セットアップは、基準ビームRB及び照明ビームIBの少なくとも一方が、ホログラフィック材料薄膜に達する前、低複屈折材料層を伝播するように構成し得る。上述したように、ホログラフィック構成要素の支持体としての低複屈折材料層の使用は、縞の可視性が上がるという点で、複屈折材料層の使用と比較して、記録されるホログラフィック構成要素のよりよい品質を提供する。
【0068】
しかしながら、ホログラフィック材料とホログラフィック材料を支持する材料の層との間の境界面でのビームの一方の反射に起因して、寄生ホログラムを生み出すいくらかの寄生反射が生じ得る。これはまた、記録セットアップが、基準ビームRB及び照明ビームIBがホログラフィック材料の薄膜に達する前に低複屈折材料層を伝播しないように構成される場合にも当てはまる。
【0069】
低複屈折層の使用は、ホログラフィック材料を支持する材料の層が複屈折である場合のように2つの直交する偏光に向けて設計される反射防止コーティングよりも効率的で設計が容易であり得る、特定の偏光に向けて設計し得る反射防止コーティングを使用できるようにする。
【0070】
さらに、寄生反射は、基準ビーム及び照明ビームの少なくとも一方が、適切な偏光でブルースター角に近い角度でホログラフィック材料に入る構成を選ぶことにより、より容易に低減することもできる。光源S(通常、レーザ)によって発せられた光は、例えば光ファイバによって低複屈折材料層11に案内され、光ファイバは、シングルモードファイバ、好ましくは偏光維持(PM)シングルモードファイバ、ラージコアエリアファイバ、好ましくはPMラージコアエリアファイバを含むことができる。ビームスプリッタは、ビームを基準ビーム及び照明ビームに分割するのに使用される。
【0071】
単焦点レンズ、二焦点レンズ及び累進多焦点レンズ等の多焦点レンズから選択される1つ又は複数のレンズ、並びに任意選択的に平面鏡を使用して、例えば、記録されるホログラフィック構成要素の構成に従って照明ビーム及び基準ビームを成形し得る。照明ビーム及び/又は基準ビームの成形に、例えば、可変焦点距離を有するレンズ、空間光変調器、及び適応ミラー等の他の手段を使用してもよい。この構成は、好ましくは、
レンズ及びホログラフィック構成要素が装用者に合うように、装用者のデータを考慮に入れる。これらは、例えば、瞳孔間距離、目の回転中心位置、処方箋、機能の好み等を含む。このリストは網羅的ではない。
フレームのジオメトリ(レンズに対する画像源を搬送する幅の位置、レンズのサイズ)、アイトラッカー等埋め込まれる可能な付属品等を含むフレームデータ。このリストは網羅的ではない。
レンズの屈折力及びその光学特性(屈折率、透過率、拡散等)を含む補助レンズデータ。このリストは網羅的ではない。
ベースレンズの構成(埋め込まれる機能)及びその光学特性等を含むベースレンズデータ。このリストは網羅的ではない。
ディスプレイデータ:ディスプレイのタイプ(OLED、LCD、LCOS等の画面、LED、レーザ、ダイオードレーザ、OLED等のコヒーレント又は非コヒーレントの光源、光源と画面との組み合わせ)、所望の仕様(コリメータ、フォーカス、デフレクタ等)で画像を投影するアクティブ又はパッシブ光学システムの存在、ディスプレイの幾何学的寸法、ディスプレイの物理的特徴(例えば帯域幅)等。このリストは網羅的ではない。
【0072】
ホログラフィック構成要素20が、HMDの画像源によって生成された仮想画像を反射するように構成されたミラーである幾つかの実施形態では、記録の光学設備は、
基準ビームRBが、上記ホログラフィック構成要素の照明に使用される画像源のビームをシミュレートして、フレーム装用時、仮想画像の表示を装用者により可視化できるようにし、
照明ビームIBが、
フレーム装用時、装用者による表示仮想画像の可視化の距離、及び/又は
フレーム装用時、装用者による上記表示画像の可視化の方向、及び/又は
フレーム装用時、装用者による上記表示仮想画像の可視化に向けたホログラフィックミラーのエリア数
を定義するように構成される
よう構成される。
【0073】
HMDでの使用が意図されたホログラフィックミラーの記録の例示的な実施形態を図5a~図5eに示す。図5aは、平面鏡を記録するのに使用されるセットアップを提示する。この場合、基準ビームRBは、層11の後に配置される平面鏡Mにより反射される照明透過ビームである。
【0074】
図5bは、オフアクシス平面鏡の記録に使用されるセットアップを提示する。この場合、照明ビームIBはコリメートビームであり、基準ビームRBは、ホログラフィックミラーに対する画像源ISの後の位置に対応するオフアクシス位置から生じる別のコリメートビームである。この実施態様は、SLM(空間光変調器)又はライトフィールドディスプレイLFDである光源に適する。
【0075】
図5cは、オフアクシス湾曲ミラーを記録するセットアップを提示する。この場合、照明ビームIBはコリメートビームであり、基準ビームRBは、例えば、ディスプレイ又は画像源の特性を有し、所望の位置、フォーカス、及び角度で薄膜Fに到達する。この実施態様は、画像源として画面を備えたHMD及び/又は瞳孔と画像源との間に光学共役を必要とするHMDに適する。
【0076】
図5dは、ディスプレイ又は画像源を視覚化するオフアクシスミラー及び外部閲覧者用の機密フィルタの両方を記録するセットアップを提示する。その場合、照明ビームIBはコリメートビームであり、第1の基準ビームRB1はディスプレイ及び画像源の特性を有し、所望の位置、フォーカス、及び角度で層11に入り、第2の基準ビームRB2は、層11の後に配置された平面鏡Mによって反射される照明コリメートビームである。
【0077】
他のタイプの光学機能用に他のセットアップを形成することもできる。
【0078】
実施形態によれば、ベースレンズ10は、ホログラフィック構成要素が記録される層11によってのみ形成される。別の実施形態によれば、ベースレンズ10は、少なくとも1つの追加の層14及び/又は追加のコーティング16を更に備える。
【0079】
したがって、レンズ1の製造100は任意選択的に、例えばベースレンズ10が、先に列記した機能(例えば、着色、フォトクロミック、エレクトロクロミック、偏光機能等)等の他の光学機能を組み込むために、低複屈折材料層11を任意の追加の層14に組み付けるステップ113も含む。このステップは、追加の層に組み込まれる機能のタイプに従って別様に実行することができる(例えば、コーティングは浸漬、スピンコーティング等によって実行し得る)。
【0080】
ステップ110及び113の実施順序は、ベースレンズで実施される機能に従って様々であることができる。
【0081】
第1の実施形態によれば、低複屈折材料層11を追加の層14(フォトクロミック又はエレクトロクロミックセル15又はその層を含むことができる)に組み付けるステップ113は、ホログラフィック構成要素の記録110に先立って実施し得る。これは例えば、追加の層が、拡張現実用途で偏光、フォトクロミック、エレクトロクロミック、又は濾波機能を提供する層である場合であることができる。その場合、HMDの画像源からの仮想画像と装用者の環境からの画像との間のコントラストを強化するために、追加の層は好ましくは、ホログラフィックミラーの記録に先立って、層11の正面に提供される。
【0082】
別の実施形態によれば、ステップ113は、ホログラフィック構成要素の記録110後に実行し得る。
【0083】
方法は、低複屈折材料層11を補助レンズ30に組み付けるステップ120も含む。この組み付け120は、接着、鋳造、クリッピング、積層造形、例えば、補助レンズ30を形成する材料のボクセルをベースレンズに直接堆積することにより実行することができる。
【0084】
別の実施形態では、ステップ120は、バック射出プロセスを使用して実行し得、その間、ベースウェーハ10は鋳型に置かれ、射出材料が、補助レンズが形成されるべき面、例えば背面に提供される。
【0085】
実施形態では、組み付けステップ120は、低複屈折材料層11を追加の層14に組み付けるステップ112の後に実行し得る。
【0086】
ステップ120は、ホログラフィック構成要素を低複屈折材料層11に記録するステップ110の後又は例えば、補助レンズ30が低複屈折であり、屈折力を提供し、ホログラフィック構成要素の構成が上記屈折力を考慮する必要がある場合、前に実行し得る。その場合、補助レンズ30は、ホログラフィック構成要素の記録セットアップの一部である。
【0087】
方法は、例えば、反射防止コーティング又はハード多層コーティング等の少なくとも1つのコーティング16を堆積させるステップ130も含む。コーティングは、低複屈折材料層11又はもしあれば追加の層14の何れかのベースレンズ10の主面(すなわち、正面又は背面)に堆積し得る。
ステップ130は、その場合、ホログラフィック構成要素20の記録前又はこのステップ後に実行することができる。
ステップ130は、ベースレンズ10を補助レンズ30に組み付けた後、実行されてもよく、その場合、得られたレンズ1の正面又は背面にコーティング16を堆積させることを含む。
【0088】
一例によれば、ベースレンズ10は、ホログラフィック構成要素20の記録前に堆積した反射防止コーティング16を含み得、いかなるゴースト反射もなくすことにより記録を改善する。ホログラフィック材料を記録するステップ111は好ましくは80°Cで実行されるため、この温度に耐えることが可能な反射防止コーティングが好ましくは選択される。
別の例によれば、ホログラフィック構成要素の記録後、ハード多層コーティングを提供し得、その理由は、HMCの堆積プロセスは、約100℃~120℃での加熱ステップを必要とし、そのような温度をホログラフィック構成要素が耐えるためである。
【0089】
別の例によれば、ハード多層コーティング及び/又は反射防止コーティングは、ベースレンズ10を補助レンズ30に組み付けた後に得られるレンズの正面又は背面の何れかに堆積し得る。
【0090】
図6には、ホログラフィック構成要素20を低複屈折材料層11上に形成するステップ110と、光学機能を組み込んだ追加の層14に上記層を組み付けるステップ112と、次にそうして得られたベースレンズを補助レンズに組み付けるステップ120と、最後に、そうして得られた眼用レンズに少なくとも1つのコーティング16を堆積させるステップ130とを含む方法の非限定的で例示的な実施態様が示される。
【0091】
低複屈折材料層11に記録されたため高品質なホログラフィック構成要素20を備えるとともに、ベースレンズ又は補助レンズの何れかによって提供し得る任意の適した光学機能を備える最終的なレンズが得られる。
【符号の説明】
【0092】
1 眼用レンズ
5 ヘッドマウントディスプレイデバイス(HMD)
10 ベースレンズ
11 低複屈折材料層
12 正面
13 背面
14 追加の層
15 偏光セル
16 コーティング
20 ホログラフィック構成要素
21 正面
22 背面
30 補助レンズ
50 フレーム
51 画像源
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【外国語明細書】