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特開2024-92024混雑状況可視化システム及び混雑状況可視化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092024
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】混雑状況可視化システム及び混雑状況可視化方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20240628BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074588
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2020151971の分割
【原出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(71)【出願人】
【識別番号】506402827
【氏名又は名称】株式会社ライナロジクス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小濱 裕士
(72)【発明者】
【氏名】朴 成浩
(57)【要約】
【課題】各配送先の混雑状況を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る混雑状況可視化システムは、車両によって配送する際における所定の地点への到着予定時刻及び前記地点からの出発予定時刻の少なくとも一方が含まれる第1のデータを複数の配送業者から収集又は受信する収集・受信部と、前記第1のデータを用いて、前記地点における所定の第1の時間幅毎の混雑度を表す第2のデータを作成するデータ作成部と、前記第2のデータを用いて、前記地点における所定の第2の時間幅毎の混雑度を表すグラフを作成する可視化部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両によって配送する際における所定の地点への到着予定時刻及び前記地点からの出発予定時刻の少なくとも一方が含まれる第1のデータを複数の配送業者から収集又は受信する収集・受信部と、
前記第1のデータを用いて、前記地点における所定の第1の時間幅毎の混雑度を表す第2のデータを作成するデータ作成部と、
前記第2のデータを用いて、前記地点における所定の第2の時間幅毎の混雑度を表すグラフを作成する可視化部と、
を有する混雑状況可視化システム。
【請求項2】
前記可視化部は、
前記車両の運転者が利用する端末、及び、前記第1のデータを作成する作成者が利用する端末の少なくとも一方の端末上に前記グラフを表示させる、請求項1に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項3】
前記第2のデータ又は前記グラフを、前記第1のデータを作成するシステムに送信する送信部を有し、
前記収集・受信部は、
前記第2のデータ又は前記グラフに基づいて前記システムにより再作成された第1のデータを収集又は受信する、請求項1又は2に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項4】
前記データ作成部は、
前記地点及び前記第1の時間幅毎に、前記第1の時間幅に含まれる時刻に前記地点に対して配送する車両の台数を集計し、
前記集計の結果を前記地点における前記第1の時間幅の混雑度とすることで、前記第2のデータを作成する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項5】
前記データ作成部は、
前記集計の結果が所定の閾値を超えている場合、前記集計の対象となった前記第1の時間幅以降の第1の時間幅の混雑度を、所定の関数を用いて補正することで、前記第2のデータを作成する、請求項4に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項6】
前記関数は、前記集計の対象となった前記第1の時間幅以降も前記配送が終了していない車両の台数を算出する関数であり、
前記データ作成部は、
前記集計の対象となった前記第1の時間幅以降の第1の時間幅の混雑度に対して前記関数の値を加算することで、前記第2のデータを作成する、請求項5に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項7】
前記データ作成部は
前記第1のデータと前記第1の時間幅毎の混雑度との関係を機械学習技術により学習したモデルにより、前記収集・受信部で収集又は受信された第1のデータから前記第2のデータを作成する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の混雑状況可視化システム。
【請求項8】
車両によって配送する際における所定の地点への到着予定時刻及び前記地点からの出発予定時刻の少なくとも一方が含まれる第1のデータを複数の配送業者から収集又は受信する収集・受信手順と、
前記第1のデータを用いて、前記地点における所定の第1の時間幅毎の混雑度を表す第2のデータを作成するデータ作成手順と、
前記第2のデータを用いて、前記地点における所定の第2の時間幅毎の混雑度を表すグラフを作成する可視化手順と、
をコンピュータが実行する混雑状況可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混雑状況可視化システム及び混雑状況可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等により荷物を配送する配送業者等では、荷物の配送先リストや車両情報、地図情報等を用いて効率的な配送計画を策定することが行われている。ここで、配送計画とはどのような順番で各配送先を訪問するかの計画のことであり、配送先の訪問順の他に、例えば、各訪問先に到着する予定時刻や各訪問先から出発する予定時刻等の情報が含まれる場合が多い。
【0003】
上記のような配送計画は、配送先間の移動時間や各配送先における作業時間(又は滞在時間)等を考慮して策定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-92971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の作業時間(又は滞在時間)は各配送先における平均的な作業時間(又は滞在時間)等が用いられることが多い。しかしながら、配送先が混雑しているために平均的な作業時間(又は滞在時間)を大幅に超過し、その後の配送予定に支障をきたすことがある。一般に、1つの配送先には複数の配送業者が配送を行っているため、各配送先の混雑状況は他の配送業者の配送計画にも影響を受け、自社だけでは判断や予測ができない場合が多い。
【0006】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、各配送先の混雑状況を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る混雑状況可視化システムは、車両によって配送する際における所定の地点への到着予定時刻及び前記地点からの出発予定時刻の少なくとも一方が含まれる第1のデータを複数の配送業者から収集又は受信する収集・受信部と、前記第1のデータを用いて、前記地点における所定の第1の時間幅毎の混雑度を表す第2のデータを作成するデータ作成部と、前記第2のデータを用いて、前記地点における所定の第2の時間幅毎の混雑度を表すグラフを作成する可視化部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
各配送先の混雑状況を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る混雑状況可視化システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る混雑状況可視化装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る混雑状況可視化装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る混雑状況可視化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】混雑状況グラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、トラック等の車両により荷物(物品)を配送する際に、各配送先の混雑状況を可視化したグラフ等を運転者に提供することが可能な混雑状況可視化システム1について説明する。
【0011】
なお、本実施形態では、集荷センターや商業施設等の配送先に荷物を配送することを想定して「配送」という用語を用いるが、「配送」の代わりに、「輸送」や「運送」、「運輸」、「運搬」等といった用語が用いられてもよい。ただし、集荷センターや商業施設は配送先の一例であって、これら以外にも、例えば、デパート、スーパー、コンビニエンスストア等の各種店舗等が配送先であってもよい。また、本実施形態は、各配送先の荷物を配送する場合に限られず、例えば、集荷先から荷物を集荷する場合や荷物の配送と集荷が混在する場合等にも同様に適用可能である。
【0012】
<全体構成>
まず、本実施形態に係る混雑状況可視化システム1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る混雑状況可視化システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る混雑状況可視化システム1には、混雑状況可視化装置10と、複数の運転者端末20とが含まれる。混雑状況可視化装置10と各運転者端末20は、例えば、インターネット等の任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0014】
混雑状況可視化装置10は、複数の配送業者から配送計画(より正確には、当該配送計画を表すデータ)を収集し、これらの配送計画を用いて各配送先の所定の時間帯毎の混雑状況を表すグラフ(以下、「混雑状況グラフ」という。)を作成する。ここで、混雑状況グラフには少なくとも未来の時間帯の混雑状況が含まれる。典型的には、混雑状況グラフには、混雑状況グラフの作成時刻が含まれる時間帯よりも後の各時間帯の混雑状況が含まれる。例えば、図1に示す混雑状況グラフは8時よりも前の時間帯に作成され、8時以降の1時間毎の各時間帯の混雑状況を表している。ただし、混雑状況グラフには、現在の時間帯(つまり、当該混雑状況グラフの作成時刻が含まれる時間帯)の混雑状況が含まれていてもよいし、現在の時間帯よりも前の時間帯(つまり、過去の時間帯)の混雑状況が含まれていてもよい。
【0015】
そして、混雑状況可視化装置10は、各配送先の混雑状況グラフを運転者端末20に提供する。このように、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は、複数の配送業者の配送計画を考慮して各配送先の混雑状況グラフを作成する。これにより、各運転者は、自社だけでなく他社の配送計画の影響による混雑状況(言い換えれば、自社だけでなく他社の配送計画の影響も考慮した、将来の混雑状況の予測)を知ることが可能になる。
【0016】
ここで、各配送業者は、配送先リストや車両情報、地図情報等を用いて人手又は既知の配送計画作成システムにより配送計画を作成する。なお、配送先リストとは、例えば、配送先の場所や指定配送時間帯、配送対象の荷物に関する情報等がリスト化されたものである。また、車両情報とは、日毎又は時間帯毎に稼働可能な車両に関する情報である。地図情報は配送計画作成システムが配送先間の移動時間を算出するために必要な情報であり、地図の表示情報だけでなく、例えば、道路ネットワーク情報等も含まれる。
【0017】
図1に示す例では、配送業者Aは配送計画作成者が配送先リストと車両情報を用いて人手で配送計画を作成しており、配送業者Aは配送先リストと車両情報を用いて配送計画作成システムにより配送計画を作成している場合を示している。なお、配送計画作成システムは、例えば、配送最適化問題や運搬経路問題、VRP(Vehicle Routing Problem)等と呼ばれる最適化問題を解くことで最適な配送計画を出力するコンピュータ又はコンピュータシステムである。
【0018】
各配送業者によって作成された各配送計画には少なくとも各配送先の訪問順が含まれ、これ以外にも、例えば、当該配送先を訪問する車両(又は運転者)の識別情報、当該配送先の到着予定時刻や出発予定時刻、当該配送先の滞在予定時間等が含まれていてもよい。以降では、特に言及した場合を除き、各配送先の訪問順と、車両(又は運転者)の識別情報と、当該配送先の到着予定時刻及び出発予定時刻とが各配送計画に含まれているものとする。
【0019】
運転者端末20は、トラック等の車両の運転者が利用するスマートフォンやタブレット端末、車載器等である。運転者の操作等に応じて運転者端末20のディスプレイ上には、各配送先の混雑状況グラフが表示される。図1に示す例では、配送先「Xセンター」の1時間毎の混雑度を表す混雑状況グラフが運転者端末20のディスプレイ上に表示されている場合を示している。これにより、運転者は、例えば、自身が配送を予定している時間帯における配送先の混雑状況に応じて、荷物を配送する時間を変更する等の計画変更を行うことが可能となる。
【0020】
なお、図1に示す混雑状況可視化システム1の全体構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、配送計画作成者が利用する端末が混雑状況可視化システム1に含まれ、この端末のディスプレイ上にも各配送先の混雑状況グラフが表示されてもよい。これにより、配送計画作成者は、各配送先の混雑状況グラフを参考にして、混雑する時間帯を避けるように配送計画を作成し直したりすることが可能になる。
【0021】
また、配送計画作成者が利用する端末が混雑状況可視化システム1に含まれる場合は、運転者端末20が混雑状況可視化システム1に含まれていなくてもよい。すなわち、各配送先の混雑状況グラフは、運転者端末20には提供されずに、配送計画作成者が利用する端末のみに提供されてもよい。
【0022】
<混雑状況可視化装置10のハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10のハードウェア構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は一般的なコンピュータ又はコンピュータシステムのハードウェアにより実現され、入力装置11と、表示装置12と、外部I/F13と、通信I/F14と、プロセッサ15と、メモリ装置16とを有する。これら各ハードウェアは、それぞれがバス17を介して通信可能に接続されている。
【0024】
入力装置11は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等である。表示装置12は、例えば、ディスプレイ等である。なお、混雑状況可視化装置10は、入力装置11及び表示装置12のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0025】
外部I/F13は、記録媒体13a等の外部装置とのインタフェースである。なお、記録媒体13aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0026】
通信I/F14は、混雑状況可視化装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。プロセッサ15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算装置である。メモリ装置16は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の各種記憶装置である。
【0027】
本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は、図2に示すハードウェア構成を有することにより、後述する混雑状況可視化処理を実現することができる。なお、図2に示すハードウェア構成は一例であって、混雑状況可視化装置10は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、混雑状況可視化装置10は、複数のプロセッサ15を有していてもよいし、複数のメモリ装置16を有していてもよい。
【0028】
<混雑状況可視化装置10の機能構成>
次に、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10の機能構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10の機能構成の一例を示す図である。
【0029】
図3に示すように、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は、機能部として、配送計画収集部101と、混雑統計部102と、可視化部103とを有する。これら各機能部は、例えば、混雑状況可視化装置10にインストールされた1以上のプログラムがプロセッサ15に実行させる処理により実現される。
【0030】
配送計画収集部101は、複数の配送業者から配送計画を表すデータ(以下、「配送計画データ」という)を収集する。すなわち、配送計画収集部101は、例えば、配送業者Aの配送計画データ、配送業者Bの配送計画データ、配送業者Cの配送計画データ等を収集する。このように、配送計画収集部101は、複数の配送業者の配送計画データを収集する。
【0031】
なお、配送計画データの収集方法は問わず、配送計画収集部101は任意の方法により配送計画データを収集すればよい。例えば、配送計画作成者の端末から配送計画データが混雑状況可視化装置10にアップロードされてもよいし、配送計画作成システムから配送計画データが混雑状況可視化装置10に送信されてもよい。
【0032】
混雑統計部102は、配送計画収集部101によって収集された複数の配送計画データを用いて、各配送先における所定の時間帯毎の混雑度を表す統計データを作成する。混雑統計部102は各配送先における所定の時間帯毎の混雑度を表すものであれば任意の統計データを作成すればよいが、例えば、以下の(1)~(3)のいずれかの方法により統計データを作成することが考えられる。
【0033】
(1)各配送先及び各時間帯毎に、当該配送先に対して当該時間帯に荷物を配送する予定の車両の台数を集計し、その集計結果を当該配送先の統計データとする。
【0034】
具体的には、例えば、所定の時間帯を1時間毎の時間帯(8時~9時の時間帯、9時~10時の時間帯、10時~11時の時間帯、・・・、18時~19時の時間帯、19時~20時の時間帯等)として、配送業者Aの配送計画データには或る車両がセンターXに10時15分に荷物を配送する計画が含まれており、配送業者Bの配送計画データには或る車両がセンターXに10時20分に荷物を配送する計画が含まれており、配送業者Cの配送計画データには或る車両がセンターXに10時5分に荷物を配送する計画が含まれていたとする。この場合、センターXにおける10時~11時の時間帯の車両台数は「3」となる。
【0035】
このように、(1)の方法では、配送先毎に、各時間帯に当該配送先を訪問する予定の車両の台数を集計する。これにより、配送先毎に、各時間帯に当該配送先を訪問する予定の車両の台数で構成される統計データが作成される。すなわち、配送先のインデックスをi、時間帯のインデックスをt(ただし、t=1,・・・,T)、時間帯tに配送先iを訪問する予定の車両の台数をai,tと表記すれば、配送先iの統計データはT次元のベクトル(ai,1,・・・,ai,T)で表される。
【0036】
なお、十分な精度の混雑度を表す統計データを作成するためには、この(1)の方法は十分な数の配送業者から配送計画データを収集する必要がある。このため、例えば、少数の配送業者からしか配送計画データを収集できない場合や少数の配送業者から配送計画データを収集した段階で統計データを作成したい場合等には、所定の予測モデル等を用いて、未収集の配送業者の配送計画データを予測した上で、統計データを作成してもよい。このような予測モデルとしては、例えば、未収集の配送業者の過去の配送実績から将来の配送計画を予測するモデル等が考えられる。また、予測モデルを利用する以外に、例えば、未収集の配送業者の過去の配送計画データ(特に、過去の同一又は類似する条件(曜日や月、天候等の条件)の配送計画データ等)を用いて統計データを作成してもよいし、収集済みの配送業者の配送計画データから作成された統計データを補正(例えば、収集対象の全配送業者数が10社、収集済みの配送業者数が5社である場合、統計データに含まれる各値を2倍にする補正等)してもよい。これにより、十分な数の配送業者から配送計画データを収集していなくても、統計データが表す混雑度の精度を高めることが可能になる。
【0037】
(2)上記の(1)で得られた集計結果が或る閾値を超えている場合は、その集計結果以降の時間帯の集計結果に対して或る所定の関数値で補正した結果を当該配送先の統計データとする。
【0038】
すなわち、例えば、所定の閾値をσとして、ai,t≧σである場合は、ai,t+1~ai,Tに対して関数値f(ai,t,t+1)~f(ai,t,T)をそれぞれ加算する。つまり、配送先iの統計データを(ai,1,・・・,ai,t,ai,t+1+f(ai,t,t+1),・・・,ai,T+f(ai,t,T))とする。ここで、関数f(ai,t,s)は、例えば、rを配送先i毎に決まる正の定数として、ai,t≧s×rのときはf(ai,t,s)=ai,t-(s-t)×rとなり、x<s×rのときはf(ai,t,s)=0となる関数等を用いることが考えられる。
【0039】
これは、例えば、或る時間帯tの混雑度(車両台数)ai,tが閾値σよりも高い場合は、例えば待ち行列や作業遅延等が発生する可能性があり、時間帯t以降の時間帯でも混雑が解消されず、時間帯t以降の時間帯の混雑度も高くなることを意味している。また、上記のrは、1つの時間帯あたりに配送先iから出発する車両数を表す。
【0040】
(3)機械学習の手法により予め作成された機械学習モデルを用いて、この機械学習モデルに対して配送計画データを入力することで、その出力として配送先毎の統計データを得る。
【0041】
このような機械学習モデルは、例えば、各配送先で集計された各時間帯の混雑度(車両台数)の実績と、そのときの配送計画データとを学習用データとして、既知の教師あり学習等の手法により作成すればよい。なお、このとき、学習用データには、曜日や天候等の様々な条件を表す情報が含まれていてもよい。このため、機械学習モデルを用いることで様々な条件の下で、高い精度で混雑度を予測することが可能になると期待できる。
【0042】
可視化部103は、混雑統計部102によって作成された統計データを用いて、各配送先の所定の時間帯毎の混雑状況を表す混雑状況グラフを作成する。すなわち、可視化部103は、各配送先の統計データを用いて、例えば、時間帯を横軸、混雑度を縦軸とした棒グラフを各配送先毎に作成し、この棒グラフを混雑状況グラフとする。ただし、混雑状況グラフは棒グラフに限られず、例えば、折れ線グラフ等の任意の種類のグラフで作成してもよい。
【0043】
なお、統計データに含まれる混雑度が表す時間帯の時間幅と、混雑状況グラフに含まれる混雑度が表す時間帯の時間幅とは必ずしも同一の時間幅である必要はない。例えば、統計データには30分間毎の混雑度が含まれている一方で、混雑状況グラフでは1時間毎の混雑度がグラフ化されていてもよい。
【0044】
また、可視化部103は、例えば、運転者端末20からの要求に応じて、各配送先の混雑状況グラフを当該運転者端末20に送信する。これにより、運転者端末20のディスプレイ上には各配送先の混雑状況グラフが表示される。
【0045】
<混雑状況可視化処理の流れ>
次に、本実施形態に係る混雑状況可視化処理の流れについて、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る混雑状況可視化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、配送計画収集部101は、複数の配送業者から複数の配送計画データを収集する(ステップS101)。
【0047】
次に、混雑統計部102は、上記のステップS101で収集された配送計画データを用いて、各配送先における所定の時間帯毎の混雑度を表す統計データを作成する(ステップS102)。なお、上述したように、混雑統計部102は、上記の(1)~(3)のいずれかの方法により各配送先の統計データを作成すればよい。
【0048】
ここで、上記のステップS101で収集された配送計画データの中には、一部の情報が含まれていない配送計画データが存在する場合もある。すなわち、例えば、各配送先の到着予定時刻、出発予定時刻及び滞在予定時間の全部又は一部が含まれていない配送計画データが存在する場合もある。この場合、混雑統計部102は、例えば、地図情報や過去の実績、所定の設定値等に基づいて各配送先間の移動時間や各配送先における荷物の積み降ろし時間等を計算・推定し、その結果から到着予定時刻や出発予定時刻、滞在予定時間を推定した上で、上記の統計データを作成してもよい。なお、例えば、各配送先の到着予定時刻や出発予定時刻、滞在予定時間が配送計画データに含まれている場合であっても、混雑統計部102は、上記のように推定した到着予定時刻や出発予定時刻、滞在予定時間を用いて上記の統計データを作成してもよい。
【0049】
次に、可視化部103は、上記のステップS102で作成された各配送先の統計データを用いて、各配送先の混雑状況グラフを作成する(ステップS103)。
【0050】
そして、可視化部103は、例えば、運転者端末20からの要求に応じて、各配送先の混雑状況グラフを当該運転者端末20に送信する(ステップS104)。これにより、運転者端末20のディスプレイ上には各配送先の混雑状況グラフが表示される。ここで、運転者端末20のディスプレイ上に表示される混雑状況グラフの一例を図5に示す。図5に示す例は、配送先「Yセンター」の1時間毎の混雑度を表す混雑状況グラフ210である。なお、このとき、特に混雑している時間帯(例えば、最も混雑度が高い時間帯、混雑度が或る閾値を超えている時間帯等)を目立つ態様で表示してもよい。図5に示す混雑状況グラフ210では、15時~16時の時間帯が特に混雑しており、他の時間帯よりも目立つ態様で表示されている。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る混雑状況可視化システム1は、複数の配送業者の配送計画を用いて各配送先の混雑状況を可視化し、運転者に提供することができる。これにより、各運転者は、自社だけでなく、他社の配送計画も考慮した混雑状況を知ることができる。このため、各運転者は、例えば、混雑状況に応じて、配送計画を見直す等の対応を行うことができるようになる。
【0052】
<応用例>
以下、本実施形態の応用例について説明する。
【0053】
≪応用例1≫
本実施形態に係る混雑状況可視化装置10によって作成された混雑状況グラフ又は統計データを配送計画作成システムにフィードバックし、当該配送計画作成システムで配送計画を再度作成し直してもよい。また、このフィードバックと配送計画の再作成は、例えば、配送計画が最適化されるまで繰り返し実行されてもよい。
【0054】
≪応用例2≫
本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は、「配送先」の代わりに、特定の施設や特定の地点、特定の地域等の混雑状況を可視化してもよい。具体的には、特定の交差点等の道路上の地点、料金所等の施設の混雑状況を可視化してもよい。また、配送先に車両が移動する際に通過することが予想される地点や地域等の混雑状況を可視化してもよい。なお、地域とは或る程度の広がりがある地理的範囲のことであり、具体例としては、「東京都〇〇区××3丁目」等といった範囲が挙げられる。
【0055】
≪応用例3≫
配送計画の代わりに、例えば、旅行の行動予定等を用いることで、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は各観光地の混雑状況を可視化してもよい。また、同様に、営業の営業先訪問計画や機器の定期メンテナンス巡回計画等を用いることで、本実施形態に係る混雑状況可視化装置10は各営業先の混雑状況を可視化したり、定期メンテナンスの巡回先の混雑状況を可視化したりしてもよい。
【0056】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 混雑状況可視化システム
10 混雑状況可視化装置
11 入力装置
12 表示装置
13 外部I/F
13a 記録媒体
14 通信I/F
15 プロセッサ
16 メモリ装置
17 バス
101 配送計画収集部
102 混雑統計部
103 可視化部
図1
図2
図3
図4
図5