(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092101
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】成形対象物搬送機構、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/50 20060101AFI20240701BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/50 C
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207792
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】池西 哲郎
【テーマコード(参考)】
5F061
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061DA01
5F061DD00
(57)【要約】
【課題】成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型の設計を可能とする成形対象物搬送機構を提供する。
【解決手段】成形対象物Wを保持するクランプ機構2を有する成形型14に成形対象物Wを受け渡す成形対象物搬送機構13であって、成形対象物Wがスライドして載置される載置部4と、載置部4に向かってスライドする成形対象物Wの通過領域Rの上方に設けられ、クランプ機構2を操作するための第1操作部6とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型に前記成形対象物を受け渡す成形対象物搬送機構であって、
前記成形対象物がスライドして載置される載置部と、
前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物の通過領域の上方に設けられ、前記クランプ機構を操作するための操作部とを備える、成形対象物搬送機構。
【請求項2】
前記載置部に隣接して設けられ、前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物をガイドするガイド部をさらに備え、
前記操作部は、前記ガイド部における前記成形対象物の通過領域の上方に設けられている、請求項1に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項3】
前記載置部が昇降移動可能に設けられるとともに前記操作部が設けられるベース部材をさらに備え、
前記ベース部材を昇降移動させることにより、前記操作部が前記クランプ機構を操作し、
前記ベース部材に対して前記載置部を昇降移動させることにより、前記成形対象物を前記成形型に受け渡す、請求項1又は2に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項4】
前記操作部は、前記通過領域の周囲に設けられた支持部材に設けられている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項5】
前記支持部材は、前記通過領域の両側に設けられた一対の脚部と、当該一対の脚部に架け渡されて前記通過領域の上方に設けられた梁部とを有し、
前記操作部は、前記梁部に設けられている、請求項4に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項6】
前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における後端部を保持する後端側クランプ部を有し、
前記操作部は、前記後端側クランプ部を押圧して開放するものである、請求項1乃至5の何れか一項に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項7】
前記成形対象物は、平面視において矩形状をなすものであり、
前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における前端部を保持する前端側クランプ部と、前記成形対象物のスライド方向に直交する両端部を保持する両端側クランプ部とをさらに有し、
前記成形対象物搬送機構は、前記前端側クランプ部及び前記両端側プランプ部それぞれを押圧して開放する第2操作部をさらに備える、請求項6に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項8】
成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型と、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の成形対象物搬送機構とを備える、樹脂成形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形対象物搬送機構により前記成形対象物を前記成形型に搬送して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
樹脂成形された前記成形対象物を前記成形型から搬出する搬出工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形対象物搬送機構、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂成形装置には、特許文献1に示すように、基板供給装置から基板を受け取り金型装置に搬送する基板搬送装置を用いたものが考えられている。この基板搬送装置は、基板供給装置の基板マガジンから押し出された基板がスライドして載置されるものであり、基板マガジンから押し出された基板の両側縁部をスライド嵌合する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、成形対象物である基板の大型化が進んでおり、当該基板に固定された電子部品の数も増加している。このような基板を樹脂材料で成形する場合には、成形した樹脂材料と基板との熱膨張量の差異が大きくなり、基板の反り量が増加して、成形型(例えば上型)における基板の吸着不良が生じる虞がある。
【0005】
また、基板に固定された電子部品の樹脂成形形状が複雑化しており、成形型(例えば下型)のキャビティを被覆している離型フィルムからの離型の際に基板を下方向に引っ張る力が増加して、成形型(例えば上型)における基板の吸着不良が生じる虞がある。
【0006】
上記の吸着不良を解消するためには、成形型(例えば上型)に成形対象物の周縁部を保持するクランプ機構を設けることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述した基板搬送装置では、基板マガジンから押し出された基板がスライドして載置されるものであり、その基板がスライドする領域には、成形型に設けたクランプ機構を操作するための構造を設けることができない。そのため、成形型に設けるクランプ機構の位置が制約されてしまい、成形型における基板の吸着不良を十分に解消することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型の設計を可能とする成形対象物搬送機構を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る成形対象物搬送機構は、成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型に前記成形対象物を受け渡す成形対象物搬送機構であって、前記成形対象物がスライドして載置される載置部と、前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物の通過領域の上方に設けられ、前記クランプ機構を操作するための操作部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した本発明によれば、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型の設計を可能とする成形対象物搬送機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の型開きした成形型及び受け渡し位置の基板搬送機構を模式的に示す断面図である。
【
図3】同実施形態の上型の構成を模式的に示す下から見た図である。
【
図4】同実施形態の成形前基板収納部及び受け取り位置の基板搬送機構を模式的に示す断面図である。
【
図5】同実施形態の基板搬送機構の構成を模式的に示す平面図である。
【
図6】同実施形態の基板搬送機構においてガイド部及び支持部材の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】同実施形態の基板搬送機構によりクランプ部を開放した状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】同実施形態の基板搬送機構の載置部を上昇させて成形前基板を上型に接触させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】同実施形態の基板搬送機構が成形前基板を上型に受け渡した後の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る技術について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の技術により限定されない。
【0013】
本発明に係る技術1の成形対象物搬送機構は、成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型に前記成形対象物を受け渡す成形対象物搬送機構であって、前記成形対象物がスライドして載置される載置部と、前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物の通過領域の上方に設けられ、前記クランプ機構を操作するための操作部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この成形対象物搬送機構であれば、載置部に向かってスライドする成形対象物の通過領域の上方に、成形型のクランプ機構を操作するための操作部を設けているので、成形対象物のスライド移動に関わらず、操作部を設けることができる。このため、成形型には、成形対象物のスライド方向における後端部を保持するクランプ機構を設けることができる。その結果、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型の設計を可能とすることができる。
【0015】
本発明に係る技術2の成形対象物搬送機構は、上記の技術1の構成に加えて、前記載置部に隣接して設けられ、前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物をガイドするガイド部をさらに備え、前記操作部は、前記ガイド部における前記成形対象物の通過領域の上方に設けられていることを特徴とする。
この構成であれば、ガイド部を備えているので、載置部への成形対象物のスライドをガイドして確実に載置できるようになる。また、操作部がガイド部における成形対象物の通過領域の上方に設けられているので、載置部から成形型への成形対象物の受け渡しを邪魔しない設計にできる。
【0016】
成形対象物搬送機構によるクランプ機構を開放する等の操作及び成形型への成形対象物の具体的な受け渡し動作の態様としては、本発明に係る技術3の成形対象物搬送機構は、上記の技術1又は2の構成に加えて、前記載置部が昇降移動可能に設けられるとともに前記操作部が設けられるベース部材をさらに備え、前記ベース部材を昇降移動させることにより、前記操作部が前記クランプ機構を操作し、前記ベース部材に対して前記載置部を昇降移動させることにより、前記成形対象物を前記成形型に受け渡すことを特徴とする。
【0017】
操作部を成形対象物の通過領域の上方に設けるための具体的な実施の態様としては、本発明に係る技術4の成形対象物搬送機構は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成に加えて、前記操作部が、前記通過領域の周囲に設けられた支持部材に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る技術5の成形対象物搬送機構は、上記の技術4の構成に加えて、前記支持部材が、前記通過領域の両側に設けられた一対の脚部と、当該一対の脚部に架け渡されて前記通過領域の上方に設けられた梁部とを有し、前記操作部は、前記梁部に設けられていることを特徴とする。
この構成であれば、支持部材が一対の脚部及び梁部を有するので、支持部材の機械的強度を大きくすることができ、クランプ機構を安定して操作することができる。
【0019】
成形対象物搬送機構の具体的な実施の態様としては、本発明に係る技術6の成形対象物搬送機構は、上記の技術1乃至5の何れか1つの構成に加えて、前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における後端部を保持する後端側クランプ部を有し、前記操作部は、前記後端側クランプ部を押圧して開放するものであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る技術7の成形対象物搬送機構は、上記の技術6の構成に加えて、前記成形対象物は、平面視において矩形状をなすものであり、前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における前端部を保持する前端側クランプ部と、前記成形対象物のスライド方向に直交する両端部を保持する両端側クランプ部とをさらに有し、前記成形対象物搬送機構は、前記前端側クランプ部及び前記両端側プランプ部それぞれを押圧して開放する第2操作部をさらに備えることを特徴とする。
この構成であれば、矩形状をなす成形対象物の4辺全てをクランプすることができ、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応して、成形対象物の保持不良を解消することができる。
【0021】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型と、上記の技術1乃至7の何れか1つの構成の成形対象物搬送機構とを備えることを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型を採用することができ、成形対象物の保持不良を解消して、樹脂成形品の品質を向上することができる。
【0022】
さらに、上記の技術8の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、前記成形対象物搬送機構により前記成形対象物を前記成形型に搬送して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、樹脂成形された前記成形対象物を前記成形型から搬出する搬出工程とを含む、樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
この樹脂成形装置であれば、成形対象物の大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型を採用することができ、成形対象物の保持不良を解消して、樹脂成形品の品質を向上することができる。
【0023】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0024】
<樹脂成形装置100の基本構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、成形対象物である基板Wに固定された電子部品(不図示)を、樹脂材料を用いた樹脂成形により樹脂封止して樹脂成形品Pを製造するものである。
【0025】
なお、基板としては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、リードフレーム、シリコンウエハ、ガラスウエハ等を挙げることができる。また、電子部品としては、例えば半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子、又はこれら電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された形態の電子部品を挙げることができる。さらに、樹脂材料は、例えば顆粒状樹脂、シート状樹脂、タブレット状樹脂、粒状樹脂等を挙げることができる。
【0026】
この樹脂成形装置100は、
図1に示すように、基板供給・収納モジュールAと、2つの樹脂成形モジュールBと、樹脂材料供給モジュールCとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA~C)は、それぞれの構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0027】
基板供給・収納モジュールAは、成形前基板Wを供給する成形前基板供給部11と、成形済基板W(樹脂成形品P)を収納する成形済基板収納部12と、成形前基板W及び樹脂成形品Pを搬送する基板搬送機構13とを有する。成形前基板供給部11は、成形前基板Wを収納する成形前基板収納部111と、当該成形前基板収納部111から成形前基板Wを基板搬送機構13に向けて押し出す基板押出部112とを有している。この基板押出部112により、成形前基板Wはスライドして基板搬送機構13に載置される。なお、以下では、基板押出部112による成形前基板Wの基板搬送機構13へのスライド方向をX方向とし、水平面内においてX方向に直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0028】
成形対象物搬送機構である基板搬送機構13は、成形前基板Wを基板供給・収納モジュールAから樹脂成形モジュールBに搬送し、樹脂成形モジュールBにおいて成形前基板Wを成形型14、15に供給する。成形前基板Wの樹脂成形後に、基板搬送機構13は、樹脂成形モジュールBにおいて成形型14、15から樹脂成形品Pを受け取って、基板供給・収納モジュールAに搬送する。基板搬送機構13は、基板供給・収納モジュールA及びそれぞれの樹脂成形モジュールB内においてX方向及びY方向に移動可能に構成されている。また、基板搬送機構13は、樹脂成形モジュールB内においてZ方向に移動可能に構成されている。
【0029】
なお、基板搬送機構13は、成形前基板Wを基板供給・収納モジュールAから樹脂成形モジュールBに搬送する成形前基板搬送機構(ローダ)と、樹脂成形品Pを樹脂成形モジュールBから基板供給・収納モジュールAに搬送する樹脂成形品搬送機構(アンローダ)とに分けて構成しても良い。
【0030】
各樹脂成形モジュールBは、基板Wを保持する第1の成形型である上型14と、キャビティ15aが形成された第2の成形型である下型15と、上型14及び下型15を型締めする型締め機構(不図示)とを有し、それらを型締めすることにより基板Wに固定された電子部品を、樹脂材料を用いた樹脂成形により樹脂封止する。
【0031】
樹脂材料供給モジュールCは、下型15のキャビティ15aに例えば液状樹脂を供給するディスペンサ等の樹脂供給部16と、当該樹脂供給部16を樹脂材料供給モジュールCから樹脂成形モジュールBに搬送する樹脂搬送機構17とを有する。なお、樹脂供給部16は、先端部に液状樹脂を吐出する樹脂吐出部18を有している。また、樹脂搬送機構17は、樹脂材料供給モジュールC及びそれぞれの樹脂成形モジュールB内において、X方向及びY方向に移動可能に構成されている。なお、樹脂材料供給モジュールCは、液状樹脂を供給するものの他、顆粒状樹脂、シート状樹脂、タブレット状樹脂、粒状樹脂などの他の形態の樹脂を供給するものであっても良い。
【0032】
<樹脂成形装置100の特徴構成>
そして、本実施形態の樹脂成形装置100では、第1の成形型である上型14及び基板搬送機構13が、基板Wの大型化又は樹脂成形形状の複雑化に対応できる構成を有している。
【0033】
具体的に上型14は、
図2及び
図3に示すように、平面視において矩形状をなす成形前基板Wを吸着機構141により吸着保持するとともに、その成形前基板Wの4辺をクランプ機構2により挟んで保持する構成である。
【0034】
吸着機構141は、
図2に示すように、上型14の型面に開口する複数の吸着孔141aと、それら複数の吸着孔141aに連通するとともに吸引源(不図示)が接続される吸引流路141bとを有する。
【0035】
クランプ機構2は、
図2、
図3、
図7~
図9に示すように、成形前基板Wの基板搬送機構13へのスライド方向(X方向)における後端部を保持する後端側クランプ部21と、当該スライド方向における前端部を保持する前端側クランプ部22と、スライド方向に直交する両端部を保持する両端側クランプ部23、24とを有している。各辺に設けられるクランプ部21~24の数は、1つであっても良いし、複数であっても良い。
【0036】
各クランプ部21~24は、上型14に軸201により回転可能に支持されたクランプ片202と、当該クランプ片202の先端部を軸201回りに上型14に向かって押圧する弾性部材203とを有している。これら各クランプ部21~24は、クランプ片202の後端部を押すことにより開放される。
【0037】
基板搬送機構13は、
図2、
図4~
図9に示すように、基板Wを保持するクランプ機構2を有する上型14に成形前基板Wを搬送して受け渡すものである。本実施形態の基板搬送機構13は、成形前基板収納部111から押し出される成形前基板Wを受け取り、その成形前基板Wを上型14に基板Wを搬送して受け渡す。
【0038】
この基板搬送機構13は、成形前基板Wを上型14に受け渡すにあたってクランプ機構2の各クランプ部21~24を操作して開放できるように構成されている。
【0039】
具体的に基板搬送機構13は、
図2、
図4~
図9に示すように、ベース部材3と、成形前基板Wがスライドして載置される載置部4と、載置部4に隣接して設けられ、載置部4に向かってスライドする基板Wをガイドするガイド部5と、後端側クランプ部21を操作する第1操作部6と、後端側クランプ部21以外のクランプ部22~24を操作する第2操作部7とを有している。
【0040】
ベース部材3は、成形前基板収納部111から成形前基板Wを受け取る受け取り位置(
図4参照)と、型開きされた上型14及び下型15の間であり、上型14に成形前基板Wを受け渡す受け渡し位置(
図2参照)との間で移動する。また、ベース部材3は、型開きされた上型14及び下型15の間で昇降移動する(
図7参照)。
【0041】
載置部4は、成形前基板Wがスライドして載置されるものであり、ベース部材3に対して昇降移動可能に設けられている。ここで、載置部4には、成形前基板Wの電子部品の搭載面が下向きとなるように載置されるため、成形前基板Wの電子部品が接触しないようにスライド方向に沿って凹部(不図示)が形成されている。具体的に載置部4には、成形前基板Wのスライド方向に直交する両側縁部がスライドするスライド面を有している。
【0042】
この載置部4は、成形前基板Wがスライドして載置される載置位置(
図4、
図7参照)と、当該載置位置から上昇した位置であり、上型14に成形前基板Wを受け渡す上昇位置(
図8参照)との間で昇降移動する。ここで、載置部4は、昇降駆動部8により昇降移動される。昇降駆動部8としては、例えばボールねじ機構を用いたものであっても良いし、エアシリンダを用いたものであっても良い。
【0043】
ガイド部5は、成形前基板Wがスライドして通過するものであり、ベース部材3に対して固定して設けられている。ここで、ガイド部5には、載置部4と同様に、成形前基板Wの電子部品が接触しないようにスライド方向に沿って凹部(不図示)が形成されている。具体的にガイド部5には、成形前基板Wのスライド方向に直交する両側縁部がスライドするスライド面を有している。このガイド部5の基板スライド面は、載置位置にある載置部4の基板載置面と同じ高さ位置又は若干高い位置である。このガイド部5の基板スライド面により成形前基板収納部111から押し出された成形前基板Wが安定して載置部4に載置される。
【0044】
第1操作部6は、ベース部材3に設けられて後端側クランプ部21を押圧して開放するものであり、
図2、
図4~
図9に示すように、載置部4に向かってスライドする基板Wの通過領域Rの上方に設けられている。本実施形態の第1操作部6は、後端側クランプ部21に接触するピン形状をなすものである。
【0045】
具体的に第1操作部6は、ガイド部5における成形前基板Wの通過領域Rの上方に設けられている。本実施形態の第1操作部6は、ガイド部5における成形前基板Wの通過領域Rの周囲に設けられた支持部材9に設けられている。この支持部材9は、
図5及び
図6に示すように、通過領域Rの両側に設けられた一対の脚部9a、9bと、当該一対の脚部9a、9bに架け渡されて通過領域Rの上方に設けられた梁部9cとを有している。そして、第1操作部6は、梁部9cにおいて後端側クランプ部21に対応して設けられている。なお、本実施形態の一対の脚部9a、9bは、ベース部材3に固定されているが、ガイド部5に固定されていても良い。
【0046】
第2操作部7は、ベース部材3に設けられて前端側クランプ部22及び両端側クランプ部23、24を押圧して開放するものである。本実施形態の第2操作部7は、前端側クランプ部22及び両端側クランプ部23、24に対応して設けられ(
図5参照)、前端側クランプ部22及び両端側クランプ部23、24それぞれに接触するピン形状をなすものである。
【0047】
<基板搬送機構13及び樹脂成形装置100の動作の一例>
次に、樹脂成形装置100の動作の一例を
図1、
図2、
図4、
図7~
図9を参照して説明する。以下に示す動作は、例えば樹脂材料供給モジュールCに設けられた制御部CTLが樹脂成形装置100の各部を制御することにより行われる。なお、制御部CTLは、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有する専用又は汎用のコンピュータである。
【0048】
(1)成形前基板供給工程
基板供給・収納モジュールAにおいて、ベース部材3を成形前基板収納部111から成形前基板Wを受け取る受け取り位置に移動させる(
図4参照)。この受け取り位置において、ベース部材3上の載置部4は下降した位置(成形前基板Wが載置される位置)である。この状態で、成形前基板収納部111から成形前基板Wを押し出すと、成形前基板Wは、ガイド部5をスライドした後に、載置部4にスライドして載置される。ここで、ガイド部5における通過領域Rの上方に第1操作部6が設けられているので、第1操作部6及び支持部材9は、成形前基板Wとは接触しない。
【0049】
載置部4に成形前基板Wが載置されると、ベース部材3が上型14及び下型15の間に位置する受け渡し位置に移動される(
図2参照)。この受け渡し位置においてベース部材3を上昇させて、第1操作部6及び第2操作部7により各クランプ部21~24のクランプ片202の後端部を押すことにより、各クランプ部21~24を開放した状態とする(
図7参照)。
【0050】
各クランプ部21~24が開放した状態とされた後に、ベース部材3に対して載置部4を上昇させて、載置部4にある成形前基板Wを上型14の型面に接触させる(
図8参照)。そうすると、上型14の型面に成形前基板Wが吸着保持される。
【0051】
その後、ベース部材3に対して載置部4を下降させるとともに、ベース部材3を下降させる(
図8参照)。そうすると、第1操作部6及び第2操作部7が各クランプ部21~24のクランプ片202から離れ、各クランプ部21~24により成形前基板Wの4辺が上型の型面との間で挟まれて保持される。その後、基板搬送機構13を、所定の待機位置に戻す。
【0052】
(2)樹脂供給工程
次に、所定の待機位置にある樹脂供給部16を樹脂搬送機構17により樹脂成形モジュールBに移動させて、型開きされた下型15のキャビティ15aに供給する。なお、下型15のキャビティ15aには、予め離型フィルムF(
図2等参照)が密着して設けられている。その後、樹脂供給部16を樹脂搬送機構17により所定の待機位置に戻す。
【0053】
(3)樹脂成形工程
上記の工程の後、樹脂成形モジュールBにおいて、型締め機構により上型14及び下型15を所定の型締め圧により型締めされ、加熱される。所定時間が経過した後、型締め機構により下型15を下降させて上型14及び下型15を型開きする。
【0054】
(4)成形済基板搬出工程
次に、基板搬送機構13を移動させて、型開きされた上型14から樹脂成形品Pを受け取る。このとき、上型14の吸着保持及びクランプ部21からによる保持が解除される。そして、樹脂成形品Pを受け取った基板搬送機構13を、基板供給・収納モジュールAに移動させる。そして、樹脂成形品Pを基板搬送機構13から成形済基板収納部12に受け渡して収納する。
【0055】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、載置部4に向かってスライドする成形前基板Wの通過領域Rの上方に、上型14のクランプ機構2の後端側クランプ部21を操作するための第1操作部6を設けているので、成形前基板Wのスライド移動に関わらず、第1操作部6を設けることができる。このため、上型14には、成形前基板Wのスライド方向における後端部を保持する後端側クランプ部21を設けることができる。その結果、成形前基板Wの大型化又は成形対象物への樹脂成形形状の複雑化に対応した成形型の設計を可能とすることができる。
【0056】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、前記実施形態では、成形前基板収納部111から基板搬送機構13に直接載置する構成であったが、成形前基板収納部111及び基板搬送機構13の間に中間テーブル等の中継部が設けられている場合には当該中継部から基板搬送機構13に成形前基板Wにスライドして載置する構成としても良い。
【0058】
また、前記実施形態の支持部材は、一対の脚部及び梁部からなる門型形状であったが、通過領域Rの上方に第1操作部6を設ける構成であれば良く、例えば、通過領域Rの一方の側方に設けられた脚部と、当該脚部に一端が接続された梁部とからなる片持ち形状であっても良い。
【0059】
さらに、前記実施形態では、基板搬送機構13がガイド部5を有する構成であったが、基板搬送機構13はガイド部5を有さない構成としても良い。この場合、成形前基板収納部111側に成形前基板Wをガイドするガイド機構を設けることも考えられる。
【0060】
その上、前記実施形態の基板搬送機構13は、1枚の成形前基板Wを搬送する構成であったが、2枚以上の成形前基板Wを搬送する構成であっても良い。この場合、基板搬送機構13は、ベース部材3上において複数の成形前基板Wそれぞれに対応して載置部4、ガイド部5、第1操作部6及び第2操作部7を有する構成となる。
【0061】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100・・・樹脂成形装置
W・・・成形対象物
14・・・成形型(上型)
2・・・クランプ機構
21・・・後端側クランプ部
22・・・前端側クランプ部
23、24・・・両端側クランプ部
13・・・基板搬送機構(成形対象物搬送機構)
3・・・ベース部材
4・・・載置部
R・・・通過領域
5・・・ガイド部
6・・・第1操作部(操作部)
7・・・第2操作部
9・・・支持部材
9a、9b・・・脚部
9c・・・梁部
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型に前記成形対象物を受け渡す成形対象物搬送機構であって、
前記成形対象物がスライドして載置される載置部と、
前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物の通過領域の上方に設けられ、前記クランプ機構を操作するための操作部とを備える、成形対象物搬送機構。
【請求項2】
前記載置部に隣接して設けられ、前記載置部に向かってスライドする前記成形対象物をガイドするガイド部をさらに備え、
前記操作部は、前記ガイド部における前記成形対象物の通過領域の上方に設けられている、請求項1に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項3】
前記載置部が昇降移動可能に設けられるとともに前記操作部が設けられるベース部材をさらに備え、
前記ベース部材を昇降移動させることにより、前記操作部が前記クランプ機構を操作し、
前記ベース部材に対して前記載置部を昇降移動させることにより、前記成形対象物を前記成形型に受け渡す、請求項1に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項4】
前記操作部は、前記通過領域の周囲に設けられた支持部材に設けられている、請求項1に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項5】
前記支持部材は、前記通過領域の両側に設けられた一対の脚部と、当該一対の脚部に架け渡されて前記通過領域の上方に設けられた梁部とを有し、
前記操作部は、前記梁部に設けられている、請求項4に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項6】
前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における後端部を保持する後端側クランプ部を有し、
前記操作部は、前記後端側クランプ部を押圧して開放するものである、請求項1に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項7】
前記成形対象物は、平面視において矩形状をなすものであり、
前記クランプ機構は、前記成形対象物のスライド方向における前端部を保持する前端側クランプ部と、前記成形対象物のスライド方向に直交する両端部を保持する両端側クランプ部とをさらに有し、
前記成形対象物搬送機構は、前記前端側クランプ部及び前記両端側プランプ部それぞれを押圧して開放する第2操作部をさらに備える、請求項6に記載の成形対象物搬送機構。
【請求項8】
成形対象物を保持するクランプ機構を有する成形型と、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の成形対象物搬送機構とを備える、樹脂成形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形対象物搬送機構により前記成形対象物を前記成形型に搬送して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
樹脂成形された前記成形対象物を前記成形型から搬出する搬出工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。