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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092081
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20240701BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F01M13/00 K
F02D45/00 345
F02D45/00 364D
F01M13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207757
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴司
(72)【発明者】
【氏名】福家 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】前原 創
(72)【発明者】
【氏名】山下 晋平
【テーマコード(参考)】
3G015
3G384
【Fターム(参考)】
3G015AA13
3G015BD01
3G015BD13
3G015BD25
3G015BD28
3G015DA02
3G015DA04
3G015EA03
3G015FB02
3G384AA01
3G384BA42
3G384DA44
(57)【要約】
【課題】クランクケース内の圧力を所定の圧力範囲内に調整する。
【解決手段】ECM8は、クランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1未満の場合、制御弁16を開弁してクランクケース19内に吸気通路3内の空気を導入可能な状態とする。また、ECM8は、クランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1以上の場合、制御弁16を閉弁して吸気通路3にクランクケース19内のブローバイガスが導入しない状態とする。ただし、クランクケース19内の圧力が過度に上昇するとクランクケース19内の圧力の影響を受ける部品が悪影響を受ける虞があるので、ECM8は、クランクケース19内の圧力が所定の第2圧力閾値P2以上の場合、制御弁16を開弁してクランクケース19内の圧力を吸気通路3に逃がせる状態とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、過給機を有する内燃機関と、上記過給機の下流側に位置して上記内燃機関の吸入空気量を制御する第1吸気絞り弁と、上記第1吸気絞り弁の上流側に位置する第2吸気絞り弁と、上記内燃機関の吸気通路に接続されたブローバイガス処理用のブローバイガス還流システムと、上記内燃機関のクランクケース内の圧力を検出可能な圧力センサと、を備えた車両の制御方法において、
上記ブローバイガス還流システムは、上記第2吸気絞り弁の上流側から上記クランクケース内に新気を導入可能な第1通路と、上記第2吸気絞り弁の下流側の上記吸気通路にブローバイガスを導入可能な第2通路と、上記第1通路の新気の流れを制御する新気制御弁と、上記第2通路のブローバイガスの流れを制御するブローバイガス制御弁と、を有し、
上記クランクケース内の圧力が予め設定された所定の第1圧力閾値以上となり、上記第1圧力閾値よりも高い予め設定された所定の第2圧力閾値未満となる場合には、上記新気制御弁を閉弁し、上記クランクケース内の圧力が上記第2圧力閾値以上の場合には、上記新気制御弁を開弁することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
上記内燃機関の停止時に上記クランクケースの圧力が上記第1圧力閾値以上の場合には、上記新気制御弁を閉弁することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
上記内燃機関の停止時に上記クランクケースの圧力が上記第1圧力閾値未満の場合には、上記新気制御弁を開弁することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
上記圧力センサが故障の場合は、上記新気制御弁を開弁することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
車両に搭載され、過給機を有する内燃機関と、上記過給機の下流側に位置して上記内燃機関の吸入空気量を制御する第1吸気絞り弁と、上記第1吸気絞り弁の上流側に位置する第2吸気絞り弁と、上記内燃機関の吸気通路に接続されたブローバイガス処理用のブローバイガス還流システムと、上記内燃機関のクランクケース内の圧力を検出可能な圧力センサと、制御部と、を備えた車両の制御装置において、
上記ブローバイガス還流システムは、上記第2吸気絞り弁の上流側から上記クランクケース内に新気を導入可能な第1通路と、上記第2吸気絞り弁の下流側の上記吸気通路にブローバイガスを導入可能な第2通路と、上記第1通路の新気の流れを制御する新気制御弁と、上記第2通路のブローバイガスの流れを制御するブローバイガス制御弁と、を有し、
上記制御部は、上記クランクケース内の圧力が予め設定された所定の第1圧力閾値以上となり、上記第1圧力閾値よりも高い予め設定された所定の第2圧力閾値未満となる場合には上記新気制御弁を閉弁させ、上記クランクケース内の圧力が上記第2圧力閾値以上の場合には上記新気制御弁を開弁させることを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内燃機関のクランク室内の圧力が所定の圧力範囲内に調整されるように、スロットルバルブより上流の吸気通路とシリンダヘッド内とを連通する新気導入通路に設けられた開閉弁の開度を制御する技術が開示されている。特許文献1の内燃機関は、クランク室内がスカベンジポンプによって減圧されている。
【0003】
そのため、特許文献1の内燃機関は、クランク室内の圧力が所定値以上になると上記開閉弁を閉じ側に変更することで、クランク室に導かれる新気の量を減少させ、クランク室内の圧力を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-64071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、クランク室内の圧力は、クランク室内の温度やクランク室内のオイルミストの発生状況等によっても左右される。クランク室内の温度やクランク室内のオイルミストの発生状況等は、内燃機関の運転状況に応じて変化する。
【0006】
そのため、特許文献1の内燃機関は、運転状況によりクランク室内の圧力が大きく上昇した場合、上記開閉弁を閉じ側に制御してもクランク室内の圧力が十分に低下しない虞がある。特に、特許文献1の内燃機関が過給機を有するような場合、過給領域においてクランク室内の圧力が大きく上昇すると、クランク室内の圧力が過度に高い状態となる虞がある。
【0007】
内燃機関は、クランク室内の圧力が過度に高くなると、クランク室内の圧力の影響を受ける部品が悪影響を受ける虞がある。
【0008】
すなわち、内燃機関は、クランク室内の圧力を所定の圧力範囲内に調整されるように制御するにあたっては、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
車両は、第2吸気絞り弁の上流側からクランクケース内に新気を導入可能な第1通路を備えるブローバイガス還流システムを備え、上記クランクケース内の圧力が予め設定された所定の第1圧力閾値以上となり、上記第1圧力閾値よりも高い予め設定された所定の第2圧力閾値未満となる場合には、上記第1通路の新気の流れを制御する新気制御弁を閉弁し、上記クランクケース内の圧力が上記第2圧力閾値以上の場合には、上記新気制御弁を開弁することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
車両は、クランクケース内に圧力が第2圧力閾値以上の場合、新気制御弁を開弁してクランクケース内の圧力を低下させるので、クランクケース内の圧力の影響を受ける部品への悪影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】内燃機関のシステム構成の概略を模式的に示した説明図。
図2】クランクケース内の圧力変化と制御弁の開閉状態の相関の一例を示すタイミングチャート。
図3】圧力センサの出力値と、圧力センサの出力値から換算されるクランクケース内の圧力値と、圧力センサの故障判定結果と、を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る車両に搭載される内燃機関1のシステム構成の概略を模式的に示した説明図である。
【0013】
内燃機関1は、例えば多気筒の火花点火式ガソリン機関である。内燃機関1の各気筒には、吸気マニホールド2を介して吸気通路3が接続されている。
【0014】
吸気通路3には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ4と、吸入空気量を検出するエアフローメータ5と、電動のスロットル弁6と、スロットル弁6の上流側に位置する電動の圧力制御弁7と、が設けられている。
【0015】
エアフローメータ5は、吸入空気量検出センサに相当するものであり、圧力制御弁7の上流側に配置されている。エアフローメータ5は、温度センサを内蔵したものであって、吸気導入口の吸気温度を検出可能となっている。
【0016】
エアクリーナ4は、エアフローメータ5の上流側に配置されている。
【0017】
スロットル弁6は、第1吸気絞り弁に相当するものであり、負荷に応じて内燃機関1の吸入空気量を制御する。圧力制御弁7は、第2吸気絞り弁に相当するものであって、後述するコンプレッサ9の上流側における吸気圧力を制御する。つまり、圧力制御弁7は、スロットル弁6の上流側に負圧を生成することが可能なものである。
【0018】
スロットル弁6及び圧力制御弁7は、制御部としてのエンジンコントロールモジュール(ECM)8からの制御信号により開度を変更(制御)可能となっている。
【0019】
また、この内燃機関1は、ターボ過給機を有している。ターボ過給機は、吸気通路3に設けられたコンプレッサ9と、図示せぬ排気通路に設けられた図示せぬタービンと、を有している。コンプレッサ9と上記タービンは、同軸上に配置され、一体となって回転する。コンプレッサ9は、スロットル弁6の上流側となり、圧力制御弁7よりも下流側となる位置に配置されている。
【0020】
吸気通路3には、スロットル弁6の上流側にインタークーラ10が設けられている。インタークーラ10は、コンプレッサ9の下流側に位置し、コンプレッサ9により圧縮(加圧)された吸気を冷却して充填効率を良くするために設けられている。
【0021】
吸気通路3には、ブローバイガスを吸気通路3に導入して処理するブローバイガス処理用のブローバイガス還流システム11が接続されている。ブローバイガス還流システム11は、吸気通路3におけるエアフローメータ5よりも下流側の位置に接続された複数の配管を利用して構成されるものである。
【0022】
ブローバイガス還流システム11は、図1に示すように、第1配管12、第2配管13、第3配管14、逆止弁15、制御弁16及びPCVバルブ17を有している。ブローバイガスは、シリンダとピストンの隙間を通って、内燃機関1の燃焼室18から内燃機関1のクランクケース19に漏れ出した燃焼ガスである。
【0023】
第1配管12は、第2通路に相当するものであり、吸気通路3おけるスロットル弁6と圧力制御弁7との間の位置と内燃機関1のクランクケース19とを接続する(連通させる)ものである。第1配管12は、一端が吸気通路3おけるスロットル弁6と圧力制御弁7との間の位置に接続され、他端が逆止弁15を介して内燃機関1に接続されている。詳述すると、第1配管12は、一端が吸気通路3におけるコンプレッサ9と圧力制御弁7との間の位置に接続されている。第1配管12は、クランクケース19内のブローバイガスを吸気通路3に導入可能なものである。
【0024】
逆止弁15は、ブローバイガス制御弁に相当するものであり、クランクケース19から吸気通路3へ向かう方向の流れを許容しつつ、吸気通路3からクランクケース19へ向かう方向の流れを禁止する機能を有している。
【0025】
第2配管13は、第1通路に相当するものであり、吸気通路3における圧力制御弁7とエアフローメータ5との間の位置と内燃機関1のクランクケース19とを接続する(連通させる)ものである。第2配管13は、一端が吸気通路3における圧力制御弁7とエアフローメータ5との間の位置に制御弁16を介して接続され、他端が内燃機関1に接続されている。第2配管13は、内燃機関1のクランクケース19に空気(新気)を導入可能なものである。
【0026】
制御弁16は、新気制御弁に相当するものであって、第2配管13内の空気(新気)の流れを制御する機能を有している。制御弁16は、第2配管13の一端を開閉可能に配置され、ECM8からの制御信号により開度を変更(制御)可能となっている。制御弁16は、クランクケース19内の圧力が大気圧以下の場合、開弁することによって吸気通路3から第2配管13を介してクランクケース19内へ空気(新気)を導入する。制御弁16は、第2配管13の一端と吸気通路3との間に位置し、第2配管13の一端及び吸気通路3に対して取り付けられている。
【0027】
第3配管14は、第2通路に相当するものであり、吸気通路3におけるスロットル弁6よりも下流側の位置と、内燃機関1のクランクケース19とを接続する(連通させる)ものである。第3配管14は、一端が吸気通路3におけるスロットル弁6よりも下流側の位置に接続され、他端がPCVバルブ17を介して内燃機関1に接続されている。第3配管14は、クランクケース19内のブローバイガスを吸気通路3に導入可能なものである。
【0028】
PCVバルブ17は、ブローバイガス制御弁に相当するものであり、第3配管14内のガスの流量を制御するものである。PCVバルブ17は、例えば周知の差圧作動弁であり、内燃機関1に取り付けられ、クランクケース19側の入口部の圧力と、吸気通路3側の出口部の圧力と、の差圧が大きいときに開くように作動する。詳述すると、PCVバルブ17は、第3配管14を通して吸気通路3からクランクケース19内部へ空気(新気)が逆流することを防ぎつつ、差圧に応じてクランクケース19から吸気通路3へブローバイガスを排出させるものである。つまり、PCVバルブ17は、スロットル弁6よりも下流側の圧力を利用して、ブローバイガスを吸気通路3に戻すことが可能である。
【0029】
このように、ブローバイガス還流システム11は、吸気通路3から内燃機関1のクランクケース19への新気の導入及びクランクケース19から吸気通路3へのブローバイガスの導入を実施可能なものである。
【0030】
ECM8は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。ECM8には、上述したエアフローメータ5の検出信号のほか、クランクケース19内の圧力を検出する圧力センサ20の各種センサ類の検出信号が入力されている。ECM8は、各種センサ類の検出信号に基づいて、内燃機関1の運転を制御している。
【0031】
クランクケース19内のブローバイガスは、クランクケース19内の圧力と、圧力制御弁7の開度に応じて決まる圧力制御弁7下流側の圧力と、の関係性に応じて第1配管12を介して吸気通路3に導入可能となる。
【0032】
クランクケース19内のブローバイガスは、クランクケース19内の圧力と、スロットル弁6の下流側の圧力と、の関係性に応じて第3配管14を介して吸気通路3に導入可能となる。なお、内燃機関1の運転領域が過給を行う過給領域では、コンプレッサ9下流側の吸気圧力が高くなりPCVバルブ17が開弁せず、第3配管14を介してブローバイガスを吸気通路3に戻すことが困難となる。
【0033】
ここで、内燃機関1は、クランクケース19内の圧力が過度に上昇すると、クランクケース19内の圧力の影響を受ける部品が悪影響を受ける虞がある。クランクケース19内の圧力が高くなると、例えば、ガスケットやオイルシール等からオイルがリークする可能性がある。
【0034】
クランクケース19内の圧力は、クランクケース19内の温度やクランクケース19内のオイルミストの発生状況等によっても左右される。クランクケース19内の温度やクランクケース19内のオイルミストの発生状況等は、内燃機関1の運転状況に応じて変化する。
【0035】
また、内燃機関1は、クランクケース19内の圧力が大気圧よりも高い状態で制御弁16が開弁していると、クランクケース19内のブローバイガスが第2配管13を介して吸気通路3に流入(逆流)することになる。この場合、エアフローメータ5がブローバイガス中のオイル等により汚損され、出力特性が変化してしまう虞がある。
【0036】
そこで、ECM8は、クランクケース19内の圧力が大気圧相当の値である所定の第1圧力閾値P1未満の場合、制御弁16を開弁して第2配管13を介してクランクケース19内に吸気通路3内の空気(新気)を導入可能な状態とする。第1圧力閾値P1は、例えば大気圧である。また、ECM8は、クランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1以上の場合、制御弁16を閉弁して第2配管13を介して吸気通路3にクランクケース19内のブローバイガスが導入しない状態とする。ただし、クランクケース19内の圧力が過度に上昇するとクランクケース19内の圧力の影響を受ける部品が悪影響を受ける虞があるので、ECM8は、クランクケース19内の圧力が所定の第2圧力閾値P2以上の場合、制御弁16を開弁して第2配管13を介してクランクケース19内の圧力を吸気通路3に逃がせる状態とする。第2圧力閾値P2は、例えば、クランクケース19内の圧力の影響を受ける部品が悪影響を受けるような圧力値であり、少なくとも第1圧力閾値P1よりも高い値に設定される。
【0037】
つまり、制御部としてのECM8は、クランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1以上となり第2圧力閾値P2未満となる場合に制御弁16を閉弁させ、クランクケース19内の圧力が第2圧力閾値P2以上の場合に制御弁16を開弁させる。
【0038】
図2は、クランクケース19内の圧力変化と制御弁16の開閉状態の相関の一例を示すタイミングチャートである。
【0039】
時刻t1は、クランクケース19内の圧力が上昇して第1圧力閾値P1に到達したタイミングである。制御弁16は、時刻t1のタイミングで開弁状態から閉弁状態に切り替えられる。
【0040】
時刻t2は、クランクケース19内の圧力がさらに上昇して第2圧力閾値P2に到達したタイミングである。制御弁16は、時刻t2のタイミングで閉弁状態から開弁状態に切り替えられる。
【0041】
時刻t3は、クランクケース19内の圧力が低下して第2圧力閾値P2に到達したタイミングである。制御弁16は、時刻t3のタイミングで開弁状態から閉弁状態に切り替えられる。
【0042】
時刻t4は、クランクケース19内の圧力がさらに低下して第1圧力閾値P1に到達したタイミングである。制御弁16は、時刻t4のタイミングで閉弁状態から開弁状態に切り替えられる。
【0043】
時刻t5は、クランクケース19内の圧力がさらに低下して第1圧力閾値P1よりも低い所定に低圧側故障判定閾値P3に到達したタイミングである。低圧側故障判定閾値P3は、圧力センサ20の故障判定の際に用いる閾値である。圧力センサ20は、時刻t5のタイミングで故障と判定される。車両は、トリップ中に圧力センサ20が故障していると判定した場合、当該トリップ中は制御弁16を開弁状態に制御する。なお、次回のトリップの開始時には、前回の故障判定の結果はキャンセルしてもよい。
【0044】
図2の時刻t1以前の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を開弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより第1圧力閾値P1以下となっている。
【0045】
図2の時刻t1~時刻t2の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を閉弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより上昇している。
【0046】
図2の時刻t2~時刻t3の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を開弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより上昇傾向から下降傾向へと変化して極大値をとる。
【0047】
図2の時刻t3~時刻t4の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を閉弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより下降している。
【0048】
図2の時刻t4~時刻t5の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を開弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより第1圧力閾値P1以下となっている。
【0049】
図2の時刻t5以降の期間において、クランクケース19内の圧力は、制御弁16を開弁している影響とこのときの内燃機関1の運転状況の影響とにより第1圧力閾値P1以下となっている。なお、クランクケース19内の圧力は、図2の時刻t5のタイミングで低圧側故障判定閾値P3となっている。そのため、圧力センサ20は、図2の時刻t5のタイミングで故障と判定される。
【0050】
圧力センサ20の故障は、図3に示すように、圧力センサ20の出力値を用いて判定可能となっている。
【0051】
図3は、圧力センサ20の出力値と、圧力センサ20の出力値から換算されるクランクケース19内の圧力値と、圧力センサ20の故障判定結果と、を模式的に示した説明図である。
【0052】
ECM8は、圧力センサ20の出力値から換算されるクランクケース19内の圧力が低圧側故障判定閾値P3以下の場合や、圧力センサ20の出力値から換算されるクランクケース19内の圧力が高圧側故障判定閾値P4以上の場合、圧力センサ20が故障したものと判定する。 高圧側故障判定閾値P4は、第2圧力閾値P2よりも高い値となっている。ECM8は、圧力センサ20の出力値から換算されるクランクケース19内の圧力が低圧側故障判定閾値P3よりも高く、高圧側故障判定閾値P4よりも低い場合、圧力センサ20が故障していないと判定する。
【0053】
上述した実施例の車両は、クランクケース19内の圧力が大気圧よりも高いものの第2圧力閾値P2未満の場合、制御弁16を閉弁してクランクケース19内のブローバイガスが吸気通路3に流入(逆流)しないようにできるため、ブローバイガス中のオイル等によりエアフローメータ5が汚損されることを抑制することができる。
【0054】
さらに、車両は、クランクケース19内に圧力が第2圧力閾値P2以上の場合、制御弁16を開弁してクランクケース19内の圧力を低下させるので、クランクケース19内の圧力の影響を受ける部品への悪影響を低減することができる。具体的には、車両は、クランクケース19内の圧力が過度に高くなることを回避することができるので、クランクケース19内の圧力によりガスケットやオイルシール等からオイルがリークすることを抑制することができる。
【0055】
すなわち、車両は、クランクケース19内の温度やオイルミストの発生状況等によってクランクケース19内の圧力が大きく上昇するような場合にも、クランクケース19内の圧力を適正な圧力範囲内に制御することができる。
【0056】
また、車両は、圧力センサ20が故障の場合、制御弁16を開弁する。圧力センサ20が故障した場合には、クランクケース19内の圧力が監視できない。圧力センサ20が故障した場合には、制御弁16を開弁することで、クランクケース19内の圧力が第2圧力閾値P2を超えてしまうことを防止することができる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、車両は、内燃機関1の停止時にクランクケース19の圧力が第1圧力閾値P1以上の場合、制御弁16を閉弁してもよい。
【0059】
これにより、車両は、内燃機関1の停止時にクランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1以上の場合、制御弁16が閉弁されるので、制御弁16が吸気通路3から脱落したとしても第2配管13の一端(端部)が制御弁16により閉じられた状態となり、ブローバイガスが外部に流出することを抑制することができる。
【0060】
また、車両は、内燃機関1の停止時にクランクケース19の圧力が第1圧力閾値P1未満の場合は、制御弁16を開弁してもよい。
【0061】
これにより、車両は、内燃機関1の停止時にクランクケース19内の圧力が第1圧力閾値P1未満の場合、制御弁16が開弁されるので、クランクケース19内の圧力を正常状態に戻すことが可能となる。
【0062】
上述した実施例は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0063】
1…内燃機関
2…吸気マニホールド
3…吸気通路
4…エアクリーナ
5…エアフローメータ
6…スロットル弁(第1吸入空気量制御弁)
7…圧力制御弁(第2吸入空気量制御弁)
8…ECM
9…コンプレッサ
10…インタークーラ
11…ブローバイガス還流システム
12…第1配管
13…第2配管
14…第3配管
15…逆止弁
16…制御弁
17…PCVバルブ
18…燃焼室
19…クランクケース
20…圧力センサ
図1
図2
図3