IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

特開2024-92116プレキャスト測定治具及び測量システム
<>
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図1
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図2
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図3
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図4
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図5
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図6
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図7
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図8
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図9
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図10
  • 特開-プレキャスト測定治具及び測量システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092116
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】プレキャスト測定治具及び測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/20 20060101AFI20240701BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01B3/20 B
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207819
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】和田 健介
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀之
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA31
2F061BB04
2F061CC07
2F061CC17
2F061DD22
2F061FF09
2F061FF10
2F061FF14
2F061FF21
2F061FF72
2F061GG01
2F061JJ02
2F061JJ11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アンカーボルトの突出高さを簡単に而もバラツキなく測定可能なプレキャスト測定治具を提供するものであり、或は、アンカーボルトの位置、高さを簡単に而も高精度に測定が可能なプレキャスト測定治具、測量システムを提供する。
【解決手段】測定子6と該測定子を同心に且つ摺動可能に支持する支持部5とを具備し、該支持部はコンクリートブロック1から突出するアンカーボルト2に外嵌可能であり、前記測定子は前記アンカーボルトの上端に当接可能であると共に前記アンカーボルトの突出量に対応して上方に変位可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定子と該測定子を同心に且つ摺動可能に支持する支持部とを具備し、該支持部はコンクリートブロックから突出するアンカーボルトに外嵌可能であり、前記測定子は前記アンカーボルトの上端に当接可能であると共に前記アンカーボルトの突出量に対応して上方に変位可能としたプレキャスト測定治具。
【請求項2】
前記支持部は下端が開放され、上端に天板を有するシリンダであり、前記測定子は前記天板を摺動可能に挿通し、下端に前記シリンダに摺動可能に嵌合するスライダを有し、前記測定子は前記天板と前記スライダにより前記シリンダと同心に且つ摺動可能に支持された請求項1に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項3】
前記天板にガイド部が設けられ、前記測定子は前記ガイド部により摺動可能に支持されると共に該天板に挿脱可能である請求項2に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項4】
前記シリンダは前記アンカーボルトに対して大径であり、該シリンダは前記アンカーボルトを前記シリンダの中心にセンタリングするセンタリング部材を具備する請求項2に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項5】
前記支持部がリング状の底板、該底板に立設された複数本の支柱と、該支柱の上端に設けられた天板、前記支柱に摺動可能に設けられたスライダとを具備し、前記天板の中心部にガイド用の孔が設けられ、前記スライダの上面中心部に位置決め用の凹部が設けられ、前記測定子は前記孔に挿脱可能であり、前記測定子の下端は前記凹部に嵌合可能である請求項1に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項6】
前記天板の前記孔に連続し、前記孔の直径と同幅のスリット孔を前記天板の外周から穿設し、前記測定子の下端を前記凹部に位置決め後、前記測定子を前記スリット孔より挿入し、前記ガイド用の孔に嵌合可能とした請求項5に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項7】
前記測定子は、ポールを有し、該ポールに前記アンカーボルトの突出量を測定可能な目盛を設けた請求項1~請求項6のうちいずれか1項に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項8】
前記測定子に、測定基準点を有する測定対象が設けられた請求項1~請求項6のうちいずれか1項に記載のプレキャスト測定治具。
【請求項9】
請求項8のプレキャスト測定治具と前記測定対象の3次元座標を測定可能な測量機を具備する測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト工法時の基礎を設置する際の基礎の位置を測定する為のプレキャスト測定治具及び測量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレキャストにより制作されたコンクリートブロックが、基礎ブロックとして所定の配置に設置され固定されることで家屋の基礎が形成される。基礎ブロックには土台を固定する為のアンカーボルトが突設されている。土台は、建築される家屋の基準となることから、基礎ブロックは高精度で配置されなければならない。又、基礎ブロックにはアンカーボルトを介して土台が取付けられることから、基礎ブロックの位置、設置姿勢は、前記アンカーボルトの位置を測定することで決定される。
【0003】
又、アンカーボルトの基礎ブロックの上面からの突出高さ(突出長さ)は、土台設置後の建材、建具の組込み等に影響を及すので、所定値の範囲内に収っている必要がある。
【0004】
従って、基礎施工時にアンカーボルトの突出高さが、所定値の範囲内に収っているかどうかが測定される。
【0005】
従来、コンベックス等で作業者がその都度測定しており、面倒であり、又熟練度により測定結果にバラツキが生じる。
【0006】
更に、基礎ブロックの平面内(敷地内)での位置、姿勢は家屋を建築する場合の基準となるものであるので、正確に位置決めされなければならず、通常基礎ブロックの位置、姿勢は、アンカーボルトの位置、特に、アンカーボルトの根本の位置を測定することで判断されている。
【0007】
従来、アンカーボルトの位置を測定するには、基準となる水糸を張り、水糸を基準としてアンカーボルトの上端が所定の位置、高さとなっているかどうかが判断されていた。
【0008】
水糸の設置は繁雑な作業であり、又基準となる水糸の設置精度は作業者の熟練度に左右されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-73574号公報
【特許文献2】特開平5-311886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アンカーボルトの突出高さを簡単に而もバラツキなく測定可能なプレキャスト測定治具を提供するものであり、或は、アンカーボルトの位置、高さを簡単に而も高精度に測定が可能なプレキャスト測定治具、プレキャスト測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、測定子と該測定子を同心に且つ摺動可能に支持する支持部とを具備し、該支持部はコンクリートブロックから突出するアンカーボルトに外嵌可能であり、前記測定子は前記アンカーボルトの上端に当接可能であると共に前記アンカーボルトの突出量に対応して上方に変位可能としたプレキャスト測定治具に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記支持部は下端が開放され、上端に天板を有するシリンダであり、前記測定子は前記天板を摺動可能に挿通し、下端に前記シリンダに摺動可能に嵌合するスライダを有し、前記測定子は前記天板と前記スライダにより前記シリンダと同心に且つ摺動可能に支持されたプレキャスト測定治具に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記天板にガイド部が設けられ、前記測定子は前記ガイド部により摺動可能に支持されると共に該天板に挿脱可能であるプレキャスト測定治具に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記シリンダは前記アンカーボルトに対して大径であり、該シリンダは前記アンカーボルトを前記シリンダの中心にセンタリングするセンタリング部材を具備するプレキャスト測定治具に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記支持部がリング状の底板、該底板に立設された複数本の支柱と、該支柱の上端に設けられた天板、前記支柱に摺動可能に設けられたスライダとを具備し、前記天板の中心部にガイド用の孔が設けられ、前記スライダの上面中心部に位置決め用の凹部が設けられ、前記測定子は前記孔に挿脱可能であり、前記測定子の下端は前記凹部に嵌合可能であるプレキャスト測定治具に係るものである。
【0016】
又本発明は、前記天板の前記孔に連続し、前記孔の直径と同幅のスリット孔を前記天板の外周から穿設し、前記測定子の下端を前記凹部に位置決め後、前記測定子を前記スリット孔より挿入し、前記ガイド用の孔に嵌合可能としたプレキャスト測定治具に係るものである。
【0017】
又本発明は、前記測定子が、ポールを有し、該ポールに前記アンカーボルトの突出量を測定可能な目盛を設けたプレキャスト測定治具に係るものである。
【0018】
又本発明は、前記測定子に、測定基準点を有する測定対象が設けられたプレキャスト測定治具に係るものである。
【0019】
更に又本発明は、上記プレキャスト測定治具と前記測定対象の3次元座標を測定可能な測量機を具備する測量システムに係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測定子と該測定子を同心に且つ摺動可能に支持する支持部とを具備し、該支持部はコンクリートブロックから突出するアンカーボルトに外嵌可能であり、前記測定子は前記アンカーボルトの上端に当接可能であると共に前記アンカーボルトの突出量に対応して上方に変位可能としたので、前記アンカーボルトの突出高さを測定するには前記測定子の変位量を確認するだけでよく、簡単に而も高精度に測定が可能であるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施例の断面図である。
図2】第1の実施例の応用例を示す断面図である。
図3】第2の実施例の断面図である。
図4】第2の実施例の変形例を示す断面図である。
図5】第3の実施例の説明図である。
図6】第4の実施例の説明図である。
図7】第5の実施例の説明図である。
図8】センタリング部材の他の実施例を示す斜視図である。
図9】第6の実施例の斜視図である。
図10】第6の実施例に於けるスライダとポールとの関係を示す説明図である。
図11】第6の実施例の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0023】
図1を参照して、本実施例に係るプレキャスト測定治具の第1の実施例を説明する。
【0024】
図1中、1はプレキャストにより製作された基礎ブロック、2は該基礎ブロック1に設けられたアンカーボルト、3はプレキャスト測定治具を示す。
【0025】
該プレキャスト測定治具3は、下端が開放され、上端が天板5aにより閉塞された有天筒体のシリンダ5と該シリンダ5と同心の測定子6とを有し、該測定子6は前記シリンダ5に同心で摺動可能に設けられる。該シリンダ5は前記測定子6の支持部として機能する。
【0026】
前記測定子6は、前記天板5aの中心を摺動可能に貫通するポール7、該ポール7の下端に設けられ、前記シリンダ5に摺動可能に嵌合するスライダ8、前記ポール7の上端部に設けられたストッパ9から構成される。
【0027】
前記測定子6は、前記ポール7が前記天板5aに案内され、前記スライダ8が前記シリンダ5に案内されて摺動可能となっている。又、前記ストッパ9は、前記シリンダ5の下端が開放された状態で、前記天板5aと係合して前記測定子6が前記シリンダ5から抜落ちるのを防止する。尚、前記ストッパ9は、前記スライダ8が、前記シリンダ5から外れない位置に設けてもよい。
【0028】
前記シリンダ5は前記アンカーボルト2に対して充分余裕のある内径となっている。又、前記シリンダ5は断面円形で、前記スライダ8の形状が円であってもよく、前記シリンダ5が4角、6角等の等多角形の筒体であり、前記スライダ8はシリンダの形状に対応した4角、6角等の等多角形であってもよく、又前記シリンダ5が4角、6角等の等多角形の筒体であり、前記スライダ8は前記シリンダ5に内接する円形であってもよい。
【0029】
前記ポール7には前記スライダ8の上昇量を測定する目盛11が設けられている。
【0030】
該目盛11は、前記スライダ8の下面と前記シリンダ5の下端が面一となった状態で0を示し、0.5mmピッチ、1mmピッチ、2mmピッチ等所要の間隔で設けられる。
【0031】
又、目盛は前記天板5aの上面の位置で、読取る様にしてもよく、或は別途カーソルを設けて読取る様にしてもよい。
【0032】
前記アンカーボルト2の突出量、即ち前記アンカーボルト2の上端の前記基礎ブロック1の上面からの高さを測定する場合、前記プレキャスト測定治具3を前記アンカーボルト2が前記シリンダ5に収納される様に前記アンカーボルト2に装着し、前記プレキャスト測定治具3の下端(前記シリンダ5の下端)を基礎ブロック1の上面に当接させる。
【0033】
前記シリンダ5は前記アンカーボルト2に外嵌され、前記シリンダ5が前記基礎ブロック1の上面に当接することで、前記スライダ8及び前記ポール7は、前記アンカーボルト2の突出量だけ押上げられ、前記スライダ8の上昇量、即ち前記アンカーボルト2の突出量は前記ポール7の目盛によって測定することができる。
【0034】
従って、前記プレキャスト測定治具3を前記アンカーボルト2に嵌込むだけで、前記アンカーボルト2の突出量(即ち、高さ)を測定することができる。
【0035】
次に、図2は第1の実施例の応用例を示している。図2に示される様に、突出量の大きい前記アンカーボルト2を測定する場合は、既知の高さを有する補助シリンダ13を前記シリンダ5に必要数継足すことで対応が可能である。尚、以下の説明では前記目盛11の図示を省略している。
【0036】
前記補助シリンダ13を用いた場合、前記アンカーボルト2の突出量(高さ)は、継足した前記補助シリンダ13の合計高さに目盛の位置を加算することで得られる。
【0037】
図3により第2の実施例を説明する。図3に於いて、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0038】
第2の実施例では、ポール7の天板5aの貫通部にガイド部5bを設けている。該ガイド部5bにより、前記ポール7を前記シリンダ5と同心に且つ摺動可能に支持する。
【0039】
前記ガイド部5bを設けることで、スライダ8を前記シリンダ5で案内する必要がなくなるので、前記スライダ8は前記シリンダ5の内径より小さくすることができる。
【0040】
図4は第2の実施例の変形例を示している。
【0041】
該変形例では、測定子6に於いて前記スライダ8を省略している。前記ポール7の下端が直接、アンカーボルト2の上端に当接させる様にしたものであり、更に前記ポール7を前記シリンダ5に対し、抜脱可能としたものである。又、ストッパ9を省略し、前記測定子6をポール7のみで構成してもよい。
【0042】
該変形例では、先ずシリンダ5を前記アンカーボルト2に嵌込み、後で前記ポール7を前記ガイド部5bに差込んで測定してもよい。
【0043】
次に、図5により第3の実施例を説明する。第3の実施例では、前記プレキャスト測定治具3を測定対象(ターゲット)の支持装置として用いている。該測定対象は測定基準点を有し、測定基準点は測定装置によって測定される。測定対象としてはプリズム、反射板、球体、柱体、ターゲット板等測定基準点を有するものであれば種々のものが使用可能である。
【0044】
第3の実施例に於いて、測定対象がプリズム15である場合を示し、該プリズム15の光学中心が測定基準点となる。
【0045】
前記プリズム15はプリズムホルダ16を介してポール7に取付けられている。図5に於いて、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0046】
該ポール7は前記プリズム15を貫通し、該プリズム15の光学中心(測定基準点)が前記ポール7の軸心上に位置する様に設定されている。
【0047】
又、前記プリズム15は前記ポール7に対して摺動可能であり、前記プリズム15の位置を調整し、固定螺子17により前記プリズム15を所定位置に固定できる様になっている。ここで、前記プリズム15を固定した位置で、前記スライダ8下面と前記プリズム15の光学中心間の距離は既知とする。
【0048】
尚、前記プリズム15の位置を調整する必要がない場合は、該プリズム15を前記ポール7に固定的に設けてもよい。この場合も前記スライダ8下面と前記プリズム15の光学中心間の距離を既知とする。
【0049】
第3の実施例に於いて、前記アンカーボルト2の高さを測定する場合、第1の実施例と同様、前記プレキャスト測定治具3を前記アンカーボルト2が前記シリンダ5に収納される様に嵌込む。
【0050】
前記スライダ8及び前記ポール7は、前記アンカーボルト2によって押上げられる。測量機(図示せず)によって、前記プリズム15の高さを測定する。測定された該プリズム15の高さから、前記スライダ8の底面から前記プリズム15の光学中心迄の距離を減算することで、前記アンカーボルト2の高さを測定することができる。
【0051】
尚、図3で示した第2の実施例、図4で示した第2の実施例の変形例に、それぞれ測定対象を取付けてもよいことは言う迄もない。
【0052】
又、測量機としては、測定対象の3次元座標を測定可能な測量機、例えば、光波距離計、水平角検出器、高低角検出器を有する測量機、トータルステーション、追尾機能を有する測量機、レーザスキャナ等種々の測量機が使用可能である。
【0053】
プレキャスト測定治具3に測定対象を取付け、測量機で測定対象を測定する場合、測定対象の高さと共に水平位置を測定することができる。従って、前記測定対象(プリズム15)の測定基準点が前記アンカーボルト2の軸心上に位置する様に、前記プレキャスト測定治具3を設置すれば、前記プリズム15を測定することで、前記アンカーボルト2の高さを測定すると共に測量装置を基準とした水平位置も測定することができる。
【0054】
尚、光学中心を前記アンカーボルト2の軸心上に設定する方法としては、前記シリンダ5の内径を前記アンカーボルト2の外径よりも許容誤差の範囲で大径とする。前記シリンダ5を前記アンカーボルト2に対して容易に挿脱可能とし、且つ設置した前記プレキャスト測定治具3が支持する前記プリズム15の光学中心は測定誤差の範囲に位置させることができる。
【0055】
図6は、第4の実施例を示している。
【0056】
第3の実施例では、シリンダ5の内径をアンカーボルト2の外径より充分大きくし、該アンカーボルト2の径が変更されても、前記アンカーボルト2の軸心と前記シリンダ5の軸心との偏差が許容誤差の範囲に収る様、前記シリンダ5にセンタリング部材19が設けられる。
【0057】
該センタリング部材19は、径方向に変位可能に形成されたバネ材19aを前記シリンダ5の内周、3等分位置、或は4等分位置に設けることで構成されている。
【0058】
尚、前記バネ材19aは、短冊状の板バネであっても、ワイヤ状のバネであってもよい。
【0059】
前記バネ材19aの自由状態で、該バネ材19aに外接する円の径は、前記アンカーボルト2の外径よりも所要量小径となる様に設定される。
【0060】
前記アンカーボルト2が前記シリンダ5に挿入されると、前記バネ材19aが撓み、該バネ材19aは前記アンカーボルト2に中心方向への反発力を作用する。この反発力の均衡によって前記アンカーボルト2は許容誤差の範囲に収る様センタリングされる。
【0061】
尚、前記バネ材19aが、前記アンカーボルト2に接触する位置は、該アンカーボルト2の根本に近い部分であることが望ましい。前記アンカーボルト2が傾斜していた場合の、傾斜の影響による測定誤差の発生を抑止できる。
【0062】
図7は、第5の実施例を示している。第5の実施例ではセンタリング部材19がバネ材19aと接触コロ19bによって構成されている。
【0063】
シリンダ5の下部に、円周3等分、或は4等分の位置に、スリット21が形成され、該スリット21にセンタリング部材19が設けられる。
【0064】
前記接触コロ19bは前記バネ材19aの先端に回転可能に設けられ、該バネ材19a、前記接触コロ19bは前記スリット21内を半径方向に自在に変位可能となっている。
【0065】
前記バネ材19aの自由状態では、前記接触コロ19bに内接する円の径は、前記アンカーボルト2の外径よりも所要量小径となる様に設定される。
【0066】
第4の実施例と同様に、前記アンカーボルト2が前記シリンダ5に挿入されると、前記バネ材19aが撓み、該バネ材19aの反発力の均衡によって前記アンカーボルト2は許容誤差の範囲に収る様センタリングされる。又、前記アンカーボルト2の前記シリンダ5への挿脱時には、前記接触コロ19bが回転し円滑な挿脱が行える。
【0067】
図8は、センタリング部材の他の実施例を示している。
【0068】
該センタリング部材23は、弾性を有する合成樹脂或は合成ゴム等により一体成形されている。
【0069】
該センタリング部材23は、フランジ23a、該フランジ23aより上方に突出するボルトホルダ23bを有し、該ボルトホルダ23bには更にスリット24により所要分割(図示では4分割)されカンチレバー片23cが形成される。
【0070】
前記センタリング部材23の中心部には、アンカーボルト2が挿通可能な円筒状の空間が形成される。前記カンチレバー片23cの最小径部に内接する円は、前記アンカーボルト2の外径よりも小さく設定されている。
【0071】
前記センタリング部材23はシリンダ5(図示せず。図5参照)の下端から挿入され、所要の手段で取付けられる。例えば、該センタリング部材23は前記シリンダ5に圧入により取付けられ、或は前記フランジ23aがボルト等の固着具によって前記シリンダ5に取付けられる。
【0072】
前記センタリング部材23が装着されたシリンダ5に、前記アンカーボルト2が挿入される場合、前記カンチレバー片23cが弾性変形して、前記アンカーボルト2をセンタリングする。
【0073】
尚、前記センタリング部材23に潤滑性を有する合成樹脂、例えばフッ素樹脂、ナイロン、ポリアセタール、潤滑性のドライコートを施した各種樹脂等を使用することで、前記プレキャスト測定治具3の円滑な挿脱が可能となる。
【0074】
第6の実施例に係るプレキャスト測定治具3は、主にターゲット装置30及びターゲット装置30の支持部31から構成される。尚、前記ターゲット装置30は第1実施例~第6実施例で説明した測定子6と同等であり、前記支持部31は第1実施例~第6実施例に於ける支持部と同等である。
【0075】
前記支持部31について、スライダ25が複数本(図示では3本)の支柱26によって、摺動可能(昇降可能)に支持されている。
【0076】
リング状の底板27の周辺に前記支柱26が垂直に立設され、該支柱26の上端には天板28が設けられている。該支柱26は前記スライダ25を貫通し、該スライダ25は前記支柱26を案内として昇降可能となっている。
【0077】
前記底板27には、センタリング部材29が設けられる。該センタリング部材29は、図7のセンタリング部材19と同様な構造であり、接触コロ29aをバネ材(図示せず)によってアンカーボルト2に押付ける様になっている。尚、センタリング部材29としては、図8に示される様な合成樹脂製或は合成ゴム製のセンタリング部材23であってもよい。
【0078】
前記天板28の中心には孔28aが穿設され、該孔28aにはターゲット装置30のポール32が挿通可能となっている。尚、該ポール32は第1実施例~第6実施例で説明したポール7と同等の機能を有する。
【0079】
前記ターゲット装置30は、通常の測量に単体で使用されているものであり、第7の実施例に於いて、プレキャスト測定治具の構成の一部として使用することができる。
【0080】
前記ポール32の上端には、プリズムホルダ33が設けられ、該プリズムホルダ33にはプリズム34、傾斜センサ35(又は気泡管)が設けられている。前記プリズム34の光学中心は測定基準点であり、前記ポール32の軸心上に位置し、更に前記ポール32の下端と前記光学中心間の距離は既知となっている。又、ポール下端は尖端となっており、石突36となっている。
【0081】
図10に示される様に、前記スライダ25の上面中心には位置決め用に凹部が設けられている。図示では該凹部として円錐穴37が適用されている。該円錐穴37の頂角は、前記ポール32の頂角と等しいか、若干大きくなっており、前記ポール32の石突36が嵌合する様になっている。該石突36が前記円錐穴37に嵌合した状態で、前記スライダ25の下面と前記プリズム34の光学中心間の距離は既知となっている。尚、凹部は位置決め機能を有していればよく、前記石突36の尖端が嵌合可能な円孔であってもよい。
【0082】
前記底板27の中心、前記孔28aの中心、前記円錐穴37の中心は同一軸心上に在り、前記ターゲット装置30を前記孔28aに挿通し、前記石突36を前記円錐穴37に嵌合すると、前記ポール32の軸心は、前記底板27の軸心と平行であり、且つ前記底板27の中心を通過する様になっている。ここで、前記底板27の中心、前記孔28aの中心、前記円錐穴37の中心が存在する軸心は、前記プレキャスト測定治具3の中心線を意味する。
【0083】
第6の実施例に係るプレキャスト測定治具3を、アンカーボルト2に設置する場合、ターゲット装置30を支持部31から外した状態で、設置してもよく、或は前記ターゲット装置30と前記支持部31とを組立てた状態で設置してもよい。
【0084】
以下は、前記ターゲット装置30を取外した状態で設置する場合について説明する。
【0085】
先ず、前記支持部31を前記アンカーボルト2に設置する。前記支持部31は、前記センタリング部材29によって前記アンカーボルト2と同心に調整される。前記スライダ25は、前記アンカーボルト2によって押上げられる。
【0086】
この状態で、前記ターゲット装置30のポール32を前記孔28aに挿入し、前記石突36を前記円錐穴37に嵌合させると、前記プレキャスト測定治具3の設置が完了する。尚、該プレキャスト測定治具3の設置状態が水平(又は鉛直)であるかどうかは前記傾斜センサ35によって確認することができる。
【0087】
測量機(図示せず)によって、前記プリズム34を測定し、測定された高さから前記スライダ25の下面から光学中心迄の距離を引くことで前記アンカーボルト2の高さが測定される。又、測量機により水平位置も同時に測定される。
【0088】
図11は、第6の実施例の変形例を示している。
【0089】
図11中、図9で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0090】
該変形例では、天板39に孔28aが設けられると共に前記天板39の外周から前記孔28aに連続するスリット孔39aが穿設される。該スリット孔39aの幅は前記孔28aの直径と同じ、或は僅かに大きくなっている。
【0091】
該変形例で、ターゲット装置30を支持部31に取付ける場合は、前記ターゲット装置30を傾斜させ、前記スリット孔39aの方向から石突36をスライダ25の円錐穴37に嵌合さる。
【0092】
次に、前記ポール32を前記スリット孔39aに沿って挿入し、前記孔28aに嵌合させることで、前記ターゲット装置30は前記底板27に対して直立し、前記ポール32の軸心は前記プレキャスト測定治具3の中心線と合致する。
【0093】
前記ポール32を前記孔28aに嵌合させた状態で、前記プリズム34を測定対象として測定を行うことができる。
【0094】
尚、該変形例に於いても、ターゲット装置30を支持部31から外した状態で設置してもよく、或は前記ターゲット装置30と前記支持部31とを組立てた状態で設置してもよいことは言う迄もない。
【0095】
上記実施例に係るプレキャスト測定治具では、簡単な設置作業でアンカーボルトの突出量を測定することができ、又作業者の熟練度に関わらず正確な測定が可能である。
【0096】
尚、上記実施例ではアンカーボルトを有するプレキャストコンクリートブロックとして基礎ブロックについて説明したが、アンカーボルト或はアンカーボルトと同等の機能のボルトを有するコンクリートブロックについても本発明が適用可能であることは言う迄もない。又、アンカーボルトを有するコンクリートブロックとしては、橋梁等に用いられる構造部材としてのコンクリートブロック等が含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 基礎ブロック
2 アンカーボルト
3 プレキャスト測定治具
5 シリンダ
6 測定子
7 ポール
8 スライダ
11 目盛
15 プリズム
19 センタリング部材
23 センタリング部材
25 スライダ
26 支柱
27 底板
28 天板
29 センタリング部材
31 支持部
32 ポール
33 プリズムホルダ
34 プリズム
37 円錐穴
39a スリット孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11