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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091991
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240628BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/63
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073721
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2022150020の分割
【原出願日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2021184352
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021184353
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳昌
(57)【要約】
【課題】グリチルレチン酸又はその塩による歯垢形成抑制効果を充分に発揮することのできる口腔用組成物に関するグリチルレチン酸又はその塩による歯垢形成抑制効果を充分に発揮することのできる口腔用組成物に関する。
【解決手段】次の成分(A)~(C):
(A)グリチルレチン酸又はその塩 0.02質量%以上0.5質量%以下
(B)両性界面活性剤
(C)1価又は2価のアルコール
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が90以下であり、かつ25℃におけるpHが8未満である口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)グリチルレチン酸又はその塩 0.02質量%以上0.5質量%以下
(B)両性界面活性剤
(C)1価又は2価のアルコール
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が90以下であり、かつ25℃におけるpHが8未満である口腔用組成物。
【請求項2】
さらに、モノテルペン骨格を有する香料成分(D)を含有する請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((A)/(C))が、0.0002以上0.5未満である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(B)が、アミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、及びアミノ酸型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(B)の含有量が、0.01質量%以上3質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
成分(C)が、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
モノ脂肪酸ポリエチレングリコールの含有量が、0.004質量%未満である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリチルレチン酸は、従来より抗炎症作用、歯周病による歯槽骨吸収抑制作用及びヒスタミン遊離抑制作用等をもたらす成分として広く知られており、口腔に適用するための種々の剤や組成物に用いられている。例えば、特許文献1には、特定の2価アルコール及びノニオン界面活性剤とともに、薬効成分の一つとしてグリチルレチン酸を含有する原液を含む口腔用エアゾール剤が開示されており、薬効成分による作用効果を充分に発揮させるべく、保存安定性を高める試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-104320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、グリチルレチン酸による歯垢形成抑制効果を高めることについて、何らの検討もなされていない。
【0005】
すなわち、本発明は、グリチルレチン酸又はその塩による歯垢形成抑制効果を充分に発揮することのできる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、口腔内において歯垢形成抑制効果を発揮する成分としてグリチルレチン酸又はその塩に着目し、さらに種々検討したところ、特定量のグリチルレチン酸又はその塩と両性界面活性剤とを特定の質量比で含有しつつ、1価又は2価のアルコールを含有し、かつpHを低領域へ制御することにより、グリチルレチン酸又はその塩による優れた歯垢形成抑制効果を顕著に高めることのできる口腔用組成物を見出した。
【0007】
したがって、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)グリチルレチン酸又はその塩 0.02質量%以上0.5質量%以下
(B)両性界面活性剤
(C)1価又は2価のアルコール
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が90以下であり、かつ25℃におけるpHが8未満である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によれば、グリチルレチン酸又はその塩によってもたらされる歯垢形成抑制効果を飛躍的に高めることが可能であり、有用性の高い口腔用組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において「良好な使用感」又は「快適な使用感」とは、口腔用組成物を適用した際、口腔内において苦味の残存が抑制された状態を保持しつつ、良好な清涼感も持
続的にもたらされる感触を意味する。
【0010】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、グリチルレチン酸又はその塩を0.02質量%以上0.5質量%以下含有する。本発明の口腔用組成物であれば、成分(A)によりもたらされる歯垢形成抑制効果を飛躍的に高めることができる。
【0011】
成分(A)のグリチルレチン酸としては、α-グリチルレチン酸、β-グリチルレチン酸等が挙げられる。また、成分(A)のグリチルレチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのなかでも、β-グリチルレチン酸が好ましい。
【0012】
成分(A)の含有量は、優れた歯垢形成抑制効果を発揮する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.02質量%以上であって、好ましくは0.023質量%以上であり、より好ましくは0.025質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、良好な溶解性又は分散性を保持しつつ、高い歯垢形成抑制効果の発揮を維持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.5質量%以下であって、好ましくは0.4質量%以下であり、より好ましくは0.35質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.02質量%以上0.5質量%以下であって、好ましくは0.023~0.4質量%であり、より好ましくは0.025~0.35質量%であり、さらに好ましくは0.03~0.3質量%である。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、両性界面活性剤を含有する。これにより、本発明の口腔用組成物において、成分(A)の良好な溶解性又は分散性を促進しつつ、成分(A)による歯垢形成抑制効果を相乗的かつ顕著に増強させることができる。
【0014】
成分(B)の両性界面活性剤としては、アミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルスルホベタイン、及びアミノ酸型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
アミドベタイン型両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドベタイン等が挙げられる。
イミダゾリン型両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、2-アルキル-N―カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、N-ラウロイル-N'-カルボキシ
メチル-N'-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ココイル-N-カル
ボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
酢酸ベタイン型両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
アルキルスルホベタインとしては、具体的には、例えば、ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0016】
なかでも、成分(A)による歯垢形成抑制効果を相乗的かつ顕著に増強させる観点から、アミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、及び酢酸ベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アミドベタイン型両性界面活性剤、及びイミダゾリン型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0017】
成分(B)の含有量は、成分(A)による歯垢形成抑制効果を相乗的かつ顕著に増強させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.025質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.03質量%以上であり、またさらに好ましくは0.04質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、成分(A)の良好な溶解性又は分散性を確保しつつ、苦味の発現又は増強を回避する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.02~2質量%以下であり、さらに好ましくは0.025~1.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.03~1質量%であり、またさらに好ましくは0.04~1質量%である。
【0018】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、成分(A)による歯垢形成抑制効果を成分(B)にて相乗的かつ顕著に増強させる観点から、90以下であって、好ましくは80以下であり、より好ましくは70以下であり、さらに好ましくは60以下である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、成分(A)の良好な溶解性又は分散性を確保しつつ、苦味の発現又は増強を回避する観点から、好ましくは0.01超であり、より好ましくは0.015以上であり、さらにより好ましくは0.02以上であり、よりさらに好ましくは0.03以上である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、90以下であって、好ましくは0.01超~90であり、より好ましくは0.015~80であり、さらに好ましくは0.02~70であり、よりさらに好ましくは0.03~60である。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、1価又は2価のアルコールを含有する。これにより、成分(A)の溶解性又は分散性を良好に促進し、成分(A)による歯垢形成抑制効果を相乗的かつ顕著に高めることができる。
【0020】
成分(C)としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
なお、ポリエチレングリコールの平均分子量としては、成分(A)の溶解性又は分散性を良好に促進して、歯垢形成抑制効果を有効に高める観点から、好ましくは200~1000であり、より好ましくは200~700である。ここで、ポリエチレングリコールの平均分子量とは、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィ)により測定される質量平均分子量を意味する。
【0021】
成分(C)の含有量は、成分(A)の溶解性又は分散性を良好に促進して、成分(A)による歯垢形成抑制効果を有効に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、またさらに好ましくは12質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下であり、またさらに好ましくは20質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは1~80質量%であり、さらに好ましくは1.5~70質量%であり、よりさらに好ましくは2~60質量%であり、またさらに好ましくは7~30質量%であり、またさらに好ましくは12~20質量%である。
【0022】
なお、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールは、成分(C)の1価又は2価のアルコールに該当し得るものの、本発明の口腔用組成物においては、成分(A)による歯垢形成抑制効果を充分に増強させる観点から、かかるモノ脂肪酸ポリエチレングリコールの含有を制限するのが好ましい。
モノ脂肪酸ポリエチレングリコールとしては、具体的には、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノリノール酸ポリエチレングリコール、モノリノレン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0023】
モノ脂肪酸ポリエチレングリコールの含有量は、成分(A)により発揮される優れた歯垢形成抑制効果を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.004質量%未満であり、より好ましくは0.002質量%未満であり、或いは本発明の口腔用組成物は、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールを含有しないのが好ましい。
【0024】
成分(A)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((A)/(C))は、成分(A)の溶解性又は分散性を良好に促進して、成分(A)による歯垢形成抑制効果を有効に高める観点から、好ましくは0.0002以上であり、より好ましくは0.0003以上であり、さらに好ましくは0.0004以上であり、よりさらに好ましくは0.001以上であり、好ましくは0.5未満であり、より好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((A)/(C))は、好ましくは0.0002以上0.5未満であり、より好ましくは0.0003~0.4であり、さらに好ましくは0.0004~0.3であり、よりさらに好ましくは0.001~0.3である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、優れた歯垢形成抑制効果を発揮しつつ、成分(B)の両性界面活性剤由来の苦味の残存が発現又は増強するのを効果的に抑制し、清涼感の持続性を高める観点から、さらにモノテルペン骨格を有する香料成分(D)を含有するのが好ましい。
成分(D)のモノテルペン骨格を有する香料成分としては、口腔内に適用することが薬学的に許容されるものであればよい。具体的には、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、及びゲラニオールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、l-メントールが好ましい。
【0026】
成分(D)の含有量は、成分(B)由来の苦味の残存の発現又は増強を効果的に抑制する観点、及び良好な清涼感を保持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.015質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.7質量%以下であり、またさらに好ましくは1.5質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.005~2.3質量%であり、さらに好ましくは0.015~2質量%であり、よりさらに好ましくは0.015~1.7質量%であり、またさらに好ましくは0.02~1.5質量%である。
【0027】
成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、成分(A)による優れた歯垢形成抑制効果を確保しつつ、使用感を一層高める観点から、好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.008以上であり、さらに好ましくは0.01以上であり、好ましくは40以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは10以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比
((B)/(D))は、好ましくは0.004~40であり、より好ましくは0.008~25であり、さらに好ましくは0.01~10である。
【0028】
成分(A)の含有量及び成分(B)の含有量の合計と成分(D)の含有量との質量比({(A)+(B)}/(D))は、成分(A)による優れた歯垢形成抑制効果の発揮と良好な使用感の付与との両立を有効に図る観点から、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.005以上であり、さらに好ましくは0.01以上であり、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは20以下である。そして、成分(A)の含有量及び成分(B)の含有量の合計と成分(D)の含有量との質量比({(A)+(B)}/(D))は、好ましくは0.002~100であり、より好ましくは0.005~50であり、さらに好ましくは0.01~20である。
【0029】
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量及び成分(D)の含有量の合計との質量比((B)/{(A)+(D)})は、成分(A)による優れた歯垢形成抑制効果の発揮と良好な使用感の付与との両立を有効に図る観点から、好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.006以上であり、さらに好ましくは0.008以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(A)の含有量及び成分(D)の含有量の合計との質量比((B)/{(A)+(D)})は、好ましくは0.004~10であり、より好ましくは0.006~5であり、さらに好ましくは0.008~1.2である。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、好ましくは水を含有する。これにより、上記各成分を良好に溶解又は分散させつつ、口腔内への適用後における口腔用組成物の拡散性も高め、成分(A)による優れた歯垢形成抑制効果を発揮させることができる。
【0031】
水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。
【0032】
さらに、本発明の口腔用組成物の形態がペースト状の練歯磨剤のような歯磨組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1~65質量%であり、より好ましくは3~60質量%であり、さらに好ましくは5~55質量%である。また、本発明の口腔用組成物の形態が洗口剤、マウススプレー、液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは55~99.5質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは65~98質量%である。
【0033】
なお、本発明における水とは、口腔用組成物に直接配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。
【0034】
また、水の含有量の測定方法は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することもできる。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、水酸化ナトリウムや塩酸等のpH調整剤、香料、甘味料、色素等を含有することができる。
【0036】
25℃におけるpHは、成分(A)による顕著に増強された歯垢形成抑制効果を有効に
保持する観点から、8未満であって、好ましくは7.8以下であり、より好ましくは7.5以下であり、さらに好ましくは7.3以下であり、さらに好ましくは6.8以下であり、好ましくは3.8以上であり、より好ましくは4.2以上であり、さらに好ましくは4.7以上であり、よりさらに好ましくは5以上である。
【0037】
本発明の口腔用組成物の形態は、洗口剤、マウススプレー、液状歯磨剤等の液体口腔用組成物であってもよく、粉歯磨剤、練り歯磨剤等の歯磨剤組成物であってもよい。本発明の口腔用組成物であれば、適宜必要に応じてブラッシングを行った適用後の歯表面において、再び歯垢が形成されるのを有効かつ効果的に抑制し、快適な使用感を実感することができる。
【0038】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の口腔用組成物を開示する。
[1]次の成分(A)~(C):
(A)グリチルレチン酸又はその塩 0.02質量%以上0.5質量%以下
(B)両性界面活性剤
(C)1価又は2価のアルコール
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が90以下であり、かつ25℃におけるpHが8未満である口腔用組成物。
[2]成分(A)の含有量が、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.023質量%以上であり、より好ましくは0.025質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは0.4質量%以下であり、より好ましくは0.35質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である上記[1]の口腔用組成物。
【0039】
[3]成分(B)が、アミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルスルホベタイン、及びアミノ酸型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはアミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、及び酢酸ベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはアミドベタイン型両性界面活性剤、及びイミダゾリン型両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である上記[1]又は[2]の口腔用組成物。
[4]成分(B)の含有量が、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.025質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.03質量%以上であり、またさらに好ましくは0.04質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下である上記[1]~[3]いずれか1の口腔用組成物。
[5]成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、好ましくは80以下であり、より好ましくは70以下であり、さらに好ましくは60以下であり、好ましくは0.01超であり、より好ましくは0.015以上であり、さらにより好ましくは0.02以上であり、よりさらに好ましくは0.03以上である上記[1]~[4]いずれか1の口腔用組成物。
【0040】
[6]成分(C)が、好ましくはポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種又は2種以上である上記[1]~[5]いずれか1の口腔用組成物。
[7]成分(C)の含有量が、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、またさらに好ましくは12質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、よりさらに好ましく
は30質量%以下であり、またさらに好ましくは20質量%以下である上記[1]~[6]いずれか1の口腔用組成物。
[8]モノ脂肪酸ポリエチレングリコールの含有量が、好ましくは0.004質量%未満であり、より好ましくは0.002質量%未満であり、或いは本発明の口腔用組成物は、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールを含有しないのが好ましい上記[1]~[7]いずれか1の口腔用組成物。
[9]成分(A)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((A)/(C))が、好ましくは0.0002以上であり、より好ましくは0.0003以上であり、さらに好ましくは0.0004以上であり、よりさらに好ましくは0.001以上であり、好ましくは0.5未満であり、より好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.3以下である上記[1]~[8]いずれか1の口腔用組成物。
【0041】
[10]さらに、モノテルペン骨格を有する香料成分(D)を含有し、好ましくは成分(D)がl-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、及びゲラニオールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはl-メントールである上記[1]~[9]いずれか1の口腔用組成物。
[11]成分(D)の含有量が、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.015質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.7質量%以下であり、またさらに好ましくは1.5質量%以下である上記[10]の口腔用組成物。
[12]成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))が、好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.008以上であり、さらに好ましくは0.01以上であり、好ましくは40以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは10以下である上記[10]又は[11]の口腔用組成物。
[13]成分(A)の含有量及び成分(B)の含有量の合計と成分(D)の含有量との質量比({(A)+(B)}/(D))が、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.005以上であり、さらに好ましくは0.01以上であり、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは20以下である上記[10]~[12]いずれか1の口腔用組成物。
[14]成分(B)の含有量と成分(A)の含有量及び成分(D)の含有量の合計との質量比((B)/{(A)+(D)})が、好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.006以上であり、さらに好ましくは0.008以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である上記[10]~[13]いずれか1の口腔用組成物。
【0042】
[15]水の含有量が、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合における水の含有量が、好ましくは1~65質量%であり、より好ましくは3~60質量%であり、さらに好ましくは5~55質量%であり、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合における水の含有量が、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは55~99.5質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは65~98質量%である上記[1]~[14]いずれか1の口腔用組成物。
[16]25℃におけるpHが、好ましくは7.8以下であり、より好ましくは7.5以下であり、さらに好ましくは7.3以下であり、さらに好ましくは6.8以下であり、好ましくは3.8以上であり、より好ましくは4.2以上であり、さらに好ましくは4.7以上であり、よりさらに好ましくは5以上である上記[1]~[15]いずれか1の口
腔用組成物。
【実施例0043】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0044】
[実施例1~18、比較例1~9]
表1~2に示す処方にしたがって、各口腔用組成物を調製した。次いで、下記方法にしたがって、各評価を行った。
結果を表1~2に示す。
なお、実施例7、15、16及び比較例9のpHは、適宜塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整した。
【0045】
《歯垢形成抑制効果の評価》
1)24穴プレートの各口腔用組成物による処理
20~40代の健常者から採取した安静時唾液を0.2μmフィルターに通して無菌唾液を得た。24穴プレートに無菌唾液を500μL添加し、37℃で8時間静置することで、プレート底にペリクルを形成した。ペリクル形成後、減圧ポンプを用いて無菌唾液を吸い取り、各口腔用組成物1mLを添加して5分間振盪した。振盪は、振盪機(BioShake iQ(ワケンビーテック社製))を用い、室温(25℃)、400rpmの条
件で行った。その後、各々振蕩後の余分な水分を吸い取り、処理プレートとした。
【0046】
2)歯垢形成抑制率の評価
BHI培地に0.2%スクロースを添加し、最終OD600が0.1になるようにStreptococcus mutans JCM5707を調整して、歯垢形成モデル菌液とした。この歯垢形成モデル菌液を、上記1)で得られた処理プレートに1mLずつ添加し、嫌気条件下にて37℃で20時間培養した。
【0047】
3)歯垢のCV染色
減圧ポンプを用いて処理プレート中の歯垢形成モデル菌液を吸い取り、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)1mLを添加して5分間振蕩した。次に、ポンプを用いてPBSを吸い取り、0.1質量%クリスタルバイオレット(CV)溶液を500μL添加して20分間静置した。
さらにポンプでCV溶液を吸い取り、PBS1mLを添加して5分間振盪し、これを2回繰り返した。次いで、PBSをポンプで吸い取り、30%酢酸溶液1mLを添加して5分間振盪し、色素を抽出した。
【0048】
4)歯垢形成抑制効果の評価
得られた抽出液について、マイクロプレートレコーダー(TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモ)を用いて吸光度OD595nm
を測定した。また対照例として、上記各口腔用組成物を用いる代わりに精製水のみの液(100質量%)で処理した処理プレートの吸光度OD595nmを測定した。
次いで、精製水のみの液で処理した処理プレートの吸光度OD595nmを基準1とし、上記各口腔用組成物にて処理した処理プレートの吸光度OD595nmを指数表示して評価の指標とした。
なお、得られた指数表示の値が小さいほど、歯垢形成抑制効果が高いことを意味する。特に、かかる値が0.5未満であれば、優れた歯垢形成抑制効果を示すと判断することができる。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
[実施例19~22]
表3に示す処方にしたがって、各口腔用組成物を調製した。次いで、実施例1と同様にして歯垢形成抑制効果の評価を行うとともに、下記方法にしたがって、各評価を行った。
実施例1も含め、結果を表3に示す。
【0052】
《苦味の残存及び清涼感の持続の評価》
専門パネラー1名に、上記各口腔用組成物を30秒間含嗽した後に吐出させ、次いで水を10秒間含嗽させた。かかる含嗽後の苦味及び清涼感について、各々以下の基準により官能評価を行った。
各々評価結果の数値が高いほど、苦味の残存が抑制されており、また良好な清涼感の持続が実感されていることを示す。
【0053】
・苦味の残存評価
5:苦味を感じている時間が大幅に短縮された。
4:苦味を感じている時間が短縮された。
3:苦味を感じている時間が軽度に短縮された。
2:苦味を感じている時間は変わりなかった。
1:苦味を感じている時間が延長された。
・清涼感の持続評価
5:清涼感が良好に感じられ、その感触が良好に持続した。
4:清涼感が感じられ、その感触が持続した。
3:清涼感が若干感じられ、その感触が持続した。
2:清涼感がほとんど感じられなかった。
1:清涼感が全く感じられなかった。
【0054】
【表3】
【0055】
本発明の口腔用組成物の処方例(いずれも25℃におけるpHが8未満)を表4~5に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】