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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091938
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240628BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240628BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J123/00
C09J163/00
C09J7/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072256
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2020557631の分割
【原出願日】2019-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018219682
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大河
(72)【発明者】
【氏名】久保 有希
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
(57)【要約】
【課題】300~430nmの波長域の光を吸収する能力を有し、且つ透明性が良好な接着層を形成し得る接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】以下の成分(A)~(C):(A)有機バインダー、(B)層状粘土鉱物、および(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物を含む接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C):
(A)有機バインダー、
(B)層状粘土鉱物、および
(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物
を含む接着剤組成物。
【請求項2】
成分(B)が、ハイドロタルサイトおよび層状ケイ酸塩鉱物から選ばれる少なくとも一つを含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
成分(B)が、ハイドロタルサイトを含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
成分(B)が、半焼成ハイドロタルサイトを含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25~95質量%である請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
成分(B)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、1~60質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
成分(C)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.05~15質量%である請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
成分(A)が、オレフィン系樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
光学デバイスの接着層を形成するために用いられる請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
光学デバイスが、有機EL表示装置である請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
支持体と、前記支持体上に請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物から形成された接着層とを含む接着シート。
【請求項12】
光学デバイス中の接着層を形成するために用いられる請求項11記載の接着シート。
【請求項13】
光学デバイスが、有機EL表示装置である請求項12に記載の接着シート。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物から形成された接着層を有する光学デバイス。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物から形成された接着層を有する有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置等の光学デバイス中の接着層を形成するために好適な接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は発光材料に有機物質を使用した発光素子であり、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため近年脚光を浴びており、有機EL素子を利用した表示装置(ディスプレイ)が、携帯電話やテレビ等の各種用途で用いられるようになってきている。一方、有機EL発光素子は短波長域の光により劣化が生じ、変色や寿命が短くなる等の課題があることが知られている。例えば、特許文献1には、紫外線による有機EL発光素子の劣化を抑制するため、紫外線吸収剤を含む層を有するディスプレイ用ウィンドウフィルムにより、波長390nm以下の光を遮断する方法が開示されている。また、特許文献2には、有機EL素子の劣化抑制のために、紫外線に加え、波長380~430nmの光の透過を抑制することが提案されており、紫外線吸収剤と、吸収スペクトルの最大吸収波長が380~430nmの波長域に存在する色素化合物を含む層を有機EL表示装置に設けることにより、有機EL素子の劣化を抑制する方法が開示されている。短波長域の光による素子の劣化は太陽電池等の他の光学デバイスにおいても課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-504622号公報
【特許文献2】特開2018-28974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物を有する接着剤により、300~430nmの波長域の光を吸収する能力(以下「短波長域の光吸収能」と略称することがある)を有する接着層を有機EL表示装置等の光学デバイスに形成することは、光学デバイスの光劣化に対する抑制に有効である。短波長域の光吸収能を増大させるには、接着剤中の前記化合物の含有量を大きくすることが考えられる。
【0005】
しかし、接着剤への前記化合物の溶解性にも限界があり、この含有量が大きくなり過ぎると、(1)前記化合物が結晶化する、(2)接着剤から前記化合物が漏出する、(3)接着剤が着色する等の問題が起こる場合がある。そのため、前記化合物の含有量の増大とは異なる、接着層の短波長域の光吸収能の向上手段が求められている。また、このような光学デバイス中の接着層には、透明性も必要となる。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、300~430nmの波長域の光を吸収する能力を有し、且つ透明性が良好な接着層を形成し得る接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得る本発明は以下の通りである。
[1] 以下の成分(A)~(C):
(A)有機バインダー、
(B)層状粘土鉱物、および
(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物
を含む接着剤組成物。
[2] 成分(B)が、ハイドロタルサイトおよび層状ケイ酸塩鉱物から選ばれる少なくとも一つを含む前記[1]に記載の接着剤組成物。
[3] 成分(B)が、ハイドロタルサイトを含む前記[1]に記載の接着剤組成物。
[4] 成分(B)が、半焼成ハイドロタルサイトを含む前記[1]に記載の接着剤組成物。
[5] 成分(A)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25~95質量%である前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[6] 成分(B)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、1~60質量%である前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[7] 成分(C)の含有量が、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.05~15質量%である前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[8] 成分(A)が、オレフィン系樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを含む前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[9] 光学デバイス中の接着層を形成するために用いられる前記[1]~[8]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[10] 光学デバイスが有機EL表示装置である、前記[9]に記載の接着剤組成物。
【0008】
[11] 支持体と、前記支持体上に前記[1]~[8]のいずれか一つに記載の接着剤組成物から形成された接着層とを含む接着シート。
[12] 光学デバイス中の接着層を形成するために用いられる前記[11]記載の接着シート。
[13] 光学デバイスが、有機EL表示装置である前記[12]に記載の接着シート。
【0009】
[14] 前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の接着剤組成物から形成された接着層を有する光学デバイス。
[15] 前記[1]~[8]のいずれか一つに記載の接着剤組成物から形成された接着層を有する有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、300~430nmの波長域の光を吸収する能力を有し、且つ透明性が良好な接着層を形成し得る接着剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の接着剤組成物は、以下の成分(A)~(C):
(A)有機バインダー、
(B)層状粘土鉱物、および
(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物
を含み、本発明は、成分(B)および(C)を併用することを特徴とする。成分(B)および(C)の両方を使用することによって、これら片方を使用する場合に比べて、透明性を維持したまま、接着剤組成物から形成される接着層の短波長域の光吸収能(即ち、300~430nmの波長域の光を吸収する能力)を向上させることができる。
以下、各成分について、順に説明する。なお、後述の例示、好ましい記載等は、これらが互いに矛盾しない限り、組み合わせることができる。
【0012】
<(A)有機バインダー>
成分(A)である有機バインダーとは、成分(B)(即ち、層状粘土鉱物)および成分(C)(即ち、300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物)を固定できる樹脂またはゴムを意味する。成分(A)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂およびゴムは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、成分(A)として、樹脂およびゴムを併用してもよい。成分(A)としては、公知の有機バインダーである樹脂および/またはゴムを使用することができる。
【0013】
樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれでもよい。また、樹脂として、粘着付与樹脂を使用してもよい。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および粘着付与樹脂は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂として、これらの混合物(例えば、熱可塑性樹脂および粘着付与樹脂の混合物)を使用してもよい。以下、樹脂およびゴムを順に説明する。
【0014】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、イソブチレン系樹脂)等が挙げられる。
【0015】
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、特に限定はされないが、接着剤組成物ワニスの良好な塗工性と組成物における他の成分との良好な相溶性をもたらすという観点から、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより一層好ましく、400,000以下がさらに好ましい。一方、接着剤組成物ワニスの塗工時のハジキを防止し、形成される接着層の耐透湿性を発現させ、機械強度を向上させるという観点から、500以上が好ましく、700以上がより好ましい。なお、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0016】
成分(A)として熱可塑性樹脂を使用する場合、熱可塑性樹脂は、好ましくはオレフィン系樹脂を含む。ここで、本発明における「オレフィン系樹脂」とは、オレフィンに由来する構成単位(以下「オレフィン単位」と略称することがある)を含み、オレフィン単位の量が、全構成単位(即ち、各構成単位の合計)100質量%あたり、50質量%以上である樹脂を意味する。なお、官能基(例えばエポキシ基、酸無水物基等)を有する変性オレフィン系樹脂も、オレフィン単位の量が全構成単位中50質量%以上である場合、本発明における「オレフィン系樹脂」に含まれる。また、変性オレフィン樹脂であり、その官能基によって架橋構造を形成し得る樹脂も、それ単独では熱可塑性を有する樹脂は、本発明における「熱可塑性樹脂」に含まれる。
【0017】
オレフィン系樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、イソブチレン系樹脂が好ましい。これらオレフィン系樹脂は、単独重合体でもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体でもよい。共重合体としては、2種以上のオレフィンの共重合体、およびオレフィンと非共役ジエン、スチレン等のオレフィン以外のモノマーとの共重合体が挙げられる。好ましい共重合体の例として、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、例えば、イソブチレン変性樹脂、スチレン-イソブチレン変性樹脂、変性プロピレン-ブテン樹脂等が好ましく用いられる。
【0018】
オレフィン系樹脂は、優れた物性(例えば、接着性等)を接着層に付与する観点から、好ましくは酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))を有するオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも一つを含み、より好ましくは酸無水物基を有するオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するオレフィン系樹脂を含む。
【0019】
酸無水物基を有するオレフィン系樹脂は、例えば、酸無水物基を有する不飽和化合物で、オレフィン系樹脂をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、酸無水物基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合するようにしてもよい。酸無水物基を有する不飽和化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸等が挙げられる。酸無水物基を有する不飽和化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
同様に、エポキシ基を有するオレフィン系樹脂は、例えば、エポキシ基を有する不飽和化合物で、オレフィン系樹脂をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合するようにしてもよい。エポキシ基を有する不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基を有する不飽和化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
酸無水物基を有するオレフィン系樹脂中の酸無水物基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。酸無水物基の濃度はJIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。また、オレフィン系樹脂中の酸無水物基を有するオレフィン系樹脂の量は、好ましくは0~70質量%、より好ましくは5~50質量%である。
【0022】
エポキシ基を有するオレフィン系樹脂中のエポキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。エポキシ基濃度はJIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。また、オレフィン系樹脂中のエポキシ基を有するオレフィン系樹脂の量は、好ましくは0~70質量%、より好ましくは5~50質量%である。
【0023】
オレフィン系樹脂は、防湿性等の優れた物性を付与する観点から、酸無水物基を有するオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するオレフィン系樹脂の両方を含むことが好ましい。このようなオレフィン系樹脂は、酸無水物基とエポキシ基を加熱により反応させ架橋構造を形成し、防湿性等に優れた接着層を形成することができる。接着シートを製造する際に架橋構造を形成しておくのが望ましい。酸無水物基を有するオレフィン系樹脂とエポキシ基を有するオレフィン系樹脂の割合は適切な架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基と酸無水物基とのモル比(エポキシ基:酸無水物基)は、好ましくは100:10~100:200、より好ましくは100:50~100:150、特に好ましくは100:90~100:110である。
【0024】
オレフィン系樹脂の数平均分子量は、特に限定はされないが、有機溶剤を含有する接着剤組成物ワニスの良好な塗工性と、接着剤組成物における他の成分との良好な相溶性をもたらすという観点から、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより一層好ましく、400,000以下がさらに好ましく、300,000以下がさらに一層好ましく、200,000以下が特に好ましく、150,000以下が最も好ましい。一方、接着剤組成物ワニスの塗工時のハジキを防止し、形成される接着層の防湿性を発現させ、機械強度を向上させるという観点から、この数平均分子量は、500以上が好ましく、700以上がより好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0025】
オレフィン系樹脂は、有機溶剤を含有する接着剤組成物ワニスの増粘による流動性の低下を抑制する観点から非晶性であるのが好ましい。ここで、非晶性とは、オレフィン系樹脂が明確な融点を有しないことを意味し、例えば、オレフィン系樹脂のDSC(示差走査熱量測定)で融点を測定した場合に明確なピークが観察されないものを使用することができる。
【0026】
次に、オレフィン系樹脂の具体例を説明する。イソブチレン系樹脂の具体例としては、BASF社製「オパノールB100」(粘度平均分子量:1,110,000)、BASF社製「B50SF」(粘度平均分子量:400,000)が挙げられる。
【0027】
ブテン系樹脂の具体例としては、JXTGエネルギー社製「HV-1900」(ポリブテン、数平均分子量:2,900)、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン(「HV-300」(数平均分子量:1,400)の変性品)、数平均分子量:2,100、酸無水物基を構成するカルボキシ基の数:3.2個/1分子、酸価:43.4mgKOH/g、酸無水物基濃度:0.77mmol/g)が挙げられる。
【0028】
スチレン-イソブチレン共重合体の具体例としては、カネカ社製「SIBSTAR T102」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:100,000、スチレン含量:30質量%)、星光PMC社製「T-YP757B」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP766」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP8920」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,800)、星光PMC社製「T-YP8930」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:48,700)が挙げられる。
【0029】
エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂の具体例としては、三井化学社製「EPT X-3012P」(エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、三井化学社製「EPT1070」(エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエン共重合体)、三井化学社製「タフマーA4085」(エチレン-ブテン共重合体)が挙げられる。
【0030】
エチレン-メチルメタクリレート共重合体の具体例としては、星光PMC社製「T-YP429」(無水マレイン酸変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体(エチレン単位とメチルメタクリレート単位の合計100質量%あたりのメチルメタクリレート単位の量:32質量%、酸無水物基濃度:0.46mmol/g、数平均分子量:2,300)の20質量%トルエン溶液)、星光PMC社製「T-YP430」(無水マレイン酸変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン単位とメチルメタクリレート単位の合計100質量%あたりのメチルメタクリレート単位の量:32質量%、酸無水物基濃度:1.18mmol/g、数平均分子量:4,500)、星光PMC社製「T-YP431」(グリシジルメタクリレート変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体(エポキシ基濃度:0.64mmol/g、数平均分子量:2,400)の20質量%トルエン溶液)、星光PMC社製「T-YP432」(グリシジルメタクリレート変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:3,100)が挙げられる。
【0031】
プロピレン-ブテン共重合体の具体例としては、星光PMC社製「T-YP341」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)の20質量%スワゾール溶液)、星光PMC社製「T-YP279」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,000)、星光PMC社製「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:57,000)、星光PMC社製「T-YP312」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:60,900)の40質量%トルエン溶液)、星光PMC社製「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)の20質量%トルエン溶液)が挙げられる。
【0032】
オレフィン系樹脂がエポキシ基を有するオレフィン系樹脂を含む場合、エポキシ基と反応し得る、酸無水物基以外の官能基を有するオレフィン系樹脂を使用してもよい。前記官能基としては、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0033】
オレフィン系樹脂が酸無水物基を有するオレフィン系樹脂を含む場合、酸無水物基と反応し得る、エポキシ基以外の官能基を有するオレフィン系樹脂を使用してもよい。前記官能基としては、例えば、水酸基、1級または2級のアミノ基、チオール基、オキセタン基等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂(特に、オレフィン系樹脂)の含有量に特に限定はない。接着材組成物ワニスの良好な塗工性等の観点から、熱可塑性樹脂(特に、オレフィン系樹脂)を使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。また、オレフィン系樹脂の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。
【0036】
有機バインダーとして熱硬化性樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂は、好ましくはエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものが使用できる。但し、エポキシ基を有する樹脂であっても、上述したように、そのオレフィン単位の量が全構成単位中50質量%以上である場合、その樹脂は、本発明における「オレフィン系樹脂」に含まれる。エポキシ樹脂としては、例えば、水素添加エポキシ樹脂(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体等が挙げられる。
【0037】
エポキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、反応性等の観点から、好ましくは50~5,000、より好ましくは50~3,000、さらに好ましくは80~2,000、特に好ましくは100~1,500である。なお、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0038】
エポキシ樹脂は、液状または固形のいずれでもよく、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用してもよい。ここで、「液状」および「固形」とは、常温(25℃)および常圧(1atm)でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状エポキシ樹脂であるのが好ましい。ハイドロタルサイトとの混練性およびワニス粘度の観点から、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用することが特に好ましい。液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の質量比(液状エポキシ樹脂:固形エポキシ樹脂)は、1:2~1:0が好ましく、1:1.5~1:0がより好ましい。
【0039】
成分(A)として熱硬化性樹脂を使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25~95質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、35~95質量%がさらに好ましい。
【0040】
成分(A)としてエポキシ樹脂を使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25~95質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、35~95質量%がさらに好ましい。
【0041】
成分(A)としてエポキシ樹脂を使用する場合、成分(A)として、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂をさらに使用してもよい。エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、25~90質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、40~90質量%がさらに好ましく、フェノキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.1~60質量%が好ましく、3~60質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下であり、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000、より好ましくは20,000~300,000である。なお、これらの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0043】
(粘着付与樹脂)
成分(A)として熱可塑性樹脂(特にオレフィン系樹脂)および/またはゴムを使用する場合、接着剤組成物の粘着性を向上させるために粘着付与樹脂を使用することが好ましい。粘着付与樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、水添テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、脂環式石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂等)、飽和脂肪族炭化水素樹脂、シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0045】
粘着付与樹脂の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、YSレジンPX、YSレジンPXN(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、例えば、YSレジンTO、TRシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。水添テルペン系樹脂としては、例えば、クリアロンP、クリアロンM、クリアロンKシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。テルペンフェノール系樹脂としては、例えば、YSポリスター2000、ポリスターU、ポリスターT、ポリスターS、マイティエースG(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素樹脂としては、例えば、Escorez5300シリーズ、5600シリーズ(いずれもエクソンモービル社製)、アルコンP100、アルコンP125、アルコンP140(いずれも荒川化学社製)等が挙げられる。シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂としては、例えば、TFS13-030(荒川化学社製)等が挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、例えば、ENDEX155(イーストマン社製)等が挙げられる。脂肪族芳香族共重合系石油樹脂としては、例えば、QuintoneD100(日本ゼオン社製)等が挙げられる。脂環式石油樹脂としては、例えば、Quintone1325、Quintone1345(いずれも日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0046】
粘着付与樹脂の軟化点は、接着剤組成物をシート状で使用する場合に、当該接着シートの積層工程でシートが軟化し、かつ所望の耐熱性を持つという観点から、50~200℃が好ましく、50~180℃がより好ましく、50~150℃がさらに好ましい。なお、軟化点の測定は、JIS K2207に従い環球法により測定される。
【0047】
接着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は特に制限はない。しかし、接着剤組成物の良好な耐透湿性を維持するという観点から、粘着付与樹脂を使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。一方、十分な接着性の観点から、粘着付与樹脂を使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
【0048】
組成物の接着性、耐透湿性、相溶性等の観点から、粘着付与樹脂としては、飽和脂肪族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、脂環式石油樹脂が好ましく、飽和脂肪族炭化水素樹脂(例えば、アルコンP125)がより好ましい。
【0049】
粘着付与樹脂の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上であり、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、さらに好ましくは1,000以下である。なお、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0050】
(ゴム)
成分(A)としてゴムを使用する場合、ゴムは、ジエン系ゴムおよび非ジエン系ゴムのいずれでもよい。ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、カルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(XSBR)、塩素化されたイソブチレンとイソプレンとのゴム状共重合体(CIIR)、臭素化されたイソブチレンとイソプレンとのゴム状共重合体(BIIR)等が挙げられる。なかでも、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムが好ましく、ブチルゴムがより好ましい。
【0051】
ゴムは、接着剤組成物の接着性、接着湿熱耐性等をより向上させる観点から、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))を有するゴムおよびエポキシ基を有するゴムから選ばれる少なくとも一つを含み、より好ましくは酸無水物基を有するゴムおよびエポキシ基を有するゴムを含む。
【0052】
酸無水物基を有するゴムは、例えば、酸無水物基を有する不飽和化合物で、ゴムをラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、酸無水物基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合するようにしてもよい。酸無水物基を有する不飽和化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸等が挙げられる。酸無水物基を有する不飽和化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
同様に、エポキシ基を有するゴムは、例えば、エポキシ基を有する不飽和化合物で、ゴムをラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィン性二重結合を有するゴムとともにラジカル共重合するようにしてもよい。エポキシ基を有する不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基を有する不飽和化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
酸無水物基を有するゴムとしては、酸無水物基を有するブチルゴム、酸無水物基を有するイソプレンゴム、酸無水物基を有するブタジエンゴムが好ましく、特に好ましくは、酸無水物基を有するブチルゴムである。また、エポキシ基を有するゴムとしては、エポキシ基を有するブチルゴム、エポキシ基を有するイソプレンゴム、エポキシ基を有するブタジエンゴムが好ましく、特に好ましくは、エポキシ基を有するブチルゴムである。
【0055】
酸無水物基を有するゴム中の酸無水物基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。酸無水物基の濃度はJIS K 2501の記載に従い、ゴム1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0056】
エポキシ基を有するゴム中のエポキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。エポキシ基濃度はJIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0057】
接着剤組成物ワニスの良好な塗工性、およびゴムと他の成分との良好な相溶性の観点から、ゴムの数平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましく、400,000以下が特に好ましい。一方、封止用組成物ワニスの塗工時のハジキ防止等の観点から、ゴムの数平均分子量は、2,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましく、50,000以上が特に好ましい。なお、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0058】
ゴムの含有量に特に限定はない。接着材組成物ワニスの良好な塗工性等の観点から、ゴムを使用する場合、その含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより一層好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下がさらに一層好ましい。また、ゴムの含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより一層好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらに一層好ましく、15質量%以上が特に好ましく、20質量%以上が最も好ましい。
【0059】
(好ましい態様)
以下、成分(A)について、好ましい本発明の態様を順に説明する。
本発明の一態様として、成分(A)は、好ましくはオレフィン系樹脂を含み、より好ましくはオレフィン系樹脂および粘着付与樹脂を含む。また本発明の一態様として、成分(A)は、好ましくはブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のゴムを含み、より好ましくはブチルゴムを含む。また本発明の一態様として、成分(A)は、好ましくはゴムおよび粘着付与樹脂を含む。
【0060】
成分(A)が、酸無水物基を有するオレフィン系樹脂および/または酸無水物基を有するゴムを含む場合、成分(A)全体当たりの酸無水物基を有するオレフィン系樹脂および/または酸無水物基を有するゴムの量は、好ましくは1~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。また、成分(A)が、エポキシ基を有するオレフィン系樹脂および/またはエポキシ基を有するゴムを含む態様の場合、成分(A)全体当たりのエポキシ基を有するオレフィン系樹脂および/またはエポキシ基を有するゴムの量は、好ましくは1~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0061】
接着剤組成物の耐湿性等をより一層向上させる観点から、本発明は、以下の(a)~(d)の少なくとも一つを満たす態様であることが好ましい。
(a)成分(A)が、酸無水物基を有するオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するオレフィン系樹脂を含む。
(b)成分(A)が、酸無水物基を有するゴムおよびエポキシ基を有するゴムを含む。
(c)成分(A)が、酸無水物基を有するオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するゴムを含む。
(d)成分(A)が、酸無水物基を有するゴムおよびエポキシ基を有するオレフィン系樹脂を含む。
【0062】
上記(a)~(d)の態様では、成分(A)は、加熱により酸無水物基とエポキシ基が反応して架橋構造を形成し得る。このため、本発明の接着材組成物から、耐透湿性等が向上した接着層を形成し得る。なお、架橋構造の形成は接着剤組成物による接着層形成時に行うこともできるが、接着シートの製造時に支持体上に形成した接着層に架橋構造を形成しておくのが望ましい。
【0063】
なお、酸無水物基を有するオレフィン系樹脂および/または酸無水物基を有するゴムとエポキシ基を有するオレフィン系樹脂および/またはエポキシ基を有するゴムとの割合は適切な架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基と酸無水物基とのモル比(エポキシ基:酸無水物基)は、好ましくは100:10~100:200、より好ましくは100:50~100:150、特に好ましくは100:90~100:110である。
【0064】
本発明の一態様において、成分(A)は、好ましくは(i)ブチルゴム、(ii)酸無水物基を有するブチルゴムおよびエポキシ基を有するブチルゴムの混合物、または(iii)ブチルゴム、酸無水物基を有するブチルゴムおよびエポキシ基を有するブチルゴムの混合物である。
【0065】
本発明において、成分(A)として、オレフィン系樹脂とゴムを併用する場合、両者の配合割合(オレフィン系樹脂/ゴム)は、質量比で、1/99~50/50が好ましく、10/90~45/55がより好ましい。
【0066】
本発明の一態様において、成分(A)は、好ましくは、オレフィン系樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを含み、より好ましくはオレフィン系樹脂またはエポキシ樹脂を含む。このような成分(A)を使用することによって、接着剤組成物の低透湿性、アウトガスの発生抑制および透明性を、より優れたものとすることができる。
【0067】
成分(A)の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0068】
<(B)層状粘土鉱物>
本発明の接着剤組成物は、成分(B)として、層状粘土鉱物を含むことを特徴の一つとする。層状粘土鉱物を使用することにより、接着剤組成物から得られる接着層の透明性を維持したまま、300~430nmの波長域の光の吸収性を向上させることができる。成分(B)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、層状粘土鉱物は、後述するような加工された層状粘土鉱物(例えば、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト等)でもよく、人工物でもよい。
【0069】
層状粘土鉱物としては、例えば、ハイドロタルサイトおよび層状ケイ酸塩鉱物等が挙げられる。以下、これらを順に説明する。
【0070】
(ハイドロタルサイト)
ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、および焼成ハイドロタルサイトに分類することができる。
【0071】
未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、天然ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)に代表されるような層状の結晶構造を有する金属水酸化物であり、例えば、基本骨格となる層[Mg1-XAl(OH)X+と中間層[(COX/2・mHO]X-からなる。本発明における未焼成ハイドロタルサイトは、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト様化合物を含む概念である。ハイドロタルサイト様化合物としては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【0072】
[M2+ 1-x3+ (OH)x+・[(An-x/n・mHO]x-
(I)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、M3+はAl3+、Fe3+などの3価の金属イオンを表し、An-はCO 2-、Cl、NO などのn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは正の数である。)
式(I)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、M3+は、好ましくはAl3+であり、An-は、好ましくはCO 2-である。
【0073】
2+ Al(OH)2x+6-nz(An-・mHO (II)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、An-はCO 2-、Cl、NO などのn価のアニオンを表し、xは2以上の正の数であり、zは2以下の正の数であり、mは正の数であり、nは正の数である。)
式(II)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、An-は、好ましくはCO 2-である。
【0074】
半焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られる、層間水の量が減少または消失した層状の結晶構造を有する金属水酸化物をいう。「層間水」とは、組成式を用いて説明すれば、上述した未焼成の天然ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト様化合物の組成式に記載の「HO」を指す。
【0075】
一方、焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトまたは半焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られ、層間水(HO)だけでなく、水酸基(OH)も縮合脱水によって消失した、アモルファス構造を有する金属酸化物をいう。
【0076】
未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、飽和吸水率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%以上20質量%未満である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%未満であり、焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、20質量%以上である。
【0077】
本発明における「飽和吸水率」とは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトまたは焼成ハイドロタルサイトを天秤にて1.5g量り取り、初期質量を測定した後、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に200時間静置した場合の、初期質量に対する質量増加率を言い、下記式(i):
飽和吸水率(質量%)
=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
で求めることができる。
【0078】
半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、好ましくは3質量%以上20質量%未満、より好ましくは5質量%以上20質量%未満である。
【0079】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、熱重量分析で測定される熱重量減少率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は15質量%未満であり、かつその380℃における熱重量減少率は12質量%以上である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%以上であり、焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、12質量%未満である。
【0080】
熱重量分析は、日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA EXSTAR6300を用いて、アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを5mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下、30℃から550℃まで昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。熱重量減少率は、下記式(ii):
熱重量減少率(質量%)
=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)
で求めることができる。
【0081】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折で測定されるピークおよび相対強度比により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折により2θが8~18°付近に二つにスプリットしたピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを示し、低角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=低角側回折強度)と、高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=高角側回折強度)の相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)は、0.001~1,000である。一方、未焼成ハイドロタルサイトは8~18°付近で一つのピークしか有しないか、または低角側に現れるピークまたはショルダーと高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度の相対強度比が前述の範囲外となる。焼成ハイドロタルサイトは8°~18°の領域に特徴的ピークを有さず、43°に特徴的なピークを有する。粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(PANalytical社製、Empyrean)により、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行った。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行うことができる。
【0082】
ハイドロタルサイト(特に、半焼成ハイドロタルサイト)のBET比表面積は、1~250m/gが好ましく、5~200m/gがより好ましい。ハイドロタルサイトのBET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model 1210、マウンテック社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0083】
ハイドロタルサイト(特に、半焼成ハイドロタルサイト)の平均粒子径は、1~1,000nmが好ましく、10~800nmがより好ましい。ハイドロタルサイトの平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメディアン径である。
【0084】
ハイドロタルサイト(特に、半焼成ハイドロタルサイト)は、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0085】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの炭素数14以上の高級脂肪酸が挙げられ、中でも、ステアリン酸が好ましい。これらは、1種または2種以上を使用できる。
【0086】
アルキルシラン類としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これら、1種または2種以上を使用できる。
【0087】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を使用できる。
【0088】
ハイドロタルサイト(特に、半焼成ハイドロタルサイト)の表面処理は、例えば、未処理のハイドロタルサイトを混合機で常温にて攪拌分散させながら、表面処理剤を添加噴霧して5~60分間攪拌することによって行なうことができる。混合機としては、公知の混合機を使用することができ、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、バブルコーンブレンダー等のブレンダー、ヘンシェルミキサーおよびコンクリートミキサー等のミキサー、ボールミル、カッターミル等が挙げられる。又、ボールミルなどでハイドロタルサイトを粉砕する際に、前記の高級脂肪酸、アルキルシラン類またはシランカップリング剤を添加し、表面処理を行うこともできる。表面処理剤の使用量は、ハイドロタルサイトの種類または表面処理剤の種類等によっても異なるが、表面処理されていないハイドロタルサイト100質量部に対して1~10質量部が好ましい。本発明においては、表面処理されたハイドロタルサイトも、本発明における「ハイドロタルサイト」に包含される。
【0089】
成分(B)として焼成ハイドロタルサイトおよび/または半焼成ハイドロタルサイトを使用する場合、これらは吸湿性能に優れるため、得られる接着層の水分遮断性が向上する。
【0090】
半焼成ハイドロタルサイトとしては、例えば「DHT-4C」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)、「DHT-4A-2」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)等が挙げられる。焼成ハイドロタルサイトとしては、例えば「KW-2200」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)等が挙げられる。未焼成ハイドロタルサイトとしては、例えば「DHT-4A」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)等が挙げられる。
【0091】
(層状ケイ酸塩鉱物)
層状ケイ酸塩鉱物は、一般に、フィロケイ酸塩鉱物とも呼ばれる。層状ケイ酸塩鉱物は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。また、層状ケイ酸塩鉱物としては、天然物を用いてもよく、合成物を用いてもよい。層状ケイ酸塩鉱物の結晶構造としては、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものを用いることが好ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層状鉱物を用いてもよい。
【0092】
層状ケイ酸塩鉱物としては、例えば、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、マイカなどが挙げられる。これらの中で、マイカが好ましい。
【0093】
スメクタイトは、一般式:X0.2~0.62~310(OH)・nHO(ただし、XはK、Na、1/2Ca、および1/2Mgから選ばれる少なくとも一つであり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、およびCrから選ばれる少なくとも一つであり、ZはSi、およびAlから選ばれる少なくとも一つである。なお、HOは層間イオンと結合している水分子を表す。nは整数を表し、層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動しうる。)で表され、天然または合成されたものである。スメクタイトとしては、例えば、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ベントナイト、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ヘクトライト、モンモリロナイトが好ましい。
【0094】
層状ケイ酸塩鉱物は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、クニミネ工業社製「スメクトンSTN」、「スメクトンSAN」(有機化されたヘクトライト)、白石工業社製「オルベンM」(有機化されたモンモリロナイト)、ホージュン社製「エスベン NX」(有機化されたモンモリロナイト)、東新化成社製「ベントンシリーズ」(有機化されたモンモリロナイト)等が挙げられる。
【0095】
層状ケイ酸塩鉱物の平均粒子径は、好ましくは1nm~100μm、より好ましくは5nm~50μm、さらに好ましくは10nm~10μmである。層状ケイ酸塩鉱物の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメディアン径である。
【0096】
(好ましい態様)
以下、成分(B)について、好ましい本発明の態様を順に説明する。
成分(B)は、好ましくはハイドロタルサイトおよび層状ケイ酸塩鉱物から選ばれる少なくとも一つを含み、より好ましくはハイドロタルサイトを含み、さらに好ましくは半焼成ハイドロタルサイトを含み、特に好ましくは半焼成ハイドロタルサイトからなる。前記態様におけるハイドロタルサイトおよび層状ケイ酸塩鉱物の説明は上述の通りである。
【0097】
接着層の短波長域の光吸収能の低下を十分に抑制する観点から、成分(B)の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。一方、接着層の透明性を良好なものにする観点から、成分(B)の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0098】
<(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物>
本発明の接着剤組成物は、成分(C)として、300~430nmの波長域に最大吸収波長(λmax)を有する化合物を含むことを特徴の一つとする。成分(C)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
成分(C)の最大吸収波長(λmax)は、光吸収スペクトルにおける最大吸収波長の吸光度が1.0となるような濃度の成分(C)の溶液を調製し、その溶液の光吸収スペクトルを測定することによって、特定することができる。成分(C)の溶液を調製するための溶媒としては、例えば、クロロホルム、トルエン等が挙げられる。
【0100】
成分(C)が有する最大吸収波長(λmax)は、好ましくは320~430nm、より好ましくは350~430nmである。
【0101】
成分(C)は、紫外線吸収剤として取り扱われている場合がある。300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する公知の紫外線吸収剤は、本発明の成分(C)として使用することができる。
【0102】
成分(C)としては、例えば、クルクミノイド系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、安息香酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸エステル系化合物、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、桂皮酸系化合物、ピリミジン系化合物、ポルフィリン系化合物、シアノアクリレート系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ポリフェノール系化合物等を挙げることができる。成分(C)は、好ましくはクルクミノイド系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合から選ばれる少なくとも一つである。
【0103】
クルクミノイド系化合物としては、例えば、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(三和ケミカル社製、クルクミン、λmax=420nm)、1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(三和ケミカル社製、HPH、λmax=416nm)等が挙げられる。
【0104】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASFジャパン社製、Tinuvin P、λmax=341nm)、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(BASFジャパン社製、Tinuvin234、λmax=343nm)、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール(BASFジャパン社製、Tinuvin326、λmax=353nm)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASFジャパン社製、Tinuvin329、λmax=343nm)、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](BASFジャパン社製、Tinuvin360、λmax=349nm)、5-クロロ-2-[3-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(ADEKA社製、アデカスタブ LA-36、λmax=355nm)、2-(2-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学社製、JF-77、λmax=341nm)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学社製、JF-80、λmax=306nm)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学社製、JF-83、λmax=343nm)、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾル-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](城北化学社製、JF-832、λmax=349nm)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大和化成社製、DAINSORB T-0、λmax=345nm)、2-(2-ヒドロキシ4オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大和化成社製、DAINSORB T-7、λmax=345nm)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(大和化成社製、UV-326、λmax=353nm)、2-(3-tert-ブチル-2-ジヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製、SEESORB703、λmax=354nm)等が挙げられる。
【0105】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(大和化成社製、DAINSORB P-6、λmax=354nm)、2-(3-t-ブチル-2-ジヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製、SEESORB106、λmax=354nm)、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(シプロ化成社製、SEESORB107、λmax=356nm)等が挙げられる。
【0106】
トリアジン系化合物としては、例えば、2-[4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)]-1,3,5-トリアジン(BASFジャパン社製、Tinuvin479、λmax=322nm)、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASFジャパン社製、Tinuvin400、λmax=336nm)、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASFジャパン社製、Tinuvin460、λmax=346nm)等が挙げられる。
【0107】
安息香酸エステル系化合物としては、例えば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシル(BASFジャパン社製、Uvinul A Plus、λmax=354nm)が挙げられる。
【0108】
シアノアクリレート系化合物としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASFジャパン社製、Uvinul3035、λmax=302nm)、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASFジャパン社製、Uvinul3039、λmax=303nm)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(BASFジャパン社製、Uvinul3030、λmax=308nm)等が挙げられる。
【0109】
サリチル酸エステル系化合物としては、例えば、サリチル酸フェニル(λmax=310nm)、サリチル酸オクチル(λmax=301nm)等が挙げられる。
アゾメチン系化合物としては、例えば、BONASORB UA-3701(商品名、λmax=378nm、半値幅:60nm、オリエント化学工業社製)が挙げられる。
【0110】
インドール系化合物としては、例えば、BONASORB UA-3911(商品名、λmax=395nm、オリエント化学工業社製)、BONASORB UA-3912(商品名、λmax=390nm、オリエント化学工業社製)等が挙げられる。
【0111】
桂皮酸系化合物としては、例えば、メトキシ桂皮酸エチルへキシル(BASFジャパン社製、Uvinul MC80N、λmax=310nm)、p-メトキシ桂皮酸オクチル(λmax=308nm)、ジパラメトキシ桂皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル(λmax=312nm)、パルソールMCX(商品名、λmax=311nm、DSMニュートリションジャパン社製)、ネオへリオパンAV(商品名、λmax=311nm、シムライズ社製)等が挙げられる。
【0112】
ピリミジン系化合物としては、例えば、FDB-009(商品名、山田化学工業社製、λmax=402nm)が挙げられる。
ポルフィリン系化合物としては、例えば、FDB-001(商品名、山田化学工業社製、λmax=420nm)が挙げられる。
【0113】
接着剤組成物から形成される接着層の短波長域の光吸収能を十分なものにする観点から、成分(C)の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。一方、接着層の透明性を良好なものにするため、および成分(C)の結晶化または漏出、接着層の着色等の問題を抑制するために、成分(C)の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0114】
<他の成分>
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、成分(A)~(C)とは異なる他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。他の成分としては、例えば、硬化剤;硬化促進剤;有機溶剤;鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブファクチス、脂肪酸、脂肪酸塩、合成オイル等の軟化剤;ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填剤;消泡剤またはレベリング剤;密着性付与剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;酸化防止剤;熱安定剤;光安定剤等が挙げられる。
【0115】
成分(A)として熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、エポキシ基を有するオレフィン系樹脂等)、およびエポキシ基を有するゴムから選ばれる少なくとも一つを使用する場合、本発明の接着材組成物は、好ましくは硬化剤を含む。硬化剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
硬化剤に特に限定は無く、公知のものを使用することができる。硬化剤としては、例えば、3級アミン系化合物、1級または2級アミン系化合物、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物等が挙げられる。硬化剤は、好ましくは3級アミン系化合物である。
【0117】
本発明の接着剤組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、3級アミン系化合物、イミダゾール化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、好ましくは3級アミン系化合物、イミダゾール化合物およびジメチルウレア化合物から選ばれる少なくとも一つである。
【0118】
硬化剤または硬化促進剤である3級アミン系化合物としては、例えば、DBN(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene)、DBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等が挙げられる。
【0119】
硬化剤である1級または2級アミン系化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族アミン;N-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等の脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等の芳香族アミンが挙げられる。1級または2級アミン系化合物の市販品としては、例えば、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0120】
硬化剤であるイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0121】
硬化剤である酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。酸無水物化合物の市販品としては、例えば、リカシッドTH、TH-1A、HH、MH、MH-700、MH-700G(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0122】
硬化剤または硬化促進剤であるイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0123】
硬化剤または硬化促進剤であるジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
【0124】
硬化剤または硬化促進剤であるアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物等が挙げられる。アミンアダクト系化合物の市販品としては、例えば、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0125】
硬化剤である有機酸ジヒドラジド化合物としては、例えば、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0126】
硬化剤または硬化促進剤である有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の市販品としては、例えば、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0127】
硬化剤であるジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミドの市販品としては、例えば、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0128】
本発明の接着剤組成物において、成分(A)として熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)を使用する場合、硬化剤の含有量は、硬化性と保存安定性のバランスの観点から、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.1~40質量%が好ましく、0.5~38質量%がより好ましく、1~25質量%がさらに好ましい。本発明の粘着性組成物が硬化促進剤を含む場合には、同様の観点からその含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.05~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)を使用する場合、硬化剤と硬化促進剤を組み合わせて使用するのが好ましい。
【0129】
本発明の接着剤組成物において、成分(A)としてエポキシ基を有する熱可塑性樹脂(特に、エポキシ基を有するオレフィン系樹脂)および/またはエポキシ基を有するゴムを使用する場合、本発明の接着材組成物は、好ましくは硬化促進剤を含む。硬化促進剤の含有量は、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0130】
本発明の接着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。なお、有機溶剤を含有する接着剤組成物を接着剤組成物ワニスと呼ぶことがある。有機溶剤の量は、特に限定されないが、塗工性の観点から、接着剤組成物ワニスの粘度(25℃)が300~2000mPa・sとなる量で、有機溶剤を使用するのが好ましい。
【0131】
<接着剤組成物の製造>
本発明の接着剤組成物組成物は、上述の成分(A)~(C)および必要に応じて他の成分を混合することによって製造することができる。この混合手段に特に限定は無く、公知の機器(例えば混練ローラー、回転ミキサー等)を使用して混合を行うことができる。
【0132】
<接着剤組成物の用途>
本発明の接着剤組成物は、光学デバイス中の接着層を形成するために用いられることが好ましい。本発明における光学デバイスとは、光に関係する電子デバイスを意味し、例えば、有機EL表示装置、太陽電池等が挙げられる。特に、本発明の接着剤組成物は、有機EL素子の紫外線等の光による劣化が問題となる有機EL表示装置において、紫外線等の光を遮断するための接着層を設けるために好適に使用することができる。例えば、接着剤組成物ワニスを光学デバイスの部品に塗布および乾燥することによって、光学デバイス中の接着層を形成することができる。
【0133】
<接着シート>
本発明は、支持体と、前記支持体上に本発明の接着剤組成物から形成された接着層とを含む接着シートも提供する。本発明の接着シートも、接着剤組成物と同様に、光学デバイス中の接着層を形成するために用いられることが好ましい。例えば、接着シートを光学デバイスの部品に貼り付けた後、接着シートの支持体を剥離することによって、光学デバイス中の接着層を形成することができる。
【0134】
本発明の接着シートは、例えば、接着剤組成物ワニスを支持体上に塗布し、得られた塗膜を乾燥して支持体上に接着層を形成することによって、製造することができる。接着シートにおける接着層の厚さは、短波長域の光吸収能および透明性のバランスの観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは、20~180μm、さらに好ましくは30μm~150μmである。
【0135】
接着シートに使用する支持体としては、特に限定はなく、公知のものを使用することができる。支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどから形成されるプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETフィルムが好ましい。また支持体は、アルミ箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔であってもよい。支持体には、マット処理、コロナ処理の他、離型処理が施されていてもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。本発明において支持体が離型層を有する場合、該離型層も支持体の一部とみなす。支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~125μmである。
【0136】
接着シートにおいて、接着層は、保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、接着層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また、保護フィルムにも、マット処理、コロナ処理、離型処理等が施されていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常1~150μm、好ましくは10~100μmである。
【0137】
<透明性>
本発明の接着剤組成物から形成される接着層は、透明性を有するものが好ましい。この透明性は、厚さが80μmである接着層の可視光領域の650nmの全光線透過率で評価できる。本発明の接着剤組成物から形成され、厚さが80μmである接着層の650nmの全光線透過率は、好ましくは80~100%、より好ましくは85~100%である。
【0138】
<ヘーズ>
本発明の接着剤組成物から形成される接着層は、ヘーズが低いものが好ましい。本発明の接着剤組成物から形成され、厚さが80μmである接着層のヘーズは、好ましくは30%以下である。ヘーズは、JIS K 7136に準じた方法で測定することができる。
【0139】
<光学デバイス>
本発明は、上記接着剤組成物から形成された接着層を有する光学デバイスも提供する。光学デバイスとしては、例えば、有機EL表示装置、太陽電池等が挙げられ、有機EL表示装置が好ましい。
【実施例0140】
以下に実施例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0141】
<短波長域の光吸収能および透明性の評価>
実施例および比較例で作製した接着シートの接着層(即ち、接着剤組成物から形成された接着層)の短波長域の光吸収能および透明性を評価するため、波長380nmおよび400nmの全光線透過率、並びに波長650nmの全光線透過率を測定した。
【0142】
(1)評価サンプルの作製
実施例および比較例で作製した接着シート(接着層の厚さ:80μm)を長さ70mm×幅25mmにカットし、カットしたシートをガラス板(長さ76mm、幅26mmおよび厚さ1.2mmのマイクロスライドガラス、松浪ガラス工業社製白スライドグラスS1112 縁磨No.2)にバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、V-160)を用いてラミネートした。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧であった。その後、接着シートのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを剥離し、露出した接着層にさらに上記と同じガラス板をラミネートして、評価サンプル(積層体)を作製した。
【0143】
(2)短波長域の光吸収能の評価(380nmおよび400nmの全光線透過率の測定)
φ80mm積分球(型名SRS-99-010、反射率99%)を装着したファイバ式分光光度計(MCPD-7700、形式311C、大塚電子社製、外部光源ユニット:ハロゲンランプMC-2564(24V、150W仕様))を使用し、積分球と評価サンプルの距離を0mmとし、光源と評価サンプルの距離を48mmとし、得られた評価サンプルの光透過率スペクトルを測定した。リファレンスは上記と同じガラス板とした。得られた光透過率スペクトルから、380nmおよび400nmの全光線透過率を求めた。
【0144】
(3)透明性の評価(波長650nmの全光線透過率の測定)
前記の方法により得られた光透過率スペクトルから、波長650nmの全光線透過率を求めた。
【0145】
実施例および比較例で用いた原料は以下の通りである。
(A)有機バインダー
・T-YP341(星光PMC社製):グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン単位/ブテン単位:71質量%/29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)の20質量%トルエン溶液
・HV-1900(JXTGエネルギー社製):ポリブテン(数平均分子量:2,900)
・HV-300M(東邦化学工業社製):無水マレイン酸変性液状ポリブテン(酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
・アルコンP125(荒川化学社製):粘着付与樹脂(飽和脂肪族炭化水素樹脂、軟化点:125℃、数平均分子量:750)
・YX8000(三菱ケミカル社製):液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:約205、重量平均分子量:410)
・YX8040(三菱ケミカル社製):固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:約1000、重量平均分子量:3,000)
・YX7200B35(三菱ケミカル社製):フェノキシ樹脂溶液(溶媒:MEK、不揮発分:35質量%、フェノキシ樹脂の数平均分子量:10,000、フェノキシ樹脂の重量平均分子量:30,000)
【0146】
(B)層状粘土鉱物
・半焼成ハイドロタルサイト(飽和吸水率:17質量%、280℃における熱重量減少率:3.6質量%、380℃における熱重量減少率:14.4質量%、粉末X線回折における低角側回折強度/高角側回折強度:0.6、平均粒子径:400nm、BET比表面積:15m/g、酸化マグネシウム/酸化アルミニウムのモル比:4.16)
【0147】
(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物
・SEESORB703(シプロ化成社製のベンゾトリアゾール系化合物):2-(3-tert-ブチル-2-ジヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール(λmax=354nm)
・HPH(三和ケミカル社製のクルクミノイド系化合物):1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(λmax=416nm)
・DAINSORB T-0(大和化成社製のベンゾトリアゾール系化合物):2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(λmax=345nm)
・SEESORB107(シプロ化成社製のベンゾフェノン系化合物):2,2-ジヒドロキシ4,4-ジメトキシベンゾフェノン(λmax=356nm)
【0148】
(D)他の成分
・2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール(以下「TAP」と略称する。):硬化促進剤
・トルエン・イプゾール#100(出光興産社製):芳香族系混合溶剤
・メチルエチルケトン(MEK)
・アノン(住友化学社製):シクロヘキサノン
・U-CAT3512T(サンアプロ社製):硬化促進剤
・N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩:イオン液体硬化剤
【0149】
<実施例1>
粘着付与樹脂(荒川化学社製「アルコンP125」)の60質量%イプゾール#100溶液130質量部(不揮発分78質量部)、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)35質量部、ポリブテン(JXTGエネルギー社製「HV-1900」)60質量部、および成分(B)として上記半焼成ハイドロタルサイト100質量部を3本ロールで混合して、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテン共重合体の20質量%トルエン溶液(星光PMC社製「T-YP341」)200質量部(不揮発分40質量部)、TAPの20質量%トルエン溶液2.5質量部(不揮発分0.5質量部)およびトルエン14質量部を配合し、更に成分(C)としてSEESORB703(シプロ化成社製)3.3質量部を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に混合して、接着剤組成物ワニスを得た。シリコーン系離型剤で処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られたワニスをダイコーターにて均一に塗布し、130℃で60分間加熱して乾燥することにより、厚さ80μmの接着層を有する接着シートを得た。
【0150】
実施例1では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は67.2質量%であり、成分(B)の含有量は31.6質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表1に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0151】
<比較例1a>
成分(C)を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0152】
比較例1aでは、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は67.9質量%であり、成分(B)の含有量は31.9質量%であり、成分(C)の含有量は0質量%であった。
下記表1に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0153】
<比較例1b>
成分(B)を配合せず、成分(C)であるSEESORB703の配合量を2.2質量部に変更した以外は実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0154】
比較例1bでは、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は98.7質量%であり、成分(B)の含有量は0質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表1に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0155】
【表1】
【0156】
表1に示す結果から、実施例1で作製した接着シートの接着層は、透明性を維持したまま、短波長域の光吸収能が向上していることが分かる。
【0157】
<実施例2>
成分(C)としてSEESORB703(シプロ化成社製)3.3質量部に代えてHPH(三和ケミカル社製)の99質量%アノン溶液330質量部(不揮発分3.3質量部)を配合した以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0158】
実施例2では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は67.2質量%であり、成分(B)の含有量は31.6質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表2に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0159】
<比較例2>
成分(B)を配合せず、成分(C)であるHPHの99質量%アノン溶液の配合量を220質量部(不揮発分2.2質量部)に変更した以外は実施例2と同様にして接着シートを得た。
【0160】
比較例2では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は98.7質量%であり、成分(B)の含有量は0質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表2に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に示す結果から、実施例2で作製した接着シートの接着層は、透明性を維持したまま、短波長域の光吸収能が向上していることが分かる。
【0163】
<実施例3>
成分(C)としてSEESORB703(シプロ化成社製)3.3質量部に代えてDAINSORB T-0(大和化成社製)の15質量%MEK溶液22質量部(不揮発分3.3質量部)を配合した以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0164】
実施例3では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は67.2質量%であり、成分(B)の含有量は31.6質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表3に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0165】
<比較例3>
成分(B)を配合せず、成分(C)であるDAINSORB T-0の15質量%MEK溶液の配合量を14.7質量部(不揮発分2.2質量部)に変更した以外は実施例3と同様にして接着シートを得た。
【0166】
比較例3では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は98.7質量%であり、成分(B)の含有量は0質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表3に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0167】
【表3】
【0168】
表3に示す結果から、実施例3で作製した接着シートの接着層は、透明性を維持したまま、短波長域の光吸収能が向上していることが分かる。
【0169】
<実施例4>
成分(C)としてSEESORB703(シプロ化成社製)3.3質量部に代えてSEESORB107(シプロ化成社製)の20質量%トルエン溶液16.5質量部(不揮発分3.3質量部)を配合した以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0170】
実施例4では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は67.2質量%であり、成分(B)の含有量は31.6質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表4に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0171】
<比較例4>
成分(B)を配合せず、成分(C)であるSEESORB107の20質量%トルエン溶液11.0質量部(不揮発分2.2質量部)に変更した以外は実施例4と同様にして接着シートを得た。
【0172】
比較例4では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は98.7質量%であり、成分(B)の含有量は0質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表4に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0173】
【表4】
【0174】
表4に示す結果から、実施例4で作製した接着シートの接着層は、透明性を維持したまま、短波長域の光吸収能が向上していることが分かる。
【0175】
<実施例5>
液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX8000」)60質量部、および成分(B)として上記半焼成ハイドロタルサイト40質量部を3本ロールで混合して、混合物を得た。得られた混合物に、硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」)1.5質量部、フェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7200B35」)57.2質量部(フェノキシ樹脂20質量部)、および固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX8040」)の溶液(溶媒:MEK、不揮発分:40質量%)50質量部(固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂20質量部)の混合物を配合した。得られた混合物に、更にイオン液体硬化剤(N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩)3質量部、および成分(C)としてSEESORB107(シプロ化成社製)1.5質量部を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、接着剤組成物ワニスを得た。シリコーン系離型剤で処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られたワニスをダイコーターにて均一に塗布し、80℃で5分間加熱して乾燥した後、樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとして離型PETフィルムを載せ、接着シートを得た。
【0176】
実施例5では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は68.5質量%であり、成分(B)の含有量は27.4質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表5に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0177】
<比較例5>
成分(B)を配合せず、成分(C)であるSEESORB107を1.1質量部に変更した以外は実施例5と同様にして接着シートを得た。
【0178】
比較例5では、接着剤組成物の不揮発分100質量%に対して、成分(A)の含有量は94.7質量%であり、成分(B)の含有量は0質量%であり、成分(C)の含有量は1.0質量%であった。
下記表5に、上述のようにして測定した全光線透過率の結果を記載する。
【0179】
【表5】
【0180】
表5に示す結果から、実施例5で作製した接着シートの接着層は、透明性を維持したまま、短波長域の光吸収能が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の接着剤組成物から300~430nmの波長域の光を吸収する能力を有し、且つ透明性が良好な接着層を形成することができる。このような接着層は、有機EL素子等の光学デバイスの光劣化を防止することができ、特に有機EL表示装置のために好適である。
【0182】
本願は、日本で出願された特願2018-219682号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C):
(A)有機バインダー、
(B)層状粘土鉱物、および
(C)300~430nmの波長域に最大吸収波長を有する化合物
を含む接着剤組成物。