(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091982
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】集積光学装置及び集積光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240628BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240628BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20240628BHJP
H01S 5/0237 20210101ALI20240628BHJP
H01S 5/02325 20210101ALI20240628BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H01S5/0225
H01S5/0237
H01S5/02325
H01S5/022
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073501
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2020056034の分割
【原出願日】2020-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 亮平
(57)【要約】
【課題】高い信頼性と共に更なる小型化を実現することができる集積光学装置を提供する。
【解決手段】集積光学装置10は、複数のサブキャリア20と、複数のサブキャリア20に設けられた複数のLD30と、基板40に設けられ、LD30の出射面31から出射される光をコア51に入射可能に配置されたPLC50とを備える。サブキャリア20は、低背型構造を有している。LD30は、第1金属層91を介してサブキャリア20と接続されている。LD30は、第1金属層91を介してサブキャリア20と接続されている。PLC50は複数のLD30に対応する複数のコア51を有し、複数のコア51が略同一面上に配置されて光導波路面を形成している。そして、サブキャリア20におけるLD30の搭載面が上記光導波路面に対して回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基台と、
前記複数の基台に設けられた複数の光半導体素子と、
基板と、
前記基板に設けられ、前記複数の光半導体素子から出射される光を入射可能に配置された光導波路と、
を備え、
前記基台は、低背型構造を有し、
前記光半導体素子は、金属層を介して前記基台と接続されており、
前記光導波路は、前記複数の光半導体素子に対応する複数のコアを有し、前記複数のコアが略同一面上に配置されて光導波路面を形成しており、
前記基台における前記光半導体素子の搭載面が前記光導波路面に対して回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されている、集積光学装置。
【請求項2】
前記光半導体素子は、低背型構造を有し、
前記基台における前記光半導体素子の搭載面が前記光導波路面に対して回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されている、請求項1に記載の集積光学装置。
【請求項3】
前記搭載面が前記光導波路面に対して90°回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されている、請求項1又は2に記載の集積光学装置。
【請求項4】
前記基台と前記基板とが金属層を介して接続されている、請求項1から3の何れか一項に記載の集積光学装置。
【請求項5】
前記複数の光半導体素子は、3つ以上の光半導体素子であり、
前記複数の基台は、前記3つ以上の光半導体素子が搭載された3つ以上の基台であり、
前記3つ以上の光半導体素子が並んで配置され且つ前記光導波路と光結合している、請求項1に記載の集積光学装置。
【請求項6】
前記3つ以上の光半導体素子は、赤色光、緑色光及び青色光を発する3つの光半導体素子であり、
前記3つ以上の基台は、前記3つの光半導体素子が搭載された3つの基台である、請求項5に記載の集積光学装置。
【請求項7】
前記光半導体素子から前記光が出射される出射面と前記光導波路において前記光が入射する入射面との間に隙間空間が形成され、
前記光は前記出射面から出射され、前記隙間空間を伝搬し、前記入射面から前記光導波路の前記コアに入射するように構成されている、
請求項1から6の何れか一項に記載の集積光学装置。
【請求項8】
前記光半導体素子から前記光が出射される出射面と前記光導波路において前記光が入射する入射面との間に樹脂が設けられ、
前記光は前記出射面から出射され、前記樹脂を伝搬し、前記入射面から前記光導波路の前記コアに入射するように構成されている、
請求項1から6の何れか一項に記載の集積光学装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の集積光学装置がパッケージに収容され、
前記集積光学装置は、第2金属層及び第2樹脂層の何れかを介して前記パッケージ内で固定されている、
集積光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積光学装置及び集積光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの増大に伴い、光通信システムや、光通信システムを用いた身の回りの種々の光デバイスの多機能化が進んでいる。最近では多機能化と共に高密度化が求められ、多機能且つ小型な光デバイスが検討されている。
【0003】
近年、シリコン導波路に発光素子や受光素子を集積させるシリコンフォトニクスの技術が進展し、光通信システムに用いられている。合波・分波・波長選択等の光信号処理を行う平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)は、光通信システムに用いられる代表的なシリコン導波路の1つである。
【0004】
光通信システム以外の例えば身の回りのウェアラブルデバイスや小型プロジェクタ等においても、使用目的に応じて複数の機能を発現し、且つ装置全体を持ち歩き可能とする、多機能且つ小型な光デバイスが求められている。
【0005】
従来、複数の光学素子を集積化するために、例えば、ミラー及びレンズが用いられている。特許文献1には、筐体内にレーザーダイオード(Laser Diode:LD)、光学レンズ、全反射用波長フィルタ、波長分離用フィルタ、ファイバコリメータ、フォトダイオードが共通の筐体に集積された光モジュールが開示されている。特許文献1に開示されている光モジュールでは、LDから発せられた波長1.3μmの光が集光レンズ、キャピラリ、コリメータレンズを通り、全反射用波長フィルタ及び波長分離用フィルタで全反射し、ファイバコリメータで受光される。ファイバコリメータから入力された波長1.49μm,1.55μmの光は、波長分離用フィルタを通過してから、前述とは別の波長分離用フィルタによって互いに分離される。分離された後の1.55μmの光は、全反射用波長フィルタで全反射し、結合レンズによりフォトダイオードに入射する。分離された後の1.49μmの光は、結合レンズにより前述とは別のフォトダイオードに入射する。
【0006】
特許文献2には、パッケージ内に光素子搭載基板と、レンズアレイと、波長合分波器が所望の相対位置で配置されている光送受信モジュールが開示されている。波長合分波器は、透明基板の表面及び裏面に波長選択フィルタ及びミラーが搭載された機器である。特許文献2に開示されている光送受信モジュールでは、波長選択フィルタ及びミラーの配置に合わせて互いに異なる所定の波長を有する複数の光が入射し、波長合分波器で合波される。
【0007】
特許文献1,2のようにミラーやレンズを用いた自由空間型の集積化とは別の集積化構造として、例えば特許文献3、4には導波路構造を備えた光デバイスが開示されている。特許文献3に開示されている合波器では、任意のN本の薄いクラッドを持つファイバ素線がチップ型の基板に固定され、複数のファイバ素線の出射端が互いに束ねられている。特許文献4には、半導体チップと、PLCチップとを一体化・集積化した光モジュールが開示されている。半導体チップは、半導体導波路を有し、且つ第1の基板上に搭載されている。
【0008】
特許文献4に開示されている光モジュールでは、半導体チップにおいてPLCチップに対向する端面とPLCチップにおいて半導体チップに対向する端面とは、ギャップをあけて互いに離れている。半導体チップとPLCチップとは、紫外線硬化接着剤によって接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-309370号公報
【特許文献2】特開2009-105106号公報
【特許文献3】特開2016-118750号公報
【特許文献4】特開2011-102819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1、2に開示されている光デバイスの部品数は多く、個々の部品の大きさがあり、ミラーやレンズを用いて自由空間光学系で構成されている。個々の部品の大きさや自由空間光学系での構成を考慮すると、特許文献1、2に開示されている光デバイスの小型化には限界がある。特許文献3、4に開示されているように導波路を用いた集積光学装置では、部品同士が紫外線硬化樹脂によって接着され、自由空間光学系に比べると小型化を図りやすい。しかしながら、導波路を用いた集積光学装置では、光源のワイヤーボンディングの工程等による温度変化による紫外線硬化接着剤の膨張・収縮が生じる。紫外線硬化接着剤の膨張・収縮が生じると、互いに接着されていた部品同士の調芯精度が低下し、集積光学装置の信頼性が低下する虞があった。導波路を用いた集積光学装置では、集積光学素子、LD等の光半導体素子を作動させるために基板に導通する必要がある。基板に導通させる際に、ワイヤーボンディング等の方法を用いて光半導体素子と電源とを基板上で接続する。光半導体素子に対して光導波路が固定される強度が十分でないと、ワイヤーボンディングする際に、光半導体素子が滑落し、集積光学装置の信頼性が低下する虞があった。このように、上記特許文献1~4のいずれの技術においても、高い信頼性を実現しながら更なる小型化のニーズに対応するのは困難であり、未だ改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、高い信頼性と共に更なる小型化を実現することができる集積光学装置及び集積光モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る集積光学装置は、複数の基台と、前記複数の基台に設けられた複数の光半導体素子と、基板と、前記基板に設けられ、前記複数の光半導体素子から出射される光を入射可能に配置された光導波路と、を備え、前記基台は、低背型構造を有し、前記光半導体素子は、金属層を介して前記基台と接続されており、前記光導波路は、前記複数の光半導体素子に対応する複数のコアを有し、前記複数のコアが略同一面上に配置されて光導波路面を形成しており、前記基台における前記光半導体素子の搭載面が前記光導波路面に対して回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されている。
【0013】
本発明に係る集積光学装置では、前記光半導体素子は、低背型構造を有し、前記基台における前記光半導体素子の搭載面が前記光導波路面に対して回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されていてもよい。
【0014】
本発明に係る集積光学装置では、前記搭載面が前記光導波路面に対して90°回転した状態で、前記基台と前記基板とが接続されていてもよい。
【0015】
本発明に係る集積光学装置では、前記基台と前記基板とが金属層を介して接続されていてもよい。
【0016】
本発明に係る集積光学装置では、前記複数の光半導体素子は、3つ以上の光半導体素子であり、前記複数の基台は、前記3つ以上の光半導体素子が搭載された3つ以上の基台であり、前記3つ以上の光半導体素子が並んで配置され且つ前記光導波路と光結合していてもよい。
【0017】
本発明に係る集積光学装置では、前記3つ以上の光半導体素子は、赤色光、緑色光及び青色光を発する3つの光半導体素子であり、前記3つ以上の基台は、前記3つの光半導体素子が搭載された3つの基台であってもよい。
【0018】
本発明に係る集積光学装置では、前記光半導体素子から前記光が出射される出射面と前記光導波路において前記光が入射する入射面との間に隙間空間が形成され、前記光は前記出射面から出射され、前記隙間空間を伝搬し、前記入射面から前記光導波路のコアに入射するように構成されてもよい。
【0019】
本発明に係る集積光学装置では、前記光半導体素子から前記光が出射される出射面と前記光導波路において前記光が入射する入射面との間に樹脂が設けられ、前記光は前記出射面から出射され、前記樹脂を伝搬し、前記入射面から前記光導波路のコアに入射するように構成されてもよい。
【0020】
本発明に係る集積光モジュールでは、上述の集積光学装置がパッケージに収容されており、前記集積光学装置は、第2金属層及び第2樹脂層の何れかを介して前記パッケージ内で固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い信頼性と共に更なる小型化を実現することができる集積光学装置及び集積光モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態の集積光学装置の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示す集積光学装置をA-A´線で矢視した断面図であり、
図2(b)は、
図1に示す集積光学装置をy方向から見た側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す集積光学装置のPLCの入射面の断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す集積光学装置の一部の平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す集積光学装置を備える集積光モジュールの平面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す集積光モジュールのカバーを外した状態の平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す集積光モジュールの一部をC-C´線で矢視した断面図である。
【
図10】
図10は、
図6に示す集積光モジュールを光が出射される方向に沿って見た側面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示す集積光学装置の製造方法を説明するための側面図である。
【
図13】
図13は、
図1に示す集積光学装置の製造方法を説明するための側面図である。
【
図14】
図14は、
図1に示す集積光学装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図15】
図15は、
図1に示す集積光学装置の製造方法を説明するためのグラフであって、光半導体素子と光導波路との離間距離と光利用効率との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、
図1に示す集積光学装置の製造方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の集積光学装置及び集積光モジュールの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の集積光学装置10は、複数のサブキャリア(基台)20と、複数のLD(光半導体素子)30と、基板40と、PLC(光導波路)50と、を備える。
【0025】
集積光学装置10は、例えば光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの色の光を合わせる合波器である。集積光学装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイに搭載される合波器として適用可能である。本明細書において、3原色の光のうち、赤色光とは、ピーク波長が例えば610nm以上750nm以下である光を意味する。緑色光とは、ピーク波長が例えば500nm以上560nm以下である光を意味する。青色光とは、ピーク波長が例えば435nm以上480nm以下である光を意味する。
【0026】
集積光学装置10は、複数のサブキャリア20に設けられた複数のLD30を備える。この集積光学装置10は、例えば赤色光を発するLD30-1、緑色光を発するLD30-2、及び青色光を発するLD30-3を備える。LD30-1,30-2,30-3は、x方向で互いに間隔をあけて並んで配置され且つPLC50と光結合している。但し、これに限らず、集積光学装置10は、複数のLD30を有していてもよく、3つ以上のLD30を有していてもよい。また、複数のLD30は、複数のLD30の配列方向(x方向)に関して低背型構造を有しているのが好ましい。LD30の低背型構造は、特に制限されないが、例えば1:1~3:1のアスペクト比を有する。低背型構造としては、例えば、扁平型、ウエハ型などが挙げられる。y方向は、LD30から発せられる光の出射方向、即ち光軸に沿う方向である。x方向は、y方向に略直交する方向である。z方向は、x方向及びy方向に直交する方向である。
【0027】
集積光学装置10は、複数のLD30と同じ数の複数のサブキャリア20を備え、例えば3つのサブキャリア20-1、20-2、20-3を備える。3つのサブキャリア20-1、20-2、20-3は、複数のサブキャリア20の配列方向(x方向)に関して低背型構造を有している。サブキャリア20の低背型構造は、特に制限されないが、例えば4:3~9:4のアスペクト比を有する。LD30は、ベアチップでサブキャリア20に実装されている。LD30-1は、サブキャリア20-1の側面(表面)21-1に設けられている。LD30-2は、サブキャリア20-2の側面(表面)21-2に設けられている。LD30-3は、サブキャリア20-3の側面(表面)21-3に設けられている。但し、これに限らず、集積光学装置10は、複数のサブキャリア20を有していてもよく、3つ以上のサブキャリア20を有していてもよい。この場合、複数のサブキャリア20は、低背型構造を有していてもよい。
【0028】
サブキャリア20は、例えば窒化アルミニウム(AlN)や、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、シリコン(Si)等で構成されている。
図2(b)に示すように、サブキャリア20とLD30との間には、第1金属層91(金属層)が設けられている。つまり、LD30は、第1金属層91を介してサブキャリア20と接続されている。第1金属層91は、サブキャリア20の側面21に接する金属層75と、金属層75の側面及びLD30の側面33に接する金属層76と、を有する。集積光学装置10では、x方向において、サブキャリア20-1とLD30-1とが金属層75-1及び金属層76-1を有する第1金属層91-1を介して接続されている。x方向において、サブキャリア20-2とLD30-2とが金属層75-2及び金属層76-2を有する第1金属層91-2を介して接続されている。x方向において、サブキャリア20-3とLD30-3とが金属層75-3及び金属層76-3を有する第1金属層91-3を介して接続されている。
【0029】
第1金属層91を構成する各金属層75,76を形成する方法は、特定されない。金属層75,76は、公知の方法によってx方向でサブキャリア20とLD30との間に形成され、例えばスパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知の手法によって形成可能である。金属層75は、例えば金(Au)とスズ(Sn)との合金、スズ(Sn)と銅(Cu)との合金、インジウム(In)とビスマス(Bi)との合金及びスズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)からなる群から選択されるいずれかの合金で構成されている。金属層76は、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。
【0030】
PLC50は、基板40に設けられている。このPLC50は、例えば公知の半導体プロセスによって、基板40の上面41に、基板40と一体になるように作製されている。基板40は、シリコン(Si)で構成されている。前述の半導体プロセスは、集積回路等の微細な構造を形成する際に用いられるフォトリソグラフィやドライエッチングを含む。
【0031】
基板40のy方向の後方即ち手前側の側面42、及びコア51の入射面61を含むPLC50のy方向の後方即ち手前側の側面には、反射防止膜81が設けられている(
図2(a))。基板40のy方向の前方即ち奥側の側面、及びコア51の出射面64を含むPLC50のy方向の前方即ち奥側の側面には、反射防止膜82が設けられている。反射防止膜81は、PLC50のy方向の後方の側面のみに設けられてもよい。同様に、反射防止膜82は、PLC50のy方向の前方の側面のみに設けられてもよい。なお、
図1では、第3金属層93及び反射防止膜81,82は、省略されている。
【0032】
反射防止膜81,82は、PLC50への入射光又は出射光が入射面61又は出射面64から各面に進入する方向とは逆向きに反射することを防止し、入射光又は出射光の透過率を高めるための膜である。反射防止膜81,82は、例えば複数の種類の誘電体が入射光である赤色光、緑色光、青色光の波長に応じた所定の厚みで交互に積層された多層膜である。前述の誘電体は、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等である。
【0033】
図3に示すように、PLC50は、複数LD30に対応する複数のコア51を有する。例えば、PLC50は、LD30-1,30-2,30-3と同数のコア51-1,51-2,51-3と、y方向に交差する方向でコア51-1,51-2,51-3を囲むクラッド52と、を備える。コア51-1,51-2,51-3の各々のx方向の大きさ及びz方向の大きさは、赤色光、緑色光、青色光の各波長を考慮して適宜設定されている。クラッド52のz方向の大きさは、特に限定されず、コア51-1,51-2,51-3の各々の大きさを考慮して適宜設定され、例えば50μm程度である。
【0034】
コア51-1,51-2,51-3及びクラッド52は、主に石英で構成されている。コア51-1,51-2,51-3の各々の屈折率は、クラッド52の屈折率よりも所定値高い。コア51-1,51-2,51-3には、前述の所定値に応じた量の不純物が添加されている。不純物は、例えばゲルマニウム(Ge)等である。
【0035】
本実施形態では、PLC50におけるコア51-1,51-2,51-3が、略同一面上に配置されて光導波路面を形成している。そして、サブキャリア20におけるLD30の搭載面Pが、当該光導波路面に対して回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが接続されている。換言すれば、LD30が、x方向に関して低背型構造を有するサブキャリア20の側面21に取り付けられている。
このとき、PLC50におけるコア51-1,51-2,51-3と、コア51-1,51-2,51-3が接続されたコア51-4(
図1参照)とが、略同一面上に配置されて上記光導波路面を形成していてもよい。
また、サブキャリア20-1におけるLD30-1の搭載面P1、サブキャリア20-2におけるLD30-2の搭載面P2、及びサブキャリア20-3におけるLD30-3の搭載面P3が、上記光導波路面に対して回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが第1金属層91を介して接続されているのが好ましい。更に、サブキャリア20におけるLD30の搭載面Pが、上記光導波路面に対して90°或いは略90°回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが第1金属層91を介して接続されているのが好ましい。
【0036】
図4に示すように、サブキャリア20は、例えば第3金属層93(金属層)及び反射防止膜81を介して基板40と接続されている。第3金属層93は、金属層71,72,73を有する。金属層71は、サブキャリア20において基板40に対向する側面22に接している。金属層72は、基板40においてサブキャリア20に対向する側面42と反射防止膜81を介して接している。金属層73は、y方向で金属層71,72の間に設けられている。金属層73の融点は、金属層75の融点よりも低いことが好ましい。
【0037】
金属層71は、金属層75と接触しない範囲で、側面22の略全域に設けられている。y方向に沿って見たとき、金属層72,73は、サブキャリア20よりも大きく形成されている。金属層72,73の各々のz方向の前端、即ち金属層72,73の各々の上端は、金属層71のz方向の前端、即ち金属層71の上端と略同じ位置にある。金属層72のz方向の後端、即ち下端は、金属層71のz方向の後端、即ち金属層71の下端よりもz方向の後方に位置している。金属層73のz方向の後端、即ち下端は、金属層72のz方向の後端よりもz方向の後方に位置している。金属層73のz方向の後端は、反射防止膜81のz方向の後端、即ち反射防止膜81の下端よりもz方向の前方に位置している。
【0038】
金属層71の面積、即ち金属層71のx方向及びz方向を含む面内の大きさは、金属層72,73の面積、金属層72,73のx方向及びz方向を含む面内の大きさと略同じであるか、あるいは金属層72,73の面積よりも小さいことが好ましい。前述の構成では、基板40に対するサブキャリア20の接続強度が最大限に確保される。
【0039】
金属層71は、スパッタ又は蒸着等によって側面22に当接した状態で設けられ、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。金属層71は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される何れかの金属で構成されることが好ましい。
【0040】
金属層72は、スパッタ又は蒸着等によって側面42に当接した状態で設けられ、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。金属層72は、タンタル(Ta)で構成されることが好ましい。
【0041】
金属層73は、例えばAuSn、SnCu、InBi、SnAgCu、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の合金で構成されている。金属層73は、AuSn、SnAgCu及びSnBiInからなる群から選択されるいずれかの合金で構成されることが好ましい。
【0042】
サブキャリア20と基板40が上述のように第3金属層93及び反射防止膜81を介して接続されることによって、LD30の出射面31とPLC50において赤色光(光)、緑色光(光)、青色光(光)が入射するコア51の入射面61との間に隙間空間101が形成されている。LD30-1の出射面31-1は、コア51-1の入射面61-1と対向している。図示していないが、LD30-2の出射面31-2は、コア51-2の入射面61-2と対向している。LD30-3の出射面31-3は、コア51-3の入射面61-3と対向している。
【0043】
PLC50は、LD30の出射面31から出射される光をコア51に入射可能に配置されている。コア51-1の軸線JX-1は、LD30-1の出射面31-1から出射される赤色光LRの光軸AXRと略重なっている。図示していないが、コア51-2の軸線JX-2は、LD30-2の出射面31-2から出射される緑色光LGの光軸AXGと重なっている。コア51-3の軸線JX-3は、LD30-3の出射面31-3から出射される青色光LBの光軸AXBと重なっている。
【0044】
LD30の出射面31とPLC50のコア51の入射面61とのy方向での間隔は、前述のようにLD30の出射面31から出射される光が所定の光量でコア51に入射するように適宜設定され、例えば0~5μm程度である。例えば、ヘッドマウントディスプレイに用いられる集積光学装置10では、LD30の出射面31とPLC50のコア51の入射面61とのy方向での間隔は、0μmよりも大きく、5μm以下である。
【0045】
y方向において、LD30の出射面31とサブキャリア20においてy方向でPLC50の方を向く側面22とは、略同一面上に配されていてもよい。例えば、y方向において、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とは、略同一の位置にあり、互いに略同一面を形成している。「略同一」とは、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とのy方向でのずれが光学的に無視できる程度の大きさであることを意味する。
【0046】
図5に示すように、コア51-1,51-2,51-3は、PLC50の出射面64に到達するy方向での位置よりもy方向の後方で互いに1つに集められている。コア51-1,51-2,51-3は、y方向の前方に向かうにしたがって順次互いに近づき、1つのコア51-4に合流する。コア51-1,51-2,51-3からの漏れ光が生じないように、コア51-1,51-2,51-3はそれぞれ、所定の曲率半径以上の曲率半径でコア51-4に接続されるのが好ましい。
【0047】
LD30-1,30-2,30-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光は、コア51-1,51-2,51-3にそれぞれ入射した後、各コア内を伝搬する。コア51-1,51-2を伝搬する赤色光及び緑色光は、合流位置57-1で合わさり、コア51-1,51-2同士が合流したコア51-7内を伝搬する。コア51-3、51-7を伝搬する赤色光、緑色光及び青色光は、合流位置57-2で合わさり、コア51-3、51-7同士が合流し、コア51-4に入射する。合流位置57-2は、合流位置57-1よりもy方向の前方にある。合流位置57-2で赤色光、緑色光及び青色光が合わさった3色光は、コア51-4内を伝搬し、出射面64に到達する。出射面64から出射される3色光は、例えば集積光学装置10の使用目的に応じて信号光等として用いられる。
【0048】
図6及び
図7に示すように、本実施形態の集積光モジュール100は、上述の集積光学装置10をパッケージ110に収容したモジュールである。集積光モジュール100は、集積光学装置10と、パッケージ110と、を備える。パッケージ110は、キャビティ構造を有する本体102と、本体102を覆うカバー105と、を備える。
【0049】
本体102は、集積光学装置10が収容される箱状の収容部107と、収容部107に隣り合う電極部108と、を有する。本体102は、例えばセラミック等で形成されている。収容部107の上面には開口が形成されている。上面視で開口の周縁の収容部107の上面には、コバール等の金属膜112が形成されている。カバー105は、金属膜112を介して、収容部107の上面に形成された開口を隙間なく覆っている。カバー105で収容部107を気密封止する際に、収容部107の内部空間に窒素(N2)等の不活性ガスが封入されている。つまり、収容部107は、カバー105によって気密封止されている。収容部107の内部空間は、不活性ガスで満たされている。
【0050】
電極部108は、収容部107のy方向で後方、即ちy方向の手前側に配置されている。電極部108のz方向の前方の面、即ち上面は、収容部107のz方向の前方の面、即ち上面よりもz方向の後方即ち下に位置している。電極部108の底面は、収容部107の底面と略同じ高さに位置している。電極部108の上面には、x方向に間隔をあけて複数の外部電極パッド210が設けられている。
【0051】
図8及び
図9に示すように、収容部107の底壁部131の所定の位置に、集積光学装置10を設置するための土台180が設けられている。つまり、集積光学装置10は、収容部107の内部空間に配置されている。
【0052】
図8に示すように、底壁部131の上面においてy方向でサブキャリア20の下方の土台180と外部電極パッド210との間の位置には、x方向に間隔をあけて複数の内部電極パッド202が設けられている。
【0053】
内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々は、互いに異なる外部電極パッド210と接続されている。前述のように内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々と電気的に接続された外部電極パッド210は、不図示の電源等と電気的に接続されている。つまり、集積光モジュール100では、LD30と不図示の電源とがワイヤー95、内部電極パッド202-1、202-2、202-3及び外部電極パッド210によって接続されている。不図示の電源から内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々に対応する外部電極パッド210に電力が供給されることによって、LD30-1、30-2、30-3から赤色光、緑色光、青色光が出射される。
【0054】
図9に示すように、集積光学装置10は、第2金属層92を介してパッケージ110の土台180に固定されている。第2金属層92は、金属層171,172,173を有する。なお、
図9では、集積光学装置10の第3金属層93の金属層71,72,73は、まとめて第3金属層93として示されている。サブキャリア20、基板40、第3金属層93及び反射防止膜81,82の各々のz方向の後方即ち手前側の表面は互いに略同一面を形成していてもよい。金属層171は、サブキャリア20及び基板40の各底面に接している。金属層172は、土台180の上面即ちz方向の前方且つ奥側の表面に接している。金属層173は、z方向で金属層171,172の間に設けられている。金属層171,172,173の各々を構成する金属及び合金等は、例えば金属層71,72,73の各々を構成する金属、合金等と同じであってもよく、金属層71,72,73について説明した各群のうちから選択されてもよい。
【0055】
収容部107の側壁部132のうち、集積光学装置10のPLC50の出射面31と対向する側壁部132には、開口133が形成されている。開口133は、側壁部132においてPLC50のコア51-4から出射される3色光の光軸と交差する位置を略中心として形成されている。開口133は、コア51-4から出射され、収容部107の内部空間で拡がった3色光の側壁部132の表面上での大きさよりも大きく形成されている。
図10及び
図11に示すように、開口133は、側壁部132-1の外方からガラス板220によって隙間なく覆われている。つまり、収容部107は、カバー105に加えてガラス板220によって気密封止されている。ガラス板220の両板面には、不図示の反射防止膜が設けられている。開口133は、PLC50のコア51-4から出射される3色光が通過してパッケージ110の外部に出射させるための窓である。
【0056】
集積光学装置10のPLC50のコア51-4から出射された3色光LLは、y方向を中心に拡散しつつ、
図11に示すように、開口133及びガラス板220を通り、パッケージ110の外部に出射され、y方向で奥側、即ちy方向の前方に進行する。例えば、パッケージ110の側壁部132-1よりもy方向の前方即ち奥側に、コリメートレンズ310を備えたコリメート装置300を配置できる。y方向における出射面31とコリメートレンズ310との距離をコリメートレンズ310の焦点距離に合わせ、3色光LLの光軸上にコリメートレンズ310の中心を合わせることによって、集積光学装置10のPLC50のコア51-4から出射された3色光LLがコリメートされ、平行光になる。なお、
図11には、コリメート装置300がパッケージ110の外部に配置されているが、コリメートレンズ310がパッケージ110の内部に収容されてもよい。ガラス板220が開口133を気密封止できれば、ガラス板220を介してPLC50から出射された3色光が通る領域にコリメートレンズ310が形成されてもよい。
【0057】
次いで、集積光学装置10の製造方法を簡単に説明する。
【0058】
先ず、
図12に示すように、低背型構造を有するサブキャリア20の上面23に、ベアチップのLD30を公知の手法を用いて実装する。例えば、サブキャリア20の上面23に金属層75をスパッタ又は蒸着等を用いて形成した後、LD30の下面34(例えば、LD30-1の下面34-1)に金属層76をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。サブキャリア20の上面23に金属層をスパッタ又は蒸着等を用いて形成した後に、上記金属層の上に金属層75をスパッタ又は蒸着等を用いて形成してもよい。
【0059】
次に、例えば、レーザー90からレーザー光をサブキャリア20に照射する。レーザー光の照射によって、サブキャリア20のみを溶融及び変形しない程度に加熱し、サブキャリア20からの伝熱によって金属層75,76を軟化あるいは溶融し、第1金属層91を形成し、その後冷却する。これらの作業により、サブキャリア20の上面23に、金属層75,76を介してLD30を接合する。その後、サブキャリア20の側面22に金属層71をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0060】
基板40の上面41に、公知の半導体プロセスによってPLC50を形成する。続いて、入射面61及び出射面64に反射防止膜81,82、不図示の反射防止膜を形成する。その後、反射防止膜81のy方向の後方に、金属層72,73をこの順に、スパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0061】
次に、
図13に示すように、互いに対応するLD30-1,30-2,30-3の出射面31-1,31-2,31-3とコア51-1,51-2,51-3の入射面61-1,61-2,61-3とをx方向及びz方向において互いに重ね、y方向に所定の間隔をあけて対向させる。LD30から発せられる各色光の光軸と対応するコアの入射面61の軸線とを略重ねる。
【0062】
次に、サブキャリア20におけるLD30の搭載面を上記光導波路面に対して回転させた状態で、サブキャリア20と基板40とを接続する。すなわちy方向に沿って見たときにLD30が搭載されたサブキャリア20の上面23が上記光導波路面に対して所定角度を有する状態で、サブキャリア20と基板40とを接続する。レーザー90からレーザー光をサブキャリア20に照射し、サブキャリア20からの伝熱によって金属層71,72,73を軟化あるいは溶融させ、第3金属層93を形成し、LD30とPLC50との相対位置を調整しつつ、PLC50が形成された基板40に、LD30が実装されたサブキャリア20を接合する。
【0063】
上述したサブキャリア20と基板40の接合時において、サブキャリア20-1におけるLD30-1の搭載面P1、サブキャリア20-2におけるLD30-2の搭載面P2、及びサブキャリア20-3におけるLD30-3の搭載面P3を、上記光導波路面に対して回転させた状態で、サブキャリア20と基板40とを接続するのが好ましい。また、サブキャリア20におけるLD30の搭載面Pを上記光導波路面に対して90°或いは略90°回転させた状態で、サブキャリア20と基板40とを接続するのが好ましい。
【0064】
また、上述したサブキャリア20と基板40の接合時には、例えば、
図14に示すように、z方向におけるサブキャリア20の両側にレーザー90を配置する。レーザー90から出射された光を
図14の矢印で示す方向に沿ってサブキャリア20に当てて加熱し、サブキャリア20のみを溶融及び変形しない程度に加熱する。同時に、LD30から各色光を発し、発光強度を検出すると共に、PLC50のコア51-4から出射される3色光の出射強度を検出する。
【0065】
このように、LD30が搭載されたサブキャリア20の上面23を上記光導波路面に対して回転させた状態で、サブキャリア20と基板40とを接続することにより、サブキャリア20の側面21にLD30が取り付けられる。
【0066】
図15に示すように、y方向における出射面31と入射面61との間隔Sをミクロンオーダーの値で変化させ、発光強度に対する出射強度を光利用効率[%]とすると、間隔Sが大きくなる程、光利用効率が低下する。
図15では、S
a<S
b<S
c<S
d<S
e<S
f<S
gである。最適な間隔Sは、集積光学装置10の使用用途、LD30の発光パターン、コア51-1,51-2,51-3のx方向及びz方向の大きさによって変わる。これらの条件を勘案し、求められる光利用効率を満たすように間隔S及びLD30の位置、姿勢を調整する。前述したLD30の位置、姿勢の調整は、所謂アクティブアライメント及びギャップコントロールを行うことを意味する。前述の間隔S及びLD30の調整は、アクティブアライメントの機能を有する公知の装置を用いて行うことができる。
【0067】
アクティブアライメント及びギャップコントロールとサブキャリア20の加熱を行うと、
図14に示すように、最適な位置に配置されたLD30の出射面31と入射面61との間の金属層71,72,73は、金属層73の合金化及び僅かな熱収縮によって、LD30の出射面31とコア51の入射面61との間に挟まれていない各金属層よりも薄くなる。レーザー90によるサブキャリア20の加熱を止めることによって冷却され、LD30の位置が固定される。以上の手順を進めることによって、集積光学装置10を製造できる。
【0068】
上述したように、本実施形態によれば、サブキャリア20が低背型構造を有し、PLC50が複数のLD30に対応する複数のコアを有し、該複数のコアが略同一面上に配置されて光導波路面を形成している。そして、サブキャリア20におけるLD30の搭載面Pが当該光導波路面に対して回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが接続されているので、複数のサブキャリア20をx方向に配列させる際に、隣接して配置されるサブキャリア20同士やLD30同士の間隔(配列ピッチ)を小さくすることができ、集積光学装置10の更なる小型化を実現することができる。また、サブキャリア20とLD30とが、金属層75,76を有する第1金属層91を介して接続されている。このことによって、集積光学装置10の製造において、金属層75,76を溶融あるいは軟化してLD30とサブキャリア20とを接合した後、金属層71,72,73を溶融あるいは軟化してサブキャリア20と基板40とを接合する際に、金属層75が再溶融してLD30とサブキャリア20との相対的な位置ずれが生じるのを防止できる。LD30とサブキャリア20との相対的な位置ずれを防止することによって、サブキャリア20を介して接続されたLD30とPLC50との位置精度を高め、信頼性の高い集積光学装置10を提供できる。
【0069】
また、一般的な半導体レーザの放射角は、水平方向θhよりも垂直方向θvの方が大きく、レーザスポットが、垂直方向を長径、水平方向を短径とする略楕円形状を有する。PLC50のコア51の形状も、レーザスポットの上記形状に合わせた形状とすることで高効率の結合が可能となるが、PLC50の製造時の半導体プロセスにおいてコア51の形状を垂直方向に拡げることは品質面や製造効率の観点から好ましくない。一方、本発明によれば、LD30の搭載面Pが、上記光導波路面に対して90°或いは略90°回転した状態で、サブキャリア20と基板40とが接続されるので、レーザスポットを90°回転させて、例えば垂直方向を短径、水平方向を長径とする略楕円形状とすることができる。よって、PLC50の製造時の半導体プロセスにおいて、コア51を例えば垂直方向を短辺、水平方向を長辺とする略矩形形状に形成することができ、品質や製造効率を低下させること無く、高結合効率を容易に実現することができる。
【0070】
合金化による金属層75,76によるサブキャリア20とLD30との接合は、熱に強く、例えば
図16に示すようにワイヤーボンディング等の工程で周囲の環境温度が高くなっても解除されにくい。例えばワイヤーボンディング等の方法を用いてLD30と不図示の電源とをワイヤー95によってサブキャリア20の上面24で接続する際に、サブキャリア20とLD30との接合状態が良好に維持された状態が維持される。つまり、ワイヤーボンディングする際に、LD30とサブキャリア20が離れず、LD30がサブキャリア20の最適な位置に維持される。このことによって、集積光学装置10に所望の光利用効率及び光学特性を発揮させ、集積光学装置10の信頼性を高めることができる。
【0071】
集積光学装置10では、LD30の出射面31とPLC50において各色光が入射する入射面61との間に隙間空間101が形成されている。集積光学装置10は、LD30の出射面31から出射された各色光は、隙間空間101をy方向に沿って伝搬し、入射面61からPLC50のコア51に入射するように構成されている。前述の構成によって、LD30の出射面31から出射された各色光を所定の結合効率を満たした状態でPLC50のコア51に入射させることが容易であり、信頼性の高い集積光学装置10を提供できる。
【0072】
本実施形態に係る集積光モジュール100では、上述の集積光学装置10がパッケージ110に収容されている。集積光モジュール100において、集積光学装置10は、第2金属層92を介してパッケージ110の内部で固定されている。集積光モジュール100は、集積光学装置10を備え、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とがy方向で略同一の位置にあるので、信頼性を高めることができる。集積光モジュール100によれば、高い信頼性のもとで、使用目的に合った所望の光量の3色光を得られる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0074】
図17に示すように、集積光学装置10において、LD30の出射面31とPLC50のコア51の入射面61との間に樹脂98、あるいは樹脂以外の任意素材が設けられてもよい。但し、樹脂98及び前述の任意素材は、LD20から出射された光を透過可能である。PLC50のコア51への光の結合効率を高めるために、樹脂98及び前述の任意素材のLD20から出射される光に対する全光透過率は高い程好ましく、例えば80%以上であることが好ましい。LD30の出射面31とPLC50のコア51の入射面61との間に樹脂98が設けられた場合、各色光はLD30の出射面31から出射され、樹脂98に入射すると共に樹脂98を伝搬し、入射面61からPLC50のコア51に入射する。樹脂98及び前述の任意素材の屈折率を適切に設定することによって、反射防止膜81を省略できる。前述の変形例の集積光学装置では、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とが略同一面上に配されているので、集積光学装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
例えば、
図9に示す集積光モジュール100の一部の構成において、図示していないが、集積光学装置10は、第2金属層92に替えて第2樹脂層を介してパッケージ110の内部で土台180に固定されてもよい。第2金属層92は、例えばエポキシ樹脂等で構成されている。前述の変形例の集積光学装置では、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とが略同一面上に配されているので、集積光学装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
例えば、集積光学装置10では、第1金属層91は、1つの金属層によって構成されてもよく、3つ以上の互いに異なる金属層によって構成されてもよい。サブキャリア20と金属層75との間に新たな金属層を設けることによって、新たな金属層を設けない場合に比べて集積光学装置10の信頼性を向上させることができる。新たな金属層は、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成される。
【0077】
例えば、集積光学装置10では、サブキャリア20とLD30とが、少なくとも金属層75,76との合金層を含む不図示の金属複合層を介して接続されてもよい。「少なくとも第1金属層91の金属層75,76との合金層を含む金属複合層」とは、金属複合層の一部に金属層75,76との合金層を有している層であるか、又は、金属複合層の全部が当該合金層で構成されている層を意味する。例えば、集積光学装置10において、金属層75,76の金属がz方向の一部又は全体に亘って合金化し、合金層を形成してもよい。金属層75,76の金属がz方向の一部で合金化された場合、サブキャリア20とLD30との間には、金属層75,76の合金層と、金属層75,76の何れか又は双方とが介在する。介在する金属層及び合金層の組成は、上述説明した集積光学装置10の製造方法の実施時におけるサブキャリア20の加熱条件等によって変わり得る。金属層75,76の金属がz方向の全体に亘って合金化された場合、サブキャリア20とLDとの間には、実質的に上記合金層のみが介在してもよい。即ち、「金属層」は、一種類の金属からなる層、複数の金属を含む層、複数の金属が合金化した合金層を広く含む。
【0078】
例えば、集積光学装置10では、第1金属層91の金属層75,76同士の界面において、金属層76のy方向の全体に亘って金属層75,76が合金化し、金属層75,76との合金層が形成されることが好ましい。しかしながら、金属層76のy方向の一部で金属層75,76が合金化し、上記合金層が形成されてもよい。
【0079】
例えば、集積光学装置10では、サブキャリア20と基板40とが、少なくとも金属層71,73との合金層、及び/又は金属層72,73との合金層を含む不図示の他の金属複合層を介して接続されてもよい。「少なくとも金属層71,73との合金層、及び/又は金属層72,73との合金層を含む他の金属複合層」とは、その一部に金属層71の金属と金属層73との合金層、及び/又は金属層72,73との合金層を有しているか、又は、その全部が、金属層71の金属と金属層73との合金層、及び金属層72の金属と金属層73との合金層で構成されている層を意味する。例えば、集積光学装置10において、金属層71の金属と、金属層73の金属とがy方向の一部又は全体に亘って合金化し、1つの合金層が形成されてもよい。金属層72の金属と、金属層73の金属とがy方向の一部又は全体に亘って合金化し、1つの合金層が形成されてもよい。サブキャリア20と基板40とは、金属層71,73との合金層、及び金属層72,73との合金層の何れか又は双方を介して接続されてもよい。
【0080】
第1金属層91の金属層75,76の合金層を含む金属複合層の融点は、金属層71,73の合金層及び金属層72,73の合金層を含む他の金属複合層の融点よりも高いことが好ましい。例えば、金属層75を構成する金属と金属層76を構成する金属との合金層を構成する合金の融点は、金属層71を構成する金属と金属層73を構成する金属との合金層を構成する合金の融点よりも高いことが好ましい。第1金属層91の金属層75を構成する金属と金属層76を構成する金属との合金層を構成する合金の融点は、金属層72を構成する金属と金属層73を構成する金属との合金層を構成する合金の融点よりも高いことが好ましい。前述の各構成では、集積光学装置10の製造工程において、金属層71,72,73を溶融あるいは軟化させてサブキャリア20と基板40とを接合する際に、金属層75,76の合金層が再溶融してLD30とサブキャリア20との相対的な位置ずれが生じるのを防止できる。金属複合層は、単独の合金層、金属層と合金層との組み合わせ、互いに異なる組成の合金層同士の組み合わせ、前述の組み合わせとは異なり且つ少なくとも合金層を含む多層構造の何れであってもよい。
【0081】
第1金属層91及び金属層71,72,73の各融点の条件を前述のように考慮することによって、サブキャリア20を介して接続されたLD30とPLC50との位置精度が高く、信頼性の高い集積光学装置10を提供できる。各金属層の界面あるいはその近傍に形成された合金層の融点は、金属層75あるいは金属層73の融点に依存する。例えば、金属層75を金属層76よりも厚く形成すること、あるいは金属層73を金属層71,72よりも厚く形成することで、各金属層の界面あるいはその近傍に形成された合金層の融点を容易に制御できる。
【0082】
サブキャリア20と基板40とを接合するためにこれらの間に介在させる金属材料は、サブキャリア20、基板40、金属層71の各材料に応じて適宜変更可能である。金属層や合金層の金属材料の厚みは、サブキャリア20、基板40、金属層71の各材料に応じて適宜設定可能である。
【0083】
集積光学装置10では、第1金属層91は、2つの金属層75,76を有するが、例えば1つの金属層75のみ、あるいは金属層76のみを有してもよい。集積光学装置10では、サブキャリア20と基板40とが、金属層71,72,73及び反射防止膜81を介して接続されているが、1つの金属層のみを介して接続されてもよい。
【0084】
集積光学装置10では、サブキャリア20の側面22と基板40の側面42とが、y方向の後方から前方に向かって金属層71、金属層72、金属層73、反射防止膜81の順に介して接続されている。しかしながら、サブキャリア20の側面22と基板40の側面42との間の構成は、金属層71,72,73及び反射防止膜81の積層構造に限られない。サブキャリア20において基板40に対向する下面と基板40においてサブキャリア20に対向する上面とが、金属層71,72,73を介して接続されてもよい。この場合、金属層75の融点は、金属層73の融点よりも高いことが好ましい。前述の変形例の集積光学装置では、LD30の出射面31とサブキャリア20の側面22とが略同一面上に配されているので、集積光学装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0085】
上述の変形例において、サブキャリア20と基板40とが、少なくとも金属層71の金属と金属層73との合金層、及び/又は金属層72の金属と金属層73との合金層を含む不図示の他の金属複合層を介して接続されてもよい。この場合も、上記変形例と同様、金属層75の融点は、金属層71の金属と金属層73との合金層及び/又は金属層72と金属層73との合金層を含む他の金属複合層の融点よりも高いことが好ましい。
【0086】
上述の集積光学装置10の用途は、ウェアラブルデバイスや小型プロジェクタ等に限定されない。しかしながら、本発明に係る集積光学装置が処理する光の波長は、赤、緑、青に限定されず、可視波長域に限定されない。本発明に係る集積光学装置が処理する光の波長域は、可視波長域から近赤外波長域にわたってもよく、光通信で用いられることを目的として近赤外波長域のみであってもよい。本発明に係る集積光学装置が処理する光の波長の数は、3つに限定されず、所望の数に設定可能である。本発明に係る集積光学装置が処理する光の波長に応じて、基板40やPLC50、各種金属層及び合金層の材料は適宜選択され得る。
【0087】
上述の集積光モジュール100の構成は、
図6から
図11を参照して説明した構成に限定されない。パッケージ110の収容部107には、集積光モジュール100の用途、PLC50におけるコア51の形状に合わせて、コリメートレンズ310以外の結像レンズ、ビームスプリッター、波長フィルタ、多機能光学フィルタ、受光器等の光学素子を自由に収容できる。前述の光学素子は、
図11に示すコリメート装置300のようにパッケージ110の収容部107の外部に設置してもよい。集積光モジュール100は、任意の光学処理装置に一体的に組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 集積光学装置
20 サブキャリア(基台)
20-1 サブキャリア(基台)
20-2 サブキャリア(基台)
20-3 サブキャリア(基台)
21 側面
21-1 側面
21-2 側面
21-3 側面
22 側面
22-1 側面
22-2 側面
22-3 側面
23 上面
23-1 上面
24 上面
30 LD(光半導体素子)
30-1 LD(光半導体素子)
30-2 LD(光半導体素子)
30-3 LD(光半導体素子)
31 出射面
31-1 出射面
31-2 出射面
31-3 出射面
33 側面
34 下面
34-1 下面
40 基板
41 上面(表面)
42 側面
50 PLC(光導波路)
51 コア
51-1 コア
51-2 コア
51-3 コア
61 入射面
61-1 入射面
61-2 入射面
61-3 入射面
64 出射面
71 金属層
72 金属層
73 金属層
91 第1金属層(金属層)
92 第2金属層
93 第3金属層(金属層)
96 第2樹脂層
98 樹脂
99 第1樹脂層
100 集積光モジュール
101 隙間空間