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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092086
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】セルフ給油システム
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/32 20100101AFI20240701BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240701BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240701BHJP
【FI】
B67D7/32 A
B67D7/32 E
G06Q50/10
G06N20/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207762
(22)【出願日】2022-12-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩永 耕太
(72)【発明者】
【氏名】飯利 学
(72)【発明者】
【氏名】小谷 真弘
【テーマコード(参考)】
3E083
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AB15
3E083AB20
3E083AC29
3E083AD01
3E083AD17
3E083AD29
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】複数のSSについてその特徴や特性に応じた適切な学習モデルを構築して危険行為や不正行為を検知する。
【解決手段】エッジ端末3は、カメラ5からSS内を撮影した画像データを取得するデータ取得部31と、AIモデル34を用いたAI処理により給油許否を判定するAI判別部32と、給油許否の判定結果と対応する画像データとを運用管理サーバ6に送信するサーバ連携部36とを有し、運用管理サーバ6は、各エッジ端末3から送信された画像データと判定結果とを取得して収集データ67として記録するデータ収集部61と、収集データ61から教師データを抽出するデータ処理部62と、機械学習により各SS2のAIモデル66を更新する機械学習部63と、更新されたAIモデル66の精度を評価するAIモデル評価部64と、更新されたAIモデル66を、適用する各SS2のエッジ端末3に送信して反映させるAIモデル管理部65とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフ給油のガソリンスタンドやサービスステーション(以下「SS」という)における利用者による計量機での給油の可否を制御するセルフ給油システムであって、
各SSに設置された情報処理端末と、当該各情報処理端末がネットワークを介して接続する運用管理サーバと、を有し、
前記情報処理端末は、
前記SSに設置されたカメラから前記SS内を撮影した画像データを取得するデータ取得部と、
前記画像データから前記利用者の危険行為等の有無を判別するためのAIモデルを用いたAI処理により、前記利用者に対する給油許否を判定するAI判別部と、
前記AI判別部による給油許否の判定結果の情報と、対応する前記画像データと、を前記運用管理サーバに送信するサーバ連携部と、を有し、
前記運用管理サーバは、
前記各情報処理端末から送信された前記画像データと、前記判定結果の情報と、を取得して収集データとして記録するデータ収集部と、
前記収集データから、前記各SSの前記AIモデルに対して適用する教師データを抽出するデータ処理部と、
前記教師データを用いて機械学習により各SSの前記AIモデルを更新する機械学習部と、
前記機械学習部により更新された前記AIモデルの精度を評価するAIモデル評価部と、
前記機械学習部により更新された前記各SSの前記AIモデルを、適用する前記各SSの前記情報処理端末に送信して反映させるAIモデル管理部と、を有する、セルフ給油システム。
【請求項2】
請求項1に記載のセルフ給油システムにおいて、
前記運用管理サーバは、
第1のSSの第1のAIモデルに対して適用する検証データを、他の全ての前記SSの前記AIモデルにそれぞれ適用して正解との差分を集計し、集計した差分が最も小さい第2のAIモデルについて、前記第1のSSの教師データと、前記第2のAIモデルに対応する第2のSSの教師データと、を用いて機械学習により更新し、更新した前記第2のAIモデルを、前記第1のAIモデルに代えて前記第1のSSに適用する、セルフ給油システム。
【請求項3】
請求項1に記載のセルフ給油システムにおいて、
前記運用管理サーバは、
全ての前記SSの前記AIモデルに対して適用する検証データを、全ての前記SSの前記AIモデルそれぞれに対して総当りで適用して正解との差分をそれぞれ集計し、前記各AIモデルのうち、対応する第1のSSの検証データを適用したときより差分が小さくなる他の第2のSSの数が最も多い第1のAIモデルについて、前記第1のSSの教師データと、前記各第2のSSの教師データと、を用いて機械学習により更新し、更新した前記第1のAIモデルを、前記各第2のSSの前記AIモデルに代えてそれぞれ適用する、セルフ給油システム。
【請求項4】
請求項1に記載のセルフ給油システムにおいて、
前記運用管理サーバの前記データ処理部は、
前記教師データにおける所定の項目に係る所定の発生比率の設定を保持し、前記収集データから取得した前記教師データにおける前記所定の項目の発生比率が前記所定の発生比率と所定以上乖離する場合は、前記所定の発生比率に近づくよう、前記収集データから取得する前記教師データを取捨選択する、セルフ給油システム。
【請求項5】
請求項4に記載のセルフ給油システムにおいて、
前記所定の発生比率は、前記各情報処理端末の前記AI判別部における危険行為等の有無の判別の精度に影響を与える所定の外因の発生に係る統計情報に基づいて設定される、セルフ給油システム。
【請求項6】
セルフ給油のガソリンスタンドやサービスステーション(以下「SS」という)における利用者による計量機での給油の可否を制御するセルフ給油システムであって、
前記SS内を撮影した画像データを取得するデータ取得部と、
前記画像データから前記利用者の危険行為等の有無を判別するためのAIモデルを用いたAI処理により、前記利用者に対する給油許否を判定するAI判別部と、
前記AI判別部による給油許否の判定結果の情報と、対応する前記画像データとを収集データとして記録するデータ収集部と、
前記収集データから、前記各SSの前記AIモデルに対して適用する教師データを抽出するデータ処理部と、
前記教師データを用いて機械学習により各SSの前記AIモデルを更新する機械学習部と、
前記機械学習部により更新された前記AIモデルの精度を評価するAIモデル評価部と、
前記機械学習部により更新された前記各SSの前記AIモデルを、適用する前記各SSの前記AIモデルとして反映させるAIモデル管理部と、を有する、セルフ給油システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフ給油式のガソリンスタンドやサービスステーション(以下総称して「SS」と記載する場合がある)における給油システムの技術に関し、特に、利用者等の危険行為を監視して給油許否を判断するセルフ給油システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利用者がセルフサービスで給油を行うセルフ給油式のSSが普及してきている。このようなSSでは、利用者による喫煙等の危険行為や、車両以外の携行缶等への給油などの不正行為が行われないよう、危険物取扱者の資格を有するスタッフが常時監視することが求められている。例えば、計量機付近等を監視カメラにより撮影した画像をスタッフが建物内などからモニターでリアルタイムに監視し、給油を許可した場合にのみ利用者が給油できるような仕組みが一般的である。
【0003】
このようなセルフ式のSSにおける危険行為や不正行為の監視に関連する技術として、例えば、特開2020-140236号公報(特許文献1)には、給油スペースを撮像した画像群に基づいて不正行為を機械学習した学習モデルを用いて、給油スペースを撮像した画像について画像解析により不正行為の有無を検知し、検知結果に基づいて給油可否に関する情報を生成することが記載されている。
【0004】
また、特開2021-187523号公報(特許文献2)には、監視カメラにより撮影された計量機付近の画像から、給油者の給油に関する異常の有無をAIによる画像認識技術を用いて判定するとともに、給油者による給油開始時に、前回の給油において判定された結果を当該給油者に報知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-140236号公報
【特許文献2】特開2021-187523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような従来技術によれば、AIにより給油スペースでの不正行為を検知することが可能となり、監視者を補って、もしくは監視者に代わって不正行為を検知することで監視者の負担を低減することができるといえる。さらに、特許文献2に記載されたような従来技術によれば、AIにより判定された不正行為等について、次回の給油時にも同じ行為が繰り返されることを未然に防止することも可能になるといえる。
【0007】
しかしながら、AIによる判定の基礎となる監視カメラにより撮影される画像は、例えば、監視カメラの設置位置や画角、季節、天候、周辺環境等の立地等、様々な外的要因により特徴が大きく異なり得る上に、利用者の行動特性や車両、車種等についても地域や季節、時間帯などの要因により特徴が異なり得る。したがって、例えば、全国各地に多数のSSを展開しているチェーンにおいて、全SSで単一の学習モデルを用いて不正行為を検知しようとした場合には、SS毎に精度にばらつきが出てしまうおそれがある。一方で、各SSで個別に学習モデルを構築しようとしても、各SS単位では適切かつ十分な内容と量の教師データを用意できず、適切な学習モデルを得られない場合も想定される。
【0008】
そこで本発明の目的は、複数のSSについてその特徴や特性に応じた適切な学習モデルを構築して危険行為や不正行為を検知するセルフ給油システムを提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態であるセルフ給油システムは、セルフ給油のSSにおける利用者による計量機での給油の可否を制御するセルフ給油システムであって、各SSに設置された情報処理端末と、当該各情報処理端末がネットワークを介して接続する運用管理サーバと、を有するものである。
【0012】
前記情報処理端末は、前記SSに設置されたカメラから前記SS内を撮影した画像データを取得するデータ取得部と、前記画像データから前記利用者の危険行為等の有無を判別するためのAIモデルを用いたAI処理により、前記利用者に対する給油許否を判定するAI判別部と、前記AI判別部による給油許否の判定結果の情報と、対応する前記画像データと、を前記運用管理サーバに送信するサーバ連携部と、を有する。
【0013】
また、前記運用管理サーバは、前記各情報処理端末から送信された前記画像データと、前記判定結果の情報と、を取得して収集データとして記録するデータ収集部と、前記収集データから、前記各SSの前記AIモデルに対して適用する教師データを抽出するデータ処理部と、前記教師データを用いて機械学習により各SSの前記AIモデルを更新する機械学習部と、前記機械学習部により更新された前記AIモデルの精度を評価するAIモデル評価部と、前記機械学習部により更新された前記各SSの前記AIモデルを、適用する前記各SSの前記情報処理端末に送信して反映させるAIモデル管理部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、複数のSSについてその特徴や特性に応じた適切な学習モデルを構築して危険行為や不正行為を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態であるセルフ給油システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるAIによる危険行為等の判別とAIモデルの更新の処理の流の例について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態におけるAIモデルの統合方法の例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態におけるAIモデルの統合方法の他の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0018】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるセルフ給油システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態のセルフ給油システム1は、全国各地のSS2にそれぞれ設置されたエッジ端末3と、これらが図示しないネットワークを介して接続される中央の運用管理サーバ6とを含んで構成される情報処理システムであり、SS2での利用者による給油の可否を制御するシステムである。
【0019】
エッジ端末3は、各SS2においてカメラ5により撮影された利用者の行為や状況等に係る画像データを取得し、AIによる画像認識技術により危険行為や不正行為の有無を判定して、判定結果に応じて計量機4での給油許否を制御するとともに、給油許否の判定結果の情報と対応する画像データを併せて運用管理サーバ6に伝達する機能を有するエッジデバイスである。また、運用管理サーバ6は、各エッジ端末3からの判定結果の情報と画像データを収集して、これらから学習用の教師データを抽出して機械学習(追加学習)を行ってAIモデルを更新し、エッジ端末3に送信して反映させることで給油許否の判定精度を向上させるという機械学習のライフサイクルを実現するいわゆるMLOps(Machine Learning Operations:機械学習/運用)の機能を有するサーバシステムである。
【0020】
エッジ端末3は、例えば、専用もしくはPC等の汎用の情報処理端末により実装され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、上述したエッジ端末3の各種機能を実現する。このエッジ端末3は、例えば、ソフトウェアとして実装されたデータ取得部31、AI判別部32、AIモデル管理部33、SS設備連携部35、およびサーバ連携部36などの各部を有する。
【0021】
データ取得部31は、SS2に設置された1つ以上のカメラ5により撮影された利用者の行為や状況等に係る画像(所定の時間間隔毎に撮影された画像の集合)データを取得する機能を有する。例えば、カメラ5と連携して画像データを常時記録するレコーダーから、利用者の来場などの所定のイベントの発生をトリガーとして必要な範囲の画像データを取り出すようにしてもよいし、カメラ5から送られた画像データを直接取得して記録するようにしてもよい。なお、カメラ5は、例えば、SS2に設置された各計量機4付近をそれぞれ個別に、もしくは複数まとめて撮影範囲とするように1つ以上設置されているのが望ましい。カメラ5の向きや撮影倍率等をリモートからスタッフが操作して、撮影範囲を動的に変更できるようにしてもよい。
【0022】
AI判別部32は、データ取得部31によって取得した利用者の行為や状況等に係る画像データに基づいて、AIモデル34を用いてAIによる画像解析を行い、利用者による危険行為や不正行為、もしくはこれらに至る蓋然性の高い状況の有無等を判別し、給油許否を判定する機能を有する。使用するAIのエンジンや画像解析のアルゴリズム等については特に限定されず、公知のものを適宜使用することができる。給油を拒否する対象となる行為等としては、例えば、喫煙やその他の火気の所持、携行缶等の車両以外の物への給油、所定の手順に従わない計量機4の操作等が挙げられる。本実施の形態では、例えば、これらの行為に関連性を有し得る物体(「タバコ」「携行缶」など)や利用者の車種(「SUV」「バイク」「軽トラック」など)等を画像解析により認識することで、対応する行為の有無を判別する。
【0023】
AIによる判別結果に基づいて自動的に給油許否を判定して計量機4に指示するようにしてもよいし、AIによる判定結果を図示しないモニター上に表示し、SS2のスタッフが確認した上で最終的な判定結果を手動で入力・指示するようにしてもよい。また、明らかな危険行為については自動で判定し、許否どちらの判断もあり得るような場合は通知の上で手動で判定するなど、自動・手動での判定を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0024】
なお、AIによる判定結果に係るデータ、すなわち、カメラ5により撮影された画像データの集合と、対応する給油許否の判定結果のデータは、教師データの候補として、後述するようにサーバ連携部36により運用管理サーバ6に送られる。一般的には、画像データの1枚1枚に対して、公知のアノテーションツール等を用いて人が手動でどこに何があるかのラベルを付しているが、全て人手で行うと膨大な数となってしまう。そこで本実施の形態では、AI判別部32による物体検知の結果として自動的に付されたラベルを人が確認して修正するという形をとることで教師データの候補の生成を容易にする。なお、画像データの1枚1枚に対しては最終的な給油許否の判定結果は関連付けられないが、例えば、危険行為があった瞬間の画像データに対しては、最終的な給油許否の判定結果を関連付けるようにしてもよい。
【0025】
AIモデル管理部33は、運用管理サーバ6から展開されたAIモデル34を取得して保持・管理する機能を有する。運用管理サーバ6から取得したAIモデル34について新旧のバージョン管理を行い、スタッフからの指示等に基づいて旧バージョンのAIモデル34にロールバックする機能を有していてもよい。
【0026】
SS設備連携部35は、SS2に設置された各計量機4等の設備や、図示しないPOS(Point of Sales)、SSC(Self Service Console)などの端末から情報を取得したり、指示を送信したりして制御する機能を有する。例えば、AI判別部32からの給油許否の判定結果に基づく指示に応じて、計量機4(もしくは図示しないPOSやSSC)に対して開栓や給油開始・停止等の指示信号を送信して制御する。AI判別部32が利用者による危険行為等を検知した場合に、図示しないパトランプや監視端末等を介してスタッフに通知したり、計量機4付近に設置された図示しないスピーカーやデジタルサイネージ装置等を介して利用者に通知したりする機能を有していてもよい。
【0027】
サーバ連携部36は、運用管理サーバ6と図示しないネットワークを介して通信して連携する機能を有する。例えば、エッジ端末3で取得・収集等した危険行為等に関連するデータ(例えば、カメラ5により撮影された画像データと、対応する給油許否の判定結果等)を送信したり、これらのデータに基づいてサーバ連携部36において更新されたAIモデル34を取得したりする。エッジ端末3自体の稼働状況に係るデータ等を送信し、本部において統合的に各地のSS2の運用状況の管理を行えるようにしてもよい。
【0028】
運用管理サーバ6は、例えば、1つ以上のサーバ機器もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された1つ以上の仮想サーバ等により実装され、図示しないCPUにより、HDDやSSD等の記録装置からメモリ上に展開したOSやDBMS、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、上述したMLOpsに係る各種機能などを実現する。この運用管理サーバ6は、例えば、ソフトウェアとして実装されたデータ収集部61、データ処理部62、機械学習部63、AIモデル評価部64、およびAIモデル管理部65などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブルなどにより実装される収集データ67および学習用データ68などのデータストアを有する。
【0029】
データ収集部61は、各エッジ端末3から送られるAIによる危険行為等の判定結果の情報と対応する画像データを取得して、収集データ67として記録・蓄積する機能を有する。なお、収集データ67として、判定結果や画像データだけでなく、判定時もしくは画像データ取得時の位置情報、天気、時間などを併せて収集・記録・蓄積してもよい。
【0030】
データ処理部62は、蓄積された収集データ67から、所定の条件に合致するものを抽出して教師データとし、学習用データ68に記録する機能を有する。パラメータチューニング用の検証データや、評価用のテストデータを併せて抽出するようにしてもよい。なお、教師データの抽出は、所定の間隔で定期的に行うようにしてもよいし、収集データ67に新たなデータが蓄積されたタイミングで随時行うようにしてもよい。
【0031】
教師データとして抽出する所定の条件としては、例えば、エッジ端末3での判定結果において、AI判別部32によるAIでの判定結果は給油拒否であったが、スタッフが手動で給油を許可した場合、もしくは逆にAIでの判定結果は給油許可であったが、スタッフが手動で給油を拒否した場合などが挙げられる。危険行為等に該当するかに係るAIでの判定スコアが所定より低いにも関わらず、スタッフが手動で給油を許可した場合、もしくは逆に判定スコアが所定より高いにも関わらず、スタッフが手動で給油を拒否した場合などを含めるようにしてもよい。抽出する教師データは、例えば、画像データと給油許否の判断結果の組み合わせとすることができる。給油許否の判断結果に代えて、画像データとAIによる物体検出のスコア(例えば、「携行缶:0.8」など)の組み合わせとしてもよい。
【0032】
機械学習部63は、学習用データ68上の更新された教師データに基づいて機械学習により各SS2にそれぞれ適用するAIモデル66を生成する機能を有する。また、AIモデル評価部64は、生成されたAIモデル66について、図示しない検証データやテストデータを用いて判定の精度を確認・評価する機能を有する。また、AIモデル管理部65は、機械学習部63により生成されたAIモデル66を保持・管理し、各AIモデル66についてこれを適用するSS2のエッジ端末3に送信して展開する機能を有する。各AIモデル66について新旧のバージョン管理を行い、運用管理サーバ6の管理者等からの指示等に基づいて旧バージョンのAIモデル66にロールバックする機能を有していてもよい。なお、使用するAIのエンジンについては特に限定されず、各エッジ端末3で使用するものと併せて公知のものを適宜使用することができる。
【0033】
上述したように、全てのSS2で単一のAIモデル34(AIモデル66)を用いて危険行為等を検知しようとした場合には、SS2毎に精度にばらつきが出てしまうおそれがある。一方で、各SS2で個別にAIモデル34を構築しようとしても、各SS2単位では適切かつ十分な内容と量の教師データを用意できず、適切なAIモデル34を得られない場合も想定される。そこで本実施の形態では、上述したように、適切な教師データを効率的に生成できるようにするとともに、後述するように、複数のSS2についてその特徴や特性に応じた適切なAIモデル34(AIモデル66)を統合的に適用して、危険行為等を効率的に精度よく検知することを可能とする。
【0034】
なお、図1の例で示したエッジ端末3と運用管理サーバ6が有する各部の構成は一例であり、機器やインフラのスペックその他の状況等に応じて、例えば、エッジ端末3の一部の機能を運用管理サーバ6側で実装したり、逆に運用管理サーバ6の一部の機能をエッジ端末3側で実装したり、柔軟に構成することができる。SS2のカメラ5についても、エッジ端末3の全部もしくは一部の機能と一体となって構成することも可能である。
【0035】
<処理の流れ>
図2は、本発明の一実施の形態におけるAIによる危険行為等の判別とAIモデル34(AIモデル66)の更新の処理の流の例について概要を示した図である。各SS2のエッジ端末3では、1つ以上のカメラ5により撮影された画像データをデータ取得部31により取得し(S01)、AI判別部32により画像認識を行って、危険行為等に該当する事象が発生しているか否か(これらと関連性を有する物体があるか否か)を判別するとともに(S02)、判別結果をモニター等に表示して(S03)、スタッフに提示する。
【0036】
そして、提示された判別結果と、スタッフが該当する利用者の実際の様子を直接視認するなどして確認した上での給油許否の判断結果の入力を受け付けて、その内容に応じてSS設備連携部35を介してPOSやSSC等に指示して、計量機4の開栓を制御するとともに(S04)、給油許否の最終的な判断結果の情報と、対応するカメラ5の画像データを、サーバ連携部36により運用管理サーバ6に送信する(S05)。
【0037】
運用管理サーバ6では、各SS2のエッジ端末3から送信された判断結果の情報と画像データをデータ収集部61により取得して収集データ67に記録し(S11)、これをトリガーとして、もしくは定期的なタイミングで、データ処理部62により、収集データ67から所定の条件により教師データの候補を選別・抽出して学習用データ68に記録する(S12)。
【0038】
教師データの候補を選別・抽出する条件は、上述したように、例えば、AIでの判定結果は給油拒否であったが、スタッフが手動で給油を許可した場合(もしくはその逆)や、AIでの判定スコアが所定より低いにも関わらず、スタッフが手動で給油を許可した場合(もしくはその逆)などとすることができる。なお、本実施の形態では、教師データの候補の選別・抽出を運用管理サーバ6側で行うものとしているが、データの発生元であるエッジ端末3側で選別を行い、選別されたデータのみ運用管理サーバ6に送信するようにしてもよい。
【0039】
その後、選別・抽出された教師データの候補について、管理者等がその妥当性について判断し、教師データとして最終的に確定させた結果についての入力・指定を受け付けて、学習用データ68を更新(不要なデータを削除)する(S13)。教師データの被覆性や均一性、妥当性について所定の手法によりスコアリングして、管理者等に提示するようにしてもよい。このように、本実施の形態では、教師データの選別・抽出に際して、最終的には管理者等による手動での判断を介在させるものとしているが、必須ではなく省略することも可能である。
【0040】
教師データが確定すると、これを機械学習部63により追加学習させて既存のAIモデル66を更新する(S14)。そして、AIモデル評価部64により、更新後のAIモデル66に検証データを推定させて、判別結果と精度を確認・評価する(S15)。このとき、例えば、更新前のAIモデル66による判別結果や精度と比較することで、性能が向上しているか否かを評価する。
【0041】
その後、更新後のAIモデル66の評価結果について、管理者等が確認し、十分に性能が向上しているかを含めてその妥当性について判断し、新しいAIモデル66として最終的に確定させた結果についての入力・指示を受け付けて、AIモデル管理部65を介してAIモデル66を更新(不要なAIモデル66を削除)する(S16)。そして、更新後のAIモデル66をAIモデル管理部65により対象のエッジ端末3に送信する(S17)。これを受信したエッジ端末3では、AIモデル管理部33により更新後のAIモデル34として反映させる(S06)。その後は、ステップS01に戻ってカメラ5の画像データからのAIによる判別処理を繰り返す。
【0042】
なお、SS2のスタッフが、更新後のAIモデル34による危険行為等の判別結果に異常や不具合があると判断した場合、スタッフからの入力・指示を受け付けて、更新前の旧バージョンのAIモデル34にロールバックするようにしてもよい(S07)。また、いずれかのSS2においてAIモデル34をロールバックしたことを運用管理サーバ6もしくはその管理者等が検知した場合、管理者等からの入力・指示を受け付けて、(後述するAIモデル34の統合の結果として)対象のAIモデル34と同じモデルを採用している他のSS2のAIモデル34(AIモデル66)についても同様にロールバックして反映させるようにしてもよい(S18)。
【0043】
<AIモデルの統合>
上述したように、本実施の形態では、複数のSS2についてその特徴や特性に応じた適切なAIモデル34を統合的に適用して、危険行為等を効率的に精度よく検知することを可能とする。
【0044】
図3は、本発明の一実施の形態におけるAIモデル34の統合方法の例について概要を示した図である。図3では、1番目からn番目のn個のSS2(図中では「SS」~「SS」で示す)においてそれぞれ適用されているAIモデル34のうち、i番目のSS2である「SS」に適用されているAIモデル34を、他のSS2に適用されているAIモデル34で置換する形でAIモデル34を統合する例についての概念を示している。
【0045】
この方法では、上段の図に示すように、まず、対象の「SS」における検証データ(AIモデル34の精度を検証するためのデータ)を「SS」~「SS」の全てのSS2のAIモデル34に入力し、それぞれ信頼度スコアを求めた上で、正解データと信頼度スコアの差分を各SS2のAIモデル34毎に集計する。そして、集計結果において差分(正解とのズレ)の集計値が最も少ないものを統合先のAIモデル34として選択する。図3では、「SS」の集計結果が最も少なかったという場合を例示しており、この場合、「SS」のAIモデル34として「SS」を使用することになる。
【0046】
AIモデル34の統合方法の他の例として、例えば、各SS2に適用されているAIモデル34毎に、各検証データに対応する信頼度スコアを単純合算してその合計値が最も大きいものを統合先のAIモデル34として選択してもよい。また、対象の「SS」のAIモデル34の信頼度スコアの合計値と、他のSS2に適用されているAIモデル34の信頼度スコアの合計値とを比較し、対象の「SS」のAIモデル34の信頼度スコアの合計値を(最も)上回るものを統合先のAIモデル34として選択してもよい。
【0047】
統合先のAIモデル34を選択すると、当該AIモデル34を、統合元のSS2と統合先のSS2の教師データによって学習させて、更新後のAIモデル34を得る。図3の例では、下段の図に示すように、統合先として選択された「SS」のAIモデル34を、自身の「SS」の教師データと、統合元の「SS」の教師データによって学習させて、更新後の「SS」のAIモデル34を得る例を示している。このように、図3の例では、統合先の「SS」の更新後のAIモデル34を、「SS」自身だけでなく、より精度が上がる「SS」でも用いることになり、AIモデル34を効果的に統合することができる。
【0048】
図4は、本発明の一実施の形態におけるAIモデル34の統合方法の他の例について概要を示した図である。上述した図3の例では、統合元のSS2について、当該SS2の検証データを入力した際の差分の集計値が最も少ないSS2のAIモデル34を統合先のAIモデル34として統合していたが、図4の例では、全てのSS2の検証データについて、全てのSS2のAIモデル34に対して総当りで入力して差分を集計する。
【0049】
上段の表では、「SS」~「SS」の各SS2の検証データを列とし、「SS」~「SS」の各SS2のAIモデル34を行として、各検証データを総当たりで各AIモデル34に入力した際の差分を集計した結果を示している。ここでは、各検証データについて、自身のSS2のAIモデル34に入力した場合(例えば、「SS」の検証データを「SS」のAIモデル34に入力した場合)を「△」で示し、他のSS2のAIモデル34に入力した場合について、自身のSS2のAIモデル34に入力した場合よりも精度が良くなる場合を「○」、精度が同じか悪くなる場合を「×」で示している。その上で、AIモデル34の単位で「○」の数を集計した結果を右端の列に示しており、図4の例では「SSn-1」が5つで最も多いことを示している。
【0050】
ここでは、「○」の数が最も多いAIモデル34を統合先の候補とする。すなわち、図4の例では、最も「○」が多い「SSn-1」のAIモデル34は、自身以外の他の「○」がついた5つのSS2(図4の例では「SS」、「SS」、…、「SS」、…)における統合先の候補となる。その後、統合先の候補が決まったSS2のAIモデル34の行を表から削除し、残ったSS2のAIモデル34について、上記と同様に、最も「○」が多いものを選択して統合先の候補とする処理を繰り返すことで、各SS2について統合先のSS2のAIモデル34を決定する。
【0051】
その後、下段の図に示すように、統合先の候補のAIモデル34を、自身のSS2の教師データに加えて、統合元のSS2の教師データによって学習させて、更新後のAIモデル34を」得る。図4の例では、「SSn-1」のAIモデル34を、自身の「SSn-1」の教師データに加えて、統合元となる「SS」、「SS」、…、「SS」、…の5つのSS2の教師データによって学習させて、更新後の「SSn-1」を得る例を示している。このように、図4の例では、「SSn-1」のAIモデル34を、「SSn-1」自身だけでなく、より精度が上がる「SS」、「SS」、…、「SS」、…の他の5つのSS2でも用いることになり、AIモデル34を効果的に統合することができる。
【0052】
上述の図3もしくは図4の統合方法の例によれば、SS2毎にカメラ5の設置方向等の環境条件が種々に異なる複数の画像データを学習しているAIモデル34が混在している場合でも、環境条件の近いAIモデル34を分類することなく、AIの精度に基づいてAIモデル34を統合しており、統合における人の判断を減らして正確かつ高速に実施することができる。ただし、環境条件の同一性を評価して環境条件の近いAIモデル34を分類した後に図3もしくは図4に示した動作を行う構成であってもよい。例えば、複数のAIモデル34向けの複数の画像データを用いてAIモデル34をクラスタリングすることで環境条件の近いAIモデル34を分類することが可能である。これにより、画像の中に写っている各オブジェクトの大きさ、配置等の同一性を加味した分類がなされる。
【0053】
なお、上述したようなAIモデル34(AIモデル66)の統合に係る処理は、例えば、運用管理サーバ6のAIモデル管理部65等により、定期的なタイミングで行ってもよいし、学習用データ68に蓄積された新しい教師データが一定の量に達したことなどをトリガーとして不定期に行ってもよい。
【0054】
上述したようなAIモデル34(AIモデル66)の統合に係る処理では、例えば、教師データと検証データに、利用者の車種が乗用車である画像データばかりが採用されていた場合、乗用車に特化したAIモデル34(AIモデル66)になってしまう可能性がある。この場合、例えば、利用者の車種が乗用車の場合には正解率が高いが、バイクの場合には正解率が極端に悪化してしまうということが起こり得る。
【0055】
そこで、例えば、図2における運用管理サーバ6によるステップS12、S13での教師データ候補の抽出と人による確認の処理において、予め、正常給油と異常給油のデータの適切な比率や、乗用車とバイクの来店比率のような比率(黄金比)を設定しておく。そして、抽出した教師データ(例えば、1日単位で集約した結果等)が黄金比から著しく乖離している場合には、管理者等に通知・警告するなどした上で、黄金比に近づくように抽出する教師データの取捨選択を自動もしくは手動で行うようにしてもよい。その際、除外したデータについて管理者等に提示して、妥当性などの判断結果を受け付けるようにしてもよい。また、黄金比については、定期的にモニタリングしながら管理者等によりその妥当性を判断するのが望ましい。
【0056】
もしくは、例えば、AIでの判別の精度に影響を与え得る外因(例えば、天候や利用者の車種など)を予め定義しておき、収集データ67に蓄積されたデータのうち、各SS2での外因の発生に関連する統計(例えば、車種の来店比率(「SUV」:10%、「バン」:50%、「バイク」:10%、「トラック」:30%)など)を自動的に取得して黄金比としてもよい。この場合、統計情報の取得のために、給油拒否の異常ケースだけでなく給油許可の正常ケースも収集する。そして、当該統計情報(発生比率)に基づいて収集データ67から教師データの候補を動的に抽出する。被覆性の観点で不足するデータがある場合は、例えば、カメラ5の画角などの特性が近似する他のSS2のデータで補充してもよい。
【0057】
なお、教師データだけでなく検証データを同様の手法により取得してもよい。
【0058】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるセルフ給油システム1によれば、各SS2についてその特徴や特性に応じた適切な教師データ、検証データを得ることができるとともに、複数のSS2についてその特徴や特性に応じてAIモデル34を統合的に適用して、危険行為等を効率的に精度よく検知することが可能となる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0060】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0061】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、セルフ給油式のガソリンスタンドやサービスステーションにおける給油システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…セフル給油システム、2…SS、3…エッジ端末、4…計量機、5…カメラ、6…運用管理サーバ、
31…データ取得部、32…AI判別部、33…AIモデル管理部、34…AIモデル、35…SS設備連携部、36…サーバ連携部、
61…データ収集部、62…データ処理部、63…機械学習部、64…AIモデル評価部、65…AIモデル管理部、66…AIモデル、67…収集データ、68…学習用デー
図1
図2
図3
図4