IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電力株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社TLCの特許一覧 ▶ 株式会社美貴本の特許一覧 ▶ 越智工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図1
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図2
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図3
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図4
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図5
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図6
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図7
  • 特開-地中孔掘削機、及び地中孔構築方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092112
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】地中孔掘削機、及び地中孔構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/00 20060101AFI20240701BHJP
   E02D 17/08 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E02D29/00
E02D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207809
(22)【出願日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物「送研ラインマン」の発行(令和4年1月1日) ・刊行物「電気評論 2022年1月号」の発行(令和4年1月26日) ・刊行物「電気現場」の発行(令和4年11月1日)
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505272618
【氏名又は名称】株式会社タワーライン・ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】599113590
【氏名又は名称】株式会社美貴本
(71)【出願人】
【識別番号】522501203
【氏名又は名称】越智工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆文
(72)【発明者】
【氏名】島根 和明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 泰助
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 貴広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 克明
(72)【発明者】
【氏名】神 直希
(72)【発明者】
【氏名】山内 翔太
(72)【発明者】
【氏名】池田 功
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正昭
(72)【発明者】
【氏名】下山 航大
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄大
(72)【発明者】
【氏名】堀留 健一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敬士
【テーマコード(参考)】
2D044
2D147
【Fターム(参考)】
2D044AA03
2D147AA05
2D147AA08
2D147JB00
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比べて容易に孔底地盤を掘削することができる地中孔掘削機と、これを用いた地中孔構築方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の地中孔掘削機は、地中孔を構築するための掘削機であり、略水平姿勢で配置される水平ビームと略鉛直姿勢で配置される鉛直ビーム、掘削手段、制御手段を備えたものである。鉛直ビームは水平ビームに取り付けられ、掘削手段は鉛直ビームに取り付けられ、水平ビームは地中孔のライナープレートに設置されたガイドレールに取り付けられる。制御手段が掘削手段を制御することによって所望位置の孔底地盤を掘削する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中孔を構築するための掘削機であって、
水平又は略水平に配置される水平ビームと、
前記水平ビームに、鉛直又は略鉛直姿勢で取り付けられる鉛直ビームと、
前記鉛直ビームに取り付けられる掘削手段と、
制御手段と、を備え、
前記水平ビームは、地中孔のライナープレートに設置された左側ガイドレールと右側ガイドレールに取り付けられ、
前記制御手段が前記掘削手段を制御することによって、所望位置の孔底地盤を掘削することができる、
ことを特徴とする地中孔掘削機。
【請求項2】
前記鉛直ビームに取り付けられる支持ピンを、さらに備え、
前記支持ピンの下端が孔底地盤に貫入した状態で、孔底地盤を掘削することができる、
ことを特徴とする請求項1記載の地中孔掘削機。
【請求項3】
前記掘削手段が取り付けられた前記鉛直ビームが、鉛直又は略鉛直軸周りに回転可能である、
ことを特徴とする請求項1記載の地中孔掘削機。
【請求項4】
動画又は静止画を取得する撮影手段と、
前記撮影手段によって取得された前記動画又は前記静止画を表示する表示手段と、を備え、
前記撮影手段を地中孔内に配置するとともに、前記表示手段を地上に配置することによって、地上から前記掘削手段を遠隔操作することができる、
ことを特徴とする請求項1記載の地中孔掘削機。
【請求項5】
地中孔掘削機を用いて、地中孔を構築する方法であって、
前記地中孔掘削機は、水平又は略水平に配置される水平ビームと、鉛直又は略鉛直姿勢で該水平ビームに取り付けられる鉛直ビームと、該鉛直ビームに取り付けられる掘削手段と、制御手段と、を有し、
鉛直又は略鉛直姿勢とした左側ガイドレールと右側ガイドレールを、地中孔のライナープレートに取り付けるガイドレール設置工程と、
前記水平ビームを、前記左側ガイドレールと前記右側ガイドレールに取り付けることによって、前記地中孔掘削機を設置する掘削機設置工程と、
前記制御手段が前記掘削手段を制御することによって、所望位置の孔底地盤を掘削する掘削工程と、を備えた、
ことを特徴とする地中孔構築方法。
【請求項6】
前記ガイドレール設置工程では、上下に並ぶように複数の前記左側ガイドレールと前記右側ガイドレールを前記ライナープレートに取り付け、
孔底地盤の掘削が進行すると、上方の前記左側ガイドレールと前記右側ガイドレールを取り外すとともに、取り外した該左側ガイドレールと該右側ガイドレールを下方に取り付けるガイドレール盛替え工程と、
前記ガイドレール盛替え工程の後に、前記地中孔掘削機を下方に移設する掘削機移設工程と、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項5記載の地中孔構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤を掘削することによって地中に孔(以下、「地中孔」という。)を構築する技術に関するものであり、より具体的には、地中孔内に設置されたうえで地盤を掘削することができる機械と、この機械を用いて地中孔を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔は、需要者に電力を安定供給するうえで極めて重要な施設の一つであり、当然ながら堅牢な構造とされ、また原則として沈下(特に不等沈下)が許されない。したがって送電用鉄塔のように重要かつ大きな重量の構造物は、岩盤や締まった砂層など相当の地耐力が期待できる支持層の上に構築される。例えば送電用鉄塔の場合、支持層の上に基礎を構築し、その基礎に脚材を固定する構造とされることが多く、すなわち基礎を介して支持層から支持を得る形式が一般的である。
【0003】
支持層が比較的浅い位置にある場合は、所定の深度まで掘削して支持層を表出させ、この支持層上に直接的に基礎(いわゆる、「直接基礎」)を構築することができる。他方、支持層が比較的深い位置にある場合、支持層を表出させるためには相当量の掘削を要するうえ、さらに大規模な基礎の構築が必要となり、直接基礎は現実的ではない。したがってこのようなケースでは、直接基礎ではなく「杭基礎」が採用される。
【0004】
送電用鉄塔を支持する杭基礎は、「深礎工法」によって構築されることがある。この深礎工法は、地盤を略鉛直(鉛直を含む)下向きに掘削することで地中孔を形成し、地中孔内に鉄筋を組立てたうえでコンクリートを打ち込み、鉄筋コンクリート製の「深礎基礎」を構築する方法である。孔底の地盤(以下、単に「孔底地盤」という。)の掘削を進めていくと孔壁として地盤が露出するため、通常は鋼製のライナープレート(鋼製波板)によって孔壁を支保しながら掘進していく。
【0005】
深礎工法における孔底地盤の掘削は、当然ながら建設機械を使用して行われ、特に施工条件が制約されないケースであれば、油圧クラムシェルや中~大規模バックホウなどが利用される。これに対して、施工条件が制約されるケースでは、このような大型機械を利用することができない。特に送電用鉄塔の場合、人や車両の往来がない山岳地に設置されることもあり、つまり現地までアクセスするための道路等が整備されていないため、掘削機械の運搬が大きな障壁となる。モノレールや索道などを用いて運搬することも考えられるが、一度に運搬できる重量が限定的(例えば2~3t)である。特に索道に関しては、仮設備に過大なコストがかかるうえ工期も長くなることから、少なくとも望ましい手段とは言えない。
【0006】
また送電用鉄塔を支持する深礎基礎(以下、単に「鉄塔用深礎基礎」という。)は、比較的小さい径(2.5~3.5mなど)で構築される傾向にある。例えば特許文献1では、基礎自重や掘削量を低減するために小径の中空深礎基礎を構築する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-227543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したとおり資材の運搬が大きな障壁となることから、鉄塔用深礎基礎のための掘削には大型の掘削機械を採用することが難しい。また、鉄塔用深礎基礎が小径で計画されることからも、やはり大型の掘削機械の採用は難しい。そこで、従来は電動ミニバックホウやパイプクラムを用いた地盤掘削が主流であった。
【0009】
しかしながら、電動ミニバックホウやパイプクラムを用いて孔底地盤を掘削する場合、それぞれに問題があった。電動ミニバックホウを用いるケースでは、この電動ミニバックホウを孔内に配置して掘削することになるが、孔径に対して機械寸法が大きいため旋回や移動を円滑に行うことができず、つまり細かい動きを繰り返し行うことから施工に多大な時間を要していた。また、掘削地盤の地質や土質(特に、地盤強度)によっては掘削力不足になることもある。さらに、地上に配置された電源装置と電動ミニバックホウはキャプタイヤケーブルによって接続されることとなるが、電動ミニバックホウが頻繁に移動するためこのキャプタイヤケーブルの介錯が極めて煩雑な作業であった。
【0010】
一方、パイプクラムを用いるケースでは、機械重量が10t程度であるため現地への搬入が難しく、現地状況によっては採用することできないこともある。さらに、モノレールを利用する場合、一度の搬送重量を抑える必要があり、相当に分解したうえで搬送しなければならず、したがって搬送作業に加えて組立や分解といった作業も強いられることとなる。また、パイプクラムの掘削能力が最大深度16mであるため、それ以上の鉄塔用深礎基礎には利用することができない。さらに、パイプクラムは孔底の隅部を掘削することが困難という短所があり、作業者による「手掘り」が避けられないといった問題もある。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比べて容易に孔底地盤を掘削することができる地中孔掘削機と、これを用いた地中孔構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、ライナープレート(ガイドレール)を利用して坑内に掘削機を設置する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0013】
本願発明の地中孔掘削機は、地中孔を構築するための掘削機であり、略水平(水平を含む)姿勢で配置される水平ビームと略鉛直(鉛直を含む)姿勢で配置される鉛直ビーム、掘削手段、制御手段を備えたものである。なお、鉛直ビームは水平ビームに取り付けられ、掘削手段は鉛直ビームに取り付けられる。また、水平ビームは、地中孔のライナープレートに設置された左側ガイドレールと右側ガイドレールに取り付けられる。そして、オペレータによるコントローラ操作に応じて制御手段が掘削手段を制御することによって、所望位置の孔底地盤を掘削する。
【0014】
本願発明の地中孔掘削機は、鉛直ビームに取り付けられる支持ピンをさらに備えたものとすることもできる。この場合、支持ピンの下端が孔底地盤に貫入させた状態で、孔底地盤を掘削することができる。
【0015】
本願発明の地中孔掘削機は、掘削手段が装着された鉛直ビームが略鉛直(鉛直を含む)軸周りに回転可能であるものとすることもできる。
【0016】
本願発明の地中孔掘削機は、動画(あるいは静止画)を取得する撮影手段と、その動画(あるいは静止画)を表示する表示手段をさらに備えたものとすることもできる。この場合、撮影手段を地中孔内に配置するとともに、表示手段を地上に配置することによって、地上のオペレータが掘削手段を遠隔操作することができる。
【0017】
本願発明の地中孔構築方法は、本願発明の地中孔掘削機を用いて地中孔を構築する方法であり、ガイドレール設置工程と掘削機設置工程、掘削工程を備えた方法である。このうちガイドレール設置工程では、略鉛直(鉛直を含む)姿勢とした左側ガイドレールと右側ガイドレールを地中孔のライナープレートに取り付け、掘削機設置工程では、水平ビームを左側ガイドレールと右側ガイドレールに取り付けることによって地中孔掘削機を孔内に設置する。また掘削工程では、オペレータがコントローラを操作することによって制御手段が掘削手段を制御し、所望位置の孔底地盤を掘削する。
【0018】
本願発明の地中孔構築方法は、ガイドレール盛替え工程と掘削機移設工程をさらに備えた方法とすることもできる。この場合、ガイドレール設置工程では、上下に並ぶように複数の左側ガイドレールと右側ガイドレールをライナープレートに取り付ける。またガイドレール盛替え工程では、孔底地盤の掘削が進行すると、上方の左側ガイドレールと右側ガイドレールを取り外すとともに、取り外した左側ガイドレールと右側ガイドレールを下方に取り付ける。掘削機移設工程では、ガイドレール盛替え工程の後に、地中孔掘削機を下方に移設する。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の地中孔掘削機、及び地中孔構築方法には、次のような効果がある。
(1)地中孔掘削機がライナープレートに支持されていることから、大きな掘削力を発揮することができる。具体的には、掘削径が2.5~3.5mの地中孔において、20m以上の深度で掘削することができ、しかもN値50程度の地盤を掘削することができる。
(2)地中孔掘削機の総重量が2t未満であり、さらに3分割することができることから、現地への運搬や組立、分解に係る作業が従来技術に比べて容易である。
(3)掘削手段がアームとバケットを含んで構成されることから、隅部を含め孔底地盤の全体をくまなく掘削することができる。
(4)水平ビームにパワーユニットを搭載することによって、従来技術のようにキャプタイヤケーブルの介錯作業を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の地中孔掘削機を示す斜視図。
図2】地中孔内に配置された本願発明の地中孔掘削機を示す側面図。
図3】本願発明の地中孔掘削機を上方から見た平面図。
図4】(a)はライナープレートに固定されたガイドレールを示す水平面で切断した断面図、(b)は水平ビームが取り付けられた状態のガイドレールを示す水平面で切断した断面図。
図5】(a)はライナープレートに固定されたガイドレールを示す鉛直面で切断した断面図、(b)はガイドレールを示す断面図、(c)はガイドレールの貫通孔に挿通されたレールピンを示す部分斜視図。
図6】撮影手段を地中孔内に配置するとともに表示手段を地上に配置した状況を示す鉛直面で切断した断面図。
図7】本願発明の地中孔構築方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図8】本願発明の地中孔構築方法の主な工程を示すステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の地中孔掘削機、及び地中孔構築方法の実施の例を図に基づいて説明する。
【0022】
1.地中孔掘削機
はじめに、本願発明の地中孔掘削機100について詳しく説明する。なお、本願発明の地中孔構築方法は、本願発明の地中孔掘削機100を用いて地中孔を構築する方法である。したがって、まずは本願発明の地中孔掘削機100について説明し、その後に本願発明の地中孔構築方法について説明することとする。
【0023】
図1は、本願発明の地中孔掘削機100を示す斜視図である。この図に示すように本願発明の地中孔掘削機100は、水平ビーム110と鉛直ビーム120、掘削手段130、制御手段を含んで構成され、さらに支持ピン140やパワーユニット150、撮影手段160、表示手段170、ガイドレールGRなどを含んで構成することもできる。以下、地中孔掘削機100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0024】
(水平ビーム)
水平ビーム110は、例えば鋼材を使用して加工される梁状の部材であって、地中孔掘削機100の使用時には略水平(水平を含む)姿勢となるように配置されるものである。そして水平ビーム110の両端には、後述するようにガイドレールGRを把持するための把持部110Hが設けられる。なお、水平ビーム110の上面には、図1に示すようにパワーユニット150を載置するとよい。このパワーユニット150は、電源装置や動力装置などが搭載されたものである。
【0025】
(鉛直ビーム)
鉛直ビーム120は、水平ビーム110と同様、例えば鋼材を使用して加工される梁状の部材であって、地中孔掘削機100の使用時には略鉛直(鉛直を含む)姿勢となるように配置され、水平ビーム110の下方に取り付けられるものである。図2に示すように、鉛直ビーム120の上端には上段アーム120Uが取り付けられており、この上段アーム120Uの先端(図では右端)で水平ビーム110の一部とピン結合(旋回ベアリング結合)され、上段アーム120Uの後端(図では左端)で鉛直ビーム120と連結されている。これにより鉛直ビーム120は、平面視したときに水平ビーム110から外れた(いわば、セットバックした)位置に配置されることとなる。また鉛直ビーム120の下端には下段アーム120Lが取り付けられており、この下段アーム120Lの先端(図では右端)で支持ピン140とピン結合(ヒンジ結合)され、下段アーム120Lの後端(図では左端)で鉛直ビーム120と連結されている。これにより支持ピン140は、平面視したときに水平ビーム110の略直下に配置されることとなる。
【0026】
図3に示すように鉛直ビーム120は、水平ビーム110に取り付けられ、しかも略鉛直(鉛直を含む)軸周りに回転可能となるように水平ビーム110に取り付けられる。より詳しくは、鉛直ビーム120に連結された上段アーム120Uと水平ビーム110がピン結合され、鉛直ビーム120に連結された下段アーム120Lと支持ピン140が連結されていることから、水平ビーム110(ピン結合の位置)と支持ピン140を結んだ略鉛直軸周りに、鉛直ビーム120と上段アーム120U、下段アーム120L、支持ピン140が一体となって回転する。また鉛直ビーム120は、ジャッキのように伸縮する構造(図2)とすることもできる。なお、鉛直ビーム120を回転したり、伸縮したりするにあたっては、オペレータによるコントローラの操作に応じて行われる。具体的には、オペレータがコントローラを操作すると、制御手段がパワーユニット150の動力装置を制御し、これに伴って鉛直ビーム120が所定の作動を実行するわけである。
【0027】
(掘削手段)
掘削手段130は、アーム130Aとバケット130Bを含んで構成され、鉛直ビーム120に取り付けられるものである。このアーム130Aやバケット130Bは、例えば従来用いられているバックホウの部品を利用することができる。そしてオペレータがコントローラを操作すると、制御手段がパワーユニット150の動力装置を制御し、これに伴ってアーム130Aとバケット130Bが所定の作動を実行し、孔底地盤を掘削していく。
【0028】
掘削手段130は鉛直ビーム120に装着されることから、鉛直ビーム120とともに略鉛直軸周りに回転し、鉛直ビーム120の伸縮に伴って上下に移動する。あるいは、鉛直ビーム120に対して掘削手段130が回転する(つまり、掘削手段130が単独で回転する)仕様とすることもできる。この場合、オペレータがコントローラを操作すると、制御手段がパワーユニット150の動力装置を制御し、これに伴って掘削手段130が回転する。いずれにしろ掘削手段130が略鉛直軸周りに回転することによって、孔底全体にわたってバケット130Bを移動させることができ、すなわち隅部を含め孔底地盤の全体をくまなく掘削することができる。また図2に示すように、支持ピン140の先端(下端)を孔底地盤に所定の深さまで(例えば、270mm程度)貫入した状態で、掘削することもできる。この場合、鉛直ビーム120は、上方の水平ビーム110から反力が得られるとともに、支持ピン140を介して孔底地盤からも反力が得られ、すなわち掘削手段130は上下に挟まれるように堅固に支持されることから、相当の強度を有する地盤(例えば、N値50程度の地盤)であっても掘削することができる。なお、支持ピン140の先端を所定の深さまで孔底地盤に貫入するにあたっては、支持ピン140の下端から所定高さ(例えば、270mm)の位置にいわばストッパとなる円形板を設置するとよい。
【0029】
(ガイドレール)
ガイドレールGRは、地中孔の孔壁を支保するライナープレートLPに水平ビーム110を取り付けるための部材であって、図4に示すようにライナープレートLPに固定されたベースプレートBPに取り付けられるものである。すなわち、ガイドレールGRを介して水平ビーム110をライナープレートLPに取り付けることによって、地中孔内に地中孔掘削機100を設置することができるわけである。またガイドレールGRは、左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRRからなり、例えば溝形鋼を利用した部材、あるいは鋼材を加工したレール状の部材であって、図5(a)に示すように略鉛直(鉛直を含む)姿勢となるようにライナープレートLPに固定される。なお、ガイドレールGR(左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRR)を、ベースプレートBPを介してライナープレートLPに固定するにあたっては、例えばボルト固定とするなど着脱可能となるように固定するとよい。また、上下に並ぶように複数の(図では2段の)左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRRをライナープレートLPに取り付けておくこともできる。
【0030】
ガイドレールGRは、図5(b)に示すように2条のレールプレートRPによって構成され、上記したとおりライナープレートLPに固定されたベースプレートBPに取り付けられる。より詳しくは、2条のレールプレートRPをベースプレートBPに対して略垂直(垂直を含む)に配置したうえで、これら2条のレールプレートRPをベースプレートBPに取り付ける。
【0031】
水平ビーム110をガイドレールGRに取り付けるにあたっては、図4(b)に示すように水平ビーム110の把持部110Hを用いて取り付ける構成にするとよい。具体的には、水平ビーム110の両端に設けられた把持部110Hがそれぞれ左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRRを挟むように、換言すれば把持部110H内に左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRRを収容するように配置したうえで、水平ビーム110をガイドレールGRに取り付ける。なお、水平ビーム110をガイドレールGRに取り付けるにあたっては、着脱可能となるように固定するとよい。例えば図5(a)や(c)に示すガイドレールGRには複数の貫通孔THが設けられており、この貫通孔THを利用することによって水平ビーム110を着脱可能に取り付けることができる。具体的には、ガイドレールGRの貫通孔THのうち上下2段の貫通孔THにレールピンPNを挿通し、この上下2段のレールピンPNで把持部110Hを上下から挟むように把持することによって、着脱可能となるように水平ビーム110をガイドレールGRに取り付けるわけである。なお図5(c)では上下2段のうち下段のレールピンPNを描いており、またこの図に示すようにレールピンPNの一部に設けられた切欠部をレールプレートRPに係止する(図5(C)の丸枠部分)こともできる。この場合、所望の貫通孔THを選択してレールピンPNを挿通することができ、すなわちガイドレールGRのうち任意の位置に水平ビーム110を取り付けることができる。
【0032】
(撮影手段と表示手段)
掘削手段130(アーム130Aとバケット130B)によって孔底地盤を掘削していくには、地中孔内に配置されたオペレータが現地の状況を目視しながらコントローラを操作することで実行される。あるいは、地上に配置されたオペレータがリモートコントローラを操作することで孔底地盤を掘削していく仕様とすることもできる。この場合、図6に示すように孔底の状況を動画(あるいは静止画)として取得する撮影手段160を地中孔内に配置するとともに、撮影手段160によって取得された動画(あるいは静止画)を表示する表示手段170を地上に配置するとよい。撮影手段160が取得した動画は、無線(あるいは有線)による通信手段を介して表示手段170に送信され、この表示手段170に表示された動画をオペレータが目視しながらリモートコントローラを操作するわけである。なお、撮影手段160は水平ビーム110や鉛直ビーム120に取り付けることによって地中孔内に配置することができ、表示手段170はパーソナルコンピュータのディスプレイなどを利用することができる。
【0033】
2.地中孔構築方法
続いて、本願発明の地中孔構築方法ついて説明する。なお、本願発明の地中孔構築方法は、ここまで説明した地中孔掘削機100を用いて地中孔を構築する方法である。したがって、地中孔掘削機100について説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の地中孔構築方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.地中孔掘削機」で説明したものと同様である。
【0034】
図7は本願発明の地中孔構築方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、図8は本願発明の地中孔構築方法の主な工程を示すステップ図である。本願発明の地中孔構築方法によって地中孔を構築するにあたっては、まず地上作業用掘削機械(例えば、小型バックホウなど)を使用して地上から地盤を掘削し(図7のStep201)、図8(a)に示すようにライナープレートLPを設置する(図7のStep202)。
【0035】
ある程度の深度まで掘削してライナープレートLPを設置すると、図8(b)に示すように左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRRを、ベースプレートBPを介してライナープレートLPに取り付ける(図7のStep203)。このとき、上下に並ぶように複数の(図では2段の)ガイドレールGRをライナープレートLPに取り付けるとよい。
【0036】
ガイドレールGRをライナープレートLPに取り付けると、水平ビーム110をガイドレールGRに取り付け、すなわち地中孔内に地中孔掘削機100を設置する(図7のStep204)。そして、オペレータがコントローラを操作することによって、図8(c)に示すように掘削手段130(アーム130Aとバケット130B)が孔底地盤を掘削していく(図7のStep205)。このとき、既述したように、地中孔内に配置されたオペレータが現地の状況を目視しながらコントローラを操作することもできるし、地上に配置されたオペレータが表示手段170の動画を目視しながらリモートコントローラを操作することもできる。掘削手段130が孔底地盤を掘削した土砂は、バックナーなどの容器に収容したうえで、地上の揚重機などによって地上に引き上げる。
【0037】
掘削手段130による掘削がある程度進むたびにライナープレートLPを孔壁に設置(図7のStep206)、ライナープレートLPを設置するとさらに掘削を進めていく。なお掘削の進行に伴って、地中孔掘削機100を下方に移設していくとよい。具体的には、ガイドレールGRの貫通孔THとレールピンPNを利用した把持部110Hの上下把持固定を解除し、より下方にある貫通孔THに挿通したレールピンPNによってより低い位置で把持部110Hを上下把持固定し、これにより地中孔掘削機100を下方に移設するわけである。
【0038】
さらに、掘削手段130による掘削が進行し、既設のガイドレールGRでは地中孔掘削機100を下方に移設することができなくなると、ガイドレールGRの盛替え作業を行う(図7のStep207)。具体的には図8(d)に示すように、上方のガイドレールGR(左側ガイドレールGRLと右側ガイドレールGRR)とベースプレートBPを取り外すとともに、取り外したガイドレールGRとベースプレートBPを下方に取り付ける。また、ガイドレールGRの盛替え作業を行うと、地中孔掘削機100も下方に移設し(図7のStep208)、さらに孔底地盤を掘削していく。
【0039】
計画された深度まで掘削が行われると、揚重機などによって地中孔掘削機100を地上に引き上げる(図7のStep209)。またガイドレールGRも取り外し、やはり揚重機などによって地上に引き上げる。ここまでの一連の工程によって地中孔が構築されると、必要に応じて、地中孔内に鉄筋を組立てたうえでコンクリートを打ち込み、鉄筋コンクリート製の「深礎基礎」を構築する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明の地中孔掘削機、及び地中孔構築方法は、資材搬送の制限がある場所に深礎基礎を構築するケースで特に好適に利用することができる。本願発明によれば、施工条件が厳しい場所であっても容易に鉄塔用深礎基礎を構築することができ、ひいては電気の安定供給に寄与することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0041】
100 本願発明の地中孔掘削機
110 (地中孔掘削機の)水平ビーム
110H (水平ビームの)把持部
120 (地中孔掘削機の)鉛直ビーム
120U (地中孔掘削機の)上段アーム
120L (地中孔掘削機の)下段アーム
130 (地中孔掘削機の)掘削手段
130A (掘削手段の)アーム
130B (掘削手段の)バケット
140 (地中孔掘削機の)支持ピン
150 (地中孔掘削機の)パワーユニット
160 (地中孔掘削機の)撮影手段
170 (地中孔掘削機の)表示手段
BP (ガイドレールの)ベースプレート
GR (地中孔掘削機の)ガイドレール
GRL (ガイドレールの)左側ガイドレール
GRR (ガイドレールの)右側ガイドレール
LP ライナープレート
PN (ガイドレールの)レールピン
RP (ガイドレールの)レールプレート
TH (ガイドレールの)貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8