IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリナップ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-レールハンガー機構 図1
  • 特開-レールハンガー機構 図2
  • 特開-レールハンガー機構 図3
  • 特開-レールハンガー機構 図4
  • 特開-レールハンガー機構 図5
  • 特開-レールハンガー機構 図6
  • 特開-レールハンガー機構 図7
  • 特開-レールハンガー機構 図8
  • 特開-レールハンガー機構 図9
  • 特開-レールハンガー機構 図10
  • 特開-レールハンガー機構 図11
  • 特開-レールハンガー機構 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091997
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】レールハンガー機構
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20240628BHJP
   E04H 1/04 20060101ALI20240628BHJP
   D06F 57/12 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H1/04 A
D06F57/12 B
D06F57/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074011
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2020096663の分割
【原出願日】2020-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 蕗敏
(72)【発明者】
【氏名】間辺 慎一郎
(57)【要約】
【課題】洗濯物などの複数の物を掛けたハンガーをバーに掛け止めたままレールが寸断されて離間した間隔を跨いでスムーズに移動可能なレールハンガー機構を提供する。
【解決手段】ハンガーレール1と、ムーブハンガー1とを備えるレールハンガー機構において、ハンガーレール11は、複数のレールが組み合わされて一続きの経路となっているとともに、寸断されて離間した離間部を有しており、ムーブハンガー1は、ハンガーレール11に沿った長尺形状をなし、ハンガーレール11内をスライド移動して走行可能な単数又は複数のガイドランナー2と、ガイドランナー2に連結されて吊下げ支持される水平バー5と、ガイドランナー2と水平バー5とをガイドランナー2の長手方向の中央部で連結して回転自在に軸支する単数又は複数の吊下げ軸6と、を備え、ガイドランナー2を、吊下げ軸6から突出した突出長が、離間部の離間距離D1より長くする。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に支持固定されたレールと、前記レール内をスライド移動して走行するムーブハンガーとを備えるレールハンガー機構であって、
前記レールは、複数のレールが組み合わされて一続きの経路となっているとともに、寸断されて離間した離間部を有しており、
前記ムーブハンガーは、前記レールに沿った長尺形状をなし、前記レール内をスライド移動して走行可能な単数又は複数のガイドランナーと、前記ガイドランナーに連結されて吊下げ支持されるバーと、前記ガイドランナーと前記バーとを前記ガイドランナーの長手方向の中央部で連結して回転自在に軸支する単数又は複数の吊下げ軸と、を備え、
前記ガイドランナーは、前記吊下げ軸から突出した突出長が、前記離間部の離間距離より長くなっているレールハンガー機構。
【請求項2】
前記ガイドランナーの長手方向の両端は、前記レールと当接する下面が上り傾斜の曲面となっている請求項1に記載のレールハンガー機構。
【請求項3】
前記ガイドランナーの長手方向の両端は、前記レールと当接する上面が下がり傾斜の曲面となっている請求項2に記載のレールハンガー機構。
【請求項4】
前記ガイドランナーの長手方向の両端は、平面視で先端がすぼまった形状となっている請求項3に記載のレールハンガー機構。
【請求項5】
前記ガイドランナーは、弾性体からなる分割可能な左右一対の2つのパーツからなり、これら2つのパーツは、長手方向両端の相対的な水平移動がそれぞれ拘束されずに弾性変形可能に連結されている請求項1ないし4のいずれかに記載のレールハンガー機構。
【請求項6】
前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、長手方向の両端が上下にずれないように嵌合している請求項5に記載のレールハンガー機構。
【請求項7】
前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、長手方向の両端が、一方の凹部に他方の凸部が嵌まり込んで上下にずれないように嵌合している請求項6に記載のレールハンガー機構。
【請求項8】
前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、互いの間隔を保持する間隔保持材がいずれか一方又は両方に形成されている請求項6又は7に記載のレールハンガー機構。
【請求項9】
前記バーの長手方向の両端は、隣接する他のムーブハンガーの前記バーと係合するための係合部が形成されている請求項1に記載のレールハンガー機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離間部を超えて移動可能なレールハンガー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅や戸建住宅などの一般住宅では、洗面室(脱衣室)に洗濯機が設置されることが多く、洗濯機で洗濯した衣服を洗面室の天井にそのままハンガーに掛けて干すことが要求されている。例えば、特許文献1には、物干し場での作業を軽減するために、洗面室の天井にハンガーを一時的に吊るすことのできる天井部構造が開示されている。
【0003】
また、近年の住宅の浴室は、簡易で安価な構成で防湿できる観点等からユニットバスが普及しており、ユニットバスには、雨天時の洗濯物の乾燥のため、浴室乾燥機が設けられることも多くなっている。このため、浴室乾燥機で乾燥させるために、浴室にハンガーを掛けるための施設が要望されている。例えば、特許文献2には、浴室に沢山の洗濯物を干すことができるバスルームハンガーが開示されている。
【0004】
しかし、これらの開示技術は、洗面室や浴室専用の個々の室の物干しのための構成であった。このため、洗濯機で洗濯した衣服を洗面室にハンガーに掛けて干し、そのまま、ハンガーに掛けた状態で浴室の乾燥機で乾燥させたいという要望があるものの、浴室の湿気が洗面室に漏れた場合、カビの温床になってしまうという問題や2部屋連結することにより乾燥効率が下がり、電気代が高騰するという問題が発生するため実現されていないのが実情であった。
【0005】
このような問題に関連する先行技術として、例えば、特許文献3には、浴室と脱衣室(洗面室)間のサッシ枠の上枠を横切り、居室と浴室との間で人を運搬するリフトを吊り支持し、リフトの上端に接続された戸車を案内するハンガーレールが開示されている。また、このハンガーレールには、ハンガーレールの内部に、その内部を戸車の通過時以外のときに浴室側と脱衣室側に仕切る気密部材が、戸車の通過時に戸車の通過が可能な状態に取り付けられており、ハンガーレールの内部を通じて浴室内の蒸気が居室側へ流れることを防止する浴室用ハンガーレールの気密構造も開示されている。
【0006】
しかし、特許文献3に記載の浴室用ハンガーレールの気密構造は、防湿のための機構が設けられているとはいえ、人を運搬するリフトを支持するハンガーレールであり、洗濯物を干すためのハンガーレールではなかった。また、脱衣室や洗面室などの一般居室と、浴室とは、天井を含めて区画されていないと適切な防湿ができない上、適時使用する浴室乾燥機と常時使用する24時間換気とのダクトの系統の違いなどからスペースを有効活用しつつ安価に天井高さを統一することが困難であった。このため、浴室の扉(建具)を跨いで一続きのレールを設置することが困難であるという問題があった。
【0007】
また、例えば、特許文献4には、ハンガーに吊下げた物品を、物干しスペースやウォークインクローゼット、ロフトなどの複数の室間を跨いで自在にスライド移動させることが可能なハンガーレールや部屋構造が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献4に記載のハンガーレールや部屋構造は、複数の室間でスライド移動可能とするために複数の室を跨ぐ一続きのレールを設置するものであった。このため、特許文献4に記載のハンガーレールや部屋構造は、複数の室の天井高さを一致させるとともに、こられの室を仕切る建具を一切設置しない構造であった。よって、特許文献4に記載のハンガーレールや部屋構造は、天井高さの違う室同士や室同士の境に建具が設けられて一続きのレールを設置できない室同士には適用できないものであった。このため、特許文献4に記載のハンガーレールや部屋構造は、浴室と隣室とのような防湿上天井まで完全に区画して使用時には、扉を密閉する必要がある二室には、適用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3210857号公報
【特許文献2】特開2012-239875号公報
【特許文献3】特開平10-108888号公報
【特許文献4】特開2020-56257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、洗濯物などの複数の物を掛けたハンガーをバーに掛け止めたままレールが寸断されて離間した間隔を跨いでスムーズに移動可能なレールハンガー機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るレールハンガー機構は、天井に支持固定されたレールと、前記レール内をスライド移動して走行するムーブハンガーとを備えるレールハンガー機構であって、前記レールは、複数のレールが組み合わされて一続きの経路となっているとともに、寸断されて離間した離間部を有しており、前記ムーブハンガーは、前記レールに沿った長尺形状をなし、前記レール内をスライド移動して走行可能な単数又は複数のガイドランナーと、前記ガイドランナーに連結されて吊下げ支持されるバーと、前記ガイドランナーと前記バーとを前記ガイドランナーの長手方向の中央部で連結して回転自在に軸支する単数又は複数の吊下げ軸と、を備え、前記ガイドランナーは、前記吊下げ軸から突出した突出長が、前記離間部の離間距離より長くなっている。
【0012】
第2発明に係るレールハンガー機構は、第1発明において、前記ガイドランナーの長手方向の両端は、前記レールと当接する下面が上り傾斜の曲面となっている。
【0013】
第3発明に係るレールハンガー機構は、第2発明において、前記ガイドランナーの長手方向の両端は、前記レールと当接する上面が下がり傾斜の曲面となっている。
【0014】
第4発明に係るレールハンガー機構は、第3発明において、前記ガイドランナーの長手方向の両端は、平面視で先端がすぼまった形状となっている。
【0015】
第5発明に係るレールハンガー機構は、第1発明ないし第4発明のいずれかの発明において、前記ガイドランナーは、弾性体からなる分割可能な左右一対の2つのパーツからなり、これら2つのパーツは、長手方向両端の相対的な水平移動がそれぞれ拘束されずに弾性変形可能に連結されている。
【0016】
第6発明に係るレールハンガー機構は、第5発明において、前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、長手方向の両端が上下にずれないように嵌合している。
【0017】
第7発明に係るレールハンガー機構は、第6発明において、前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、長手方向の両端が、一方の凹部に他方の凸部が嵌まり込んで上下にずれないように嵌合している。
【0018】
第8発明に係るレールハンガー機構は、第6発明又は第7発明において、前記ガイドランナーの前記2つのパーツは、互いの間隔を保持する間隔保持材がいずれか一方又は両方に形成されている。
【0019】
第9発明に係るレールハンガー機構は、第1発明において、前記バーの長手方向の両端は、隣接する他のムーブハンガーの前記バーと係合するための係合部が形成されている。
【発明の効果】
【0020】
第1発明~第9発明によれば、洗濯物を掛けたハンガーなど色々な物をバーに掛け止めたままレールの離間した間隔を跨いでスムーズに移動可能となっている。このため、ドアなどの建具で閉鎖して隔離することが可能な2室間を色々な物をバーに掛け止めたまま容易に移動することができる。よって、本発明を浴室と洗面室(脱衣室)に適用した場合、洗濯機が設置されている洗面室において洗濯機から洗濯物をムーブハンガーのバーにハンガーを用いて掛け、そのまま浴室にムーブハンガーを移動して浴室乾燥機にかけて乾燥させるという使用方法が可能となる。このため、洗濯物を掛けたハンガーをそれぞれ手で持って洗面室から浴室に運ぶ手間を省くことができる。
【0021】
特に、第2発明によれば、ムーブハンガーをレールの離間した間隔を超えて移動させる際に、ガイドランナーの長手方向の一端が下方に傾いた場合でも、ガイドランナーがレールの端部に引っ掛かることがなくスムーズに移動させることができる。
【0022】
特に、第3発明によれば、ムーブハンガーをレールの離間した間隔を超えて移動させる際に、万が一、ガイドランナーの長手方向の一端が上方に傾いた場合でも、ガイドランナーがレールの端部に引っ掛かることがなくスムーズに移動させることができる。
【0023】
特に、第4発明によれば、ムーブハンガーをレールの離間した間隔を超えて移動させる際に、ガイドランナーの長手方向の一端が左右に傾いた場合でも、ガイドランナーがレールの端部に引っ掛かることがなくスムーズに移動させることができる。
【0024】
特に、第5発明によれば、レールに曲線部が存在してもムーブハンガーをそのまま移動させることができ、浴室などの狭い空間を有効利用して色々なものを吊下げることが可能となる。よって、本発明を浴室とその隣室に適用した場合、複数のムーブハンガーを用いて洗濯物を干したまま適度な間隔をあけて配列することが容易となり、一度に浴室乾燥機にかけて乾燥させることができる洗濯物の量を増やすことができる。
【0025】
特に、第6発明及び第7発明によれば、レールの曲線部を通過できるようにガイドランナーを左右に分割した場合でも、レールが寸断されて離間した間隔を跨いで移動する際に、ガイドランナーが互いに上下にずれて引っ掛かることを防止することができる。
【0026】
特に、第8発明によれば、レールの曲線部を通過できるようにガイドランナーを左右に分割した場合でも、ガイドランナーの左右2つのパーツが互いに接近し過ぎて、レールのスリットの間の隙間から落下することを防止することができる。
【0027】
特に、第9発明によれば、複数のムーブハンガーを連結して一度に沢山のものを一人で容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るムーブハンガーを示す斜視図である。
図2図2は、同上のムーブハンガーを示す正面図である。
図3図3は、同上のムーブハンガーを示す左側面図である。
図4図4は、同上のムーブハンガーを示す平面図である。
図5図5は、同上のムーブハンガーのガイドランナーを第1ガイドランナーと第2ガイドランナーに分離した状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
図6図6は、水平バーの係合部と他の水平バーの係合部との係合部分を示す図であり、(a)が両者の間隔を縮めて係合した係合状態を示す図であり、(b)が両者の間隔を広げて係合状態を解いた離脱状態を示す図である。
図7図7は、ガイドランナーの第1嵌合部に相当する変形例1に係る嵌合部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が左側面図、(c)が平面図である。
図8図8は、ガイドランナーの第1嵌合部に相当する変形例2に係る嵌合部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が左側面図、(c)が平面図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係るムーブハンガー7を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係るレールハンガー機構の全体構成を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、同上のレールハンガー機構の各構成を示す鉛直断面図である。
図12図12は、同上のレールハンガー機構のハンガーレールの寸断間隔を跨ぐ際のムーブハンガーの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を適用したムーブハンガー及びそれを備えたレールハンガー機構を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
[第1実施形態]
先ず、図1図5を用いて、本発明の第1実施形態に係るムーブハンガー1について説明する。本発明の第1実施形態に係るムーブハンガー1を示す斜視図であり、図2は、そのムーブハンガー1を示す正面図である。また、図3は、ムーブハンガー1を示す左側面図であり、図4は、ムーブハンガー1を示す平面図である。そして、図5は、ムーブハンガー1のガイドランナー2を第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4に分離した状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
【0031】
図1図4に示すように、本発明の第1実施形態に係るムーブハンガー1は、後述のハンガーレール11(図10図11も参照)内をスライド移動して走行可能なガイドランナー2と、このガイドランナー2に連結されて吊下げ支持される水平バー5と、両者を連結する吊下げ軸6と、を備えている。
【0032】
このムーブハンガー1は、樹脂などの弾性体からなる複数の部材から構成され、水平バー5に洗濯物など色々な物を掛け止めて一度に沢山の物をハンガーレール11(図10も参照)に沿って移動させる機能を有している。
【0033】
<ガイドランナー>
(第1ガイドランナーと第2ガイドランナー:2パーツ)
ガイドランナー2は、図1図5に示すように、PP(Polyepropylene:ポリプロピレン樹脂),ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene:アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂),PVC(Poly Vinyl Cloride:ポリ塩化ビニル樹脂)などの汎用樹脂や高弾性の金属などの弾性体からなる分割可能な左右一対の第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の2つのパーツから構成されている。これらの第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、略板状のガイド本体30,40と、これらガイド本体30,40両端部に形成された第1嵌合部31,41と、第2嵌合部32,42など、から構成された略同形の部材である。
【0034】
また、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、ガイド本体30,40の長手方向の中央部に内側に突出する中央プレート33,43を有し、この中央プレート33,43には、貫通孔34,44が形成されている。
【0035】
そして、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、第1嵌合部31,41と、第2嵌合部32,42で互いに嵌合するとともに、貫通孔34,44で水平バー5及び吊下げ軸6にビスやボルトなどでねじ止め固定されている。
【0036】
(第1嵌合部及び第2嵌合部)
これらの第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の長手方向両端に位置する第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42は、図4図5等に示すように、略同形の嵌合部であり、一方の凹部に他方の凸部が嵌まり込んで上下にずれないように嵌合している。
【0037】
つまり、図5(a),図5(b)に示すように、第1ガイドランナー3の第1嵌合部31には、凹部31aが形成されているとともに、第2ガイドランナー4の第1嵌合部41には、凸部41aが形成されている。このため、第1嵌合部31,41は、第1ガイドランナー3の凹部31aに第2ガイドランナー4の凸部41aが嵌まり込んで上下にずれないように嵌合している。
【0038】
同様に、第1ガイドランナー3の第2嵌合部32には、凸部32aが形成されているとともに、第2ガイドランナー4の第2嵌合部42には、凹部42aが形成されている。このため、第2嵌合部32,42は、第2ガイドランナー4の凹部42aに第1ガイドランナー3の凸部32aが嵌まり込んで上下にずれないように嵌合している(図5(b)等参照)。
【0039】
要するに、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の長手方向の両端に位置する第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42では、左右一対の第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4とが互いに嵌合して相対的な上下移動が拘束されている。
【0040】
一方、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42では、凹部31a,42aと凸部32a,41aとが水平方向に嵌合しているだけであり、相対的な水平移動は拘束されていない。つまり、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、貫通孔34,44を介して中央部の中央プレート33,43だけで固定されている。よって、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の両端部の先端部分の水平方向のずれ動きは、拘束されずにフリーとなっており、弾性変形自在となっている。
【0041】
このため、後述のように、レールに曲線部13が存在しても第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4とが互いにずれ動くことで、曲線部13の曲面にガイドランナー2が追随してスムーズにスライド移動することが可能となっている。
【0042】
(先端がすぼまった形状)
また、図1図4に示すように、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42で嵌合することで、ガイドランナー2の長手方向の両端部が、船首のごとく平面視で先端がすぼまった形状となっている。
【0043】
このため、後述のように、ムーブハンガー1をハンガーレール11の離間した離間部15を超えて移動させる際に、ガイドランナー2の長手方向の一端が左右に傾いた場合でも、第1嵌合部31,41又は第2嵌合部32,42の先端がすぼまった形状によりレール内に案内されることとなる。よって、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることがなく、ムーブハンガー1をスムーズに移動させることができる。
【0044】
(下面が上り傾斜)
また、図1図3等に示すように、これらの第1ガイドランナー3及び第2ガイドランナー4の第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42の下面は、端に行くにしたがって緩やかに上昇するような上り傾斜の曲面31b,41b,32b,42bとなっている。
【0045】
このため、ムーブハンガー1をハンガーレール11の離間した離間部15を超えて移動させる際に、ガイドランナー2の長手方向の一端が下方に傾いた場合でも、ガイドランナー2の上り傾斜の曲面31b,41b,32b,42bのいずれかが、ハンガーレール11の端部に当接してガイドランナー2を上方に案内することとなる。よって、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることがなく、ムーブハンガー1をスムーズに移動させることができる。
【0046】
(上面が下り傾斜)
また、図1図3等に示すように、第1ガイドランナー3及び第2ガイドランナー4の長手方向の両端の上面は、端に行くにしたがって下降するような下り傾斜の曲面31c,41c,32c,42cとなっている。
【0047】
このため、ムーブハンガー1をレールの離間した間隔を超えて移動させる際に、ガイドランナー2の長手方向の一端が上方に傾いた場合でも、ガイドランナー2の下り傾斜の曲面31c,41c,32c,42cのいずれかが、ハンガーレール11の端部に当接してガイドランナー2を下方に案内することとなる。よって、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることがなく、ムーブハンガー1をスムーズに移動させることができる。
【0048】
但し、レールの高さを抑えたいという要望があることから、ガイドランナー2の端部に上り傾斜を大きくとると、前述の下り傾斜を大きくとることができないという問題が発生する。重力が作用するため、離間部15でガイドランナー2の長手方向の一端が上方に傾くおそれはあまり考えにくいことを勘案すると、前述の下面に上り傾斜を設けることの方が重要であり、ガイドランナー2の端部上面に設ける上り傾斜は最小限で構わない。
【0049】
(間隔保持材)
また、図1図4図5に示すように、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4は、それぞれのガイド本体30,40の一方の内面から他方へ略垂直に突出するプレート状の間隔保持材35,45が形成されている。この間隔保持材35,45は、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の互いの間隔が一定距離以下とならないように保持する機能を有している。
【0050】
このため、ガイドランナー2は、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4との間の間隔がハンガーレール11のスリットの間隔より狭くなり、ハンガーレール11のスリットから落下することを防止することができる。
【0051】
なお、間隔保持材35,45が、ガイドランナー2の2つのパーツ(第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4)の両方にそれぞれ1つずつ形成されている場合を例示したが、いずれか一方に形成されていても構わないし、両方に複数設けられていても構わない。要するに、本発明に係る間隔保持材は、ガイドランナー2を構成する2つのパーツの間に介在して、物理的に互いの間隔が一定距離以下とならないように保持する機能を有するものであればよい。
【0052】
<水平バー>
次に、図1図4図6を用いて、ムーブハンガー1の水平バー5について説明する。図6は、水平バー5の係合部51と他の水平バー5’の係合部52’との係合部分を示す図であり、(a)が両者の間隔を縮めて係合した係合状態を示す図であり、(b)が両者の間隔を広げて係合状態を解いた離脱状態を示す図である。図1図4に示すように、水平バー5は、吊下げ軸6を介して前述のガイドランナー2に連結されて吊下げ支持される水平方向に長い断面円形の棒材からなる部材である。
【0053】
この水平バー5は、断面円形の棒材からなるバー本体50と、このバー本体50の長手方向の両端部に形成された一対の第1係合部51及び第2係合部52など、から構成されている。この水平バー5は、バー本体50に洗濯物Laなどが吊り下げられたハンガーh1等を引っ掛けて吊り下げる物干しバーとしての機能を有している(図10図11も参照)。
【0054】
図6に示すように、第1係合部51及び第2係合部52は、隣接する他の水平バー5’の係合部52’等と係合して連結するための部位であり、水平断面がC字状となっている。図6(a)に示すように、第1係合部51(第2係合部52’)は、ムーブハンガー1の水平バー5と、隣接する他のムーブハンガー1’の水平バー5’との間隔を押し付けて縮めるだけで断面C字状の外側の曲面に沿って弾性変形しながら第1係合部51と第2係合部52’とが係合する仕組みとなっている。
【0055】
また、図6(b)に示すように、水平バー5と隣接する水平バー5’の両者を引っ張って離間させるだけで、第1係合部51(第2係合部52’)の断面C字状の部分が弾性変形して開き、簡単に離脱する仕組みとなっている。
【0056】
このため、ムーブハンガー1は、隣接する他のムーブハンガー1’との係合・離脱が極めて容易で、複数のムーブハンガー1(1’)を連結して一度に沢山のものを一人で容易に移動させることができる。
【0057】
<吊下げ軸>
次に、図1図3を用いて、ムーブハンガー1の吊下げ軸6について説明する。図1図3に示すように、吊下げ軸6は、円筒状の部材であり、前述のガイドランナー2と水平バー5とを回転自在に接続するとともに、両者の上下方向に間隔をあけてハンガーなどを水平バー5に掛け止められるスペースを確保するスペーサーとしての機能を有する部材である。
【0058】
この吊下げ軸6は、図4に示すように、軸芯から水平バー5の端部までの長さL1が左右で均等となった水平バー5の長手方向の中央にねじ止め固定されて接続されている。つまり、吊下げ軸6は、ムーブハンガー1の重心位置に設けられており、水平バー5の左右のバランスが良く、ハンガーを掛け止めて移動させるのがスムーズに行えるようになっている。
【0059】
また、吊下げ軸6は、図3に示すように、ガイドランナー2の長手方向の中央にもねじ止め固定されて接続されている。この吊下げ軸6の側面からガイドランナー2の長手方向の端部までの突出長さL2は、後述のハンガーレール11の離間距離D1より長く設定されている。
【0060】
<嵌合部の変形例>
次に、図7図8を用いて、前述のガイドランナー2の嵌合部(第1嵌合部31,41、第2嵌合部32,42)の変形例について説明する。図7は、ガイドランナー2の第1嵌合部31,41に相当する変形例1に係る嵌合部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が左側面図、(c)が平面図である。また、図8は、ガイドランナー2の第1嵌合部31,41に相当する変形例2に係る嵌合部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が左側面図、(c)が平面図である。
【0061】
図7に示すように、変形例1に係る嵌合部は、前述のガイドランナー2と同様に、先端がすぼまった形状となっているとともに、下面が上り傾斜の曲面、且つ、上面が下り傾斜の曲面となっている。このため、前述のように、変形例1に係る嵌合部は、レールの離間した間隔を跨ぐ際にガイドランナーの長手方向の一端が左右又は上下に傾いた場合でも、嵌合部で左右、上下に適切に案内してガイドランナーがレールの端部に引っ掛かることがなく、ムーブハンガーをスムーズに移動させることができる。
【0062】
また、図7に示すように、変形例1に係る嵌合部は、ガイドランナーを構成する2つのパーツが、中央線で接合する左右対称且つ同一形状となっている。このように構成することにより、図示するガイドランナーは、前述のガイドランナー2と同様に、レールに曲線部13が存在しても2つのパーツが互いに水平方向にずれ動くことで、曲線部13の曲面に追随してスムーズにスライド移動することが可能となっている。
【0063】
但し、変形例1に係る嵌合部は、2つのパーツの長手方向の端部が上下方向にずれることを防止することができない。このため、変形例1に係る嵌合部は、レールの離間した間隔を跨ぐ際に、2つのパーツの端部が上下方向にずれて一方のパーツがレールの下方に入り込み、ガイドランナーがレールの端部に引っ掛かるおそれがある。よって、この点で、ガイドランナー2の嵌合部(第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42)は、変形例1に係る嵌合部より有利である。
【0064】
次に、図8に示すように、変形例2に係る嵌合部は、前述のガイドランナー2と同様に、先端がすぼまった形状となっているとともに、下面が上り傾斜の曲面、且つ、上面が下り傾斜の曲面となっている。このため、前述のように、変形例2に係る嵌合部は、レールの離間した間隔を跨ぐ際にガイドランナーの長手方向の一端が左右又は上下に傾いた場合でも、嵌合部で左右、上下に適切に案内してガイドランナーがレールの端部に引っ掛かることがなく、ムーブハンガーをスムーズに移動させることができる。
【0065】
また、図8に示すように、変形例2に係る嵌合部は、ガイドランナーを構成する2つのパーツが、段差のある嵌合部で嵌合し、一方のパーツ(図8(a)の左側のパーツ)が下方にずれない構成となっている。このように構成することにより、図示するガイドランナーは、前述のガイドランナー2と同様に、レールに曲線部13が存在しても2つのパーツが互いに水平方向ずれ動くことで、曲線部13の曲面に追随してスムーズにスライド移動することが可能となっている。
【0066】
但し、変形例2に係る嵌合部は、一方のパーツ(図8(a)の左側のパーツ)が下方にずれない構成となっているものの、他方のパーツ(図8(a)の右側のパーツ)は、下方に相対的にずれ動くおそれがある。このため、変形例2に係る嵌合部は、レールの離間した間隔を跨ぐ際に、2つのパーツの端部が上下方向にずれて一方のパーツがレールの下方に入り込み、ガイドランナーがレールの端部に引っ掛かるおそれがある。よって、この点で、ガイドランナー2の嵌合部(第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42)は、変形例2に係る嵌合部より有利である。
【0067】
[第2実施形態]
次に、図9を用いて、本発明の第2実施形態に係るムーブハンガー7について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係るムーブハンガー7を示す斜視図である。第2実施形態に係るムーブハンガー7が、前述のムーブハンガー1と相違する点は、ガイドランナー2及び吊下げ軸6が2セット(2組)設けられ、水平バーが前述の水平バー5の略倍の長さになっている点である。よって、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0068】
図9に示すように、第2実施形態に係るムーブハンガー7は、2組の前述のガイドランナー2,2と、これらのガイドランナー2,2に連結されて吊下げ支持される水平バー8と、両者を連結する2組の前述の吊下げ軸6と、を備えている。
【0069】
(水平バー)
水平バー8は、図9に示すように、2組の吊下げ軸6,6を介して2組のガイドランナー2に連結されて吊下げ支持される水平方向に長い断面円形の棒材からなる部材である。この水平バー8は、前述のバー本体50の略倍の長さの断面円形の棒材からなるバー本体80と、このバー本体80の長手方向の両端部に形成された前述の一対の第1係合部51及び第2係合部52など、から構成されている。この水平バー8も、バー本体80に洗濯物などが吊り下げられたハンガー等を引っ掛けて吊り下げる物干しバーとしての機能を有している。
【0070】
第2実施形態に係るムーブハンガー7によれば、水平バー8が長くなっている分だけ、ムーブハンガー1より一度に掛けられる洗濯物などの吊り下げられる物の量が多くなり、水平バー5同士を係合させる手間を省いて、運搬効率を高くすることができる。
【0071】
[レールハンガー機構]
次に、図10図12を用いて、本発明を互いに隣接する2室に適用した本発明の実施形態に係るレールハンガー機構10について説明する。図10は、レールハンガー機構10の全体構成を模式的に示す斜視図であり、図11は、レールハンガー機構10の各構成を示す鉛直断面図である。また、図12は、ハンガーレールの寸断間隔を跨ぐ際のムーブハンガー1の状態を示す側面図である。なお、隣接する2室として、浴室(A室)と、その脱衣室兼洗面室(B室)を例示して説明する。
【0072】
図10に示すように、A室は、バスタブ及び図示しない浴室乾燥機等が設置された浴室であり、B室は、洗濯機が設置された洗面室であり、浴室に隣接して脱衣室としての機能も兼用している。
【0073】
レールハンガー機構10は、図10図12に示すように、複数のレールが組み合わされて一続きの経路となったハンガーレール11と、このハンガーレール11に吊り下げ支持され、ハンガーレール11内をスライド移動して走行する前述のムーブハンガー1など、から構成されている。このレールハンガー機構10は、ハンガーh1を用いてB室に設置された洗濯機から取り出された洗濯物Laをムーブハンガー1に掛け、A室の浴室乾燥機にそのまま移動する際、又は乾いた洗濯物をA室から取り出す際に用いられる物干し移動用の機構である。
【0074】
(ハンガーレール:レール)
ハンガーレール11は、図10に示すように、直線状の直線部12と曲線状の曲線部13とからなり、天井C1から支持材14により吊り下げ支持されている。また、このハンガーレール11には、レールが寸断されて離間した離間部15が設けられている。
【0075】
支持材14は、図11に示すように、天井C1を構成する天井材又は天井材を支える下地材(軽量鉄骨等)(図示せず)にビス止め等で固定されている。
【0076】
また、離間部15は、A室とB室の境界線CLを跨ぐように設けられている(図12も参照)。このため、A室を使用する際に、A室のドアを完全に閉鎖することが可能であり、A室の使用にあたって利便性を損なうことがない。特に、A室が浴室である場合、湿気がハンガーレール11から漏洩することがないとともに、特許文献3に記載の発明のように、ハンガーレールに防湿のための機構を設ける必要もない。
【0077】
図11に示すように、ハンガーレール11は、下面に長手方向に沿った溝状のスリット11aが形成された断面コの字状の部材であり、この断面コの字状のハンガーレール11の中に前述のガイドランナー2がハンガーレール11の軸方向に沿ってスライド自在に嵌め込まれている。このため、ムーブハンガー1は、ガイドランナー2がハンガーレール11内をスライド移動することでムーブハンガー1がハンガーレール11に吊り上げ支持されたままハンガーレール11に沿って横移動自在となっている。なお、スリット11aは、吊下げ軸6を挿通するための隙間となっている。
【0078】
(離間部)
次に、主に図12を用いて、ムーブハンガー1で離間部15を跨いで越える際の作用について説明する。図12に示すように、離間部15の離間距離D1は、前述のガイドランナー2の突出長さL2より短く設定されている(図3も参照)。
【0079】
このため、図12に示すように、ムーブハンガー1で離間部15を越える際は、ムーブハンガー1の吊下げ軸6が離間部15に差し掛かるときに既にガイドランナー2の前端(図12の矢印方向:進行方向の前方の端、以下同じ)が離間部15を越えてハンガーレール11に到達している。
【0080】
前述のように、吊下げ軸6は、ガイドランナー2の長手方向の中心位置及びムーブハンガー1の重心位置に設けられているとともに、ガイドランナー2が、吊下げ軸6に対してムーブハンガー1の進行方向後方にも存在している。このため、ムーブハンガー1の吊下げ軸6が離間部15に差し掛かるまでは、ムーブハンガー1の前端(第1係合部51)が下がって傾くおそれは極めて少ない。
【0081】
よって、ムーブハンガー1が傾斜するおそれがある吊下げ軸6が離間部15に到達するときには、ガイドランナー2の前端が離間部15を越えてハンガーレール11に到達している。このため、前述のように、ガイドランナー2の上り傾斜の曲面31b,41b,32b,42bのいずれかでガイドランナー2を上方に案内することができ、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かるおそれが極めて少ない。
【0082】
なお、図12に示す符号W1は、A室とB室の境界線CLに設けられた間仕切り壁W1であり、符号S1は、A室への入り口建具の上枠であるサッシ枠S1を示している。このように、レールハンガー機構10では、離間部15の離間距離D1が、サッシ枠S1を跨ぐ程充分な距離となっている。この場合でも、前述のように、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることなく、離間部15を跨いで越えることができる。
【0083】
また、稀と思われるが、吊下げ軸6が離間部15に到達してムーブハンガー1(ガイドランナー2)の前端が上方に傾斜した場合も、前述のように、ガイドランナー2の上り傾斜の曲面31b,41b,32b,42bのいずれかでガイドランナー2を下方に案内することができ、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かるおそれが極めて少ない。
【0084】
同様に、吊下げ軸6が離間部15に到達してムーブハンガー1(ガイドランナー2)の前端が左右に傾斜したときには、前述のガイドランナー2の前端のすぼまった形状によりハンガーレール11のレール内に案内されることとなり、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かるおそれが極めて少ない。
【0085】
その上、ムーブハンガー1のガイドランナー2は、後述の曲線部13を通過するため左右一対の2パーツから構成されている。このため、ガイドランナー2は、離間部15を跨ぐ際に、2つのパーツの端部が互いに上下方向にずれて一方のパーツがハンガーレール11の下方に入り込み、ガイドランナー2がレールの端部に引っ掛かるおそれがある。しかし、前述のような嵌合部(第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42)とすることにより、2つのパーツの上下方向のずれ動きを拘束しており、ガイドランナー2の2つのパーツが一体となって離間部15を越えることができる。このため、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることない。
【0086】
以上のように、ムーブハンガー1は、ハンガーレール11の離間部15があった場合でも、ガイドランナー2がハンガーレール11の端部に引っ掛かることなく、離間部15を跨いで越えることができる。このため、ムーブハンガー1は、ハンガーレール11に離間部15があった場合でも、スムーズに移動させることができる。
【0087】
(曲線部)
次に、図11等を用いて、ムーブハンガー1で曲線部13を通過する際の作用について説明する。前述のように、ムーブハンガー1のガイドランナー2は、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の2つのパーツから構成されている。
【0088】
また、前述のように、これらの第1ガイドランナー3及び第2ガイドランナー4は、水平方向に嵌合しているだけであり、相対的な水平移動は拘束されておらず(図5等参照)、第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の両端部の水平方向のずれ動きは、拘束されずにフリーとなっており、弾性変形自在となっている。
【0089】
このため、ムーブハンガー1がハンガーレール11の曲線部13に差し掛かると、水平方向に薄い第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4が互いにずれ動いて曲線部13に沿って弾性変形する。このとき、前述のように、第1嵌合部31,41及び第2嵌合部32,42は、第1ガイドランナー3及び第2ガイドランナー4の弾性変形を拘束しない。よって、ムーブハンガー1は、曲線部13の曲面にガイドランナー2が追随してスムーズにスライド移動することが可能となっている。
【0090】
[実施形態の作用効果]
以上説明した本発明の第1実施形態に係るムーブハンガー1、第2実施形態に係るムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10によれば、衣服などの洗濯物Laを掛けたハンガーh1など色々な物を水平バー5,8に掛け止めたままハンガーレール11の離間部15を跨いでスムーズに移動可能となっている。
【0091】
このため、ムーブハンガー1、ムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10によれば、ドアなどの建具で閉鎖して隔離することが可能な2室間を色々な物を水平バー5,8に掛け止めたまま容易に移動することができる。よって、レールハンガー機構10のように、浴室(A室)と洗面室(B室)に適用した場合、洗濯機が設置されている洗面室(脱衣室)において洗濯機から洗濯物Laをムーブハンガー1,7の水平バー5,8にハンガーh1を用いて掛け、そのまま浴室(A室)にムーブハンガー1,7を移動して浴室乾燥機にかけて乾燥させるという使用方法が可能となる。このため、洗濯物Laを掛けたハンガーh1をそれぞれ手で持って洗面室(B室)から浴室(A室)に運ぶ手間を省くことができる。
【0092】
また、ムーブハンガー1、ムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10によれば、ガイドランナー2を第1ガイドランナー3と第2ガイドランナー4の2つのパーツから構成しているので、2つのパーツが互いにずれ動いて曲線部13に沿って弾性変形可能となっている。このため、ムーブハンガー1は、ハンガーレール11に曲線部13が設けられた場合でも、曲線部13の曲面にガイドランナー2が追随してスムーズにスライド移動することが可能となっている。
【0093】
このため、ムーブハンガー1、ムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10によれば、曲線部13を多用したハンガーレール11を設け一度に沢山の洗濯物Laを浴室(A室)に搬入できるとともに、浴室乾燥機付近に効率よく集積して乾燥させることができる。つまり、複数のムーブハンガー1,7を用いて洗濯物Laを干したまま適度な間隔をあけて配列することが容易となり、一度に浴室乾燥機にかけて乾燥させることができる洗濯物Laの量を増やすことができる。また、ムーブハンガー1,7及びハンガーレール11を利用して乾燥させた洗濯物Laを一度に引き出して効率よく運ぶことができる。
【0094】
その上、ムーブハンガー1、ムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10によれば、水平バー5,8の長手方向の両端に断面C字状の第1係合部51及び第2係合部52が設けられているので、隣接する他のムーブハンガー1’との係合・離脱が極めて容易である。このため、レールハンガー機構10は、複数のムーブハンガー1(1’)を連結して一度に沢山のものを一人で容易に移動させることができる。
【0095】
以上、本発明の第1実施の形態に係るムーブハンガー1、第2実施の形態に係るムーブハンガー7、及びレールハンガー機構10について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたって具体化した一実施の形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0096】
特に、ハンガーレールを設置する隣接した2室として浴室と洗面室を例示して説明したが、浴室やその隣室に限られない。また、2室を例示したが、ハンガーレールを設置する部屋は、2室に限られず、3室以上の複数の室に亘っていても構わない。その上、ハンガーレールが寸断された離間部も複数設けてもよいことは云うまでもない。
【0097】
また、ムーブハンガー1,7及びレールハンガー機構10の用途として、洗濯物をハンガーに掛けて移動する物干し移動用のものを例示して説明した。しかし、ムーブハンガー1,7及びレールハンガー機構10の用途は、これらに限られず、使用頻度が低いものを収納場所から出し入れするなど、ハンガー等の吊下げ部材を用いて水平バー5に吊り下げたまま移動して運ぶ用途には適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1,1’,7:ムーブハンガー
2:ガイドランナー
3:第1ガイドランナー
30:ガイド本体
31:第1嵌合部
31a:凹部
31b:上り傾斜の曲面
31c:下り傾斜の曲面
32:第2嵌合部
32a:凸部
32b:上り傾斜の曲面
32c:下り傾斜の曲面
33:中央プレート
34:貫通孔
35:間隔保持材
4:第2ガイドランナー
40:ガイド本体
41:第1嵌合部
41a:凸部
41b:上り傾斜の曲面
41c:下り傾斜の曲面
42:第2嵌合部
42a:凹部
42b:上り傾斜の曲面
42c:下り傾斜の曲面
43:中央プレート
44:貫通孔
45:間隔保持材
5,5’,8:水平バー
50,50’,80:バー本体
51:第1係合部
52,52’:第2係合部
6:吊下げ軸
10:レールハンガー機構
11:ハンガーレール(レール)
11a:スリット
12:直線部
13:曲線部
14:支持材
15:離間部
C1:天井
CL:境界線
D1:離間距離
W1:間仕切り壁
S1:サッシ枠
La:洗濯物
h1:ハンガー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12