(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092039
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】呼気成分測定装置及び異常判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240628BHJP
A61B 5/097 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N1/02 W
A61B5/097
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074970
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2019213451の分割
【原出願日】2019-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】大友 博康
(57)【要約】
【課題】 呼気収容部に取り込んだ気体が被験者の呼気であることが担保する。
【解決手段】 呼気成分測定装置10は、被験者の呼気を導入する導入口21aを有し導入口21aを通じて導入された呼気を収容する呼気収容部20と、被験者の口から吹き出された呼気を導入口21aに導入する呼気流路33と、呼気収容部20に導入された呼気の所定成分を測定するガスセンサ15と、導入口21aから呼気収容部20への呼気の導入の際の、呼気流路33における呼気の吹出圧力の異常の有無を判定する異常判定部103とを備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気を導入する導入口を有し当該導入口を通じて導入された呼気を収容する呼気収容部と、
前記被験者の口から吹き出された呼気を前記導入口に導入する呼気導入部と、
前記呼気収容部に導入された呼気の所定成分を測定する成分測定部と、
前記導入口から前記呼気収容部への呼気の導入の際の、前記呼気導入部における呼気の吹出圧力の異常の有無を判定する異常判定部と、
を備えた、呼気成分測定装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記呼気収容部の内部の圧力を検出する圧力検出部を備え、前記圧力検出で検出された圧力に基づいて前記異常の有無を判定する、請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項3】
前記呼気収容部に前記呼気を導入するために前記呼気収容部に負圧を発生させる負圧発生部をさらに備え、
前記異常判定部は、前記負圧発生部による負圧発生のための動作の際の前記吹出圧力の異常の有無を判定する、請求項1又は2に記載の呼気成分測定装置。
【請求項4】
前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備え、
前記異常判定部は、前記負圧発生の準備のために前記容積変更部が前記容積を減少させた際の前記圧力検出部が検出した圧力の変化が第1の閾値以下である場合に、前記異常があると判定する、請求項2を引用する請求項3に記載の呼気成分測定装置。
【請求項5】
前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備え、
前記異常判定部は、前記負圧発生の準備のために前記容積変更部が前記容積を減少させた後に、前記圧力検出部が検出した圧力が第2の閾値以下になった場合に、前記異常があると判定する、請求項2を引用する請求項3に記載の呼気成分測定装置。
【請求項6】
前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備え、
前記異常判定部は、前記負圧発生のために前記容積変更部が前記容積を増加させた際に前記圧力検出部が検出した圧力の変化が第3の閾値以下である場合に、異常があると判定する、請求項2を引用する請求項3に記載の呼気成分測定装置。
【請求項7】
前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備え、
前記異常判定部は、前記負圧発生のために前記容積変更部が前記容積を増加させた後に、前記圧力検出部が検出した圧力が第4の閾値以下になった場合に、前記異常があると判定する、請求項2を引用する請求項3に記載の呼気成分測定装置。
【請求項8】
前記呼気導入部に対して前記被験者の口からの吸込み、息止め、呼気の吹出しがこの順で行われたことを検知する呼気流入測定部をさらに備え、
前記異常判定部は、前記息止めが行われたときの圧力を基準圧力として、前記基準圧力からの前記吹出圧力に基づいて、異常の有無を判定する、請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項9】
被験者の呼気を導入する導入口を有する呼気収容部に収容された呼気について所定成分を測定する呼気成分測定における異常の有無を判定する異常判定方法であって、
前記導入口から前記呼気収容部への呼気の導入の際の、前記被験者の口から吹き出された呼気を前記導入口に導入する呼気導入部における呼気の吹出圧力の異常を判定する異常判定をする、異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼気の所定成分を測定する呼気成分測定装置及び呼気成分測定における異常の有無を判定する異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気成分測定装置は、被験者の口から吹き出された呼気を呼気収容部に取り込んで、呼気収容部に取り込んだ呼気に含まれる所定成分を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このために、被験者の口からは呼気収容部に対して適切な圧力で呼気が吹き出されなければならない。呼気収容部が被験者の呼気を取り込む際に、被験者からの呼気の吹出圧力が適切でない場合には、呼気収容部に取り込んだ気体が被験者の呼気であることが担保されず、適切に被験者の呼気の成分を測定することができない。
【0005】
そこで、本発明は、呼気収容部に取り込んだ気体が被験者の呼気であることが担保するための呼気成分測定装置及び異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の呼気成分測定装置は、被験者の呼気を導入する導入口を有し当該導入口を通じて導入された呼気を収容する呼気収容部と、前記被験者の口から吹き出された呼気を前記導入口に導入する呼気導入部と、前記呼気収容部に導入された呼気の所定成分を測定する成分測定部と、前記導入口から前記呼気収容部への呼気の導入の際の、前記呼気導入部における呼気の吹出圧力の異常の有無を判定する異常判定部とを備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、被験者の呼気を呼気収容部に導入する際の被験者からの呼気の吹出圧力の異常の有無を判定することで、呼気収容部に取り込んだ呼気が被験者の呼気であることを担保できる。
【0008】
上記の呼気成分測定装置において、前記異常判定部は、前記呼気収容部の内部の圧力を検出する圧力検出部を備えてよく、前記圧力検出で検出された圧力に基づいて前記異常の有無を判定してよい。
【0009】
この構成により、呼気収容部の内部の圧力を検出することで吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0010】
上記の呼気成分測定装置は、前記呼気収容部に前記呼気を導入するために前記呼気収容部に負圧を発生させる負圧発生部をさらに備えていてよく、前記異常判定部は、前記負圧発生部による負圧発生のための動作の際の前記吹出圧力の異常の有無を判定してよい。
【0011】
この構成により、負圧によって呼気を呼気収容部に導入する際の吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0012】
上記の呼気成分測定装置において、前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備えていてよく、前記異常判定部は、前記負圧発生の準備のために前記容積変更部が前記容積を減少させた際の前記圧力検出部が検出した圧力の変化が第1の閾値以下である場合に、前記異常があると判定してよい。
【0013】
この構成により、被験者の呼気を呼気収容部に導入するための負圧を発生する準備として呼気収容部の容積を減少させた際の吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0014】
上記の呼気成分測定装置において、前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備えていてよく、前記異常判定部は、前記負圧発生の準備のために前記容積変更部が前記容積を減少させた後に、前記圧力検出部が検出した圧力が第2の閾値以下になった場合に、前記異常があると判定してよい。
【0015】
この構成により、被験者の呼気を呼気収容部に導入するための負圧を発生する準備として呼気収容部の容積を減少させた後の吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0016】
上記の呼気成分測定装置において、前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備えていてよく、前記異常判定部は、前記負圧発生のために前記容積変更部が前記容積を増加させた際に前記圧力検出部が検出した圧力の変化が第3の閾値以下である場合に、異常があると判定してよい。
【0017】
この構成により、被験者の呼気を呼気収容部に導入するための負圧を発生するために呼気収容部の容積を増加させた際の吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0018】
上記の呼気成分測定装置において、前記負圧発生部は、前記呼気収容部の容積を変更するための容積変更部を備えていてよく、前記異常判定部は、前記負圧発生のために前記容積変更部が前記容積を増加させた後に、前記圧力検出部が検出した圧力が第4の閾値以下になった場合に、前記異常があると判定してよい。
【0019】
この構成により、被験者の呼気を呼気収容部に導入するための負圧を発生するために呼気収容部の容積を増加させた後の吹出圧力の異常の有無を判定できる。
【0020】
上記の呼気成分測定装置は、前記呼気導入部に対して前記被験者の口からの吸込み、息止め、呼気の吹出しがこの順で行われたことを検知する呼気流入測定部をさらに備えていてよく、前記異常判定部は、前記息止めが行われたときの圧力を基準圧力として、前記基準圧力からの前記吹出圧力に基づいて、異常の有無を判定してよい。
【0021】
この構成により、基準圧力が不正確であることにより異常が発生し、あるいは不正確な成分測定が行われる可能性を低減できる。
【0022】
本発明の一態様の異常判定方法は、被験者の呼気を導入する導入口を有する呼気収容部に収容された呼気について所定成分を測定する呼気成分測定における異常の有無を判定する異常判定方法であって、前記導入口から前記呼気収容部への呼気の導入の際の、前記被験者の口から吹き出された呼気を前記導入口に導入する呼気導入部における呼気の吹出圧力の異常を判定する異常判定をする構成を有している。
【0023】
この構成によっても、被験者の呼気を呼気収容部に導入する際の被験者からの呼気の吹出圧力の異常の有無を判定することで、呼気収容部に取り込んだ呼気が被験者の呼気であることを担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の正面図であり、
図2(b)は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の側面図であり、
図2(c)は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置全体の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態の制御部が実現する機能ブロックを示した図である。
【
図6】
図6は、異常がない場合の圧力センサの出力(呼気収容部内の圧力)の一例を示したグラフである。
【
図7】
図7は、吹出しに異常がある場合の圧力センサの出力(呼気収容部内の圧力)の一例を示したグラフである。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図8C】
図8Cは、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、吹込みを開始する前の呼気収容部内の圧力に異常があることにより被験者の呼気が取り込めない状況の一例を説明する図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施の形態の圧力センサの出力(呼気収容部内の圧力)の一例を示したグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0026】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る呼気成分測定装置10の外観を示す斜視図である。
図2(a)は呼気成分測定装置10の正面図であり、
図2(b)は呼気成分測定装置10の側面図であり、
図2(c)は呼気成分測定装置10の上面図である。
図3は、呼気成分測定装置10の断面図である。
【0027】
呼気成分測定装置10には、被験者の口から吹き出された呼気が通過する呼気流路33を備えたマウスピース30が取り付けられる。呼気成分測定装置10には、電源スイッチ12と、操作ボタン等の入力インターフェース(入力I/F)13と、マウスピース30を取り付けるための取付部14と、呼気流路33と連通する導入口21aが設けられた突起21と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部11aとが設けられている。取付部14には、マウスピース30を着脱自在に保持する保持部19が設けられている。導入口21aは、被験者の呼気を呼気成分測定装置10の内部の呼気収容部20へ導入する。呼気成分測定装置10は、乾電池等のバッテリーを内蔵でき、被験者によって携帯可能である。
【0028】
マウスピース30は、被験者が呼気を吹き込むための吹込口31と、呼気が排出される排出口32と、吹込口31と排出口32との間に形成された呼気流路33とを有している。呼気流路33には、マウスピース30が呼気成分測定装置10に取り付けられた際に突起21が嵌められる貫通口33aが形成されている。突起21が貫通口33aに嵌められると、呼気流路33と導入口21aとが連通する。この呼気流路33は、被験者の口から吹き出された呼気を導入口21aに導入するものであり、呼気導入部に相当する。
【0029】
呼気成分測定装置10は、導入口21aを有する呼気収容部20と、呼気収容部20に収容された呼気について所定成分を測定するガスセンサ15と、呼気収容部20内の圧力を検出する圧力センサ16と、呼気収容部20の容積を変更するソレノイド18と、呼気成分測定装置10を制御する制御部100とを含む。本実施形態では、所定成分としては、アルコールが用いられる。
【0030】
呼気収容部20は、ガスセンサ15が設けられているガスセンサ室15aと、膨張収縮可能な容器であるエアバレル17と、導入口21aとガスセンサ室15aとを連通する流路22と、ガスセンサ室15aとエアバレル17とを連通する流路23と、エアバレル17と圧力センサ16とを結ぶ流路24とを含む。
【0031】
ソレノイド18は、エアバレル17と連結されている。ソレノイド18は、後述するソレノイド制御信号を受けると伸張して、エアバレル17を押し込んで収縮(容積を減少)させる。また、ソレノイド18は、ソレノイド制御信号が解除されると収縮して、エアバレル17を引き戻して膨張(容積を増加)させる。ソレノイド18は、エアバレル17を収縮させた後に膨張させることで、導入口21aを通じて被験者の呼気を呼気収容部20(特に、ガスセンサ室15a)に引き込む。エアバレル17の収縮や膨張により、呼気収容部20の容積は変更される。ソレノイド18及びエアバレル17からなる構成は、呼気収容部20に呼気を導入するために呼気収容部20に負圧を発生させるものであり、負圧発生部に相当する。また、エアバレル17は、呼気収容部20の容積を変更するものであり、容積変更部に相当する。
【0032】
圧力センサ16は、呼気収容部20内の圧力を検出する。呼気収容部20内の圧力は、被験者の呼気流路33への呼気の吹込み、および、呼気収容部20の容積の変更に応じて変動する。圧力センサ16は、ダイヤフラムの表面に半導体ひずみゲージが形成された圧力センサである。圧力センサ16では、外部からの力(圧力)によるダイヤフラムの変形に応じて、ピエゾ抵抗効果により電気抵抗が変化する。圧力センサ16は、電気抵抗の変化を電気信号に変換する。なお、圧力センサ16は他の方式の圧力センサでもよい。
【0033】
ガスセンサ15は、成分測定部の一例である。ガスセンサ15は、感ガス体を備え、ガスセンサ室15aに引き込まれた呼気中のガス(アルコール)を測定する。本実施形態では、ガスセンサ15として、アルコールに触れると電流が流れる感ガス体を有する電気化学式センサが用いられる。この電気化学式センサは、感ガス体を流れる電流の値によって呼気中のアルコール濃度を表す。一例としては、アノード(anode)およびカソード(cathode)としてPt(白金)またはPt合金が用いられ、電解質として硫酸(H2SO4)が用いられるセンサが挙げられる。このセンサは、アルコール分子が白金触媒に酸化されたときに生じる電流の変化によって呼気中のアルコール濃度を表す。
【0034】
なお、ガスセンサ15は、呼気中のアルコール濃度を測定できればよい。このため、ガスセンサ15としては、例えば、金属酸化物に吸着させた酸素と気体中のアルコールとの反応によって電気抵抗が変化する半導体センサ(つまり、気体中のアルコール濃度に応じて電気抵抗が変化する半導体センサ)など、様々な方式のアルコールセンサが採用可能である。
【0035】
図4は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置10全体の構成を示すブロック図である。呼気成分測定装置10は、表示部11aと、入力I/F13と、ガスセンサ15と、圧力センサ16と、ソレノイド18と、呼気収容部20(導入口21a、流路22、ガスセンサ室15a、流路23、エアバレル17、および流路24)と、制御部100とに加えて、出力インターフェース(出力I/F)11と記憶部28とを含む。
【0036】
出力I/F11は、ディスプレイやスピーカなど、映像や音響を出力するデバイスである。出力I/F11は、出力部の一例である表示部11aを含む。
【0037】
記憶部28は、コンピュータにて読取可能な記録媒体、例えば、半導体記録媒体、磁気式記録媒体または光学式記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体、または、これらの記録媒体が組み合わされた記録媒体である。記憶部28は、制御部100の動作を規定するプログラムと、種々の情報(閾値等)とを記憶する。
【0038】
図5は、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置10の制御部100が実現する機能ブロックを示した図である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータである。制御部100は、記憶部28に記憶されているプログラムを読み取り実行することによって、
図5に示すように、呼気流入判定部101と、動作制御部102と、異常判定部103と、アルコール濃度測定部104と、運転可否判定部105と、出力情報生成部106と、を実現する。
【0039】
呼気流入判定部101は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、呼気の呼気流路33への流入の有無と、呼気の呼気流路33への流入の継続の有無とを判定する。具体的には、呼気流入判定部101は、呼気の吹出しが可能になった時点での圧力センサ16の圧力から閾値圧力差Thp1以上の圧力の上昇があった場合に、呼気流路33への呼気の流入があると判定する。
【0040】
動作制御部102は、呼気流入判定部101の判定結果に基づいて、ソレノイド18を駆動する。一例を挙げると、呼気流入判定部101が、呼気の呼気流路33への流入の継続時間が閾値時間Tht1(例えば3秒)を超えていると判断すると、動作制御部102は、ソレノイド18にソレノイド制御信号を一定時間(例えば200m秒)出力した後にその出力を終了して、エアバレル17の容積を一旦減少(収縮)させた後に増加させる。このエアバレル17の容積の増加(膨張)に応じて、呼気流路33の呼気が呼気収容部20(特には、ガスセンサ室15a)に引き込まれる。動作制御部102は、ソレノイド制御信号の出力を開始すると、ソレノイド18の駆動開始を示す駆動情報を異常判定部103に出力する。
【0041】
異常判定部103は、ソレノイド18の駆動によって呼気収容部20の容積(エアバレル17の容積)が変更された場合、即ち導入口21aから呼気収容部20への呼気の導入の際に、その容積の変更に応じた圧力センサ16の出力に基づいて、呼気流路33における呼気の吹出圧力の異常の有無を判定する。
【0042】
ここで、異常の一例として、呼気を取り込む際に、被験者から呼気が呼気流路33に吹き出されていないという異常(不正測定)について説明する。
【0043】
まず、呼気流入判定部101は、呼気による圧力センサ16の圧力差が閾値圧力差Thp1を超える状態が閾値時間Tht1以上継続しない場合には、呼気の取り込みを行わないので、例えば、被験者から呼気が吹き出されていないという異常な状態で呼気の呼気収容部20に呼気を取り込まないようにしている。
【0044】
図6は、異常がない場合の圧力センサ16の出力(呼気収容部20内の圧力)の一例を示したグラフである。
図6において、被験者が呼気流路33に呼気を吹き出していない状態では(タイミングt1より前)、呼気収容部20内の圧力は大気圧P0を示している。タイミングt1は、被験者の呼気流路33への呼気の吹出し開始タイミングである。タイミングt2は、呼気の吹出しによってタイミングt1からの圧力差が閾値圧力差Thp1よりも大きくなったタイミングである。この後、呼気の吹出しによって圧力センサ16の出力は吹出圧力P1程度を維持する。タイミングt3は、タイミングt1からの圧力差が閾値圧力差Thp1より大きい状態の継続時間が閾値時間Tht1に達して、動作制御部102がソレノイド18を駆動するためのソレノイド制御信号を出力し始めるタイミングである。
【0045】
ソレノイド18は、ソレノイド制御信号に応じて伸張を開始することで、エアバレル17を押し込んでエアバレル17(呼気収容部20)の容積を減少させる動作を開始する。これにより、呼気収容部20内の圧力は増加し、その増加分は閾値圧力差Thp2を超える。ソレノイド18の伸長が停止した後、呼気収容部20内の圧力は減少し、ソレノイド18の伸長開始から閾値時間Tht2を経過するタイミングt4には、もとの吹出圧力P1に戻る。
【0046】
動作制御部102がソレノイド制御信号を出力し始めたタイミングt3から所定時間(例えば、200m秒)を経過したタイミングt5において、動作制御部102は、ソレノイド制御信号を停止する。これにより、ソレノイド18は、収縮を開始し、エアバレル17を膨張させてエアバレル17(呼気収容部20)の容積を増加させる動作を開始する。これに伴って、呼気収容部20内の圧力は減少する。その減少分は閾値圧力差Thp3を超える。ソレノイド18の収縮が停止した後、呼気収容部20内の圧力は増加し、ソレノイドの18の収縮開始から閾値時間Tht3が経過するタイミングt6には、もとの吹出圧力P1に戻る。やがて、タイミングt7において被験者による呼気の吹出しが終了すると、呼気収容部20内の圧力は徐々に低下して、大気圧P0に戻る。
【0047】
図7は、吹出しに異常がある場合の圧力センサ16の出力(呼気収容部20内の圧力)の一例を示したグラフである。
図6の正常な場合と同様に、被験者が、圧力差が閾値圧力差Thp1以上となる吹出しを閾値時間Tht1だけ継続して行うと、タイミングt3において動作制御部102がソレノイド18にソレノイド制御信号を出力して、ソレノイド18を伸長させる。しかしながら、このとき、被験者による吹出しの圧力がタイミングt3以前よりも低くなると(典型的には、被験者による呼気の吹出しがなくなる、あるいは被験者が吸い込みを行うと)、ソレノイド18の伸長及びエアバレル17の膨張による呼気収容部20内の圧力変化は
図6と同様にはならない。
【0048】
まず、ソレノイド18が伸長し始めるタイミングt3において被験者による吹出の圧力がなくなると、ソレノイド18の伸長によってエアバレル17の容積が減少しても呼気収容部20内の圧力は十分に上昇せず、圧力の増加分は閾値圧力差Thp2を超えない。ソレノイド18の伸長が開始してから閾値時間Tht2が経過したタイミングt4には、呼気収容部20内の圧力は、吹出圧力P1ではなく、大気圧P0に戻って安定する(なお、被験者が吸込みを行っている場合は大気圧P0以下の圧力で安定する)。この状態でタイミングt5においてソレノイド制御信号を停止してソレノイド18が収縮を開始し、それによってエアバレル17の容積が増加すると、それによって呼気収容部20内の圧力は減少するが、この時点はすでに大気圧P0以下になっている。その後、閾値時間Tht3が経過したタイミングt6には、呼気収容部20内は大気圧P0に戻って安定している。
【0049】
そこで、異常判定部103は、呼気収容部20の容積の変更に応じた圧力センサ16の出力の変化に基づいて、異常の有無を判定する。具体的には、異常判定部103は、ソレノイド18が呼気収容部20の容積を減少させたときに圧力センサ16が検出した圧力の増加分が第1閾値(一例として、
図6、7の閾値圧力差Thp2)以上にならない場合に異常ありと判定する。また、異常判定部103は、ソレノイド18が呼気収容部20の容積を減少させ始めてから所定時間(一例として、
図6、7の閾値時間Tht2)を経過したときに、圧力センサ16が検出した圧力が第2閾値(一例として、
図6、7の大気圧P0より閾値圧力差Thp1だけ大きい値)を下回っている場合には、吹出圧力P1を得るための吹出しが維持されていないと判断して、異常ありと判定する。
【0050】
また、異常判定部103は、ソレノイド18が呼気収容部20の容積を増加させたときに圧力センサ16が検出した圧力の減少分が第3閾値(一例として、
図6、7の閾値圧力差Thp3)を下回っている場合に異常ありと判定する。また、異常判定部103は、ソレノイド18が呼気収容部20の容積を増加させ始めてから所定時間(一例として、
図6、7の閾値時間Tht3)を経過したときに、圧力センサ16が検出した圧力が第4閾値(一例として、
図6、7の大気圧P0より閾値圧力差Thp1だけ大きい値)を下回っている場合には、吹出圧力P1を得るための吹出しが維持されていないと判断して、異常ありと判定する。
【0051】
アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の出力に基づいて、呼気中のアルコールの濃度を測定する。具体的には、アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の出力電流に基づいて、呼気中のアルコール濃度を算出する。
【0052】
運転可否判定部105は、アルコール濃度測定部104が算出した呼気中のアルコール濃度に基づいて、被験者の運転可否の判定を行う。運転可否判定部105は、呼気中のアルコール濃度が、記憶部28に記憶されている運転可否判定閾値以下である場合には、運転可能であると判断する。
【0053】
出力情報生成部106は、表示部11aに各種の情報を表示させる。出力情報生成部106は、例えば、息の吹出しの待機の指示や、息の吹出しの指示や、吹出し終了の指示など、操作ガイドの情報を表示部11aに表示させる。また、出力情報生成部106は、呼気中のアルコール濃度の数値、運転可否判定部105の判定結果、呼気流入判定部101の判定結果、および異常判定部103の判定結果等も表示部11aに表示させる。
【0054】
図8A~8Cは、本発明の第1の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。まず、被験者が電源スイッチ12を押下すると、出力情報生成部106は、測定可能になるまでの待機時間(例えば、5秒)の間、吹出し待機の表示を表示部11aに実行させる(ステップS101)。
【0055】
待機時間の終了後、出力情報生成部106は、マウスピース30に呼気を所定時間(例えば5秒間)吹出す旨の吹出し指示表示を表示部11aに実行させる(ステップS102)。
【0056】
吹出し指示表示に応じて被験者がマウスピース30の吹込口31に呼気を吹き出すと、呼気が呼気流路33を通過する。この際、呼気の圧力が、導入口21aを介して呼気収容部20内に伝わって圧力センサ16で検出される。
【0057】
呼気流入判定部101は、圧力センサ16の出力に基づいて、呼気収容部20内の圧力差(即ち、ステップS101の時点での圧力からの圧力増加分の大きさ)を算出する。圧力差が閾値圧力差Thp1以下である場合(ステップS103でNO)、処理がステップS102に戻される。
【0058】
一方、呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1よりも大きい場合(ステップS103でYES)、呼気流入判定部101は、吹出しの検出を示す吹出し検出情報を出力情報生成部106に出力する。出力情報生成部106は、吹出し検出情報を受け取ると、吹出し中を示す表示を、表示部11aに実行させる(ステップS104)。
【0059】
呼気流入判定部101は、吹出し検出情報を出力した後に呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1以下になった場合(ステップS105でNO)、吹出しの中断を示す吹出し中断情報を出力情報生成部106に出力する。出力情報生成部106は、吹出し中断情報を受け取ると、吹出し中断エラーを示す表示を表示部11aに実行させる(ステップS107)。
【0060】
呼気流入判定部101は、吹出し検出情報を出力した後に呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1よりも大きい場合(ステップS105でYES)、ステップS103でYESと判断してからの経過時間tが閾値時間Tht1よりも長いか否かを判断する(ステップS106)。ここで、経過時間tは、呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1よりも継続して大きくなっている時間を表す。経過時間tが閾値時間Tht1以下である場合(ステップS106でNO)、処理がステップS104に戻される。
【0061】
経過時間tが閾値時間Tht1よりも長いと(ステップS106でYES)、呼気流入判定部101は、呼気の取込みの開始を示す開始情報を動作制御部102に出力する。動作制御部102は、開始情報を受け取ると、ソレノイド18にソレノイド制御信号を出力してソレノイド18を伸長させる(ステップS108)。これにより、エアバレル17の容積が減少し、呼気収容部20内の気体の少なくとも一部は導入口21aから排出される。動作制御部102は、ソレノイド18の駆動を開始すると、駆動情報を異常判定部103に出力する。
【0062】
異常判定部103は、ソレノイド18の伸長駆動によって呼気収容部20内の圧力差(即ち、ソレノイドからの圧力の増加分の大きさ)が閾値圧力差Thp2より大きくなったか否かを判断する(ステップS109)。ソレノイド18の伸長によって呼気収容部20内の容積が減少したにもかかわらず呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp2以下である場合には(ステップS109でNO)、異常判定部103は、吹出圧力に異常があると判断して異常圧力の検出を示す異常圧力検出情報を出力情報生成部106に出力する(ステップS116)。
【0063】
呼気収容部20内の圧力差が正常に閾値圧力差Thp2を上回る場合には(ステップS109でYES)、異常判定部103は、ステップS106からの経過時間tが閾値時間Tht2よりも長いか否かを判断する(ステップS110)。経過時間tが閾値時間Tht2以下である場合(ステップS110でNO)、ステップS110を繰り返す。経過時間tが閾値時間Tht2を超えると(ステップS110でYES)、異常判定部103は、そのときの呼気収容部20内の圧力差(即ち、ステップS101の時点での圧力からの圧力増加分の大きさ)が閾値圧力差Thp1より大きい値を維持できているか否かを判断する(ステップS111)。この時点で呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1以下である場合は(ステップS111でNO)、異常判定部103は、吹出圧力に異常があると判断して異常圧力の検出を示す異常圧力検出情報を出力情報生成部106に出力する(ステップS116)。
【0064】
呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1を上回っている場合は(ステップS111でYES)、動作制御部102は、ソレノイド18へのソレノイド制御信号の出力を停止して、ソレノイド18を収縮させる(ステップS112)。これにより、エアバレル17の容積が増加し、呼気流路33から呼気収容部20に呼気が取り込まれる。
【0065】
異常判定部103は、呼気収容部20内の圧力差(即ち、ソレノイド制御信号を停止する直前の圧力からの圧力減少分の大きさ)が閾値圧力差Thp3より大きいか否かを判断する(ステップS113)。呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp3以下である場合には(ステップS113でNO)、異常判定部103は、吹出圧力に異常があると判断して異常圧力の検出を示す異常圧力検出情報を出力情報生成部106に出力する(ステップS116)。
【0066】
呼気収容部20内の圧力が正常に閾値圧力差Thp3を上回る場合には(ステップS113でYES)、異常判定部103は、ステップS112からの経過時間tが閾値時間Tht3よりも長いか否かを判断する(ステップS114)。経過時間tが閾値時間Tht3以下である場合(ステップS114でNO)、ステップS114を繰り返す。経過時間tが閾値時間Tht3を超えると(ステップS114でYES)、異常判定部103は、その時の呼気収容部20内の圧力差(即ち、ステップS101の時点での圧力からの圧力増加分の大きさ)が閾値圧力差Thp1より大きい値を維持できているか否かを判断する(ステップS115)。この時点で呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1以下である場合は(ステップS115でNO)、異常判定部103は、吹出圧力に異常があると判断して異常圧力の検出を示す異常圧力検出情報を出力情報生成部106に出力する(ステップS116)。
【0067】
呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp1を上回っている場合は(ステップS115でYES)、異常判定部103は、異常なしと判定し、ガスセンサ15を動作させる。ガスセンサ15は、ガスセンサ室15a内の呼気のアルコール濃度を検出し、その検出結果をアルコール濃度測定部104に出力する。
【0068】
アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の検出結果に基づいて呼気中のアルコール濃度を測定(解析)する(ステップS117)。このとき、アルコール濃度測定部104が、解析開始を示す解析開始情報を出力情報生成部106に出力し、出力情報生成部106が、解析開始情報の受け取りに応じて、呼気の吹き込みの終了を示す表示を、表示部11aに実行させてもよい。アルコール濃度測定部104は、呼気中のアルコール濃度の測定が完了すると、アルコール濃度の測定結果を、出力情報生成部106と運転可否判定部105とに出力する。
【0069】
出力情報生成部106は、アルコール濃度の測定結果を受け取ると、その測定結果が示すアルコール濃度を、表示部11aに表示させる(ステップS118)。
【0070】
運転可否判定部105は、アルコール濃度の測定結果が運転可否判定閾値を越える場合には、運転不可であると判定し、運転不可を示す運転不可情報を出力情報生成部106に出力する。一方、アルコール濃度の測定結果が運転可否判定閾値を越えない場合には、運転可否判定部105は、運転可と判定し、運転可を示す運転可情報を、出力情報生成部106に出力する。なお、運転可否判定閾値は、記憶部28に記憶されている。
【0071】
出力情報生成部106は、運転不可情報を受け取ると、運転不可を示す表示を表示部11aに実行させ、運転可情報を受け取ると、運転可を示す表示を表示部11aに実行させる(ステップS119)。ここで、運転不可を表す表示は、異常判定部103による異常有りの判定結果に応じた情報の一例である。
【0072】
本実施形態によれば、呼気収容部20の容積の変更に応じた圧力センサ16の出力(呼気収容部20内の圧力)に基づいて、吹出圧力の異常の有無が判定される。したがって、ソレノイド18及びエアバレル17の作用によって呼気流路33内の気体を呼気収容部20に引き込む際に、確実に被験者の呼気を呼気収容部20内に導入することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、異常判定部103は、所定のタイミングで呼気収容20内の圧力差が所定の閾値圧力を上回る又は下回るかを判断することで異常の有無を判定したが、これに代えて、異常判定部103は、呼気収容部20の容量減少時の呼気収容部20内の圧力の絶対値が所定の閾値を上回る場合に異常なしと判定し、また、呼気収容部20の容量増加時の呼気収容部20内の圧力の絶対値が所定の閾値を下回る場合に異常なしと判定してもよい。
【0074】
また、上記の呼気成分測定装置10は、呼気の取り込みのためにエアバレル17をいったん収縮させた後に膨張させる態様において、収縮時、収縮後、膨張時、膨張後のそれぞれについて、呼気収容部20内の圧力の異常を検知することで吹出圧力の異常を判定したが、エアバレル17の収縮時のみ、収縮後のみ、収縮時及び収縮後のいずれかで呼気収容部20内の圧力の異常を検知するようにしてもよい。この場合に、エアバレル17の収縮時ないし収縮後の呼気収容部20内の圧力が正常であれば、その後は圧力センサ16の出力を監視しないようにして、アルコール濃度測定部104によるアルコール濃度の測定(
図8CのステップS117)及びそれ以降の処理を開始してよい。このような態様によっても、呼気収容部20への呼気の取込みの際の吹出圧力の異常の有無を判定することができる。
【0075】
また、上記の呼気成分測定装置10は、呼気流路33における呼気の吹出圧力を検知するために、呼気収容部20に設けられた圧力センサ16を用いたが、これに加え、又はこれに代えて、呼気流路33の圧力を直接測定する圧力センサを用いて呼気流路33における呼気の吹出圧力を検出してもよい。この場合には、呼気流路33と呼気収容部20とを連通する貫通口33a及び導入口21aとは別に、呼気流路33と当該圧力センサとを連通するための貫通口及び導入口が設けられる。
【0076】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態において第1の実施の形態と同じ構成及び動作については、適宜説明を省略する。第2の実施の形態の呼気成分測定装置10のハードウェア構成は第1の実施の形態の呼気成分測定装置10と同じである。
【0077】
上述のように、呼気流入判定部101は、呼気の吹出しが可能となった時点の圧力からの圧力差によって、呼気流路33への呼気の流入、即ち、被験者が呼気を吹き出していると判定する。
【0078】
図9は、吹込みを開始する前の呼気収容部20内の圧力に異常があることにより被験者の呼気が取り込めない状況の一例を説明する図である。
図9に示すように、呼気の吹出しを始める前に、被験者が呼気の吹出しのためにマウスピース30を加えたまま吸込み(吸気)をしてしまった場合には、呼気収容部20内の圧力は大気圧P0を下回って圧力P2まで低下する。この状態からタイミングt1で吸込みを止めると(あるいは、吸込みを止めた上で不十分な圧力で吹出しを行うと)、呼気収容部20内の圧力は徐々に上昇し、タイミングt2で呼気収容部20内の圧力差は閾値圧力差Thp1になるが、呼気の吹出しがない(あるいは、十分な呼気の吹出しがない)ことになる。
【0079】
このような状態が閾値時間Tht1にわたって維持されると、呼気成分測定装置10は、呼気の吹出圧力が不十分なまま第1の実施の形態と同様にしてソレノイド18を駆動して呼気流路33内の気体の取込みを行い、十分な量の呼気を取り込めないままアルコール濃度の測定を行ってしまう。
【0080】
そこで、本実施の形態では、被験者に対して吸込み吹出しの案内を行うことで、上記のような原因による異常が発生する可能性を低減する。本実施の形態では、出力I/F11は、案内部として機能し、第1の実施の形態の表示部11aに加えて、音声を出力するスピーカを備える。
【0081】
図10は、本発明の第2の実施の形態の圧力センサ16の出力(呼気収容部20内の圧力)の一例を示したグラフである。また、
図11は、本発明の第2の実施の形態の呼気成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。本実施の形態の呼気成分測定装置10において、電源スイッチ12が押下されると、出力情報生成部106は、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、測定可能になるまでの待機時間(例えば、5秒)の間、待機を促す案内表示及び案内音声出力(待機案内)を実行させる(ステップS201)。
【0082】
待機時間の終了後、出力情報生成部106は、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、マウスピース30を咥えて所定時間(例えば3秒間)息の吸込み(吸気)を促す案内表示及び案内音声出力(吸込み案内)を実行させる(ステップS202)。タイミングt1において、被験者が吸込み案内に従って吸気を開始すると、呼気流入判定部101は、圧力センサ16の出力に基づいて、呼気収容部20内の圧力差(即ち、吸込み案内時の圧力からの圧力減少分の大きさ)を算出する。圧力差が閾値圧力差Thp4以下である場合(ステップS203でNO)、処理がステップS202に戻される。
【0083】
タイミングt2において呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp4よりも大きくなると(ステップS203でYES)、呼気流入判定部101は、吸込みの検出を示す吸込み検出情報を出力情報生成部106に出力する。出力情報生成部106は、吸込み検出情報を受け取ると、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、吸込みの継続を促す案内表示及び案内音声出力(吸込み継続案内)を実行させる(ステップS204)。
【0084】
呼気流入判定部101は、吸込み情報を出力した後に呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp4以下になった場合(ステップS205でNO)、吸込みの中断を示す吸込み中断情報を出力情報生成部106に出力する。出力情報生成部106は、吸込み中断情報を受け取ると、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、エラーを示す表示及び音声出力を実行させる(ステップS207)。
【0085】
呼気流入判定部101は、吸込み検出情報を出力した後に呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp4よりも大きい場合(ステップS205でYES)、ステップS203でYESと判断してからの経過時間tが閾値時間Tht4よりも長いか否かを判断する(ステップS206)。ここで、経過時間tは、呼気収容部20内の圧力差が閾値圧力差Thp4よりも継続して大きくなっている時間を表す。経過時間tが閾値時間Tht4以下である場合(ステップS206でNO)、処理がステップS204に戻される。
【0086】
タイミングt3において経過時間tが閾値時間Tht4よりも長くなると(ステップS206でYES)、出力情報生成部106は、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、マウスピース30を咥えたまま所定時間(例えば3秒間)息止めを促す案内表示及び案内音声出力(息止め案内)を実行させる(ステップS208)。出力情報生成部106は、息止め案内からの経過時間tが閾値時間Tht5よりも長いか否かを判断する(ステップS209)。ここで、経過時間tは、呼気収容部20内の圧力が大気圧P0に戻って安定する時間を表す。経過時間tが閾値時間Tht5以下である場合(ステップS209でNO)、処理がステップS209に戻される。
【0087】
タイミングt4において経過時間tが閾値時間Tht5よりも長くなると(ステップS209でYES)、呼気流入判定部101は、圧力センサ16の出力に基づいて、呼気収容部20内の圧力差(即ち、息止め案内時の圧力からの圧力増加分の大きさ)を算出する。異常判定部203は、ここで算出した圧力差とステップS203で算出した圧力差との差分が所定の誤差範囲内であるか否かを判断する(ステップS210)。両圧力差の差分が所定の誤差範囲より大きい場合(ステップS210でNO)、処理がステップS210に戻される。
【0088】
両圧力差の差分が所定の誤差範囲内である場合(ステップS210でYES)、呼気流入判定部101は、そのときの呼気収容部20の圧力を基準圧力として記憶し(ステップS211)、出力情報生成部106は、表示部11a及びスピーカのそれぞれに、マウスピース30を咥えたまま所定時間(例えば5秒間)呼気の吹出しを促す案内表示及び案内音声出力(吹出し案内)を実行させる(ステップS212)。この後は、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略するが、呼気流入判定部101は、閾値圧力差Thp1を用いて吹出しを検出するための基準の圧力をステップS211で記憶した基準圧力とする。
【0089】
以上のように、本実施の形態の呼気成分測定装置10は、呼気流入測定部101が、呼気流路33に対して被験者の口からの吸込み、息止め、呼気の吹出しがこの順で行われたことを検知し、息止めが行われたときの圧力を基準圧力とするので、この基準圧力を大気圧P0とした状態で吹出しを検出でき、これにより、
図9に示すような異常が発生する可能性を低減できる。
【0090】
なお、本実施の形態では、被験者に吸込み、息止め、吹出しの案内をする手段として、表示部11a及びスピーカを用いたが、これらの加えて、又はこれらに代えて、呼気成分測定装置10を振動させるバイブレータを用いてもよい。また、この呼気成分測定装置10による上記のアルコール濃度測定の手順を把握しており案内がなくても当該手順を実行可能な者を使用者として想定する場合には、上記の一部又はすべての案内を省略してもよい。
【0091】
また、上記の実施の形態では、吸込み案内に応じた吸込みについて、閾値圧力差Thp4及び閾値時間Tht4を用いて実際に吸込みが行われたかを判定して、基準圧力を取得したが、実際に吸込みが行われたか否かを判定せずに、単に吸込み案内のみをして、その後に息止め案内をするようにしてもよい。この場合にも、上記の実施の形態と同様に、息止め案内の後の圧力を基準圧力として記憶する。この場合にも、息止めが行われたときの圧力(タオ気圧P0)を基準圧力として、吹出しを検出できる。
【符号の説明】
【0092】
10 呼気成分測定装置
15 ガスセンサ
16 圧力センサ
17 エアバレル
18 ソレノイド
20 呼気収容部
100 制御部
103 異常判定部