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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092050
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240628BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 123
B41J2/01 307
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075938
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2023093164の分割
【原出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020183075
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】東谷 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏篤
(72)【発明者】
【氏名】丸田 正晃
(72)【発明者】
【氏名】穗谷 智也
(57)【要約】
【課題】キャリッジの小型化を図りつつ、必要なインクおよび処理液の吐出量を確保する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、搬送部、キャリッジ、インクヘッド及び複数の処理ヘッドを含む。前記搬送部は、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する。前記キャリッジは、前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動する。前記インクヘッドは、前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、画像形成用のインクを吐出する。前記処理ヘッドは、前記キャリッジに搭載され、非発色性の処理液を吐出する。前記複数の処理ヘッドは、前記搬送方向において前記インクヘッドとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッドと、
前記キャリッジに搭載され、非発色性の処理液を吐出する複数の処理ヘッドと、
を備え、
前記複数の処理ヘッドは、前記搬送方向において前記インクヘッドとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数のインクヘッドは、前記複数の処理ヘッドの配列方向と交差する方向にも配列されている、インクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の処理ヘッドは、前記複数のインクヘッドの前記主走査方向における配置幅の範囲内に配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記処理ヘッドは、前記主走査方向において隣り合う一対のインクヘッドの間に一部が入り込むように配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記処理ヘッドは、前記主走査方向及び前記搬送方向において一部が前記インクヘッドと隣接するように配置され、
前記複数のインクヘッドは、少なくとも第1色のインクを吐出する第1インクヘッドと、第2色のインクを吐出する第2インクヘッドと、を含み、
前記第1インクヘッドの方が、前記隣接する前記処理ヘッドの個数が前記第2インクヘッドよりも多い場合に、前記第1色のインクとして、前記第2色のインクよりも温度による粘度変化の小さいインクを吐出する、インクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の処理ヘッドと前記複数のインクヘッドとは、前記主走査方向に分離して配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送方向において前記インクヘッドの上流側に配置される前処理ヘッドと、下流側に配置される後処理ヘッドとを含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの少なくとも一方が、前記主走査方向に並んで配置される前記複数の処理ヘッドである、インクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送方向において前記インクヘッドの上流側に配置される前処理ヘッドと、下流側に配置される後処理ヘッドとを含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの少なくとも一方が、前記主走査方向に並んで配置される前記複数の処理ヘッドであり、
前記キャリッジは、前記複数のインクヘッドが配置される第1領域と、当該第1領域に対して前記主走査方向に隣接する第2領域とを含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドは、前記第2領域に配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項7に記載のインクジェット記録装置において、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドは、前記複数のインクヘッドの前記主走査方向における配置幅の中央領域に配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項7に記載のインクジェット記録装置において、
前記主走査方向における一又は複数の前記前処理ヘッドの配置又は配列中心と、一又は複数の前記後処理ヘッドの配置又は配列中心とが、前記主走査方向において一致するように前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドが配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項7に記載のインクジェット記録装置において、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドのうち、ヘッド個数の多い方の個数をm個、少ない方の個数をn個とするとき、m=n+奇数、の要件を満たし、
前記主走査方向における一又は複数の前記前処理ヘッドの配置又は配列中心と、一又は複数の前記後処理ヘッドの配置又は配列中心とが、前記主走査方向において一致し、且つ、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの配置又は配列中心と、前記複数のインクヘッドのうちの一のインクヘッドの配置位置とが、前記主走査方向において一致している、インクジェット記録装置。
【請求項12】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送方向において前記インクヘッドの上流側に配置される前処理ヘッドと、下流側に配置される後処理ヘッドとを含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの少なくとも一方が、前記主走査方向に並んで配置される前記複数の処理ヘッドであり、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動が可能な状態で保持する保持部材をさらに備え、
前記キャリッジは、前記保持部材に片持ち状態で保持される部を含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドのうち、ヘッド個数の少ない方が前記キャリッジの前記係合部側に配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数のインクヘッドの各々に前記インクを供給するインク用サブタンクと、前記複数の処理ヘッドの各々に前記処理液を供給する処理液用サブタンクと、をさらに備え、
前記インク用サブタンクは、前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、前記処理液用サブタンクは、前記搬送方向において前記インク用サブタンクとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項13に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の処理ヘッドは、前記複数のインクヘッドの前記主走査方向における配置幅の範囲内に配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の処理ヘッドと前記複数のインクヘッドとは、前記主走査方向に分離して配置されている、インクジェット記録装置。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送方向において前記インクヘッドの上流側に配置される前処理ヘッドと、下流側に配置される後処理ヘッドとを含み、
前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの少なくとも一方が、前記主走査方向に並んで配置される前記複数の処理ヘッドである、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主走査方向に移動するキャリッジに搭載されたインクヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンター等のインクジェット記録装置は、画像形成用のインクを記録媒体に向けて吐出するインクヘッドを備える。例えば、記録媒体が織物や編物等の繊維シートやプラスチックシートである場合、インクを記録媒体へ向けて吐出させる前・後に、当該記録媒体に対して前処理液・後処理液の施与が必要となる場合がある(例えば特許文献1)。前処理液は、例えば記録媒体へのインクの定着性やインク顔料の凝集性を向上させるための処理液である。後処理液は、例えば印刷された画像の堅牢性を高める処理液である。この場合、インクジェット記録装置には、インクヘッドに加えて、前処理液及び後処理液を吐出する処理ヘッドが備えられる。
【0003】
記録媒体が広幅のものである場合、上記のインクヘッド及び処理ヘッドは、主走査方向に往復移動するキャリッジに搭載される。記録処理に際しては、記録媒体は所定の搬送方向(副走査方向)に間欠送りされ、当該記録媒体の停止中にキャリッジが主走査方向に往復移動される。キャリッジの移動時、インクヘッド及び処理ヘッドから各々インク及び処理液が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-147307号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一の局面に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動するキャリッジと、前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッドと、前記キャリッジに搭載され、非発色性の処理液を吐出する複数の処理ヘッドと、を備え、前記複数の処理ヘッドは、前記搬送方向において前記インクヘッドとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るインクジェット式プリンターの全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線の模式的な断面図である。
図3図3は、図1に示すキャリッジの拡大斜視図である。
図4図4は、本実施形態で採用されているシリアル印刷方式を示す模式図である。
図5A図5Aは、キャリッジの往路及び復路での印刷状況を示す模式図である。
図5B図5Bは、キャリッジの往路及び復路での印刷状況を示す模式図である。
図6図6は、図3に示すキャリッジにおけるインクヘッド及び処理ヘッドの配置を示す、実施例1に係るヘッド配置を概略的に示す平面図である。
図7図7は、実施例2に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図8図8は、実施例3に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図9図9は、実施例4に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図10図10は、実施例5に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図11図11は、実施例6に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図12図12は、実施例7に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図13図13は、実施例8に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図14A図14Aは、実施例9に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図14B図14Bは、実施例9に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図14C図14Cは、実施例9に対する比較例を示す平面図である。
図15A図15Aは、実施例10に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図15B図15Bは、実施例10に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図15C図15Cは、実施例10に係るヘッド配置を示すキャリッジの平面図である。
図15D図15Dは、実施例10に対する比較例を示す平面図である。
図16図16は、実施例11に係るヘッド配置及びサブタンク配置を示すキャリッジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態について説明する。本実施形態では、インクジェット記録装置の具体例として、広幅で長尺の記録媒体に画像形成用のインクを吐出するインクヘッドを備えたインクジェット式プリンターを例示する。本実施形態のインクジェット式プリンターは、織物や編物等の生地からなる記録媒体に、文字類や模様等の画像をインクジェット方式で印刷するデジタル捺染印刷に好適である。もちろん、本開示に係るインクジェット記録装置は、紙シートや樹脂シート等の記録媒体に各種のインクジェット画像を印刷する用途にも用いることができる。
【0008】
[インクジェット式プリンターの全体構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るインクジェット式プリンター1の全体構成を示す斜視図、図2は、図1のII-II線の模式的な断面図である。インクジェット式プリンター1は、広幅且つ長尺のワークW(記録媒体)にインクジェット方式で画像を印刷するプリンターであって、装置フレーム10と、この装置フレーム10に組み込まれたワーク搬送部20(搬送部)及びキャリッジ3とを含む。なお、本実施形態では、左右方向がワークWに対する印刷の際の主走査方向、後方から前方に向かう方向が副走査方向(ワークWの搬送方向F)である。
【0009】
装置フレーム10は、インクジェット式プリンター1の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成している。ワーク搬送部20は、インクジェット印刷処理が行われる印刷領域をワークWが、後方から前方に向かう搬送方向Fに進行するように、当該ワークWを間欠送りする機構である。キャリッジ3は、インクヘッド4、前処理ヘッド5、後処理ヘッド6及びサブタンク7を搭載し、前記インクジェット印刷処理の際に左右方向に往復移動する。
【0010】
装置フレーム10は、中央フレーム111、右フレーム112及び左フレーム113を含む。中央フレーム111は、インクジェット式プリンター1の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成しており、ワーク搬送部20に応じた左右幅を有している。右フレーム112及び左フレーム113は、それぞれ中央フレーム111の右隣、左隣に立設されている。右フレーム112と左フレーム113との間が、ワークWに対して印刷処理が実行される印刷エリア12である。
【0011】
右フレーム112は、メンテナンスエリア13を形成する。メンテナンスエリア13は、前記印刷処理が実行されないときキャリッジ3を退避させるエリアである。メンテナンスエリア13では、インクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の吐出口のクリーニング処理、パージ処理等が行われ、またキャップが被嵌される。左フレーム113は、キャリッジ3の折り返しエリア14を形成する。折り返しエリア14は、前記印刷処理において右方から左方へ印刷エリア12をスキャンしたキャリッジ3が、逆方向のスキャンを行う前に一時的に入る領域である。
【0012】
装置フレーム10の上方側には、キャリッジ3に左右方向の往復移動を行わせるためのキャリッジガイド15が組み付けられている。キャリッジガイド15は、左右方向に長い平板状の部材であり、ワーク搬送部20の上方に配置されている。キャリッジガイド15には、タイミングベルト16(移動部材)が左右方向(主走査方向)に周回移動が可能に組み付けられている。タイミングベルト16は、無端ベルトであって、図略の駆動源によって、左方向又は右方向に周回移動するよう駆動される。
【0013】
キャリッジガイド15には、キャリッジ3を保持している保持部材である上下一対のガイドレール17が、左右方向に平行に延在するように装備されている。キャリッジ3は、ガイドレール17と係合している。また、キャリッジ3は、タイミングベルト16に固定されている。キャリッジ3は、タイミングベルト16の左方向又は右方向の周回移動に伴って、ガイドレール17に案内されつつ、キャリッジガイド15に沿って左方向又は右方向に移動する。
【0014】
図2を主に参照して、ワーク搬送部20は、印刷前のワークWを繰り出す送り出しローラー21と、印刷後のワークWを巻き取る巻き取りローラー22とを含む。送り出しローラー21は、装置フレーム10の後方下部に配置され、印刷前のワークWの巻回体である送り出しロールWAの巻き取り軸である。巻き取りローラー22は、装置フレーム10の前方下部に配置され、印刷処理後のワークWの巻回体である巻き取りロールWBの巻き取り軸である。巻き取りローラー22には、当該巻き取りローラー22を軸回りに回転駆動し、ワークWの巻き取り動作を実行させる第1モーターM1が付設されている。
【0015】
送り出しローラー21と巻き取りローラー22との間であって印刷エリア12を通る経路が、ワークWの搬送経路となる。この搬送経路には、上流側から順に第1テンションローラー23、ワークガイド24、搬送ローラー25及びピンチローラー26、折り返しローラー27、第2テンションローラー28が配置されている。第1テンションローラー23は、搬送ローラー25の上流側において、ワークWに所定の張力を付与する。ワークガイド24は、ワークWの搬送方向を上方向から前方向に変更し、ワークWを印刷エリア12へ搬入させる。
【0016】
搬送ローラー25は、印刷エリア12においてワークWを間欠送りする搬送力を発生するローラーである。搬送ローラー25は、第2モーターM2により軸回りに回転駆動され、ワークWがキャリッジ3に対向する印刷エリア12(画像形成位置)を通過するように、ワークWを前方向(所定の搬送方向F)に間欠的に搬送する。ピンチローラー26は、搬送ローラー25に対して上方から対向するように配置され、搬送ローラー25と搬送ニップ部を形成している。
【0017】
折り返しローラー27は、印刷エリア12を通過したワークWの搬送方向を前方向から下方向に変更し、印刷処理後のワークWを巻き取りローラー22へ導く。第2テンションローラー28は、搬送ローラー25の下流側において、ワークWに所定の張力を付与する。印刷エリア12においてワークWの搬送経路の下方には、プラテン29が配置されている。
【0018】
キャリッジ3は、ガイドレール17に片持ち支持された状態で、搬送方向Fと交差(本実施形態では直交)する主走査方向(本実施形態では左右方向)に往復移動する。キャリッジ3は、キャリッジフレーム30と、このキャリッジフレーム30に搭載されるインクヘッド4、前処理ヘッド5、後処理ヘッド6及びサブタンク7とを備える。キャリッジフレーム30は、ヘッド支持フレーム31及びバックフレーム32(係合部)を含む。
【0019】
ヘッド支持フレーム31は、上掲のヘッド4~6を保持する水平板である。バックフレーム32は、ヘッド支持フレーム31の後端縁から上方に延びる垂直板である。上述したように、タイミングベルト16は、バックフレーム32に固定されている。また、ガイドレール17は、バックフレーム32に係合されている。すなわち、本実施形態では、バックフレーム32がガイドレール17に片持ち状態で保持される係合部である。ヘッド支持フレーム31は、その後端側が前記係合部に片持ち支持された水平板である。
【0020】
なお、片持ち状態とは、キャリッジ3において係合部(バックフレーム32)が、搬送方向Fにおいて、キャリッジ3の中央から上流側、若しくは下流側の片側のみに存在し、係合部が存在する側の反対側には、他の係合部が存在しない状態を表す。前記係合部は、保持部材であるガイドレール17に保持されている部分である。前記係合部は、さらに、搬送方向Fにおいて、インクヘッド4及び処理ヘッドが配置されている範囲以外に配置されていてもよい。すなわち、前記係合部は、搬送方向Fにおいて、インクヘッド4及び処理ヘッドが配置されている範囲に対して、上流側のみ、若しくは下流側のみに配置されていてもよい。
【0021】
[キャリッジの詳細]
キャリッジ3について、さらに説明を加える。図3は、図1に示すキャリッジ3の拡大斜視図である。図3には、ワークWの搬送方向F(副走査方向)と、キャリッジ3の移動方向である主走査方向Sとが示されている。図3では、ワークWに対して画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッド4と、非発色性の処理液を吐出する前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6と、これらのヘッド4~6に前記インク及び前記処理液を供給する複数のサブタンク7とが、キャリッジ3に搭載されている例を示している。
【0022】
インクヘッド4の各々は、例えばピエゾ素子を用いたピエゾ方式、加熱素子を用いたサーマル方式等の吐出方式でインク滴を吐出する多数のノズル(インク吐出孔)と、このノズルにインクを導くインク通路とを備える。インクとしては、例えば、水系の溶媒、顔料及び結着樹脂を含む水系顔料インクを用いることができる。本実施形態における複数のインクヘッド4は、互いに異なる6色のインクを各々吐出する第1~第6インクヘッド4A~4Fを含む。例えば、第1インクヘッド4Aはオレンジ(第1色)、第2インクヘッド4Bはグリーン(第2色)、第3インクヘッド4Cはイエロー、第4インクヘッド4Dはレッド、第5インクヘッド4Eはブルー、第6インクヘッド4Fはブラックのインクを各々吐出する。
【0023】
各色のインクヘッド4A~4Fは、主走査方向Sに並ぶように、キャリッジ3のヘッド支持フレーム31に搭載されている。各色のインクヘッド4A~4Fは、それぞれ2個のヘッドを有している。例えば第1インクヘッド4Aは、搬送方向Fの上流側に配置された上流側ヘッド4A1と、この上流側ヘッド4A1よりも下流側であって、主走査方向Sの左方側にシフトした位置に配置された下流側ヘッド4A2とで構成されている。他の色のインクヘッド4B~4Fも同様である。これらインクヘッド4B~4Fの各上流側ヘッドは、上流側ヘッド4A1と搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに一列に並び、また各下流側ヘッドは、下流側ヘッド4A2と搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに一列に並んでいる。
【0024】
前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、搬送方向Fにおいてインクヘッド4とは異なる位置に配置されている。前処理ヘッド5は、インクヘッド4の搬送方向Fの上流側に配置されている。図3では、1個の前処理ヘッド5がインクヘッド4の配列体の右端付近に配置されている例を示している。これに対し、後処理ヘッド6は、インクヘッド4の搬送方向Fの下流側に配置されている。図3では、2個の後処理ヘッド6A、6B(複数の処理ヘッド)がインクヘッド4の配列体の右端付近において、主走査方向Sに並ぶように配置されている例を示している。インクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の、キャリッジ3への各種配置パターンについては、後述の実施例1~11にて詳細に説明する。
【0025】
以上の説明に用いているように、インクヘッド4及び後処理ヘッド6により構成されている、主走査方向Sに沿ったヘッドの連なりをヘッドの列、或いは単に列と称する。ヘッドの列には、前処理ヘッド5が含まれることもある。また、インクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6により構成されている、搬送方向Fに沿ったヘッドの連なりを、ヘッドの行、或いは単に列と称する。
【0026】
前処理ヘッド5は、ワークWに対して所定の前処理を施すための前処理液を吐出する。前処理液は、ワークWの、まだインクヘッド4からインクが吐出されていない位置に、前処理ヘッド5から吐出される。前処理液は、ワークWに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、例えばワークWへのインクの定着性やインク顔料の凝集性を高める機能等を発現する処理液である。このような前処理液としては、溶媒に結着性樹脂を配合した処理液、或いは、溶媒にプラス帯電するカチオン樹脂を配合した処理液等を用いることができる。
【0027】
後処理ヘッド6は、インクが付着したワークWに対して所定の後処理を施すための後処理液を吐出する。後処理液は、ワークWの、インクヘッド4からへインクが吐出された後の位置に、後処理ヘッド6から吐出される。後処理液は、同様にワークWに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、インクヘッド4によりワークW上に印画されたインク画像の定着性や堅牢性(擦れや削れに対する耐性)を高める機能を発現する処理液である。このような後処理液としては、シリコーン系の処理液等を用いることができる。
【0028】
ここで、非発色性の処理液とは、記録媒体に単独で印刷した場合に、人に肉眼では発色したと認識されないものを表す。ここでの色とは、黒、白及び灰色などの彩度が0のものも含める。非発色性の処理液は、基本的には、透明な液体であるが、例えば、1リットルの処理液を液体の状態で見ると、完全に透明ではなく、わずかに白色などに見えることもある。そのような色は、非常に薄いので、記録媒体に単独で印刷した場合に、人が肉眼で発色したとは認識できない。なお、処理液の種類によっては、記録媒体に単独で印刷した場合に、記録媒体に光沢が生じるなどの変化があることもあるが、そのような状態は、発色ではない。
【0029】
本実施形態では、前処理液及び後処理液は、ワークWの略全面に吐出してもよいし、前処理液及び後処理液は、インクと同様に、印刷する画像に合わせて、選択的に吐出してもよい。
【0030】
続いて、前処理液及び後処理液を選択的に吐出する場合について説明する。上述したように、画像に合わせて色を印刷するワークWの部分には、前処理液、インク、後処理液の順で吐出される。この場合、インクは、一色であったり、複数の色であったりする。色を印刷しない部分、すなわち、インクが吐出されない部分には、基本的には前処理液及び後処理液も吐出されない。なお、印刷する画質や、ワークWの風合いなどを調整するために、前処理液及び後処理液の吐出の一部を、インクの吐出とは異なるように、選択してもよい。
【0031】
ヘッド支持フレーム31のヘッドの配置箇所には、開口31Hが設けられている。インクヘッド4A~4F、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、各々の開口31Hに嵌め込まれるように、ヘッド支持フレーム31に組み付けられている。各開口31Hからは、各ヘッド4、5、6の下端面に配置されているノズルが露出している。
【0032】
サブタンク7は、図略の保持フレームを介して、ヘッド4、5、6の上方側においてキャリッジ3に支持されている。サブタンク7は、ヘッド4、5、6の各々に対応して設けられる。各サブタンク7には、図略のインク及び処理液が収容されているカートリッジ又はメインタンクから、インク又は処理液が供給される。各サブタンク7は、前記インク又は処理液をヘッド4、5、6の各々に供給する。各サブタンク7とヘッド4、5、6とは、図3では図略の管路(図16に示すP1、P2、P3)によって接続される。
【0033】
以上の通り、本実施形態に係るインクジェット式プリンター1は、インクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の3種類のヘッドが、一つのキャリッジ3に搭載されたオールインワン型のプリンターである。このプリンター1によれば、例えばデジタル捺染印刷における、生地にインクジェット印刷を行う印捺工程において、前処理液の吐出工程及び後処理液の吐出工程を一体的に実行させることができる。従って、捺染工程の簡素化、捺染装置のコンパクト化を図ることができる。
【0034】
[印刷方式]
続いて、本実施形態に係るインクジェット式プリンター1が実行する印刷方式について説明する。インクジェット式プリンター1は、シリアル印刷方式でワークWに対して印刷処理を行う。図4は、前記シリアル印刷方式を示す模式図である。図4では、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6を省いて簡略的にキャリッジ3を描いている。
【0035】
ワークWが幅広のサイズを有するものである場合、当該ワークWを連続的に送りながら印刷を行うことはできない。シリアル印刷方式は、各色のインクヘッド4を搭載したキャリッジ3の主走査方向Sへの往復移動と、ワークWの搬送方向Fへの間欠送りとを繰り返す印刷方式である。ここでは、インクヘッド4が搬送方向Fに所定の印刷幅Pwを持つものとする。印刷幅Pwは、インクヘッド4のインク吐出用ノズルの配列範囲に略等しい。
【0036】
なお、図4及び次で説明する図5では、各ヘッドの搬送方向Fの幅と、印刷幅Pwを略等しく描いている。実際は、印刷幅Pw及び吐出用ノズルの配列範囲よりも、各ヘッドの搬送方向Fの幅の方が大きい。
【0037】
図4では、キャリッジ3が主走査方向Sにおける往路方向SAに移動し、印刷幅Pwの帯状画像G1の印刷が完了している状態を示している。この往路方向SAのスキャンの際、ワークWの送りは停止される。帯状画像G1の印刷後、ワークWは印刷幅Pwに相当するピッチだけ搬送方向Fに送り出される。この際、キャリッジ3は、左端側の折り返しエリア14で待機する。ワークWの送り出し後、キャリッジ3はタイミングベルト16の反転移動に伴って、復路方向SBに折り返す。ワークWは停止状態である。そして、図4に示すように、キャリッジ3は復路方向SBに移動しつつ、帯状画像G1の上流側に、印刷幅Pwを持つ帯状画像G2を印刷する。以下、同様の動作が繰り返される。
【0038】
図5A及び図5Bは、キャリッジ3の往路及び復路での印刷状況を示す模式図である。ここでは、キャリッジ3に搭載されるインクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6を簡略的に示している。インクヘッド4は、互いに異なる第1色、第2色、第3色、第4色のインク吐出用の第1、第2、第3、第4インクヘッド4A、4B、4C、4Dを備え、これら第1~第4インクヘッド4A~4Dが主走査方向Sに一列に並んでいる。インクヘッド4の搬送方向Fの上流側に前処理ヘッド5が、下流側に後処理ヘッド6が各々配置されている。
【0039】
図5Aは、キャリッジ3が主走査方向Sにおける往路方向SAに移動しながら、印刷動作を行っている状態(往路スキャン)を示している。ワークW上の領域A4は、キャリッジ3の最上流側に搭載されている前処理ヘッド5が対峙する領域である。今回の往路スキャンでは、領域A4上には、前処理ヘッド5から吐出された前処理液によって、前処理層Lpreが形成される。
【0040】
領域A3は、領域A4よりも1スキャン分だけ下流側の領域であって、インクヘッド4が対峙する領域である。領域A3上には、前回の復路スキャンによって、前処理層Lpreが主走査方向の全長に亘って既に形成されている。今回の往路スキャンでは、領域A3の前処理層Lpre上には、第1~第4インクヘッド4A~4Dの並び順に順次吐出される第1色~第4色のインクによって、第1、第2、第3、第4インク層LCA、LCB、LCC、LCDが形成される。なお、図5Aでは、理解を容易とするために第4~第1インク層LCD~LCAが順次積層されるように図示しているのであって、実際は積層されるわけではない。なお、前述の前処理層Lpre及び後述の後処理層Lposについても、ワークW上に形成されるわけではない。
【0041】
領域A2は、領域A3よりも1スキャン分だけ下流側の領域であって、キャリッジ3の最下流側に搭載されている後処理ヘッド6が対峙する領域である。領域A2上には、前回の往路スキャンによる前処理層Lpreと、前回の復路スキャンによる第1~第4インク層LCA~LCDとが、主走査方向の全長に亘って既に形成されている。今回の往路スキャンでは、領域A2の第1~第4インク層LCA~LCD上に、後処理ヘッド6から吐出された後処理液によって、後処理層Lposが形成される。
【0042】
領域A1は、領域A2よりも1スキャン分だけ下流側の領域であって、キャリッジ3が通過し、印刷処理が完了した領域である。すなわち、領域A1には、前処理層Lpre、第1~第4インク層LCA~LCD及び後処理層Lposが、主走査方向の全長に亘って形成されている。
【0043】
図5Bは、図5Aの往路スキャンを終えたあと、キャリッジ3が折り返して復路方向SBに移動しながら、復路スキャンを行っている状態を示している。前記折り返しの移動の前に、ワークWは1ピッチだけ搬送方向Fに送り出されている。ワークW上の領域A5は、領域A4よりも1スキャン分だけ上流側の領域であって、今回の復路スキャンでは、前処理ヘッド5が対峙する領域である。領域A5上には、前処理ヘッド5から吐出された前処理液によって、前処理層Lpreが形成される。
【0044】
領域A4、領域A3には、それぞれ第1~第4インク層LCA~LCD、後処理層Lposが、既存の層上に形成される。具体的には、領域A4においては、前処理層Lpre上に第1~第4インク層LCA~LCDが形成される。領域A3においては、第1~第4インク層LCA~LCDの上に後処理層Lposが形成される。領域A2は、領域A1に続いて、印刷処理が完了した領域となる。
【0045】
上述のような往路スキャン及び復路スキャンの双方において印刷処理が可能となるのは、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6を、インクヘッド4に対して搬送方向Fにシフトして配置しているからである。仮に、キャリッジ3において、前処理ヘッド5、インクヘッド4及び後処理ヘッド6が、この順で主走査方向Sに一列に並んでいる場合、前処理液及び後処理液の望ましい着弾順を確保できる印刷処理は、往路又は復路スキャンの一方でしか実現できない。双方向での印刷処理を可能とするには、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6のペアを、インクヘッド4の配列体の両サイドに配置せねばならない。この場合、キャリッジ3の主走査方向Sの幅が大型化してしまう。このような配置は本実施形態では不要となるので、キャリッジ3の主走査方向Sの幅を小型化することができる。
【0046】
[ヘッド配置の各種態様]
以下、キャリッジ3上におけるインクヘッド4、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の各種の配置例を、実施例1~11として例示する。なお、実施例1~11では、処理ヘッドとして、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の双方を含む例を示している。しかし、前処理ヘッド5又は後処理ヘッド6の少なくとも一方が複数備えられ、搬送方向Fにおいてインクヘッド4とは異なる位置で、主走査方向に並んで配置されている限りにおいて、前処理ヘッド5又は後処理ヘッド6の一方を省くことができる。
【0047】
<実施例1>
図6は、実施例1に係るヘッド配置を概略的に示す平面図である。図6は、図3に示すキャリッジ3におけるインクヘッド4及び前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6(複数の処理ヘッド)の配置を示した図でもある。既述の通り、キャリッジ3のヘッド支持フレーム31には、互いに異なる6色のインクを各々吐出する第1~第6インクヘッド4A~4F、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が搭載されている。各色のインクヘッド4A~4Fは、各々2個(合計12個)の単位ヘッドを備えている。前処理ヘッド5は1個であるが、後処理ヘッド6は2個備えられている。
【0048】
インクヘッド4を構成する第1~第6インクヘッド4A~4Fの群は、ヘッド支持フレーム31の搬送方向Fの中央領域において主走査方向Sに並ぶように配列されている。前処理ヘッド5は、インクヘッド4よりも搬送方向Fの上流側であって、ヘッド支持フレーム31の基端側311に配置されている。一方、後処理ヘッド6は、インクヘッド4よりも搬送方向Fの下流側であって、ヘッド支持フレーム31の先端側312に配置されている。前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、共にヘッド支持フレーム31の主走査方向Sの一端(右端)付近に配置されている。
【0049】
第1インクヘッド4Aは、上流側ヘッド4A1と、この上流側ヘッド4A1よりも下流側に配置される下流側ヘッド4A2とを含む。つまり、上流側ヘッド4A1と下流側ヘッド4A2とは、搬送方向Fに配列されている。上流側ヘッド4A1の配置位置は、ヘッド支持フレーム31の前記中央領域における基端側311寄りの位置である。下流側ヘッド4A2の配置位置は、ヘッド支持フレーム31の前記中央領域における先端側312寄りの位置である。上流側ヘッド4A1に対して下流側ヘッド4A2は、主走査方向Sの一方側(左側)にシフトした位置であって、搬送方向Fに一部が重複する位置に配置されている。もちろん、上流側ヘッド4A1及び下流側ヘッド4A2を主走査方向Sの同位置(搬送方向Fに直線的に並ぶ位置)に配列しても良い。しかし、本実施例の配置の方がキャリッジ3の搬送方向Fのサイズを小型化できる点で有利である。
【0050】
第2~第6インクヘッド4B~4Fも、上述の上流側ヘッド4A1及び下流側ヘッド4A2と同様な、上流側ヘッド4B1、4C1、4D1、4E1、4F1と、下流側ヘッド4B2、4C2、4D2、4E2、4F2を備えている。第1~第6インクヘッド4A~4Fの各上流側ヘッド4A1~4F1は、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて一列に並んでいる。また、各下流側ヘッド4A2~4F2も、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて一列に並んでいる。結果として、上流側ヘッド4A1~4F1の各配置ピッチの間に下流側ヘッド4A2~4F2の一部が各々入り込んだ、千鳥状の配置態様を形成している。
【0051】
前処理ヘッド5は、主走査方向Sにおいて隣り合う一対のインクヘッドの間に一部が入り込むように配置されている。具体的には、第5インクヘッド4Eの上流側ヘッド4E1と、第6インクヘッド4Fの上流側ヘッド4F1との間に、前処理ヘッド5の下流側部分が入り込む位置関係である。
【0052】
後処理ヘッド6は、主走査方向Sに並んで配置された第1後処理ヘッド6A及び第2後処理ヘッド6Bを含む。図6では、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bが、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて並んでいる例を示している。第1後処理ヘッド6Aは、第5インクヘッド4Eの下流側ヘッド4E2と、第6インクヘッド4Fの下流側ヘッド4F2との間に、その上流側部分が入り込むように配置されている。第2後処理ヘッド6Bは、下流側ヘッド4F2の右側であって、上流側ヘッド4F1と主走査方向Sにおいて同位置に配置されている。かかる配置によって、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bは、下流側ヘッド4E2、4F2と搬送方向Fにおいて重複領域faを持つ配置関係とされている。
【0053】
搬送方向Fにおいて、各ヘッドの幅は、印刷幅Pw及び吐出用ノズルの配列範囲よりも大きい。このため、各列のヘッドの印刷幅Pwと、隣の列のヘッドの印刷範囲Pwとの間の空かないように、各ヘッドは重複領域faを持つよう配置されている。
【0054】
上述のヘッド配置とした結果、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、インクヘッド4の主走査方向Sにおける配置幅Hの範囲内に配置されている。インクヘッド4は、主走査方向Sにおいて、第1インクヘッド4Aの下流側ヘッド4A2~第6インクヘッド4Fの上流側ヘッド4F1間の配置幅Hを有している。前処理ヘッド5は、インクヘッド4の上流側において配置幅Hの範囲内に、後処理ヘッド6はインクヘッド4の下流側において配置幅Hの範囲内に、それぞれ配置されている。
【0055】
以上説明した実施例1に係るヘッド配置によれば、キャリッジ3の小型化を図りつつ、必要なインク及び処理液の吐出量を確保することができる。すなわち、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が、搬送方向Fにおいてインクヘッド4と異なる位置に配置される。この構成により、必要なインクの吐出量を確保できるインクヘッド4A~4Fを主走査方向Sに配列しつつ、また往路スキャン及び復路スキャンの双方で印刷処理を可能としつつ、上記ヘッド4~6の搭載に必要なキャリッジの主走査方向幅を短くすることができる。さらに、後処理ヘッド6は、第1及び第2後処理ヘッド6A、6Bの複数で構成され、これらが主走査方向Sに並んで配置されている。このため、単体ヘッドでは後処理液の吐出量が不足する場合でも、複数の後処理ヘッド6A、6Bの配置により必要な吐出量を確保することができる。
【0056】
第1~第6インクヘッド4A~4Fは、それぞれ搬送方向F(複数の処理ヘッドの配列方向と交差する方向)に配列された上流側ヘッド4A1~4F1と下流側ヘッド4A2~4F2とを備える。このため、各色のインクの吐出量を増加させるため、若しくは、多色化を図るべくインクヘッド4の数を増やしても、キャリッジ3の主走査方向幅の大型化し難くできる。
【0057】
前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1~第6インクヘッド4A~4Fの主走査方向Sにおける配置幅Hの範囲内に配置されている。このため、インクヘッド4に加えて前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6をキャリッジ3に搭載させる場合でも、当該キャリッジ3の主走査方向幅を拡張させる必要はない。つまり、キャリッジ3の主走査方向幅の大型化し難くできる。
【0058】
前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1~第6インクヘッド4A~4Fの配列ピッチ間に一部が入り込むように配置されている。第1後処理ヘッド6Aに注目すれば、一対の下流側ヘッド4E2、4F2間に第1後処理ヘッド6Aの一部が入り込んでいる。このような千鳥状配置とすることで、搬送方向Fの異なる位置に配置されるインクヘッド4と処理ヘッド5、6とを、搬送方向Fに高密度に配置することができる。従って、キャリッジ3の搬送方向Fの幅の小型化を図ることができる。
【0059】
実施例1のヘッド配置では、搬送方向Fにおいてインクヘッド4の上流側に1個の前処理ヘッド5が、下流側に2個の後処理ヘッド6A、6Bが各々配置されている。すなわち、前処理液、インク及び後処理液の吐出用ヘッドの全てを、一つのキャリッジ3に搭載したオールインワン型のインクジェット式プリンター1を提供することができる。また、前処理ヘッド5、インクヘッド4及び後処理ヘッド6が順次搬送方向Fに配置されているので、前処理液、インク及び後処理液のワークWへの望ましい着弾順を、往路スキャン及び復路スキャンの双方において確保することができる。
【0060】
また、キャリッジ3は、ガイドレール17(保持部材)によって片持ち状態で保持されるバックフレーム32(係合部)を有する。キャリッジ3をタイミングベルト16に片持ち支持させることにより、構造を簡略化できる。また、片持ち支持させることにより、容易に当該キャリッジ3の下流側を開放させた構造とすることができ、インクヘッド4及び処理ヘッド5、6のメンテナンスを行い易くすることができる。
【0061】
このように片持ち支持されるキャリッジ3において、前処理ヘッド5はヘッド支持フレーム31の基端側311(係合部に近い側)に、後処理ヘッド6は先端側312(係合部から遠い側)に、それぞれ配置されている。タイミングベルト16に固定されるバックフレーム32に近い基端側311と異なり、自由端である先端側312では、どうしても位置精度が低下することが想定される。しかし、先端側312には、比較的吐出精度に高度なシビアさを求められない後処理ヘッド6が搭載されている。後処理液は、ワークW上に印画されたインク画像上をコーティングするものであるため、着弾位置ズレが生じたとしても、前処理液に同程度の着弾位置ズレが生じるよりは、画像品質に与える相対的な影響度を小さくできる。従って、片持ち支持されるキャリッジ3を使用する場合でも、画像の品質低下を起こし難くできる。
【0062】
<実施例2>
図7は、実施例2に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Aを概略的に示す平面図である。ヘッド配置の手法は先の実施例1と同様であるが、各々の単位ヘッドの数が増加している点で実施例1と相違している。すなわち、実施例2ではインクヘッド4の各々が、互いに異なる6色のインクを吐出する第1~第6インクヘッド4A~4Fを備えている点で実施例1と同じである。一方、実施例2の各色のインクヘッド4A~4Fは、各々3個(合計18個)の単位ヘッドを備えている。インクヘッド4の搬送方向Fの上流側に配置される前処理ヘッド5は2個の単位ヘッド、下流側に配置される後処理ヘッド6は3個の単位ヘッドを各々備えている。前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が、インクヘッド4の主走査方向Sの配置幅の範囲内に各々配置されている点も実施例1と同じである。
【0063】
第1インクヘッド4Aは、前記単位ヘッドとして、上流ヘッド4AA、中央ヘッド4AB及び下流ヘッド4ACを備えている。上流ヘッド4AAは、キャリッジ3Aの搬送方向Fの最も上流側に配置されている。下流ヘッド4ACは、上流ヘッド4AAと主走査方向Sの同位置において、上流ヘッド4AAの下流側に配置されている。中央ヘッド4ABは、上流ヘッド4AA及び下流ヘッド4ACに対して主走査方向Sにおいて右側にシフトした位置であって、搬送方向Fにおいて上流ヘッド4AAよりも下流側且つ下流ヘッド4ACよりも上流側に配置されている。上流ヘッド4AA及び下流ヘッド4ACに対して中央ヘッド4ABは、それぞれ搬送方向Fに一部が重複する位置に配置されている。
【0064】
第2~第6インクヘッド4B~4Fも、上述の上流ヘッド4AA、中央ヘッド4AB及び下流ヘッド4ACと同様な、上流ヘッド4BA、4CA、4DA、4EA、4FAと、中央ヘッド4BB、4CB、4DB、4EB、4FBと、下流ヘッド4BC、4CC、4DC、4EC、4FCを備えている。第1~第6インクヘッド4A~4Fの各上流ヘッド4AA~4FA、中央ヘッド4BB~4FB及び下流ヘッド4BC~4FCは、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて一列に並んでいる。
【0065】
前処理ヘッド5は、搬送方向Fにおいて同位置で、主走査方向Sに間隔をおいて並ぶように配置された第1前処理ヘッド5A及び第2前処理ヘッド5Bを含む。第1前処理ヘッド5Aは、第5インクヘッド4Eの上流ヘッド4EAと、第6インクヘッド4Fの上流ヘッド4FAとの間に、その下流側の一部が入り込むように配置されている。第2前処理ヘッド5Bは、上流ヘッド4FAの右側であって、中央ヘッド4FBと主走査方向Sにおいて同位置に配置されている。
【0066】
後処理ヘッド6は、搬送方向Fにおいて同位置で、主走査方向Sに間隔をおいて並ぶように配置された第1後処理ヘッド6A、第2後処理ヘッド6B及び第3後処理ヘッド6Cを含む。第1後処理ヘッド6Aは、第4インクヘッド4Dの下流ヘッド4DCと、第5インクヘッド4Eの下流ヘッド4ECとの間に、その上流側の一部が入り込むように配置されている。第2後処理ヘッド6Bは、第5インクヘッド4Eの下流ヘッド4ECと、第6インクヘッド4Fの下流ヘッド4FCとの間に、その上流側の一部が入り込むように配置されている。第3後処理ヘッド6Cは、下流ヘッド4FCの右側であって、中央ヘッド4FBと主走査方向Sにおいて同位置に配置されている。
【0067】
実施例2に係るヘッド配置によれば、実施例1と同様の利点を享受できる。すなわち、キャリッジ3Aの小型化を図りつつ、必要なインク及び処理液の吐出量を確保することができる。とりわけ、実施例2では前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の双方が複数個の単位ヘッドを備える構成であるので、十分な前処理液及び後処理液の吐出量を確保することができる。第1~第6インクヘッド4A~4Fもまた、3列配置の単位ヘッドを備えるので、インクの吐出量も十分に確保することができる。
【0068】
<実施例3>
図8は、実施例3に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Bを概略的に示す平面図である。実施例3では、インクを吐出するインクヘッド4と、非発色性の処理液を吐出する前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6とが、主走査方向に分離して配置される例を示す。
【0069】
キャリッジ3Bのヘッド支持フレーム31には、互いに異なる6色のインクを各々吐出する第1~第6インクヘッド4A~4F、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が搭載されている。第1~第6インクヘッド4A~4Fは、実施例2と同様の3列配置の単位ヘッドを備えている。前処理ヘッド5は、搬送方向Fにおいて同位置で、主走査方向Sに間隔をおいて並ぶように配置された第1、第2前処理ヘッド5A、5Bを含む。後処理ヘッド6は、搬送方向Fにおいて同位置で、主走査方向Sに間隔をおいて並ぶように配置された第1~第3後処理ヘッド6A~6Cを含む。これらの基本構成については、実施例2と同じである。
【0070】
実施例3では、インクヘッド4の配置領域と、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配置領域とが、ヘッド支持フレーム31上において区分されている。ヘッド支持フレーム31上には、比較的大面積の第1領域R1と、当該第1領域R1に対して主走査方向Sに隣接する比較的小面積の第2領域R2とが設定されている。第1領域R1には、インクヘッド4(第1~第6インクヘッド4A~4F)が配置されている。一方、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1領域R1には配置されず、第2領域R2に配置されている。第2領域R2において、インクヘッド4の配列体の搬送方向Fの上流側に前処理ヘッド5が、下流側に後処理ヘッド6が各々配置されている。
【0071】
インクと前処理液又は後処理液とが接触すると、インク成分に凝集が生じることがある。この場合、凝集物がインクヘッド4のインク吐出ノズルに付着すると、吐出不良が発生し得る。また、ヘッドのクリーニング処理やパージ処理等において発生する廃液の回収系において、インクが処理液と接触して凝集し、回収経路を詰まらせてしまう懸念もある。実施例3のキャリッジ3Bによれば、処理ヘッド5、6とインクヘッド4とが主走査方向に分離して配置されるので、インクと前処理液又は後処理液との接触が生じ難いようにすることができる。従って、インクの凝集に起因する問題を発生させ難くできる。
【0072】
<実施例4>
図9は、実施例4に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Cを概略的に示す平面図である。上記実施例1~3では、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が、インクヘッド4の主走査方向Sにおける配置幅Hの端部付近(右端付近)に配置される例を示した。実施例4では、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が、配置幅Hの中央領域HCに配置される例を示す。
【0073】
キャリッジ3Cのヘッド支持フレーム31には、互いに異なる6色のインクを各々吐出する第1~第6インクヘッド4A~4F、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が搭載されている。第1~第6インクヘッド4A~4Fは、実施例1と同様の2列配置の単位ヘッドを備えている。但し、第1インクヘッド4Aにおいて下流側ヘッド4A2が上流側ヘッド4A1の右側に配置されるというように、各インクヘッド4A~4Fの下流側ヘッドのシフト方向が実施例1と逆になっている。前処理ヘッド5は1個、後処理ヘッド6は第1、第2後処理ヘッド6A、6Bの2個が各々備えられている。
【0074】
前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1~第6インクヘッド4A~4Fの主走査方向Sにおける配置幅Hの中央領域HCに配置されている。第1~第6インクヘッド4A~4Fの配列体の搬送方向Fの上流側に前処理ヘッド5が、下流側に後処理ヘッド6が各々配置される点は、上掲の実施例1~3と同じである。前処理ヘッド5は、第3インクヘッド4Cの下流側ヘッド4C2と主走査方向Sにおいて同位置で、且つ、搬送方向Fの上流側に配置されている。前処理ヘッド5は、第3、第4インクヘッド4C、4Dの上流側ヘッド4C1、4D1の間に、その下流側の一部が入り込むように配置されている。
【0075】
第1、第2後処理ヘッド6A、6Bは、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて並んでいる。第1後処理ヘッド6Aは、第2インクヘッド4Bの下流側ヘッド4B2と、第3インクヘッド4Cの下流側ヘッド4C2との間に、その上流側部分が入り込むように配置されている。第2後処理ヘッド6Bは、下流側ヘッド4C2と第4インクヘッド4Dの下流側ヘッド4D2との間に、その上流側部分が入り込むように配置されている。
【0076】
前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、配置幅Hの中央領域HCに配置されるだけでなく、前処理ヘッド5の配置中心と、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bの配列中心とが、主走査方向Sにおいて一致するよう配置されている。本実施例では、前処理ヘッド5は1個だけであるので、前処理ヘッド5の主走査方向Sの中心が配置中心C1となる。後処理ヘッド6は、第1後処理ヘッド6Aと第2後処理ヘッド6Bとの間の中間点が配列中心C2となる。これら配置中心C1と配列中心C2とが、主走査方向Sの同位置となるように、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6がヘッド支持フレーム31上に配置されている。
【0077】
図4に基づき説明した通り、本実施形態では、キャリッジ3が往路スキャンと復路スキャンとを繰り返して、ワークWへ前処理液、インク及び後処理液を順次着弾させる。このような双方向スキャンが採用される場合において実施例4のヘッド配置を採用することで、各主走査位置における、ワークWへの前処理液の着弾からインクの着弾までの時間のばらつき、並びに、インクの着弾から後処理液の着弾までの時間のばらつきを少なくすることができる。
【0078】
この場合、中央領域HCとは、配置幅Hの範囲の中央に位置する、幅が配置幅Hの半分の領域、ないしは3分の1の領域である。処理ヘッドが中央領域HCに配置されているとは、処理ヘッドの配列中心が中央領域HCに配置されていると共に、処理ヘッドの配置中心の半数以上が中央領域HCに配置されていることを意味する。さらに、処理ヘッドの配置中心の全てが中央領域HCに配置されていてもよい。
【0079】
<実施例5>
図10は、実施例5に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Dを概略的に示す平面図である。実施例5では、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が、インクヘッド4を挟んでヘッド支持フレーム31の主走査方向Sの一端側と他端側とに分離して配置される例を示している。
【0080】
ヘッド支持フレーム31には、実施例4(図9)と同じ配列の第1~第6インクヘッド4A~4Fと、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6とが搭載されている。前処理ヘッド5は1個、後処理ヘッド6は第1、第2後処理ヘッド6A、6Bの2個が各々備えられている。前処理ヘッド5は、インクヘッド4に対して主走査方向Sの一端側(右側)であって、搬送方向Fの上流側に配置されている。第1、第2後処理ヘッド6A、6Bは、インクヘッド4に対して主走査方向Sの他端側(左側)であって、搬送方向Fの下流側に配置されている。第1、第2後処理ヘッド6A、6Bは、搬送方向Fにおいて同位置で、主走査方向Sに間隔をおいて並んでいる。
【0081】
実施例3と同様に、実施例5のヘッド配置も、インクヘッド4の配置領域と、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配置領域とが、ヘッド支持フレーム31上において区分されている例である。すなわち、ヘッド支持フレーム31の右端部分が前処理ヘッド5の配置領域、左端部分が後処理ヘッド6の配置領域、残部の中央領域がインクヘッド4の配置領域である。この実施例5のヘッド配置によっても、インクと前処理液又は後処理液との接触が生じ難いようにすることができる。
【0082】
<実施例6>
図11は、実施例6に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Eを概略的に示す平面図である。上掲の各実施例では、色毎に独立した単位ヘッドを備えるインクヘッド4を例示した。実施例6では、一つのヘッドに互いに異なる色のインクを吐出する吐出部分を備えたインクヘッド4を例示する。
【0083】
キャリッジ3Eには、2つのマルチカラーヘッド40A、40Bと、1つの前処理ヘッド5と、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bを備えた後処理ヘッド6とが搭載されている。マルチカラーヘッド40A、40Bは、互いに異なる4色のインクを各々吐出する第1、第2、第3、第4インク吐出領域4a、4b、4c、4dを備えている。第1~第4インク吐出領域4a~4dは、各色のインクを吐出する単位ノズルを結合させて形成されたものでも良いし、一つのインクヘッドが備える多数のインク吐出用ノズルを縦割りに区分して各色のインクの吐出領域としたものでも良い。
【0084】
前処理ヘッド5は、マルチカラーヘッド40A、40Bの配列体の右側であって、搬送方向Fの上流側に配置されている。後処理ヘッド6は、前記配列体の搬送方向Fの下流側に配置されている。第1、第2後処理ヘッド6A、6Bは、搬送方向Fにおいて同位置で主走査方向Sに所定間隔を置いて並んでいる。これらのうち、第1後処理ヘッド6Aは、一対のマルチカラーヘッド40A、40Bの間に、その上流側部分が入り込むように配置されている。このような実施例6に係るヘッド配置によっても、キャリッジ3Eの小型化を図りつつ、必要なインク及び処理液の吐出量を確保することができる。
【0085】
<実施例7>
図12は、実施例7に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Fを概略的に示す平面図である。実施例7では、互いに異なる6色のインクを各々吐出する第1~第6インクヘッド4A~4Fが、主走査方向Sに一列に配置されたインクヘッド4を例示する。
【0086】
キャリッジ3Fのヘッド支持フレーム31には、単位ヘッドを各々2個ずつ備える第1~第6インクヘッド4A~4F、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6が搭載されている。前処理ヘッド5は1個、後処理ヘッド6は第1、第2後処理ヘッド6A、6Bの2個が各々備えられている。上述の実施例1~5と相違する点は、各々2個の単位ヘッドを備える第1~第6インクヘッド4A~4Fは、搬送方向Fの同位置において、主走査方向Sに配列されている点である。前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1~第6インクヘッド4A~4Fの配列体の右方において、それぞれ上流側及び下方側に配置されている。
【0087】
実施例7のヘッド配置は、主走査方向Sの幅員を比較的大きく取れるが、搬送方向Fの幅員を短くすべき場合に好適である。また、必要なインク及び処理液の吐出量を確保することができる。さらに、インクヘッド4の配置領域と、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配置領域とが、ヘッド支持フレーム31上において区分されるので、インクと前処理液又は後処理液との接触が生じ難いようにすることができる。
【0088】
<実施例8>
実施例8、及びこれに続く実施例9では、処理ヘッド5、6の発熱対策を施したヘッド配置を例示する。一般に、ジェット方式で液体を吐出するヘッドは、電気を使用して液体を加圧するため発熱する。インクヘッド4は、必要な色ドットの形成時のみに吐出動作を行う。これに対し、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、全色のドットに対応して前処理液及び後処理液の吐出動作を要する。従って、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、インクヘッド4の各々よりも高温化し易い。このため、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の高温化を想定したヘッド配置を行うことが望ましい。
【0089】
図13は、実施例8に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3Gを概略的に示す平面図である。キャリッジ3Gは、ガイドレール17(保持部材)にてバックフレーム32(係合部)が片持ち状態で保持されている。ヘッド支持フレーム31には、第1~第6インクヘッド4A~4Fを備えたインクヘッド4と、一つの前処理ヘッド5と、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bを備えた後処理ヘッド6とが搭載されている。これらのヘッド配置は、図6に示した実施例1と同一であるので、ここでは説明を省く。
【0090】
本実施例では、前処理ヘッド5は一つの単位ヘッドで、後処理ヘッド6は二つの単位ヘッド(第1、第2後処理ヘッド6A、6B)で、それぞれ構成されている。これら前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6のうち、単位ヘッドの個数が少ない前処理ヘッド5が、ヘッド支持フレーム31の基端側311に配置されている。単位ヘッドの個数が多い後処理ヘッド6については、先端側312に配置されている。換言すると、ヘッド支持フレーム31の搬送方向Fの上流側端縁が、ガイドレール17で保持される側とされている。
【0091】
上述の通り、処理ヘッド5、6は吐出動作によって発熱する。図13に模式的に示すように、高温化した前処理ヘッド5は、熱haを放散する。第1、第2後処理ヘッド6A、6Bも同様である。この熱haによってキャリッジ3Gのヘッド支持フレーム31は加温され、当該ヘッド支持フレーム31及びその保持構造体であるバックフレーム32や、バックフレーム32とタイミングベルト16との固定金具等に熱変形を招来し得る。この熱変形は、片持ち状態で保持されるキャリッジ3Gでは、インクヘッド4から吐出されるインクの着弾精度に影響を与え得る。
【0092】
しかし、実施例8のキャリッジ3Gでは、ヘッド支持フレーム31の片持ち保持される側である基端側311に、単位ヘッドの個数が少ない前処理ヘッド5を配置している。これにより、熱変形による影響(着弾精度の低下)を小さくできる。仮に、単位ヘッドの個数が多い後処理ヘッド6を基端側311に配置した場合、バックフレーム32は2個の単位ヘッドから熱haの放散を受け、より高温化して熱変形し易くなる。
【0093】
また、実施例8のキャリッジ3Gでは、前処理ヘッド5は、インクヘッド4及び処理ヘッド5、6の配列体HAにおける主走査方向Sの端を除く位置に配置されている。キャリッジ3Gに搭載されるヘッド4,5,6のうち、前処理ヘッド5はバックフレーム32(係合部)に最も近い側に配置されるヘッドである。このような前処理ヘッド5が、ヘッド配列体HAの端である配置端313を除く位置に配置されている。
【0094】
キャリッジ3Gは徒らにサイズを大きくできない。仮に、ヘッド配列体の主走査方向Sの配置端313にヘッドを配置した場合、そのヘッドはキャリッジ3G(ヘッド支持フレーム31)の主走査方向Sの角部に最も近いヘッドになる。配置端313は、片持ち支持されるバックフレーム32の近傍でもあるため、その付近で熱変形が生じると、ヘッド支持フレーム31の高さ方向や水平方向の歪みや位置ずれを誘発し得る。このことは、キャリッジ3Gに搭載されたヘッド4,5,6の着弾位置精度を低下させる。従って、配置端313の領域には高温化する前処理ヘッド5を配置しないことで、上記の熱変形の問題を発生し難くできる。
【0095】
本実施形態では、2列あるインクヘッド4の列のうちで、係合部側に配置されているヘッド4の列が、図13において右側にずれた位置にある千鳥配置となっている。さらに、係合部側にヘッド数の少ない処理ヘッドである前処理ヘッド5を配置し、前処理ヘッド5を千鳥配置となる配置位置の中で最も右側に配置している。このように配置することで、配置端313に処理ヘッドを配置しないようにヘッドを配置できる。
【0096】
図13に示すキャリッジ3Gのヘッド配置を参照して、好ましいインクヘッドの配置例を説明する。キャリッジ3Gにおいて、高温化する前処理ヘッド5は、その一部がインクヘッド4と隣接するように配置されている。具体的には前処理ヘッド5は、主走査方向Sにおいて第5、第6インクヘッド4E、4Fの上流側ヘッド4E1、4F1と隣接し、搬送方向Fにおいて第6インクヘッド4Fの下流側ヘッド4F2と隣接している。また、第1後処理ヘッド6Aは、主走査方向Sにおいて第5、第6インクヘッド4E、4Fの下流側ヘッド4E2、4F2と隣接し、搬送方向Fにおいて上流側ヘッド4E1と隣接している。第2後処理ヘッド6Bは、上流側ヘッド4F1及び下流側ヘッド4F2と隣接している。他方、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、第1~第4インクヘッド4A~4Dには隣接していない。
【0097】
上記のヘッド配置では、例えばブルー、ブラックのインクを各々吐出する第5、第6インクヘッド4E、4F(第1色のインクを吐出する第1インクヘッド)の方が、オレンジ、グリーン、イエロー、レッドのインクを各々吐出する第1~第4インクヘッド4A~4D(第2色のインクを吐出する第2インクヘッド)よりも、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6と隣接する単位ヘッド数が多い。つまり、第5、第6インクヘッド4E、4Fが、他のインクヘッド4A~4Dに比べて高温化し易いインクヘッドである。
【0098】
インクの粘度が温度変化に伴って大きく変化すると、インクヘッドからのインク吐出特性(吐出量等)も変化する。インクの種類により、温度による粘度変化特性は異なる。従って、本実施例の場合、高温化し易い第5、第6インクヘッド4E、4Fから吐出させるインクとして、第1~第4インクヘッド4A~4Dから吐出させるインクよりも、温度による粘度変化の小さいインクを選択する。これにより、第5、第6インクヘッド4E、4Fが前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6で加温されたとしても、これらインクヘッド4E、4Fから吐出されるインクの吐出量や吐出速度の温度変化を小さくできる。
【0099】
この場合、各インクについてインクヘッド4に隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数は、あるインクを吐出するインクヘッド4の中で、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数が最大のもので評価してもよい。第1~第4インクヘッド4A~4Dでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の最大は0である。第5インクヘッド4Eでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の最大は2である。第6インクヘッド4Fでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の最大は3である。
【0100】
また、各インクについてインクヘッド4に隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数は、あるインクを吐出するインクヘッド4の中で、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の平均で評価してもよい。第1~第4インクヘッド4A~4Dでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の平均は0である。第5インクヘッド4Eでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の平均は1.5である。第6インクヘッド4Fでは、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の平均は2.5である。
【0101】
これらを組み合わせた評価として、例えば、最初に隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の最大で評価し、その評価で差がなかったインクについて、隣接する処理ヘッドの単位ヘッド数の平均で評価してもよい。また、各インクを吐出するインクヘッド4が高温化し易い順を評価し、高温化し易い順に、粘度の温度変化の少ないインクを吐出してもよい。
【0102】
<実施例9>
実施例9では、同色のインクを吐出する複数の同色インクヘッド間における、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の高温化対策を考慮した実施例を示す。上述の実施例では、各色の第1~第6インクヘッド4A~4Fが、それぞれ2個又は3個の単位ヘッドを備える例を示した。これらの単位ヘッド間で、前処理ヘッド5又は後処理ヘッド6に隣接する個数の差が大きいと、インクの吐出特性が当該単位ヘッド間で大きく相違する不具合が生じる。本実施例では、前記隣接する個数の差を少なくするヘッド配置例を示す。
【0103】
図14Aは、実施例9に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3H-1を概略的に示す平面図である。キャリッジ3H-1は、第1~第6インクヘッド4A~4Fが備える2個の単位ヘッド(同色インクヘッド)の各々が、主走査方向S及び搬送方向Fにおいて前処理ヘッド5又は後処理ヘッド6に隣接する個数をカウントしたとき、それらのカウント数の最大値と最小値との差が1以下となるヘッド配置を有している。
【0104】
キャリッジ3H-1のヘッド配置は、先に図13に示したキャリッジ3Gのヘッド配置と同じである。第5インクヘッド4Eに注目すると、上述の通り、その上流側ヘッド4E1に主走査方向S及び搬送方向Fにおいて隣接する処理ヘッド5,6をカウントすると、前処理ヘッド5及び第1後処理ヘッド6Aの2個(最大値)である。一方、下流側ヘッド4E2に隣接するのは、第1後処理ヘッド6Aのみの1個(最小値)である。従って、カウント数の最大値と最小値との差が1であり、上掲の要件を満たしている。
【0105】
同様に、第6インクヘッド4Fに注目すると、上流側ヘッド4F1に隣接する処理ヘッド5,6のカウント数は2個(最小値)、下流側ヘッド4F2のカウント数は3個(最大値)であり、同じく両者の差は1である。一方、第1~第4インクヘッド4A~4Dについては、隣接する処理ヘッド5,6が存在しないので、いずれもカウント数は「0」となる。従って、最大値と最小値との差は全て「0」となり、上掲の要件を満たしている。
【0106】
図14Bは、実施例9の他の例に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3H-2を概略的に示す平面図である。キャリッジ3H-2における第1~第6インクヘッド4A~4Fの配置は、図14Aと同じである。前処理ヘッド5は、第3インクヘッド4Cの上流側ヘッド4C1を挟んで主走査方向Sに並んで配置された第1、第2前処理ヘッド5A、5Bを含む。後処理ヘッド6は、下流側ヘッド4C2を挟んで主走査方向Sに並んで配置された第1、第2後処理ヘッド6A、6Bを含む。
【0107】
キャリッジ3H-2の第2インクヘッド4Bでは、上流側ヘッド4B1及び下流側ヘッド4B2に隣接する処理ヘッド5,6のカウント数は各々2個、1個で、その差は「1」である。第3インクヘッド4Cでは、上流側ヘッド4C1及び下流側ヘッド4C2の前記カウント数はいずれも3個で、その差は「0」である。第4インクヘッド4Dでは、上流側ヘッド4D1の前記カウント数は1個、下流側ヘッド4D2の前記カウント数は2個で、その差は1個である。その余のインクヘッド4A、4E、4Dは、いずれもカウント数は「0」である。従って、第1~第6インクヘッド4A~4Fの全てについて最大値と最小値との差は1以下であり、上掲の要件を満たしている。
【0108】
以上の通り、実施例9では、第1~第6インクヘッド4A~4Fの上流側ヘッド4A1~4F1と下流側ヘッド4A2~4F2の各々が処理ヘッド5,6に隣接するカウント数の最大値と最小値との差を1以下とする。これにより、複数の同色インクヘッド間でインク吐出量に大きな差異が生じないようにすることができる。
【0109】
図14Cは、実施例9に対する比較例(本開示の範疇ではある)に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3H-3を概略的に示す平面図である。キャリッジ3H-3は第1~第6インクヘッド4A~4Fを備えるが、上流側ヘッド4A1~4F1については左から右へ順に配列され、下流側ヘッド4A2~4F2についてはその逆に配列されている点で、上掲のキャリッジ3H-1,3H-2とは相違する。前処理ヘッド5及び第1、第2後処理ヘッド6A、6Bの配置位置は、キャリッジ3H-1と同じである。
【0110】
キャリッジ3H-3において、第1インクヘッド4Aに注目すると、その上流側ヘッド4A1に隣接する処理ヘッド5,6のカウント数は2個(最大値)である一方、下流側ヘッド4A2のカウント数は0個(最小値)であり、両者の差は2である。この場合、インクジェット式プリンター1の稼働時における上流側ヘッド4A1と下流側ヘッド4A2との温度差が大きくなり、これらヘッド間でインク吐出量に大きな差異が生じ得る。このことは、第1インクヘッド4Aという同色のヘッドから吐出されたにも拘わらず、色合いに差異が出てしまうことがあるので、好ましくない。
【0111】
<実施例10>
図15A図15Cは、実施例10に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3I-1、3I-2、3I-3を各々概略的に示す平面図である。実施例10では、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6をヘッド支持フレーム31上に分散的に配置するのではなく、なるべく塊状に配置することで、前処理液及び後処理液とインクとの接触を低減できる例を示す。
【0112】
実施例10では、次の(A)~(C)の要件を満たすヘッド配置を例示している。
(A)前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6のうち、単位ヘッド個数の多い方の個数をm個、少ない方の個数をn個とするとき、m=n+奇数、の要件を満たし、
(B)主走査方向Sにおける一又は複数の前処理ヘッド5の配置又は配列中心と、一又は複数の後処理ヘッド6の配置又は配列中心とが、主走査方向Sにおいて一致し、且つ、
(C)前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配置又は配列中心と、インクヘッド4のうちの一のインクヘッドの配置位置とが、主走査方向Sにおいて一致する。
【0113】
さらに、実施例10のヘッド配置では、次の(D)の要件を満たす。
(D)前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配置又は配列中心と、主走査方向Sの端からm行目のインクヘッド行の配置位置とが、主走査方向Sにおいて一致する。
【0114】
ここで、行とは、搬送方向Fに沿って並んだヘッドをまとめた単位である。主走査方向Sの端からm行目のインクヘッド行とは、インクヘッド4のヘッド配置において、ヘッド配置の端からm行目のインクヘッド4の行のことである。上記要件(D)をさらに満たすことで、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6は、まとまった状態で、インクヘッド4の主走査方向Sの端に寄せて配置できる。従って、前処理液及び後処理液とインクとの、キャリッジ上での接触が生じる可能性を低くできる。
【0115】
図15Aに示すキャリッジ3I-1は、インクヘッド4、1個の前処理ヘッド5及び第1、第2後処理ヘッド6A、6Bを有する後処理ヘッド6を備える。ヘッド配置は、図13他と同じである。この例の場合、後処理ヘッド6がm=2個、前処理ヘッド5がn=1である。よって、上記要件(A)のm=n+奇数を満たす。また、前処理ヘッド5の配置中心と後処理ヘッド6の配列中心は、共に図中の中心Cであり、上記要件(B)も満たす。さらに、中心Cと、第6インクヘッド4Fの下流側ヘッド4F2の配置位置とが一致しており、上記要件(C)も満たしている。さらに、下流側ヘッド4F2は、右の端から2行目のインクヘッド行のヘッドであり、上記要件(D)も満たしている。
【0116】
図15Bに示すキャリッジ3I-2は、インクヘッド4、第1、第2前処理ヘッド5A、5Bを有する前処理ヘッド5及び第1、第2、第3後処理ヘッド6A、6B、6Cを有する後処理ヘッド6を備える。この例の場合、後処理ヘッド6がm=3個、前処理ヘッド5がn=2である。よって、上記要件(A)のm=n+奇数を満たす。また、前処理ヘッド5及び後処理ヘッド6の配列中心は、共に図中の中心Cであり、上記要件(B)も満たす。さらに、中心Cと、第5インクヘッド4Eの上流側ヘッド4E1の配置位置とが一致しており、上記要件(C)も満たしている。さらに、上流側ヘッド4E1は、右の端から3行目のインクヘッド行のヘッドであり、上記要件(D)も満たしている。
【0117】
図15Cに示すキャリッジ3I-3は、インクヘッド4、1個の前処理ヘッド5及び第1、第2、第3、第4後処理ヘッド6A、6B、6C、6Dを有する後処理ヘッド6を備える。この例の場合、後処理ヘッド6がm=4個、前処理ヘッド5がn=1である。よって、上記要件(A)のm=n+奇数を満たす。また、前処理ヘッド5の配置中心と後処理ヘッド6の配列中心は、共に図中の中心Cであり、上記要件(B)も満たす。さらに、中心Cと、第5インクヘッド4Eの下流側ヘッド4E2の配置位置とが一致しており、上記要件(C)も満たしている。さらに、下流側ヘッド4E2は、右の端から4行目のインクヘッド行のヘッドであり、上記要件(D)も満たしている。
【0118】
図15Dは、実施例10に対する比較例(本開示の範疇ではある)に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3I-4を概略的に示す平面図である。キャリッジ3I-4は、インクヘッド4、第1、第2前処理ヘッド5A、5Bを有する前処理ヘッド5及び第1、第2、第3後処理ヘッド6A、6B、6Cを有する後処理ヘッド6を備える。この比較例は、上記要件(A)のm=n+奇数を満たしている。しかし、前処理ヘッド5の配列中心C1と後処理ヘッド6の配列中心C2とは、主走査方向Sにおいてズレた位置にあり、上記要件(B)を満たしていない。結果として、要件(C)も満たしていない。
【0119】
実施例10のヘッド配置によれば、前処理ヘッド5と後処理ヘッド6とが、ある程度まとまった状態でキャリッジ3I-1~3I-3に搭載することができる。これにより、第1~第6インクヘッド4A~4Fのうち、前処理ヘッド5又は後処理ヘッド6に近い位置に配置されるインクヘッドの数を減らすことができる。従って、前処理液及び後処理液とインクとの、キャリッジ上での接触が生じる可能性を小さくできる。
【0120】
例えば、上記m、nが同じ個数であるキャリッジ3I-2と比較例に係るキャリッジ3I-4とを比較する。比較例では、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bが、実施例に比べて1ピッチだけ主走査方向Sにシフトしている。このため、比較例では第1~第3後処理ヘッド6A~6Cに隣接するインクヘッド4の単位ヘッド数が増えている。従って、インクと後処理液とが接触する可能性が実施例に比べて高くなるので好ましくない。
【0121】
<実施例11>
実施例11では、キャリッジ上のヘッド4,5,6と、これらにインク又は処理液を供給するサブタンクとの好ましい配置関係について例示する。図16は、実施例11に係るヘッド配置を備えたキャリッジ3J及びサブタンク配置を示す平面図である。キャリッジ3Jは、第1~第6インクヘッド4A~4Fを有するインクヘッド4、1個の前処理ヘッド5及び第1、第2後処理ヘッド6A、6Bを有する後処理ヘッド6を備える。これらのヘッド配置は、図13他と同じである。
【0122】
キャリッジ3Jにはサブタンク7も搭載されている。サブタンク7は、インク用サブタンク7A~7F、前処理液用サブタンク71及び後処理液用サブタンク72を含む。これらのサブタンク7には、図略のメインタンクからインク、前処理液及び後処理液が各々供給される。インク用サブタンク7A~7Fは、第1~第6インクヘッド4A~4Fの各々に前記インクを供給する。例えば、第1インクヘッド4Aの上流側ヘッド4A1にはインク用サブタンク7Aの第1タンク7A1から、下流側ヘッド4A2には第2タンク7A2から、管路P1を介して第1色のインクが供給される。第2~第6インクヘッド4B~4Fについても、同様して第2色~第6色のインクが各々供給される構造である。インク用サブタンク7の主走査方向Sにおける配置順は、それぞれのインク用サブタンク7がインクを供給しているインクヘッド4の主走査方向Sにおける配置順と同じである。
【0123】
なお、同色のインクを吐出する複数のインクヘッド4に対して、1つのインク用サブタンク7からインクを供給してもよい。その場合、インク用サブタンク7を共有するインクヘッド4は、主走査方向Sにおいて、まとまった位置に配置してもよい。さらに、同じインクを吐出するインクヘッド4は、主走査方向Sにおいて、まとめて配置するのがよい。主走査方向Sにおいて、各色のインク用サブタンク7の配置の順番を、各色のインクヘッド4の配置の順番を同じにしてもよい。
【0124】
前処理液用サブタンク71は、管路P2を介して前処理ヘッド5に前処理液を供給する。後処理液用サブタンク72は、第1タンク72A及び第2タンク72Bを含む。第1、第2タンク72A、72Bは、それぞれ管路P3を介して、第1、第2後処理ヘッド6A、6Bに後処理液を供給する。
【0125】
インク用サブタンク7A~7Fは、主走査方向Sに並ぶようにキャリッジ3Jに搭載されている。処理液用サブタンク71、72は、搬送方向Fにおいてインク用サブタンク7A~7Fとは異なる位置で、主走査方向Sに並んで配置されている。具体的には、前処理液用サブタンク71と、後処理液用サブタンク72の第1、第2タンク72A、72Bとが、インク用サブタンク7A~7Fの搬送方向F下流側において、主走査方向Sに一列に並んでいる。なお、前処理液用サブタンク71だけを、インク用サブタンク7A~7Fの上流側に配置しても良い。
【0126】
主走査方向Sに往復移動するキャリッジ3Jに搭載されたサブタンク7の液体には、その主走査方向Sの加速度が作用する。サブタンク7と各ヘッド4,5,6とは管路P1,P2,P3で接続されるが、サブタンク7がキャリッジ3J上で広く分布していると、主走査方向Sにおける管路P1~P3の配置範囲も大きくなる。これら管路P1~P3にもインク又は処理液が充填されているので、前記加速度の影響を受けてヘッド4,5,6の吐出部分においてメニスカス破壊を起こすことがある。
【0127】
しかし、実施例11の構成によれば、インク用サブタンク7A~7Fは、第1~第6インクヘッド4A~4Fと同様に主走査方向Sに並ぶようにキャリッジ3Jに搭載される。このため、インク用サブタンク7A~7Fをキャリッジ3Jのヘッド支持フレーム31上の比較的狭い範囲に配置させることが可能となる。同様に、前処理液用サブタンク71及び後処理液用サブタンク72についても、キャリッジ3Jのヘッド支持フレーム31上の比較的狭い範囲に配置させることができる。
【0128】
さらに、前処理液用サブタンク71及び後処理液用サブタンク72を、搬送方向Fにおいて、インク用サブタンク7A~7Fとは別の位置に配置している。このため、前処理液用サブタンク71及び後処理液用サブタンク72と、前処理液用サブタンク71及び後処理液用サブタンク72のそれぞれが処理液を供給する処理ヘッドとの主走査方向Sにおける位置の差を少なく配置できる。これにより、前処理液用サブタンク71、管路P及び前処理ヘッド5の中に繋がって存在する前処理液の主走査方向Sの分布範囲を小さくでき、前記加速度の影響を受け難くすることができる。同様に、繋がって存在する後処理液の主走査方向Sにおける分布範囲を小さくでき、前記加速度の影響を受け難くすることができる。
【0129】
同様に、インク用サブタンク7A~7Fと、インク用サブタンク7A~7Fのそれぞれがインクを供給するインクヘッド4との主走査方向Sにおける位置の差を少なく配置できる。これにより、繋がって存在するインクの主走査方向Sにおける分布範囲を小さくでき、前記加速度の影響を受け難くすることができる。
【0130】
[本開示のまとめ]
本開示の一の局面に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動するキャリッジと、前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッドと、前記キャリッジに搭載され、非発色性の処理液を吐出する複数の処理ヘッドと、を備え、前記複数の処理ヘッドは、前記搬送方向において前記インクヘッドとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されている。
【0131】
このインクジェット記録装置によれば、処理ヘッドが搬送方向においてインクヘッドとは異なる位置に配置されているので、キャリッジの往動及び復動の双方において、処理液及びインクの記録媒体への望ましい着弾順を確保することができる。仮に、前記処理ヘッドと前記インクヘッドとが搬送方向において同位置に配置される構成とした場合、前記着弾順の確保のためには、インクヘッド群の両サイドに前記処理ヘッドを配置する必要がある。この場合、キャリッジの主走査方向の幅が大きくなってしまう。本開示の構成によれば、このような配置は不要となるので、キャリッジの主走査方向幅を小型化することができる。また、複数の処理ヘッドは、前記主走査方向に並んで配置される。このため、単体では処理液の吐出量が不足する場合でも、複数の処理ヘッドの配置により必要な吐出量を確保することができる。
【0132】
上記のインクジェット記録装置において、前記複数のインクヘッドは、前記複数の処理ヘッドの配列方向と交差する方向にも配列されていてもよい。
【0133】
このインクジェット記録装置によれば、複数の処理ヘッドの配列方向(主走査方向)と交差する方向にも複数のインクヘッドが配列される。このため、インクの吐出量を増加させるため、若しくは、多色化を図るべくインクヘッドの数を増やしても、キャリッジの主走査方向の幅を小型化することが可能となる。
【0134】
上記のインクジェット記録装置において、前記複数の処理ヘッドは、前記複数のインクヘッドの前記主走査方向における配置幅の範囲内に配置されていてもよい。
【0135】
このインクジェット記録装置によれば、処理ヘッドがキャリッジに搭載される場合でも、当該キャリッジの主走査方向幅を拡張させる必要はない。従って、キャリッジの主走査方向幅の小型化を図ることができる。
【0136】
上記のインクジェット記録装置において、前記処理ヘッドは、前記主走査方向において隣り合う一対のインクヘッドの間に一部が入り込むように配置されていてもよい。
【0137】
このインクジェット記録装置によれば、搬送方向(副走査方向)の異なる位置に配置されるインクヘッドと処理ヘッドとを、搬送方向に高密度に配置することができる。従って、キャリッジの前記搬送方向の幅の小型化を図ることができる。
【0138】
上記のインクジェット記録装置において、前記処理ヘッドは、前記主走査方向及び前記搬送方向において一部が前記インクヘッドと隣接するように配置され、同色のインクを吐出する複数の同色インクヘッドを含み、前記同色インクヘッドの各々が、前記隣接する前記処理ヘッドの個数をカウントしたとき、それらのカウント数の最大値と最小値との差が1以下であってもよい。
【0139】
一般に、ジェット方式で液体を吐出するヘッドは、電気を使用して液体を加圧するため発熱する。とりわけ、必要な色ドットの形成時のみに吐出動作を行うインクヘッドとは異なり、全色のドットに対応して吐出動作を要する処理ヘッドは、より高温化し易い。このような処理ヘッドに隣接するインクヘッドは高温化し易く、前記処理ヘッドに隣接していないインクヘッドに比べてインク吐出量に差異が生じる。上記の通り、同色インクヘッドの各々が前記処理ヘッドに隣接するカウント数の最大値と最小値との差を1以下とすることで、複数の同色インクヘッド間でインク吐出量に大きな差異が生じ難くなる。
【0140】
上記のインクジェット記録装置において、前記処理ヘッドは、前記主走査方向及び前記搬送方向において一部が前記インクヘッドと隣接するように配置され、前記複数のインクヘッドは、少なくとも第1色のインクを吐出する第1インクヘッドと、第2色のインクを吐出する第2インクヘッドと、を含み、前記第1インクヘッドの方が、前記隣接する前記処理ヘッドの個数が前記第2インクヘッドよりも多い場合に、前記第1色のインクとして、前記第2色のインクよりも温度による粘度変化の小さいインクを吐出するようにしてもよい。
【0141】
このインクジェット記録装置によれば、隣接する処理ヘッドの個数が多い第1インクヘッドは、温度による粘度変化の小さいインクを吐出する。従って、前記第1インクヘッドが前記処理ヘッドで加温されたとしても、前記第1色のインクの吐出量や吐出速度の温度変化を小さくできる。
【0142】
上記のインクジェット記録装置において、前記複数の処理ヘッドと前記複数のインクヘッドとは、前記主走査方向に分離して配置されていてもよい。
【0143】
インクと処理液とが接触すると、例えばインク成分の凝集が生じることがある。この場合、凝集物がインクヘッドのインク吐出ノズルに付着すると、吐出不良が発生し得る。上記のインクジェット記録装置によれば、処理ヘッドとインクヘッドとが主走査方向に分離して配置されるので、インクと処理液とのキャリッジ上での接触が生じ難いようにすることができる。
【0144】
上記のインクジェット記録装置において、前記搬送方向において前記インクヘッドの上流側に配置される前処理ヘッドと、下流側に配置される後処理ヘッドとを含み、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの少なくとも一方が、前記主走査方向に並んで配置される前記複数の処理ヘッドであってもよい。
【0145】
この態様によれば、前処理液、インク及び後処理液の吐出用ヘッドの全てを、一つのキャリッジに搭載したオールインワン型のインクジェット記録装置を提供することができる。また、前処理ヘッド、インクヘッド及び後処理ヘッドが順次搬送方向に配置されるので、前処理液、インク及び後処理液の記録媒体への望ましい着弾順を確保することができる。さらに、前処理ヘッド及び後処理ヘッドの少なくとも一方が、主走査方向に並んで配置されるので、前処理液及び後処理液の所要の吐出量を確保することができる。
【0146】
上記のインクジェット記録装置において、前記キャリッジは、前記複数のインクヘッドが配置される第1領域と、当該第1領域に対して前記主走査方向に隣接する第2領域とを含み、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドは、前記第2領域に配置されていてもよい。
【0147】
このインクジェット記録装置によれば、前処理ヘッド及び後処理ヘッドとインクヘッドとを、主走査方向に分離して配置することができる。従って、前処理液及び後処理液とインクとの、キャリッジ上での接触が生じ難いようにすることができ、凝集等の問題を発生し難くできる。
【0148】
上記のインクジェット記録装置において、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドは、前記複数のインクヘッドの前記主走査方向における配置幅の中央領域に配置されていてもよい。
【0149】
若しくは、前記主走査方向における一又は複数の前記前処理ヘッドの配置又は配列中心と、一又は複数の前記後処理ヘッドの配置又は配列中心とが、前記主走査方向において一致するように前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドが配置されていてもよい。
【0150】
これらのインクジェット記録装置によれば、各主走査位置における、記録媒体への前処理液の着弾からインクの着弾までの時間のばらつき、並びに、インクの着弾から後処理液の着弾までの時間のばらつきを少なくすることができる。
【0151】
上記のインクジェット記録装置において、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドのうち、ヘッド個数の多い方の個数をm個、少ない方の個数をn個とするとき、m=n+奇数、の要件を満たし、前記主走査方向における一又は複数の前記前処理ヘッドの配置又は配列中心と、一又は複数の前記後処理ヘッドの配置又は配列中心とが、前記主走査方向において一致し、且つ、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドの配置又は配列中心と、前記複数のインクヘッドのうちの一のインクヘッドの配置位置とが、前記主走査方向において一致していてもよい。
【0152】
このインクジェット記録装置によれば、前処理ヘッドと後処理ヘッドとが、ある程度まとまった状態でキャリッジに搭載することができる。これにより、複数のインクヘッドのうち、処理ヘッドに近い位置に配置されるインクヘッドの数を減らすことができる。従って、前処理液及び後処理液とインクとの、キャリッジ上での接触が生じる可能性低くできる。
【0153】
上記のインクジェット記録装置において、前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動が可能な状態で保持する保持部材をさらに備え、前記キャリッジは、前記保持部材に片持ち状態で保持される係合部を含み、前記搬送方向において、前記前処理ヘッドは、前記後処理ヘッドよりも前記係合部側に配置されていてもよい。
【0154】
このインクジェット記録装置によれば、キャリッジを保持部材に片持ち支持させることにより、簡単な構造でキャリッジを支持できる。また、片持ち支持にすることで、キャリッジの片側を開放させた構造とすることが容易になり、インクヘッドや処理ヘッドのメンテナンスを行い易くすることができる。キャリッジを片持ち支持する場合、キャリッジの前記係合部から遠い側では、高さ方向の精度が低下することが想定される。しかし、前記係合部から遠い側には、比較的吐出精度への要求に裕度がある後処理ヘッドが搭載されるので、画像品質に大きな影響を与え難い。
【0155】
上記のインクジェット記録装置において、前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動が可能な状態で保持する保持部材をさらに備え、前記キャリッジは、前記保持部材に片持ち状態で保持される係合部を含み、前記前処理ヘッド及び前記後処理ヘッドのうち、ヘッド個数の少ない方が前記キャリッジの前記係合部側に配置されていてもよい。
【0156】
上述の通り、処理ヘッドは吐出動作によって発熱する。このため、前記処理ヘッドを搭載しているキャリッジは加温され、当該キャリッジ及びその保持構造体に熱変形を招来し得る。前記キャリッジが片持ち保持される態様では、前記熱変形はインクの着弾精度に影響を与えることがある。上記の構成によれば、前記基端部側に配置される処理ヘッドの数を減らし、熱変形による影響を小さくできる。
【0157】
上記のインクジェット記録装置において、前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動が可能な状態で保持する保持部材をさらに備え、前記キャリッジは、前記保持部材に片持ち状態で保持される係合部を含み、前記インクヘッド及び前記処理ヘッドのうち、前記キャリッジの前記係合部に最も近い側に配置されるヘッドは、前記インクヘッド及び前記処理ヘッドの配列体における前記主走査方向の端を除く位置に配置されていてもよい。
【0158】
このインクジェット記録装置によれば、前記係合部に最も近い側に配置されるヘッドは、前記インクヘッド及び前記処理ヘッドの配列体における前記主走査方向の端には配置されない。一般に、前記主走査方向の端は、キャリッジの端部(角部)に最も近くなる。キャリッジの端部であって前記基端部の付近で熱変形が生じると、当該キャリッジに搭載されたヘッドの位置精度が低下する。上記構成によれば、このような問題を発生し難くできる。
【0159】
上記のインクジェット記録装置において、前記複数のインクヘッドの各々に前記インクを供給するインク用サブタンクと、前記複数の処理ヘッドの各々に前記処理液を供給する処理液用サブタンクと、をさらに備え、前記インク用サブタンクは、前記主走査方向に並ぶように前記キャリッジに搭載され、前記処理液用サブタンクは、前記搬送方向において前記インク用サブタンクとは異なる位置で、前記主走査方向に並んで配置されていてもよい。
【0160】
上記の構成によれば、前記インク用サブタンク及び前記処理ヘッド用サブタンクは、ヘッドと同様に、前記搬送方向において異なる位置で、前記主走査方向に並んでいるので、前記キャリッジ上で、サブタンクを比較的狭い範囲に配置することができる。また、主走査方向に往復移動するキャリッジに搭載されたサブタンクの液体には、主走査方向の加速度が作用する。前記サブタンクとヘッドとは所定の管路で接続されるが、前記サブタンクがキャリッジ上で広く分布していると、主走査方向における前記管路の配置範囲も大きくなるので、前記加速度の影響が大きくなり、ヘッドの吐出部分においてメニスカス破壊を起こすことがある。上記の構成によれば、前記管路の前記主走査方向における配置範囲を比較的狭くすることが可能となる。
【0161】
以上説明した本開示によれば、キャリッジの小型化を図りつつ、必要なインク及び処理液の吐出量を確保することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 インクジェット式プリンター(インクヘッド式記録装置)
16 タイミングベルト(移動部材)
17 ガイドレール(保持部材)
20 ワーク搬送部(搬送部)
3、3A~3J キャリッジ
31 ヘッド支持フレーム
32 バックフレーム(係合部)
4 インクヘッド
4A~4F 第1~第6インクヘッド
4A1~4F1 上流側ヘッド
4A2~4F2 下流側ヘッド
5 前処理ヘッド(処理ヘッド)
6 後処理ヘッド(処理ヘッド)
7 サブタンク
7A~7F インク用サブタンク
71 前処理液用サブタンク
72 後処理液用サブタンク
F 搬送方向
S 主走査方向
W ワーク(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
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図10
図11
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図14B
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