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特開2024-91929折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムとその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091929
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムとその用途
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240628BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240628BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08J7/046
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071875
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2019521489の分割
【原出願日】2019-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2018080327
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】河合 究
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正太郎
(57)【要約】
【課題】量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイと、そのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器を提供することであり、前記のための表面保護フィルム用ポリエステルフィルムや表面保護フィルム用ハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】シート状に切断されたポリエステルフィルムであって、厚みが10~75μmであり、フィルムの極限粘度が0.55~0.65dl/gであり、少なくとも切断端部の1辺において切断面の盛り上がり量が35μm以下である折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。前記折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムを用いたハードコートフィルム、折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に切断されたポリエステルフィルムであって、全光線透過率は85%以上であり、
ポリエステルフィルムの屈曲方向に切断した少なくとも切断端部の1辺において、切断端部の盛り上がり量が35μm以下である折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
(ここで、屈曲方向とは、ポリエステルフィルムを折りたたむ際の折りたたみ部と直交する方向をいう。)
【請求項2】
ヘイズが3%以下であり、
ポリエステルフィルムの屈曲方向に切断した両切断端部の盛り上がり量が35μm以下である請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
厚みが10μm以上である、請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
極限粘度が0.55dl/g以上である、請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
レーザー光を使用してポリエステルフィルムの端部が切断されてなる請求項に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、厚みが1~50μmのハードコート層を有する折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム。
【請求項7】
JIS K5600-5-4:1999に準拠して750g荷重で測定したハードコート層の鉛筆硬度がH以上である請求項に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルムが、ハードコート層を表面に位置させるように表面保護フィルムとして配置された折りたたみ型ディスプレイであって、折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である折りたたみ型ディスプレイ。
【請求項9】
折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部を介して連続した単一のハードコートフィルムが配されている請求項に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
【請求項10】
請求項に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム、折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム、折りたたみ型ディスプレイ、及び携帯端末機器に関し、繰り返し折りたたんでも、表面に位置しているフィルムの変形による画像の乱れの起こり難い折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器、及び前記の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム及びハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末機器の薄膜軽量化が進み、スマートフォンに代表される携帯端末機器が広く普及している。携帯端末機器には様々な機能が求められている反面、利便性もとめられている。そのため普及している携帯端末機器は、簡単な操作は片手ででき、さらに衣服のポケットなどに収納することが前提であるため6インチ程度の小さな画面サイズとする必要がある。
【0003】
一方、7インチ~10インチの画面サイズであるタブレット端末では、映像コンテンツや音楽のみならず、ビジネス用途、描画用途、読書などが想定され、機能性の高さを有している。しかし、片手での操作はできず、携帯性も劣り、利便性に課題を有する。
【0004】
これらを達成するため、複数のディスプレイをつなぎ合わせることでコンパクトにする手法が提案されているが(特許文献1)、ベゼルの部分が残るため、映像が切れたものとなり、視認性の低下が問題となり普及していない。
【0005】
そこで近年、フレキシブルディスプレイ、折りたたみ型ディスプレイを組み込んだ携帯端末が提案されている。この方式であれば、画像が途切れることなく、大画面のディスプレイを搭載した携帯端末機器として利便性よく携帯できる。
【0006】
ここで、従来の折りたたみ構造を有しないディスプレイや携帯端末機器については、そのディスプレイの表面はガラスなど可撓性を有しない素材で保護することができたが、折りたたみ型ディスプレイにおいて、折りたたみ部分を介して一面のディスプレイとする場合には、可撓性があり、かつ、表面を保護できるハードコートフィルムなどを使用する必要がある。しかしながら、折りたたみ型ディスプレイでは、一定の折りたたみ部分に当たる箇所が繰り返し折り曲げられるため、当該箇所のフィルムが経時的に変形し、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。
【0007】
そこで、部分的に膜厚を変える手法も提案されているが(特許文献2参照)、量産性に乏しい問題がある。
【0008】
上記のような表面を保護できるハードコートフィルムには、繰り返しの折り曲げによってクラックや著しい折れ跡が発生しないことが求められる。一定厚みのフィルムを折り曲げた場合、折り曲げた内側面には圧縮応力が、折り曲げた外側面には引張応力がかかる。同じ屈曲半径に折り曲げた場合、フィルム厚みが厚いと内面、外面とも折り曲げによる変形量が大きくなり、圧縮応力、引張応力ともに大きくなるため、繰り返しの耐屈曲性においては不利になりやすい。
【0009】
耐屈曲性に及ぼすこのフィルム厚みの影響は、フィルムの平均的な厚みのみならず、局所的な場所、例えばフィルム切断面の端部においても同様のことが言える。すなわち、切断部の厚みが局所的に盛り上がって厚くなると、繰り返しの折り曲げに対してクラックや変形が発生しやすくなり、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-228391号公報
【特許文献2】特開2016-155124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような従来のディスプレイの表面保護部材が有する課題を解決しようとするものであって、量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイと、そのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器を提供できるようにするため、折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムや表面保護フィルム用ハードコートフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. シート状に切断されたポリエステルフィルムであって、厚みが10~75μmであり、フィルムの極限粘度が0.55~0.65dl/gであり、少なくとも切断端部の1辺において切断面の盛り上がり量が35μm以下である折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
2. ポリエステルフィルムの屈曲方向に切断した両端部における切断面の盛り上がり量が35μm以下である上記第1に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
(ここで、屈曲方向とは、ポリエステルフィルムを折りたたむ際の折りたたみ部と直交する方向をいう。)
3. レーザー光を使用してポリエステルフィルムの端部が切断されてなる上記第1又は第2に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
4. 上記第1~第3のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、厚みが1~50μmのハードコート層を有する折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム。
5. JIS K5600-5-4:1999に準拠して750g荷重で測定したハードコート層の鉛筆硬度がH以上である上記第4に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム。
6. 上記第4又は第5に記載の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルムが、ハードコート層を表面に位置させるように表面保護フィルムとして配置された折りたたみ型ディスプレイであって、折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である折りたたみ型ディスプレイ。
7. 折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部を介して連続した単一のハードコートフィルムが配されている上記第6に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
8. 上記第6又は第7に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムやハードコートフィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、そのポリエステルフィルムやハードコートフィルムが、繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさないため、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないものである。前記のような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における折りたたんだ際の屈曲半径の測定箇所を示すための模式図である。
図2】本発明における折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムの屈曲方向を示すための模式図である。
図3】本発明における切断端部の切断面の盛り上がり量を説明するための模式図である。
図4】本発明におけるポリエステルフィルムの屈曲方向に切断した端部を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ディスプレイ)
本発明で言うディスプレイとは、表示装置を全般に指すものであり、ディスプレイの種類としては、LCD、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED、FEDなどあるが、折曲げ可能な構造であるLCDや、有機EL、無機ELが好ましい。特に層構成を少なくすることができる有機EL、無機ELが特に好ましく、色域の広い有機ELがさらに好ましい。
【0016】
(折りたたみ型ディスプレイ)
折りたたみ型ディスプレイは、連続した1枚のディスプレイが、携帯時は2つ折りにすることでサイズを半減させ、携帯性を向上させた構造となっていることが好ましい。また同時に薄型、軽量化されているものが望ましい。そのため、折りたたみ型ディスプレイの屈曲半径は5mm以下が好ましく、3mm以下がさらに好ましい。屈曲半径が5mm以下であれば、折りたたんだ状態での薄型化が可能となる。屈曲半径は小さいほど良いと言えるが、0.1mm以上で構わず、0.5mm以上であっても構わない。1mm以上であっても、折りたたみ構造を有しない従来のディスプレイに対比して実用性は十分良好である。折りたたんだ際の屈曲半径とは、図1の模式図の符号11の箇所を測定するもので、折りたたんだ際の折りたたみ部分の内側の半径を意味している。なお、後述する表面保護フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの折りたたんだ外側に位置していてもよいし、内側に位置していてもよい。言い換えれば、折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ外側に位置させてもよいし、内側に位置させてもよい。
【0017】
(有機EL)
有機ELディスプレイの一般的な構成は、電極/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/透明電極からなる有機EL層、画質を向上させるための位相差板、偏光板からなる。
【0018】
(タッチパネルを有する携帯端末機器)
タッチパネルを有する携帯端末機器に有機ELディスプレイを用いた場合、有機ELディスプレイの上部、もしくは有機EL層/位相差板間にタッチパネルモジュールを配置する。この際、上部から衝撃が加わると、有機EL、タッチパネルの回路が断線するおそれがあるため、表面保護フィルムが必要であり、表面保護フィルムとしてディスプレイの前面に配されるフィルムについて、ディスプレイの少なくとも表面側にはハードコート層が積層されたものであることが好ましい。
【0019】
(折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム)
表面保護フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光透過性が高く、ヘイズが低いフィルムであれば使用することができが、その中でも耐衝撃性が高く、十分な鉛筆硬度を有するポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、安価で製造できるポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0020】
本発明において、ポリエステルフィルムは、1種類以上のポリエステル樹脂からなる単層構成のフィルムでもよいし、2種類以上のポリエステルを使用する場合、多層構造フィルムでも良いし、繰り返し構造の超多層積層フィルムでもよい。
【0021】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0022】
ポリエステルフィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール、p-キシレングリコールなどの芳香族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、平均分子量が150~20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の質量比率は20質量%未満である。20質量%未満の場合には、フィルム強度、透明性、耐熱性が保持されて好ましい。
【0023】
また、ポリエステルフィルムの製造において、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.55~0.75dl/gの範囲であることが好ましい。極限粘度が0.55dl/g以上であると、得られたフィルムの耐衝撃性が向上し、外部衝撃による内部回路の断線が発生しづらく好ましい。また、繰り返し屈曲された場合の変形の小ささにも寄与し好ましい。一方、極限粘度が0.75dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。
【0024】
フィルムが単層構成、積層構成であることに関わらず、フィルムの極限粘度は、0.55dl/g以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.58dl/g以上である。0.55dl/g以上あれば、疲労耐性を付与することができ十分に耐屈曲性の効果が得られる。一方、極限粘度が0.65dl/g以下であるフィルムは、操業性よく製造でき好ましい。さらに、レーザー光によるフィルムの溶断において、切断面の盛り上がり量を低減することができて好ましい。
【0025】
ポリエステルフィルムの厚みは、10~75μmであることが好ましく、25~75μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると鉛筆硬度向上効果が見られ、厚みが75μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムの表面は、平滑であっても多少の凹凸を有していてもよいが、ディスプレイの表面カバー用途に用いられることから、凹凸由来の光学特性低下は好ましくない。ヘイズとしては、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズの下限は小さいほどよいが、0.1%以上でも構わず、0.3%以上でも構わない。
【0027】
前記のようにヘイズを低下させる目的からはあまりフィルム表面の凹凸は大きくない方がよいが、ハンドリング製の観点から程度な滑り性を与えるために、凹凸を形成する方法としては、表層のポリエステル樹脂層にフィラーを配合したり、フィラー入りのコート層を製膜途中でコーティングすることで形成することができる。
【0028】
基材フィルムに粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0029】
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
【0030】
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
【0031】
また、ポリエステルフィルムは、全光線透過率の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
【0032】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムの表面に、ハードコート層などを形成する樹脂との密着性を向上させるための処理を行うことができる。
【0034】
表面処理による方法としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が挙げられ、特に限定なく使用できる。
【0035】
また、易接着層などの接着向上層により、密着性を向上させることもできる。ポリエステルフィルム表面に易接着層を設ける方法は、このポリエステルフィルム製造工程の任意の段階で、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、前記易接着層を形成することができる。例えば、一軸配向PETフィルムを得た後に易接着層をポリエステルフィルムの片面に形成させても良い。塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2~35質量%であることが好ましく、特に好ましくは4~15質量%である。
【0036】
易接着層としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用でき、またこれら易接着層の密着耐久性を向上させるために架橋構造を形成させてもよい。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。また易接着層表面に滑り性を付与するために、滑剤粒子を含むこともできる。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の無機粒子、アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0037】
ポリエステルフィルム表面に易接着層を設ける方法は、ポリエステルフィルムの製造工程の任意の段階で、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、前記易接着層を形成することができる。例えば、一軸配向PETフィルムを得た後に、公知の任意の方法のコーティング手法により形成できる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、リバースキスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。本発明において、最終的に得られる易接着層の厚みは0.03~0.20g/m2であることが好ましい。0.03g/m2未満では、接着性が低下し、0.20g/m2より厚いと、ブロッキング性、滑り性が低下するので好ましくない。
【0038】
上述のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程を経て、製造することができる。フィルムの強度や寸法安定性、耐熱性を持たせるために、延伸は二軸方向に行い、二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが好ましい。
【0039】
次に、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。また、単層構成、多層構成など層数を限定するものではない。
【0040】
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。単層の場合は1台の押し出し機でよいが、多層構成のフィルムを製造する場合には、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成する複数のフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成することができる。
【0041】
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃程度に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
【0042】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
【0043】
折りたたんだ際の屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)の延伸倍率は屈曲方向より大きいことがフィルムの力学的特性から好ましく、屈曲方向と直交する方向の延伸倍率としては2.5~5.0倍を例示できる。延伸倍率を2.5倍以上にすることで安定した生産性が得られ、延伸倍率を5.0倍以下にすることで良好な耐屈曲性が得られるので好ましい。ここで、屈曲方向とは、図2のポリエステルフィルム(符号2)上の符号22に示すように、折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルムの用途において想定される折りたたみ部(符号21)と直交する方向を指している。屈曲方向はフィルムの長手方向、幅方向いずれにも限定されない。
【0044】
本発明においては、未延伸ポリエステルシートを長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の延伸倍率を1.0~3.4倍とすることが好ましく、1.4~2.0倍が耐屈曲性の観点ではさらに好ましい。そして、当該延伸方向は前記の屈曲方向であることが好ましい。延伸倍率が1.4倍以上であるとハードコート塗工時の変形がないため好ましく、延伸倍率が2.0倍以下であると良好な耐屈曲性が得られるので好ましい。延伸倍率が3.0~3.4倍であると安定した生産性の点ではより好ましい。延伸温度としては、75~120℃が好ましく、75~105℃が更に好ましい。なお延伸時の加熱方法は、熱風加熱方式、ロール加熱方式、赤外加熱方式など従来公知の手段を採用することができる。延伸温度を75~120℃にすることで、上記延伸倍率での延伸による大きな厚みムラを防ぐことができる。
【0045】
具体的には、例えば、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを80~130℃に加熱したロールで長手方向に1.0~3.4倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80~180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に2.5~5.0倍に延伸する。引き続き、180~250℃の熱処理ゾーンに導き、1~60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に1~12%の弛緩処理を施しても良い。
【0046】
(ハードコート層)
折りたたみ型ディスプレイの表面に位置させてディスプレイを保護するポリエステルフィルムは、その表面にハードコート層を有していることが好ましい。ハードコート層は、ポリエステルフィルム上のディスプレイ表面側に位置させてディスプレイにおいて用いられることが好ましい。ハードコート層を形成する樹脂としては、可視光線を透過するものであればよいが、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、シロキサン系樹脂、有機無機ハイブリッド系樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0047】
紫外線、電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなど、(メタ)アクリレート系官能基を持つ化合物やアリル基やビニル基などの不飽和二重結合を有する官能基を持つ化合物が挙げられる。また、ハードコート層の硬度を上げるために多官能モノマーを併用してもよい。多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが例示される。上記材料は単独で使用してもよいし、2種類以上の材料を混合して用いることもできる。
【0048】
活性エネルギー線が紫外線の場合は、光重合開始剤を加えることが好ましい。光重合開始剤には、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。紫外線ラジカル重合開始剤の例として、アルキルフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、チタノセン類、オキシ酢酸フェニル類が挙げられ、単独または2種以上混合して使用しても良い。さらに具体的な例としては、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p-イソプロピル-α-ヒドロキシイソブチルフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。光重合開始剤の添加量は活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が0.1質量部以上であると、ハードコート層の硬度が高くでき好ましい。また、添加量が30質量部以下であると、ハードコート層が黄変するおそれがなく、ハードコート層の硬化も十分であり好ましい。
【0049】
さらにハードコートの性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、消泡剤、充填剤、溶剤、防眩剤、反射防止剤、無機フィラーや有機フィラーなどを挙げることができる。
【0050】
(ハードコートフィルムの製造方法)
ハードコート層を形成するために、上記化合物を所定量の溶剤に分散または溶解した塗布液をポリエステルフィルムに塗布する。有機溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類が挙げられる。また、使用する有機溶媒は、沸点が60~180℃の範囲の溶媒を選択することが好ましい。沸点が60℃以上の有機溶媒を用いることにより、塗布時の塗布液の固形分濃度の変化を抑え、塗布厚みを安定化させることができる。180℃以下とすることにより、乾燥時に発生する熱シワによるプラスチック基材フィルムの平面性の悪化を抑制できる。
【0051】
塗布方法としては、マイヤーバー、グラビアコート、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーターなど特に限定なく使用できる。塗布液をポリエステルフィルムに塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が速い熱風乾燥が好ましい。このような迅速な乾燥を行なうことにより、揮発性成分をハードコート層内に略均一に分散させたまま、ハードコート層を形成することができ、高度なカールの抑制のために好適である。
【0052】
ハードコート層の硬化方法としては、紫外線、電子線などの活性エネルギー線や、熱による硬化方法など使用できるが、フィルムへのダメージを軽減させるため、紫外線や電子線などによる硬化方法が好ましい。紫外線での照射は、通常、塗布層側から行うが、ポリエステルフィルムとの密着性を高めるため、ポリエステルフィルム面側から行ってもよい。紫外線は、通常波長300~400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ-ジョンHランプ、キセノンランプなどから照射される。その照射量は下限が50mJ/m2以上、より好ましくは100mJ/m2以上、上限が1000mJ/m2以下、より好ましくは800mJ/m2以下である。照射量が50mJ/m2以上であると、ハードコート層の硬度が高くなり好ましい。一方、照射量が1000mJ/m2以下であると、走行速度が遅くなり過ぎず、生産性の上で有利となる。
【0053】
硬化後のハードコート層の膜厚としては、1~50μmが好ましい。1μmより厚ければ十分に硬化し、良好な鉛筆硬度が得られる。また厚みを50μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。より好ましくは3~45μm、更に好ましくは5~40μmである。
【0054】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、B以上が好ましく、H以上が更に好ましく、2H以上が特に好ましい。B以上の鉛筆硬度があれば、容易に傷がつくことはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが10H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
【0055】
(フィルムの切断)
長尺のポリエステルフィルム、またはハードコートフィルムを所望のシート状の形状に切断する方法としては、例えば、ナイフを用いた機械的切断方法、及び、レーザー光を用いたレーザー切断方法が挙げられる。これらの中でも、レーザー光による切断方法は、切断カスが発生し難いことから好ましい。ポリエステルフィルムにレーザー光を照射すると、フィルムに含まれる各層において、レーザー光を照射された領域がレーザー光のエネルギーによって加熱されて、熱溶解又はアブレージョンを生じる。そのため、フィルムは、レーザー光を照射された領域において切断される。
【0056】
レーザー発振器としては、CO2レーザー、エキシマレーザー(ArF,KrF,XeCl,XeF)、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、ファイバーレーザーなどを用いることができる。レーザー発振器は連続発振のレーザー発振器でもよく、またはパルス発振のレーザー発振器でもよい。上記のうち、CO2レーザー発振器はエネルギー効率が高く、また波長が長いので材料に熱をかけて加工でき、ポリエステルフィルムの様な透明材料の加工にも適しているので好ましい。
【0057】
レーザーを照射すると同時に照射点にアシストガスを吹き付けることもできる。アシストガスを吹き付けることにより、切断時に発生した溶融物などのポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムへ付着を防止することができる。またポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムの熱による損傷を防止できる。このようなアシストガスとしては、ドライエア、窒素、アルゴンなどのレーザー光と不活性のガスであれば良い。
【0058】
レーザー光の出力は、1W以上30W未満が好ましく、3W以上25W以下がより好ましい。出力が1Wよりも小さいと切断速度が遅く生産性が悪くなったり、切断自体ができなくなる恐れがある。出力が30Wより大きいと、裁切断面の幅が広くなったり、過剰な加熱によりポリエステル樹脂の溶融量が増大し、切断端面に熱溶融した樹脂が積層されて端部が盛り上がりことで切断面の厚みが局所的に大きくなるので好ましくない。また切断面以外にも熱的なダメージが生じたり、分解物の生成が多くなり好ましくない。高出力のレーザーの場合は出力を下げることで対応することができる。パルスレーザーの場合では、パルス幅(ns)やパルス周波数(Hz)の制御によって平均出力を下げることができる。切断を行う速度は、3m/以上が好ましく、5m/分以上がより好ましく、10m/分以上であることが生産性の面で好ましい。熱的なダメージを抑えると同時に切断速度を上げたいときは、レーザー出力を下げた状態でレーザーを繰り返し照射すると良い。
【0059】
ポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムをレーザー光によって切断すると、通常は、その切断面の周囲にレーザー処理による影響部が形成される。ここで、レーザー処理による影響部とは、レーザー光による切断時に発生した熱によって、フィルムを構成する樹脂が変形した部分をいい、切断面の厚みが薄くなること、および、切断面の厚みが大きくなることの両方が含まれる。ハードコートフィルムの場合は基材のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂が変形しやすい。切断面に熱溶融した樹脂が積層されて端部が盛り上がりことで切断面の厚みが大きくなる場合がある。切断端部の盛り上がり量は、切り出した所望形状(通常、正方形や長方形である場合が多い)の少なくとも1辺(もしも、円形や楕円形に切り出す場合があれば、その外周が1辺に相当する)において35μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらにこのましくは15μm以下である。切断端部の盛り上がり量を35μm以下に小さくすることで、寸法変化やシワの発生を抑制できるだけでなく、繰り返し折り曲げて使用される場合に端部の盛り上がり部に変形応力が集中することを抑制できるので、フィルムの曲げ変形の悪化やクラックの発生、破断を抑制することができる。そして、繰り返し折りたたんだ後の変形を起こしづらいため、当該切断端部の盛り上り量が小さいハードコートフィルムを表面保護フィルムとして用いたディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないため好ましい。断端部の盛り上り量は0μmであることが理想的であるが、実際には下限は1μm以上で構わず、2μm以上であっても構わない。ここで、切断端部の盛り上がり量とは、図3のハードコートフィルム(符号3)上の切断端部(符号33)において、ハードコートフィルムの最も厚い部分の厚み(符号36)から、レーザー光による変形の影響を受けていないハードコートフィルムの厚み(符号35)を差し引いた厚み(符号37)を指す。
【0060】
図4は、折りたたんだハードコートフィルムの状態を模式図で示したものであり(符号4)、ハードコート層は、折りた
たんだ内側表面に位置していても、外側表面に位置していても、両表面に存在しても構わない。レーザー光によって所望の形状に切り出したシート状フィルムにおいて、切断面の盛り上がり量が35μm以下である切断辺は、折りたたみの屈曲方向に切断した端部(図4の符号41)に対応していることが好ましい。符号41では図示し切れていないが、折りたたみの屈曲方向に切断した端部は、通常、切断面の盛り上り部を有する場合が多い。また、符号41は片端であるが、図示しない反対側端部との両端の切断面の盛り上がり量が共に35μm以下であることが特に好ましい。ここで、屈曲方向とは、ハードコートフィルムを折りたたむ際の折りたたみ部と直交する方向をいう(図4の符号42)。
【0061】
ポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムを切断する場合、通常は、支持面を有する支持体の支持面でフィルムを支持した状態で、フィルムにレーザー光を照射する。支持体としては、板状の支持基板のように剛性を有する部材を用いてもよく、フィルム状の支持フィルムのような可撓性を有する部材を用いてもよい。
【0062】
ポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムをレーザー光で切断する際、通常は、レーザー光がフィルムの表面を所望の線に沿って走査するように、レーザー光をフィルムに照射する。ここで、前記所望の線は、実際に描画された線でもよいが、通常は実際には描画されていない仮想の線を設定する。これにより、フィルムにレーザー光が当たる点が、フィルムの表面を所望の線に沿って移動するので、切断したい形状にフィルムを切断できる。この際、レーザー光にフィルムの表面を走査させるために、レーザー光の照射装置を移動させてもよく、フィルムを移動させてもよく、レーザー光とフィルムの両方を移動させてもよい。フィルムにレーザー光が当たる点がフィルムの表面を移動する際の移動速度は、レーザー光の出力、フィルムの厚み等の条件に応じて、任意に設定することができる。
【0063】
ポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムにレーザー光を照射する面はポリエステルフィルム基材面、ハードコート面のいずれに照射してもよい。また、レーザー光を照射する面および/またはレーザー光を照射する面とは反対面にカバーフィルムを積層し、ポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムとカバーフィルムとを一体にしてレーザー光にて切断することもできる。該カバーフィルムはレーザー光による切断後に除去する。カバーフィルムを積層してレーザー光を照射することで、切断時に発生した溶融物などのポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムへ直接付着することを防止することができる。またポリエステルフィルムまたはハードコートフィルムの熱による損傷を防止することができる。またレーザー強度など切断条件と適切に組み合わせることにより、切断端面に熱溶融した樹脂の盛り上がり部の形成を抑制することができるので好ましく用いることができる。
【0064】
上記カバーフィルムの基材としては特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、フッ素樹脂、ポリ乳酸、セルロース系等の樹脂フィルムなどを挙げることができる。厚みは1~50μmが用いられる。また上記カバーフィルムの片面に粘着層を設けることもできる。粘着層の材料としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系、ビニル系等の粘着剤を使用することができ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよい。
【実施例0065】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0066】
(1)切断端部の盛り上がり量
切断されたフィルム端部に対して、垂直方向にカッター刃で切り出した端面をミクロトームにて表面を均質にした。この切り出し端面をデジタルマイクロスコープRH-2000((株)ハイロックス製)にて600倍に拡大して観察し、フィルムの厚みとフィルム端部の最も厚い部分の厚みを計測し、両者の差を切断端部の盛り上がり量と定義した。ハードコートフィルムの場合で例示すると、図3中の符号37が端部の切断断面の盛り上がり量を指す。フィルム端部の1辺につき任意の位置で5点測定し,その平均値をフィルム端部における切断断面の盛り上がり量とした。フィルムの屈曲方向に切断した両端部について、それぞれ測定した場合には、両辺の切断部の盛り上がり量のそれぞれの平均値を表1に記載した。
【0067】
(2)フィルム厚み
フィルムの任意の3箇所より5cm角サンプル3枚を切り取った。電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用い、一枚あたり各5点(計15点)測定し、平均値をフィルム厚みとした。
【0068】
(3)ハードコート層厚み
ハードコートフィルムの任意の3ヶ所より切片を切り出した。切片1枚当たり1辺の端面表面をミクロトームにて均質にした。この端面をデジタルマイクロスコープRH-2000((株)ハイロックス製)にて600倍に拡大して観察し、1端面あたり各5点(計15点)のハードコート層の厚みを測定し、平均値をハードコート層厚みとした。
【0069】
(4)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの該当するポリエステル層を削り取ることで、各層単体の極限粘度を評価した。
【0070】
(5)耐屈曲性
ポリエステルフィルムを200mm(屈曲方向)×50mm(折りたたみ部の方向)の大きさに切り、測定用サンプルを作成した。厚み5mmのガラス板2枚の端部に各厚みのスペーサーを配置し空間を作り、フィルムをはさみ10秒間保持した。その直後に、フィルムを蛍光灯の光を反射させ、折りたたみ部を観察し、折りたたみ痕が付かなかった間隔を記録した。
○ :折りたたみ痕が付かなかった間隔が6.5mm未満。
△ :折りたたみ痕が付かなかった間隔が6.5mm以上7.0mm未満
× :折りたたみ痕が付かなかった間隔が7.0mm以上。
【0071】
(6)繰り返し耐屈曲性
幅方向(折りたたみ部の方向)50mm×流れ方向(屈曲方向)100mmの大きさのサンプルを用意する。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、屈曲半径3mmを設定し、1回/秒の速度で、5万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は50mm×80mmとした。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。
○:サンプルの変形がないか又は変形があっても、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm未満。
△:サンプルに変形があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm以上5mm未満。
× :サンプルに折跡があるか、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
【0072】
(7)鉛筆硬度
作成したハードコート付きポリエステルフィルムをJIS K 5600-5-4:1999に準拠し、荷重750g、速度0.5mm/sで測定した。
【0073】
(ポリエチレンテレフタレートペレットAの調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。
次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットAを得た。
【0074】
(ポリエチレンテレフタレートペレットBの調製)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.72dL/gのポリエチレンテレフタレートペレットBを作成した。
【0075】
(ポリエチレン-2,6-ナフタレートペレットCの調整)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部、エチレングリコール60部をエステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、常法に従ってエステル交換反応をさせた後、トリエチルホスホノアセテート0.042部を添加し実質的にエステル交換反応を終了させた。ついで、三酸化アンチモン0.024部を添加し、引き続き高温、高真空下で常法にて重合反応を行い、固有粘度0.60dl/gのポリエチレン-2,6-ナフタレートペレットCを得た。
【0076】
(共重合ポリエステル樹脂水分散液の調製)
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10~0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部とを160℃で3時間撹拌して粘稠な溶融液を得、この溶融液に水560質量部を徐々に添加し、1時間後に均一な淡白色の固形分濃度30%の共重合ポリエステル樹脂水分散液を得た。
【0077】
(ポリウレタン系樹脂水溶液の調製)
アジピン酸、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(モル比:4/2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80~90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40~50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液を得た。
【0078】
(易接着層形成用塗布液の調製)
上記共重合ポリエステル系樹脂の30質量%水分散液を7.5質量部、上記ポリウレタン系樹脂水溶液を11.3質量部、有機錫系触媒を0.3質量部、水を39.8質量部、およびイソプロピルアルコールを37.4質量部混合した。さらに、フッ素系界面活性剤(ポリオキシエチレン-2-パーフルオロヘキシルエチルエーテル)の10質量%水溶液(0.6質量部)、コロイダルシリカ(平均粒径40nm)の20質量%水分散液(2.3質量部)および乾式法シリカ(平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液(0.5質量部)を添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で上記混合物のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで上記混合物を精密濾過し、易接着層形成用の塗布液を調製した。
【0079】
(ハードコート層形成用の塗布液1)
ハードコート材料(JSR社製、オプスター(登録商標)Z7503、濃度75%)100質量部に、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、濃度100%)0.1質量部を添加し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度40質量%のードコート層形成用塗布液1を調製した。
【0080】
(ハードコート層形成用の塗布液2)
ウレタンアクリレート系ハードコート剤(荒川化学工業社製、ビームセット(登録商標)577、固形分濃度100%)95質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)184、固形分濃度100%)5質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1質量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、固形分濃度40%のハードコート層形成用塗布液2を調製した。
【0081】
(実施例1)
上記のポリエチレンテレフタレートペレットAを150℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで100℃に加熱して3.0倍のロール延伸(縦延伸)を行った(フィルムの縦方向が屈曲方向に対応)。次いで、一軸延伸フィルムのキャスティングドラム接触面側に上記易接着層形成用塗布液をリバースキスコート法により、乾燥後の樹脂固形分の厚みが0.3μmになるように塗布した。塗布層を有する一軸延伸フィルを乾燥しつつテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して240℃で5秒間の熱処理を施し、さらに210℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た(フィルムの幅方向が折りたたみ部の方向に対応)。得られたポリエステルフィルムの易接着形成面にマイヤーバーを用いて、ハードコート層形成用塗布液1を乾燥後の膜厚が5.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(高圧水銀ランプ、積算光量200mJ/cm2)、ハードコートフィルムを得た。得られたポリエステルフィルム、およびハードコートフィルムを、それぞれレーザー加工機(レーザー光源:炭酸ガスレーザー、レーザー波長:10.6μm)を用いて、出力9W、加工速度64mm/sの条件にて、フィルムの縦方向が屈曲方向に対応するように所定サイズに切断し、シート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムはハードコート層側からレーザー光を照射した。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様のレーザー加工条件で、フィルムの縦方向が屈曲方向に対応するように所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0082】
(実施例2)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム、およびハードコートフィルムを用い、
レーザー出力を18Wとしたこと以外は実施例1と同様にしてシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0083】
(実施例3~5)
表1に記載した延伸倍率と厚みに変更したこと以外は上記実施例1と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0084】
(実施例6)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム用い、乾燥後の膜厚が10.0μmになるようにハードコート層形成用塗布液1を塗布した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得、実施例1と同様にしてレーザー加工を行ってシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0085】
(実施例7)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム用い、ハードコート層形成用塗布液2を塗布した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得、実施例1と同様にしてレーザー加工を行ってシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0086】
(実施例8)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム、およびハードコートフィルムを用い、
レーザー加工機による切断時、レーザー光照射面とは反端面にカバーフィルム(ポリエステル系25μm厚の粘着テープ)を貼付し、切断後に該カバーフィルムを剥離したこと以外は実施例1と同様にしてシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。なおハードコートフィルムへの保護フィルム貼付は、ハードコート層ではなく基材のポリエステルフィルム面に保護フィルムを貼付した。耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様の方法で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0087】
(実施例9)
表1のようにポリエチレン-2,6-ナフタレートペレットCを用い、製膜の熱処理温度を変更したこと以外は上記実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得、実施例1と同様にしてレーザー加工を行ってシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0088】
(実施例10)
表1に記載のように長手方向の延伸倍率に変更したこと以外は実施例1と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0089】
(実施例11)
幅方向の延伸倍率を5.0倍に変更したこと以外は実施例10と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0090】
(実施例12~14)
表1に記載のように長手方向の延伸倍率に変更したこと以外は実施例1と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0091】
(実施例15)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム、およびハードコートフィルムを用い、レーザー出力を5W、加工速度を320mm/s、レーザー照射繰り返し数を3回としたこと以外は実施例1と同様にしてシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様の方法で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0092】
(比較例1)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム、およびハードコートフィルムを用い、
レーザー出力を30Wとしたこと以外は実施例1と同様にしてシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0093】
(比較例2)
表1に記載したポリエチレンテレフタレートペレットBを用いたことと、レーザー出力を18Wとした以外は上記実施例1と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様の加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0094】
(比較例3)
表1に記載した厚みに変更したこと以外は上記実施例1と同様にしてシート状のポリエステルフィルムおよびシート状のハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記実施例1と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った
【0095】
(比較例4)
実施例1と同様にして得たポリエステルフィルム用い、乾燥後の膜厚が10.0μmになるようにハードコート層形成用塗布液1を塗布した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得、さらにレーザー出力を30Wとしたこと以外は実施例1と同様にしてシート状ポリエステルフィルム、およびシート状ハードコートフィルムを得た。また耐屈曲性、および繰り返し耐屈曲性の測定においても、上記と同様のレーザー加工条件で所定サイズの測定サンプルを切断し、測定を行った。
【0096】
これらのハードコートフィルムを、25μm厚の粘着層を介して有機ELモジュールに貼合し、図1における屈曲半径の相当する半径が3mmの全体の中央部で二つ折りにできるスマートフォンタイプの折りたたみ型ディスプレイを作製した。ハードコートフィルムは折りたたみ部分を介して連続した1枚のディスプレイの表面に配され、ハードコート層をそのディスプレイの表面に位置するように配されている。各実施例のハードコートフィルムを用いたものは、中央部で二つ折りに折りたたんで携帯できるスマートフォンとして動作及び視認性を満足するものであった。一方、各比較例のハードコートフィルムを使用した折りたたみ型ディスプレイは、使用頻度が増えるに従って、ディスプレイの折りたたみ部で画像の歪を生じてきたように感じ、あまり好ましいものではなかった。
【0097】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムやハードコートフィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイによれば、量産性を維持しながら、折りたたみ型ディスプレイの表面に位置しているポリエステルフィルムやハードコートフィルムが繰り返し折りたたまれた後の変形を起こさないため、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じることがない。本発明のポリエステルフィルムやハードコートフルムを表面保護フィルムとして使用した折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
【符号の説明】
【0099】
1 : 折りたたみ型ディスプレイ
11: 屈曲半径
2 : 折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム
21: 折りたたみ部
22: 屈曲方向(折りたたみ部と直交する方向)
3 : 折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム
31: ハードコート層
32: ポリエステルフィルム基材
33: ハードコートフィルムの切断端部
34: ハードコートフィルムの切断端部に対して垂直方向に切り出した端面
35: ハードコートフィルムの厚み
36: ハードコートフィルム切断端部の最も厚い部分の厚み
4 : 折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム
41: 屈曲方向に切断した端部(盛り上がり部を伴う)
42: 屈曲方向(折りたたみ部と直交する方向)
図1
図2
図3
図4