(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000092
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】在庫管理装置、在庫管理方法、及び、在庫管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20231225BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098643
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 崇士
(72)【発明者】
【氏名】新田 駿侍
(72)【発明者】
【氏名】小関 峻介
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB63
(57)【要約】
【課題】不正な在庫操作の早期発見及び対処を可能とする。
【解決手段】算出部が、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する。判別部は、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する。アラート出力制御部は、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御する。これにより、不正な在庫操作を早期に発見して対処可能とすることができる。
【選択図】
図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出部と、
算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別部と、
算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が前記判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御部と、
を有する在庫管理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記計算期間の期首における前記商品の在庫数に対応する在庫金額に対する、前記計算期間の期首の在庫金額及び前記計算期間の期末の在庫金額の差額の割合である在庫金額増加率を前記変遷情報として算出し、
前記アラート出力制御部は、算出された前記在庫金額増加率が、所定の上限値以上である場合に、前記アラート出力の出力制御を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の在庫管理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記計算期間における各前記在庫金額増加率に基づいて四分位範囲を算出し、第3四分位数となる前記在庫金額増加率に、所定の在庫金額増加率を加算処理することで前記上限値を算出し、
前記アラート出力制御部は、算出された前記在庫金額増加率が、前記上限値以上である場合に、前記アラート出力の出力制御を行うこと、
を特徴とする請求項2に記載の在庫管理装置。
【請求項4】
前記計算期間における前記在庫金額の推移を示すグラフを表示部に表示する表示制御部を、さらに備えること、
を特徴とする請求項2に記載の在庫管理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記在庫金額の正常な推移を示すグラフと共に、前記計算期間における前記在庫金額の推移を示すグラフを前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項4に記載の在庫管理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記計算期間における在庫金額の推移を示すグラフ、及び、前記計算期間における在庫の商品の売上金額の推移を示すグラフを、前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項5に記載の在庫管理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記計算期間における前記在庫金額、及び、前記計算期間における前記在庫金額増加率を、一方の軸を前記在庫金額とし、他方の軸を前記在庫金額増加率とした2次元座標にプロットした、前記在庫金額及び前記在庫金額増加率の相関表を前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項6に記載の在庫管理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記計算期間における前記在庫金額の棒グラフ、及び、前記計算期間における在庫の商品の出庫金額の棒グラフを、前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項7に記載の在庫管理装置。
【請求項9】
算出部が、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出ステップと、
判別部が、算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別ステップと、
アラート出力制御部が、算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が前記判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御ステップと、
を有する在庫管理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出部と、
算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別部と、
算出された前記変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が前記判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御部として機能させること、
を特徴とする在庫管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理装置、在庫管理方法、及び、在庫管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、期末在庫の水増しによる損益計算書上の売上利益水増しによる不正が行われることがある。このような不正による存在を未然に防止するためにも、在庫管理は重要となっている。在庫管理に関する先行技術としては、特許文献1(特開2002-279024号公報)に商品量設定システムが開示されている。
【0003】
この商品量設定システムは、部門サーバが、情報調査会社から受信した商品の消化実績と営業情報データベースサーバから受信した商品の再販実績とをそれぞれ所定期間毎に集計し、この所定期間毎の消化実績と再販実績とに基づいて店舗における商品の在庫を示す店舗在庫量を算出する。そして、部門サーバが、消化実績、再販実績及び店舗在庫量を所定期間毎に関連づけて表示装置に表示する。
【0004】
これにより、電子データ化された商品毎の消化実績、再販実績、算出した店舗在庫量、店舗在庫週数の傾向を変動パターン化して、所定期間の出荷量を推定し継続的な生産量を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年における不正な在庫操作は巧妙となっており、早期発見及び対処が困難となっている。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、不正な在庫操作の早期発見及び対処を可能とした在庫管理装置、在庫管理方法、及び、在庫管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る在庫管理装置は、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出部と、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別部と、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御部と、を有する。
【0009】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る在庫管理方法は、算出部が、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出ステップと、判別部が、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別ステップと、アラート出力制御部が、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御ステップと、を有する。
【0010】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る在庫管理プログラムは、コンピュータを、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する算出部と、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する判別部と、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が判別部から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御するアラート出力制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、不正な在庫操作の早期発見及び対処を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態の在庫管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、自動検知実行スケジュールデータの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、在庫データの取得範囲条件データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、検知ID及びスケジュールIDを含むパラメータの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、在庫管理の実行タイミングを説明するための図である。
【
図6】
図6は、在庫管理の際に抽出するデータの抽出期間を説明するための図である。
【
図7】
図7は、在庫金額増幅率の算出動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、異常判定を行うための、在庫金額増幅率の上限値の算出手法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、上限値を用いた在庫金額増幅率の異常判定の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、在庫金額増幅率の異常判定結果に基づいて生成される異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ及び異常判定結果メッセージ詳細データを示す図である。
【
図11】
図11は、異常判定結果メッセージデータ及び異常判定結果メッセージ詳細データに基づいて表示される異常一覧画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、異常一覧画面に表示された抽出条件の入力欄を示す図である。
【
図13】
図13は、メッセージ詳細表示画面のアラート表示領域を説明するための図である。
【
図14】
図14は、抽出条件の取得の仕方を説明するための図である。
【
図15】
図15は、抽出条件となる抽出項目の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、抽出条件となる抽出期間の取得の仕方を説明するための図である。
【
図17】
図17は、第1のグラフを表示する際に取得されるデータを示す図である。
【
図18】
図18は、抽出条件として倉庫Aの売上が設定された例を示す図である。
【
図19】
図19は、第2のグラフを表示する際に取得されるデータを示す図である。
【
図20】
図20は、抽出条件として倉庫Aの商品が設定された例を示す図である。
【
図21】
図21は、第3のグラフを表示する際に取得されるデータを示す図である。
【
図22】
図22は、初期セットされた抽出条件の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、第4のグラフを表示する際に取得されるデータを示す図である。
【
図28】
図28は、第1~第4のグラフが表示された状態のメッセージ詳細表示画面を示す図である。
【
図29】
図29は、各グラフの所定の部分を着色して表示するためのグラフ着色パラメータを示す図である。
【
図30】
図30は、グラフ着色パラメータに基づくグラフの着色表示例を説明するための図である。
【
図31】
図31は、異常判定結果データが得られた倉庫Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「品種」の抽出項目を選択した例を示す図である。
【
図32】
図32は、倉庫Aで管理されている品種Aの期首及び期末の在庫金額増加率の算出動作を説明するための図である。
【
図34】
図34は、メッセージ詳細表示画面の一例を示す図である。
【
図35】
図35は、第3のグラフに対する着色表示例を示す図である。
【
図36】
図36は、第3のグラフに基づく在庫の不正操作の解析を説明するための図である。
【
図37】
図37は、異常判定結果データが得られた倉庫Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「受注」の抽出項目を選択した例を示す図である。
【
図38】
図38は、月別在庫・受注金額データの生成動作を説明するための図である。
【
図40】
図40は、第2のグラフに基づく在庫の不正操作の解析を説明するための図である。
【
図41】
図41は、部門Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「部門A」の抽出項目を指定した例を示す図である。
【
図42】
図42は、月別在庫金額データの生成動作を説明するための図である。
【
図43】
図43は、月別在庫・売上金額データの生成動作を説明するための図である。
【
図44】
図44は、月別在庫・売上金額データの生成動作を説明するための、他の図である。
【
図45】
図45は、月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データの生成動作を説明するための図である。
【
図46】
図46は、月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データの生成動作を説明するための、他の図である。
【
図47】
図47は、月別の在庫金額と出庫金額集計データの生成動作を説明するための図である。
【
図48】
図48は、月別の在庫金額と出庫金額集計データの生成動作を説明するための図である。
【
図53】
図53は、第1のグラフに基づく在庫の不正操作の解析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施の形態となる在庫管理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(概要)
近年、会社の不正・従業員や幹部の横領等、不正が増加傾向にある。このような不正は、人の手で検知困難であり、機械的に早期発見可能な装置の開発が望まれている。実施の形態の在庫管理装置は、このような要望に応えるものであり、不正パターンをシナリオ化して、定期的に自動で検知可能となっている。
【0015】
シナリオのパターンは、例えば下記のように多数存在しており、それぞれに対応したシステムを構築する必要がある。
【0016】
・売上実績に関する不正:売上金額の改ざん→実績増し
・仕入実績に関する不正:取引先との共謀による架空支払→癒着
・在庫に関する不正:期末在庫金額の水増し→利益操作
【0017】
実施の形態の在庫管理装置1は、在庫に関する不正シナリオに着目している。不正の目的は、期末在庫の水増しによる損益計算書上の売上利益水増しとなっているケースが多い。不正の特徴として、下記が挙げられる。
【0018】
1.期首~期末間で在庫が不自然に増加する
2.売上に伴わない在庫の増加となる
3.細かな管理が行われていない、不正が発覚しにくい商品を用いて在庫金額を操作する
【0019】
在庫が正常な状態であれば、基本的には年間を通して商品の在庫数は一定となる。しかし、売上の利益操作を目的とした在庫の不正な調整が行われた場合、期末時点での在庫は異常に多い状態となる。また、急激な在庫の増加は、期中の棚卸で不正が発覚するおそれがある。このため、不正な在庫の増加を目立たなくするために、年間を通して少しずつ在庫を増やす操作が行われることがある。
【0020】
このため、実施の形態の在庫管理装置1は、「期首~期末での在庫の異常な増加率」に着目する。次に、実施の形態の在庫管理装置1は、分析画面を用いて検知されたデータをユーザが確認する。そして、在庫を管理している倉庫又は商品の在庫状況、在庫が変動するタイミングを確認して、異常なデータか否かの判断を行う。
【0021】
ここで、在庫管理を行う場合、複数の倉庫及び複数種類の商品の組み合わせによる集計及び比較確認が必要となり、集計処理に時間を要する。
【0022】
確認対象→全倉庫及び全商品の在庫データ及び入出庫データ
必要な集計単位→いずれも月毎に集計が必要
倉庫→経過月毎の在庫状況と増加傾向の確認が必要
「倉庫×商品」→悪用されている商品に気づくために、倉庫と商品での在庫の増加傾向の確認が必要
「売上金額・在庫金額」→売上に伴っていない在庫である確認が必要
確認方法→「必要な集計単位」毎に、月別の在庫金額・売上金額を集計
【0023】
膨大なデータから複数の集計が必要となるため、作業に時間を要する。また、同一の集計単位内で月毎に比較する必要があるため、確認漏れ及びミスが発生する。
【0024】
また、「倉庫×商品」の組み合わせ毎に比較が必要となり、時間を要し、確認ミス及び漏れが発生しやすい。
【0025】
確認対象→「倉庫×商品」の組み合わせ内での期首~期末の在庫金額比較
確認方法→「倉庫×商品」の組み合わせ毎に期首及び期末の在庫金額を集計、又は、「倉庫×商品」の組み合わせ毎に期首・期末の在庫金額を比較して増加率を算出
【0026】
この場合、倉庫又は商品のそれぞれの単位でも膨大な数となる。また、「倉庫×商品」の組み合わせは、より膨大な数となり、それぞれのデータ上でさらに期首と期末のデータ比較が必要になる。このため、集計時間を要し、集計ミス及び比較対象選択ミス等の人為的なミスが発生する。
【0027】
このようなことから、実施の形態の在庫管理装置1は、以下の動作を行うことで、上述の不具合を解消する。
【0028】
1.期首~期末での在庫金額増加率を倉庫×商品毎に算出し、異常に在庫が増加している倉庫×商品の組み合わせを自動で検知する。期首~期末間での在庫金額を自動で集計し、在庫金額増加率を算出することで、集計コストを削減でき、集計ミス及び計算ミスを防止できる。また、定期的に、同一倉庫×商品のデータを確認して、異常に在庫金額が増加している倉庫×商品の組み合わせを検知する。これにより、確認漏れ及びミスを防止できる。また、ユーザは、異常な在庫金額となっている倉庫×商品の組み合わせを容易に把握でき、対策及び調査を行うことができる。
【0029】
2.異常検知された倉庫の月毎の在庫金額を集計し、期首から期末にかけての在庫の増加傾向を可視化する。在庫の不正操作として下記が考えられる。
【0030】
期末に在庫が大きく増加→単月毎の在庫増加:大(期末のみ)
徐々に在庫増加→単月毎の在庫増加:小(月毎に発覚しくいように操作している可能性がある(隠蔽操作))
【0031】
このため、実施の形態の在庫管理装置1は、月毎の在庫金額を集計して、在庫金額の月経過による金額推移を可視化する。これにより、在庫金額の月経過による変化の様子を確認できるため、不正操作の特徴を確認できる。また、倉庫間での在庫の動きを比較でき、異常検知された倉庫が如何に異常か確認できる。また、それぞれの集計コストを排除でき、比較確認の漏れ及びミスを防止できる。
【0032】
3.「異常検知された倉庫の在庫金額」と「倉庫から出荷した売上データの売上金額」をそれぞれ集計し、売上金額と在庫金額を可視化して、売上に伴う在庫の変化を確認可能とする。通常、在庫の補充は、売上の見込みがある商品に対して行われる。不正な在庫の増加は、売上が伴わない増加となる。このため、各倉庫の売上金額と在庫金額を月別に集計して可視化することで、月経過毎に売上金額と在庫金額がどのように変化しているか確認できる。また、不正であることを示す、売上は変わらず在庫金額だけ増加する特徴を確認可能とすることができる。また、売上及び在庫の2つの集計コストを排除でき、売上と在庫の比較を容易化できる。
【0033】
4.「異常検知された倉庫で管理している商品別の在庫金額」と「期首~期末の在庫金額増加率」をそれぞれ集計し、在庫が大きく増加している商品を可視化する。在庫の増加には、在庫を増やす対象商品の特徴が重要となる。すなわち、下記の特徴と有する商品は、不正利用されやすい。
【0034】
・在庫が雑管理されている商品
・取引量があまり増えない見込みとして「複数商品を1商品」として管理している商品
【0035】
このため、実施の形態の在庫管理装置1は、期首~期末での在庫が大きく増加した商品を可視化、在庫金額と比較と在庫金額増加率を比較する。商品の金額が小さく、在庫金額増加率が大きい場合、期末の在庫金額は、あまり変わらない。商品の金額が大きく、在庫金額増加率が大きい場合、期末の在庫金額が大きく増える。期末の在庫金額が大きく増えると、損益計算書上の売上原価が大きく減っているように見せることができる。このため、在庫金額が大きく、在庫金額増加率が大きいものを検出することで不正を検知することができる。
【0036】
5.「異常検知された倉庫の在庫金額」と「出庫処理にて在庫減された金額」を集計して可視化する。期末時点で不正により在庫を増やした場合、決算後に隠蔽のために在庫減の処理が行われやすい。このため、月毎の在庫金額と減らされた在庫金額を可視化する。これにより、「不正処理時の金額」と「隠蔽処理された金額」を検知することができる。
【0037】
(ハードウェア構成)
図1は、実施の形態の在庫管理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図1に示す在庫管理装置1は、記憶部2、制御部3、通信インターフェース部4及び入出力インターフェース部5を備えている。入出力インターフェース部5には、入力装置6及び出力装置7が接続されている。出力装置7としては、モニタ装置(家庭用テレビを含む)等の表示部を用いることができる。入力装置6としては、キーボード装置、マウス装置及びマイクロホン装置等の他、マウス装置と協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタ装置等を用いることができる。通信インターフェース部4は、例えばインターネット等の広域網又はLAN(Local Area Network)等のプライベート網等のネットワークに接続される。
【0038】
記憶部2としては、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を用いることができる。記憶部2には、上述の在庫管理を可能とする在庫管理プログラムが記憶されている。また、記憶部2には、在庫管理に用いるデータとして、在庫データ、受注計上データ、売上計上データ、商品出庫データ、商品マスタデータ、自動検知実行スケジュールデータ、在庫データの取得範囲条件データ及び異常判定結果データが記憶されている。
【0039】
また、記憶部2には、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、在庫金額増加率算出結果データ、月別在庫金額データ、月別在庫・売上金額データ、月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データ、及び、月別の在庫金額と出庫金額集計データが記憶されている。詳しくは、後述する。
【0040】
(在庫管理装置の機能構成)
次に、制御部3は、記憶部2に記憶されている在庫管理プログラムを実行することで、算出部21、判別部22,アラート出力制御部23、表示制御部24、データ生成部25、及び、記憶制御部26として機能する。
【0041】
算出部21は、商品の在庫数を含む在庫データに基づいて、例えば企業の期首~期末等の計算期間における商品の在庫の変遷に対応する変遷情報を算出する。判別部22は、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷を示す値であるか否かを判別する。アラート出力制御部23は、算出された変遷情報の値が、所定以上の在庫の変遷の値を示す判別結果が判別部22から得られた場合に、所定のアラート出力を出力制御する。アラート出力としては、例えば表示部にアラートとなるメッセージを表示してもよいし、図示しないスピーカ部を介してアラートとなる音声メッセージ又は電子音を出力してもよい。
【0042】
また、算出部21は、計算期間の期首における商品の在庫数に対応する在庫金額に対する、計算期間の期首の在庫金額及び計算期間の期末の在庫金額の差額の割合である在庫金額増加率を上述の変遷情報として算出する。アラート出力制御部23は、算出された在庫金額増加率が、所定の上限値以上である場合にアラート出力を出力制御する。
【0043】
また、算出部21は、計算期間における各在庫金額増加率に基づいて四分位範囲を算出し、第3四分位数となる在庫金額増加率に、所定の在庫金額増加率を加算処理することで、在庫金額増加率の上限値を算出する。アラート出力制御部23は、算出された在庫金額増加率が上限値以上である場合に、アラート出力を出力制御する。
【0044】
表示制御部24は、計算期間における在庫金額の推移を示すグラフを、表示部の一例である出力装置7を介して表示する。また、表示制御部24は、在庫金額の正常な推移を示すグラフと共に、計算期間における在庫金額の推移を示すグラフを出力装置7に表示する。また、表示制御部は、計算期間における在庫金額の推移を示すグラフ、及び、計算期間における在庫の商品の売上金額の推移を示すグラフを出力装置7に表示する。
【0045】
また、表示制御部24は、計算期間における在庫金額、及び、計算期間における在庫金額増加率を、一方の軸を在庫金額とし、他方の軸を在庫金額増加率とした2次元座標にプロットした、在庫金額及び在庫金額増加率の相関表を出力装置7に表示する。また、表示制御部24は、計算期間における在庫金額の棒グラフ、及び、計算期間における在庫の商品の出庫金額の棒グラフを出力装置7に表示する。「出庫金額」は、減らした在庫分の金額である。すなわち、在庫が減る場合としては、例えば「売上のために商品を出荷した場合」、「仕入返品を行った場合」及び「在庫破棄を行った場合」等が考えられる。実施の形態の在庫管理装置1では、このような行為により減った在庫の金額を「出庫金額」と表現する。
【0046】
データ生成部25は、在庫管理に用いるデータを生成する。記憶制御部26は、データ生成部26に生成された各種データ、及び、算出部21により算出されたデータを記憶部2に記憶する。
【0047】
(在庫管理動作)
このような在庫管理装置1は、業務データ内にある「在庫データ」を確認し、「期首~期末間での在庫金額増加率」が異常に大きくなっている倉庫及び商品を自動で検知する。また、在庫管理装置1は、「検知した異常なデータ」と「検知するために参照した異常なデータに関連するデータ」を分析用画面に表示する。
【0048】
また、在庫管理装置1は、分析画面において、不正に増やした在庫を隠蔽するために行われる、在庫を減らす操作を確認可能なグラフを表示する。なお、「減らした在庫の金額」は「出庫金額」であることとする。また、在庫を減らす処理としては、例えば売上のための出荷、仕入返品及び在庫破棄が考えられる。以下、これら全てを「出庫金額」と表現する。
【0049】
(業務データ内の[在庫データ]より、在庫金額増加率が異常に大きくなっている倉庫と商品を検知する処理)
在庫管理装置1は、業務データ内にある「在庫データ」を確認し、「期首~期末間での在庫金額増加率」が異常に大きくなっている倉庫及び商品を自動で検知する。この処理には、業務が行われることで蓄積される「業務データ」、「異常検知実行用データ」及び「異常判定結果データ」等が用いられる。
【0050】
「業務データ」には、在庫データ、受注計上データ、売上計上データ、商品出庫データ、商品マスタデータが含まれる。「異常検知実行用データ」は、異常検知を行うための事前設定データであり、自動検知実行スケジュールデータ及び在庫データの取得範囲条件データを含む。
【0051】
図2は、自動検知実行スケジュールデータの一例を示す図である。この
図2に例示するように、自動検知実行スケジュールデータは、検知識別番号(検知ID)、スケジュール識別番号(スケジュールID)、実行条件及び実行時間等を含んで構成される。この
図2の例は、在庫金額増加率の検知は、毎年4月の5営業日目の23時00分に実行されることを示している。
【0052】
図3は、在庫データの取得範囲条件データの一例を示す図である。この
図3に例示するように在庫データの取得範囲条件データは、検知ID、スケジュールID、対象列、FROM条件及びTO条件等を含んで構成される。この
図3の例は、在庫金額増加率の検知(異常検知)を行う月の1年前に相当する月から、異常検知を行う月の一月前までの在庫データを取得することを示している。
【0053】
「異常判定結果データ」は、異常検知実行の判定結果を示すデータであり、異常判定結果データの他、異常判定結果メッセージデータ及び異常判定結果メッセージ詳細データを含む。
【0054】
このような各種データは、記憶部2の所定のテーブルに、事前に保存される。これにより、異常検知動作が開始可能となる。
【0055】
次に、算出部21は、事前に設定された
図4に示すパラメータである、検知ID及びスケジュールIDに基づいて、
図2に示した自動実行スケジュールデータを参照し、異常検知を行うタイミング(毎年4月の5営業日目の23時00分)を認識する。
【0056】
次に、算出部21は、
図5に示すように、例えば2021年4月7日等の在庫管理装置1の起動タイミングが、毎年4月の5営業日目に相当するか否かを判別することで、起動タイミングが異常検知を行うタイミングであるか否かを判別する。
図5の例は、起動タイミングが異常検知を行うタイミングである(実行する)と判別された例である。なお、起動タイミングが異常検知を行うタイミングではないと判別された場合は、そのまま異常検知処理を終了する。
【0057】
また、休日又は営業日の判断は、算出部21が、記憶部2に記憶されているカレンダーマスタ(図示せず)を参照して行う。カレンダーマスタは、販売の営業カレンダーベースで、常に最新化されていることが好ましい。
【0058】
次に、起動タイミングが異常検知を行うタイミングであると判別した場合、算出部21は、
図4に示した検知ID及びスケジュールIDに基づいて、
図3に示した在庫データの取得範囲条件データを参照し、
図6に例示するように抽出条件列(対象列)、FROM条件、及び、TO条件を取得する。
図6の例は、「2020年4月~2021年3月」を、「会計年月」として取得した例である。
【0059】
次に、算出部21は、
図7(b)に示すように、期首・期末でそれぞれ集計した在庫金額を用い(在庫データ)、下記の演算式に基づいて倉庫毎及び商品毎の在庫金額増幅率を算出する。
【0060】
在庫金額増加率=((期末在庫金額-期首在庫金額)/期首在庫金額×100)
【0061】
算出された在庫金額増幅率は、記憶制御部26により、
図7(a)に示すように在庫金額増加率算出結果データに含めて記憶される。
【0062】
次に、算出部21は、四分位範囲を用いて、
図7(a)に示した在庫金額増加率算出結果データに含まれる在庫金額増加率の上限値(=閾値)を算出する。具体的には、算出部21は、
図8に示すように「第3四分位数+(1.5×四分位範囲)」との正常範囲算出方法を用いて「15%」等の上限値を算出する。
図9は、この上限値を模式的に示す箱ひげ図である。この
図9に例示するように、在庫金額増加率が64%である場合、上限値を上回るため、異常値として検知される。
【0063】
ここで、異常値の検知手法として、「四分位範囲」を用いた検知手法の他、ある地点での値の分布を検出し、信頼区間を設けて正常及び異常を判断する「標準偏差」を用いた検知手法、及び、平均値を検出する範囲を定め、時系列毎に算出する「移動平均及び外れ値」を用いた検知手法等を用いることができる。
【0064】
しかし、「標準偏差」を用いた検知手法は、時間軸の概念を含まない分析のため、「過去からの傾向」という横断データ分析に対しては、用いにくい手法となる。また、「移動平均及び外れ値」を用いた検知手法は、時系列の推移において、異常な増減検知に対応可能であるが、異常と判断する閾値をユーザが事前に設定する必要がある。
【0065】
これに対して、「四分位範囲」を用いた検知手法の場合、データの分析範囲を定め、縦軸に集約でき、四分位の範囲を定めて正常と判断できる範囲倍率を指定できる。また、時系列データ及び地点データも縦軸要素として扱うため、横断データ分析に対応できる。そして、「四分位範囲」を用いた検知手法の場合、自動で上限値(閾値)を算出して異常値の検知を行うことができる。
【0066】
次に、判別部22は、
図9に例示したように、四分位範囲の上限値より上回った在庫金額増加率となっているデータを異常と判断する。データ生成部25は、このような判別結果に基づいて、
図10(a)に例示する異常判定結果データ、
図10(b)に例示する異常判定結果メッセージデータ、及び、
図10(c)に示す異常判定結果メッセージ詳細データを生成する。
【0067】
異常判定結果データは、
図10(a)に示すように、検知ID、ジョブID(JOBID)、メッセージID、期首(FROM)、期末(TO)、倉庫名、商品名、在庫金額増加率、及び、上限値を含んで生成される。この場合、ジョブIDは「在庫水増アラート」となる。また、異常判定結果メッセージデータは、
図10(b)に示すように、検知ID、ジョブID(JOBID)、メッセージID、異常度、定義名、概要、及び、検知対象を含んで生成される。「概要」は、例えば「倉庫A、商品Aが検出されました」等の異常値が検知された倉庫及び商品名を指摘するメッセージである。
【0068】
さらに、異常判定結果メッセージ詳細データは、
図10(c)に示すように、検知ID、ジョブID、メッセージID、検知手法、閾値、判定方法、及び、上限値を含んで生成される。検知手法は、上述の「四分位範囲」であり、閾値は正常範囲の1.5倍である。また、判定方法は、「上限値より大きい値を異常と判定」し、上限値は「15%」である。記憶制御部26は、このような異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、及び、異常判定結果メッセージ詳細データを記憶部2に記憶する。
【0069】
(検知した異常なデータ、及び、検知するために参照した異常なデータと関連のあるデータを分析用画面に表示する処理)
次に、表示制御部24は、このように検知した異常なデータ、及び、異常なデータを検知する際に参照した、異常なデータに関連のあるデータを、表示部の一例である出力装置7を介して分析用画面に表示する。具体的には、データ生成部25は、
図11(a)に例示する異常判定結果データ、
図11(b)に示す異常判定結果メッセージデータ及び
図11(c)に示す異常判定結果メッセージ詳細データのうち、
図11(b)に示す異常判定結果メッセージデータを参照する。そして、データ生成部25は、
図11(b)に示す異常判定結果メッセージデータから、
図11(d)に示すように異常度、定義名、概要、及び、検知対象を抽出して異常表示用データを生成する。
【0070】
この
図11(d)の例は、異常値であることを示す「×」マーク、在庫水増の可能性があることを示す定義名である「在庫水増アラート」、「倉庫A、商品Aが検出されました」等の異常が検知された倉庫名及び商品名、「2021年3月」等の異常値を示している年月、及び、「64%」等の在庫金額増加率により、異常表示用データが生成された例である。
【0071】
データ生成部24 表示制御部24は、在庫金額増加率の異常値が検知された倉庫毎及び商品毎に、このような異常表示用データを生成する。表示制御部24は、生成された異常表示用データを
図11(e)に例示する異常一覧画面に一覧表示する。
【0072】
異常一覧画面は、異常表示用データの一覧が表示される一覧表示領域と共に、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、基準日、期間開始日及び期間終了日の各入力欄と共に、分析用画面の表示指定ボタンを備えた抽出条件入力領域を備えている。表示制御部24は、異常表示用データが一覧表示領域に表示されると、画面を起動したタイミングの日付を取得して、抽出条件入力領域の基準日の入力欄に自動的に入力する。
【0073】
次に、ユーザにより、一覧表示された異常表示用データのうち、分析を行う異常表示用データを選択する操作(例えば、ダブルクリック操作等)が行われると、表示制御部24は、メッセージを詳細情報表示に切り替えて、グラフの出力領域を確保する。
【0074】
具体的には、表示制御部24は、
図13(a)に示す異常判定結果メッセージ詳細データから、「四分位範囲」等の、用いられた検知手法、「正常範囲1.5倍」等の閾値、及び、「15%」等の上限値を取得する。そして、表示制御部24は、
図13(b)に示す検知手法、閾値及び「在庫金額増加率が上限値15%を上回ったため検出されました」等の詳細なメッセージを、上述の異常表示用データと共に、
図13(c)に示すようにメッセージ詳細表示画面のアラート表示領域に表示する。また、表示制御部24は、
図13(c)に示すように、このメッセージ詳細表示画面に例えば4種類のグラフの表示領域を生成する。
【0075】
次に、表示制御部24は、
図14(a)に示すメッセージに関連する異常判定結果データに含まれる期首及び期末の会計年月を、
図14(b)及び
図14(c)に示すように、異常を検知した期首及び期末の会計年月として取得する。なお、抽出条件の期間開始~終了を変更することで、範囲を広げて分析することも可能である。
【0076】
また、表示制御部24は、
図14(d)に示すように、メッセージ詳細表示画面において、分析画面起動タイミングの基準日として「2021年4月10日」が設定されている抽出条件に、「2020年4月」の期首の年月を、分析用データ取得範囲条件のFROM条件(期間開始)として設定する。また、表示制御部24は、「2021年3月」の期末の年月を、分析用データ取得範囲条件のTO条件(期間終了)として設定する。
【0077】
さらに、表示制御部24は、メッセージ詳細表示画面の抽出条件に、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、グラフ出力用のデータを抽出するための抽出項目を表示する。この
図15(a)及び
図15(b)の例は、「集計」の抽出項目である、品種分類、品種、品番、商品、受注、及び、売上のうち、初期状態で選択された「商品」及び「売上」がアクティブ表示された例である。なお、選択可能とする抽出項目のみを表示してもよい。
【0078】
次に、表示制御部24は、
図16(a)及び
図16(b)に示すように、抽出条件として初期セットした「2020年4月」の期首(期間開始)から「2021年3月」の期末(期間終了)までの期間における在庫金額を、
図17(b)に示す在庫データから収集した、
図17(a)に示す月別在庫金額データを、「第1のグラフ」の表示用データとして取得する。
【0079】
次に、表示制御部24は、
図18(a)~
図18(c)に示すように初期セットした抽出条件に基づいて、月別在庫・売上金額データを取得する。すなわち、
図18(a)~
図18(c)の例は、「倉庫A」の在庫異常を示す異常判定結果データである。このため、表示制御部24は、
図19(b)に示す在庫データの倉庫Aの在庫金額、及び、
図19(c)に示すように売上計上データの倉庫Aの売上金額を月毎に集計して生成された、
図19(a)に示す倉庫Aの月別在庫・売上金額データを「第2のグラフ」の表示用データとして取得する。
【0080】
次に、表示制御部24は、
図20(a)~
図20(c)に示すように初期セットした抽出条件に基づいて、月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを取得する。すなわち、
図20(a)~
図20(c)の例は、異常判定結果データが「倉庫A」の異常を示している。このため、表示制御部24は、
図21(b)に示す在庫データの倉庫Aの期末在庫金額、及び、「((期末在庫金額-期首在庫金額)/期首在庫金額×100)」の演算式で算出部21により算出された在庫金額増加率を含む
図21(a)に示す月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを「第3のグラフ」の表示用データとして取得する。
【0081】
次に、表示制御部24は、
図22(a)~
図22(c)に示すように初期セットした抽出条件に基づいて、月別の在庫金額と出庫金額集計データを取得する。すなわち、
図22(a)~
図22(c)の例は、異常判定結果データが「倉庫A」の異常を示している。このため、表示制御部24は、
図23(b)に示す在庫データの倉庫Aの在庫金額、及び、
図23(c)に示す商品出庫データの倉庫Aの出庫金額を含む
図23(a)に示す月別の在庫金額と出庫金額集計データを「第4のグラフ」の表示用データとして取得する。
【0082】
なお、この例では、パラメータの期間終了の値に対して+一月のデータ(一月後のデータ)まで参照する。これは、パラメータの期間終了=期末の会計年月が前提となっている。すなわち、実施の形態の在庫管理装置1の場合、「期末までに不正に在庫を増やす」という不正に着目している。増えた在庫は不正の証拠となるため、翌期首に在庫を減らす処理が隠蔽操作として行われる可能性がある。このため、パラメータの期間終了の値に対して+一月のデータ(一月後のデータ)まで取得することで、このような在庫を減らす不正な処理が行われたデータを確認可能とすることができる。
【0083】
次に、表示制御部24は、メッセージ詳細表示画面に上述の第1~第4の計4種類のグラフを表示する。具体的には、表示制御部24は、
図24(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を会計年月とし、Y軸を在庫金額とした各倉庫の在庫金額の推移を示す、
図24(b)に示す第1のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図24(b)の例は、倉庫A~倉庫Eの在庫金額の推移を示すグラフを一覧的に示した例である。
【0084】
次に、表示制御部24は、
図25(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を会計年月とし、Y軸を在庫金額及び売上金額とした倉庫Aの売上金額及び在庫金額の推移を示す、
図25(b)に示す第2のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図25(b)の例は、異常が検知された倉庫Aの月別の売上金額及び在庫金額の推移を示すグラフを一覧的に示した例である。
【0085】
次に、表示制御部24は、
図26(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を在庫金額増加率(%)とし、Y軸を期末在庫金額とした2020年4月(期首:期間開始)~2021年3月(期末:期間終了)の間における倉庫Aの在庫金額増加率及び在庫金額の相関関係を示す、
図26(b)に示す第3のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図26(b)の第3のグラフ上のプロットされた点は、異常が検知された倉庫Aの在庫金額増加率(%)と、そのときの在庫金額を示している。
【0086】
次に、表示制御部24は、
図27(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸の会計年月とし、Y軸を倉庫Aの在庫金額又は出庫金額とし、
図27(b)に示すように、在庫金額の棒グラフ及び出庫金額の棒グラフを重ねた二重軸棒グラフを会計年月の沿って示す第4のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図27(b)に示す二重軸棒グラフのうち、下側の棒グラフは在庫金額を示しており、この在庫金額の棒グラフ上に積層するかたちで図示された棒グラフは出庫金額を示している。
【0087】
図28は、このような第1~第4のグラフが表示された状態のメッセージ詳細表示画面を示す図である。この
図28に示すように、メッセージ詳細表示画面には、画面の左辺部に沿って上述の抽出条件が表示される。また、メッセージ詳細表示画面には、抽出条件の表示領域に左辺部を当接するかたちで、画面の上辺部に沿って設けられたアラート表示領域に、上述の異常表示用データと共に、詳細なメッセージが表示される。
【0088】
また、メッセージ詳細表示画面には、抽出条件の表示領域に左辺部を当接させ、かつ、アラート表示領域の下辺部に上辺部を当接するかたちで設けられた、アラート表示領域の半分ほどの大きさの表示領域に、上述の第1のグラフが表示される。
【0089】
また、メッセージ詳細表示画面には、第1のグラフの表示領域に左辺部を当接させ、かつ、アラート表示領域の下辺部に上辺部を当接するかたちで設けられた、アラート表示領域の半分ほどの大きさの領域に、上述の第2のグラフが表示される。すなわち、第1のグラフ及び第2のグラフは、アラート表示領域の下側に隣接して表示される。
【0090】
また、メッセージ詳細表示画面には、抽出条件の表示領域に左辺部を当接させ、かつ、第1のグラフの表示領域及び第2のグラフの表示領域の各下辺部に上辺部を当接するかたちで設けられた表示領域に、上述の第3のグラフが表示される。
【0091】
また、メッセージ詳細表示画面には、抽出条件の表示領域に左辺部を当接させ、かつ、第3のグラフの表示領域の下辺部に上辺部を当接するかたちで設けられた表示領域に、上述の第4のグラフが表示される。
【0092】
次に、表示制御部24は、第1~第4のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)の色を変更して強調する表示処理を行う。
図29は、このようなグラフの着色パターンの一例を示す図である。この
図29に示す「凡例の異常フラグ」は、在庫が異常であるときに立つフラグである。また、「参考情報」は、在庫が如何に異常であるかを確認するための情報である。凡例の異常フラグが「True」で参考情報フラグが「False」の場合、表示制御部24は、凡例及び折れ線(グラフ)を、共に赤色で強調して表示する。
【0093】
すなわち、表示制御部24は、第1のグラフ及び第3のグラフを表示する際に、凡例の倉庫及び商品と異常検知された倉庫及び商品が同一のものに対して、凡例の異常フラグが「True」の色を適用する。
図30(a)に示す異常判定結果データにより倉庫A及び商品Aの在庫に異常が検知された場合、表示制御部24は、
図30(b)に示す月別在庫金額データに基づいて、
図30(d)に示すように、第1のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)を赤色で強調して表示する。これにより、ユーザに対して異常値を認識させ易くすることができる。また、表示制御部24は、
図30(c)に示す月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データに基づいて、第3のグラフの商品Aの凡例、及び、異常な在庫金額増加率及び異常な在庫金額に対応する点を赤色で強調して表示する。
【0094】
これに対して、表示制御部24は、異常検知された倉庫及び商品以外の凡例に対しては、凡例の異常フラグが「False」の色を適用する。第2のグラフに対しては、売上金額について、在庫金額の推移が正常か否か判断するための参考情報として表示している参考情報フラグ「True」の青色で凡例及び折れ線(グラフ)を表示する。また、表示制御部24は、第4のグラフに対しては、出庫金額について異常フラグが「True」の色を適用する。すなわち、この場合、不正に増やした在庫を減らす隠蔽操作に該当するデータが含まれる可能性があるため、表示制御部24は、異常検知結果データと同様に赤色で強調して表示する。
【0095】
このようなメッセージ詳細表示画面のアラート表示領域に表示したメッセージにより、異常検知された対象(在庫)、検知手法、異常と判断した基準値を含めた詳細な情報を確認するユーザは、異常の可能性がある倉庫及び商品を認識できる。このため、異常の可能性がある倉庫及び商品を予め認識した状態から在庫の不正操作の分析を開始することができる。
【0096】
また、第1のグラフに基づいて、異常が検知された倉庫の在庫金額の発生状況を確認できる。また、他の倉庫と比較して検知された倉庫の異常に多い在庫数を確認することができる。また、月経過毎の在庫金額の変化に基づいて、在庫の増加傾向を確認することができる。
図30(d)の第1のグラフの例では、検知された倉庫のみ、期末に向けて徐々に在庫金額が増えていることがわかる。
【0097】
また、第2のグラフに基づいて、異常検知された倉庫に関連する売上金額と在庫金額の発生傾向を確認できる。また、在庫の変化が売上に伴ったものか確認することができる。なお、売上のための在庫補充が基本的な在庫運用となることを想定している。
図30(d)の第2のグラフの例では、売上が一定に推移しているにも関わらず、在庫のみが増加していることがわかる。
【0098】
また、第3のグラフに基づいて、異常検知された倉庫で管理している商品毎の在庫金額と在庫金額増加率を確認でき、どの商品で異常なデータとなっているかを確認できる。また、在庫金額と在庫金額増加率の相関により、金額的な影響度を確認できる。すなわち、金額が大きく増加率も高い場合は、期末の在庫が大きく増えていると考えることができる。
図30(d)の第3のグラフの例では、在庫金額が高い商品Aのみ、在庫金額増加率が高くなっていることがわかる。特定商品のみの場合、商品の特徴を利用した不正が考えられる。例えば雑管理されている商品及び諸口品は、商品の運用見直しを考えさせる指標に使われる可能性がある。
【0099】
また、第4のグラフに基づいて、異常検知された倉庫の在庫金額と月内で発生した出庫金額を確認できる。通常、在庫の出庫と補充は一定数となる。このため、継続的な在庫金額の増加、期首時点での出庫金額の急激な増加は、不正操作及び不正隠蔽操作が行われた可能性があることを意味する。継続的な売れ残り及び破棄の可能性もあるが、売れ残りがある場合は、追加在庫発注が行われる可能性が低い。
図30(d)の第4のグラフの例では、期末に向けて継続して在庫金額が増えて、翌期首に高額の出庫金額が発生していることがわかる。
【0100】
(分析用グラフの切り替え表示)
次に、実施の形態の在庫管理装置1は、
図22(a)を用いて説明した「集計」の抽出項目のうち、所望の抽出項目を選択して、分析用グラフの切り替え表示が可能となっている。
【0101】
(品種の抽出項目を選択した場合の表示動作)
図31(a)~
図31(c)は、異常判定結果データが得られた倉庫Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「品種」の抽出項目を選択した例である。この場合、算出部21は、
図32(b)に示す在庫データの期首及び期末の在庫金額を参照し、上述の演算式に基づいて、
図32(a)に示すように、倉庫Aで管理されている品種Aの期首及び期末の在庫金額増加率を算出する。
【0102】
この
図32(b)の例の場合、倉庫Aで管理されている品種Aの期首の在庫金額は「5280円」で、期末の在庫金額が「8448円」であるため、期首から期末にかけての在庫金額増加率が「60%」として算出された例である。データ生成部25は、
図32(a)に示すように、この在庫金額増加率を含む月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを生成する。記憶制御部26は、この月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを記憶部2に記憶する。
【0103】
次に、表示制御部24は、
図33(a)に示すデータバインド情報に基づいて、倉庫Aの2020年4月~2021年3月における各品種に対応する在庫金額増加率と在庫金額の相関関係を示す
図33(b)に示す第3のグラフを、
図34に示すようにメッセージ詳細表示画面の第3のグラフの表示領域に表示する。
【0104】
なお、この第3のグラフ以外の第1のグラフ、第2のグラフ、及び、第4のグラフは、
図16及び
図17、
図18及び
図19、
図22及び
図23を用いて説明したように、表示制御部24が、パラメータを参照して取得した各種データに基づいて、
図34に示すようにメッセージ詳細表示画面上の対応する表示領域に表示する。
【0105】
次に、表示制御部24は、第1~第4のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)の色を変更して強調する表示処理を行う。すなわち、表示制御部24は、第1のグラフ及び第3のグラフを表示する際に、凡例の倉庫及び品種と異常検知された倉庫及び品種が同一のものに対して、
図29を用いて説明した凡例の異常フラグが「True」の色を適用する。
図35(a)に示す異常判定結果データにより倉庫A及び商品Aの在庫に異常が検知された場合、表示制御部24は、
図30(b)に示す月別在庫金額データに基づいて、
図35(e)に示すように、第1のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)を赤色で強調して表示する。これにより、ユーザに対して異常値を認識させ易くすることができる。
【0106】
また、表示制御部24は、
図35(c)に示す商品マスタ及び
図35(e)に示す月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データに基づいて、第3のグラフの品種Aの凡例、及び、異常な在庫金額増加率及び異常な在庫金額に対応する点を赤色で強調して表示する。
【0107】
これに対して、表示制御部24は、異常検知された倉庫及び品種以外の凡例に対しては、凡例の異常フラグが「False」の色を適用する。第2のグラフに対しては、売上金額について、在庫金額の推移が正常か否か判断するための参考情報として表示している参考情報フラグ「True」の青色で凡例及び折れ線(グラフ)を表示する。また、表示制御部24は、第4のグラフに対しては、出庫金額について異常フラグが「True」の色を適用する。すなわち、この場合、不正に増やした在庫を減らす隠蔽操作に該当するデータが含まれる可能性があるため、表示制御部24は、異常検知結果データと同様に赤色で強調して表示する。
【0108】
このようなメッセージ詳細表示画面の、主に第3のグラフにより、以下のことが分かる。
図36に示すように、第3のグラフにおいて、特定の品種で在庫金額増加率が高い状態となっているということは、品種単位で不正が行われている可能性があることを意味する。すなわち、特定の品種の特徴(細かく管理されていない品種等)を悪用した不正の可能性がある。
【0109】
図36の第3のグラフを見ると、品種A以外の品種B、品種C、品種D及び品種Eは、在庫金額増加率及び在庫金額共に似たような数値となっている。このため、不正な在庫操作が行われていることは考えにくく、調査対象外とすることができる。
【0110】
これに対して、品種Aの場合、在庫金額増加率及び在庫金額共に高い数値を示しており(64%、10万円)、この品種Aは、期末の全体の在庫金額に対する影響度が高いことがわかる。このため、この品種Aに対して、詳細に不正の有無を調査することができる。
【0111】
(受注の抽出項目を選択した場合の表示動作)
図37(a)~
図37(d)は、異常判定結果データが得られた倉庫Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「受注」の抽出項目を選択した例である。
【0112】
この場合、データ生成部25は、
図38(b)に示す在庫データから、月毎及び倉庫毎に在庫金額を抽出すると共に、
図38(b)に示す受注計上データから月毎及び倉庫毎に受注金額を抽出する。そして、データ生成部25は、抽出した在庫金額及び受注金額に基づいて、
図38(a)に示す月別在庫・受注金額データを生成する。記憶制御部26は、この月別在庫・受注金額データを記憶部2に記憶する。
【0113】
次に、表示制御部24は、
図39(a)に示すデータバインド情報に基づいて、倉庫Aの月別の受注金額及び在庫金額の推移を示す
図39(b)に示す第2のグラフを、
図34に示したようにメッセージ詳細表示画面の第2のグラフの表示領域に表示する。
【0114】
なお、この第2のグラフ以外の第1のグラフ、第3のグラフ、及び、第4のグラフは、
図16及び
図17、
図20及び
図21、
図22及び
図23を用いて説明したように、表示制御部24が、パラメータを参照して取得した各種データに基づいて、
図34に示すようにメッセージ詳細表示画面上の対応する表示領域に表示する。
【0115】
次に、表示制御部24は、
図29を用いて説明したように、第1~第4のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)の色を変更して強調する表示処理を行う。この例の場合、表示制御部24は、第2のグラフを表示する際に、在庫金額の推移が正常か否か判断するための参考情報として、
図29に示す参考情報フラグが「True」の色である「青色」を用いて受注金額の推移のグラフを表示する。
【0116】
また、表示制御部24は、第4のグラフに対しては、出庫金額について異常フラグが「True」の色を適用する。すなわち、この場合、不正に増やした在庫を減らす隠蔽操作に該当するデータが含まれる可能性があるため、表示制御部24は、異常検知結果データと同様に赤色で強調して表示する。
【0117】
このようなメッセージ詳細表示画面の、主に第2のグラフにより、在庫の増加の要因となる受注増加が確認できないということは、売上が予定されている在庫の増加では無いことがわかる。このような受注及び売上に繋がらない単純な在庫の増加は、何を目的とした在庫の増加であるか、早急に確認が必要となる。
【0118】
まず、40(a)は、倉庫Aにおける「売上」を抽出条件とした場合の第2のグラフの一例である(売上集計時の第2のグラフ)。この
図40(a)において、上のグラフが売上金額の推移を示し、下のグラフが在庫金額の推移を示している。「売上」を抽出条件として第2のグラフを表示した場合、
図40(a)に示すように、在庫金額が徐々に増加しているが、売上金額は、略一定であることがわかる。このため、受注及び売上に繋がらない単純な在庫の増加であるため、ユーザは、何を目的とした在庫の増加であるか確認すべく、抽出条件を「受注」に切り替えて第2のグラフを表示する(受注集計時の第2のグラフ)。
【0119】
図40(b)及び
図40(c)は、このような受注集計時の第2のグラフの一例を、それぞれ示す図である。この
図40(b)及び
図40(c)において、上のグラフが上述のように青色で表示される受注金額の推移を示し、下のグラフが在庫金額の推移を示している。まず、
図40(b)の例は、在庫金額と共に、受注金額が増加している例である。このような例は、売上が予定されることで在庫が補充されたことが考えられる。しかし、後に売り上がるか、なかなか売上につなげられず溜め受注となる可能性がある。
【0120】
これに対して、
図40(c)の例は、在庫金額が徐々に増加しているにも関わらず、受注金額が略一定の例である。この場合、売上予定もないことがわかる。そして、目的不明の在庫の増加を示しているため、早急に調査が必要となる。
【0121】
(抽出項目で所望の部門を指定した場合の表示動作)
図41(a)~
図41(c)は、部門Aの在庫状態を解析するために、抽出条件として「部門A」の抽出項目を指定した例である。
【0122】
この場合、データ生成部25は、
図42(b)に示す在庫データから、月毎及び倉庫毎に部門Aの在庫金額を抽出し、
図42(a)に示す月別在庫金額データを生成する。記憶制御部26は、この月別在庫金額データを記憶部2に記憶する。
【0123】
また、データ生成部25は、
図43(a)~
図43(c)及び
図44(a)、
図44(b)に示すように、在庫データから月毎及び倉庫毎に部門Aの在庫金額を抽出すると共に、売上計上データから月毎及び倉庫毎に部門Aの売上金額を抽出し(
図44(b)参照)、月別在庫・売上金額データを生成する(
図44(a))。記憶制御部26は、この月別在庫・売上金額データを記憶部2に記憶する。
【0124】
次に、算出部21は、
図45(a)及び
図45(b)に示すように、異常値が検出された倉庫A、及び、抽出が指定された部門Aの商品毎に、
図46(a)及び
図46(b)に示すように在庫金額増加率を算出する。データ生成部25は、
図45(c)及び
図46(a)に示すように、算出された在庫金額増加率を含む月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを生成する。記憶制御部26は、この月末在庫金額と期首期末間の在庫金額増加率算出結果データを記憶部2に記憶する。
【0125】
次に、データ生成部25は、
図47(a)及び
図47(b)に示すように、異常値が検出された倉庫A、及び、抽出が指定された部門Aの在庫金額及び出庫金額を、
図48(b)に示す在庫データから抽出すると共に、
図48(c)に示す商品出庫データから抽出する。そして、データ生成部25は、
図47(c)及び
図48(a)に示すように、倉庫A及び部門Aの月別の在庫金額と出庫金額集計データを生成する。なお、データ生成部25は、パラメータの期間終了の値より一月分、余分にデータの参照を行うことは、上述の通りである。記憶制御部26は、この月別の在庫金額と出庫金額集計データを記憶部2に記憶する。
【0126】
次に、表示制御部24は、上述の各種データに基づいて、メッセージ詳細表示画面に上述の第1~第4の計4種類のグラフを表示する。具体的には、表示制御部24は、
図49(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を会計年月とし、Y軸を在庫金額とした各倉庫の在庫金額の推移を示す、
図49(b)に示す第1のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図49(b)の例は、倉庫A及び倉庫Bの在庫金額の推移を示すグラフを一覧的に示した例である。この
図49(b)において、上の直線状のグラフが倉庫Aのグラフであり、下の折れ線状のグラフが倉庫Bのグラフである。
【0127】
次に、表示制御部24は、
図50(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を会計年月とし、Y軸を在庫金額及び売上金額とした倉庫Aの売上金額及び在庫金額の推移を示す、
図50(b)に示す第2のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図50(b)の例は、異常が検知された倉庫Aの月別の売上金額及び在庫金額の推移を示すグラフを一覧的に示した例である。この
図50(b)において、上の折れ線状のグラフが売上金額のグラフであり、下の直線状のグラフが在庫金額のグラフである。
【0128】
次に、表示制御部24は、
図51(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸を在庫金額増加率(%)とし、Y軸を期末在庫金額とした2020年4月(期首:期間開始)~2021年3月(期末:期間終了)の間における倉庫Aの在庫金額増加率及び在庫金額の相関関係を示す、
図51(b)に示す第3のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図51(b)の第3のグラフ上にプロットされた点は、異常が検知された倉庫Aの在庫金額増加率(%)と、そのときの在庫金額を示している。この
図51(b)において、商品B~商品Kの在庫金額増加率及び在庫金額に対して、高い在庫金額増加率及び在庫金額となっている商品Aを、不正の調査対象として特定することができる。
【0129】
次に、表示制御部24は、
図52(a)に示すデータバインド情報に基づいて、2次元座標のうち、X軸の会計年月とし、Y軸を倉庫Aの在庫金額又は出庫金額とし、
図52(b)に示すように、在庫金額の棒グラフ及び出庫金額の棒グラフを重ねた二重軸棒グラフを会計年月の沿って示す第4のグラフをメッセージ詳細表示画面に表示する。
図52(b)に示す二重軸棒グラフのうち、下側の棒グラフは在庫金額を示しており、この在庫金額の棒グラフ上に積層するかたちで図示された棒グラフは出庫金額を示している。
【0130】
なお、表示制御部24は、
図29を用いて説明したように、第1~第4のグラフの凡例及び折れ線(グラフ)の色を変更して強調する表示処理を行う。また、このような第1~第4のグラフが表示されたメッセージ詳細表示画面は、
図34に例示した通りである。
【0131】
次に、このように表示されたグラフのうち、主に第1のグラフにより、特定の部門で管理される倉庫の在庫の増加傾向に基づいて、組織単位での利益操作の有無を確認できる。利益操作は組織単位で行われることが多い。実施の形態の場合、疑わしい組織を指定してデータの確認を行うことができる。
【0132】
具体的には、
図53(a)に示す第1のグラフの例は、上の直線状のグラフである倉庫Aの在庫金額が徐々に増加しているのに対し、下の折れ線状のグラフである倉庫Bの在庫金額は、略一定となっている例である。この例では、一部倉庫(倉庫A)で不自然な在庫の増加を確認できる。これは、担当者又は組織単位(子会社又は事業所等)で不正が行われている可能性があることを示している。
【0133】
また、
図53(b)に示す第1のグラフの例は、上の直線状のグラフである倉庫Cの在庫金額が徐々に増加しており、また、下の折れ線状のグラフである倉庫Dの在庫金額も、上昇と横這いを繰り返しながら徐々に増加している例である。この例では、特定の部門で管理されている全ての倉庫で不自然な在庫の増加を確認できるため、部門の利益操作又は滞留在庫の発生が懸念される例である。
【0134】
また、第2のグラフで示される受注及び売上のデータと比較して、この受注及び売上に伴わない在庫金額の増加が第1のグラフで確認できる場合、売れる見込みのない在庫を継続的に発注し続けるとは考えにくいため、在庫の不正操作を疑うことができる。
【0135】
また、第2のグラフで示される受注及び売上のデータと比較して、受注に伴う在庫金額の増加が第1のグラフで確認できる場合、商品の売れ行きが悪く、在庫だけが増加する滞留在庫の可能性がある。このため、調査が必要と判断することができる。
【0136】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の在庫管理装置1は、主に、以下の効果を得ることができる。
【0137】
1.期首~期末での在庫金額増加率を倉庫×商品毎に算出し、異常に在庫が増加している倉庫×商品の組み合わせを自動で検知できる。期首~期末間での在庫金額を自動で集計して在庫金額増加率を算出することで、集計コストを削減でき、集計ミス及び計算ミスを防止できる。
【0138】
また、同一倉庫×商品のデータを定期的に確認して、異常に在庫金額が増加している倉庫×商品の組み合わせを検知することで、確認漏れ及びミスを防止できる。また、異常な在庫金額となっている倉庫×商品の組み合わせを迅速に把握でき、対策及び調査を行うことができる。
【0139】
2.異常検知された倉庫の月毎の在庫金額を集計し、期首から期末にかけての在庫の増加傾向を可視化できる。在庫の不正操作としては、例えば下記が考えられる。
【0140】
・期末に在庫が大きく増加→単月毎の在庫増加:大(期末のみ)
・徐々に在庫が増加→単月毎の在庫増加:小→月毎に発覚しにくいように操作している可能性あり(隠蔽操作)
【0141】
しかし、実施の形態の在庫管理装置1の場合、月毎の在庫金額を集計して、在庫金額の月経過による金額推移を可視化できる。このため、在庫金額の月経過による変化の様子を確認でき、不正操作の特徴を確認できる。また、倉庫間での在庫の動きを比較でき、異常検知された倉庫の異常の度合いを確認できる。また、それぞれの集計コストを排除でき、比較確認の漏れ及びミスを防止できる。
【0142】
3.「異常検知された倉庫の在庫金額」と「倉庫から出荷した売上データの売上金額」をそれぞれ集計することで、売上金額と在庫金額を比較して、売上に伴う正常な在庫の変化となっているか否かを可視化できる。
【0143】
通常、在庫の補充は売上の見込みがある商品に対して行われる。このため、売上の伴わない在庫の増加は、在庫が不正に増加されていることを示す。このため、実施の形態の在庫管理装置1は、倉庫毎に売上金額及び在庫金額を月別に集計して可視化する。これにより、月経過毎に売上金額と在庫金額がどのように変化しているか確認できる。
【0144】
すなわち、不正が行われている場合における、売上は変わらずに在庫金額だけが増加する特徴を確認可能とすることができる。このため、売上及び在庫の2軸の集計コストを排除でき、売上と在庫の比較を容易化できる。
【0145】
4.「異常検知された倉庫で管理している商品別の在庫金額」と「期首~期末の在庫金額増加率」をそれぞれ集計して、在庫が大きく増加している商品を可視化できる。在庫の増加には、在庫を増やす対象商品の特徴が重要となる。不正な在庫操作が行われやすい商品の特徴として、下記が考えられる。
【0146】
・在庫が雑管理されている商品
・取引量があまり増えない見込みとして「複数商品を一商品」として管理している商品
【0147】
このため、実施の形態の在庫管理装置1は、期首~期末での在庫が大きく増加した商品を可視化して、在庫金額と在庫金額増加率を比較することができる。
【0148】
商品の金額が小さく、在庫金額増加率が大きい→期末の在庫金額はあまりかわらない
商品の金額が大きく、在庫金額増加率が大きい→期末の在庫金額が大きく増える
【0149】
期末の在庫金額が大きく増えると、損益計算書上の売上原価が大きく減っているように見せることができる。このため、在庫金額が大きく、在庫金額増加率が大きいものが存在する場合、これを不正として検知可能とすることができる。
【0150】
5.「異常検知された倉庫の在庫金額」と「出庫処理にて在庫減された金額」を集計して可視化できる。
【0151】
期末時点で不正により在庫を増やした場合、決算後に隠蔽のために在庫減の処理が行われやすい。このため、実施の形態の在庫管理装置1は、月毎の在庫金額と減らされた在庫金額を可視化する。これにより、「不正処理時の金額」と「隠蔽処理された金額」の検知を容易化できる。
【0152】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び目標9に貢献することが可能となる。
【0153】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、目標13及び目標15に貢献することが可能となる。
【0154】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0155】
[他の実施の形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0156】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0157】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0158】
また、在庫管理装置1に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも図示の如く物理的に構成されていることを要しない。
【0159】
例えば、在庫管理装置1が備える処理機能、特に制御部3及び制御部3にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて在庫管理装置1に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD等の記憶部等には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部3を構成する。
【0160】
また、この在庫管理装置1の在庫管理プログラムは、在庫管理装置1に対して任意のネットワークを介して接続された他のサーバ装置に記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0161】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための在庫管理プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0162】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した在庫管理装置1において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0163】
記憶部2は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0164】
また、在庫管理装置1は、既知のパーソナルコンピュータ装置又はワークステーション等の情報処理装置で構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された情報処理装置で構成してもよい。また、情報処理装置は、本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0165】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能付加に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、あらゆる業種の在庫管理に適用して好適である。
【符号の説明】
【0167】
1 在庫管理装置
2 記憶部
3 制御部
4 通信インターフェース部
5 入出力インターフェース部
6 入力装置
7 出力装置
21 算出部
22 判別部
23 アラート出力制御部
24 表示制御部
25 データ生成部
26 記憶制御部