(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092087
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ビードインシュレーション用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240701BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240701BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240701BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240701BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240701BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240701BHJP
C08K 5/44 20060101ALI20240701BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240701BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240701BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K3/04
C08K5/09
C08K3/06
C08K5/44
B60C1/00 C
B60C9/00 K
D07B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207764
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠人
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3B153AA24
3B153CC29
3B153CC52
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4J002AC01W
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4J002DA036
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4J002EF058
4J002EF097
4J002EV279
4J002FD016
4J002FD149
4J002FD158
4J002FD159
4J002FD317
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】インシュレーションゴムは、ヤング率が大きく異なるビードワイヤーを束ね一体化するため、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつその性能を発現するためインシュレーション加工性に優れることが求められる。
【解決手段】天然ゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0であるビードインシュレーション用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、
CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、
芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および
脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、
前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0である
ことを特徴とするビードインシュレーション用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量部に対し、さらに硫黄を3.0~5.0質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対し、さらにスルフェンアミド系加硫促進剤を0.5~2.0質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
【請求項4】
前記芳香族カルボン酸が安息香酸誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
【請求項5】
前記芳香族カルボン酸がサリチル酸であることを特徴とする請求項1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物を、ビードワイヤを被覆するビードインシュレーションゴムに用いたタイヤ。
【請求項7】
前記ビードワイヤがSnメッキされてなり、前記ビードワイヤにおけるSn含有率が5~12質量%であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードインシュレーション用ゴム組成物およびタイヤに関するものであり、詳しくは、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつインシュレーション加工性に優れるビードインシュレーション用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部から主に構成され、ビード部におけるビードコアは、複数本のビードワイヤとこれを被覆するビードインシュレーションゴムとから構成され、ビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻回した周囲をビードカバーゴムが被覆することによりビードコアが形成される。
インシュレーションゴムは、ヤング率が大きく異なるビードワイヤーを束ね一体化するため、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつその性能を発現するためインシュレーション加工性に優れることが求められる。
例えば下記特許文献1には、良好な加工性を確保しながら加硫成形時のビード崩れを抑制するようにしたビードインシュレーション用ゴム組成物を提供することを目的として、ジエン系ゴムおよびフィラーを含み、未加硫状態で80℃の貯蔵弾性率G′が300kPa以上、かつ100℃の貯蔵弾性率G′が300kPa以下であるゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつインシュレーション加工性に優れるビードインシュレーション用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するゴム成分に対し、特定のCTAB比表面積を有するカーボンブラック、芳香族カルボン酸および脂肪族カルボン酸を特定範囲でもって配合し、前記芳香族カルボン酸および脂肪族カルボン酸の比率を特定化することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0であることを特徴とするビードインシュレーション用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記ビードインシュレーション用ゴム組成物を、ビードワイヤを被覆するビードインシュレーションゴムに用いたタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物は、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0であることを特徴としているので、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつインシュレーション加工性に優れる。
【0008】
本発明の特徴の一つとしては、上記のように芳香族カルボン酸および脂肪族カルボン酸を併用することが挙げられる。芳香族カルボン酸は、ビードワイヤと相互作用し、下記の実施例で記載するゴム剥げ性および荷重耐久性を改善するとともに、組成物の粘度を適切なものとしてビードワイヤに対する接着性を向上させる。また脂肪族カルボン酸は、加硫助剤として機能し本発明の効果をさらに高めることができる。一方、特定のCTAB比表面積を有するカーボンブラックを使用することにより強度が高まり、ビードインシュレーションゴムとして荷重耐久性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、ジエン系ゴムが好適であり、本発明の効果を奏するには、ゴム成分全体を100質量部としたときに、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)を20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)40~80質量部含む形態がとくに好ましい。なお必要に応じてブタジエンゴム(BR)等のその他のジエン系ゴムを併用することもできる。上記ゴム成分の分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
なお、本発明の前記効果が向上するという観点から、本発明で使用されるゴム成分全体を100質量部としたときに、NRおよび/またはIRの配合量が20~50質量部、SBRの配合量が50~80質量部であるのがさらに好ましく、NRおよび/またはIRの配合量が30~50質量部、SBRの配合量が50~70質量部であるのがとくに好ましい。
【0011】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、CTAB比表面積が30~100m2/gであり、好ましくは30~60m2/gであるのがよい。前記カーボンブラックのCTAB比表面積が前記範囲であることにより、本発明の前記効果がさらに向上する。
CTAB比表面積は、JIS K6217-2に準拠して求めることができる。
【0012】
(芳香族カルボン酸)
本発明で使用される芳香族カルボン酸としては、本発明の効果向上の観点から、安息香酸誘導体が好ましい。
安息香酸誘導体としては、安息香酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸等が挙げられ、中でもヒドロキシル基を有する安息香酸誘導体が好ましく、サリチル酸がとくに好ましい。
【0013】
(脂肪族カルボン酸)
本発明で使用される脂肪族カルボン酸としては、本発明の効果向上の観点から、脂肪族モノカルボン酸が好ましく、中でも炭素数が14~22の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素数が14~22の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましく、ステアリン酸がとくに好ましい。
【0014】
(ビードインシュレーション用ゴム組成物の配合割合)
本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対し、CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0であることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し60質量部未満であると、ビードワイヤーとの接着性並びに荷重耐久性が低下し、逆に120質量部を超えるとビードワイヤーとの接着性並びにインシュレーション加工性が低下する。
前記芳香族カルボン酸の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し0.3質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができず、逆に5質量部を超えるとビードワイヤーとの接着性並びに荷重耐久性が低下する。
前記脂肪族カルボン酸の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し0.5質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができず、逆に5質量部を超えるとビードワイヤーとの接着性並びに荷重耐久性が低下する。
前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2未満あるいは1.0を超えると、ビードワイヤーとの接着性並びに荷重耐久性が低下する。
【0015】
前記カーボンブラックの配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し65~100質量部であるのがさらに好ましい。
前記芳香族カルボン酸の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し1~4質量部であるのがさらに好ましい。
前記脂肪族カルボン酸の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し1~4質量部であるのがさらに好ましい。
前記質量比率(A)/(B)は、0.4~1.0であるのがさらに好ましい。
【0016】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0017】
なお、加硫剤としての硫黄は前記ゴム成分100質量部に対し3.0~5.0質量部配合してなることが好ましい。また、加硫促進剤を使用する場合はスルフェンアミド系加硫促進剤を採用するのが好ましく、その配合量は前記ゴム成分100質量部に対し0.5~2.0質量部配合してなることが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤としては例えばN-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレンベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
これらの好ましい形態によれば、本発明の効果がさらに良好となる。また、該好ましい形態において、オイル量は前記ゴム成分100質量部に対し5.0~15.0質量部であるのが好ましく、6.0~13.0質量部であるのがさらに好ましい。
【0018】
また本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物は、発熱性、荷重耐久性の観点から、初期歪10%、動歪2%、周波数20Hz、20℃における動的弾性率が7.0~20.0MPaであることが好ましく、損失弾性率が1.0~10.0Mpaであることが好ましい。
【0019】
また本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物は従来のタイヤの製造方法に従ってタイヤを製造するのに使用することができる。
本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物は、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつインシュレーション加工性に優れることから、タイヤのビードインシュレーションゴム(ビードカバーゴムを含む)に好適に用いられ得る。ビードインシュレーションゴムのビードワイヤに対する被覆厚としては、とくに制限されないが0.1mm~10mmであるのが好ましい。
【0020】
なお、本発明の好ましい形態によれば、前記ビードワイヤはSnメッキされてなり、前記ビードワイヤにおけるSn含有率が5~12質量%であることが好ましい。この形態によれば、ビードワイヤと本発明のビードインシュレーション用ゴム組成物との相互作用が良好となり、ビードワイヤーとの接着性、荷重耐久性およびインシュレーション加工性をさらに高めることができる。
【0021】
また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0023】
標準例、実施例1~11および比較例1~10
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0024】
押出ゴム剥げ性(ゴム被覆量):得られたゴム組成物をビードインシュレーションゴムに使用して空気入りタイヤ(サイズ245/40R18)を加硫成形した。その際のビードインシュレーション工程において、ビード押出加工でのゴム剥げ性によって加工性を評価した。ビードワイヤに対して被覆すべきゴムの質量を100%とした場合、ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量を測定し、下記の評価基準により評価した。なお、ビードワイヤはSnメッキされてなり、ビードワイヤにおけるSn含有率は3質量%または10質量%である。
ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量が100%の場合:評価点5
ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量が90%以上100%未満の場合:評価点4
ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量が80%以上90%未満の場合:評価点3
ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量が70%以上80%未満の場合:評価点2
ビード押出加工後にビードワイヤに被覆されたゴムの量が70%未満の場合:評価点1
【0025】
ワイヤー接着性:ASTM D-2229に準拠して試験を行なった。12.7mm間隔で平行に並べたブラスめっきスチールコードを上記ゴム組成物で被覆すると共に、埋め込み長さ12.7mmで埋め込み、170℃×10分間の加硫条件で加硫接着して接着サンプルを作製した。この接着サンプルからスチールコードを引き抜き、その表面を被覆するゴム付着量(%)を評価した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この値が大きいほどゴムに対する接着性が優れている。
【0026】
荷重耐久性:得られたゴム組成物をビードインシュレーションゴムに使用して空気入りタイヤ(サイズ245/40R18)を加硫成形した。得られたタイヤをリムサイズリムサイズ18×7Jのホイールに組み付け、空気圧を280kPaにして、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)に取り付け、周辺温度を38±3℃、荷重をJATMA最大荷重の100%とし、4時間毎に15%ずつ荷重を増加させながら、FMVSS109という条件で加速し、タイヤに故障が生じるまでの走行速度を計測した。なお、ビードワイヤはSnメッキされてなり、ビードワイヤにおけるSn含有率は3質量%または10質量%である。結果は、標準例を100とする指数にて示した。この値が大きいほど故障が生じるまでの走行距離が長く、荷重耐久性が優れていることを意味する。
【0027】
結果を表1および2に示す。
【0028】
【0029】
【0030】
*1:NR(RSS#3)
*2:SBR(日本ゼオン株式会社製 Nipol 1502)
*3:カーボンブラック1(日鉄カーボン株式会社製ニテロン#300IH、CTAB比表面積=113m2/g)
*4:カーボンブラック2(日鉄カーボン株式会社製ニテロン#10N、CTAB比表面積=43m2/g)
*5:カーボンブラック3(日鉄カーボン株式会社製HTC#SL、CTAB比表面積=25m2/g)
*6:老化防止剤(NOCIL LIMITED製PILFLEX 13)
*7:アルキルフェノール樹脂(日立化成株式会社製ヒタノール1502Z)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*9:アロマオイル(出光興産株式会社製ダイアナプロセスNH-70S)
*10:ステアリン酸(日新理化株式会社製ステアリン酸50S)
*11:p-ヒドロキシ安息香酸(東京化成株式会社製)
*12:サリチル酸(株式会社PIコーポレーション製)
*13:安息香酸(株式会社伏見製薬所社製)
*14:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*15:加硫促進剤(川口化学工業株式会社製アクセルDZ-G(スルフェンアミド系加硫促進剤))
【0031】
表1および2の結果から、各実施例のゴム組成物は、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0であるので、標準例のゴム組成物に比べ、ビードワイヤーとの接着性が高く、荷重耐久性に優れ、かつインシュレーション加工性に優れることが分かる。
【0032】
一方、比較例1は、芳香族カルボン酸(A)の配合量が本発明で規定する下限未満であり、芳香族カルボン酸(A)と脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が本発明で規定する下限未満であるので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例2は、芳香族カルボン酸(A)の配合量が本発明で規定する上限を超え、芳香族カルボン酸(A)と脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が本発明で規定する上限を超えているので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例3は、脂肪族カルボン酸(B)の配合量が本発明で規定する下限未満であり、芳香族カルボン酸(A)と脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が本発明で規定する上限を超えているので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例4は、脂肪族カルボン酸(B)の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例5は、芳香族カルボン酸(A)と脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が本発明で規定する上限を超えているので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例6は、カーボンブラックのCTAB比表面積が本発明で規定する範囲外であるので、押出ゴム剥げ性が低下した。
比較例7は、カーボンブラックのCTAB比表面積が本発明で規定する範囲外であるので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例8は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
比較例9は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、押出ゴム剥げ性およびワイヤー接着性が低下した。
比較例10は、ゴム成分におけるNRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ワイヤー接着性および荷重耐久性に改善が見られない。
【0033】
本発明は、下記実施形態を包含する。
実施形態1:
天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを20~60質量部およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを40~80質量部含むゴム成分100質量部に対し、
CTAB比表面積が30~100m2/gのカーボンブラックを60~120質量部、
芳香族カルボン酸(A)を0.3~5質量部、および
脂肪族カルボン酸(B)を0.5~5質量部含み、
前記芳香族カルボン酸(A)と前記脂肪族カルボン酸(B)の質量比率(A)/(B)が0.2~1.0である
ことを特徴とするビードインシュレーション用ゴム組成物。
実施形態2:
前記ゴム成分100質量部に対し、さらに硫黄を3.0~5.0質量部配合してなることを特徴とする実施形態1に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
実施形態3:
前記ゴム成分100質量部に対し、さらにスルフェンアミド系加硫促進剤を0.5~2.0質量部配合してなることを特徴とする実施形態1または2に記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
実施形態4:
前記芳香族カルボン酸が安息香酸誘導体であることを特徴とする実施形態1~3のいずれかに記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
実施形態5:
前記芳香族カルボン酸がサリチル酸であることを特徴とする実施形態1~4のいずれかに記載のビードインシュレーション用ゴム組成物。
実施形態6:実施形態1~5のいずれかに記載のビードインシュレーション用ゴム組成物を、ビードワイヤを被覆するビードインシュレーションゴムに用いたタイヤ。
実施形態7:
前記ビードワイヤがSnメッキされてなり、前記ビードワイヤにおけるSn含有率が5~12質量%であることを特徴とする実施形態6に記載のタイヤ。