(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092068
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ワーク受け装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 15/00 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B23B15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207721
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】倉茂 克典
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FA05
3C045FB05
(57)【要約】
【課題】より確実に、切り離されたワークを受けることができるワーク受け装置及び工作機械を提供する。
【解決手段】棒状のワークWから切り離されたリング状のワークWaを受けるワーク受け装置50は、リング状のワークWaの内側孔に挿通された状態でワークWaを受ける受け部52bと、受け部52bの先端側に位置して突出するように形成され、この突出する方向を上向きとすることにより、受け部52bが受けるワークWaの脱落を防止するように形成される爪部52dと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のワークから切り離されたリング状のワークを受けるワーク受け装置であって、
リング状のワークの内側孔に挿通された状態でワークを受ける受け部と、
前記受け部の先端側に位置して突出するように形成され、この突出する方向を上向きとすることにより、前記受け部が受けるワークの脱落を防止するように形成される爪部と、を備える、
ワーク受け装置。
【請求項2】
前記受け部がワークを受けた状態では前記爪部よりも下側に位置する排出部を備え、
前記排出部は、前記ワーク受け装置が回転されることにより前記爪部よりも上側に位置したときに、前記受け部が受けていたワークを自重により滑り落とすように形成されている、
請求項1に記載のワーク受け装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワーク受け装置と、
ワークを把握しつつ回転可能とする第1主軸ユニットと、
前記ワーク受け装置とともに移動し、前記ワーク受け装置を回転可能とする回転移動体と、を備える、
工作機械。
【請求項4】
前記回転移動体は、前記第1主軸ユニットと対向可能に位置し、ワークを把握しつつ回転可能とする第2主軸ユニットである、
請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第2主軸ユニットは、ワークを把握可能である把握部を備え、
前記ワーク受け装置は、ワークを把握していない前記把握部によって把握可能に形成される被把握部を備える、
請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工作機械は、
前記第2主軸ユニットにより把握されたワークを加工するための工具を保持する工具ユニットと、
前記工具ユニットの近傍に位置し、ワークが排出される被排出部と、
前記第1主軸ユニットに対向する位置、前記第2主軸ユニットにより把握されたワークを前記工具により加工可能な位置、前記第2主軸ユニットにより把握されたワークを前記被排出部に排出可能な位置、及び前記ワーク受け装置が受けるワークを前記被排出部に排出可能な位置の間で、前記第2主軸ユニットを移動させる第2主軸移動機構と、を備える、
請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク受け装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の自動旋盤は、正面主軸と、正面主軸により保持されたワークを切断する(突っ切る)突切りバイトと、背面主軸とともに回転するように背面主軸に取り付けられ、突切りバイトにより切り離されたワークを受け取る旋回シュートと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成において、切り離されたワークがクーラント液に流されたり、ワークが回転しつつ突っ切られるために突っ切り直後に切り離されたワークが飛んだりすることなどが原因で、切り離されたワークが旋回シュートにて受け取れないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、より確実に、切り離されたワークを受けることができるワーク受け装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るワーク受け装置は、棒状のワークから切り離されたリング状のワークを受けるワーク受け装置であって、リング状のワークの内側孔に挿通された状態でワークを受ける受け部と、前記受け部の先端側に位置して突出するように形成され、この突出する方向を上向きとすることにより、前記受け部が受けるワークの脱落を防止するように形成される爪部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記ワーク受け装置と、ワークを把握しつつ回転可能とする第1主軸ユニットと、前記ワーク受け装置とともに移動し、前記ワーク受け装置を回転可能とする回転移動体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より確実に、切り離されたワークを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の部分的に断面で示す概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
【
図4】(A),(B)は本発明の一実施形態に係る突切り加工時の第1と第2主軸及びワーク受け装置等の断面図である。
【
図5】(A),(B)は本発明の一実施形態に係るワーク排出時の第2主軸、ワーク受け装置及びシュートの断面図である。
【
図6】(A)は本発明の一実施形態に係るワーク受け装置の正面図であり、(B)は当該ワーク受け装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るワーク受け装置及び工作機械について図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、工作機械1は、ワークWを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1の各構成を支持する台であるベッドSと、第1主軸ユニット10と、第1主軸移動機構13と、ガイドブッシュレス装置60と、第2主軸ユニット20と、第2主軸移動機構23,24と、第1工具ユニット30と、第1工具移動機構32,33と、第2工具ユニット40と、ワーク受け装置50と、シュート71と、ワークコンベア75と、制御部300と、を備える。
【0011】
第1主軸ユニット10は、円柱状のワークWを把握し、把握したワークWをZ軸方向に沿う回転軸を中心に回転させる。第1主軸ユニット10は、第1主軸11と、第1主軸11を回転可能に支持する第1主軸台15と、を備える。第1主軸台15内には、第1主軸11を回転させるモータ(図示略)が内蔵されている。
【0012】
さらに、
図4(A)に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを把握するコレットチャック11aと、コレットスリーブ11dと、を備える。
コレットチャック11aは、Z軸方向に延び、ワークWの周囲を把握可能に形成され、周方向に複数の部位に分割された略円筒状をなす。コレットチャック11aの先端側(
図4(A)の右側)の外周面には傾斜面11kが形成されている。傾斜面11kは、コレットチャック11aの先端側に進むにつれてコレットチャック11aの径方向外側に向かうように傾斜して形成されている。
【0013】
コレットスリーブ11dは、円筒状をなし、コレットチャック11aの外周側に位置する。コレットスリーブ11dは、エアシリンダ(図示略)の動作により、Z軸方向に進退可能である。コレットスリーブ11dが第2主軸21側に移動することにより、コレットスリーブ11dの先端部が傾斜面11kを径方向内側へ押し込み、コレットチャック11aを縮径させる。コレットチャック11aは、縮径することによりワークWを把握する。反対に、コレットスリーブ11dが第2主軸21から遠ざかる方向に移動することにより、コレットチャック11aが開き、ワークWを把握しない状態となる。
【0014】
図1に示す第2主軸ユニット20は、第1主軸ユニット10にZ軸方向に対向して位置し、ワーク受け装置50を把握し、把握したワーク受け装置50をZ軸方向に沿う回転軸を中心に回転させる。第2主軸ユニット20は、ワーク受け装置50以外にワーク(図示略)を把握して回転させることも可能である。
第2主軸ユニット20は、上述した第1主軸ユニット10と同様に、第2主軸21と、第2主軸21を回転可能に支持する第2主軸台25と、
図4(A)に示すように、ワーク(図示略)又はワーク受け装置50を把握するコレットチャック21aと、コレットチャック21aを縮径又は拡径させるコレットスリーブ21dと、を備える。コレットチャック21aには、上述した傾斜面11kと同様の傾斜面21kが形成されている。
【0015】
図1に示す第1主軸移動機構13は、制御部300による制御のもと、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。
第2主軸移動機構23は、制御部300による制御のもと、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。
図2に示す第2主軸移動機構24は、制御部300による制御のもと、第2主軸移動機構23及び第2主軸ユニット20をX軸方向に移動させる。
【0016】
図1に示すように、ガイドブッシュレス装置60は、第1主軸11の外周側に位置する円筒部61を備える。円筒部61には、Z軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。円筒部61の貫通孔には、第1主軸11の先端側が通過可能に構成されている。
なお、ガイドブッシュレス装置60は、省略されてもよいし、ガイドブッシュレス装置60に代えて各種ガイドブッシュ装置(ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置、静止型ガイドブッシュ装置、ケレ式回転ガイドブッシュ装置、ベルト駆動ガイドブッシュ装置等)が設けられてもよい。
【0017】
第2工具ユニット40は、第2主軸ユニット20により把握されたワーク(図示略)を加工するために使用される。
第2工具ユニット40は、複数の工具41と、複数の工具41が装着可能な刃物台43と、を備える。工具41は、Z軸方向に沿って延びる回転工具及び固定工具等からなる。複数の工具41は、第2主軸21と同じ高さで、X軸方向に並ぶように刃物台43に装着可能である。第2工具ユニット40は、第1主軸ユニット10に対向して位置する第2主軸ユニット20の側方であり、第2主軸ユニット20よりも正面側(X軸方向の作業者Uに近い側)に位置する。
【0018】
図3に示す第1工具ユニット30は、第1又は第2主軸ユニット10,20(主に第1主軸ユニット10)により把握されたワークWを加工するときに使用される。第1工具ユニット30は、工具台34と、クロスドリル装置80と、工具31,35,37と、を備える。
【0019】
第1工具移動機構33は、制御部300による制御のもと、工具台34をY軸方向に移動させる。第1工具移動機構32は、制御部300による制御のもと、工具台34をX軸方向に移動させる。
【0020】
工具台34は、第1主軸ユニット10により把握されたワークWの外周を囲む枠状に形成されている。工具台34にはクロスドリル装置80と固定工具である工具31,37が固定されている。クロスドリル装置80には、X軸方向に沿う向きで回転工具である複数の工具35がY軸方向に並ぶように装着されている。
【0021】
複数の工具31は、それぞれバイト等の固定工具であり、X軸方向に沿って延び、Y軸方向に並べられている。複数の工具31の一つは突切り工具31tである。
図1に示す複数の工具37は、Z軸方向に沿って延びる穴開けドリル等の固定工具であり、第1主軸ユニット10により把握されたワークWの端面を加工するために使用される。
【0022】
図2に示すように、シュート71は、ベッドSの上面のうち工具41の近傍に位置する。シュート71は、工具41の側方であり、工具41よりも正面側(X軸方向の作業者Uに近い側)に位置する。シュート71は、ワーク受け装置50から排出されたワークWaをワークコンベア75に導くように形成されている。
図2と
図3に示すように、シュート71は、上側に開口する開口部71aと、ワークコンベア75に向けて開口する開口部71bと、を有する。開口部71aは、開口部71bに対して、Y軸方向の上側で、かつ、X軸方向の工具41側に位置する。
図5(A)に示すように、シュート71は、Z方向に対面する2つの壁部72,73を備える。壁部72は、切り欠き部72aを有する。切り欠き部72aは、ワークWaを排出する際にワーク受け装置50が位置するように形成されている。
【0023】
図2に示すように、ワークコンベア75は、第2主軸移動機構23,24の側方であり、第2主軸移動機構23,24よりも正面側(X軸方向の作業者Uに近い側)に位置する。ワークコンベア75は、シュート71からのワークWaをZ軸方向に運び、ワークWaを機外に排出する。
【0024】
図4(A),(B)に示すワーク受け装置50は、突切り工具31tにより切断されたリング状のワークWaを受けて、受けたワークWaをシュート71へ搬送するために用いられる。
ワーク受け装置50は、コレットチャック21aにより把握される被把握部51と、リング状のワークWaが引っ掛けられることによりワークWaを受けるフック部52と、を備える。ワーク受け装置50は円柱状の素材から切削により削り出される。このため、被把握部51とフック部52は一体形成されている。
被把握部51は、円柱状に形成されている。
フック部52は被把握部51の端面に位置する。
図6(A),(B)に示すフック部52は、受け部52bと、爪部52dと、排出部52cと、を備える。
【0025】
受け部52bは、ワークWaの内周部が接触することによりワークWaを受けることができる受け面52b1を有する。受け面52b1は、ワークWaを受けた状態では、水平面に沿い、かつ上側を向くように形成されている。
爪部52dは、ワーク受け装置50の先端側に位置し、受け面52b1に対して直交するように突出する。爪部52dは、
図6(B)に示すように、受け面52b1が受けたワークWaとの接触を通じてワークWaの脱落を防止する。爪部52dは、ワーク受け装置50の中心軸Jに沿う方向から見て略半円状をなす。
【0026】
排出部52cは、受け面52b1の裏側に位置し、排出部52cの厚さ方向から見て略直角三角形状をなす。排出部52cと受け部52bは、ワーク受け装置50の中心軸Jに沿う方向から見て略T字状をなしている。
排出部52cは、
図6(B)に示すように、ワークWaを滑り落とすための傾斜面52c1を備える。傾斜面52c1は、ワーク受け装置50の中心軸Jを通過しつつ中心軸Jに対して傾斜して形成されている。傾斜面52c1は、ワーク受け装置50を中心軸J周りに回転させることにより、
図5(B)に示すように、爪部52dよりも上側に位置することが可能となる。これにより、受け部52bが受けていたワークWaの内周面Wiが傾斜面52c1に接触した状態となり、ワークWaが傾斜面52c1に沿って自重により滑り落ち、フック部52の先端側からワークWaが落下する。
また、工作機械1は、各工具31,35,37,41によるワークの加工点(工具31,35,37,41の先端とワークの接触点)にクーラント液を供給するクーラント供給部(図示略)を備える。
なお、このクーラント供給部は省略されてもよい。
【0027】
図1に示す制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御する。制御部300は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等からなる。制御部300は、予め設定されたNCプログラムに沿って加工処理を実行する。
【0028】
次に、薄肉リング状のワークWaを加工するための加工処理について説明する。ワークWaの厚さは約0.5mm、ワークWaの外径は約28mm、ワークWaの内径は約15mmである。この加工処理では、第2主軸ユニット20のコレットチャック21aがワーク受け装置50を把握した状態とされている。
【0029】
まず、制御部300は、棒材であるワークWを第1主軸ユニット10にて把握し、把握したワークWに対して第1工具ユニット30の工具31,35,37から選択された工具を使用して加工を行う。この加工は、工具37を使用してワークWの端面に穴Wh(
図4(B)参照)を開ける加工を含む。穴Whは、ワークWaの内径となる。
【0030】
この加工が完了すると、次に、制御部300は、
図4(A),(B)に示すように、第2主軸移動機構23,24を介してワーク受け装置50の爪部52dをワークWの穴Wh内に進入させ、第2主軸21の回転角度を調整して爪部52dを上向きとする。このとき、ワーク受け装置50の中心軸Jは、ワークWの回転軸上に位置する。
【0031】
そして、制御部300は、突切り工具31tによりワークWからリング状のワークWaを切り離す突切り加工を行う。
この突切り加工について詳述する。
制御部300は、まず、第1工具移動機構33を介して突切り工具31tの刃先をY軸方向においてワークWの中心軸と同じ高さとする。そして、第1主軸11とともにワークWを回転させつつ、
図4(B)の矢印Ar1で示すように、突切り工具31tの刃先がワークWの外周面からワークWの穴Wh内に到達するまで第1工具移動機構32を介して工具台34を移動させる。これにより、ワークWaの内側孔にワーク受け装置50のフック部52が挿入された状態で、棒材であるワークWから薄肉リング状のワークWaが切り離される。このワークWaが切り離された直後に、ワークWaがワークWの回転力の影響を受けても、ワークWaの内周面Wiがフック部52に当たる。また、ワークWaのZ軸方向の両側に位置する被把握部51とワークWそれぞれの外径は、ワークWaの内径よりも大きい。このため、ワークWの回転力の影響を受けてもワークWaは、被把握部51とワークWの間に維持され、ワークWaがフック部52から外れない。よって、ワークWaの内周面Wi(
図6(A)参照)の2点P1,P2が受け面52b1の両縁部に接触したワーク受け状態となる。このワーク受け状態で、制御部300は、第2主軸移動機構23,24を介して、ワーク受け装置50がワークWaとともにシュート71の開口部71aの直上に位置するように第2主軸ユニット20を移動させる。このワーク受け装置50の移動時には、ワークWaが受け面52b1上をZ軸方向に移動し得るが、爪部52dがワークWaのワーク受け装置50の先端部からの脱落を防止する。
なお、
図4(A),(B)では、爪部52dと突切り工具31tを同時に図示する便宜上、突切り工具31tの刃先は、Y軸方向からワークWに入るように図示されているが、実際には、X軸方向からワークWに入る。
【0032】
そして、制御部300は、
図5(A),(B)に示すように、シュート71の切り欠き部72a内に被把握部51を位置させ、かつ、シュート71内にワークWaを受けたフック部52を位置させる。この状態で、矢印Ar2で示すように、傾斜面52c1が爪部52dよりも上側に位置するように、第2主軸21を180°回転させることにより、ワーク受け装置50を180°回転させる。これにより、矢印Ar3で示すように、ワークWaの内周面が傾斜面52c1に沿って滑り落ち、ワークWaがフック部52からシュート71内に落下する。そして、ワークWaは、シュート71を通ってワークコンベア75に到達する。ワークコンベア75はワークWaを外部へ排出する。
以上で、加工処理が終了となる。この加工処理は繰り返し実行可能である。
【0033】
上記の加工処理では、第2主軸ユニット20は、把握したワーク受け装置50を介して、棒材であるワークWから切り離された薄肉リング状のワークWaを受けて排出していたが、第2主軸ユニット20は、これ以外の用途を有していてもよい。即ち、第2主軸ユニット20は、ワーク(図示略)を把握し、把握したワークについて第2工具ユニット40の工具41を使用して加工を行ってもよい。この加工処理について以下に説明する。
制御部300は、第1主軸ユニット10が把握したワークの加工完了後に、第2主軸ユニット20(コレットチャック21a)にてワークの端部を把握する。第1と第2主軸ユニット10,20が1つのワークを同時に把握しつつ回転させた状態で、突切り工具31tの刃先をワークの外周面からワークの中心軸を超える位置まで到達させる。これにより、切り離されたワークが第2主軸ユニット20により単独で把握された状態となる。制御部300は、第2主軸ユニット20を移動させ、第2主軸ユニット20で把握したワークに対して第2工具ユニット40の工具41を使用して加工を行う。この加工が完了すると、制御部300は、ワークがシュート71の開口部71aの直上の位置するように第2主軸ユニット20を移動させ、その後、第2主軸ユニット20によるワークの把握を解除したうえで第2主軸ユニット20の後部に取り付けられた図示しない排出装置のプッシャによりワークを前進させて、ワークをシュート71に落下させる。そして、ワークは、シュート71を通ってワークコンベア75に到達する。ワークコンベア75はワークを外部へ排出する。
以上のように、第2主軸ユニット20は、ワーク受け装置50を把握した状態でワーク受け装置50の回転と移動を可能とする機能以外に、ワークを把握して当該ワークに加工を行ったうえでシュート71へ排出する機能も有している。
【0034】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)棒状のワークWから切り離されたリング状のワークWaを受けるワーク受け装置50は、リング状のワークWaの内側孔に挿通された状態でワークWaを受ける受け部52bと、受け部52bの先端側に位置して突出するように形成され、この突出する方向を上向きとすることにより、受け部52bが受けるワークWaの脱落を防止するように形成される爪部52dと、を備える。
上記特許文献1に記載の構成では、正面主軸に把握されるワークを突切りバイトにより切り離したとき、クーラント液又はワークWの回転力の影響により、切り離されたワークが背面主軸に把握される旋回シュートに収まらないおそれがある。この問題は、特に、切り離されたワークが軽量である場合に顕著となる。
この点、上記(1)の構成によれば、ワークWaが切り離されるときには、受け部52bがワークWaの内側孔に挿通された状態にあるため、軽量のワークWaであっても、ワークWaが受け部52bから外れずに、ワーク受け装置50がワークWaを確実に受けることができる。また、爪部52dによりワークWaが運ばれる際に、ワークWaが受け部52bから外れずに、ワーク受け装置50がワークWaを確実に受けることができる。
【0035】
(2)ワーク受け装置50は、受け部52bがワークWaを受けた状態では爪部52dよりも下側に位置する排出部52cを備える。排出部52cは、ワーク受け装置50が回転されることにより爪部52dよりも上側に位置したときに、受け部52bが受けていたワークWaを自重により滑り落とすように形成されている。
この構成によれば、ワーク受け装置50がワークWaを受けた状態から、ワーク受け装置50が回転することにより、排出部52cを介してワークWaを簡単に排出することが可能となる。
【0036】
(3)工作機械1は、ワーク受け装置50と、ワークWを把握しつつ回転可能とする第1主軸ユニット10と、ワーク受け装置50とともに移動し、ワーク受け装置50を回転可能とする回転移動体(第2主軸ユニット20)と、を備える。
この構成によれば、ワーク受け装置50を回転させることにより、ワークWaの受け取りと排出を簡単に行うことができる。
【0037】
(4)上記回転移動体は、第1主軸ユニット10と対向可能に位置し、ワークを把握しつつ回転可能とする第2主軸ユニット20である。
この構成によれば、ワーク受け装置50を移動させる回転移動体を第2主軸ユニット20とは別に新たに設ける必要がないため、工作機械1の構成をより簡易とすることができる。
【0038】
(5)第2主軸ユニット20は、ワークを把握可能である把握部の一例であるコレットチャック21aを備える。ワーク受け装置50は、ワークを把握していないコレットチャック21aによって把握可能に形成される被把握部51を備える。
この構成によれば、ワーク受け装置50が第2主軸ユニット20に着脱可能となる。よって、コレットチャック21aがワークを把握してワークの加工が行われてもよいし、コレットチャック21aが被把握部51を把握してワーク受け装置50にてワークWaを受け取ってもよい。このように、第2主軸ユニット20の用途を増やすことができる。また、回転移動体を第2主軸ユニット20とは別に新たに設ける必要がないため、工作機械1の構成をより簡易とすることができる。
【0039】
(6)工作機械1は、第2主軸ユニット20により把握されたワークを加工するための工具41を保持する第2工具ユニット40と、第2工具ユニット40の近傍に位置し、ワークが排出される被排出部の一例であるシュート71と、第1主軸ユニット10に対向する位置、第2主軸ユニット20により把握されたワークを工具41により加工可能な位置、第2主軸ユニット20により把握されたワークをシュート71に排出可能な位置、及びワーク受け装置50が受けるワークWaをシュート71に排出可能な位置の間で、第2主軸ユニット20を移動させる第2主軸移動機構23,24と、を備える。
この構成によれば、第2主軸ユニット20は、把握したワークを工具41により加工した後に、移動してワークをシュート71に排出可能である。このように、第2主軸ユニット20が移動することにより、ワークの排出が可能となるため、別のワーク排出用の移動機構を設ける必要がない。
【0040】
(変形例)
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0041】
上記実施形態においては、刃物台43は、ベッドSに対して移動不能に設けられていたが、X、Y及びZ軸方向のうち一軸以上の方向に移動可能に構成されてもよい。
上記実施形態においては、ワーク受け装置50は、第2主軸ユニット20により把握可能に構成されていたが、第2主軸ユニット20に把握されていなくてもよく、例えば、第2主軸台25に取り付けられていてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、第2主軸ユニット20は、回転移動体として、ワーク受け装置50とともに移動していたが、第2主軸ユニット20以外の独立した回転移動体が設けられ、この回転移動体がワーク受け装置50とともに移動してもよい。この場合、第2主軸ユニット20は省略されてもよい。
【0043】
受け面52b1、傾斜面52c1又は爪部52dの形状は適宜変更可能である。例えば、受け面52b1にワークWaが嵌まる凹部が形成されていてもよいし、受け面52b1はワークWaの内周面に沿う曲面状をなしていてもよい。また、傾斜面52c1は、平面状に限らず、曲面状に形成されていてもよい。さらに、傾斜面52c1は、面状に限らず、線状で形成されていてもよい。
また、爪部52dは、板状に限らず、ピン状に形成されてもよい。
【0044】
上記実施形態におけるフック部52の排出部52cは省略可能である。この場合、フック部52が受け取ったワークWaは、その他の手段、例えば、ロボットハンド等により排出されてもよい。
ワークWaの厚さ、外径及び内径は、上記実施形態に限らず、適宜変更可能である。
被把握部51とフック部52は、一体形成されていたが、これに限らず、別体で形成されていてもよい。
被把握部51は、円柱状に限らず、四角柱、六角柱等の多角柱状で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、11a,21a…コレットチャック、11d,21d…コレットスリーブ、11k,21k…傾斜面、13…第1主軸移動機構、15…第1主軸台、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、23,24…第2主軸移動機構、25…第2主軸台、30…第1工具ユニット、31,35,37,41…工具、31t…突切り工具、32,33…第1工具移動機構、34…工具台、40…第2工具ユニット、43…刃物台、50…ワーク受け装置、51…被把握部、52…フック部、52b…受け部、52b1…受け面、52d…爪部、52c…排出部、52c1…傾斜面、60…ガイドブッシュレス装置、61…円筒部、71…シュート、71a,71b…開口部、72,73…壁部、72a…切り欠き部、75…ワークコンベア、80…クロスドリル装置、300…制御部、J…中心軸、S…ベッド、W,Wa…ワーク、Wh…穴、Wi…内周面