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  • 特開-ハンカチ 図1
  • 特開-ハンカチ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091969
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ハンカチ
(51)【国際特許分類】
   A41B 15/00 20060101AFI20240628BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240628BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240628BHJP
   D06H 7/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A41B15/00
A41D31/00 502C
A41D31/00 503G
A41D31/00 503K
A41D31/04 Z
D06H7/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073267
(22)【出願日】2024-04-27
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】519414387
【氏名又は名称】株式会社三愛
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】門田 洋
(57)【要約】
【課題】皺が発生しにくく、しかも発生した皺をアイロンを使用することなく簡単に除去できるハンカチを提供する。
【解決手段】
ハンカチ1は、ポリエステル長繊維糸と、ポリウレタン糸による編み生地2であり、編み生地2においてポリウレタンの重量比が5%以上20%以下であり、生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させられ生地より成り、裁断による縁線3を外周に有し、皺が発生しにくく、皺が発生した場合にはハンカチ1を手で引っ張って伸ばし、力を解放して元の形状に復元させるだけで皺を除去することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維糸とポリウレタン糸による編み生地であり、編み生地においてポリウレタンの重量比が5%以上20%以下であり、生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させられ生地より成り、裁断による縁線を外周に有するハンカチ。
【請求項2】
表地と裏地およびその間のつなぎ糸を有するダンボールニットであり、表地と裏地には第1のポリエステル長繊維糸が表れ、ポリウレタン糸が表地と裏地のそれぞれ表地と裏地の間の中間層に入り、第2のポリエステル長繊維糸がつなぎ糸である編み生地であり、編み生地においてポリウレタンの重量比が5%以上20%以下であり、生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させられ生地より成り、裁断による縁線を外周に有するハンカチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、皺になりにくく、アイロンがけの不要なハンカチに関する。
【背景技術】
【0002】
標準的なハンカチは綿糸による平織り生地よりなり、その外形寸法は45cm四方である。このハンカチを複数回折り畳んでポケットなどに入れて持ち運ぶ。このハンカチは使用や洗濯により皺が発生しやすく、皺を伸ばすためにはその都度アイロンがけをする必要がある。
【0003】
特許文献1~3にはアイロン掛けが不要なハンカチについて記載されている。特許文献1には、大きさを一辺12cm±3cm程度のほぼ正方形にすること、および、表面及び裏面を吸水性・速乾性及び防シワ性を有する素材とし、内部については吸水材を含む抗菌性素材とする多重構造とすることで、アイロンの必要がないハンカチにすることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、芯鞘構造長短複合糸を有する布帛より形成されたハンカチであり、該芯鞘構造長短複合糸の鞘部は芯鞘構造長短複合糸の60質量%以上がセルロース系短繊維よりなり、芯鞘構造長短複合糸の芯部を構成する繊維は単糸繊度が5~33デシテックスの長繊維からなり、該布帛の表面における短繊維被覆率が90%以上、且つ防シワ性が3.3級以上である防シワ性に優れたハンカチが記載されている。
【0005】
特許文献3には、芯部が熱可塑性合成繊維、鞘部が天然繊維からなる複合繊維を織物にし、縫製して得られたハンカチであって、折り畳まれた状態でホットプレス加工された折り目を有するハンカチが記載されている。ここで、芯部の熱可塑性合成繊維としては、ポリエステルやナイロンの糸が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-35181号公報
【特許文献2】特開2013-177708号公報
【特許文献3】実開平4-4004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、具体的な説明が少なく技術的に不明であり、防シワ性を有するハンカチという願望のみしか読み取れない。大きさをコンパクトにし、多重構造することにより防シワ性を有するハンカチが得られるとする。大きさをコンパクトにすることは皺の抑制に有利であるが、これだけでアイロンが不要なほどの防シワ性は得られない。生地の構造に関しては、防シワ性を有する素材とするだけで、その素材についての具体的な記載は全くない。
【0008】
特許文献2や特許文献3には防シワ性に優れたハンカチが記載されている。しかし、いかに防シワ性を向上させたとしても、皺の発生を完全になくすことはできない。いずれの文献にも、発生したシワを除去することについての記載はない。シワが発生した場合には、アイロン掛けをする必要があり、そうでなければシワを放置したまま使用するしかない。
【0009】
この発明は、皺が発生しにくく、しかも発生した皺をアイロンを使用することなく簡単に除去できるハンカチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、この発明のハンカチは、ポリエステル長繊維糸と、ポリウレタン糸による編み生地であり、編み生地においてポリウレタンの重量比が5%以上20%以下であり、生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させられ生地より成り、裁断による縁線を外周に有する。編み生地は表地と裏地およびその間のつなぎ糸を有するダンボールニットであり、表地と裏地には第1のポリエステル長繊維糸が表れ、ポリウレタン糸が表地と裏地のそれぞれ表地と裏地の間の中間層に入り、第2のポリエステル長繊維糸がつなぎ糸である編み生地であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明のハンカチは、防シワ性にすぐれ洗濯や通常の使用ではほとのどシワは発生しない。また、シワが発生した時も、ハンカチを引っ張って伸張させ、放して元の形状に戻すだけで、シワを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ハンカチを示す斜視図である。
図2】生地の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について説明する。図1はハンカチを示す斜視図である。ハンカチ1は、編み生地2よりなり、裁断による縁線3を外周に有する。
【0014】
編み生地について説明する。ポリエステル長繊維糸と、ポリウレタン糸を使用する。これ以外にも他の糸を補助的に加えてもよいが、主要な糸はこの2種類である。
【0015】
ポリエステル長繊維糸としては、細い繊維を使用するマイクロファイバー糸が適しており、とくにハイマルチフィラメント糸と呼ばれるような各フィラメントが0.8デニール(0.88デシテックス)以下の糸が好ましい。たとえば、50デニール/72fや50デニール/144fなどが適している。
【0016】
ここで、使用される全ての糸に対するポリウレタンの重量比が重要である。編成される編み生地において、ポリウレタンの重量比が5%以上20%以下とされる。ポリウレタンの重量比が5%以上であることにより、ハンカチの弾性が高くなり、後述の皺の除去に適している。一方、ポリウレタンが多くなりすぎると弾性が高くなり過ぎ、十分な伸張のために大きな引っ張り力が必要になる。8%以上15%以下であることが特に好ましい。
【0017】
編み生地の編成は、横編み、経編み、丸編みのいずれでもよく、ポリエステル長繊維糸が表地と裏地に多く出るような編成が好ましい。たとえば、表地と裏地およびその間のつなぎ糸を有するダンボールニットであり、表地と裏地にはポリエステル長繊維糸が表れることが好ましい。
【0018】
編み生地は編成直後のキハダ(生機)から収縮処理が施され、生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させられる。これにより、得られた編み生地よりなるハンカチは、もはやそれ以上は収縮しない。さらに、引っ張ることで2倍程度まで拡大できる弾性をそなえ、引っ張りをやめると元のハンカチの形状に復元する。
【0019】
得られた編み生地を裁断することによって、ハンカチが形成される。裁断は、刃物で行ってもよく、あるいは任意の形状の抜型で行ってもよく、レーザー光による切断などでもよい。切断後には、外周部に縫製を行う必要はない。したがって、ハンカチ1の外周には裁断による縁線が形成されている。この発明のハンカチは、通常のハンカチよりも小さく、たとえば縦横20cm以上30cm以下の正方形に形成され、それでも通常のハンカチで縦横40~50cmの正方形のものと同等またはそれを越える吸水性を有する。
【実施例0020】
この発明のハンカチの実施例について説明する。本実施例において、第1のポリエステル長繊維糸として太さ50デニール(56デシテックス)でフィラメント数72本のセミダルのマイクロファーバー糸の延伸仮撚糸、第2のポリエステル長繊維糸として太さ50デニール(56デシテックス)でフィラメント数144本のセミダルのマイクロファーバー糸の延伸仮撚糸を使用した。また、ポリウレタン糸としては20デニール(22デシテックス)単糸を使用した。ここで、編み生地の全重量に対してポリウレタンの重量が5%以上20%以下になるようにするが、本例のような20デニール程度のポリウレタン糸を使用するときには8%以上15%以下とすることが特に好ましい。本例では9%にしている。
【0021】
ハイゲージで丸編みを行い、ダンボールニットの編み生地を編成した。図2は生地の構成を模式的に示す断面図である。ここで、第1のポリエステル長繊維糸は表地5および裏地6を編成し、表地5および裏地6に表れる。本例では、表地側も裏地側も同じ種類の第1のポリエステル長繊維糸を使用している。ポリウレタン糸は表地5と裏地6のそれぞれから、表地と裏地の間に形成されている中間層8に入る。さらに第2のポリエステル長繊維糸をつなぎ糸7とし、ダンボールニットの編み生地を編成している。
【0022】
編成された生機に対し、収縮処理を行う。ここで、通常の編み生地に対する収縮処理よりも大きな収縮を行い、その編み生地が収縮できる限界近くまで収縮させることが好ましい。最終的には生機から40%以上60%以下の大きさになるように収縮させる。
【0023】
本例では、編成後に生機を洗い、抗菌防臭加工も行う。このときに最初の収縮が生じる。次いで粗断ち(仮裁断)を行い、予備プレスを行う。ここまでで、編み生地は元の生機に対して50%以上55%以下の寸法まで収縮する。
【0024】
次いで裁断する。本発明の編み生地は刃物などによって自由に裁断することができる。裁断後は縫製処理を行わなくともほつれなどは生じず、裁断による縁線は安定しているので、その裁断による縁線のままの外周でよい。したがって自由な形状に裁断でき、正方形以外にも、円形やハート形、あるいは動物やキャラクターの形状など、複雑な形状も自由に形成できる。本例では、型抜きによる裁断を行い、正方形のハンカチの形状にした。
【0025】
裁断された編み生地に対して、本例では昇華転写による印刷を行った。この編み生地は、マイクロファイバーのポリエステル長繊維糸が表面および裏面に表れており、精密な転写印刷が行える。片面のみの印刷でもよく、両面の印刷でもよい。また、編み生地は厚く面密度も高いので、反対側の模様が透けて見えにくい。そのため、表面と裏面にそれぞれ全く異なった図柄の印刷を行うことも可能である。一方、印刷を施すことなく無地のハンカチとしてもよい。本例では、200℃で4分程度の時間で両面に昇華印刷を施し、印刷面4を形成した。これは通常の転写印刷よりも長い加熱時間であり、この間にも編み生地の収縮が生じる。
【0026】
こうして、得られたハンカチは元の生機から40~60%の寸法への収縮がさなれており、その逆数である160~250%の伸張性を有する。こうして収縮処理がなされた編み生地はもはやそれ以上の収縮は起こらず、形状が安定している。洗濯したり使用したりしても皺はほとんど生じない。通常に折り畳んでも、広げれば折り目は残らない。ハンカチを丸めて握りしめ、故意に皺を生じさせようとしても、ほとんど生じない。
【0027】
さらに、皺が生じてもアイロンを使用することなく簡単に除去できる。ハンカチを両手で掴んで引っ張って広げ、すぐに力を解放する。このハンカチは伸張性に富み、引っ張ることによって大きく伸ばすことができ、放せば元の形状に復元する。この動作だけで皺は除去される。
【0028】
このハンカチは吸水量も大きい。乾燥したハンカチの重量に対して、130~150%の重量の水を吸収できる。通常の木綿のハンカチの吸収量が75~85%であることに比べると、この発明のハンカチの吸水量は著しく大きい。
【0029】
また、このハンカチは吸水性が高く短時間で水を吸収し、さらに保水性が高く、吸収した水を漏らしにくい。1辺が24~26cm四方の小さなハンカチであっても通常の1辺が45cm四方の木綿のハンカチより多くの水を吸収し、しかもポケットにしまったときに吸収した水を衣服に戻さない。
【符号の説明】
【0030】
1.ハンカチ
2.編み生地
3.裁断による縁線
4.印刷面
5.表地
6.裏地
7.つなぎ糸
8.中間層
図1
図2