(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092018
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】血液製剤容器を調製する方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20240628BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61J1/10 330Z
A61J3/00 300B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074374
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2020026097の分割
【原出願日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】19382168.3
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515116009
【氏名又は名称】グリフォルス・ワールドワイド・オペレーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRIFOLS WORLDWIDE OPERATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Grange Castle Business Park,Grange Castle,Clondalkin,Dublin 22,IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホセプ・サルバドール・マトゥラナ
(57)【要約】
【課題】血液製剤容器の調製に関する分野において、品質を管理する試験は、容器内の潜在的な欠陥を検出するためにそれらに行われる。しかしながら、容器の外観検査は、欠陥を検出することは難しいため、十分でなく、最終使用者に不十分な状態で多くの容器が届くことを意味する。
【解決手段】血液製剤のための容器を調製する方法であって、血液製剤で血液製剤容器を満たす工程;血液製剤容器のウイルスを不活性化する工程;及び血液製剤容器の潜在的な欠陥を検出するために品質を管理する工程を少なくとも含み;ウイルスを不活性化する工程が、その目的に適合したチャンバー内で、準大気圧下で血液製剤容器を蒸気と接触させることにより行われることを特徴とする、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液製剤のための容器を調製する方法であって:
血液製剤で血液製剤容器を満たす工程、
前記血液製剤容器のウイルスを不活性化する工程、
前記血液製剤容器の潜在的な欠陥を検出するために品質を管理する工程、
を少なくとも含み、前記ウイルスを不活性化する工程が、その目的に適合したチャンバー内で、準大気圧下で前記血液製剤容器を蒸気と接触させることにより行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記血液製剤容器の前記ウイルスを不活性化する工程の後に、追加の冷却工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却工程が、前記血液製剤容器を純水と接触させることにより行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスを不活性化する工程で使用される前記蒸気が、衛生的品質の蒸気であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスを不活性化する工程で使用される前記蒸気が、飽和蒸気であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記品質を管理する工程が、前記容器の欠陥を検知するための、前記容器の外観検査を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記血液製剤が医療用アルブミンであり、及び前記ウイルスを不活性化する工程が、55℃~65℃の間の温度で、190mbar~210mbarの絶対圧力で行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液製剤が医療用アルブミンであり、及び前記ウイルスを不活性化する工程が、59.5℃~60.5℃の間の温度で、200mbarの絶対圧力で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスを不活性化する工程が10時間~11時間続くことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記血液製剤が第VIII因子であり、及び前記ウイルスを不活性化する工程が、80℃~82℃の間の温度で、450mbar~550mbarの絶対圧力で行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスを不活性化する工程が72時間~74時間続くことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記容器が、プラスチック材料で作られているバッグであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記容器がバイアルであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、既知の特性と比較して有利な新規の特性を有する血液製剤のための容器を調製する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
血液製剤に関連する本技術の分野のための先行技術で知られるウイルスを不活性化する方法の一つは、水中に製剤の容器又はバッグを沈めることによる熱処理で構成される。水は、製剤が血液製剤の必要条件に依存する目的温度に達し、及びその時間からウォーターバスを使用するウイルスを不活性化する循環が始まるまで加熱される。多数の時間が続くこの循環の間、温度は、非常に制限された範囲内で維持されなければならない。前記循環が終了した時点で、製剤は、製剤を高温に過度に暴露されることを防ぐため、再び迅速に冷却される。
【0003】
血液製剤容器の調製に関する分野において、品質を管理する試験は、容器内の潜在的な欠陥を検出するためにそれらに行われる。しかしながら、容器の外観検査は、欠陥を検出することは難しいため、十分でなく、最終使用者に不十分な状態で多くの容器が届くことを意味する。多くの場合において、前記容器は、プラスチック材料で作られるバッグであってもよく、容器の溶接欠陥、容器の破損、破裂及び容器の壁面の穴、及び肉眼で見ることができない他の種類の欠陥などの欠陥のせいで、肉眼で検出できない欠陥のある密封作業を有する。前記欠陥は、容器がすでに消費者に利用可能である場合に、時々明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこの欠点を克服することを目的とする。これは、製剤の外観検査により品質を管理する工程において、欠陥の検出を促進するように、容器内の欠点を増幅させるために、製剤のウイルスを不活性化する工程の間に、容器に負荷試験を供することにより達成される。前記負荷試験は、血液製剤に関する分野で、以前に使用されるウイルスを不活性化する方法に置き換わる追加の利点を有する。
【0005】
本発明の目的は、血液製剤容器の従来のウイルスを不活性化する方法にも置き換わりながら、より効果的で単純な品質管理を達成することである。
【0006】
本発明は、血液製剤容器のウイルスを不活性化すると同時に負荷試験を行う方法を開示し、先行技術で分かっているいくつかの欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より具体的には、本発明は、血液製剤のための容器を調製する方法を開示し:
‐血液製剤で血液製剤容器を満たす工程、
‐血液製剤容器のウイルスを不活性化する工程、
‐血液製剤容器中の潜在的な欠陥を検出するための品質を管理する工程、
を少なくとも含み、ウイルスを不活性化する工程が、その目的に適応したチャンバー内で、準大気圧下で血液製剤容器を蒸気と接触させることにより行われる。
【0008】
好ましくは、前記方法は、血液製剤容器のウイルスを不活性化する工程の後に追加の冷却工程を含む。より好ましくは、冷却工程は、冷却空気を再循環させることにより行われる。
【0009】
より好ましくは、ウイルスを不活性化する工程において、蒸気は「無菌」であり、言い換えれば、前記蒸気は汚染粒子を有さない。更により好ましくは、ウイルスを不活性化する工程に使用される蒸気は、衛生的品質の蒸気である。蒸気中に発見される汚染粒子は、さび、スケール、ほこり及び蒸気の発生に使用される水によりもたらされてもよい、堆積物であり得る。衛生的品質の蒸気は、衛生的な品質の水から生産される蒸気として理解され、パラメーター及びパラメーターの値は、世界保健機構により、飲料水品質のためのガイドライン内に制定されたものを満たす。
【0010】
より好ましくは、ウイルスを不活性化する工程に使用される蒸気は、飽和蒸気である。別法として、過熱状態の蒸気が使用されてもよい。
【0011】
好ましくは、品質を管理する工程は、容器の欠陥を検知するために、血液製剤容器の外観検査を含む。より好ましくは、前記外観検査の目的は、欠陥のある密封作業を有する容器を検知することである。
【0012】
より好ましくは、血液製剤は、アルブミンであり、及びウイルスを不活性化する工程は、55℃~65℃の間の温度、及び190mbar~210mbarの間の絶対圧力で行われる。更により好ましくは、血液製剤はアルブミンであり、ウイルスを不活性化する工程は、59.5℃~60.5℃の間の温度で、200mbarの絶対圧力で行われる。血液製剤がアルブミンの場合、ウイルスを不活性化する工程は、好ましくは10~11時間続く。
【0013】
別法として、血液製剤は、第VIII因子であり、及びウイルスを不活性化する工程は、80℃~82℃の間の温度で、450mbar~550mbarの間の絶対圧力で行われる。
【0014】
ウイルスを不活性化する工程におけるこれらの圧力及び温度条件は、蒸気は気体の状態であるようにする。
【0015】
好ましくは、容器は、プラスチック材料で作られるバッグである。別法として、容器はバイアルである。代替形態において、容器は、この点において、健康基準を満たしながら含まれる血液製剤を許可する他の材料で作られる。
【0016】
より良い理解のために、本発明の実施態様の添付の図は、説明的であるが制限のない例として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、血液製剤を容器に満たす工程 1、準大気圧で蒸気の接続注入口 2’を伴った、第二のウイルスを不活性化する工程 2、及び第三の品質を管理する工程 3、その後の貯蔵 4を示す。
【実施例0019】
実施例の方法による第一の実施態様において、血液製剤容器を調製する方法は、前記製剤として、アルブミンを使用する。充填工程 1において、容器は充填される。この実施態様において、容器は、好ましくは、プラスチック材料から作られるバッグである。ウイルスを不活性化する工程 2において、ウイルスの不活性化は、プラスチック材料から作られるバッグと直接接触させて、準大気圧で蒸気を使用して行われる。前記工程は、55℃~65℃の間の温度、及び190mbar~210mbarの間の絶対圧力で行われる。より好ましい実施態様において、前記工程は59.5℃~60.5℃の間で、200mbarの絶対圧力で行われる。
【0020】
前記ウイルスを不活性化する工程 2の間に、バッグは、上述の温度及び圧力条件に10~11時間の持続的な時間供される。これらの温度及び圧力条件下での持続的な時間は、負荷試験、及び小さく存在する欠陥を悪化させるバッグの密封試験を意味する。バッグが欠点を有する場合、使用される蒸気は、前記バッグを貫通する能力があり、前記貫通は肉眼で見やすく、欠陥の目視検知を簡単にする。
【0021】
次に、プラスチック材料から作られたバッグを冷却する工程を行う。前記冷却工程は、空気冷却工程である。加えて、それは空気通気装置を組み込むことが望ましい。好ましくは、空気は殺菌消毒フィルターを通過してろ過される。
【0022】
最終的に、品質を管理する工程 3は、外観検査を含む。この工程において、他のもののうち、密封欠陥が検査され、前記欠陥は、例えば、容器を溶接する欠陥、容器内の破損、破裂、及び容器の壁面の穴、及び他の種類の欠陥である。
【0023】
品質を管理する目的は、欠陥のある容器を廃棄することである。これを行うため、人工の観察及びイメージプロセッシングの手段が、例えば使用されてもよい。本発明により、欠陥は容器内の水を検知することにより検出されてもよい。
【0024】
別法として、この第一の実施態様において、ガラス容器が使用されてもよい。
【0025】
実施例の方法による第二の実施態様において、血液製剤容器を調製する方法は、第VIII因子を製剤として使用する。充填工程 1において、容器は満たされる。この実施態様において、容器は大抵バイアルである。別法として、前記容器は、他の種類の容器であってもよい。充填の後、製剤は、凍結乾燥され、前記凍結乾燥の後、ウイルスを不活性化する工程 2が行われる。ウイルスを不活性化する工程 2において、ウイルス不活性化は、準大気圧下でプラスチック材料から作られたバッグと蒸気と直接接触させる方法により行われる。前記工程は、80℃~82℃の間の温度で、450mbar~550mbarの間の絶対圧力で行われる。
【0026】
前記ウイルスを不活性化する工程 2の間に、バッグは、上述の温度及び圧力条件で72~74時間の持続時間供される。これらの温度及び圧力条件での持続時間は、負荷試験、及び小さく存在する欠陥を悪化させるバッグの密封試験を意味する。もしバッグが欠陥を有する場合、使用される蒸気が前記バッグを貫通する能力があり、前記貫通が、裸眼で見やすく、欠陥の目視検知を簡単にする。
【0027】
次に、バイアルの冷却工程を行う。前記冷却工程は空気冷却工程である。加えて、空気通気装置を組み込むことが望ましい。好ましくは、空気は殺菌消毒フィルターを通過してろ過される。
【0028】
最終的に、品質を管理する工程 3は外観検査を含む。この工程において、他のもののうち、密封欠陥が検査され、前記欠陥は、例えば、容器を溶接する欠陥、容器内の破損、破裂、及び容器の壁面の穴、及び他の種類の欠陥である。
【0029】
品質を管理する目的は、欠陥のある容器を廃棄することである。これを行うため、人工の観察及びイメージプロセッシングの方法が、例えば使用されてもよい。本発明により、欠陥は容器内に水を検知することにより検出されてもよい。
【0030】
様々な試験が、欠陥のないバッグ、及び欠陥のある対照バッグを使用して行われ、欠陥のあるバッグに関しては、蒸気がそれらを貫通し、欠陥のないバッグに関して蒸気が貫通しなかったことが示され、それは、ウイルスを不活性化する工程及び欠陥の検知の両方に関して、本出願に記載された方法の実行可能性を示す。
【0031】
本発明は、様々な代表例に基づいて、記載および示されたが、実施例の方法により与えられた前記実施態様が本発明を全く制限しないと理解され、それ故直接、又は添付の特許請求の範囲の内容と同等として、含まれるあらゆる変化が、本発明の範囲内に含まれると考えられるべきである。