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特開2024-92085V字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法
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  • 特開-V字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092085
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】V字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 13/10 20060101AFI20240701BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20240701BHJP
   F16L 55/10 20060101ALI20240701BHJP
   F17D 1/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F16K13/10 A
F23K5/00 301C
F23K5/00 304
F16L55/10
F17D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207761
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 香於里
(72)【発明者】
【氏名】川畑 聡志
(72)【発明者】
【氏名】横山 寛礼
【テーマコード(参考)】
3H025
3J071
3K068
【Fターム(参考)】
3H025DA02
3H025DB01
3H025DC01
3J071AA02
3J071BB14
3J071CC14
3J071EE02
3J071FF05
3K068AA01
3K068BB12
3K068DA06
(57)【要約】
【課題】ガス溜まりが形成される側の反対側のガス配管にガスが漏洩することを抑制できるV字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法を提供する。
【解決手段】ガス配管の途中に設置されてガスを遮断するV字型水封弁10であって、ガス配管に接続されるV字形状の配管12と、V字形状の配管12に水を供給する給水管14と、給水管14より上方に設けられ、溢れた水を溢水する溢水管16と、を有し、給水管14及び溢水管16は、水封されてガス溜まり20が形成される側Aの反対側BのV字形状の配管12に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス配管の途中に設置されてガスを遮断するV字型水封弁であって、
前記ガス配管に接続されるV字形状の配管と、
該V字形状の配管に給水する給水管と、
該給水管より上方に設けられ溢れた水を溢水する溢水管と、
を有し、
前記給水管及び前記溢水管は、水封されてガス溜まりが形成される側の反対側の前記V字形状の配管に設けられる、V字型水封弁。
【請求項2】
ガス配管の途中に設置されてガスを遮断するV字型水封弁の給水方法であって、
前記V字型水封弁によって水封されてガス溜まりが形成される側の反対側から給水及び溢水し、前記給水される位置よりも高い位置から溢水する、V字型水封弁の給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス配管の途中に設置されてガスを水封するV字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の生産において、高炉や転炉等からは大量のガスが発生し、これらガスは長距離に渡るガス配管内を輸送され、加熱炉や発電設備等に供給され利用される。このようなガス配管による輸送途中でガスを遮断するためにV字型水封弁が設置される。このV字型水封弁はV字形状の配管で構成され、給水管からV字形状の配管に給水し、水を貯留させることで、ガス配管を水封してガスを遮断する。
【0003】
ガス配管のガスを遮断するV字型水封弁として、特許文献1には、ガス溜まりが形成される側であって、水封水の水面と同じ高さに給水管が設けられ、当該給水管の反対側であって、給水管と同じ高さに溢水する溢水管が設けられるV字型水封弁が開示されている。また、V字形状の配管の真下には、水封を開放する際に水封水を排出する排水管が設けられている。さらに、特許文献2には、給水管より給水を行って、溢流口から溢流することにより、一定の水位を保持するV字型水封弁が開示されている。該V字型水封弁は、給水管が溢流口より高い位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-048072号公報
【特許文献2】特公昭46-042819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されたV字型水封弁では、給水管から給水される水は、ガス溜まりが形成される側においても、貯留された水封水の水面に向かって放水される。ガス配管内を搬送されるガスがV字型水封弁によって遮断されることでガス溜まりが形成されるが、このガス溜まりのガスが、給水される水に巻き込まれて当該水に溶解する。さらに、給水により水封水の水面が振動することで、ガス溜まりのガスの水封水への溶解が促進される。このように、水封水にガスが溶解していき、水封水のガス濃度がガスの水溶解度を超えるとガスが水封水から放出され、これにより、ガス溜まりが形成される側の反対側のガス配管にもガスが漏洩するという課題があった。本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス溜まりが形成される側の反対側のガス配管にガスが漏洩することを抑制できるV字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] ガス配管の途中に設置されてガスを遮断するV字型水封弁であって、前記ガス配管に接続されるV字形状の配管と、該V字形状の配管に給水する給水管と、該給水管より上方に設けられ溢れた水を溢水する溢水管と、を有し、前記給水管及び前記溢水管は、水封されてガス溜まりが形成される側の反対側の前記V字形状の配管に設けられる、V字型水封弁。
[2] ガス配管の途中に設置されてガスを遮断するV字型水封弁の給水方法であって、前記V字型水封弁によって水封されてガス溜まりが形成される側の反対側から給水及び溢水し、前記給水される位置よりも高い位置から溢水する、V字型水封弁の給水方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るV字型水封弁及びV字型水封弁の給水方法では、ガス溜まりが形成される側の反対側から給水するので、給水される水が前記ガスを巻き込むことがない。しかも、給水する位置よりも高い位置で溢水するので、給水する位置は水封水の水面よりも低い位置になる。このように、水封水の水面よりも低い位置から給水し、さらに、ガス溜まりが形成される側の反対側から給水するので、ガス溜まり側の水封水の水面に振動を与えることが抑制され、ガスを巻き込むこともない。これらのことにより、水封水へのガスの溶解が抑制され、ガス溜まりが形成される側の反対側のガス配管にガスが漏洩することを抑制できる。また、ガス溜まりが形成される側の反対側から溢水するので、ガス溜まり側のガスが溶解し易い水封水をそのまま溢水することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るV字型水封弁を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な一例を示すものである。
【0010】
図1は、本実施形態に係るV字型水封弁を示す断面模式図である。V字型水封弁10は、例えば、COガスやHガスを搬送するガス配管30の途中に設置され、当該ガス配管30内を搬送される上記ガスを遮断するのに用いられる。ガス配管30を搬送されるガスがV字型水封弁10の水封水18によって水封、遮断されることで、ガス配管30にはガス溜まり20が形成される。なお、図1において、AはV字型水封弁10のガス溜まり20が形成される側であり、Bはその反対側である。また、Gは、ガス配管30中を搬送されるガスの搬送方向を示す。
【0011】
V字型水封弁10は、ガス配管30に接続されるV字形状の配管12と、給水管14と、溢水管16とを有する。V字形状の配管12の両端は、ガス配管30とそれぞれ接続される。給水管14は、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側BのV字形状の配管12に設けられる。給水管14は、V字形状の配管12に給水して当該配管内に水を貯留させる。この水が水封水18となる。溢水管16は、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側BのV字形状の配管12に設けられ、さらに、給水管14の上方に設けられる。溢水管16からは、設定水位を超えて溢れた水封水18が溢水される。溢水管16から溢れた水封水18が溢水されることから、V字型水封弁10の水封水18の水面高さ(設定水位)は、溢水管16の設置位置と同じ高さになる。なお、V字形状の配管12の最下部に、V字型水封弁10による水封を開放する際に水封水18を排出する排水管が設けられていてもよい。
【0012】
V字型水封弁10では、V字形状の配管12を水封水18で水封することで、ガス配管30内を搬送されるガスがV字型水封弁10を超えて搬送されないように遮断する。しかしながら、従来のV字型水封弁では、給水管14が、水封水18の水面と同じ位置または上方に設けられていて、しかも、ガス溜まり20が形成されるガス配管側に設けられていたので、給水管から給水される水がガス溜まり20のガスを巻き込み、当該水に溶解するガスを増加させていた。さらに、給水管からの給水により、水封水の水面が振動し、これにより、水封水へのガス溜まり20のガスの溶解を促進させていた。このように水封水に溶解するガスが増加し、当該ガスの濃度が水溶解度を超えると、当該ガスが水封水から放出される。ガスはガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bのガス配管にも放出されるので、V字型水封弁でガス配管を水封したにも関わらず、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bのガス配管側にも漏洩した。
【0013】
これに対し、本実施形態に係るV字型水封弁10では、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bから給水するので、給水される水がガス溜まり20のガスを巻き込むことがない。しかも、水封水18の水面よりも下方に設けられる給水管14から給水し、さらに、給水管14は、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側BのV字形状の配管12に設けられるので、給水管14からの給水によりガス溜まり20側Aの水封水の水面に振動を与えることが抑制される。これらのことにより、水封水18へのガスの溶解が抑制され、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bのガス配管にガスが漏洩することが抑制される。この結果、十分な水封が可能となり、ガス配管30で搬送されるガスがCOガスである場合にはCO中毒のリスクを低減でき、搬送されるガスがHガスである場合には爆発のリスクを低減できる。
【0014】
次に、本実施形態に係るV字型水封弁10の給水方法について説明する。V字型水封弁10の給水方法では、水封されてガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bの位置から給水し、当該給水位置よりも高い位置から溢水する。これにより、給水される水がガス溜まり20のガスを巻き込むことがなく、また、ガス溜まり20側の水封水の水面に振動を与えることが抑制でき、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bのガス配管にガスが漏洩することが抑制される。
【実施例0015】
次に、本実施形態に係るV字型水封弁の効果を確認するため、高炉で発生した高炉ガスを輸送するガス管路に、図1に示したV字型水封弁10を設置して水封効果を確認した(発明例)。この結果、長期間(3日間)水封しても、ガス溜まり20が形成される側Aの反対側Bのガス配管へのガスの漏洩は極くわずかであって、十分な水封ができることが確認された。
【0016】
比較例として、特許文献1に記載される従来のV字型水封弁を高炉で発生した高炉ガスを輸送するガス管路に設置し、同様に水封効果を確認した。従来のV字型水封弁とは、ガス溜まりが形成される側Aであって水封水の水面と同じ位置に給水管が設けられ、しかも、溢水管が給水管と同じ高さに設けられているV字型水封弁である。比較例では、長期間(3日間)水封すると、高炉から発生した高炉ガスの一部が水封水に溶解して、ガス溜まりが形成される側Aの反対側Bのガス配管への高炉ガスの漏洩が確認され、水封が十分にできていないことが確認された。
【符号の説明】
【0017】
10 V字型水封弁
12 V字形状の配管
14 給水管
16 溢水管
18 水封水
20 ガス溜まり
30 ガス配管
図1